説明

車両用装飾具及びそれを備えた車両

【課題】車両の挙動変化に応じて外観を変化させることが可能な車両用装飾具及びそれを備えた車両を提供する。
【解決手段】車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が所定の慣性力を超えていない状態では、初期位置保持手段8によって変位部6の位置が初期位置に保持されて、左眼球18の全ての部分が、動作部12によって覆われてない状態となり、一方、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が所定の慣性力を超えている状態では、この慣性力によって、変位部6の位置が初期位置から変位し、第一平歯車24、第二平歯車26、第一傘歯車28、第二傘歯車30が回転して動作部12が回転し、左眼球18の、外部から視認可能な面積が減少し、最終的には、左眼球18の全ての部分が、動作部12によって覆われている状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体外面へ取り付けられ、動物等の形を模して外観が形成されている車両用装飾具及びそれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両(以下の説明では、車両の種類を「バス」とする)に対して、バスを構成する車体を、アニメ等のキャラクターや、犬、猫等の動物の形に加工したキャラクターバスが製作されている。このようなバスは、例えば、幼稚園児の送迎用等に用いられている。
しかしながら、このようなバスは、ベースとなるバスの車体を、原型を留めないほどに、大幅に作り変えて製作されている場合が多いため、幼稚園児の送迎用等、キャラクターバスに適した用途以外には、使用が困難である。このため、そのバスが本来の使用目的を終了した場合に、普通のバスに戻すことが困難であり、荷物の搬送等、通常の使用が可能な状態であっても、廃車とせざるを得ない場合が多いという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するため、例えば、特許文献1に記載されている車両が用いられている。
特許文献1に記載されている車両は、例えば、動物の形を模して形成されている装飾部と、この装飾部を車両に取り付けるための取付架台を備えた車両用装飾具が、車体前面に取り付けられている。
装飾部は、例えば、FRP(グラスウール等の繊維強化プラスチック)を用い、ハンドレイアップ製法(製作したい形状の木型等の表面にFRPを1枚ずつ接着剤等で重合していく、一般的製法)によって製造されている。
取付架台は、一端が車体前面に取付けられているとともに、他端に取付架台側支持ブラケットが設けられている。また、装飾部には、枠部材が設けられており、この枠部材には、取付架台側支持ブラケットに取付けられる取付けブラケットが配設されている。
【0004】
このような構成の車両であれば、ベースの車両となるバスの車体を殆ど作り変えることなく、バスの車体に対して、新たな部品(取付架台及び装飾部)を取り付けることにより、キャラクターバスを製造することが可能となっている。このため、車体に取り付けた部品を、車体から容易に外すことが可能となり、例えば、幼稚園児の送迎用等、キャラクターバスに適した用途を終えたキャラクターバスの車体を、ベースであるバスの車体に、容易に戻すことが可能となる。したがって、ベースであるバスの車体に戻したバスを、例えば、荷物搬送用等、キャラクターバスに適した用途以外で使用することが容易となる。
【特許文献1】特開2005−289199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載した車両が備える車両用装飾具を含め、従来の車両用装飾具は、装飾部が、FRPを用いたハンドレイアップ製法等によって製造されている場合が多いため、一体物に構成されている場合が多い。
このため、装飾部の外観が、動物の形状、すなわち、瞼や尻尾等の動作部を備えた、犬や猫等の形状を模して形成されている場合であっても、動作部を備えておらず、装飾部の外観に変化が生じることは無いため、元となる動物の表現には限界がある。
【0006】
ここで、例えば、車両用装飾具を、元となる動物の大部分を模して形成された装飾部と、元となる動物の一部を模し、且つ本体と別体で形成された動作部から構成し、この動作部を、モータ等のアクチュエータを用いて動作させることにより、装飾部の外観を変化させる構成が考えられる。
しかしながら、このような構成では、アクチュエータの操作を、車両の操縦手が行う必要があるため、車両操縦における安全性が低下してしまうという問題が生じるおそれがある。
【0007】
また、このような構成では、アクチュエータの駆動に必要なバッテリー等の駆動力供給源や、操作スイッチ等の配線が必要となり、車両用装飾具の構成が複雑化してしまうという問題が生じるおそれがある。
本発明は、上述したような問題点に着目してなされたもので、アクチュエータや駆動力供給源を必要とせずに、車両の挙動変化に応じて、装飾部の外観を変化させることが可能な、車両用装飾具及びそれを備えた車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、車両の車体外面へ取り付けられる装飾部を備えた車両用装飾具であって、
前記装飾部と別体で形成され、且つ前記装飾部に対して動作可能に配置される動作部と、
前記車両の挙動変化に応じて発生する慣性力によって所定の初期位置から変位する変位部と、
前記変位部の変位量を前記動作部の動作量に変換する変位量変換手段と、を備え、
前記動作部は、前記装飾部に対して動作することにより装飾部の外観を変化させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明によると、走行状態から制動状態への変化等、車両の挙動変化に応じて発生する慣性力によって、変位部の位置が所定の初期位置から変位し、この変位部の変位量が動作部の動作量に変換されて、動作部が装飾部に対して動作することにより、装飾部の外観が変化する。
このため、車両の挙動変化に応じて、動作部を装飾部に対して動作させることが可能となり、アクチュエータや駆動力供給源を必要とせずに、また、車両の操縦手が、装飾部の外観を変化させるための動作を行うことなく、装飾部の外観を変化させることが可能となる。
【0010】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記車両の挙動変化に応じて発生する慣性力が所定の慣性力を超えていない場合に、前記変位部の位置が前記初期位置となるように変位部を変位させる初期位置保持手段を備えることを特徴とするものである。
本発明によると、車両の挙動変化に応じて発生する慣性力が、所定の慣性力を超えていない場合に、初期位置保持手段によって、変位部の位置が初期位置となるように変位部が変位する。
このため、所定の慣性力を調節することにより、動作部の動作条件を設定することが可能となるため、車速や制動状態等、任意の条件下において、動作部を動作させることが可能となる。
【0011】
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した発明であって、前記装飾部の外観は、動物の顔を模して形成されており、
前記動作部の外観は、前記動物の顔の一部を模して形成されていることを特徴とするものである。
本発明によると、装飾部の外観が動物の顔を模して形成されており、動作部の外観が動物の顔の一部を模して形成されているため、車両の挙動変化に応じて、動物の顔における外観の変化を表現することが可能となる。
【0012】
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した発明であって、前記動作部の外観は、瞼を模して形成されており、
前記動作部は、前記装飾部に対して動作することにより、前記装飾部の外観が模している動物の顔に形成された眼球部の、外部から視認可能な面積を変化させることを特徴とするものである。
本発明によると、動作部の外観が瞼を模して形成されており、この動作部が、装飾部に対して動作することにより、装飾部の外観が模している動物の顔に形成された眼球部の、外部から視認可能な面積が変化する。
このため、車両の挙動変化に応じて、車両用装飾具の視認者に対し、動物の顔における瞬きの状態をイメージさせることが可能となる。
【0013】
次に、本発明のうち、請求項5に記載した発明は、請求項3または4に記載した発明であって、前記動作部の外観は、頬の少なくとも一部を模して形成されており、
前記動作部は、前記装飾部に対して動作することにより、前記装飾部の外観が模している動物の顔に形成された頬の、少なくとも一部の外観を変化させることを特徴とするものである。
本発明によると、動作部の外観が、頬の少なくとも一部を模して形成されており、この動作部が、装飾部に対して動作することにより、装飾部の外観が模している動物の顔に形成された頬の、少なくとも一部の外観が変化する。
このため、車両の挙動変化に応じて、車両用装飾具の視認者に対し、動物の顔における笑顔の状態をイメージさせることが可能となる。
【0014】
次に、本発明のうち、請求項6に記載した発明は、請求項1から5のうちいずれか1項に記載した車両用装飾具を備えたことを特徴とする車両である。
本発明によると、車両が、請求項1から5のうちいずれか1項に記載した車両用装飾具を備えているため、走行状態からの制動動作等、車両の使用時における通常の動作によって、動作部を動作させることが可能となる。
このため、車両の挙動変化に応じて、動作部を装飾部に対して動作させることが可能となり、アクチュエータや駆動力供給源を必要とせず、また、車両の操縦手が、装飾部の外観を変化させるための動作を行うことなく、装飾部の外観を変化させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両の挙動変化に応じて、車両用装飾具の外観を変化させることが可能となるため、アクチュエータや駆動力供給源を必要とせず、また、車両の操縦手が、装飾部の外観を変化させるための動作を行うことなく、車両用装飾具の視認者に対し、装飾部が模している物の外観における、状態の変化をイメージさせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の第一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、図1から図5を参照して、本実施形態の車両用装飾具を備えた車両(以下、「車両」と記載する)の構成を説明する。
図1は、本実施形態の車両1の構成を示す図である。なお、本実施形態では、一例として、図1中に示すように、車両1を、マイクロバスとした場合について説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両1は、その前面に、車両用装飾具2を備えている。
【0017】
図2は、車両用装飾具2の構成を示す図である。
車両用装飾具2は、装飾部4と、変位部6と、初期位置保持手段8と、変位量変換手段10と、動作部12を備えている。なお、図2中では、変位部6、初期位置保持手段8、変位量変換手段10、動作部12を、それぞれ、破線によって示している。
装飾部4は、車体14の前面へ着脱可能に取り付けられて、車体14の前面のうち、装飾部4が取り付けられた部分を、車両1の前方から見て覆っている。装飾部4の車体14への取り付け構造は、例えば、図2中に示すように、装飾部4に数箇所のねじ孔16を形成するとともに、車体14の前面の、装飾部4が取り付けられる部分において、ねじ孔16と対応する位置に取付け孔(図示せず)を形成し、これらのねじ孔16と取付け孔にボルト等の締結部材を挿通して、装飾部4を車体14へ取り付ける構造とする。
【0018】
また、装飾部4は、車体14の前面に取り付けられた状態で、装飾部4の内側面と車体14の前面との間が離間する形状に形成されている。すなわち、装飾部4を車体14の前面に取り付けると、装飾部4の内側面と車体14の前面との間に空間が形成される。ここで、「車体14の前面の一部」とは、車両1が、例えば、公道で使用されるものである場合には、車体14の前面のうち、フロントガラス、ワイパー、ナンバープレート、ウインカーを含むライト等を除く部分とする。
【0019】
装飾部4の外観は、動物の顔を模して形成されている。
装飾部4が模している動物の顔において、左眼球18に該当する部分の周囲には、動作部12が移動するスリット20が、車幅方向へ開口するように形成されている。また、装飾部4が模している動物の顔において、口に該当する部分には、装飾部4と車体14の前面との間に形成される空間と、装飾部4の外部とを連通する空気取入口22が形成されており、この空気取入口22は、メッシュ状に形成されている。装飾部4の外部から、空気取入口22を通過して、装飾部4と車体14の前面との間に形成される空間に流入する空気の少なくとも一部は、車両1が備えるエンジン(図示せず)の吸気経路へ移動して、エンジンへ吸気される。
【0020】
図3は、変位部6と、初期位置保持手段8と、変位量変換手段10と、動作部12の構成を示す図であり、図4は、図2のIV−IV線断面図、図5は、図2のV−V線断面図である。
変位部6は、上下方向に延在する棒状部材によって形成されており、車体14の前面と装飾部4との間に形成された空間に配置されている。変位部6の上端は、後述する第一平歯車24に結合されており、変位部6の下端には、初期位置保持手段8が結合されている。
【0021】
また、変位部6は、走行状態から制動状態への変化等、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力によって、第一平歯車24の周方向へ揺動することにより、所定の初期位置から変位する。なお、図3から図5中では、変位部6の位置が初期位置である状態を実線で示しており、図5中では、初期位置から変位した変位部6を、破線で示している。また、図3及び図5中では、変位部6が初期位置から変位する方向を、矢印Aによって示している。
【0022】
初期位置保持手段8は、所定の質量となるように形成された錘によって構成されており、変位部6と同様、車体14の前面と装飾部4との間に形成された空間に配置されている。
また、初期位置保持手段8は、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が、所定の慣性力を超えていない場合に、変位部6の位置が初期位置となるように、変位部6を変位させる。
【0023】
ここで、「所定の慣性力」とは、例えば、一般道における通常の走行状態から、停車時における制動状態への移行等、任意の条件下において、変位部6が初期位置から変位する値に設定する。所定の慣性力は、例えば、制動時における車両1の状態、具体的には、車両1の操縦手がブレーキを操作する際の車速や、ブレーキの操作状態(ブレーキペダルの踏力等)等に基づいて設定する。所定の慣性力を設定する際には、例えば、初期位置保持手段8の質量や、第一平歯車24の回転軸と初期位置保持手段8との距離を調節する。
【0024】
また、「車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が、所定の慣性力を超えていない場合」とは、「車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が、所定の慣性力を超えた後に減少して、所定の慣性力未満となった場合」を含む。
変位量変換手段10は、第一平歯車24、第二平歯車26、第一傘歯車28、第二傘歯車30を備えており、これらの第一平歯車24、第二平歯車26、第一傘歯車28、第二傘歯車30は、歯車取付けブラケット32へ、それぞれ、回転自在に支持されている。
【0025】
第一平歯車24は、周面の一部に変位部6の上端が結合されており、変位部6の変位に連動して回転する。なお、本実施形態では、第一平歯車24の回転軸が、車幅方向に沿って延在している場合を例に挙げて説明する。また、図3及び図5中では、変位部6の矢印A方向への変位に連動して第一平歯車24が回転する回転方向を、矢印Bによって示している。
【0026】
第二平歯車26は、第一平歯車24と噛合しており、その回転軸は、第一平歯車24の回転軸に対して平行となっている。また、第二平歯車26は、第一平歯車24の回転に連動して、第一平歯車24の回転方向と逆方向へ回転する。なお、図3及び図5中では、第一平歯車24の矢印B方向への回転に連動して第二平歯車26が回転する回転方向を、矢印Cによって示している。
【0027】
第一傘歯車28は、第二平歯車26に対して、第二平歯車26と同軸に取り付けられており、第二平歯車26の回転に連動して、第二平歯車26の回転方向と同方向へ回転する。なお、図3及び図5中では、第二平歯車26の矢印C方向への回転に連動して第一傘歯車28が回転する回転方向を、第二平歯車26と同様、矢印Cによって示している。
第二傘歯車30は、第一傘歯車28と噛合しており、その回転軸は、車両1の前後方向に延在している。すなわち、第一傘歯車28の回転軸は、第二傘歯車30の回転軸に対して直交している。また、第二傘歯車30は、第一傘歯車28の回転に連動して、第二傘歯車30の回転方向と直交する方向へ回転する。なお、図5中では、第一傘歯車28の矢印C方向への回転に連動して第二傘歯車30が回転する回転方向を、矢印Dによって示している。
【0028】
歯車取付けブラケット32は、車体14の前面と装飾部4との間に形成された空間に配置されており、ねじ等を用いて、装飾部4の内側面に取り付けられている。
歯車取付けブラケット32の下方には、歯車取付けブラケット32の、各歯車24、26、28、30が配置されている空間と、歯車取付けブラケット32の外部とを連通する開口部34が形成されており、この開口部34からは、変位部6及び初期位置保持手段8が、下方へ突出している。
【0029】
開口部34内において、車両1の前方側には、前側ストッパ36が配置されており、開口部34内において、車両1の後方側には、後側ストッパ38が配置されている。前側ストッパ36と後側ストッパ38は、例えば、ゴム等の弾性材料によって形成されており、両者の間に形成される空間によって、変位部6が変位可能な範囲を規制している。詳しくは、前側ストッパ36によって、変位部6が車両1の前方側へ変位可能な範囲を規制しており、後側ストッパ38によって、変位部6が車両1の後方側へ変位可能な範囲を規制している。
【0030】
動作部12は、装飾部4と別体で形成された略長方形の板状部材によって構成されており、装飾部4に対して動作可能に配置されている。具体的には、動作部12は、その両面を、それぞれ、車両1の前後方向に向けて配置されており、その厚さ方向が、第二傘歯車30の回転軸に対して平行となるように、第二傘歯車30に固定されている。したがって、第二傘歯車30が回転すると、動作部12は、第二傘歯車30の回転に連動して、第二傘歯車30の回転方向と同方向へ回転する。また、動作部12の第二傘歯車30に固定される部分は、動作部12の四箇所の角部のうち、後述するように、動作部12が回転して、「左眼球18の、外部から視認可能な面積が最小」の状態となったときに、車両1の前方から見て左下に位置する部分である。なお、図3中では、第二傘歯車30の矢印D方向への回転に連動して動作部12が回転する回転方向を、矢印Eによって示している。
したがって、変位量変換手段10は、変位部6の変位量を、動作部12の回転量(動作量)として変換する構成となっている。
【0031】
また、動作部12は、変位部6の位置が初期位置である状態、すなわち、動作部12が回転していない状態では、車体14の前面と装飾部4との間に形成された空間に配置されており、この状態では、左眼球18の、外部から視認可能な面積が最大となる。ここで、「左眼球18の、外部から視認可能な面積が最大」とは、左眼球18の全ての部分が、動作部12によって覆われてない状態である。また、変位部6の位置が初期位置である状態では、変位部6が、後側ストッパ38と接触している。
【0032】
一方、動作部12は、変位部6が初期位置から変位した状態、第二傘歯車30の回転に連動して回転し、装飾部4に形成されているスリット20を通過して、装飾部4が模している動物の左眼球18に該当する部分の、外部から視認可能な面積を変化させる位置に配置される。この状態では、変位部6の初期位置からの変位量が増加するにつれて、動作部12の回転量が増加し、左眼球18の、外部から視認可能な面積が減少する。
そして、最終的な状態、すなわち、変位部6が前側ストッパ36に接触した状態では、左眼球18の、外部から視認可能な面積は最小となる。ここで、「左眼球18の、外部から視認可能な面積が最小」とは、左眼球18の全ての部分が、動作部12によって覆われている状態である。
また、動作部12の車両1の前方側の面の外観は、瞼を模して形成されている。
【0033】
次に、図1から図5に基づき、図6を参照しつつ、本実施形態の車両1の作用・効果等を説明する。
以下、車両1の用途が幼稚園児の送迎用であり、この車両1が幼稚園児を迎えに行く場合について説明する。
車両1が幼稚園児を迎えに行く場合、例えば、団地の近辺等、所定の場所に設定されている停留所へ向けて走行し、車両1が停留所へ近づくと、車両1の操縦手は、ブレーキ(ペダル等)を操作して、車両1の挙動を走行状態から制動状態へと変化させる。
【0034】
このとき、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が、所定の慣性力を超えていない状態では、変位部6の位置は、初期位置保持手段8によって、初期位置に保持される。この状態では、動作部12が回転していないため、図6(a)に示すように、左眼球18の全ての部分が、動作部12によって覆われてない状態となる。
一方、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が、所定の慣性力を超えている状態では、この慣性力によって、変位部6が第一平歯車24の周方向へ揺動して、変位部6の位置が初期位置から変位する。
【0035】
変位部6の位置が初期位置から変位すると、各歯車24、26、28、30が回転して、動作部12が回転し、スリット20を通過して、左眼球18を覆う位置へと変位する。
そして、変位部6の初期位置からの変位量が増加するにつれて、左眼球18の、外部から視認可能な面積が減少し、最終的には、変位部6が前側ストッパ36に接触して、図6(b)に示すように、左眼球18の全ての部分が、動作部12によって覆われている状態となる。なお、図6は、車両1が幼稚園児を迎えに行く状態における、装飾部4の外観を示す図である。
【0036】
このとき、動作部12の車両1の前方側の面の外観は、瞼を模して形成されているため、左眼球18の全ての部分が、動作部12によって覆われている状態となると、停留所で車両1を待っている園児等、車両用装飾具2の視認者に対し、動物の顔において左目が閉じている状態をイメージさせることが可能となる。
また、前側ストッパ36は、弾性材料によって形成されているため、変位部6が前側ストッパ36に接触した際に発生する騒音や衝撃が抑制され、車両1の乗員が感じる不快感を抑制することが可能となっている。
【0037】
変位部6が前側ストッパ36に接触すると、変位部6の変位方向が反転し、変位部6の位置が初期位置となるように、変位部6が変位し、各歯車24、26、28、30が回転して、動作部12が、左眼球18の、外部から視認可能な面積が増加する方向へ回転する。
そして、変位部6の位置が初期位置へ近づく、すなわち、変位部6の初期位置からの変位量が減少するにつれて、左眼球18の、外部から視認可能な面積が増加し、最終的には、変位部6が後側ストッパ38に接触し、変位部6の位置が初期位置となった状態で、図6(a)に示すように、左眼球18の全ての部分が、動作部12によって覆われてない状態となる。
【0038】
このとき、車両用装飾具2の視認者は、左眼球18の全ての部分が動作部12によって覆われている状態と、左眼球18の全ての部分が動作部12によって覆われてない状態の変化を、連続的に視認することとなる。このため、車両用装飾具2の視認者に対して、動物の顔において左目が瞬き(ウィンク)している状態をイメージさせることが可能となる。
【0039】
また、後側ストッパ38は、前側ストッパ36と同様、弾性材料によって形成されているため、変位部6が後側ストッパ38に接触した際に発生する騒音や衝撃が抑制され、車両1の乗員が感じる不快感を抑制することが可能となっている。
初期位置から変位して前側ストッパ36に接触し、変位方向が反転して再び初期位置へ戻る変位部6に作用している慣性力が、所定の慣性力を超えている場合、変位部6は、初期位置から前側ストッパ36へ向けて変位する。
【0040】
一方、車両1が停車した場合等、変位部6に作用している慣性力が減少して、所定の慣性力未満となった場合は、初期位置保持手段8によって、変位部6の位置が初期位置となるように、変位部6が変位する。そして、最終的には、変位部6の位置が初期位置に保持され、左目の状態は、図6(a)に示すように、左眼球18の全ての部分が、動作部12によって覆われてない状態に保持される。
【0041】
ここで、車両1を停車させる際、一般的に、車両1の操縦手は、複数回に分けてブレーキを操作して、徐々に車速を減少させるため、車両1の挙動は、複数回に亘って、走行状態から制動状態、または、制動状態から走行状態と変化する。
このため、車両1の操縦手が、車両1の挙動を走行状態から制動状態へと変化させた時点から、最終的に車両1が停車するまでの間には、複数回に亘り、車両用装飾具2の視認者に対して、動物の顔において左目が瞬きしている状態をイメージさせることが可能となる。
【0042】
したがって、本実施形態の車両1であれば、走行状態から制動状態への変化等、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力によって、変位部6の位置が、所定の初期位置から変位し、この変位部6の変位に応じて動作部12が回転することにより、装飾部4の外観が変化する。
このため、車両1の挙動変化に応じて、動作部12を回転させることが可能となり、アクチュエータや駆動力供給源を必要とせずに、また、車両1の操縦手が、スイッチの操作等、装飾部4の外観を変化させるための動作を行うことなく、装飾部4の外観を変化させることが可能となる。
【0043】
その結果、車両1の挙動変化に応じて、車両用装飾具2の視認者に対し、装飾部4が模している物の外観における、状態の変化をイメージさせることが可能となるため、装飾部4が模している物の状態の変化を、幅広く表現することが可能となる。
また、車両1の操縦手が、車両1の操縦における通常の動作を行うだけで、動作部12を装飾部4に対して動作させて、装飾部4の外観を変化させることが可能なるため、車両1の運行における安全性を確保することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態の車両1であれば、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が、所定の慣性力を超えていない場合、初期位置保持手段8によって、変位部6の位置が初期位置となるように、変位部6が変位する。
このため、所定の慣性力を調節することにより、動作部12の動作条件を設定することが可能となるため、車速や制動状態等、任意の条件下において、動作部12を動作させることが可能となる。
【0045】
さらに、本実施形態の車両1であれば、装飾部4の外観が動物の顔を模して形成されており、動作部12の外観が左目の瞼を模して形成されている。また、動作部12が、変位部6の変位に応じて動作することにより、装飾部4の外観が模している動物の顔に形成された左眼球18の、外部から視認可能な面積を変化させる位置に配置されている。
このため、車両1の挙動変化に応じて、車両用装飾具2の視認者に対し、動物の顔における、左目の瞬きの状態をイメージさせることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態の車両1であれば、装飾部4の、装飾部4が模している動物の顔において、口に該当する部分に、装飾部4と車体14の前面との間に形成される空間と、装飾部4の外部とを連通する空気取入口22が形成されている。
このため、装飾部4と車体14の前面との間に形成される空間の温度と、外気の温度との差が大きくなることが防止され、例えば、夏季等、高温環境下において、空間の温度が外気の温度よりも上昇して空間内の空気が膨張し、装飾部4に破損が生じることを防止することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態の車両1であれば、装飾部4が、車体14の前面へ取り付けられているため、車両1の視認者が、通常はストップランプが配置されていない車体14の前面側から、車両1を視認している場合であっても、車両1の挙動が走行状態から制動状態へと変化したことを、車両1の視認者に認識させることが可能となる。
なお、本実施形態の車両1では、装飾部4の外観を、動物の顔を模して形成したが、装飾部4の構成は、これに限定されるものではなく、装飾部4の外観を、例えば、人間の顔、昆虫や魚類の頭部、植物の花や葉の部分、アニメのキャラクター等を模して形成してもよい。また、装飾部4の外観を、例えば、動物の耳や尻尾を模して形成してもよい。
【0048】
ここで、装飾部4の外観を、動物の耳及び尻尾を模して形成した例を、図7に示す。
図7中に示されているように、動物の耳を模して形成した装飾部4bと、動物の尻尾を模して形成した装飾部4cは、共に、車体14の上面へ取り付けられている。すなわち、本実施形態の車両1のように、車両1の車体14において、装飾部4を取り付ける位置は、前面に限定されるものではない。なお、図7中では、車体14の前面に取り付けられた装飾部4、すなわち、動物の顔を模して外観を形成した装飾部4を、装飾部4aと記載している。
【0049】
また、本実施形態の車両1では、動作部12の車両1の前方側の面、すなわち、車両用装飾具2の視認者が視認可能な面の外観を、瞼を模して形成している。また、この動作部12を、動作部12が回転している状態で、装飾部4に形成されているスリット20を通過して、装飾部4が模している動物の左眼球18に該当する部分の、外部から視認可能な面積を変化させる位置に配置している。
【0050】
しかしながら、動作部12の構成は、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、動作部12の外観を、頬の少なくとも一部を模して形成し、この動作部12を、変位部6の変位に応じて動作することにより、装飾部4の外観が模している動物の顔に形成された頬の、少なくとも一部の外観を変化させる位置に配置してもよい。この場合、車両1の挙動変化に応じて、車両用装飾具2の視認者に対し、動物の顔における頬の上下動をイメージさせることが可能となるため、動物の顔における笑顔(スマイル)の状態をイメージさせることが可能となる。
【0051】
また、動作部12の外観としては、上記の頬の他にも、例えば、耳、尻尾、舌、手足等を模して形成してもよく、特に、装飾部4を人間の顔とした場合には、帽子や眼鏡等を模して形成してもよい。また、装飾部4を昆虫の頭部とした場合には、触覚等を模して形成してもよく、装飾部4を魚類の頭部とした場合には、エラ等を模して形成してもよく、装飾部4を植物とした場合には、花や葉の部分等を模して形成してもよい。
【0052】
さらに、本実施形態の車両1では、車両用装飾具2が備える動作部12の構成が、瞼を模して外観を形成した動作部12のみである場合について説明したが、動作部12の構成は、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、動作部12の構成を、瞼を模して外観を形成した動作部と、頬の少なくとも一部を模して外観を形成した動作部を備え、且つ、これらの動作部を、車両1の挙動変化に応じて動作させる変位部等の部材を備えた構成としてもよい。この場合、車両1の挙動変化に応じて、車両用装飾具2の視認者に対し、動物の顔における頬の上下動をイメージさせることが可能となるとともに、動物の顔における瞬きの状態をイメージさせることが可能となるため、動物の顔における笑顔の状態を、幅広くイメージさせることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の車両1では、初期位置保持手段8を備えた構成としたが、これに限定されるものではなく、初期位置保持手段8を備えていない構成としてもよい。もっとも、本実施形態の車両1のように、初期位置保持手段8を備えた構成とすることが、所定の慣性力を調節することにより、動作部12の動作条件を設定することが可能となるため、好適である。
【0054】
また、本実施形態の車両1では、変位量変換手段10の構成を、各歯車24、26、28、30を備えている構成としたが、変位量変換手段10の構成は、これに限定されるものではない。すなわち、変位量変換手段10の構成を、例えば、変位部6を、装飾部4に対して、その回転軸が車両1の前後方向に延在するように、回転自在に取り付け、変位部6の上端部に、動作部12を固定して、変位部6の変位量を、動作部12の回転量に変換する構成としてもよい。
【0055】
また、本実施形態の車両1では、変位部6の構成を、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力によって、第一平歯車24の周方向へ揺動することにより、所定の初期位置から変位する構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、リニアガイド装置やボールねじ装置等の直動案内装置が備える移動部によって、変位部6を構成し、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力によって直線移動することにより、所定の初期位置から変位する構成としてもよい。この場合、例えば、コイルばね等の弾性部材によって、初期位置保持手段を形成することが考えられる。
【0056】
また、本実施形態の車両1では、動作部12を、変位部6の位置が初期位置となっている状態で、左眼球18の全ての部分が、動作部12によって覆われてない状態に保持される位置に配置したが、これに限定されるものではない。すなわち、動作部12を、変位部6の位置が初期位置となっている状態で、左眼球18の全ての部分が、動作部12によって覆われている状態に保持される位置に配置してもよい。
【0057】
また、本実施形態の車両1では、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が所定の慣性力を超えていれば、その都度、変位部6が変位する構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、変位部6を、初期位置等、所望の位置で固定する固定機構を備えてもよい。この場合、例えば、高速道路における走行等、変位部6を変位させる必要が無い場合や、変位部6の変位が好ましく無い状況での走行において、変位部6が、前側ストッパ36や後側ストッパ38に対して付勢された状態で接触することを防止可能となる。このため、変位部6の損傷や、変位部6が前側ストッパ36や後側ストッパ38に接触した際に発生する騒音や衝撃が抑制されるため、好適である。
【0058】
また、本実施形態の車両1では、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力を、走行状態から制動状態への変化等、車両1の前後方向への挙動変化に応じて発生する慣性力としたが、これに限定されるものではない。すなわち、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力を、例えば、段差通過時等に発生すると考えられる、車両1の上下方向への挙動変化に応じて発生する慣性力としてもよく、また、操舵時等に発生すると考えられる、車両1の幅方向への挙動変化に応じて発生する慣性力としてもよい。
【0059】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
まず、図8及び図9を参照して、本実施形態の車両用装飾具を備えた車両(以下、「車両」と記載する)の構成を説明する。
図8は、車両1を車幅方向から見た図であり、本実施形態の車両1の構成を示す図である。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態と同様、一例として、車両1を、マイクロバスとした場合について説明する。
図8に示すように、本実施形態の車両1は、その前面に、車両用装飾具2を備えている。なお、図8中では、装飾部4を車体14の前面に取り付けた状態で、装飾部4の内側面と車体14の前面との間に形成される空間を、破線で示している。
【0060】
図9は、図8中に円IXで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
図8及び9中に示すように、本実施形態の車両1は、車両用装飾具2の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。
車両用装飾具2は、上述した第一実施形態と同様、装飾部4と、変位部6と、初期位置保持手段8と、変位量変換手段10と、動作部12を備えている。
装飾部4は、車体14の前面へ着脱可能に取り付けられて、車体14の前面のうち、装飾部4が取り付けられた部分を覆っており、装飾部4を車体14の前面に取り付けると、装飾部4の内側面と車体14の前面との間に空間が形成される。
【0061】
装飾部4の外観は、上述した第一実施形態と同様、動物の顔を模して形成されている。また、動物の顔において、左眼球に該当する部分は、連通口40と、後板42によって形成されている。
連通口40は、装飾部4を貫通しており、装飾部4の外部と、装飾部4の内側面と車体14の前面との間に形成された空間とを連通している。
後板42は、装飾部4の内側面と車体14の前面との間に形成された空間において、連通口40よりも車両1の後側に配置されており、その面積は、連通口40の開口面積よりも大きい。また、後板42の、車両1の前方から見て連通口40と重なる部分の外観は、動物の左眼球を模して形成されている。
【0062】
また、装飾部4の内側面と後板42との間には、動作部12が移動する隙間44が形成されており、この隙間44は、上方へ開口している。
変位部6は、上下方向に延在する棒状部材によって形成されており、中心付近に設けられた支点Pを、装飾部4へ、支点Pを中心として回転自在に支持されて、車体14の前面と装飾部4との間に形成された空間に配置されている。変位部6の上端には、後述する抗張力鋼線46が連結されており、変位部6の下端には、後述する錘48が結合されている。変位部6の回転軸は、車幅方向へ延在している。
【0063】
また、変位部6は、走行状態から制動状態への変化等、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力によって、回転軸の軸回りに揺動することにより、所定の初期位置から変位する。なお、図8及び図9中では、変位部6の位置が初期位置である状態を実線で示し、初期位置から変位した変位部6を、破線で示している。また、図9中では、変位部6が初期位置から変位する方向を、矢印Aによって示している。
【0064】
初期位置保持手段8は、錘48と、弾性部材50を備えており、変位部6と同様、車体14の前面と装飾部4との間に形成された空間に配置されている。
錘48は、上述した第一実施形態における初期位置保持手段8と同様、所定の質量となるように形成されており、この質量は、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が、所定の慣性力を超えていない場合に、変位部6の位置が初期位置となるような値に設定されている。
【0065】
弾性部材50は、例えば、伸縮方向を上下に向けて配置されたコイルスプリング等によって形成されており、上端側が動作部12に取り付けられ、下端側が装飾部4の内側面に固定されている。
弾性部材50の弾性力は、変位部6の位置が初期位置である場合に、動作部12の位置が、車両1の前方から見て連通口40よりも上方へ保持されるとともに、変位部6の位置が初期位置から変位するにつれて、動作部12の位置が、下方へ変位するような値に設定されている。
【0066】
変位部6の位置が初期位置であり、動作部12の位置が、車両1の前方から見て連通口40よりも上方へ保持されている状態では、後板42の、外観が動物の左眼球を模して形成されている全ての部分(以下、「左眼球形成部」と記載する)の、外部から視認可能な面積が最大となる。なお、図8及び図9中では、左眼球形成部の、外部から視認可能な面積が最大である状態を、実線で示している。
【0067】
一方、動作部12の位置が、変位部6の位置が初期位置から変位するにつれて、下方へ変位すると、変位部6の、初期位置からの変位量が増加するにつれて、左眼球形成部の、外部から視認可能な面積が減少する。
変位量変換手段10は、抗張力鋼線46と、ローラーガイド52を備えており、変位部6と同様、車体14の前面と装飾部4との間に形成された空間に配置されている。
【0068】
抗張力鋼線46は、例えば、ピアノ線等、所定の引っ張り強さを有するとともに、湾曲可能な線状部材によって構成されており、一方の端部が、変位部6の上端に連結され、他方の端部が、後述する突出部54に連結されている。なお、「所定の引っ張り強さ」は、変位部6が初期位置から変位して、抗張力鋼線46に抗張力が加わっても、両端部間の長さが殆ど変化しない値、すなわち、変位部6の変位量の大部分を、動作部12の動作量として変換可能な値であればよい。
【0069】
ローラーガイド52は、装飾部4へ回転自在に支持されており、その外周面に、抗張力鋼線46の両端部間が接触している。ローラーガイド52の回転軸は、車幅方向へ延在している。また、ローラーガイド52は、後板42の上端及び変位部6の上端よりも下方に配置されている。
動作部12は、装飾部4と別体で形成されており、露出部56と、支持部58を備えている。
露出部56は、その両面を、それぞれ、車両1の前後方向に向けて配置された略長方形の板状部材によって形成されており、支持部58の下端に結合されている。また、露出部56は、装飾部4の内側面と後板42との間に形成されている隙間44内において、上下方向へ移動可能に配置されている。
露出部56の車両1の前方側の面の外観は、瞼を模して形成されている。
【0070】
支持部58は、上下方向に延在する棒状部材によって形成されており、下端が露出部56に結合され、上端に車両1の後方へ突出する突出部54が固定されている。支持部58の上端と下端の間の部分には、この部分を囲むように弾性部材50が配置されており、支持部58の上端側において、突出部54よりも下方には、弾性部材50の上端側が、突出部54と接触した状態で配置されている。
【0071】
突出部54は、後板42よりも上方に配置されており、抗張力鋼線46の端部が連結されている。また、突出部54の、車両1の後方への突出量は、装飾部4の内側面と後板42との間に形成されている隙間44よりも大きい。
したがって、抗張力鋼線46の両端部間における、ローラーガイド52と突出部54との間の長さが減少すると、突出部54は、弾性部材50を収縮させながら下方へと移動する。そして、突出部54と共に支持部58も下方へ移動し、装飾部4の内側面と後板42との間に形成されている隙間44内において、露出部56が下方へと移動する。そして、変位部6の位置が初期位置から変位するにつれて、露出部56の下方への移動量(動作量)も増加する。
【0072】
また、支持部58の上下方向の長さは、変位部6の位置が初期位置からの変位に連動して露出部56が下方へ移動し、最終的な状態、すなわち、突出部54が後板42に接触した状態では、左眼球形成部の、外部から視認可能な面積が最小となる長さに設定されている。なお、図8及び図9中では、突出部54が後板42に接触した状態、すなわち、左眼球形成部の、外部から視認可能な面積が最小である状態を、破線で示している。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0073】
次に、図8及び図9に基づき、本実施形態の車両1の作用・効果等を説明する。なお、以下の説明では、車両用装飾具2以外の構成については、上述した第一実施形態と同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
車両1が停留所へ近づくと、車両1の操縦手は、ブレーキを操作して、車両1の挙動を走行状態から制動状態へと変化させる。
このとき、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が、所定の慣性力を超えていない状態では、変位部6の位置は、初期位置保持手段8によって、初期位置に保持される。この状態では、動作部12(露出部56)の位置が、車両1の前方から見て連通口40よりも上方へ保持されているため、左眼球形成部が、露出部56によって覆われてない状態となる。
【0074】
一方、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が、所定の慣性力を超えている状態では、この慣性力によって、変位部6が回転軸の軸回りに揺動して、変位部6の位置が初期位置から変位する。
変位部6の位置が初期位置から変位すると、変位部6の上端、すなわち、抗張力鋼線46の一方の端部が連結されている部分が、車両1の後方へ変位し、抗張力鋼線46の両端部間において、ローラーガイド52と変位部6の上端との間の長さが増加する。
【0075】
このとき、ローラーガイド52は、後板42の上端及び変位部6の上端よりも下方に配置されている。このため、抗張力鋼線46の両端部間における、ローラーガイド52と変位部6との間の長さが増加すると、抗張力鋼線46の両端部間における、ローラーガイド52と突出部54との間の長さが減少し、突出部54が、弾性部材50を収縮させながら下方へと移動する。
突出部54が下方へと移動すると、突出部54と共に支持部58も下方へと移動し、装飾部4の内側面と後板42との間に形成されている隙間44内において、露出部56が下方へと移動する。
【0076】
露出部56が下方へと移動すると、変位部6の初期位置からの変位量が増加するにつれて、露出部56の下方への移動量も増加し、左眼球形成部の、外部から視認可能な面積が減少する。
そして、最終的には、突出部54が後板42に接触し、左眼球形成部が、露出部56によって覆われている状態となる。
このとき、露出部56の車両1の前方側の面の外観は、瞼を模して形成されているため、左眼球形成部が、露出部56によって覆われている状態となると、停留所で車両1を待っている園児等、車両用装飾具2の視認者に対して、動物の顔において左目が閉じている状態をイメージさせることが可能となる。
【0077】
突出部54が後板42に接触すると、変位部6の変位方向が反転し、変位部6の位置が初期位置となるように、変位部6が変位し、装飾部4の内側面と後板42との間に形成されている隙間44内において、露出部56が上方へと移動する。
変位部6の位置が初期位置へ近づく、すなわち、変位部6の初期位置からの変位量が減少すると、左眼球形成部の、外部から視認可能な面積が増加する。
そして、最終的には、変位部6の位置が初期位置となった状態で、左眼球形成部が、露出部56によって覆われてない状態となる。
このとき、車両用装飾具2の視認者は、左眼球形成部が露出部56によって覆われている状態と、左眼球形成部が露出部56によって覆われてない状態の変化を、連続的に視認することとなる。このため、車両用装飾具2の視認者に対して、動物の顔において左目が瞬きしている状態をイメージさせることが可能となる。
【0078】
ここで、車両1が停車した場合等、変位部6に作用している慣性力が減少して、所定の慣性力未満となった場合は、初期位置保持手段8によって、変位部6の位置が初期位置となるように、変位部6が変位する。
そして、最終的には、変位部6の位置が初期位置に保持され、左眼球形成部が、露出部56によって覆われてない状態に保持される。
したがって、本実施形態の車両1であれば、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力によって、変位部6の位置が、所定の初期位置から変位し、この変位部6の変位に応じて、動作部12を構成する露出部56が上下方向へ移動し、装飾部4の外観が変化する。
また、車両1の挙動変化に応じて発生する慣性力が、所定の慣性力を超えていない場合に、初期位置保持手段8によって、変位部6の位置が初期位置となるように、変位部6が変位する。
【0079】
このため、車両1の挙動変化に応じて、露出部56を上下方向へ移動させることが可能となり、アクチュエータや駆動力供給源を必要とせずに、また、車両1の操縦手が、スイッチの操作等、装飾部4の外観を変化させるための動作を行うことなく、装飾部4の外観を変化させることが可能となる。
その結果、車両1の挙動変化に応じて、車両用装飾具2の視認者に対し、装飾部4が模している物の外観における、状態の変化をイメージさせることが可能となるため、装飾部4が模している物の状態の変化を、幅広く表現することが可能となる。
【0080】
また、本実施形態の車両1であれば、車両1の挙動変化に応じた変位部6の変位量を、動作部12を構成する露出部56の上下方向への移動量に変換することが可能となる。
このため、本実施形態のように、動作部12を構成する露出部56が、瞼のように上下方向へ移動する部位を模して形成されている場合に好適である。また、動作部12が、瞼の他にも、例えば、頬や唇等、上下方向へ移動する部位を模して形成されている場合に好適である。
【0081】
なお、本実施形態の車両1では、車両用装飾具2が備える変位量変換手段10が、変位部6の変位量を、動作部12の上下方向への移動量に変換する変位量変換手段10のみである場合を説明したが、車両用装飾具2の構成は、これに限定されるものではない。すなわち、車両用装飾具2の構成を、変位部6の変位量を、動作部12の上下方向への移動量に変換する変位量変換手段10を備えるとともに、上述した第一実施形態のような、変位部の変位量を、動作部の回転量として変換する構成の変位量変換手段を備えた構成としてもよい。この場合、例えば、変位部の変位量を、動作部の回転量として変換する構成の変位量変換手段によって、瞼を模して形成された動作部を動作させ、変位部の変位量を、動作部の上下方向への移動量に変換する変位量変換手段によって、頬を模して形成された動作部を動作させる構成とすればよい。
その他の作用・効果は、上述した第一実施形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第一実施形態の車両用装飾具を備えた車両を示す図である。
【図2】車両用装飾具の構成を示す図である。
【図3】変位部、初期位置保持手段、変位量変換手段、動作部の構成を示す図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】車両が幼稚園児を迎えに行く状態における、装飾部の外観を示す図である。
【図7】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【図8】本発明の第二実施形態の車両用装飾具を備えた車両を示す図である。
【図9】図8中に記載した円IX及びその周辺の拡大図である。
【符号の説明】
【0083】
1 車両
2 車両用装飾具
4 装飾部
6 変位部
8 初期位置保持手段
10 変位量変換手段
12 動作部
14 車体
16 ねじ孔
18 左眼球
20 スリット
22 空気取入口
24 第一平歯車
26 第二平歯車
28 第一傘歯車
30 第二傘歯車
32 歯車取付けブラケット
34 開口部
36 前側ストッパ
38 後側ストッパ
40 連通口
42 後板
44 隙間
46 抗張力鋼線
48 錘
50 弾性部材
52 ローラーガイド
54 突出部
56 露出部
58 支持部
P 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体外面へ取り付けられる装飾部を備えた車両用装飾具であって、
前記装飾部と別体で形成され、且つ前記装飾部に対して動作可能に配置される動作部と、
前記車両の挙動変化に応じて発生する慣性力によって所定の初期位置から変位する変位部と、
前記変位部の変位量を前記動作部の動作量に変換する変位量変換手段と、を備え、
前記動作部は、前記装飾部に対して動作することにより装飾部の外観を変化させることを特徴とする車両用装飾具。
【請求項2】
前記車両の挙動変化に応じて発生する慣性力が所定の慣性力を超えていない場合に、前記変位部の位置が前記初期位置となるように変位部を変位させる初期位置保持手段を備えることを特徴とする請求項1に記載した車両用装飾具。
【請求項3】
前記装飾部の外観は、動物の顔を模して形成されており、
前記動作部の外観は、前記動物の顔の一部を模して形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載した車両用装飾具。
【請求項4】
前記動作部の外観は、瞼を模して形成されており、
前記動作部は、前記装飾部に対して動作することにより、前記装飾部の外観が模している動物の顔に形成された眼球部の、外部から視認可能な面積を変化させることを特徴とする請求項3に記載した車両用装飾具。
【請求項5】
前記動作部の外観は、頬の少なくとも一部を模して形成されており、
前記動作部は、前記装飾部に対して動作することにより、前記装飾部の外観が模している動物の顔に形成された頬の、少なくとも一部の外観を変化させることを特徴とする請求項3または4に記載した車両用装飾具。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか1項に記載した車両用装飾具を備えたことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−265449(P2008−265449A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109112(P2007−109112)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(502204610)株式会社テクノファースト (1)
【Fターム(参考)】