説明

車両用計器

【課題】バリエーション数を削減できる車両用計器を提供する。
【解決手段】通信プロトコルに従った通信により車両情報を入力可能な通信インターフェイス回路50と、センサ類からの検出信号に基づいて車両情報を入力可能なインターフェイス回路41〜44と、通信によって取得される通信情報に基づいて、通信インターフェイス回路50又はインターフェイス回路41〜44のいずれを介して車両情報が取得されるかを判別する手段と、車両情報が通信インターフェイス回路50を介して取得されると判別された場合には、通信インターフェイス回路50を介して車両情報を取得する手段と、車両情報がインターフェイス回路41〜44を介して取得されると判断された場合には、インターフェイス回路41〜44を介して車両情報を取得する手段と、取得した車両情報に基づいて表示部を制御する手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用計器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載される従来の車両用計器が開示されている。この車両用計器は、他の制御装置から多重通信により車速等の車両情報を取得し、取得した車両情報に基づいて表示を制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−81589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、各種車両情報の供給元となる制御装置の有無や制御装置の通信対応の有無は、車種やグレード、仕向地等に応じて異なる。例えば、多重通信に対応したアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)制御装置を備えた車両では、車両用計器は、多重通信によりABS制御装置から車速情報を取得できる。ところが、ABS制御装置を備えない車両や、多重通信に対応していないABS制御装置を備えた車両では、車両用計器は、車速センサ又はABS制御装置から供給されるパルス信号をインターフェイス回路を介して受信し、受信したパルス信号を用いた演算により車速情報を取得する必要がある。したがって、各種車両情報のそれぞれを多重通信により取得できるか否かによって車両用計器のハード及びソフトを変更する必要があるため、車両用計器のバリエーション数が多くなってしまうという問題が生じていた。
【0005】
本発明の目的は、バリエーション数を削減できる車両用計器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載の発明は、表示部を備えた車両用計器であって、所定の通信プロトコルに従った通信により車両情報を入力可能な第1インターフェイスと、通信プロトコルに従わずに車両情報を入力可能な第2インターフェイスと、通信によって取得される通信情報に基づいて、第1インターフェイス又は第2インターフェイスのいずれを介して車両情報が取得されるかを判別する判別手段と、判別手段において、車両情報が第1インターフェイスを介して取得されると判別された場合には、第1インターフェイスを介して車両情報を取得する第1情報取得手段と、判別手段において、車両情報が第2インターフェイスを介して取得されると判断された場合には、第2インターフェイスを介して車両情報を取得する第2情報取得手段と、取得した車両情報に基づいて表示部を制御する表示制御手段とを有することを特徴とする車両用計器である。
【0008】
これにより、車両情報は第1インターフェイス及び第2インターフェイスのいずれを介しても取得可能になり、当該車両情報が実際に第1インターフェイス又は第2インターフェイスのいずれを介して取得されるかは、判別手段によって通信情報に基づき判別されるようになる。したがって、車両用計器への車両情報の供給手段が異なっても車両用計器を共通化できるため、車両用計器のバリエーション数を削減できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、判別手段は、必要な車両情報のうち第1インターフェイスを介して取得される車両情報を通信情報に基づいて特定し、残余の車両情報を第2インターフェイスを介して取得される車両情報と判断することを特徴としている。
【0010】
これにより、一方のインターフェイスを介して取得される通信情報に基づいて、第1インターフェイス又は第2インターフェイスのいずれを介して車両情報が取得されるかを容易に判別することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明のように、例えば第1インターフェイスは、通信ネットワークを介して接続された他の制御装置との通信により車両情報を入力可能である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、他の制御装置の異常を通信情報に基づいて判断して警告する異常警告手段をさらに有することを特徴としている。
【0013】
これにより、通信ネットワークに接続された他の制御装置の異常を使用者に対し認識させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、異常警告手段は、通信ネットワーク上の他の制御装置の接続状態を表す接続ノード情報と、予め設定された比較対象ノード情報とを比較し、比較結果に基づいて他の制御装置の異常を判断することを特徴としている。
【0015】
これにより、通信ネットワーク上の他の制御装置の異常を容易に判断することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、比較対象ノード情報は、初回起動時の接続ノード情報であることを特徴としている。
【0017】
これにより、他の制御装置の異常を判断するための比較対象ノード情報を容易に設定することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明のように、例えば第2インターフェイスは、センサ類から入力される検出信号に基づいて車両情報を入力可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態における車両用計器の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態における車両用計器の動作を示す状態遷移図である。
【図3】車両用計器が取得する情報の一例を示す図である。
【図4】異常警告制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】照明制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【図6】スピードメータ制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【図7】水温計制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【図8】バリエーション数削減効果の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1乃至図8を用いて説明する。図1は、本実施形態における車両用計器の構成を示すブロック図である。図1に示すように、車両用計器1は、車両情報に基づく指示値を表示する表示部として、車速を表示するスピードメータ10、エンジン回転数を表示するタコメータ11、残存燃料量を表示する燃料計12、及びエンジン冷却水の水温を表示する水温計13を有している。スピードメータ10、タコメータ11、燃料計12及び水温計13は、例えば、目盛の配置された文字板上を回動して指示値を指し示す指針と、指針を回動させるパルスモータとをそれぞれ備えた指針計器である。各指針計器は、入力されるパルス状の制御信号に応じてパルスモータが所定の回動角度で回動し、指針の指示角度が調節されることによって指示値を表示するようになっている。
【0021】
また車両用計器1は、累積走行距離や区間走行距離を表示するオド/トリップメータ14を表示部として有している。オド/トリップメータ14は、例えば、セグメント型の液晶表示パネルを備えている。オド/トリップメータ14は、入力される表示信号に基づいて液晶への印加電圧をセグメント毎に調節し、背後に設けられたバックライト装置からの照明光の透過率をセグメント毎に制御することによって指示値をデジタル表示するようになっている。
【0022】
さらに車両用計器1は、各種車両状態に基づきそれぞれ所定の点灯色で点灯又は点滅する複数のインジケータ15を表示部として有している。各インジケータは、可視光に対して透明な透明樹脂板と、透明樹脂板の背後に配置された光源部とを有している。透明樹脂板には、所定のシンボルマーク又は文字形状で開口された遮光印刷が施されている。光源部は、電圧印加により白色光を発する発光ダイオード(LED)と、特定色の波長光を透過させるカラーフィルタ部材とにより構成されているか、又は電圧印加により特定色の光を発するLEDにより構成されている。これにより各表示灯は、所定の点灯色で所定のシンボルマーク形状や文字形状に点灯又は点滅するようになっている。
【0023】
スピードメータ10、タコメータ11、燃料計12、水温計13、オド/トリップメータ14及び複数のインジケータ15は、車両の車室内の前方に配置されたインストルメントパネルに、コンビネーションメータとして設けられている。
【0024】
また車両用計器1は、スピードメータ10、タコメータ11、燃料計12及び水温計13等を夜間等に照明するための照明回路20を有している。
【0025】
さらに車両用計器1は、スピードメータ10、タコメータ11、燃料計12、水温計13、オド/トリップメータ14及び複数のインジケータ15等の表示、並びに照明回路20の照明を制御するマイコン30を有している。マイコン30は、制御プログラム等を格納するROMと、ROM内の制御プログラムを実行するCPUと、制御プログラム実行中に得られるデータを一時的に記憶するRAMと、外部との間でデータの入出力を行う入出力ポートとを備えている(図1では入力ポートP1、P2、P3、P4のみを示している)。本例では、入力ポートP3はA/D変換器に接続されており、アナログ入力が可能になっている。
【0026】
また車両用計器1は、マイコン30の外部に設けられたEEPROM31を有している。EEPROM31は、書換え可能な不揮発性メモリであり、マイコン30の制御によるデータの書込み及び読出しが可能になっている。EEPROM31には、累積走行距離及び区間走行距離等の積算データや車両用計器1のバリエーション情報等のその他のデータが格納されている。
【0027】
さらに車両用計器1は、所定の通信プロトコル(例えばCAN)に従った通信により他の制御装置から車両情報を入力可能な通信インターフェイス回路(第1インターフェイス)50を有している。通信インターフェイス回路50は、通信ネットワーク(車内LAN)を介して、ABS制御装置(ABS_ECU)110、エンジン制御装置(ENG_ECU)111及びボデー制御装置(ボデーECU)112等の他の制御装置に接続されている。
【0028】
車両用計器1は、ABS制御装置110、エンジン制御装置111及びボデー制御装置112等から所定の車両情報を通信により取得できるようになっている。例えば、車速情報や走行距離情報は、通信ネットワークを介したABS制御装置110や横滑り防止機構制御装置(図示せず)との通信により取得される。エンジン回転数情報や水温情報は、通信ネットワークを介したエンジン制御装置111との通信により取得される。照明情報は、例えば車両のテールランプが点灯状態にあるか消灯状態にあるかを表す情報であり、通信ネットワークを介したボデー制御装置112との通信により取得される。
【0029】
ただし、ABS制御装置110、エンジン制御装置111及びボデー制御装置112の有無やこれらの通信対応の有無は、車両の車種やグレード、仕向地等に応じて異なる場合がある。したがって、制御装置110、111、112の有無及びこれらの通信対応の有無によっては、車速情報、走行距離情報、エンジン回転数情報、水温情報及び照明情報等は、通信プロトコルに従った通信によって取得できないことがある。
【0030】
車両用計器1には、各種センサ類100から直接入力される検出信号に基づいて車両情報を入力可能な複数のインターフェイス回路(第2インターフェイス)が設けられている。図1では、入力ポートP1、P2、P3、P4にそれぞれ対応する4つのインターフェイス回路41、42、43、44のみを示している。各インターフェイス回路41、42、43、44には、車両の仕様に応じて必要な各種センサ類100が電気配線を介して接続される。これにより車両用計器1は、センサ類100からの検出信号を通信プロトコルに従わずに取得できるようになっている。
【0031】
インターフェイス回路41、42、43、44に接続され得るセンサ類100としては、車速を検出する車速検出手段101、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段102、エンジン冷却水の水温を検出する水温センダ103、テールランプの点消灯を検出する照明検出手段104等がある。車両の仕様によっては、インターフェイス回路41、42、43、44の一部又は全てに、センサ類100からの電気配線が接続されないことがあり得る。
【0032】
車速検出手段101は、例えば車速センサや通信非対応のABS制御装置である。車速検出手段101からは、車速に応じたパルス信号がインターフェイス回路41に出力される。車両用計器1のマイコン30は、インターフェイス回路41を介して入力されるパルス信号を用いた演算により車速情報や走行距離情報を取得する制御プログラムをROM内に有している。
【0033】
エンジン回転数検出手段102からは、エンジン回転数に応じたパルス信号がインターフェイス回路42に出力される。車両用計器1のマイコン30は、インターフェイス回路42を介して入力するパルス信号を用いた演算によりエンジン回転数情報を取得する制御プログラムをROM内に有している。
【0034】
水温センダ103からは、エンジン冷却水の水温に応じたアナログ信号がインターフェイス回路43に出力される。車両用計器1のマイコン30は、インターフェイス回路43を介して入力するアナログ信号を用いた演算により水温情報を取得する制御プログラムをROM内に有している。
【0035】
照明検出手段104からは、テールランプ等の点消灯に応じた電圧レベル(H/L)の信号がインターフェイス回路44に出力される。車両用計器1のマイコン30は、インターフェイス回路44を介して入力する信号に基づいて照明情報を取得する制御プログラムをROM内に有している。
【0036】
このように車両用計器1は、ハード及びソフトの双方において、各種車両情報のそれぞれを通信インターフェイス回路50及びインターフェイス回路41、42、43、44のいずれを介しても取得できるようになっている。実際に各種車両情報のそれぞれを通信インターフェイス回路50を介して取得するかインターフェイス回路41、42、43、44を介して取得するかは、後述するように通信情報に基づいて判別されるようになっている。
【0037】
次に、本実施形態の車両用計器の動作について説明する。図2は、車両用計器1の動作を示す状態遷移図である。図2に示すように、車両のイグニッション・スイッチがオフ状態にあるときには、車両用計器1は停止状態(ステップS100)にある。使用者のスイッチ操作によりイグニッション・スイッチがオン状態に切り替えられると、イグニッション電源からの電力が車両用計器1に供給され、マイコン30が起動する(ステップS200)。
【0038】
ステップS200では、まずマイコン30は、RAM内のフラグ記憶領域に設定されたフラグを消去する(ステップS210)。本例ではフラグとして、車速情報に関するフラグFSP、水温情報に関するフラグFTEMP、エンジン回転数情報に関するフラグFTA、及び照明情報に関するフラグFTAILを例示している(FSP、FTEMP、FTA、FTAIL←0)。
【0039】
次に、マイコン30は、通信によって取得できる車両情報の特定を行う(ステップS220)。ステップS220では、まずマイコン30は、所定の通信プロトコルに従って通信ネットワークを介した通信を開始する(ステップS230)。マイコン30は、通信の初期に受信する各制御装置の識別情報(ID)等のデータに基づき、通信ネットワーク上の制御装置の接続状態を表す接続ノード情報を取得する。接続ノード情報には、通信ネットワークに接続された全ての制御装置の識別情報が含まれる。またマイコン30は、通信ネットワーク上の各制御装置からの受信データに基づき、通信により取得可能な車両情報を認識する。この取得可能な車両情報は、通信初期の受信データに基づいて認識できるようになっていてもよいし、当該車両情報の実データを受信することによって認識するようになっていてもよい。
【0040】
図3は、マイコン30が通信によって取得する通信情報の一例を示している。図3に示すように、マイコン30は、通信ネットワークにABS制御装置110(ID=01)、エンジン制御装置111(ID=02)及びボデー制御装置112(ID=03)が接続されていることと、ABS制御装置110から車速情報及び走行距離情報が取得できることと、エンジン制御装置111からエンジン回転数情報、水温情報の有無の情報、水温情報及び気筒数情報が取得できることと、ボデー制御装置112から照明情報が取得できることとを通信情報に基づいて認識できる。
【0041】
図2に戻り、マイコン30は、受信データにID=01が含まれていれば、車速情報に関するフラグFSPをRAMのフラグ記憶領域に設定する(FSP=1;ステップS240)。またマイコン30は、受信データにID=02が含まれていれば、エンジン回転数情報に関するフラグFTAを設定し(FTA=1;ステップS250)、さらに水温情報の有無の情報が「有」であれば水温情報に関するフラグFTEMPを設定し(FTEMP=1;ステップS270)、水温情報の有無の情報が「無」であればフラグFTEMPを消去する(FTEMP=0;ステップS280)。またマイコン30は、受信データにID=03が含まれていれば、照明情報に関するフラグFTAILを設定する(FTAIL=1;ステップS260)。
【0042】
次に、マイコン30は、通信開始から所定時間(例えば0.5s)経過したら、通信ネットワーク上の各制御装置の通信異常を検出して警告する異常警告制御を行う(ステップS300)。
【0043】
図4は、ステップS300における異常警告制御の流れの一例を示すフローチャートである。図4に示すように、まずマイコン30は、車両用計器1の起動が、常時電源(例:バッテリー接続)からの電力の供給が開始されてから初回の起動(イグニッション投入)であるか否かを判断する(ステップS301)。初回の起動(バッテリー接続から初回のイグニッション投入)であれば、マイコン30は、ステップS230で取得した接続ノード情報を比較対象ノード情報としてEEPROM31等の不揮発性メモリに記憶し(ステップS302)、図2のステップS400に進む。
【0044】
一方、初回の起動でなければ、マイコン30は、不揮発性メモリから比較対象ノード情報を読み出し、読み出した比較対象ノード情報とステップS230で取得した現在の接続ノード情報とを比較する(ステップS303)。接続ノード情報と比較対象ノード情報とが一致していれば(ステップS304)、そのまま図2のステップS400に進む。接続ノード情報と比較対象ノード情報とが一致していなければ、マイコン30は、比較対象ノード情報に含まれて接続ノード情報に含まれない識別情報を特定し、当該識別情報に対応する制御装置が通信異常の状態にあると判断して、所定の警告処理を行う(ステップS305;異常警告手段)。警告処理としては、例えば、インジケータの点灯又は点滅処理や、通信異常の制御装置に関連するメータ照明の点滅処理等がある。
【0045】
図2のステップS400(表示制御手段)では、マイコン30は、表示部の表示を制御する通常の表示制御を行う。すなわち、照明回路20を制御する照明制御(ステップS410)、スピードメータ10を制御するスピードメータ制御(ステップS420)、タコメータ11を制御するタコメータ制御(ステップS430)、燃料計12を制御する燃料計制御(ステップS440)、水温計13を制御する水温計制御(ステップS450)、オド/トリップメータ14を制御するオド/トリップメータ制御(ステップS460)、及び各種インジケータ15を制御するインジケータ制御(ステップS470)が行われる。以下、照明制御(ステップS410)、スピードメータ制御(ステップS420)及び水温計制御(ステップS450)を例に挙げて各制御の流れについて説明する。
【0046】
図5は、ステップS410の照明制御の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示すように、マイコン30は、RAMのフラグ記憶領域におけるフラグFTAILの有無を判断する(ステップS411;判別手段)。フラグFTAILがあれば、マイコン30は、照明情報DILLが通信インターフェイス回路50を介して取得されると判別し、照明情報DILLを通信により取得する(ステップS412;第1情報取得手段)。ここで照明情報DILLは、例えばテールランプが点灯状態にあることを「1」で表し、テールランプが消灯状態にあることを「0」で表す情報である。
【0047】
一方、フラグFTAILがなければ、マイコン30は、照明情報DILLが通信インターフェイス回路50を介して取得できない、すなわち照明情報DILLはインターフェイス回路44を介して取得されると判別する。マイコン30は、インターフェイス回路44を介して入力される入力ポートP4の入力信号を読み込み、入力信号の電圧レベルに基づいた演算により照明情報DILLを取得する(ステップS413;第2情報取得手段)。
【0048】
ステップS414では、取得した照明情報DILLが「1」であるか「0」であるかを判定する。照明情報DILLが「1」であれば、照明点灯モードに遷移し(ステップS415)、照明回路20を駆動して車両用計器1のメータ類を照明する。一方、照明情報DILLが「0」であれば、照明消灯モードに遷移し(ステップS416)、照明回路20によるメータ類の照明を停止する。
【0049】
図6は、図2のステップS420のスピードメータ制御の流れの一例を示すフローチャートである。図6に示すように、マイコン30は、RAMのフラグ記憶領域におけるフラグFSPの有無を判断する(ステップS421;判別手段)。フラグFSPがあれば、マイコン30は、車速情報が通信インターフェイス回路50を介して取得されると判別し、車速情報を通信により取得する(ステップS422;第1情報取得手段)。その後、ステップS425に進む。
【0050】
一方、フラグFSPがなければ、マイコン30は、車速情報が通信インターフェイス回路50を介して取得できない、すなわち車速情報はインターフェイス回路41を介して取得されると判別する。マイコン30は、インターフェイス回路41を介して入力される入力ポートP1の入力パルス信号の周期Tspを計測し(ステップS423)、周期Tspを用いた演算により車速情報を取得する(ステップS424;第2情報取得手段)。その後、ステップS425に進む。
【0051】
ステップS425では、マイコン30は、取得した車速情報とEEPROM31内に格納されたバリエーション情報とに基づいてスピードメータ10の指針角度を決定し、スピードメータ10のパルスモータに所定の制御信号を出力する車速表示処理を行う。これによりスピードメータ10では、パルスモータの回動によって指針が指示値を指し示し、車速が表示される。
【0052】
図7は、図2のステップS450の水温計制御の流れの一例を示すフローチャートである。図7に示すように、マイコン30は、RAMのフラグ記憶領域におけるフラグFTEMPの有無を判断する(ステップS451;判別手段)。フラグFTEMPがあれば、マイコン30は、水温情報が通信インターフェイス回路50を介して取得されると判別し、水温情報を通信により取得する(ステップS452;第1情報取得手段)。その後、ステップS455に進む。
【0053】
一方、フラグFTEMPがなければ、マイコン30は、水温情報が通信インターフェイス回路50を介して取得できない、すなわち水温情報はインターフェイス回路43を介して取得されると判別する。マイコン30は、インターフェイス回路43を介して入力されてA/D変換された入力ポートP3の水温信号TADを読み込み(ステップS453)、水温信号TADを用いた演算により水温情報を取得する(ステップS454;第2情報取得手段)。その後、ステップS455に進む。
【0054】
ステップS455では、マイコン30は、水温計13の指示値を安定化するために、瞬時値として繰り返し取得される複数の水温情報を所定の時間幅で平均化する処理を行う。マイコン30は、平均化処理が完了するまでは水温計13の表示更新を行わず(ステップS456)、平均化処理が完了したら、平均化された水温情報とバリエーション情報とに基づいて水温計13の指針角度を決定し、水温計13のパルスモータに所定の制御信号を出力する表示更新処理を行う(ステップS457)。これにより水温計13では、パルスモータの回動によって指針が指示値を指し示し、水温が表示される。
【0055】
ステップS400の照明制御(ステップS400)、スピードメータ制御(ステップS420)、タコメータ制御(ステップS430)、燃料計制御(ステップS440)、水温計制御(ステップS450)、オド/トリップメータ制御(ステップS460)及びインジケータ制御(ステップS470)は、使用者のスイッチ操作によりイグニッション・スイッチがオフ状態に切り替えられてイグニッション電源からの電力供給が停止するまで順次繰り返される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の車両用計器1は、ハード及びソフトの双方において、各車両情報のそれぞれを通信インターフェイス回路50及びインターフェイス回路41、42、43、44のいずれを介しても取得可能になっている。各車両情報が実際に通信インターフェイス回路50又はインターフェイス回路41、42、43、44のいずれを介して取得されるかは、通信インターフェイス回路50を介して受信する通信情報に基づいて判別されるようになっている。このため、車両用計器への各車両情報の情報供給手段が車種やグレード、仕向地等に応じて異なる場合であっても、車両用計器を共通化することができる。したがって本実施形態によれば、車両用計器のバリエーション数や品番数を削減できる。
【0057】
図8は、本実施形態によるバリエーション数削減効果の一例を説明する図である。図8に示すように、車両用計器への車速情報の情報供給手段が、車種やグレード、仕向地等に応じて、センサ類からの検出信号と通信ネットワーク(CAN)を介した通信との2種類存在するものとする。また、水温情報の情報供給手段が、同様にセンサ類からの検出信号と通信ネットワークを介した通信との2種類存在し、照明情報の情報供給手段が照明検出手段からの検出信号と通信ネットワークを介した通信との2種類存在するものとする。車両用計器の表示部の意匠は共通であるものとする。
【0058】
従来の車両用計器では、表示部の意匠が共通であっても、各種車両情報の情報供給手段の組合せによって例えば5つのバリエーション101〜105が必要であった。これに対し、本実施形態では、表示部の意匠が共通であれば、情報供給手段が異なっても車両用計器のマイコンをハード及びソフトのいずれにおいても共通化できるため、バリエーション数(品番数)を1つとすることができる。
【0059】
また本実施形態によれば、車両用計器の共通化を進めることができるため、車両用計器の組付け工程における誤組付けを低減できるとともに、車両用計器の在庫管理を容易化できる。
【0060】
さらに本実施形態では、マイコン30が、必要な車両情報のうち通信インターフェイス回路50を介して取得される車両情報を通信情報に基づいて特定し、残りの車両情報をインターフェイス回路41、42、43、44を介して取得される車両情報と判断している。このため、車両情報のそれぞれが通信インターフェイス回路50又はインターフェイス回路41、42、43、44のいずれを介して取得されるかを容易に判別できる。
【0061】
また本実施形態では、マイコン30が、通信ネットワークに接続された他の制御装置の異常を通信情報に基づいて判断し、所定の警告処理を行うようになっている。したがって、他の制御装置の異常を使用者に対し認識させることができる。
【0062】
さらに本実施形態では、接続ノード情報と予め設定された比較対象ノード情報との比較により、他の制御装置の異常を判断している。したがって、他の制御装置の異常を容易に判断することができる。
【0063】
また本実施形態では、常時電源からの電力供給が開始されてから初回の起動時の接続ノード情報を比較対象ノード情報として用いている。したがって、比較対象ノード情報を容易に設定することができる。
【0064】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、初回起動時の接続ノード情報を比較対象ノード情報として不揮発性メモリ内に記憶する例を挙げたが、比較対象ノード情報は、初回起動時以外の接続ノード情報であってもよいし、車両用計器の組付け前に不揮発性メモリ内に予め書き込まれた情報であってもよい。
【0065】
また上記実施形態では、センサ類からの検出信号が直接入力されるインターフェイス回路41、42、43、44を第2インターフェイスの例に挙げたが、第2インターフェイスは、通信インターフェイス回路50とは異なる通信プロトコルで通信を行うインターフェイス回路であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 車両用計器
30 マイコン
41、42、43、44 インターフェイス回路(第2インターフェイス)
50 通信インターフェイス回路(第1インターフェイス)
100 センサ類
101 車速検出手段
102 エンジン回転数検出手段
103 水温センダ
104 照明検出手段
110 ABS制御装置
111 エンジン制御装置
112 ボデー制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を備えた車両用計器であって、
所定の通信プロトコルに従った通信により車両情報を入力可能な第1インターフェイスと、
前記通信プロトコルに従わずに前記車両情報を入力可能な第2インターフェイスと、
前記通信によって取得される通信情報に基づいて、前記第1インターフェイス又は前記第2インターフェイスのいずれを介して前記車両情報が取得されるかを判別する判別手段と、
前記判別手段において、前記車両情報が前記第1インターフェイスを介して取得されると判別された場合には、前記第1インターフェイスを介して前記車両情報を取得する第1情報取得手段と、
前記判別手段において、前記車両情報が前記第2インターフェイスを介して取得されると判断された場合には、前記第2インターフェイスを介して前記車両情報を取得する第2情報取得手段と、
取得した前記車両情報に基づいて前記表示部を制御する表示制御手段とを有することを特徴とする車両用計器。
【請求項2】
前記判別手段は、必要な車両情報のうち前記第1インターフェイスを介して取得される車両情報を前記通信情報に基づいて特定し、残余の車両情報を前記第2インターフェイスを介して取得される車両情報と判断することを特徴とする請求項1に記載の車両用計器。
【請求項3】
前記第1インターフェイスは、通信ネットワークを介して接続された他の制御装置との通信により前記車両情報を入力可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用計器。
【請求項4】
前記他の制御装置の異常を前記通信情報に基づいて判断して警告する異常警告手段をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の車両用計器。
【請求項5】
前記異常警告手段は、前記通信ネットワーク上の前記他の制御装置の接続状態を表す接続ノード情報と、予め設定された比較対象ノード情報とを比較し、比較結果に基づいて前記他の制御装置の異常を判断することを特徴とする請求項4に記載の車両用計器。
【請求項6】
前記比較対象ノード情報は、初回起動時に取得した接続ノード情報であることを特徴とする請求項5に記載の車両用計器。
【請求項7】
前記第2インターフェイスは、センサ類から入力される検出信号に基づいて前記車両情報を入力可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の車両用計器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−195216(P2010−195216A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42900(P2009−42900)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】