説明

車両用運転支援装置

【課題】カーナビゲーション装置が搭載されていない車両であっても、合流車線から走行車線に進入する等の進路変更のタイミングを自動的に支援することができるようにする。
【解決手段】運転者がターンシグナルスイッチ5をONして進路変更の意思を示すと、進路変更したい側の車線を走行する車両を認識カメラ(1〜3)で撮像した画像に基づいて検出し、車両間の割込みスペースを算出し(S4,S5)、自車両Mの車速Sと割込みスペースの移動速度との速度差に基づいて自車両Mの進入開始時間Tstを求め、この進入開始時間Tstに達したとき、指示表示部22から進路変更の開始を知らせる音声ガイドを出力する(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両を進路変更するに際し、進路変更する側の車線に自車両の割込みスペースを設定し、この割込みスペースに自車両を進入させる進入開始時間を求め、進入開始時間に達したとき、進入開始指示信号を指示表示部に出力して、運転者に進路変更のための操舵開始を知らせるようにした車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路走行において、合流車線から走行車線に進入する際、走行車線から追越車線に進路変更する際、及び追越車線から走行車線へ戻る際等の進路変更に際し、運転者は、前方を注視しながら、サイドミラー(ドアミラーやフェンダミラー)、及びルームミラーから得られる情報に基づいて、進路変更する側の車線の道路走行状況を把握し、スムーズに進路変更して、当該車線に割り込むための車速、及び、進路変更の開始タイミング(操舵開始タイミング)を設定するようにしている。しかし、運転者が前方を注視した状態で、これら一連の操作を行うことは、ある程度の熟練を必要とし、初心者では難しく、高速道路の運転を敬遠する理由ともなっている。
【0003】
そのため、初心者でも容易に高速道路での進路変更を行えるようにした運転支援装置が種々提案されている。例えば、特許文献1(特開2008−222153号公報)には、自車両を合流車線から走行車線に進入させるに際し、ドアミラーに設けた後方カメラにて、走行車線の領域内に位置する他車両の状況(自車両からの距離、車両長さ、車速、加速度等)を検出して空きスペースを算出し、この空きスペースが自車両を割り込ませるだけの充分な長さを有し、且つ、過度な加速を行うことなく到達可能と判定した場合、空きスペースを合流位置として特定し、この合流位置をドアミラーに表示させることで、運転者に自車両を割り込ませるタイミングを正確に把握させるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−222153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、ドアミラーに合流位置を示す画像を映し出すための装置を必要とするため、特殊な構造のドアミラーが必要となり、汎用性に欠けるばかりでなく、製品コストが高くなる問題がある。
【0006】
又、高速道路を運転するに際し、合流車線から走行車線に自車両を進入させる状況以外に、となりの車線に進路変更したい場合や、走行車線から追越車線に進路変更したり、追越車線から走行車線に戻る状況でも、そのタイミングの判断が初心者では難しく、このような状況において運転支援が行えれば便利な場合が多い。
【0007】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、合流支援対象エリアをカーナビゲーション装置によってGPSからの位置情報と地図データとのマップマッチングにより判定し、合流支援対象エリアと判定した場合に、走行車線の状況を自動的に検出させるようにしているため、GPSが搭載されてない車両に適用することができないばかりか、自車両を合流車線から走行車線に進入させる状況以外では利用することができず、利便性に欠ける問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、サイドミラーやルームミラーは従来の製品をそのまま使用することができ、更に、カーナビゲーション装置が搭載されていない車両であっても、進路変更のタイミングを自動的に支援することができて、高い汎用性を得ることのできる車輌用運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、進路変更の際に操作するターンシグナルスイッチと、自車両周囲の道路走行状況を撮像する走行状況撮像手段と、前記自車両の車速を検出する車速検出手段と、進路変更の開始タイミング及び進路変更時の指示車速を設定する演算手段とを有する車両用運転支援装置において、前記演算手段は、前記ターンシグナルスイッチがオンされたとき該ターンシグナルスイッチの右折スイッチと左折スイッチとの何れがオンされたかを調べ、オンされた側の車線を走行する車両の走行状況を前記走行状況撮像手段で撮像した道路走行状況に基づいて検出すると共に該道路走行状況の検出結果に基づいて割込みスペースを検出する走行車線状況検出手段と、前記割込みスペースに前記自車両を進入させる進入開始時間を求め、該進入開始時間に達したとき進入開始指示信号を指示表示部に出力する車両進入タイミング検出手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ターンシグナルスイッチがオンされたとき、オンされた側の車線を走行する車両の走行状況を走行状況撮像手段で撮像した道路走行状況に基づいて検出すると共に、この道路走行状況の検出結果に基づいて割込みスペースを検出し、この割込みスペースに自車両を進入させる進入開始時間を、自車両と前記割込みスペースの移動速度との速度差に基づいて設定するようにしたので、サイドミラーやルームミラーに画像を表示させるための特別な装置を併設することなく、従来の製品をそのまま使用することができばかりでなく、カーナビゲーション装置が搭載されていない車両であっても、進路変更の開始タイミングを自動的に支援することができて、使い勝手が良く、高い汎用性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両用運転支援装置の概略構成図
【図2】運転支援処理ルーチンを示すフローチャート
【図3】右車線状況検出処理サブルーチンを示すフローチャート
【図4】左車線状況検出処理サブルーチンを示すフローチャート
【図5】車両進入タイミング検出処理サブルーチンを示すフローチャート
【図6】合流車線から走行車線に進入する際の運転支援を示す説明図
【図7】走行車線から追越車線へ進路変更する際の運転支援を示す説明図
【図8】追越車線から走行車線へ戻る際の運転支援を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。本実施形態による車両用運転支援装置は、図示しない自動車などの車両に搭載されて、運転者が高速道路の合流車線から走行車線に進入しようとする際、及び本線走行中において進路変更しようとする際に、それを検出して、自動的に運転支援を行うようにしたものである。
【0013】
図1に示すように、車両用運転支援装置は、前方認識カメラ1、左側方認識カメラ2、右側方認識カメラ3、車速検出手段としての車速センサ4、ターンシグナルスイッチ5、及び演算手段としての運転支援制御装置(以下、「運転支援_ECU」と称する)11、指示車速表示手段としての指示車速表示部21、及び、操舵開始指示表示部22を備えている。尚、各認識カメラ1〜3が、本発明の走行状況撮像手段に対応している。
【0014】
前方認識カメラ1は、車室内前部に設けられているルームミラー上方に取付けられた一対のステレオカメラユニット(図6〜図8参照)であり、CCD、CMOS等の固体撮像素子を有し、この固体撮像素子によって自車両前方の道路走行状況(白線、先行車、ガードレール等)が撮像される。尚、この前方認識カメラ1は単眼カメラユニットであっても良い。
【0015】
左側方認識カメラ2は、自車両の左ドアミラーに取付けられて、自車両の左後方が撮像される。又、右側方認識カメラ3は、自車両の右ドアミラーに取付けられて、自車両の右後方が撮像される。この両認識カメラ2,3は、上述した前方認識カメラ1と同様のステレオカメラユニット、或いは単眼カメラユニットであり、CCD、CMOS等の固体撮像素子を有し、この固体撮像素子によって自車両左右後方の道路走行状況が撮像される。従って、これら各認識カメラ1〜3で撮像した画像に基づいて自車両周囲の道路走行状況が検出される。
【0016】
車速センサ4は、トランスミッション出力軸や車輪の回転速度から車速を検出するものである。又、ターンシグナルスイッチ5は、左折スイッチと右折スイッチとを有し、中立位置でOFF状態にあり、ターンシグナルレバーを反時計回り方向へ操作することで左折スイッチがONされ、車体左側のターンシグナルランプが点滅する。一方、ターンシグナルレバーを時計回り方向へ操作することで右折スイッチがONされ、車体右側のターンシグナルランプが点滅する。尚、高速道路走行においては、ターンシグナルスイッチ5をONし、左右何れかのターンシグナルランプを点滅させることで、後続車に対し自車両が進路変更する旨の意思を表示する。
【0017】
これらセンサ・スイッチ類で検出した信号が運転支援_ECU11に入力される。運転支援_ECU11は、CPU11a、ROM11b、RAM11c、不揮発メモリ11d等を備える周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、CPU11aは、ROM11bに記憶されている制御プログラムに従い、各種センサ・スイッチ類からの信号に基づいて、車線進入や車線変更時の指示車速、及び操舵開始タイミングを演算すると共に、指示車速表示部21、及び操舵開始指示表示部22等へ動作信号を出力する。尚、ROM11bには、後述する高速道路パターン等の固定データが記憶されており、RAM11cには、CPU11aで演算された各種データが一時的に記憶される。
【0018】
指示車速表示部21は、例えばスピードーメータ(図示せず)の外周に、例えば5[Km/h]毎に配列された複数のLEDで構成されており、指示車速に対応する位置のLEDを点灯、或いは点滅させることで、運転者に合流車線から走行車線へ進入する際、及び走行車線を変更する際の目標速度を指示する。
【0019】
一方、操舵開始指示表示部22は合流車線から走行車線に進入する際、及び走行車線を変更するに際し、進入先の走行車線を走行している車両間の割込みスペースに自車両を割り込ませるための操舵開始タイミングを指示するものであり、例えば音声により報知する。
【0020】
上述した運転支援_ECU11での運転支援処理は、具体的には、図2に示す運転支援処理ルーチンに従って実行される。
【0021】
このルーチンでは、先ず、ステップS1で、前方認識カメラ1で撮像した画像に基づき自車両M(図6〜図8参照)の前方道路走行状況(高速道路本線を走行中か合流車線を走行中か、及び先行車、隣接する車線を走行する車両、及びそれらの車両と自車両Mとの車間距離等)を検出する。尚、自車両Mが高速道路の本線を走行中か合流車線を走行中かは、例えば固定データとして予め記憶されている高速道路パターンと、前方認識カメラ1で撮像した前方画像とのパターンマッチングにより判定する。この場合、本線走行中、或いは合流車線走行中では無いと判定した場合、ルーチンを抜けるようにしても良い。以下においては、高速道路走行に特化して説明する。
【0022】
次いで、ステップS2へ進み、ターンシグナルスイッチ5がONか否かを調べる。そして、OFFの場合は、そのままルーチンを抜ける。一方、ターンシグナルスイッチ5がONと判定したときは、ステップS3へ進み、右折スイッチがONか否かを調べ、右折スイッチがONのときはステップS4へ進み、左折スイッチがONのときはステップS5へ進む。ステップS4へ進むと、右車線状況検出処理が実行され、一方、ステップS5へ進むと、左車線状況検出処理が実行される。尚、このステップS4,5での処理が、本発明の走行車線状況検出手段に対応している。
【0023】
右車線状況検出処理は、図3に示す右車線状況検出処理サブルーチンに従って実行され、左車線状況検出処理は、図4に示す左車線状況検出処理サブルーチンに従って実行される。以下においては、最初に、図3の右車線状況検出処理サブルーチンについて説明し、続いて、図4の左車線状況検出処理サブルーチンについて説明する。
【0024】
図3に示すサブルーチンでは、先ず、ステップS11で、前方認識カメラ1で撮像した画像を読込み、ステップS12で、右側方認識カメラ3で撮像した画像を読込む。
【0025】
そして、ステップS13で、両カメラ1,3で撮像した画像に基づいて右車線の領域を検出し、ステップS14へ進み、右車線を走行している車両を検出する。
【0026】
すなわち、図6に示すように、自車両Mが合流車線32から高速道路本線(以下、単に「本線」と称する)31の走行車線31aに進入しようとする場合、前方認識カメラ1で撮像した画像に基づき、走行車線31aを走行している先行車N1を検出し、又、右側方認識カメラ3で撮像した画像に基づき走行車線31aを走行している後続車N2を検出する。尚、図6、図7中の一点鎖線で示す領域は前方認識カメラ1の視野範囲α、二点鎖線で示す領域は右側方認識カメラ3の視野範囲βである。又、本実施形態においては、説明を容易にするため、走行車線31aにおいて、自車両Mよりも前方を走行している車両を先行車N1、後方を走行している車両を後続車N2と称し、又、追越車線31bにおいて自車両Mよりも前方を走行している車両を先行車N3、後方を走行している車両を後続車N4と称する。
【0027】
一方、図7に示すように、自車両Mが本線31の走行車線31aを走行しており、そこから追越車線31bに進路変更しようとする場合も、本サブルーチンは起動され、前方認識カメラ1で撮像した画像に基づき、走行車線31aを走行している先行車N1、及び追越車線31bを走行している先行車N3を検出し、又、右側方認識カメラ3で撮像した画像に基づき追越車線31bを走行している後続車N4を検出する。
【0028】
その後、ステップS15へ進むと、右車線(図6では走行車線31a、図7では追越車線31b)を走行している各車両N1,N2(図7では車両N3,N4)間に形成される割込みスペース49の前後方向の実距離Lを算出する。尚、図6、図7においては便宜的に割込み可能な車間に割込みスペース49が記載されているが、実際には全ての車間において割込みスペースが算出される。
【0029】
この割込みスペース49の実距離Lは、図6に示すように、自車両Mが合流車線32から本線31の走行車線31aに進入しようとする場合、前方認識カメラ1及び右側方認識カメラ3で撮像した画像に基づき、走行車線31aを走行している各車両N1,N2の車間に基づき算出する。この割込みスペース49の実距離Lは、走行車線31aを走行している各車両の車間距離に、前後スペースの余裕度を示す係数(例えば、0.8)を乗算して設定される。又、走行車線31aから追越車線31bに進路変更する場合も本サブルーチンが適用されるが、この場合、図7に示すように、追越車線31bに後続車両が存在しない場合、実距離Lは予め設定されている固定値に設定される。
【0030】
次いで、ステップS16へ進み、予め設定されている自車両Mの必要割込み距離Loと、ステップS15で算出した実距離Lとを比較し、L≧Loの場合、割込み可能と判定し、図2のステップS6へ進む。一方、L<Loの場合は、割込みが困難であると判定し、ステップS17へ分岐し、モニタ等にNGの旨を伝える情報を表示させ、運転者に注意を促してルーチンを抜ける。
【0031】
一方、図4に示す左車線状況検出処理サブルーチンでは、先ず、ステップS21で、前方認識カメラ1で撮像した画像を読込み、ステップS22で、左側方認識カメラ2で撮像した画像を読込む。
【0032】
そして、ステップS23で、両カメラ1,2で撮像した画像に基づいて左車線の領域を検出し、ステップS24へ進み、左車線を走行している車両を検出する。
【0033】
すなわち、図8に示すように、自車両Mが追越車線31bから走行車線31aに戻ろうとする場合、前方認識カメラ1で撮像した画像に基づき、走行車線31aを走行している先行車N1を検出し、又、左側方認識カメラ2で撮像した画像に基づき走行車線31aを走行している後続車N2を検出する。尚、図8中の二点鎖線で示す領域は左側方認識カメラ2の視野範囲γである。
【0034】
その後、ステップS25へ進むと、走行車線31aを走行している各車両N1,N2間に形成される割込みスペース49の実距離Lを算出する。この割込みスペース49の実距離Lは、図8に示すように、自車両Mが追越車線31bから走行車線31aに戻ろうとする場合、前方認識カメラ1及び左側方認識カメラ2で撮像した画像に基づき、走行車線31aを走行している各車両N1,N2の車間に基づき算出する。尚、この割込みスペース49の実距離Lは、走行車線31aを走行している各車両の車間距離に、前後スペースの余裕度を示す係数(例えば、0.6)を乗算して設定される。この場合、走行車線31aに、図8に示す先行車N1が存在しない場合、実距離Lは予め設定された固定値に設定される。
【0035】
次いで、ステップS26へ進み、予め設定されている自車両Mの必要割込み距離Loと、ステップS25で算出した実距離Lとを比較し、L≧Loの場合、割込み可能と判定し、図2のステップS6へ進む。一方、L<Loの場合は、割込みが困難であると判定し、ステップS27へ分岐し、モニタ等にNGの旨を伝える情報を表示させ、運転者に注意を促してルーチンを抜ける。
【0036】
そして、図3、或いは図4のサブルーチンから図2のステップS6へ進むと、車両進入タイミング検出処理を実行してステップS7へ進む。この車両進入タイミング検出処理は、図5に示す車両進入タイミング検出処理サブルーチンに従って実行される。尚、このステップでの処理が本発明の車両進入タイミング検出手段に対応している。
【0037】
このサブルーチンでは、先ず、ステップS31で、進入可能と判定した割込みスペース49の前後を走行している車両の車速を、上述した各カメラ1〜3で撮像した画像に基づいて算出し、ステップS32で、割込みスペース49の前後を走行している車両の車速から、割込みスペース49の移動速度を算出する。この割込みスペース49は、先頭側の車両に対して所定距離を開けて移動していると考えることができるため、この自車両Mと割込みスペース49との速度差(相対速度)に基づき、自車両の目標とする進入時の指示車速Stを設定する。
【0038】
この指示車速Stは、自車両Mが合流車線32から本線31の走行車線31aへ進入する場合、或いは走行車線31aから追越車線31bへスムーズに進入できる車速であり、割込みスペース49の先頭側の車両よりも遅く、且つ、後尾側の車両と同じかそれよりやや遅い速度、すなわち、自車両Mの進入を認識した後尾側の車両の運転者が急ブレーキを働かせることなく、余裕を持って減速させることのできる車速に設定される。
【0039】
次いで、ステップS33へ進み、指示車速Stと制限車速Slmとを比較する。この制限車速Slmは、高速道路の法定速度(自動車であれば、100[Km/h])の固定値であっても良いが、走行路毎に設定される規制速度(例えば、80[Km/h])であっても良い。
【0040】
そして、St>Slmの場合、速度超過であるため、ステップS34へ分岐し、その旨を報知する注意表示をモニタ等に、設定秒(例えば、3[sec])出力して、運転者に注意を促し、設定秒経過後、ステップS34へ進む。ステップS34へ進むと、ターンシグナルスイッチ5がOFFされたか否かを調べ、ターンシグナルスイッチ5がOFFされた場合、追越車線31bへの進路変更を諦めたと判定し、ルーチンを抜ける。一方、ターンシグナルスイッチ5のON状態が継続している場合は、車線変更の意思が継続されていると判定し、ステップS36へ進む。一方、ステップS33で、St≦Slmと判定した場合は、そのままステップS36へ進む。
【0041】
ステップS33、或いはステップS35からステップS36へ進むと、進入開始を指示する情報を運転者に報知する迄の時間(進入開始時間)Tstを算出する。この進入開始時間Tsは、自車両Mと割込みスペース49との速度差(相対速度)に基づき算出される。すなわち、自車両Mの速度が割込みスペース49の移動速度より遅い場合、当該割込みスペース49の先端が自車両Mの前端部に到達する迄の時間を進入開始指示時間Tstとして算出する。一方、自車両Mの速度が割込みスペース49の移動速度より速い場合は、自車両の後端部が割込みスペース49の後端に達する迄の時間を進入開始指示時間Tstとして算出する。
【0042】
因みに、自車両Mの速度が割込みスペース49の移動速度より遅い場合とは、自車両Mを合流車線32から走行車線31aへ進入させる状態(図6参照)、及び自車両Mを走行車線31aから追越車線31bに進路変更させる状態が該当する(図7参照)。一方、自車両Mの速度が割込みスペース49の移動速度より速い場合とは、追越車線31bを走行している自車両Mが走行車線31aへ戻る状態が該当する(図8参照)。
【0043】
そして、ステップS37へ進み、減算タイマのカウント値Tを進入開始指示時間Tstでセットする(T←Tst)。次いで、ステップS38で、指示車速Stを指示車速表示部21に出力して表示させ、ステップS39で、減算タイマのカウント値Tに対応する秒読み時間をモニタに表示し、或いはスピーカから音声により報知する。運転者は、指示車速表示部21に表された指示車速Stと、モニタ、スピーカ等の表示手段に出力された秒読み時間とに基づき、進入開始の際に車速Sが指示車速Stとなるように調整する。その際、指示車速Stが自車両Mの車速Sよりも速い場合は、アクセルペダルを踏み込み、指示車速Stが自車両Mの車速Sよりも遅い場合は、アクセルペダルを開放する。
【0044】
その後、ステップS40へ進み、減算タイマのカウント値Tが0か否かを調べ、T>0の場合は、ステップS41へ進み、減算タイマのカウント値Tをデクリメントして(T←T−1)、ステップS39へ戻る。
【0045】
一方、ステップS40で、減算タイマのカウント値Tが0に達した(T=0)と判定したときは、ステップS42へ進み、進入開始指示信号を操舵開始指示表示部22へ出力する。すると、操舵開始指示表示部22から、進路変更のための操舵開始を知らせる音声ガイドが所定秒(例えば、3[sec})の間報知される。運転者は、この音声ガイドに従って、進路変更をするための操舵を開始する。
【0046】
その後、図2のステップS7へ進み、ターンシグナルスイッチ5がOFFされるまで待機し、ターンシグナルスイッチ5がOFFされたとき、ルーチンを抜ける。指示車速表示部21には、ターンシグナルスイッチ5がOFFされるまで指示車速Stが表示されており、ターンシグナルスイッチ5がOFFされると指示車速Stの表示が消える。
【0047】
このように、本実施形態によれば、高速道路の合流車線32から走行車線31aへ進入する際、及び、走行車線31aから追越車線31b或いは追越車線31bから走行車線311aへ進路変更する際の運転者の意思を、ターンシグナルスイッチ5のON/OFF操作により検出するようにしたので、従来のようにサイドミラーに画像を表示させるための特別な装置を別途設ける必要がなく、サイドミラーやルームミラーは従来の製品をそのまま使用することができるため経済的である。
【0048】
又、車両に搭載されている認識カメラ1〜3で検出した画像に基づいて道路走行状況を検出しているため、カーナビゲーション装置が搭載されていない車両であっても、進路変更の開始タイミングを自動的に支援することができ、高い汎用性を得ることができる。
【0049】
更に、進路変更を開始するタイミングを、モニタ等に表示される秒読み時間から容易に予測できるので、初心者であっても容易に進路変更が可能となる。その際、同時に進路変更時の指示車速Stも表示されるため、秒読み時間に基づき、現在の車速Sを進路変更開始前に指示車速Stまで加速、或いは減速させるための時間感覚を容易に把握することができ、初心者であっても、車両間の割込みスペース49に自車両Mを容易に割込ませることができる。
【0050】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、本発明による車両用運転支援装置は、一般道路においても適用することができる。この場合、適用車速を40[Km/h]以上とする等、走行時にのみ動作するように設定すれば、一般道路での右左折時においてターンシグナルスイッチ5をONしても、車両用運転支援装置が起動せず、使い勝手が良くなる。
【符号の説明】
【0051】
1…前方認識カメラ、
2…左側方認識カメラ、
3…右側方認識カメラ、
4…車速センサ、
5…ターンシグナルスイッチ、
11…運転支援制御装置、
21…指示車速表示部、
22…操舵開始指示表示部、
49…割込みスペース、
L…実距離、
Lo…距離、
M…自車両、
S…車速、
St…指示車速、
Ts…進入開始時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進路変更の際に操作するターンシグナルスイッチと、
自車両周囲の道路走行状況を撮像する走行状況撮像手段と、
前記自車両の車速を検出する車速検出手段と、
進路変更の開始タイミング及び進路変更時の指示車速を設定する演算手段と
を有する車両用運転支援装置において、
前記演算手段は、
前記ターンシグナルスイッチがオンされたとき該ターンシグナルスイッチの右折スイッチと左折スイッチとの何れがオンされたかを調べ、オンされた側の車線を走行する車両の走行状況を前記走行状況撮像手段で撮像した道路走行状況に基づいて検出すると共に該道路走行状況の検出結果に基づいて割込みスペースを検出する走行車線状況検出手段と、
前記割込みスペースに前記自車両を進入させる進入開始時間を求め、該進入開始時間に達したとき進入開始指示信号を指示表示部に出力する車両進入タイミング検出手段と
を備えることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
前記走行車線状況検出手段は、前記割込みスペースの前後方向の実距離と予め設定されている前記自車両の必要割込み距離とを比較して該自車両が割込み可能か否かを判定する
ことを特徴とする請求項1記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
前記車両進入タイミング検出手段は、前記進入開始時間を前記自車両の車速と前記割込みスペースの移動速度との速度差に基づいて設定する
ことを特徴とする請求項1或いは2記載の車両用運転支援装置。
【請求項4】
前記車両進入タイミング検出手段は、前記進入開始時間に達するまでの秒読み時間を表示手段に出力する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用運転支援装置。
【請求項5】
前記車両進入タイミング検出手段は、前記秒読み時間が出力された際に前記指示車速を指示車速表示手段に出力する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用運転支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−73925(P2012−73925A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219650(P2010−219650)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】