説明

車両用遠隔式始動装置及び遠隔式始動システム

【課題】 純正携帯機から出力される認証情報を受信することを条件に正常に動作するエンジン制御ユニットを搭載した車両においても、後付けの遠隔式エンジン始動装置にて確実にエンジン始動をさせることができるようにすること
【解決手段】 エンジン始動信号を受けた際に純正携帯機1からの認証情報を受信したことを条件にスタータモータ4を駆動する純正キーフリー制御部3を備えた車両用の遠隔式エンジン始動装置であって、純正携帯機の電池収納部からその純正携帯機に対して給電する給電手段20と、その給電手段による純正携帯機に対する給電のON/OFFを制御するMPU15と、を備える。MPUは、平常時は給電をOFFにし、携帯機8からのエンジン始動命令を受信した際に、給電をONにして、純正携帯機から認証情報を出力させると共に、純正キーフリー制御部に対してエンジン始動信号を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモコン操作により、車両の外からエンジンやエアコン等の装置を始動させることができる車両用遠隔式始動装置及び遠隔式始動システムに関するもので、より具体的には、エンジン始動信号等の始動信号を受けた際に純正携帯機からの認証情報を受信したことを条件にスタータモータ等の装置を駆動する制御ユニットを備えた車両に適用可能とするものである。
【背景技術】
【0002】
最近の車両には、車両の盗難防止のためにイモビライザと称されるシステムが搭載されたものがある。このイモビライザは、エンジンキーに所定のコードをもたせ、エンジンキーをキーシリンダにキーインしたとき車両側のECU(エンジン制御ユニット)と通信し、エンジンキーが持つコードとECU が保有しているコードが一致したことを条件にエンジンの始動を許可するものである。
【0003】
また、特許文献1に記載のように、エンジンキーシリンダに代えて押圧操作したときにオン信号を出力するモーメンタリー型のアクセサリ・エンジン起動スイッチを備え、ブレーキペタルスイッチからのブレーキペタルの踏み込み時にオン信号とアクセサリ・エンジン起動スイッチを押圧操作したときのオン信号とをトリガにして、車載器と携帯機との間で通信を行ない、車載器が通信相手の携帯機を認証すると、エンジン制御部を通してエンジン起動を行なうエンジン起動装置がある。
【0004】
一方、遠隔操作(リモートコントロール)によってエンジン始動を行うリモコンエンジンスタータにおいては、子機からの信号を受けた車載器がエンジンキーによるキーシリンダやスイッチの動きを模してエンジンの始動を行うようにしている。しかし、キーシリンダやスイッチの動きを模したとしても、上記したコードの送信が行われないと、イモビライザが搭載された車両では認証が行われないため、ECUからエンジン始動の許可がおりずにエンジンを始動することはできなかった。
【0005】
そのため、従来の遠隔式エンジン始動装置(リモコンエンジンスタータ)は、例えば、特許文献2に開示された技術等を用いて純正携帯機とECUとの間のイモビライザの信号を蓄積し、コードの確認時にその蓄積した信号をECUへ送ることで認証を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4094880号
【特許文献2】特開2004−36505号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、単純に純正のイモビライザの信号(認証情報)を蓄積し、コードの確認時にその蓄積した信号をECUへ送るだけでは、ECUのエンジン始動許可が下りずエンジンを始動できない場合もある。このような場合には、エンジンECUと純正携帯機との間の認証方法を解析し、これをエミュレートするシステムを作る必要があるが、これには時間がかかるといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、(1)始動信号を受けた際に純正携帯機からの認証情報を受信したことを条件に装置を始動する制御ユニットを備えた車両用遠隔式始動装置であって、前記純正携帯機の電池収納部からその純正携帯機に対して給電する給電手段と、その給電手段による前記純正携帯機に対する給電のON/OFFを制御する制御手段と、を備え、前記給電手段による給電は、前記純正携帯機が前記認証情報を出力するためのものとした。装置は、エンジン始動装置や、電気自動車の始動装置や、電気自動車等におけるエアコン装置その他のリモコン操作により始動する装置である。エンジン始動装置の場合、制御ユニットは、エンジン制御ユニットになり、このエンジン制御ユニットは、エンジン始動信号を受けた際に純正携帯機からの認証情報を受信したことを条件にスタータモータを駆動するものとなる。制御手段は、実施形態ではMPU15に対応する。制御ユニットは、実施形態では、純正キーフリー制御部3に対応する。
【0009】
本発明では、純正携帯機への給電手段を設け、必要なときに純正携帯機に対して給電することで、純正携帯機から正規の認証情報を出力させる。これにより、車両に装備されている制御ユニットは、その認証情報を受信することで、正規の純正携帯機がそばにあり、装置を始動しても良い状態であることを認識する。よって、その状態で、制御手段が制御ユニットに対して始動信号を与えれば、始動装置(エンジンの場合はスタータモータ)を駆動してエンジン等の装置を始動させることができる。そして、従前のこの種の純正でない後付けの商品(アフターマーケット商品)による遠隔式エンジン始動装置の場合、何かしらの方法で純正携帯機が持つ認証情報を予め取得して記憶保持しておき、制御手段がその取得して記憶保持している認証情報を出力することで、エンジン制御ユニットを動作させるようにしたが、実際には、認証情報を取得する作業が繁雑であったり、単純に認証情報を出力するだけでは動作しなかったりするが、本発明の場合、認証情報は、正規の純正携帯機から出力させるため、エンジン制御ユニット等の制御ユニットは確実にエンジンその他の装置の始動処理を実行する。さらに各携帯機の認証情報を予め取得する必要がないので、遠隔式エンジン始動装置(制御手段)等の開発・作成が容易になる。さらに、本装置を購入したユーザも、使用に先立ち行う作業は、給電手段により純正携帯機へ給電可能な状態にするだけでよく、作業が簡単となる。
【0010】
(2)前記制御手段は、平常時は前記給電をOFFにし、携帯機からの始動命令を受信した際に、前記給電をONにするとともに、前記制御ユニットに対して始動信号を与えるものとすることができる。本発明では、給電手段が接続された純正携帯機は、車内に置かれたままとなるが、平常時は給電をOFFにすることで、純正携帯機から認証情報は出力されない。よって、制御ユニットその他の車載機器は、純正携帯機の存在を認識しないようになるので、例えば、ドアロックシステムにおける施錠や、盗難警報システムの警戒開始など、純正携帯機が車外にある(純正携帯機を携帯するユーザが車外にいる)ことを条件に動作するシステムが搭載された車両であっても、純正携帯機を車内に置いたままの状態で正常に動作させることができる。
【0011】
(3)前記純正携帯機は、ボタン電池で駆動するものであり、前記給電手段は、ケース本体の外形をそのボタン電池に合わせた形状とするとともに、そのケース本体の所定位置に正極電極部及び負極電極部を露出させるように構成し、前記ボタン電池に替えて前記純正携帯機の電池収納部にケース本体を収納することで、前記電池収納部内の電極端子に前記正極電極部及び負極電極部を接触可能とする。純正携帯機は、ボタン電池等を駆動源とするものが多く、ボタン電池は交換可能となっているので、給電手段のケース本体の寸法形状を、当該ボタン電池の外形に合わせるとともに、所望の位置に電極部を配置することで、その給電手段(ケース本体)を電池収納部に装着するだけで簡単に給電可能な状態にすることができる。
【0012】
(4)前記正極電極部及び前記負極電極部は、それぞれリード線が接続され、そのリード線が前記制御手段を実装する装置本体に接続され、その装置本体から前記リード線を介して給電されるようにするとよい。装置本体は、実施形態では、車載器9に対応する。係る構成を採ると、装置本体から簡単に給電のための電力供給を行うことができる。
【0013】
(5)本発明の遠隔式始動システムは、前記給電手段により給電可能な前記純正携帯機と、(1)〜(4)のいずれかに記載の車両用遠隔式始動装置と、を備え、前記純正携帯機は、車両内に配置されるように構成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、純正携帯機から出力される認証情報を受信することを条件に正常に動作するエンジン制御ユニットその他の制御ユニットを搭載した車両において、後付けの遠隔式エンジン始動装置等の始動装置によりエンジン等の装置を始動させるに際し、純正携帯機に接続した給電手段により純正携帯機に給電することで、その純正携帯機から認証情報を出力するようにしたので、制御ユニットは確実に動作することができると共に、認証情報を別途取得したりする処理が不要であるので、遠隔式始動装置の開発も容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な一実施形態を示す図である。
【図2】機能を説明するフローチャートである。
【図3】給電手段(ダミー電池)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の好適な実施形態を説明する。本実施形態の遠隔式エンジン始動システム(エンジンスタータシステム)は、キーフリーシステムを採用する車両に搭載される。キーフリーシステムは、エンジンキー(メカニカルキー)をキーシリンダにキーインすることなく、キーフリーキー用の純正携帯機1を携帯した状態で、エンジン始動スイッチ2を操作することで、エンジンを始動・停止の制御を行うことができるもので、インテリジェントキー(登録商標:日産自動車)やスマートキー(登録商標:トヨタ自動車)などと称されるものが製品化されている。すなわち、純正携帯機1には、所定のコード等の識別情報が記憶されており、純正携帯機1は、定期的にその識別情報を送信する。車両側の純正キーフリー制御部3(ECU)は、受信機を備え純正携帯機1から送られてくる識別情報を受信すると、それが自己に対応する正規の純正携帯機1からのものか否かを判断する。そして、純正携帯機1から識別情報を受信した状態で、エンジン始動スイッチ1がONになった場合、純正キーフリー制御部3は、スタータモータ4を回転させ、エンジン始動処理を実行する。
【0017】
また、本実施形態の純正キーフリー制御部3は、ドア錠の施錠・解錠も制御する。すなわち、純正携帯機1から、ドア錠の施錠/解錠の命令信号を受けた場合、ドアロック部5に対して受信した命令信号に応じた制御信号を送り、ドア錠の施錠(ロック),解錠(アンロック)の制御を行う。ここでドアロック部5は、例えば、ドア錠用の駆動モータであり、その駆動モータを正逆回転することで、施錠したり解錠したりする。また、純正キーフリー制御部3は、上記のように、純正携帯機1から命令信号を受信したときに限らず、純正携帯機1を携帯したユーザが、車両のドアに設けたスイッチを押下したことに基づき、施錠/解錠のための制御を行うべくドアロック部5に対して制御信号を送る機能も備える。なお、このドア錠の施錠・解錠の制御機能は、無くても良い。
【0018】
また、車両側のエンジン始動スイッチ2は、回転により操作するイグニッションノブや、押下により操作するボタンなどがある。そして、上記の純正の機能は、車両に搭載される従来公知のものであるので、その詳細な説明を省略する。
【0019】
次に、遠隔式エンジン始動システムについて説明する。この遠隔式エンジン始動システムは、ユーザが手元におく携帯機(子機)8と、自動車に搭載される車載器(装置本体)9とを備える。携帯機8は、ケース表面にエンジン始動ボタン8aとエンジン停止ボタン8bを備える。携帯機8は、車載器9との間で双方向通信可能なトランシーバー機能を備えているため、内部には送受信回路や制御部等を備えている。さらに図示省略するが、LED・液晶パネル・スピーカー等の出力手段を設けても良い。携帯機8内の制御部は、エンジン始動ボタン8a或いはエンジン停止ボタン8bが押下されたことを認識すると、自己を特定するための所定のコード(認証情報)とともに、押下されたボタンの内容(エンジン始動/停止)を示す命令信号を、送信回路を介して送信する。
【0020】
また、携帯機8の受信回路が、対応する車載器9からの信号を受信すると、携帯機8内の制御部はその受信した信号に応じた処理をする。すなわち、車載器9は、後述するように携帯機8から送られてきた命令信号を受信すると、その命令信号に応じた処理を実行し、その結果をアンサーバックとして返信するので、携帯機8は、アンサーバックの内容に応じた処理を実行する。一例としては、出力手段を備えている場合には、そのアンサーバックの内容(成功/失敗)を報知する。また、一定時間以内にアンサーバックを受信しない場合、制御部は、再度認証情報と共に命令信号を送信する。
【0021】
車載器9は、リモコン送受信機10と、制御部としてのMPU15とを備える。リモコン送受信機10は、アンテナ11と受信回路12と送信回路13とを備えている。アンテナ11経由で受信回路12で受信した信号は、MPU15に与えられる。MPU15は、受信した信号に含まれる認証情報から、受信した信号が対となる携帯機8からのものであるか否かを判断し、対となる携帯機8からの信号である場合、その受信した信号に含まれる命令信号に基づく処理を実行する。そして、命令信号に基づく処理を実行後、制御部15は、アンサーバック信号を生成し送信回路13経由で携帯機8に向けて返信する。なお、制御部15が行う具体的な処理は、後述する。
【0022】
MPU15は、純正キーフリー制御部3に接続される。具体的な接続箇所は、純正のエンジン始動スイッチ2から純正キーフリー制御部3へ接続される箇所と同じ箇所である。そして、MPU15は、エンジン始動時並びにエンジン停止時においてエンジン始動スイッチ2から純正キーフリー制御部3へ与えられる信号と同様の信号を与える。これにより、エンジン始動命令を受信したMPU15は、エンジン始動スイッチがON(エンジン始動)と同様の信号を純正キーフリー制御部3に与えることで、純正キーフリー制御部3は、エンジン始動処理を実行し、スタータモータ4を回転させてエンジンを始動させる。同様に、エンジン停止命令を受信したMPU15は、エンジン始動スイッチ2がOFF(エンジン停止)と同様の信号を純正キーフリー制御部3に与えることで、純正キーフリー制御部3は、エンジン停止処理を実行し、始動中のエンジンを停止する。
【0023】
また本実施形態では、自動車のシフトポジションがパーキング位置にあるかどうか、イグニションキースイッチがOFF位置にあるかどうかなど、エンジンを始動させてよいかどうかの安全確認用センサ16を備える。この安全確認用センサ16により安全が確認されている場合のみ、MPU15は、エンジン始動処理を実行する。
【0024】
またエンジンが始動しているかどうかを検出する始動確認用センサ19を備える。例えば、MPU15は、エンジン始動命令を純正キーフリー制御部3に与えた後、一定期間以内に始動確認用センサ19がONするか否かにより、今回行った始動命令に基づくエンジン始動処理が成功したか失敗したかを判断し、その結果を送信回路13経由で返信する。また、失敗した場合には、MPU15は、再度純正キーフリー制御部3に対してエンジン始動命令を出力するようにしても良い。
【0025】
また、本体部分で各種の操作入力を与えるためのキーボードのような操作部17を備える。さらに、車室内の温度を検出するための温度センサ18を備える。例えば、予めルームエアコンのスイッチをONにしておき、エンジン始動に伴いルームエアコンが動作し、この温度センサ18により検出される車内温度が設定値になった場合にMPU15はエンジンを停止する制御を行う。なお、上記の各センサ16,18,19や操作部17は、従来公知のものを用いることができ、また、本発明では、必ずしも無くても良い。
【0026】
ところで、純正キーフリー制御部3によるエンジン始動(スタータモータ4の回転開始)を行うためには、対応する純正携帯機1から正規の認証情報を受信する必要がある。そこで、本実施形態では、純正携帯機1を、車室内の所定位置(純正キーフリー制御部3との間で通信可能な場所)に置いておき、MPU15は、純正キーフリー制御部3に対してエンジン始動命令を出力する(エンジン始動スイッチ2のONと同じ状態にする)に際し、純正携帯機1から正規の認証情報を出力させるようにする。これにより、純正キーフリー制御部3は、純正携帯機1から出力された正規の認証情報を受信するので、MPU15から与えられるエンジン始動命令に従ってスタータモータ4を始動する。
【0027】
ここで、MPU15が純正携帯機1から所望のタイミングで正規の認証情報を出力する制御は、定常状態では純正携帯機1の動作(少なくとも正規の認証情報を出力する動作・機能)を停止させておき、必要なときに純正携帯機1の正規の認証情報を出力する動作・機能を起動させるもので、具体的には、純正携帯機1に対する給電を制御する。すなわち、通常、純正携帯機1は、電池駆動なため、純正携帯機1の電池ホルダー(収納部)から当該電池を取り外し、車載器9(MPU15)に接続された給電手段20を電池ホルダーに装着する。純正携帯機1は、電源がONしているときは、所定のタイミング(たとえば一定間隔)で正規の認証情報を出力するので、エンジン始動命令を出力するに際し、MPU15は給電手段20から純正携帯機1に対して給電を開始する。そして、平常時は、給電を停止する。これにより、携帯機8からエンジン始動命令を受信した車載器9のMPU15は、給電手段20によって純正携帯機1に対して電源を供給し、純正携帯機1を作動させることで純正キーフリー制御部3に対するイモビライザの認証をさせるとともに、純正のエンジン始動時に純正キーフリー制御部3へ出力するエンジン始動信号と同様の信号を発生させて、純正キーフリー制御部3によりエンジンを始動させる。
【0028】
また、エンジン停止命令を出力する場合も、同様にして行うことができる。そして、それ以外の時(純正キーフリー制御部3による純正携帯機1の認証が不要なとき)は、純正携帯機1に対する給電を停止することで、純正携帯機1から正規の認証情報を出力させないようにする。よって、純正携帯機1を車内においたままにしても、その車内に置かれた純正携帯機1からは正規の認証情報が出力されないので、純正キーフリー制御部3は純正携帯機1の存在を認識できず、たとえば降車時にドア錠を施錠することができる。すなわち、上述したように、純正携帯機1からの命令信号や、純正携帯機1を携帯した状態でのドアスイッチの押下によりドア錠の施錠/解錠を制御するドアロックシステムを採用した車両では、正規の認証情報を出力している純正携帯機1が車室内に置かれている状態ではドア錠が施錠されないような制御が行われるが、上記のように、定常状態では給電を停止することで、ドア錠の施錠/解錠を行うことができる。もちろん、通常、純正携帯機は、複数用意されるので、そのうちの1つを本システムにおける純正携帯機1として車内の所定位置に置いておき、別の純正携帯機を用いることで、当該純正携帯機を用いた遠隔でのドア錠の施錠/解錠の制御や、エンジン始動スイッチ2の操作に基づくエンジン始動・停止の制御を行うことができる。
【0029】
図2は、エンジン始動の処理アルゴリズムを示す。まず、ユーザは、携帯機8のエンジン始動ボタン8aを操作する(S1)。この操作に伴い、携帯機8は、エンジン始動命令を出力する。車載器9(MPU15)は、対となる携帯機8からエンジン始動命令を受信すると、給電手段20であるダミー電池に対し、給電を開始する(S2)。この給電は、純正携帯機1が、正規の認証情報を出力する動作が行えるようになっていればよい。
【0030】
純正携帯機1は、ダミー電池による給電開始に伴い、認証情報を出力開始する(S3)。これに伴い、純正キーフリー制御部3は、純正携帯機1からの正規の認証情報を受信することで、純正携帯機1が車室内等に存在していると認識する。
【0031】
ついでMPU15は、純正キーフリー制御部3に対し、エンジン始動信号を出力する(S4)。これを受けて、純正キーフリー制御部3は、エンジン始動スイッチ2がONになったのと同じ状態になり、処理ステップS3の実行により正規の認証情報も受信しているので、スタータモータ4を回転させ、通常のエンジン始動処理を実行する。
MPU15は、始動確認用センサ19からの入力により、エンジンの始動を確認したならば(S5)、MPU15は、給電手段への給電を停止する(S6)。
【0032】
さらに本実施形態では、給電手段としては、純正携帯機の電池ホルダーに入り、電池ホルダー内の電源端子に対応する部位に電源を供給する給電部位を設けたものを用いる。例えば、純正携帯機の電池がボタン電池であれば、図3に示すように、そのボタン電池と同様の形状のものとする。すなわち、給電手段20は、純正携帯機1用のボタン電池と同様の外形状からなるケース本体21を備える。ケース本体21は、上下に2分割された上ケース21aと下ケース21bを、接合することで構成する。ケース本体21の内部空間内に正極端子板22と負極端子板23を配置し、その正極端子板22と負極端子板23の一部をケース本体21の外部に露出させる。この外部に露出する位置は、純正携帯機1の電池ホルダー内の給電端子に接触する位置とする。そして、正極端子板22と負極端子板23は、それぞれリード線24に接続され、そのリード線24を介して車載器9に接続される。MPU15からの指示に従い、車載器9からリード線24経由で給電手段20(ダミー電池)の両端子部間に所望の電圧を印加し、純正携帯機1の給電を可能とする。
【0033】
なお、上述した実施形態では、セルモータを駆動して始動するエンジン始動装置に適用した例を示したが、本発明はそれに限ることはなく、電気自動車の始動装置や、電気自動車等におけるエアコン装置や、その他のリモコン操作により始動する装置(車載装置・車両装置)に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 純正携帯機
2 エンジン始動スイッチ
3 純正キーフリー制御部
4 スタータモータ
5 ドアロック部
8 携帯機
9 車載器
15 MPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
始動信号を受けた際に純正携帯機からの認証情報を受信したことを条件に車載装置を始動する制御ユニットを備えた車両用遠隔式始動装置であって、
前記純正携帯機の電池収納部からその純正携帯機に対して給電する給電手段と、
その給電手段による前記純正携帯機に対する給電のON/OFFを制御する制御手段と、
を備え、
前記給電手段による給電は、前記純正携帯機が前記認証情報を出力するためのものであることを特徴とする車両用遠隔式始動装置。
【請求項2】
前記制御手段は、平常時は前記給電をOFFにし、携帯機からの始動命令を受信した際に、前記給電をONにするとともに、前記制御ユニットに対して始動信号を与えるものであることを特徴とする請求項1に記載の車両用遠隔式始動装置。
【請求項3】
前記純正携帯機は、ボタン電池で駆動するものであり、
前記給電手段は、ケース本体の外形をそのボタン電池に合わせた形状とするとともに、そのケース本体の所定位置に正極電極部及び負極電極部を露出させるように構成し、
前記ボタン電池に替えて前記純正携帯機の電池収納部にケース本体を収納することで、前記電池収納部内の電極端子に前記正極電極部及び負極電極部を接触可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用遠隔式始動装置。
【請求項4】
前記正極電極部及び前記負極電極部は、それぞれリード線が接続され、そのリード線が前記制御手段を実装する装置本体に接続され、その装置本体から前記リード線を介して給電されるようにしたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両用遠隔式始動装置。
【請求項5】
前記給電手段により給電可能な前記純正携帯機と、請求項1〜4のいずれかに記載の車両用遠隔式始動装置と、を備え、
前記純正携帯機は、車両内に配置されることを特徴とする遠隔式始動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−27002(P2011−27002A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171989(P2009−171989)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(391001848)株式会社ユピテル (238)