説明

車両用遮光装置

【課題】 車両の走行中の右左折時やカーブに起因する急な乗員の目に対する太陽光の入射に対応できる車両用遮光装置を提供すること。
【解決手段】 車両2の位置と進行方向、現在の月日及び時刻を検知するナビゲーション3と、ナビゲーション3からのデータに基づいて乗員の位置に対する太陽光の入射方向を演算する入射方向演算装置5と、入射方向演算装置5からのデータに基づいて車両2のサンバイザ9a、9bを制御する制御装置13a、13bとを備え、車両2の走行時にサンバイザ9a、9bは、入射方向演算装置5からの信号に基づいて、制御手段13a、13bにより、フロントガラス8上部の左右方向またはサイドガラス10a、10b上部の乗員の目に直達光が入射するのを妨げる位置に自動で移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動で制御されるサンバイザを備えた、車両用の遮光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関する従来技術として、車室内への所定強度以上の入射光、例えば直射日光を自動で遮るように作動する車両用サンバイザ装置がある。相互に同一平面でない複数の受光面に受光素子をそれぞれ配設して構成され、車両の所定座席より前方側の所定角度範囲に入射する入射光の上下左右の入射角度に応じたレベルの入射光検出信号を対応する各受光素子から出力する1つの受光センサと、前記所定角度範囲は複数の遮光範囲に分けられており、該遮光範囲ごとに対応して設けられ該遮光範囲内に入射する前記入射光を遮光するための遮光手段を作動させる遮光装置と、前記受光センサからの入射光検出信号に基づいて、前記入射光が前記遮光範囲に入射する時には、該遮光範囲に対応する前記遮光装置を作動させて前記入射光を遮光するように制御する。(例えば特許文献1)
また、車両乗員の対象部位を太陽光から保護可能な遮光制御装置がある。車両の乗員において予め定められた対象部位を太陽光から保護するために車両に設置されるシールドを制御するためのものであって、車両の傾斜角を取得する傾斜角取得部と、車両の進行方向を取得する進行方向取得部と、現在の時刻情報を取得する時刻取得部と、傾斜角取得部で取得された傾斜角、進行方向取得部で取得された進行方向、及び時刻取得部で取得された時刻情報に基づいて、車両に対する太陽の位置を導出する太陽位置導出部と、対象部位の位置を取得する部位位置取得部と、太陽位置導出部で導出された太陽の位置及び部位位置取得部で取得された対象部位の位置に基づいて、シールドを制御する制御信号を生成する制御信号生成部とを備える。この構成により、傾斜面に位置する場合、又はロール方向及びピッチ方向による車両の傾きを考慮して、太陽の位置を算出することで、車両乗員の対象部位を太陽光から保護する。(例えば特許文献2)
また、車両乗員のアイポイントに対する太陽光の入射方向を常に正確に検出して、遮光作動を適切に制御する車両用サンバイザがある。直射日光を検出する日射センサと、車両の進行方位を検出する方位検出手段と、現在の月日及び時刻を検知する時計手段と、上記進行方位と上記月日及び時刻とにより乗員のアイポイントに対する太陽光の入射方向を演算する入射方向演算手段と、サンバイザの作動を制御する調整手段とをそなえ、上記日射センサが直射日光を検出し、かつ、上記入射方向演算手段により演算された上記入射方向の太陽光が上記車両の窓ガラスを通して上記アイポイントに指向されるとき、上記調整手段の制御により上記サンバイザが作動して、上記アイポイントに対する上記太陽光を遮る。(例えば特許文献3)
【特許文献1】特開2005−162177号公報
【特許文献2】特開2005−8058号公報
【特許文献3】特開平10−16555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術では、太陽の位置に応じてサンバイザを制御するものの、車両で走行中の右左折時やカーブに起因する急な乗員の目に対する太陽光の入射で視界が妨げられることを防止できない問題がある。
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、車両の走行中の右左折時やカーブに起因する急な乗員の目に対する太陽光の入射に対応できる車両用遮光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、車両の位置と進行方向を検知する進行方向検知手段と、現在の月日及び時刻を検知する時刻手段と、前記進行方向検知手段と前記時刻手段に基づいて、乗員の位置に対する太陽光の入射方向を演算する入射方向演算手段と、前記入射方向演算手段からのデータに基づいて車両用のサンバイザを制御する制御手段と、を備えた車両用遮光装置において、前記車両の走行時に前記サンバイザは、前記入射方向演算手段からの信号に基づいて、前記制御手段により、フロントガラス上部の左右方向またはサイドガラス上部の乗員の目に直達光が入射するのを妨げる位置に自動で移動する。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、前記サンバイザは、前記車両のルーフに設けたガイドレールを移動する。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、前記車両のフロントガラス上部またはサイドガラス上部に設けられた第一偏光フィルムと、前記サンバイザを構成する第二偏光フィルムと、前記第一偏向フィルムと前記第二偏光フィルムは重なり合うことで遮光する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明では、サンバイザは入射方向演算装置からの信号により運転者の視界に直達光が入射するのを妨げる位置に自動で移動するため、車両の右左折時やカーブ等に起因する急な変化の乗員の目に対する太陽光の入射により視界が妨げられることを防止できる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、サンバイザはルーフに設けたガイドレールにより左右に移動可能であるため、車両の右左折時やカーブ等による車両のサイド方向からの乗員の目に対する太陽光の入射に対し待機・追従することが可能になる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、車両のフロントガラス上部またはサイドガラス上部に設けられた第一偏光フィルムと、サンバイザを構成する第二偏光フィルムとが重なり合うことで遮光するため、サンバイザが移動する際の運転者に与える視覚的負担が少なく、サンバイザが透過しない場合と比較して運転者への違和感が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を図1、2を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施例の車両用遮光装置1の概念図で、車両2を運転する乗員の目から見た図である。車両2の室内中央部付近には、ナビゲーションシステム3(進行方向検知手段、時刻手段)が設けてあり、GPS等からの信号により車両2の位置と進行報告を検知し、また、現在の月日及び時刻を知ることができる。
【0013】
車両2のダッシュボード4の内部には入射方向演算装置5(入射方向演算手段)が設置されている。入射方向演算装置5は、ナビゲーションシステム3からの位置、進行方向、現在の月日及び時刻のデータと、乗員の位置を検知するための、車両2の室内のステアリングコラム16上部に設けた測距センサ17により乗員位置を検出し、乗員の位置から推定される乗員の目に対する太陽光の入射方向を演算する。
【0014】
フロントガラス8上部には、2つのサンバイザ9a、9bが設けられる。サンバイザ9aは、フロントガラス8上部の左側及びサイドガラス10a上部をルーフ11に設けたガイドレール12に沿って左右方向に移動する。サンバイザ9bは、フロントガラス8上部の右側及びサイドガラス10b上部を車両2のルーフ11に設けたガイドレール12に沿って左右方向に移動する。
【0015】
サンバイザ9a、9bには、入射方向演算装置5からの信号を受けてサンバイザ9a、9bを制御する制御装置13a、13b(制御手段)が設けてある。制御装置13a、13bには図示しないモータが取り付けられており、ガイドレール12をサンバイザ9a、9bが自走できる構成になっている。
【0016】
ルームミラー14の位置(背部)には、照度センサ15が設けてあり、車両2の社内への太陽光の入射を検知する。
【0017】
または、車両2の左右のフロントピラー6a、6bの近傍に設けた夫々の複眼カメラ7a、7bからのデータを受け取り、太陽光の入射を検知すると共に、強い太陽光の反射光の入射も検知する。
【0018】
車両用遮光装置1の作動について説明する。
【0019】
乗員が車両2を運転すると、ナビゲーションシステム3から車両2の位置、進行方向、現在の月日及び時刻のデータが、また、ステアリングコラム16上部に設けられた測距センサ17からは乗員の目の位置のデータが、入射方向演算装置5に夫々送られる。入射方向演算装置5では、ナビゲーションシステム3と、ステアリングコラム16上部に設けられた測距センサ17からのデータに基づいて、太陽光の入射方向を演算する。演算結果はサンバイザ9a、9bの制御装置13a、13bに送られ、サンバイザ9a、9bは乗員の目に直達光が入射するのを妨げる位置に自動で移動する。
【0020】
図1では乗員の目の位置と太陽を結ぶ線の位置(位置A)にサンバイザ9aが移動する。車両2が右カーブの時には、太陽光の入射方向はA位置からB位置へと移動する。この移動に合わせて、サンバイザ9aもガイドレール5に沿ってB位置へ移動する。
【0021】
本発明の第1実施例では、サンバイザ9a、9bは太陽光の入射方向に応じて自動で移動して待機・追従するため、カーブ等で太陽光の位置が左右に移動しても、乗員の視界が急な乗員の目に対する太陽光の入射で妨げられることを防止できる。
【0022】
図2は、本発明の第2実施例の車両用遮光装置20の概念図で、車両2を運転する乗員の目から見た図である。第1実施例と同一の符号は、同一または相当する構成部分を示すものであり、その詳細な説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0023】
車両用遮光装置20は、車両2のフロントガラス8上部またはサイドガラス10a、10b上部には第一偏光フィルム21と、第二偏光フィルム22を備えたサンバイザ23a、23bを備える。その他の構成は第1実施例と同じである。
【0024】
第一偏光フィルム21と、第二偏光フィルム22は、夫々透過性を有するが、第一偏光フィルム21と、第二偏光フィルム22が重なり合うと遮光効果を奏する。第2実施例では、第一偏光フィルム21と、第二偏光フィルム22が重なり合うことでの遮光効果を利用して、乗員の目に直達光が入射するのを妨げる。車両用遮光装置20の作動は、第1実施例の車両用遮光装置1と同様である。
【0025】
車両用遮光装置20では、サンバイザ23a、23bが透過性を有するため、フロントガラス8上部、サイドガラス10a、10b上部をガイドレール5に沿って移動する際に、運転者に与える視覚的負担を低減でき違和感が少ない。
【0026】
本発明の第1実施例、第2実施例ではサンバイザを2個設けたが、サンバイザは1個または3以上であってもよい。
【0027】
また、車両2の傾斜角度を検知する傾斜角度取得センサを設けて、入射方向演算装置にデータを送り、サンバイザ9a、9b、23a、23bの回動角度制御を行ってもよい。その場合は、より高度な車両の遮光制御が可能になる。
【0028】
また、太陽位置の検知に、方位センサ、太陽の位置データ、カメラ、照度センサの少なくとも2つ以上を組み合わせて構成してもよい。その場合、太陽の位置をより正確に知ることができるため、遮光制御の正確性が向上する。また、カメラに広角度で且つ立体視可能なものを用いることで、反射光、人工光、または曇天時の太陽位置の検知精度を向上できる。同時に稼動サンバイザを小型にでき、ルームミラー後部、フロントピラーへの日使用時の格納も可能になる。
【0029】
また、直接光以外の強い反射光、人工光に対しても、複数のサンバイザを用いる事で同時遮光も可能となる。
【0030】
また、複数のサンバイザを用いる事で、複数の乗員の遮光も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施例の車両用遮光装置の概念図である。
【図2】本発明の第2実施例の車両用遮光装置の概念図である。
【符号の説明】
【0032】
1 車両用遮光装置(第1実施例)
2 車両
3 ナビゲーションシステム(進行方向検知手段、時刻手段)
5 入射方向演算装置(入射方向演算手段)
9a、9b サンバイザ
12 ガイドレール
13a、13b 制御装置(制御手段)
17 測距センサ
20 車両用遮光装置(第2実施例)
21 第一偏光フィルム
22 第二偏光フィルム
23a、23b サンバイザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置と進行方向を検知する進行方向検知手段と、
現在の月日及び時刻を検知する時刻手段と、
前記進行方向検知手段と前記時刻手段に基づいて、乗員の位置に対する太陽光の入射方向を演算する入射方向演算手段と、
前記入射方向演算手段からのデータに基づいて車両用のサンバイザを制御する制御手段と、を備えた車両用遮光装置において、
前記車両の走行時に前記サンバイザは、前記入射方向演算手段からの信号に基づいて、前記制御手段により、フロントガラス上部の左右方向またはサイドガラス上部の乗員の目に直達光が入射するのを妨げる位置に自動で移動すること、を特徴とする車両用遮光装置。
【請求項2】
前記サンバイザは、前記車両のルーフに設けたガイドレールを移動すること、を特徴とする請求項1に記載の車両用遮光装置。
【請求項3】
前記車両のフロントガラス上部またはサイドガラス上部に設けられた第一偏光フィルムと、
前記サンバイザを構成する第二偏光フィルムと、
前記第一偏向フィルムと前記第二偏光フィルムは重なり合うことで遮光すること、を特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の車両用遮光装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−239009(P2008−239009A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84040(P2007−84040)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)