説明

車両用電源装置

【課題】電気負荷の電力消費を抑制しつつ回生電力を有効に活用することができる車両用電源装置を提供する。
【解決手段】車両が、定常走行(例えば、一定速度)や加速走行している状態で、バッテリ電圧Vbが第1閾値電圧V1より高く、第2閾値電圧V2より低いときには、PWM制御部162は、バッテリ電圧Vbに応じてデューティ比を可変し、出力電圧が所定の一定値になるようにPWM制御(出力電圧一定制御)を行う。また、車両が減速走行している状態でオルタネータ11の発電電圧がVH又はその近傍値より高い場合に、バッテリ電圧Vbが第2閾値電圧V2より高いときには、PWM制御部162は、デューティ比を100%でPWM制御(高電圧時制御)を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の加速又は減速に応じて発電電圧が低下又は上昇する車載発電機と、該車載発電機で発電した電力により充電される車載バッテリとを備える車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両用の電源装置は、オルタネータ(車載発電機、交流発電機)及びバッテリなどを備えている。エンジンに連動してオルタネータで発電された電力は、バッテリの充電に利用されるとともに、車両に搭載された電気負荷に供給される。一般的には、オルタネータの発電電圧は約14V、バッテリ電圧は約12.8Vであるが、車両用電源装置の出力電圧は電気負荷の使用状況に応じて変動する。このため、車両用電源装置の出力電圧が変動した場合でも、電気負荷の機能が正常に作動するように設計されている。
【0003】
一方で、燃費向上を図るため、車両には充電制御システムが搭載されるようになった。充電制御システムは、車両の走行状態(例えば、加速走行、減速走行、定速走行、アイドリングなど)に応じて、オルタネータの発電電圧を調整することで、エンジン負荷を低減し、低燃費化を実現するものである(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】ハリアー 新型車解説書、トヨタ自動車株式会社、2003年2月7日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の充電制御システムにおいては、例えば、車両が加速している場合には、オルタネータの発電電圧を低下させて、発電によるエンジン負荷を低減し、エンジンの低燃費化を図り、車両が減速している場合には、オルタネータの発電電圧を上昇させることで、電力回生の効率を高めてバッテリを充電し、この回生電力を減速時以外に供給することで、エンジンの低燃費化を図っている。一方で、電気負荷の電力消費を抑制するために、必要な性能を発揮するのに要する一定の電力供給が望まれるが、減速時において回生電力が発電されている時に電気負荷への電力供給が停止していると、回生電力を有効に活用することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、電気負荷の電力消費を抑制しつつ回生電力を有効に活用することができる車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る車両用電源装置は、車両の加速又は減速に応じて発電電圧が低下又は上昇する車載発電機と、該車載発電機で発電した電力により充電される車載バッテリとを備える車両用電源装置において、前記車載バッテリの電圧を検出する電圧検出部と、前記車載バッテリからヒータを有する電気負荷に印加される出力電圧を制御する電圧制御部とを備え、前記電圧制御部は、前記電圧検出部で検出した電圧が閾値電圧より高い場合、前記電気負荷に印加する出力電圧を所定値より高くするように構成してあることを特徴とする。
【0007】
第2発明に係る車両用電源装置は、第1発明において、前記電圧制御部は、PWM制御により出力電圧を制御するように構成してあり、前記電圧検出部で検出した電圧が閾値電圧より高い場合、所定のデューティ比でPWM制御するように構成してあることを特徴とする。
【0008】
第3発明に係る車両用電源装置は、第2発明において、前記電圧制御部は、前記電圧検出部で検出した電圧が前記閾値電圧より低い場合、検出した電圧に応じてデューティ比を変更して所定の出力電圧を維持するように構成してあることを特徴とする。
【0009】
第4発明に係る車両用電源装置は、車両の加速又は減速に応じて発電電圧が低下又は上昇する車載発電機と、該車載発電機で発電した電力により充電される車載バッテリとを備える車両用電源装置において、前記車載バッテリからヒータを有する電気負荷に印加される出力電圧を制御する電圧制御部と、前記車載発電機が回生発電を行っているか否かを判定する回生状態判定部とを備え、前記電圧制御部は、前記回生状態判定部で回生発電を行っていると判定した場合、前記電気負荷に印加する出力電圧を所定値より高くするように構成してあることを特徴とする。
【0010】
第5発明に係る車両用電源装置は、第4発明において、前記電圧制御部は、PWM制御により出力電圧を制御するように構成してあり、前記回生状態判定部で回生発電を行っていると判定した場合、所定のデューティ比でPWM制御するように構成してあることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、車載バッテリの電圧を検出する電圧検出部と、車載バッテリからヒータを有する電気負荷に印加される出力電圧を制御する電圧制御部とを備える。車両が加速状態の場合には、車載発電機の発電電圧が低下し、車載バッテリの電圧を低くする。また、車両が減速状態の場合には、車載発電機の発電電圧が上昇し、車載バッテリの電圧を高くする。電圧制御部は、電圧検出部で検出した電圧が閾値電圧より高い場合、電気負荷に印加する出力電圧を所定値より高くする。出力電圧の所定値は、例えば、車両が加速も減速もしていない一定速度で走行している場合の出力電圧である。この場合、閾値電圧を、例えば、車両の減速により車載バッテリの電圧が高くなる状態を検出することができる値とすることで、車両が減速して車載発電機の発電電圧が上昇し、車載バッテリの電圧が高くなった場合に、ヒータを有する電気負荷に印加する出力電圧を所定値より高くすることができる。これにより、車両の減速時に増加する電力を、ヒータを有する電気負荷に供給して電気負荷の性能(例えば、デフォッガの場合には曇り除去など)を高めることができる。
【0012】
本発明にあっては、電圧制御部は、PWM制御により出力電圧を制御するように構成してあり、電圧検出部で検出した電圧が閾値電圧より高い場合、所定のデューティ比(例えば、100%)でPWM制御する。PWM制御による出力電圧は、例えば、実効値や平均値である。これにより、ヒータを有する電気負荷に対して、車両の減速時に増加する電力から最大限の電力を供給するようにして、最大限の性能を引き出すとともに、無駄な消費電力の発生を低減することができる。
【0013】
本発明にあっては、電圧制御部は、電圧検出部で検出した電圧が閾値電圧より低い場合、検出した電圧に応じてデューティ比を変更して所定の出力電圧を維持する。検出した電圧が閾値電圧より低い場合とは、例えば、車両が一定速度で走行している場合である。このような場合には、電気負荷に印加する出力電圧を一定にすることで、電気負荷の消費電力を低減し、定常的に燃費向上と節電とを図ることができる。
【0014】
本発明にあっては、車載バッテリからヒータを有する電気負荷に印加される出力電圧を制御する電圧制御部と、車載発電機が回生発電を行っているか否かを判定する回生状態判定部とを備える。回生状態判定部は、例えば、車載発電機の発電情報、あるいは車速情報などから回生発電を行っているか否かを判定することができる。電圧制御部は、回生状態判定部で回生発電を行っていると判定した場合、電気負荷に印加する出力電圧を所定値より高くする。出力電圧の所定値は、例えば、車両が加速も減速もしていない一定速度で走行している場合の出力電圧である。この場合、閾値電圧を、例えば、車両が減速して車載発電機の発電電圧が上昇した場合に、ヒータを有する電気負荷に印加する出力電圧を所定値より高くすることができる。これにより、車両の減速時に増加する電力を、ヒータを有する電気負荷に供給して電気負荷の性能(例えば、デフォッガの場合には曇り除去など)を高めることができる。
【0015】
本発明にあっては、電圧制御部は、PWM制御により出力電圧を制御するように構成してあり、回生状態判定部で回生発電を行っていると判定した場合、所定のデューティ比(例えば、100%)でPWM制御する。PWM制御による出力電圧は、例えば、実効値や平均値である。これにより、ヒータを有する電気負荷に対して、車両の減速時に増加する電力から最大限の電力を供給するようにして、最大限の性能を引き出すとともに、無駄な消費電力の発生を低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電気負荷にとって必要な性能を発揮するのに要する電力以上の無駄な消費電力の発生を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づき説明する。図1は本発明に係る車両用電源装置10の構成の一例を示すブロック図である。車両用電源装置10は、車載発電機としてのオルタネータ11、オルタネータ11に付設され、オルタネータ11で発電する発電電圧を制御するレギュレータ12、オルタネータ11で発電した電力により充電される車載バッテリとしてのバッテリ14、バッテリ14の充電電流及び放電電流を検出する電流センサ15、バッテリ14への充電を制御する充電制御ECU(Electronic Control Unit)13、バッテリ14からの出力電圧を制御する電圧制御部としての制御部16、及び制御部16から出力される制御信号によりオンオフを繰り返すFET17などを備えている。
【0018】
充電制御ECU13には、車速検出器2が接続されている。オルタネータ11とバッテリ14との間の電路にはヒューズF0を設けている。オルタネータ11とバッテリ14からの電力を供給するための電路は、電気負荷に応じて分岐され、例えば、ヒータを有する電気負荷としてのデフォッガ3は、ヒューズF1、FET17を介してバッテリ14に接続されている。同様に他の電気負荷(不図示)は、ヒューズF2を介してバッテリ14に接続されている。ヒューズF0、F1、F2、制御部16、FET17などは、不図示のリレー等を設けたリレーボックス1に収納されている。また、デフォッガ3の入切操作を行うためのスイッチSW1が制御部16に接続されている。スイッチSW1は、例えば、運転者や搭乗者が操作してデフォッガ3の電源を入切することができる。
【0019】
また、制御部16は、マイクロコンピュータやメモリなどを備え、バッテリ14の電圧Vbを検出する電圧検出部161、FET17のオンオフをPWM制御により制御する電圧制御部としてのPWM制御部162などを備えている。
【0020】
なお、図1で示す車両用電源装置10の構成は、一例であって、車両に搭載する場合には、その一部又は全部をいずれの位置に配置するかは適宜設定することができる。また、図1には示されていないが、ヒータを有する電気負荷としては、デフォッガ3の他、デアイサやミラーヒータなどをデフォッガ3とは別の電路に設けることができる。
【0021】
次に本実施の形態の車両用電源装置10の動作について説明する。オルタネータ11は、不図示のエンジンに連動して発電する。レギュレータ12は、オルタネータ11の界磁電流を調節することにより、オルタネータ11で発電される発電電圧を定電圧制御、あるいは昇降圧制御する。
【0022】
オルタネータ11は、発電した電力を、オルタネータ11内部の整流器(不図示)で整流した後、リレーボックス1内のヒューズF0を通じて、バッテリ14に充電する。バッテリ14に充電される充電電流は、電流センサ15で検出され、充電制御ECU13へ出力される。また、充電制御ECU13は、バッテリ14の電圧Vbを検出する。
【0023】
充電制御ECU13は、車速検出器2で検出した車速を取得し、取得した車速に基づいて、車両の走行状態(例えば、アイドリング、加速走行、定常走行及び減速走行など)を判定し、判定した走行状態に応じてバッテリ14の充電制御を行う。
【0024】
図2は充電制御ECU13による充電制御動作例を示す説明図である。図2に示すように、車両の走行状態としては、例えば、アイドリング、加速走行、定常走行及び減速走行などがあり、各走行状態に応じて、オルタネータ11の発電モード、バッテリ14のバッテリ容量、オルタネータ11の発電電圧、車速パターンが異なる。
【0025】
例えば、加速走行の場合には、オルタネータ11の発電電圧を通常(定常)の値VNからVLに下げる。これにより、オルタネータ11の発電によるエンジンの負荷を低減してエンジンの低燃費化を図ることができる。
【0026】
一方、減速走行の場合には、オルタネータ11の発電電圧を通常(定常)の値VNからVHに上げる。これにより、オルタネータ11で発電する電力が増加し、バッテリ14への充電電流を増やすとともに、ヒューズF2を介して他の電気負荷(不図示)への供給電力を増加させる。
【0027】
なお、この場合、図2の発電電圧で示す電圧VL、VN、VHはそれぞれ、12.5V、13.5V、14.5V程度である。そして、発電電圧がVHの状態は、回生電力を発電している状態である。本実施の形態では、後述するように、かかる回生電力を有効に活用することができる。
【0028】
制御部16は、デフォッガ3用のスイッチSW1が入状態にされた場合、FET17をオフ状態からオン状態にするとともに、電圧検出部161で検出したバッテリ14の電圧Vbに応じて、PWM制御部162で所定のデューティ比でFET17をオンオフすべくPWM制御を行う。
【0029】
図3はPWM制御部162のPWM制御の一例を示す説明図である。図3において、横軸はバッテリ電圧Vbを示し、縦軸はデューティ比を示す。図3に示すように、PWM制御のための閾値電圧として、第1閾値電圧V1(例えば、12V)、第2閾値電圧(例えば、14V)を予め設定又は記憶しておく。この場合、第1閾値電圧V1(12V)は、発電電圧VL(例えば、12.5V)より若干低い値か同程度の値とすることができる。また、第2閾値電圧V2(14V)は、発電電圧VH(例えば、14.5V)より若干低い値か同程度の値とすることができる。
【0030】
図3に示すように、バッテリ電圧Vbが第1閾値電圧V1より低いときには、PWM制御部162は、デューティ比を100%でPWM制御(低電圧時制御)を行う。
【0031】
また、車両が、定常走行(例えば、一定速度)や加速走行している状態で、バッテリ電圧Vbが第1閾値電圧V1より高く、第2閾値電圧V2より低いときには、PWM制御部162は、バッテリ電圧Vbに応じてデューティ比を変更し、出力電圧が所定の一定値になるようにPWM制御(出力電圧一定制御)を行う。
【0032】
また、車両が減速走行している状態でオルタネータ11の発電電圧がVH又はその近傍値より高い場合に、バッテリ電圧Vbが第2閾値電圧V2より高いときには、PWM制御部162は、デューティ比を100%でPWM制御(高電圧時制御)を行う。なお、この場合、デューティ比は100%に限定されるものではなく、一定の比であれば、90%、85%などの値でもよい。
【0033】
図4はバッテリ電圧Vbに応じてデフォッガ3に供給される負荷電力の変遷を示す説明図である。図4(a)は車両の走行状態の移り変わりを示し、一例として、加速走行、定常走行、減速走行、定常走行、減速走行、定常走行の順に走行状態が移り変わったとする。
この場合、図4(b)に示すように、オルタネータ11の発電電圧は、図4(a)の車両の走行状態の変化に対応して、加速状態では発電電圧がVL、定常状態では発電電圧がVN、減速状態では発電電圧がVHとなる。そして、減速状態でオルタネータ11の発電電圧がVHのときが、回生電力を発電しているときである。
【0034】
また、図4(c)に示すように、車両の走行状態が定常走行や加速走行の場合には、デフォッガ3に印加される出力電圧が一定(所定値)になるようにデューティ比を可変して、PWM制御を行う。
【0035】
また、車両の走行状態が減速走行の場合には、デフォッガ3に印加される出力電圧が、定常状態のときの出力電圧(所定値)よりも高くなるように、デューティ比を100%でPWM制御を行う。
【0036】
そして、図4(d)に示すように、デフォッガ3に供給される負荷電力は、車両の走行状態が減速走行の場合に、他の状態(加速走行、定常走行)に比べて多くなる。例えば、図4(d)中破線で示した部分が余剰の電力に相当する。これにより、減速状態でオルタネータ11の発電電圧がVHのときに、回生電力を利用してデフォッガ3の性能(すなわち、曇りを取ること)を高めることができる。そして、前もって回生電力を利用してデフォッガ3の性能を最大限発揮させて曇りを取ることができているので、オルタネータ11の発電電圧がVN以下に低下した場合でも、曇りの発生を抑制して、その効果を持続させることができる。また、余剰電力をデフォッガ3の性能を発揮させるために利用できるので、電気負荷にとって必要な性能を発揮するのに要する電力以上の無駄な電力として消費されることを低減することができる。
【0037】
デフォッガ3のようにヒータを有する電気負荷の場合、回生電力が発生したときに、その回生電力を利用して性能を最大限発揮させておくことで、仮にデフォッガ3に供給される電力が低下した場合でも、その効果を持続させることができるという性質がある。そして、ヒータを有する電気負荷にあっては、車両の減速時の発電電力に余裕がある場合には、ヒータに余剰の電力を供給して、所定の機能や性能(例えば、曇りを取ること)を最大限引き出し、車両が一定速度で走行する場合には、ヒータによる消費電力を低減し、定常的に燃費向上と節電とを図ることができる。なお、デフォッガ3の他には、例えば、デアイサやミラーヒータなどの電力を熱として利用する電気負荷であれば、本実施の形態を適用することで無駄な消費電力を低減することができる。
【0038】
上述のとおり、本実施の形態にあっては、PWM制御部162は、バッテリ電圧Vbが第2閾値電圧V2より高い場合、所定のデューティ比(例えば、100%)でPWM制御する。これにより、デフォッガ3のようなヒータを有する電気負荷に対して、車両の減速時に増加する電力(回生電力)から最大限の電力を供給するようにして、最大限の性能を引き出すとともに、無駄な消費電力の発生を低減することができる。
【0039】
また、PWM制御部162は、バッテリ電圧Vbが第2閾値電圧V2より低い場合、バッテリ電圧Vbに応じてデューティ比を可変して所定の出力電圧を維持する。これにより、電気負荷に印加する出力電圧を一定にして、電気負荷の消費電力を低減し、定常的に燃費向上と節電とを図ることができる。
【0040】
実施の形態2
図5は実施の形態2の車両用電源装置10の構成の一例を示すブロック図である。実施の形態1との違いは、回生状態判定部163を備える点である。回生状態判定部163は、例えば、充電制御ECU13からオルタネータ11の発電情報を取得し、オルタネータ11が回生発電を行っているか否かを判定する。なお、回生状態判定部163は、車速検出器2から車速情報を取得して、オルタネータ11が回生発電を行っているか否かを判定することもできる。
【0041】
回生状態判定部163で回生発電を行っていると判定した場合、例えば、車両が減速走行している状態でオルタネータ11の発電電圧が上昇した場合、PWM制御部162は、デューティ比を100%でPWM制御(高電圧時制御)を行う。なお、この場合、デューティ比は100%に限定されるものではなく、一定の比であれば、90%、85%などの値でもよい。このように、制御部16は、回生状態判定部163で回生発電を行っていると判定した場合、デフォッガ3に印加する出力電圧を所定値より高くする。出力電圧の所定値は、例えば、車両が加速も減速もしていない一定速度で走行している場合の出力電圧である。この場合、閾値電圧を、例えば、車両が減速してオルタネータ11の発電電圧が上昇した場合に、デフォッガ3に印加する出力電圧を所定値より高くすることができる。これにより、車両の減速時に増加する電力を、ヒータを有する電気負荷に供給して電気負荷の性能(例えば、デフォッガの場合には曇り除去など)を高めることができる。
【0042】
また、回生状態判定部163で回生発電を行っていない判定した場合、例えば、車両が、定常走行(例えば、一定速度)や加速走行している状態でオルタネータ11の発電電圧が上昇していない場合、PWM制御部162は、バッテリ電圧Vbに応じてデューティ比を変更し、出力電圧が所定の一定値になるようにPWM制御(出力電圧一定制御)を行う。以上のように、実施の形態2においても、ヒータを有する電気負荷に対して、車両の減速時に増加する電力から最大限の電力を供給するようにして、最大限の性能を引き出すとともに、無駄な消費電力の発生を低減することができる。
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、電気負荷の消費電力を低減でき、定常的に燃費向上の節電を行いながら、発電電圧が高くなり余剰電力が発生する場合には、ヒータを有する電気負荷に対して積極的に増加した電力を供給することで、その電気負荷の性能を最大限に高めるとともに、その効果を維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る車両用電源装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】充電制御ECUによる充電制御動作例を示す説明図である。
【図3】PWM制御部のPWM制御の一例を示す説明図である。
【図4】バッテリ電圧に応じてデフォッガに供給される負荷電力の変遷を示す説明図である。
【図5】実施の形態2の車両用電源装置の構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0045】
1 リレーボックス
3 デフォッガ
11 オルタネータ
12 レギュレータ
13 充電制御ECU
14 バッテリ
15 電流センサ
16 制御部
161 電圧検出部
162 PWM制御部
163 回生状態判定部
17 FET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の加速又は減速に応じて発電電圧が低下又は上昇する車載発電機と、該車載発電機で発電した電力により充電される車載バッテリとを備える車両用電源装置において、
前記車載バッテリの電圧を検出する電圧検出部と、
前記車載バッテリからヒータを有する電気負荷に印加される出力電圧を制御する電圧制御部と
を備え、
前記電圧制御部は、
前記電圧検出部で検出した電圧が閾値電圧より高い場合、前記電気負荷に印加する出力電圧を所定値より高くするように構成してあることを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記電圧制御部は、
PWM制御により出力電圧を制御するように構成してあり、前記電圧検出部で検出した電圧が閾値電圧より高い場合、所定のデューティ比でPWM制御するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記電圧制御部は、
前記電圧検出部で検出した電圧が前記閾値電圧より低い場合、検出した電圧に応じてデューティ比を変更して所定の出力電圧を維持するように構成してあることを特徴とする請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
車両の加速又は減速に応じて発電電圧が低下又は上昇する車載発電機と、該車載発電機で発電した電力により充電される車載バッテリとを備える車両用電源装置において、
前記車載バッテリからヒータを有する電気負荷に印加される出力電圧を制御する電圧制御部と、
前記車載発電機が回生発電を行っているか否かを判定する回生状態判定部と
を備え、
前記電圧制御部は、
前記回生状態判定部で回生発電を行っていると判定した場合、前記電気負荷に印加する出力電圧を所定値より高くするように構成してあることを特徴とする車両用電源装置。
【請求項5】
前記電圧制御部は、
PWM制御により出力電圧を制御するように構成してあり、前記回生状態判定部で回生発電を行っていると判定した場合、所定のデューティ比でPWM制御するように構成してあることを特徴とする請求項4に記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−120515(P2010−120515A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295940(P2008−295940)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)