説明

車両走行支援装置

【課題】路面を撮影した画像から停止線の有無を判定できない場合にも、確実に停止線の位置を検出し車両を停止させるとともに、停止線の位置を用いて車両の自己位置を更新する車両走行支援装置を構成する。
【解決手段】停止線の中に磁気粒子を混合し、車両がその停止線で停車する度に計測した、GPS測位に基づく停止線の位置の計測結果を統合することで、停止線の推定位置精度を向上させるとともに、その停止線の推定位置から、逆に、車両の自己位置を推定する車両走行支援装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行支援装置に関するものである。例えば、停止線による確実な停止と自己位置推定を可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車運転における安全性向上を目的として、様々な装備が車両に取り付けられてきている。例えば、高速道路にて、車載カメラで撮影した映像から白線などの車線境界線を抽出して横方向の現在位置を推定して警報や制御に用いる技術が実用化されている。
【0003】
また、特に一般道では、横断歩道や交差点の手前に存在する路面上に敷設された停止線を認識し停止する必要があり、特許文献1には、CCDカメラから入力された画像から停止線の有無を判定する停止線認識装置に関する技術が開示されている。
【0004】
一方、車載カメラで撮影した映像から信号機,標識,車線数,道路幅等の情報を抽出し、地図情報と比較して現在位置を修正する方法が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−85562号公報
【特許文献2】特開平9−152348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、カメラから入力された画像から停止線の有無を判定していた。しかし、停止線に汚れが付着したり、落ち葉や砂,雪で停止線が覆われたりした場合には、画像で判断することが困難となる。また同様に、車両の自己位置を、車載カメラで撮影した映像から得られた道路標示や道路標識等の情報を、地図情報と比較して現在位置を修正する方法は、天候に左右される。これは、車両の自己位置を求める手法として一般的なGPS測位を用いた場合でも同様である。そこで、天候などに左右されることなく、自己位置を高い精度で取得できる手段が必要とされる。
【0007】
本発明の目的は、自動車などの車両に関し、停止線による確実な停止と自己位置推定を可能とすることにある。例えば、路面を撮影した画像から停止線の有無を判定できない場合にも、確実に停止線の位置を検出するとともに、天候などに左右されることなく、自己位置を高い精度で取得できる手段を実現する車両走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0009】
本願は上記目的を解決する構成を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、以下の構成により達成される。
(1)磁気粒子を含む道路標示と、前記道路標示を検出する検出部と、前記道路標示の位置および方向を計測する計測部と、グローバル座標系での自己位置を計測する自己位置計測部と、を備える車両と、を有し、前記車両の測位結果から前記道路標示のグローバル座標系での位置および方向を推定する位置方向推定部を有する構成。
(2)強磁性体を含む道路標示と、前記道路標示に磁気パターンを着磁させる手段と、前記道路標示の磁気パターンを検出する検出部と、前記道路標示の位置および方向を計測する自己位置計測部と、グローバル座標系での自己位置を計測する手段とを備える車両と、を有し、前記車両の測位結果から前記道路標示のグローバル座標系での位置および方向を推定する構成。
(3)上記(1)において、前記道路標示は磁気粒子を含む停止線であり、前記車両は、前記停止線に停止する度に取得した複数回の測位結果を記録する記録部を有し、前記位置方向推定部は、前記記録部に記憶された複数回の測位結果から前記停止線のグローバル座標系での位置および方向を推定することを特徴とする構成。
(4)強磁性体を含む停止線と、前記停止線に磁気パターンを着磁させる手段と、前記停止線を検出する検出部と、その検出結果に基づいて停止する停止制御部と、停止線の位置および方向を計測する計測部と、前記車両のグローバル座標系での自己位置を計測する自己位置計測部とを備える車両とを有し、前記停止線のグローバル座標系での位置および方向を推定することを特徴とする構成。
(5)上記(1)または(3)において、前記道路標示は磁気粒子を含む停止線であり、前記車両は、前記停止線に停止中、複数回取得した測位結果を記録する記録部を有し、前記位置方向推定部は、前記記録部に記憶された複数回の測位結果から前記停止線のグローバル座標系での位置および方向を推定することを特徴とする構成。
(6)上記(5)において、更に管理サーバーを有し、前記車両は前記管理サーバーと通信する通信部を有し、前記通信部は、前記車両により記録された前記道路標示のグローバル座標系での位置と方向に関するデータを、前記管理サーバーとの間で通信し、前記管理サーバーは、前記データを用いて、前記停止線の位置と方向を推定することを特徴とする構成。
(7)上記(2)において、前記道路標示に着磁させる磁気パターンに、付加的な情報を付け加えることを特徴とする構成。
(8)上記(1)において、前記道路標示の手前に磁気ネイルもしくは磁気ラインを設置し、これらを前記車両が走行中に検出することで、前記道路標示に前記車両を誘導することを特徴とする構成。
(9)上記(1)において、前記道路標示の手前の区画線に強磁性体を混合して設置し、前記区画線付近の各位置における磁気を計測して記録しておき、この記録と前記車両が走行中に計測した磁気とを比較することで前記道路標示を基準とした前記車両の位置を推定し、前記道路標示に前記車両を誘導することを特徴とする構成。
(10)上記(1)において、前記道路標示の付近の各位置における地磁気を計測して記録しておき、この記録と前記車両が走行中に計測した地磁気とを比較することで前記道路標示を基準とした前記車両の位置を推定し、前記道路標示に誘導することを特徴とする構成。
(11)上記(1)において、前記道路標示の磁気粒子を含む部分を複数列で構成することを特徴とする構成。
(12)上記(2)において、前記道路標示に複数列からなる磁気パターンを着磁することを特徴とする構成。
(13)道路標示の位置および方向を計測する計測部とグローバル座標系での自己位置を計測する自己位置計測部と、前記自己位置計測部の計測結果に基づき、前記道路標示のグローバル座標系での位置および方向を推定する位置方向推定部を有する構成。
(14)上記(13)において、推定された前記道路標示のグローバル座標系での位置および方向を記録する記録部と、外部情報機器と通信する通信部を有し、前記通信部は、前記記録された前記道路標示のグローバル座標系での位置と方向に関するデータを、前記外部情報機器との間で通信し、
前記データを用いて、車両の誘導を行う制御部と、を有する構成。
(15)道路標示の磁気を検出し、前記道路標示の位置および方向を計測し、グローバル座標系での車両位置を計測し、前記車両位置の計測結果に基づき、前記道路標示のグローバル座標系での位置および方向に関するデータを用いて、車両の誘導を行う構成。
(16)路面に第一の塗料を塗布して視認用標示部を形成し、路面の色と同系色の第二の塗料と磁気粒子を混合して磁気検出用標示部を形成し、前記第二の塗料は、前記第一の塗料より表面反射率が低いものを用い、磁気検出用標示部には、長手方向の基準位置を示すため、磁気粒子を含有しない位置検出基準部位を形成し、外部から前記磁気粒子に着磁することを特徴とする構成。
(17)上記(16)において、前記磁気検出用標示部を複数の帯状に配置することを特徴とする構成。
(18)上記(16)において、前記磁気検出用標示部は、コード化した磁気パターンを有し、付加的な情報を記録させることを特徴とする構成。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動車などの車両に関し、停止線による確実な停止と自己位置推定を可能とできる。例えば、従来は、天候などの影響で路面を撮影した画像から停止線の有無を判定できない場合には、停止線の位置を検出することが困難であった。しかし、以下の実施例で示すように、天候に左右されることなく停止線の位置を検出し車両を停止させることができるとともに、車両の自己位置を高い精度で取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例の車両走行支援装置の構成の説明図。
【図2】本発明の一実施例の構成要素である停止線の説明図。
【図3】本発明の一実施例の構成要素である車両の機能構成の説明図。
【図4】本発明の一実施例の車両の構成要素の説明図。
【図5】本発明の一実施例の車両に搭載された外界センサー、内界センサーの説明図。
【図6】本発明の一実施例の磁気粒子を含む停止線の位置推定と、その停止線を用いた車両の自己位置推定の説明図。
【図7】本発明の一実施例の複数の車両が取得した磁気粒子を含む停止線の位置の統合と、その停止線を用いた車両の自己位置推定の説明図。
【図8】本発明の一実施例の磁気粒子を含む停止線の位置の計測方法の説明図。
【図9】本発明の一実施例の磁気粒子を含む停止線の向きの計測方法の説明図。
【図10】本発明の一実施例の停止線の位置の計測方法の説明図。
【図11】実施例2における停止線の構成の説明図。
【図12】実施例3における停止線の構成と磁気検出用センサーとの説明図。
【図13】実施例5における、車両を停止線に誘導する磁気ネイルの説明図。
【図14】実施例5における、車両を停止線に誘導する磁気ラインの説明図。
【図15】実施例8の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の一実施例を図1から図9を用いて説明する。
【0014】
図1に、道路標示として停止線を例に挙げ、本実施例の車両走行支援装置の構成を表す。本実施例の装置は、複数の磁気粒子を含む停止線1と、その停止線1を検出すると停止し、停止線1の位置と方向を計測する複数の車両2、さらに、複数の車両が計測した停止線位置情報を管理する停止線位置管理サーバー99から構成されている。各車両2は、それぞれ、停止線検出用磁気センサー201と、停止線位置計測用磁気センサー202と、測位装置32と、停止線位置管理サーバー99と通信する通信装置21とを有する。
【0015】
まず、図2を用いて、停止線1について説明する。停止線1は、従来の道路標示と同様の白色の塗料を路面に塗布して形成される視認用標示部12と、視認用標示部12の長辺の12aと平行に長辺が形成され、路面の色と同系色の塗料と磁気粒子を混合して形成される磁気検出用標示部14によって構成される。
【0016】
視認標示部2に用いる白色系の塗料は、JIS K5665 1種〜3種に準じた従来からの路面標示用塗料を用いることができ、再帰反射性が得られるガラスビーズや夜間での発光輝度が得られる蓄光性顔料などを含有するものが好ましい。
【0017】
一方、磁気検出用標示部14には、表面反射率が低いものを用いることにより前記視認用標示部12の表面に対して明暗の差を大きくすることで、視認用標示部12を人やカメラが検出しやすくなることから、従来から道路標示に用いられていた原料に黒色系の顔料を配合したものが用いられ、艶消剤が配合されるのが望ましい。
【0018】
磁気検出用標示部14には、長手方向の基準位置を示すため、磁気粒子を含有しない位置検出基準部位15が存在し、図1に示した停止線位置計測用磁気センサー202によって検出される。
【0019】
なお、磁気検出用標示部14については、磁気粒子を混合した部材そのものを路面に塗布するのではなく、強磁性体を混合した部材を路面に融着させた後に、着磁装置を用いて着磁させることも考えられる。こうすることで、融着により道路標示の耐久性が向上するとともに、融着時の熱による消磁作用を回避することができる。
【0020】
次に、図3を用いて車両2について説明する。図3に示すように、車両2は、停止線位置計測装置20,通信装置21,外界センサー22,内界センサー23,環境情報記録装置24,車両状態推定装置25,制御量演算装置26,車両制御装置27,前輪操舵モータ28,後輪駆動モータ29と、を有し、それぞれが、図3に例示するよう、制御線又は情報線で接続され、構成されている。
【0021】
図4を用いて、車両に搭載された外界センサー22,内界センサー23およびそれらの情報を処理する車両状態推定装置25について図4を用いて説明する。本実施例では、外界センサー22として、停止線1を検出し車両を停止させるために用いられる停止線検出用磁気センサー201,車両座標系を基準とした停止線の位置を計測する停止線位置計測用磁気センサー202,車両前方を撮像するテレビカメラ31,グローバル座標系での車両の自己位置を計測する測位装置32,車両の前方に取り付けられた周囲観測装置33を用いている。また、内界センサー23として、エンコーダー41,車両姿勢センサー42を用いている。車両状態推定装置25は、外界センサー22,内界センサー23を使用して得たデータから、車両の位置,方位,速度,障害物の位置を推定するために設けられた装置である。
【0022】
停止線位置計測装置20は、停止線検出用磁気センサー201と停止線位置計測用磁気センサー202の出力と、測位装置32で求めたグローバル座標系での車両位置とを用いて、停止線の位置および方向を求める。なお、測位装置32としては、GNSS(Global Navigation Satellite System)やレーザスキャナによるスキャンマッチングなどを用いて実現している。
【0023】
さらに、停止線位置計測装置20は、停止中に複数回計測される停止線の位置および方向を環境情報記録装置24によって記録し、蓄積されたデータを基に統計的処理をもって停止線位置および方向を推定する。
【0024】
次に、5を用いて、図4で示される停止線を検出する磁気センサーである停止線検出用磁気センサー201,停止線位置計測用磁気センサー202について更に説明する。
【0025】
図5のように、停止線検出用磁気センサー201は、車両2に設置され、車両2の前端が停止線の上にさしかかった時に、停止線検出用磁気センサー201が磁気検出用標示部14を検出すると、車両制御装置27(図5に示されていないが、図4に示すように車両2に搭載される。)が車両2を停止させる。
【0026】
停止線位置計測用磁気センサー202は、車両停止後に位置検出基準部位15を検出する。その検出結果と、そのときに測位装置32によって測位した車両の自己位置、左右の停止線検出用磁気センサー201が磁気検出用標示部14を検出した時点での車両自己位置から、停止線位置計測装置20によって停止線の位置と方向を導出する。
【0027】
テレビカメラ31は、停止線の認識のほか、障害物の位置検出の精度を向上させるために用いる。
【0028】
車両制御装置27は、制御量演算装置26から出力された車速命令値および操舵命令値に対応した速度で前輪操舵モータ28と後輪駆動モータ29を回転させる。
【0029】
例えば、測位装置32によって測位した車両の自己位置が停止線の位置に近づくにつれて、制御量演算装置26は車両を徐々に減速させつつ、停止線位置計測用磁気センサー202が停止線の位置検出基準部位15上にくるように制御量を演算する。
【0030】
次に、本実施例の一連の動作について説明する。
【0031】
図6は、本実施例の磁気粒子を含む停止線の位置推定と、その停止線を用いた車両の自己位置推定の説明図である。図6に示す流れで、停止線位置の推定処理は、実施される。
【0032】
まず、停止線位置の推定処理が開始すると、ステップ401において、車両の左右の磁気センサーにより停止線を検出すると、ステップ402において、制御量演算装置26は車両制御装置27に停止指示を出し、車両を停止させる。
【0033】
ステップ403で車両状態推定装置25が車両の停止を確認すると、ステップ401にて、左右の停止線検出用磁気センサー201が停止線を検出した時点より車両が移動した移動量Δxl,Δxrと旋回角度Δωl,Δωrとを、ステップ404においてそれぞれ計算する。
【0034】
ステップ405において、これらの値から、車両座標系における停止線の向きαを導出する。次に、ステップ406で、測位装置32を用いてグローバル座標系での車両位置を計測する。
【0035】
図5で示すように、ステップ407では、図5のように、車両座標系における停止線の基準位置である位置検出基準部位15を停止線位置計測用磁気センサー202によって検出する。
【0036】
ステップ405,407で求めた車両座標系における停止線の向きと位置は、測位装置32による測位結果を用いて、ステップ408においてグローバル座標系における値に換算する。その値はステップ409において、測位精度や観測衛星数,測位精度劣化係数(DOP)などとともに環境情報記録装置24に記録する。ステップ410において、制御量演算装置26が車両を動かす指令を出し車両が異動開始したか否か判定する。制御量演算装置26が車両を動かす指令を出すまでの間、ステップ404から410を繰り返す。
【0037】
車両が動き出したステップ411において、環境情報記録装置24に記録されたデータを統合する。その際、(a)観測衛星数が多い、(b)測位精度劣化係数(DOP)が小さい、(c)衛星の配置が測位精度の上で都合がよい、(d)観測時に障害物が付近に存在しない、(e)天気がよい、などを基準に選んだ上で、最尤推定などの統計的手法を用いて停止線の位置と向きを推定する。
【0038】
ステップ412では、測定回数などが十分に多く、推定した停止線の位置と向きの信頼性が十分であるかどうかを判断し、信頼性が十分と判断した場合のみ、ステップ413において、計測し推定した停止線位置と向きに基づいて車両の自己位置を更新し、停止線位置の推定処理が終了する。
【0039】
これにより、精度が天気や衛星配置などに左右されずに、グローバル座標系での車両の自己位置を求めることが可能となる。
【0040】
一方、図7の流れで、複数の車両を運用する場合について、停止線の位置の推定処理が実施される。すなわち、図7は、本実施例の複数の車両が取得した磁気粒子を含む停止線の位置の統合と、その停止線を用いた車両の自己位置推定の説明図である。
【0041】
図7のフローにおいて、ステップ501からステップ510までは図6のステップ401からステップ410までのフローと同じである。そして、ステップ511において、通信装置21により停止線の位置情報の記録を停止線位置管理サーバー99へと送信し、ステップ512において、他の車両による停止線位置情報を取得する。そして、ステップ513において、車両1が単独で取得した停止線位置情報の記録と、停止線位置管理サーバー99から取得した停止線位置情報の記録とを統合することで、停止線の位置と向きの推定精度を向上させる。最後に、ステップ514では、測定回数などが十分に多く、推定した停止線の位置と向きの信頼性が十分であるかどうかを判断し、信頼性が十分と判断した場合のみ、ステップ515において、ここで計測し推定した停止線位置と向きに基づいて車両の自己位置を更新し、停止線位置の推定処理が終了する。
【0042】
なお、図8,図9のように、停止線の位置の計測は、実施される。図8は、本実施例の磁気粒子を含む停止線の位置の計測方法の説明図である。図8において、停止線位置計測用磁気センサー202は、車両停止後に位置検出基準部位15を検出している。ここで、位置検出基準部位15の幅102は、センサー間の間隔101よりも広くとる必要がある。
【0043】
ここで、例えば、図10のようになった場合、停止線位置計測用磁気センサー202−1から202−5の検出結果から、位置検出基準部位15の位置は202−3,202−4の中点とする。この位置検出基準部位15の位置を停止線の位置として計測する。
【0044】
なお、停止線位置計測用磁気センサー202を冗長に備え、磁気検出用標示部14の磁気を複数の停止線位置計測用磁気センサー202で検出したときにのみ、停止線位置と車両の自己位置を更新してもよい。これにより、停止線検出の信頼性を向上させることができる。
【0045】
一方、図9は、本実施例の磁気粒子を含む停止線の向きの計測方法の説明図である。図9における停止線の向きαは、左右の停止線検出用磁気センサー201が停止線を検出した時点より車両が移動した移動量Δxl,Δxrと旋回角度Δωl,Δωrから簡単に求めることができる。
【0046】
本実施例によれば、磁気粒子を混合した停止線を検出することで、雨や雪,停止線の上に落ち葉があるような環境でも確実に停止線を見つけることが可能となり、停止線の付近を車両が通りさえすれば、自己位置を修正することができる。そのため、天気やGNSS衛星の配置などに左右されずに、グローバル座標系での車両の自己位置を求めることが可能となる。
【実施例2】
【0047】
図11を用いて実施例2を説明する。図11は、実施例2における停止線の構成の説明図である。本実施例では、実施例1で例示した停止線について、図11のように、停止線の位置検出基準部位15を、コード化した横ラインを複数もつ構造とし、さらに、コードの異なる複数の位置検出基準部位15を停止線の磁気検出用標示部14に設置する例を示す。これにより、停止線に位置検出基準部位15を複数持たせることが可能となり、停止線位置計測用磁気センサー202の数を減らすことが可能となる。
【0048】
上記コード化した磁気パターンとしては、位置計測のためだけでなく、例えば、道路幅や次の交差点までの距離など、付加的な情報を記録させることもできる。
【0049】
なお、位置検出基準部位15を強磁性体で構成し、着磁により磁気パターンを作成するようにすることで、記録した情報を書き換えることが可能となる。
【実施例3】
【0050】
図12を用いて実施例3を説明する。図12は、実施例3における停止線の構成と磁気検出用センサーとの関係を示す説明図である。本実施例では、実施例1で例示した停止線位置計測用磁気センサー202として、図12のような、磁気パターンを可視化するマグネットビューワー203を使用する例を示す。本実施例では、図5のステップ407において、停止線に押し付けたマグネットビューワーをテレビカメラ31で撮影することで、車両座標系での停止線の位置と向きを、カメラ画像から検出することができる。
【0051】
磁気パターンとしては、位置計測のためだけでなく、例えば、道路幅や次の交差点までの距離など、付加的な情報を記録させることもできる。
【0052】
なお、位置検出基準部位15を強磁性体で構成し、着磁により磁気パターンを作成するようにすることで、記録した情報を書き換えることが可能となる。
【0053】
この手法を用いることで、停止線の位置計測精度を向上させることが可能となる。
【実施例4】
【0054】
実施例3の変形例として実施例4を説明する。本実施例では、実施例1で例示した停止線の構成において、停止線の視認用標示部12にも磁気粒子を混ぜておき、テレビカメラで視認できない場合に、停止線が破損しているか汚れているだけかを、磁気センサーに反応するかどうかで判断する例を示す。本実施例では、磁気センサーに反応しなければ、停止線が破損していると判断し、設置しなおす。
【0055】
これにより、停止線が破損状況の調査の信頼性が向上し、メンテナンスの時期を適切に決めることができる。
【実施例5】
【0056】
図13又は図14を用いて実施例5を説明する。図13は、実施例5における、車両を停止線に誘導する磁気ネイルの説明図である。図14は、実施例5における、車両を停止線に誘導する磁気ラインの説明図である。本実施例では、実施例1で例示した停止線の手前に、図13又は図14に示すように、停止線と垂直な直線16上に、磁気ネイル17、又は、磁気ライン18を設置する。磁気ラインは、磁気検出用標示部14と同じ材質である。
【0057】
これらを停止線検出用磁気センサー201で検出し、車両制御装置27によって直線16に沿うように車両2を制御する。
【0058】
これにより、停止線位置計測用磁気センサー202が停止線の位置検出基準部位15上にくるように制御することができ、実施例1と比べて、停止線位置計測用磁気センサー202の数を少なくすることが可能となる。
【0059】
なお、停止時の停止線位置計測用磁気センサー202と停止線の位置検出基準部位15との位置を近づけるため、停止線に近づくにつれて徐々に車両2の速度を落とすように車両制御装置27が制御するのが望ましい。またこのとき、停止線に近づくにつれて磁気ネイル17の間隔を狭めることで、スムーズに位置検出基準部位15に車両2を誘導することができる。
【実施例6】
【0060】
実施例5の変形例として実施例6を説明する。本実施例では、実施例1で例示した磁気粒子もしくは磁性体を混合した区画線を設置し、予め、道路上の各位置における磁気を、連続もしくは多値出力の停止線検出用磁気センサーを用いて検出し記録する。この値と、実際に車両が走行する際の停止線検出用磁気センサーの検出結果を比較し、区画線からの距離を推定する。そして、区画線からの距離が一定で、かつ、停止線位置計測用磁気センサー202が停止線の位置検出基準部位15上を通るように、車両制御装置27が、車両2を制御する。
【0061】
これにより、停止線位置計測用磁気センサー202が停止線の位置検出基準部位15上にくるように制御することができ、実施例1と比べて、停止線位置計測用磁気センサー202の数を少なくすることが可能となる。
【0062】
なお、停止線位置計測用磁気センサー202と停止線の位置検出基準部位15との停止時の位置を近づけるため、車両制御装置27は、停止線に近づくにつれて徐々に車両の速度を落とすように制御するのが望ましい。また、磁性体を混合した場合には、停止線からの距離に応じて磁気パターンを変化させるなど、付加的な情報を記録することが望ましい。
【実施例7】
【0063】
実施例6の変形例として実施例7を説明する。本実施例では、実施例1で例示した停止線の手前の領域の地磁気を、連続もしくは多値出力の停止線検出用磁気センサーを用いて検出し記録する。この値と、実際に車両が走行する際の停止線検出用磁気センサーの検出結果を比較し、停止線を基準とした座標系での車両の位置を推定する。
【0064】
これにより、停止線に対して垂直な向きに、かつ、停止線位置計測用磁気センサー202が停止線の位置検出基準部位15上を通るように制御することができ、実施例1と比べて、停止線位置計測用磁気センサー202の数を少なくすることが可能となる。
【0065】
なお、停止線検出後の制動距離を短くするため、停止線に近づくにつれて徐々に車両の速度を落とすように制御するのが望ましい。
【実施例8】
【0066】
図15を用いて、実施例1で示した停止線1の変形例として実施例8を説明する。
【0067】
停止線1は、従来の道路標示と同様の白色の塗料を路面に塗布して形成される視認用標示部12と、視認用標示部12の長辺の12aと平行に長辺が形成され、路面の色と同系色の塗料と磁気粒子を混合して形成される磁気検出用標示部14によって構成される。
【0068】
磁気検出用標示部14には、長手方向の基準位置を示すため、磁気粒子を含有しない位置検出基準部位15が存在し、図1に示した停止線位置計測用磁気センサー202によって検出される。本実施例では、図15のように、磁気検出用標示部14を複数列で構成する。
【0069】
このとき、停止線検出用磁気センサー201が通過した磁気検出用標示部14の数を数えることで、停止線と垂直な方向の位置が計測できる。このとき、より信頼性の高い計測を行うには表面の磁極はS極,N極を交互に配置することが望ましい。
【実施例9】
【0070】
第1の実施例において、車両通行区分や進行方向などの停止線以外の道路標示にも磁気粒子もしくは磁性体を混合する。そして、これらの道路標示を通過する度に道路標示の位置情報を計測し、通信装置21により道路標示の位置情報の記録をサーバーへと送信し、他の車両による道路標示の位置情報を取得する。さらに、車両1が単独で取得した道路標示位置情報の記録と、停止線位置管理サーバー99から取得した道路標示位置情報の記録とを統合することで、道路標示の位置と向きの推定精度を向上させる。また、ここで推定した停止線の位置と向きから車両の自己位置を更新することができる。
【0071】
なお、磁気粒子の配置パターンや磁性体の着磁パターンには、停止線までの距離などの情報を付加することが望ましい。
【0072】
これにより、停止線に対して垂直な向きに、かつ、停止線位置計測用磁気センサー202が停止線の位置検出基準部位15上を通るように制御することが容易となり、実施例1と比べて、停止線位置計測用磁気センサー202の数を少なくすることが可能となる。
【0073】
以上のように、路面を撮影した画像から停止線の有無を判定できない場合にも、確実に停止線の位置を検出し車両を停止させるとともに、停止線の位置を用いて車両の自己位置を更新する車両走行支援装置を構成することを述べた。例えば、停止線の中に磁気粒子を混合し、車両がその停止線で停車する度に計測した、GPS測位に基づく停止線の位置の計測結果を統合することで、停止線の推定位置精度を向上させるとともに、その停止線の推定位置から、逆に、車両の自己位置を推定する車両走行支援装置を構成することを述べた。
【0074】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0075】
また、上記の各構成,機能,処理部,処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成,機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム,テーブル,ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク,SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード,SDカード,DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0076】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 停止線
2 車両
12 視認用標示部
14 磁気検出用標示部
15 位置検出基準部位
17 磁気ネイル
18 磁気ライン
20 停止線位置計測装置
21 通信装置
22 外界センサー
23 内界センサー
24 環境情報記録装置
25 車両状態推定装置
26 制御量演算装置
28 前輪操舵モータ
29 後輪駆動モータ
31 テレビカメラ
32 測位装置
33 周囲観測装置
41 エンコーダー
42 車両姿勢センサー
99 停止線位置管理サーバー
201 停止線検出用磁気センサー
202 停止線位置計測用磁気センサー
203 マグネットビューワー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気粒子を含む道路標示と、
前記道路標示を検出する検出部と、前記道路標示の位置および方向を計測する計測部と、グローバル座標系での自己位置を計測する自己位置計測部と、を備える車両と、を有し、
前記車両の測位結果から前記道路標示のグローバル座標系での位置および方向を推定する位置方向推定部を有することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項2】
強磁性体を含む道路標示と、
前記道路標示に磁気パターンを着磁させる手段と、
前記道路標示の磁気パターンを検出する検出部と、前記道路標示の位置および方向を計測する計測部と、グローバル座標系での自己位置を計測する手段とを備える車両と、を有し、
前記車両の測位結果から前記道路標示のグローバル座標系での位置および方向を推定することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記道路標示は磁気粒子を含む停止線であり、
前記車両は、前記停止線に停止する度に取得した複数回の測位結果を記録する記録部を有し、
前記位置方向推定部は、前記記録部に記憶された複数回の測位結果から前記停止線のグローバル座標系での位置および方向を推定することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項4】
強磁性体を含む停止線と、
前記停止線に磁気パターンを着磁させる手段と、
前記停止線を検出する検出部と、その検出結果に基づいて停止する停止制御部と、停止線の位置および方向を計測する計測部と、前記車両のグローバル座標系での自己位置を計測する自己位置計測部とを備える車両とを有し、
前記停止線のグローバル座標系での位置および方向を推定することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項5】
請求項1または請求項3において、
前記道路標示は磁気粒子を含む停止線であり、
前記車両は、前記停止線に停止中、複数回取得した測位結果を記録する記録部を有し、前記位置方向推定部は、前記記録部に記憶された複数回の測位結果から前記停止線のグローバル座標系での位置および方向を推定することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項6】
請求項5において、
更に管理サーバーを有し、
前記車両は前記管理サーバーと通信する通信部を有し、
前記通信部は、前記車両により記録された前記道路標示のグローバル座標系での位置と方向に関するデータを、前記管理サーバーとの間で通信し、
前記管理サーバーは、前記データを用いて、前記停止線の位置と方向を推定することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項7】
請求項2において、前記道路標示に着磁させる磁気パターンに、付加的な情報を付け加えることを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項8】
請求項1において、前記道路標示の手前に磁気ネイルもしくは磁気ラインを設置し、これらを前記車両が走行中に検出することで、前記道路標示に前記車両を誘導することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項9】
請求項1において、前記道路標示の手前の区画線に強磁性体を混合して設置し、前記区画線付近の各位置における磁気を計測して記録しておき、この記録と前記車両が走行中に計測した磁気とを比較することで前記道路標示を基準とした前記車両の位置を推定し、前記道路標示に前記車両を誘導することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項10】
請求項1において、前記道路標示の付近の各位置における地磁気を計測して記録しておき、この記録と前記車両が走行中に計測した地磁気とを比較することで前記道路標示を基準とした前記車両の位置を推定し、前記道路標示に誘導することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項11】
請求項1において、前記道路標示の磁気粒子を含む部分を複数列で構成することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項12】
請求項2において、前記道路標示に複数列からなる磁気パターンを着磁することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項13】
道路標示の位置および方向を計測する計測部と、
グローバル座標系での自己位置を計測する自己位置計測部と、
前記自己位置計測部の計測結果に基づき、前記道路標示のグローバル座標系での位置および方向を推定する位置方向推定部を有する車両。
【請求項14】
請求項13において、
推定された前記道路標示のグローバル座標系での位置および方向を記録する記録部と、
外部情報機器と通信する通信部を有し、
前記通信部は、前記記録された前記道路標示のグローバル座標系での位置と方向に関するデータを、前記外部情報機器との間で通信し、
前記データを用いて車両の誘導を行う制御部と、を有する車両。
【請求項15】
道路標示の磁気を検出し、
前記道路標示の位置および方向を計測し、
グローバル座標系での車両位置を計測し、
前記車両位置の計測結果に基づき、前記道路標示のグローバル座標系での位置および方向に関するデータを用いて、車両の誘導を行う車両走行支援方法。
【請求項16】
路面に第一の塗料を塗布して視認用標示部を形成し、
路面の色と同系色の第二の塗料と磁気粒子を混合して磁気検出用標示部を形成し、
前記第二の塗料は、前記一の塗料より表面反射率が低いものを用い、
磁気検出用標示部には、長手方向の基準位置を示すため、磁気粒子を含有しない位置検出基準部位を形成し、
外部から前記磁気粒子に着磁することを特徴とする道路標示の作成方法。
【請求項17】
請求項16において、
前記磁気検出用標示部を複数の帯状に配置することを特徴とする道路標示の作成方法。
【請求項18】
請求項16において、
前記磁気検出用標示部は、コード化した磁気パターンを有し、付加的な情報を記録させることを特徴とする道路標示の作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−38049(P2012−38049A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176898(P2010−176898)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】