説明

車体前部構造

【課題】フロントグリルの熱変形を防止することを可能にするとともに、フロントグリルが熱変形する場合にも熱変形の方向を規制することを可能にする。
【解決手段】車体前部の意匠面を形成し、エンジンルーム内に走行風を導風するグリル開口部57〜59を有するフロントグリル35と、グリル開口部57〜59から車体前方に向けて投光するべくフロントグリル35の車体後方側に設けられた灯体56,56と、を備えた車体前部構造20において、フロントグリル35と灯体56,56との間に、フロントグリル35よりも熱膨張率が低い遮熱板141〜143を配置するとともに、この遮熱板141〜143に、フロントグリル35の上下若しくは左右の対向する端部を固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部に設けられるフロントグリル、若しくはバンパフェイスに設けられるバンパグリルなどの車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造として、フロントグリルやバンパグリルの後方に灯体が設けられ、この灯体の光を車体前方に投光するようにしたものが知られている。
この種の車体前部構造は、車両の意匠性の多様化を可能とするものであった。
このような、車体前部構造として、バンパグリルの後方に灯体を設け、バンパグリルの一部を発光させるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の車体前部構造は、車体前部を覆うバンパフェイスと、バンパフェイスに設けられるバンパグリルと、バンパグリルの背面(後方)に設けられる灯体とから構成される。
【0004】
しかし、特許文献1の車体前部構造では、バンパグリルの背面(後方)に灯体が設けられているので、灯体の熱でバンパグリルが変形することが考えられる。すなわち、バンパグリルやフロントグリルの背面(後方)に灯体を設けるときには、灯体の適切な熱対策が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2008−105566公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フロントグリルの熱変形を防止できるとともに、フロントグリルが熱変形する場合にも熱変形の方向を規制することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前部の意匠面を形成し、エンジンルーム内に走行風を導風するグリル開口部を有するフロントグリルと、グリル開口部から車体前方に向けて投光するべくフロントグリルの車体後方側に設けられた灯体と、を備えた車体前部構造において、フロントグリルと灯体との間に、フロントグリルよりも熱膨張率が低い遮熱板を配置するとともに、フロントグリルに遮熱板の上下若しくは左右の対向する端部を固定したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、フロントグリルに、車幅方向に延びる複数の横桟部を有し、これらの横桟部は、互いに車体上下方向に所定距離離間してグリル開口部を形成するとともに、上下端部に車体後方側に折り返したフランジを有し、遮熱板が、少なくとも一つの横桟部の車体後方側に配置されるとともに、上下端部がフランジによって覆われることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、フロントグリルは樹脂材で形成され、遮熱板は鉄板で形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、横桟部の裏面に、遮熱板に向けて突出する突起を備え、遮熱板に、突起が嵌合して位置決めされる位置決め孔を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体前部構造に、車体前部の意匠面を形成し、エンジンルーム内に走行風を導風するグリル開口部を有するフロントグリルと、グリル開口部から車体前方に向けて投光するべくフロントグリルの車体後方側に設けられた灯体と、を備える。
フロントグリルと灯体との間に、フロントグリルよりも熱膨張率が低い遮熱板を配置するとともに、フロントグリルに遮熱板の上下若しくは左右の対向する端部を固定したので、フロントグリルが熱変形した場合であっても、フロントグリルの変形を抑止できるとともに、その変形方向を車体前方向に指向させることができる。言い換えれば、フロントグリルの変形を抑止できるとともに、変形方向を灯体から離間する方向に規制することができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、フロントグリルに、車幅方向に延びる複数の横桟部を有し、これらの横桟部は、互いに車体上下方向に所定距離離間してグリル開口部を形成するとともに、上下端部に車体後方側に折り返したフランジを有する。
遮熱板が、少なくとも一つの横桟部の車体後方側に配置されるとともに、上下端部がフランジによって覆われたので、フランジにより車体外側から遮熱板を隠すことができる。この結果、フロントグリルの外観見栄えが向上する。
【0013】
請求項3に係る発明では、フロントグリルは樹脂材で形成され、遮熱板は鉄板で形成される。樹脂材で形成されたフロントグリルよりも、鉄板で形成された遮熱板の熱膨張率が低い(熱的影響が少ない)ので、フロントグリルの熱変形を抑止することができる。さらに、フロントグリルの強度も向上することができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、横桟部の裏面に、遮熱板に向けて突出する突起を備え、遮熱板に、突起が嵌合して位置決めされる位置決め孔を備えたので、フロントグリルに対する遮熱板の位置決めが可能となる。熱変形したときの変形方向を突起で決定することができる。この結果、変形方向を灯体から離間する方向に規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車体前部構造が採用された車体前部の分解斜視図である。
【図2】図1に示された車体前部の斜視図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造の正面図である。
【図4】図1に示された車体前部構造の分解斜視図である。
【図5】図1に示された車体前部構造の背面図である。
【図6】図1に示された車体前部構造の灯体の分解斜視図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】図5の8−8線断面図である。
【図9】図5の9−9線断面図である。
【図10】図1に示された車体前部構造の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0017】
図1〜図3に示されたように、車両10は、車体11の前部に、左右のサイドシル(不図示)の前端から車体前後方向に延ばされる左右のフロントサイドフレーム22,22(一方不図示)と、これらのフロントサイドフレーム22,22の前端内側に設けられるフロントバルクヘッド23と、左右のフロントサイドフレーム22,22の先端にエクステンション24,24(一方不図示)を介して設けられたバンパビーム25と、このバンパビーム25の前方を覆うフロントバンパフェイス27と、フロントピラー(不図示)から車体前方に延ばされる左右のアッパメンバ28,28(一方不図示)と、これらのアッパメンバ28,28とフロントバルクヘッド23とを連結する左右の連結部材32,32と、車幅方向内方がフロントバルクヘッド23へ取付けられる左右のフロントグリルブラケット30,30と、これらのフロントグリルブラケット30,30の外方にそれぞれ取付けられる左右のヘッドライト(灯体)34,34と、フロントグリルブラケット30,30の内方に取付けられるフロントグリル35と、を備える。
【0018】
フロントバルクヘッド23は、車体上部にて車幅方向に延ばされる上の横メンバ36と、車体下部にて車幅方向に延ばされる下の横メンバ37と、これらの上下の横メンバ36,37の端部に接続される左右の縦メンバ38,39と、からなる。フロントバルクヘッド23には、エンジン42を冷却をするラジエータ43と、エアコンディショナの冷媒を貯留するコンデンサ44とが支持されている。フロントバルクヘッド23の後方には、エンジンルーム41が形成される。エンジンルーム41には、エンジン42が収納される。
すなわち、フロントバルクヘッド23は、車体11側の構造体である。
【0019】
フロントバンパフェイス27は、バンパビーム25の前方を覆うバンパフェイス本体45と、このバンパフェイス本体45の中央に設けられ、車体内部に走行風が導かれるバンパ中央グリル46と、バンパフェイス本体45に設けられる左右のバンパ側部グリル47,47と、からなる。バンパ側部グリル47には、フォグランプ51を臨ませるフォグランプ開口52と、車体内部に走行風が導かれる導風孔53と、が形成される。
アッパメンバ28は、前端から延長され、連結端部29を介してフロントサイドフレーム22に連結される。
【0020】
図3〜図7に示されたように、本発明に係る車体前部構造20は、フロントグリル35と、後述する遮熱板(スチフナ)141〜143と、灯体56,56とを主要構成とするフロントグリル組立体の構造である。以下、詳細に説明する。
【0021】
フロントグリル35は、樹脂材で形成されたグリルベース62と、このグリルベース62の表面に取付けられるグリルモール135〜138及びエンブレム139とから構成される。フロントグリル35は、左右対称に形成され、車体前部の意匠面を形成する部材である。
【0022】
グリルベース62は、エンジンルーム41(図1参照)に走行風を導く左右の上部グリル開口部57,57と、エンジンルーム41に走行風を導く左右の中間グリル開口部58,58と、エンジンルーム41に走行風を導く左右の下部グリル開口部59,59と、表面に上部グリルモール135が取付けられるとともに、裏面に左右の上遮熱板141,141が取付けられる上部取付部145と、表面に中間グリルモール136が取付けられるとともに、裏面に左右の中間遮熱板142,142が取付けられる中間取付部146と、表面に左右の下部グリルモール137,137がそれぞれ取付けられるとともに、裏面に左右の下遮熱板143,143がそれぞれ取付けられる左右の下部取付部147,147と、表面に最下部グリルモール138が取付けられる最下部取付部148と、表面にエンブレム139を取付けるエンブレム取付部149と、が形成される。
【0023】
上部グリル開口部57,57、中間グリル開口部58,58及び下部グリル開口部59,59は、車体上下方向に所定距離離間して形成されている。
【0024】
上部グリルモール135、中間グリルモール136、左右の下部グリルモール137,137は樹脂製のメッキ部品であり、樹脂材で形成されたものといえる。最下部取付部148及びエンブレム139は、樹脂製のメッキ部品である。
左右の下部グリルモール137,137は、車体中心に対して左右対称の部材である。
【0025】
左右の上遮熱板141,141、左右の中間遮熱板142,142及び左右の下遮熱板143,143は、それぞれ車体中心に対して左右対称の部材である。
【0026】
上の横桟部151は、グリルベース62の上部取付部145及び上部グリルモール135で構成される。中間の横桟部152は、グリルベース62の中間取付部146及び中間グリルモール136で構成される。下の横桟部153は、グリルベース62の下部取付部147,147及び下部グリルモール137,137で構成される。
【0027】
上部取付部145は、上部グリル開口部57,57の上部に形成される。また、上下端部に車体後方側に折り返したフランジ161a,161bを有する。さらに、中央が車体前方に凸となる緩やかな曲線を描くように形成され、左右端部が車体斜め後方に指向するように折り曲げられて形成される。
【0028】
上部取付部145の表面には、上部グリルモール135が両面テープ(不図示)で接着される。上部取付部145の裏面には、図5に示されるように、上遮熱板141の端部を固定する止め部(ボス部)154,154と、上遮熱板141を位置決めする複数の位置決め突起(リブ)157と、が形成される。
【0029】
中間取付部146は、左右の上部グリル開口部57,57及び左右の中間グリル開口部58,58の間に形成される。また、上下端部に車体後方側に折り返したフランジ162a,162bが形成される。さらに、中央が車体前方に凸となる緩やかな曲線を描くように形成され、左右端部が車体斜め後方に指向するように折り曲げられて形成される。
【0030】
中間取付部146の表面には、中間グリルモール136が両面テープ(不図示)で接着される。中間取付部146の裏面には、図5に示されるように、中間遮熱板142の端部を固定する止め部(ボス部)155,155と、中間遮熱板142の上下を位置決めする複数の位置決め突起(リブ)158と、が形成される。
なお、中間取付部146には、エンブレム取付部149の上部が形成される。
【0031】
左の下部取付部147は、左の中間グリル開口部58及び左の下部グリル開口部59の間に形成される。また、上端部に車体後方側に折り返したフランジ163aが形成され、
下端部に車体前方側に折り返したフランジ163bが形成される。さらに、端部が車体斜め後方に指向するように折り曲げられて形成される。右の下部取付部147は、左の下部取付部147に車体中心に関して対称に形成される。
【0032】
左の下部取付部147の表面には、左の下部グリルモール137が両面テープ(不図示)で接着される。左の下部取付部147の裏面には、図5に示されるように、左の下遮熱板143の端部を固定する止め部(ボス部)156,156と、左の下遮熱板143の上下を位置決めする複数の位置決め突起(リブ)159と、が形成される。右の下部取付部147は、左の下部取付部147に車体中心に関して対称である。
【0033】
最下部取付部148は、車体前方に凸となる緩やかな曲線を描くように形成される。最下部取付部148の表面には、最下部グリルモール138が両面テープ(不図示)で接着される。
エンブレム取付部149は、車体前方に凸状に形成される。
【0034】
上部グリルモール135は、上部取付部145に沿わせて形成される。中間グリルモール136は、中間取付部146に沿わせて形成される。左右の下部グリルモール137,137は、左右の下部取付部147,147に沿わせて形成される。最下部グリルモール138は、最下部取付部148に沿わせて形成される。
【0035】
左右の上遮熱板141,141、左右の中間遮熱板142,142及び左右の下遮熱板143,143は、金属製(鉄製)の部材である。
上遮熱板141,141、中間遮熱板142,142及び下遮熱板143,143は、それぞれ上部取付部145、中間取付部146及び下部取付部147,147に車幅方向に関して沿わせて形成される。
【0036】
上遮熱板141,141、中間遮熱板142,142及び下遮熱板143,143は、グリルベース62を補強し、灯体56,56からの熱を遮断する。すなわち、上遮熱板141,141、中間遮熱板142,142及び下遮熱板143,143は、フロントグリル35を補強する補強材(スチフナ)でもある。
【0037】
図5に示されるように、上遮熱板141は、中央に、突起157に位置決めされる複数の位置決め孔164と、端部に、止め部154,154にねじ止めされる貫通孔167,167が形成される。
中間遮熱板142は、上下に、突起158に位置決めされる複数の位置決め孔165と、端部に、止め部155,155にねじ止めされる貫通孔168,168が形成される。
下遮熱板143は、上下に、突起159に位置決めされる複数の位置決め孔166と、端部に、止め部156,156にねじ止めされる貫通孔169,169が形成される。
【0038】
さらに、中間遮熱板142は、図8に示されたように、バルブ(光源)175から車幅方向に離れた位置では、光源の熱の影響を受け難いので、スチフナ効果を増すように段部171が形成されている。
これにより、フロントグリル35のうち剛性を必要とする部位(光源から放れていて且つ前突時に初期に外力が入力される部位)の剛性を確保でき、変形させたくない部位を変形し難い形状とすることができる。
【0039】
また、中間遮熱板142は、図9に示されたように、光源に近い部位では、中間遮熱板142自体が熱膨張して変形した場合であっても、フロントグリル35の意匠性に影響が小さくなるよう平面を大きく形成している。すなわち、段差を付けずに平坦部172に形成し、熱的影響を優先した。
【0040】
車体前部構造(フロントグリル組立体)20では、樹脂材で形成されるグリルモール135〜138及びグリルベース62の背面に、鉄製の遮熱板(スチフナ)141〜143を配置する。これにより、遮熱板141〜143でバルブ(光源)175の熱を遮熱し、樹脂部品(グリルモール135〜138及びグリルベース62)の熱伸び変形を抑止する。
【0041】
また、図10(a),(b)に示されたように、樹脂材(樹脂部品)であるグリルベース62の中間取付部146の上下を中間遮熱板142で位置決め若しくは固定する。バルブ(光源)175の熱によりグリルベース62が熱で伸び変形した場合であっても、グリルベース62や中間グリルモール136の変形方向を、矢印a1,a2の如く、バルブ(光源)175から離れる方向に規制することができる。この結果、熱的影響によるフロントグリル35の内部変形を抑制することができる。
また、グリルベース62側に突起(リブ)158を突出させるだけなので、成形も容易である。
【0042】
さらに、図8及び図9では、グリルベース62の中間取付部146における上下を中間遮熱板142で位置決めするものを図示したが、下部取付部147,147の上下を下遮熱板143,143で位置決めする構造も同一の構造である。なお、樹脂材のフロントグリル35(グリルベース62及びグリルモール135〜138)よりも金属製(鉄製)の遮熱板141〜143のほうが熱膨張率が低い。
【0043】
左の灯体56は、フロントグリル35側に取付けられるハウジング174と、このハウジング174の裏面から内部に挿入されるバルブ(光源)175と、ハウジング174の表面に取付けられ、バルブ175を透視可能に覆うレンズ176と、ハウジング174の裏面に設けられ、フロントグリルブラケット30(図3参照)に係止されるハウジング側ブラケット61と、からなる。右の灯体56は、左の灯体56と車体中心に関して対称の部材である。
【0044】
図1〜図7に示されたように、車体前部構造20は、車体前部の意匠面を形成し、エンジンルーム41内に走行風を導風するグリル開口部57〜59を有するフロントグリル35と、グリル開口部57〜59から車体前方に向けて投光するべくフロントグリル35の車体後方側に設けられた灯体56,56と、を備える。
【0045】
フロントグリル35と灯体56,56との間に、フロントグリル35よりも熱膨張率が低い遮熱板141〜143を配置するとともに、遮熱板141〜143のうちの遮熱板142,143の上下若しくは左右の対向する端部をフロントグリル35に固定したので、フロントグリル35が熱変形した場合であっても、フロントグリル35の変形を抑止できるとともに、その変形方向を車体前方向に指向させることができる。言い換えれば、フロントグリル35の変形を抑止できるとともに、変形方向を灯体56,56から離間する方向に規制することができる。
【0046】
フロントグリル35は、車幅方向に延びる複数の横桟部151〜153を有し、これらの横桟部151〜153は、互いに車体上下方向に所定距離離間してグリル開口部57〜59を形成するとともに、上下端部に車体後方側及び車体前方側に折り返したフランジ161a〜163a,161b〜163b(図7参照)を有する。
【0047】
遮熱板141〜143が、少なくとも一つの横桟部151〜153の車体後方側に配置されるとともに、上下端部がフランジ161a〜163a,161b〜163bによって覆われたので、フランジ161a〜163a,161b〜163bにより車体外側から遮熱板141〜143を隠すことができる。この結果、フロントグリル35の外観見栄えが向上する。
【0048】
車体前部構造20では、フロントグリル35は樹脂材で形成され、遮熱板141〜143は鉄板で形成される。樹脂材で形成されたフロントグリル35よりも、鉄板で形成された遮熱板141〜143の熱膨張率が低い(熱的影響が少ない)ので、フロントグリル35の熱変形を抑止することができる。さらに、フロントグリル35の強度も向上することができる。
【0049】
車体前部構造20では、横桟部151〜153の裏面(実質的にはグリルベース62の取付部145〜147の裏面)に、遮熱板141〜143に向けて突出する突起157〜159を備え、遮熱板141〜143に、突起157〜159が嵌合して位置決めされる位置決め孔164〜166を備えたので、フロントグリル35に対する遮熱板141〜143の位置決めが可能となる。熱変形したときの変形方向を突起157〜159で決定することができる。この結果、変形方向を灯体56,56から離間する方向に規制することができる。
【0050】
尚、本発明に係る車体前部構造(フロントグリル組立体)は、図5に示すように、遮熱板(スチフナ)141〜143の端部を、止めねじ(不図示)でグリルベース62側に固定したが、固定する個数及び位置を変えることを妨げるものではない。
【0051】
本発明に係る車体前部構造は、図5に示すように、遮熱板(スチフナ)141〜143は、止めねじ(不図示)でグリルベース62側に固定したが、これに限るものではなく、ファスナ、熱カシメ若しくはプッシュナット(板金ナット)等で固定するものであってもよい。
【0052】
本発明に係る車体前部構造は、図5に示すように、グリルベース62に突起157〜159を形成し、遮熱板141〜143を位置決めしたが、これに限るものではなく、突起157〜159はリブも含む。
【0053】
本発明に係る車体前部構造では、フロントグリル35がグリルベース62とグリルモール135〜138とから構成されたが、これに限るものではなく、一体的に形成されたフロントグリルであってもよい。
【0054】
本発明に係る車体前部構造は、フロントグリル35に遮熱板141〜143及び灯体56,56が一体的に支持されたが、これに限るものではなく、各部材が別々の部材に支持されたものであってもよい。
【0055】
本発明に係る車体前部構造は、グリルベース62にグリルモール135〜138を両面テープで取付けるようにしたが、グリルモール135〜138をグリルベース62の裏面から遮熱板141〜143を介してタッピンねじで取付けるようにしたものであってもよい。
すなわち、表面のグリルモール135〜138側裏面に取付ボスを形成し、グリルベース62と遮熱板141〜143とに前記取付ボスを貫通する貫通孔を設けることで、表面のグリルモール135〜138と裏面の遮熱板141〜143とがグリルベース62に共締される取付構造とするものである。これにより、グリルモール135〜138と遮熱板141〜143とをグリルベース62に同時に固定することができるので、車体前部構造の組立性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る車体前部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0057】
20…車体前部構造、35…フロントグリル、41…エンジンルーム、56…灯体、57〜59…グリル開口部、141〜143…遮熱板、151〜153…横桟部、157〜159…突起、161a〜163a,161b〜163b…フランジ、164〜166…位置決め孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部の意匠面を形成し、エンジンルーム内に走行風を導風するグリル開口部を有するフロントグリルと、前記グリル開口部から車体前方に向けて投光するべく前記フロントグリルの車体後方側に設けられた灯体と、を備えた車体前部構造において、
前記フロントグリルと前記灯体との間に、前記フロントグリルよりも熱膨張率が低い遮熱板を配置するとともに、前記フロントグリルに前記遮熱板の上下若しくは左右の対向する端部を固定したことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記フロントグリルは、車幅方向に延びる複数の横桟部を有し、これらの横桟部は、互いに車体上下方向に所定距離離間して前記グリル開口部を形成するとともに、上下端部に車体後方側に折り返したフランジを有し、前記遮熱板は、少なくとも一つの前記横桟部の車体後方側に配置されるとともに、上下端部が前記フランジによって覆われることを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記フロントグリルは樹脂材で形成され、前記遮熱板は鉄板で形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記横桟部の裏面に、前記遮熱板に向けて突出する突起を備え、前記遮熱板に、前記突起が嵌合して位置決めされる位置決め孔を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−73662(P2011−73662A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230501(P2009−230501)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)