説明

車体用保護シート

【課題】車体前部に対して極めて容易に着脱することができ且つ車体を良好に保護することができる車体用保護シートを提供する。
【解決手段】フード53に対応して車体本体51に突設されたフードダンパ56に係合する係合孔16を車体用保護シート10に備え、この係合孔16を、その短径がフードダンパ56の直径よりも短い長穴形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車等の車両を組み立てる際に使用され、車体前部を保護するための車体用保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両を組み立てる際には、例えば、工具等が接触して車体の表面にキズを付けてしまう虞がある。このため、必要に応じて車体の表面を保護シートで覆うことで車体の表面にキズが付かないように保護している。保護シートは、車両の組立時に使用されるものであるため、着脱が極力容易なものであることが好ましい。
【0003】
保護シートとの固定方法は様々あるが、例えば、金属製のドアパネル等の車体の表面に対して磁石によって保護シートを固定するようにしたものがある。また例えば、保護シートの上端縁部にフックを突出させ、このフックによって保護シートを車体に固定するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2798376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような保護シートによっても車体の表面を保護することはできる。しかしながら、着脱がさらに容易で且つ確実に車体の表面を保護できる保護シートの開発が望まれている。
【0006】
上述のように磁石によって保護シートを車体に固定できれば、保護シートを極めて容易に着脱することができ且つ保護シートによって車体の表面を良好に保護することができる。しかしながら、車体の材料としては、樹脂材料等の非磁性材料も使用されており、磁石によって保護シートを固定することができない部分もある。例えば、車体前部に設けられるヘッドランプは、近年、大型化が進んでおり、ヘッドランプの表面を保護シートで保護する必要性が増している。しかしながら、ヘッドランプのカバーは、一般的に樹脂材料で形成されており、カバー自体に磁石で保護シートを固定することはできない。
【0007】
一方、上述のようにフックを突出させた保護シートを車体に固定してヘッドランプの表面を保護することは考えられる。しかしながら、単にフックを車体に引っ掛けただけでは、車体の搬送時等に振動によって保護シートが外れてしまう虞がある。さらに、例えば、粘着テープ等によって保護シートを貼り付けることによってもヘッドランプの表面を保護することはできる。ただし、このような保護シートはコストが高くなってしまい、また着脱作業が煩雑化してしまう虞がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車体前部に対して極めて容易に着脱することができ且つ車体を良好に保護することができる車体用保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、車両の組立時に車体本体に装着して車体前部を保護する車体用保護シートであって、フードに対応して前記車体本体に突設されたフードダンパに係合する係合孔を備え、該係合孔は、短径が前記フードダンパの直径よりも短い長穴形状に形成されていることを特徴とする車体用保護シートにある。
【0010】
かかる第1の態様では、フードダンパを係合孔にはめ込むことで、車体用保護シートを極めて容易に車体本体に装着することができる。また係合孔が長穴形状となっていることで、車体本体に対して車体用保護シートを極めて容易に着脱することができる。さらに係合孔の短径がフードダンパの直径よりも短いため、フードダンパが車体用保護シートによって挟まれて、車体搬送時等の振動による車体用保護シートの脱落を防止することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記係合孔が、その長径方向に沿って複数配されていることを特徴とする第1の態様の車体用保護シートにある。
【0012】
かかる第2の態様では、車体用保護シートを車体本体により容易に装着することができる。また各係合孔の長径が比較的短く抑えられるため、振動による車体用保護シートの脱落も抑制される。さらにフードダンパの固定位置が若干異なっていても、車体用保護シートを車体本体に装着することができる。つまり同一の車体用保護シートを複数の車種に適用することが可能となる。
【0013】
本発明の第3の態様は、塑性変形可能な材料からなる芯材が内部に設けられており変形可能に構成されていることを特徴とする第1又は2の態様の車体用保護シートにある。
【0014】
かかる第3の態様では、車体の形状に合わせて車体用保護シートの形状を変形させることができる。したがって車体用保護シートを車体に密着させることができ、車体の表面をより確実に保護することができる。また同一の車体用保護シートを複数車種に対して適用することが可能となる。
【0015】
本発明の第4の態様は、少なくとも前記車体本体に取り付けられたヘッドランプの表面を保護するものであることを特徴とする第1〜3の何れか一つの態様の車体用保護シートにある。
【0016】
かかる第4の態様では、樹脂材料からなるヘッドランプの表面を、車体用保護シートによって確実に保護することができる。
【発明の効果】
【0017】
かかる本発明の車体用保護シートによれば、車体本体に対して極めて容易に着脱することができ、且つ車体搬送時等の振動による脱落も抑えられる。したがって、このような車体用保護シートを採用することで、車両の組立時における車体への傷付きを低コストで確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態に係る車体用保護シートの使用態様を示す概略図である。
【図2】一実施形態に係る車体用保護シートの断面図である。
【図3】一実施形態に係る車体用保護シートの係合孔を説明する平面図である。
【図4】一実施形態に係る車体用保護シートの変形例を示す平面図である。
【図5】一実施形態に係る車体用保護シートの変形例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、一実施形態に係る車体用保護シートの使用態様を示す概略図である。図2は、一実施形態に係る車体用保護シートの断面図である。図3は、一実施形態に係る車体用保護シートの係合孔を説明する平面図であり、図3(a)は、フードダンパが係合される前の状態を示す図であり、図3(b)はフードダンパが装着された後の状態を示す図である。
【0021】
本発明に係る車体用保護シート10は、図1に示すように、車両50の組立時に車体前部に装着されて車体前部にキズが付かないように保護するためのものである。この車体用保護シート10について詳細に説明する前に、まずは車体用保護シート10が装着される車両50の車体前部の構造について簡単に説明する。
【0022】
車両50を構成する各種フレーム等からなる車体本体51には、エンジンルーム52が形成されており、車体本体51には、エンジンルーム52の開口部を開閉するフロントフード53が設けられている。また車体本体51の前端部分にはヘッドランプ54が配設されており、ヘッドランプ54の下方には車幅方向に延びるフロントバンパ55が配設されている。
【0023】
ところでフロントフード53を閉じる際には、車体本体51に対してかなりの衝撃が加わる。このため、車体本体51の前端部分の各ヘッドランプ54の近傍には、フードダンパ56がそれぞれ設けられている。これらのフードダンパ56は、比較的硬質なゴム材料等で形成され、車体本体51上にフロントフード53側に突出して取り付けられている。このフードダンパ56にフロントフード53が接触することで、フロントフード53を閉じる際の車体本体51に対する衝撃が大幅に緩和されるようになっている。
【0024】
そして本実施形態では、車体用保護シート10は、図1に示すように、このような車両50のヘッドランプ54の表面を覆って装着され、ヘッドランプ54のカバー表面への傷付きを防止する。また詳しくは後述するが、車体用保護シート10は車体本体51上に突出して設けられているフードダンパ56に取り付けられるようになっている。
【0025】
車体用保護シート10は、ヘッドランプ54の表面を覆う保護部11と、車体本体51に沿って保護部11から連続して設けられる支持部12とを備える。保護部11は、ヘッドランプ54の表面形状に沿って形成されている。また保護部11は、ヘッドランプ54と略同一か又はそれよりも若干大きく形成されている。すなわち、保護部11は、ヘッドランプ54の表面を確実に覆うことができる大きさに形成されている。
【0026】
また車体用保護シート10は、図2に示すように、車体本体51側に設けられた不織布からなる第1層13と、ウレタン等の樹脂材料からなる第2層14と、防水性を備えた材料、例えば、樹脂フィルム等からなる第3層15とで構成されている。車体用保護シート10がこのような三層構造となっていることで、車体用保護シート10自体がヘッドランプ54の表面や車体本体51を傷つけることがなく、またヘッドランプ54の表面に汚れが付着することも抑制することができる。
【0027】
また支持部12には、フードダンパ56が係合される係合孔16が形成されている。つまり、この係合孔16にフードダンパ56を係合させることで、車体用保護シート10はヘッドランプ54の表面を覆った状態で車体本体51に装着される。
【0028】
ここで係合孔16は、図3に示すように長穴形状となっている。このため、フードダンパ56と係合孔16とを高精度に位置決めすることなく、車体用保護シート10を車体本体51に比較的容易に装着することができる。例えば、フードダンパ56の各車体本体51に対する取り付け位置に若干のバラツキが生じている場合でも、係合孔16が長穴となっていることでそのバラツキが吸収されるため、フードダンパ56を係合孔16に対して確実に係合させることができる。また係合孔16を長穴としておくことで、例えば、フードダンパ56の取り付け位置が若干異なる複数の車種に、車体用保護シート10を共用することも可能となる。
【0029】
ここで、図3(a)に示すように、フードダンパ56が係合される前の係合孔16の短径D1は、フードダンパ56の直径D2よりも短くなっている。このため、フードダンパ56を係合孔16に係合させる際には、係合孔16を短径方向に若干押し広げる必要がある。その結果、図3(b)に示すように、係合孔16にフードダンパ56が係合された状態では、フードダンパ56は支持部12によって挟まれて所定の圧力を受けることになる。
【0030】
このように係合孔16にフードダンパ56を係合させることで、車体用保護シート10が車体本体51に装着されるようにすることで、車体用保護シート10を車体本体51に極めて容易に着脱することができる。さらに、例えば、車体搬送時等の振動を受けた場合でも、車体用保護シート10の車体本体51からの脱落を抑制することができる。
【0031】
なお係合孔16の長径方向の長さは特に限定されないが、あまり長いと係合孔16に係合されたフードダンパ56が支持部12から受ける圧力が弱くなり過ぎてしまう。このため、係合孔16の長径方向の長さは、最長でも短径方向の3倍程度とするのが好ましい。
【0032】
また本実施形態では、支持部12に一つの係合孔16を設けるようにしたが、係合孔16は複数設けられていてもよい。例えば、図4に示すように、支持部12には、3つの係合孔16が、その長径方向に沿って並設されていてもよい。このような構成では、車体用保護シート10を車体本体51にさらに容易に装着することができる。また一つの車体用保護シート10を、フードダンパ56の取り付け位置が異なる複数の車種に共用することも可能となる。また各係合孔16の長径は比較的短く抑えられているため、振動による車体用保護シートの脱落も抑制される。
【0033】
なお本実施形態に係る車体用保護シート10は、ヘッドランプ54の表面形状に沿って予め形成されているが、車体用保護シート10は、変形可能に構成されていてもよい。例えば、図5に示すように、車体用保護シート10の内部に、塑性変形可能な材料、例えば、金属材料等からなる芯材20を設けるようにしてもよい。この例では、芯材20を格子状に複数設けるようにしたが、勿論、芯材20の配置は適宜決定されればよく、特に限定されるものではない。この構成では、車体用保護シート10を芯材20と共に変形させることで、車体用保護シート10の形状をヘッドランプ54の形状に合わせることができる。したがって、車体用保護シート10を複数の車種に共用した場合でも、ヘッドランプ54の表面をより確実に保護することができる。また車体用保護シート10を複数の車種に共用することでコストの削減を図ることもできる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、勿論、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【0035】
例えば、上述の本実施形態では、ヘッドランプ54の表面を覆って保護する車体用保護シート10を一例として説明したが、本発明に係る車体用保護シート10は、車体前部を保護するものであればよい。したがって、車体用保護シート10は、例えば、フロントバンパ55を覆って保護するものであってもよいし、ヘッドランプ54とフロントバンパ55とを一体的に覆って保護するものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 車体用保護シート
11 保護部
12 支持部
13 第1層
14 第2層
15 第3層
16 係合孔
20 芯材
50 車両
51 車体本体
52 エンジンルーム
53 フロントフード
54 ヘッドランプ
55 フロントバンパ
56 フードダンパ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の組立時に車体本体に装着して車体前部を保護する車体用保護シートであって、
フードに対応して前記車体本体に突設されたフードダンパに係合する係合孔を備え、該係合孔は、短径が前記フードダンパの直径よりも短い長穴形状に形成されていることを特徴とする車体用保護シート。
【請求項2】
前記係合孔が、その長径方向に沿って複数配されていることを特徴とする請求項1に記載の車体用保護シート。
【請求項3】
塑性変形可能な材料からなる芯材が内部に設けられており変形可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車体用保護シート。
【請求項4】
少なくとも前記車体本体に取り付けられたヘッドランプの表面を保護するものであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車体用保護シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−121492(P2012−121492A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274958(P2010−274958)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)