説明

車体表示制御装置

【課題】 車両の外方に位置する観察者に対して見やすい表示態様による表示を可能とする車体表示制御装置を提供すること。
【解決手段】 車体表示制御装置10の車体表示部11は、車両の外板の外表面上に設けられていて、車両の外方に位置する観察者に対して種々の画像(映像)やメッセージを提示する。電子制御ユニット12は、車体表示部11と観察者との間の相対位置関係を特定し、この特定した相対位置関係に基づいて車体表示部11を基準としたときの観察者の視点方向を特定する。そして、電子制御ユニット12は、観察者に対して提示する画像(映像)やメッセージを表す表示データを、特定した観察者の視点方向に合わせて変換し、この変換した表示データによって表される画像(映像)やメッセージを車体表示部11に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の観察者に視認させる種々の車体表示の表示態様を制御する車体表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示されているような車両の表示装置は知られている。この従来の車両の表示装置は、車両としての自動二輪車の各外装部品に一体的に取り付けられて、車両の外方側に表示を行う表示装置と、表示装置に任意の表示を行わせる制御部とを備えており、制御部によって表示装置の画像表示が任意に変更されるようになっている。これにより、外装部品の塗色や模様等を簡単に変更できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−228509号公報
【発明の概要】
【0004】
上記従来の車両の表示装置においては、外装部品の塗色や模様等を変更することによって、車体のデザインを容易に変更することができる。しかしながら、この従来の車両の表示装置を用いて、例えば、車両の観察者に対して自己主張や種々の情報を提示するには、自己主張や種々の情報を見やすく提示するという観点で不十分となる場合がある。
【0005】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的の一つは、車両の観察者に対して見やすい表示を可能とする車体表示制御装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車両の外方に位置する観察者に向けて種々の画像を表示する車体表示部と、この車体表示部による画像の表示態様を制御する制御手段とを備えた車体表示制御装置であって、前記制御手段は、前記観察者の位置と車両の位置との間の相対位置関係を特定し、前記特定した相対位置関係に基づいて前記観察者の車両に対する視点方向を特定し、前記観察者に向けて前記車体表示部が表示する画像を取得し、前記取得した画像を前記特定した前記観察者の車両に対する視点方向に合わせて変換し、前記変換した画像を前記車体表示部に表示させることにある。
【0007】
この場合、前記制御手段は、車両の外方に位置する観察者のうち、前記車体表示部が表示する画像を提示すべき特定の観察者と車両の位置との間の相対位置関係を特定し、前記特定した相対位置関係に基づいて前記特定の観察者の車両に対する視点方向を特定することができる。
【0008】
又、これらの場合、前記車体表示部を前記車両の外板の外表面上に設けることができる。
【0009】
尚、前記制御手段は、前記観察者の位置と車両の位置との間の相対位置関係を特定する相対位置関係特定手段と、前記相対位置関係特定手段によって特定された相対位置関係に基づいて前記観察者の車両に対する視点方向を特定する視点方向特定手段と、前記観察者に向けて前記車体表示部が表示する画像を取得する表示画像取得手段と、前記表示画像取得手段によって取得された画像を前記視点方向特定手段によって特定された前記観察者の車両に対する視点方向に合わせて変換する画像変換手段と、前記画像変換手段によって変換された画像を前記車体表示部に表示させる表示指令手段とを備えることが可能である。ここで、前記相対位置関係特定手段は、前記観察者が所有する携帯情報端末装置の位置を表す位置情報と、車両の現在位置を表す現在位置情報とを用いて前記観察者の位置と車両の位置との間の相対位置関係を特定することができる。又、前記表示画像取得手段は、予め記憶されている画像又は外部から供給される画像を前記観察者に向けて前記車体表示部が表示する画像として取得することができる。
【0010】
これらによれば、車体表示制御装置の制御手段は、車両すなわち車両の外板の外表面上に設けられた車体表示部と観察者(特定の観察者)との間の相対位置関係を特定し、この特定した相対位置関係に基づいて観察者(特定の観察者)の視点方向を特定することができる。そして、制御手段は、特定した観察者(特定の観察者)の視点方向に合わせて観察者(特定の観察者)に向けて表示する画像を変換し、車体表示部11に変換した画像を表示させることができる。これにより、観察者、特に、特定の観察者にとっては、自身の視点に合わせた画像が車体表示部によって見やすく表示されるため、表示された画像を極めて容易に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る車体表示制御装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の車体表示部を車両の外板の外表面上に設けた状態を説明するための概略図である。
【図3】図2の車体表示部に画像を表示したときに発生する歪(画像の変形)を説明するための概略的な図である。
【図4】本発明の実施形態に係り、図1の車体表示制御装置における電子制御ユニットによって実行される表示制御プログラムのフローチャートである。
【図5】観察者の視点方向を勘案して画像を変換して表示した場合を説明するための概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る車体表示制御装置について図面を用いて説明する。車体表示制御装置10は、図1に概略的に示すように、車両の外方に向けて画像(映像)を表示する車体表示部11を備えている。車体表示部11は、周知の自発光型表示パネル(例えば、プラズマ表示パネルや有機EL表示パネル等)や透過光型表示パネル(例えば、バックライトを有する液晶表示パネル等)を備えるとともに、これら表示パネルを作動させるための周知の駆動回路(図示省略)を備えている。
【0013】
ここで、車体表示部11は、車両の外方に向けて画像(映像)を表示するものである。このため、本実施形態における車体表示部11は、車両の外板の外表面上に、例えば、上述した薄板状の自発光型表示パネルや透過光型表示パネルを貼付するように設けられる。具体的には、図2に概略的に示すように、車両の外形を形成するフード(ボンネット)、左右のサイドパネル(フェンダやドアパネル、ピラー等)、ルーフやトランクリッド(リアゲート)、或いは、必要な透明性を確保できる場合にはフロント、リア及びサイドガラスに対して、薄板状に形成された車体表示部11を貼付するとともにこの貼付した車体表示部11の外表面に透明な保護層(例えば、ポリカーボネート等の樹脂材料)を設ける。これにより、貼付された車体表示部11は、種々の画像(映像)を車両の外方に向けて表示(再生)することができる。
【0014】
又、車体表示制御装置10は、図1に示すように、電子制御ユニット12、通信ユニット13、記憶ユニット14及び表示出力ユニット15を必要最小限の構成として備えている。このため、図1に示すように、必要に応じて操作ユニット16及び位置検出ユニット17を備えるように構成することも可能である。
【0015】
電子制御ユニット12は、CPU、ROM、RAM等を主要構成部品とするマイクロコンピュータであり、後述するプログラムを含む各種プログラムを実行することにより、車体表示制御装置10の表示作動を統括的に制御する。このため、電子制御ユニット12に対して、通信ユニット13、記憶ユニット14及び表示出力ユニット15がそれぞれ電気的に通信可能に接続されている。
【0016】
通信ユニット13は、外部との間における種々の通信を可能とするものである。尚、通信ユニット13による通信方法自体は、本発明に直接関係するものではなく、周知の通信方法(例えば、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)を利用した近距離通信、通信基地局を含む携帯電話回線及びインターネット回線網を利用した通信等)を採用することができる。これにより、電子制御ユニット12は、通信ユニット13を利用して、例えば、外部に設けられて種々の情報を提供する情報提供センタやユーザが所有する情報端末装置(具体的に、携帯電話やスマートフォン、タブレット型端末やパーソナルコンピュータ等)と通信することができる。
【0017】
記憶ユニット14は、ハードディスクや半導体メモリ等の記憶媒体及び同記憶媒体のドライブ装置を含むものであり、電子制御ユニット12が車体表示制御装置10の表示作動を統括的に制御するために必要な各種プログラム及び各種データを予め或いは更新可能に記憶している。又、記憶ユニット14の所定記憶位置には、車体表示部11に表示すべき画像(映像)等の表示データが検索可能に記憶されている。ここで、記憶ユニット14の所定記憶位置に記憶される表示データとしては、予め記憶されている特定の画像(映像)データやテキストデータ等であったり、ネットワーク(例えば、インターネット回線網等)を介して通信可能に接続された情報提供センタやユーザの所有する情報端末装置から提供される更新可能な画像(映像)データやテキストデータ等である。
【0018】
表示出力ユニット15は、車体表示部11に対して、所定の表示態様により表示させる表示データを出力するものである。ここで、車体表示部11は、上述したように、車両(車体)の複数部分に貼付された自発光型表示パネルや透過光型表示パネルから構成されるものである。この場合、表示出力ユニット15は、これらの各自発光型表示パネルや透過光型表示パネルを、それぞれ、周知の方法に従って、所謂、マルチディスプレイを構成するように連結し、全体を1つの表示部(ディスプレイ)として表示データに基づく画像(映像)やテキスト(文字)を表示させるようになっている。
【0019】
操作ユニット16は、車両のユーザ(運転者)によって操作されて、各種指示等を入力するものである。このため、操作ユニット16は、例えば、車両の運転席近傍に配置されており、図示を省略する液晶表示パネルの近傍に設けられた操作スイッチ、液晶表示パネル内に組み込まれて表示パネルのタッチ操作を検出するパネルタッチスイッチ等からなり、ユーザ(運転者)による各種入力を可能とするようになっている。そして、操作ユニット16は、電子制御ユニット12と電気的に通信可能に接続されて、ユーザ(運転者)によって入力された各種指示等を表す入力情報を電子制御ユニット12に出力するようになっている。
【0020】
位置検出ユニット17は、車両の現在位置を検出するものである。このため、位置検出ユニット17は、例えば、3つ以上のGPS(Global Positioning System)衛星からそれぞれ送出されるGPS信号を取得し、これらのGPS信号に基づいて車両の現在位置を検出したり、通信ユニット13と協働して携帯電話回線用の通信基地局からの送信信号を取得し、この送信信号に基づいて車両の現在位置を検出したり、或いは、GPS衛星からのGPS信号と通信基地局からの送信信号の両方に基づいて車両の現在位置を検出する。そして、位置検出ユニット17は、電子制御ユニット12と電気的に通信可能に接続されて、検出した現在位置を表す現在位置情報を電子制御ユニット12に出力するようになっている。
【0021】
次に、上記のように構成した車体表示制御装置10の作動を詳細に説明する。車体表示制御装置10においては、電子制御ユニット12による制御に従い、車体表示部11上に種々の画像(映像)やメッセージを表示又は再生することができる。すなわち、電子制御ユニット12は、記憶ユニット14の所定記憶位置に記憶されている任意の表示データを取得し、この取得した表示データを表示出力ユニット15に供給する。表示出力ユニット15は、複数の表示パネルからなる車体表示部11が1つの画面(表示部)となるように、例えば、供給された表示データによって表される画像(映像)やメッセージを表示を担当する(対応する)表示パネルごとに適宜分割して、表示データを車体表示部11に出力する。これにより、車体表示部11は、表示出力部15を介して電子制御ユニット12から供給された表示データによって表される画像(映像)やメッセージを車両の外部に存在する観察者に向けて表示することができる。
【0022】
ところで、車両は複雑な3次元形状を有するため、車両の外形を形成する外板は複雑な、或いは、微妙な曲面から構成される。従って、上述したように、車両の外板上に設けられる車体表示部11も、複雑な、或いは、微妙な曲面を有することになる。この場合、例えば、車両の外方にて観察者が車両の真横に位置するときに、車体表示部11におけるサイドパネルに対応する部分に画像(映像)やメッセージを表示する場合には、車両のサイドパネル部分(特に、ドアパネル部分)は比較的平面形状に近いため、画像(映像)やメッセージは歪の小さい状態で表示される。又、この場合においては、車両のサイドパネルの面方向と観察者の視点から車両に向けての視線方向との間の角度が大きい、言い換えれば、サイドパネルの法線方向と観察者の視線方向との間の角度が小さくなる。このため、観察者は容易に表示された画像(映像)やメッセージを視認することができる。
【0023】
これに対して、例えば、観察者が車両のフードとサイドパネルの両方を同時に見得る場所に位置するとき、すなわち、観察者が図3の紙面垂直方向から車両のフードとサイドパネルの両方を見るときに、車体表示部11におけるフードとサイドパネルに対応する部分に画像(映像)やメッセージを表示すると、車両のフードの法線方向とサイドパネルの法線方向との間の角度が大きいため、画像(映像)やメッセージは、図3にて概略的に「○」を示すように、歪の大きい状態で表示される。又、この場合においては、例えば、車両のフードの面方向及びサイドパネルの面方向と観察者の視線方向との間の角度が小さい、言い換えれば、フードの法線方向及びサイドパネルの法線方向と観察者の視線方向との間の角度が大きくなる。このため、観察者は表示された画像(映像)やメッセージが視認しにくく(見にくく)なる。そこで、本実施形態においては、車体表示制御装置10が、車両外方の観察者(特に、画像(映像)やメッセージを提示したい特定の観察者)と車両(より詳しくは、車体表示部11)との相対的な位置関係に基づいて、特定の観察者にとって視認し易くなる(見やすくなる)ように、画像(映像)やメッセージを車体表示部11に表示させる。以下、このことを具体的に説明する。
【0024】
車体表示制御装置10においては、電子制御ユニット12が所定の短い時間間隔により、図4に示す表示制御プログラムを繰り返し実行する。すなわち、電子制御ユニット12は、図4に示すフローチャートにおけるステップS10にて表示制御プログラムの実行を開始し、続くステップS11にて、車体表示部11による表示が指示されているか否かを判定する。すなわち、電子制御ユニット12は、例えば、ユーザ(運転者)によって操作ユニット16が操作されて車体表示部11による表示の指示を表す指示情報が入力情報として入力されており、指示情報を取得していれば、「Yes」と判定してステップS12に進む。一方、電子制御ユニット12は、指示情報を取得していなければ、ユーザ(運転者)によって車体表示部11による表示が指示されていないため、指示情報を取得するまで「No」と判定し続ける。
【0025】
ステップS12においては、電子制御ユニット12は、画像(映像)やメッセージを提示すべき特定観察者が指定されているか否かを判定する。具体的に説明すると、ユーザ(運転者)は、操作ユニット16を介して、車体表示部11によって表示される画像(映像)やメッセージを提示したい人、例えば、家族や友人、取引先の人等、特定される人であって車両(すなわち、車体表示部11)を観察することが可能な人を予め特定観察者として指定することができる。尚、この指定に際して、ユーザ(運転者)は、特定観察者を識別する識別情報として、例えば、特定観察者が所有する携帯電話やスマートフォンの電話番号等を操作ユニット16を操作して入力する。そして、このように入力情報として識別情報が入力されると、電子制御ユニット12は、入力された識別情報を記憶ユニット14の所定記憶位置に検索可能に記憶する。
【0026】
従って、電子制御ユニット12は、記憶ユニット14の所定記憶位置を検索することにより、特定観察者を識別する識別情報が記憶されていれば、ユーザ(運転者)によって特定観察者が指定されているため、「Yes」と判定してステップS13に進む。一方、記憶ユニット14の所定記憶位置に識別情報が記憶されていなければ、ユーザ(運転者)によって特定観察者が指定されていないため、「No」と判定してステップS14に進む。
【0027】
ステップS13においては、電子制御ユニット12は、前記ステップS12の判定処理に従い、ユーザ(運転者)によって指定されている特定観察者と自車両(すなわち、車体表示部11)との相対位置関係を特定し、この特定した相対位置関係に基づき、特定観察者が車両(車体表示部11)を観察する方向、言い換えれば、特定観察者の視点方向を特定して観察者方向として登録する。以下、このステップS13におけるステップ処理を具体的に説明する。
【0028】
まず、特定観察者の位置の特定から説明すると、上述したように、特定観察者は、記憶ユニット14の所定記憶位置に記憶されている識別情報と一致する電話番号等を有する携帯電話やスマートフォンを所持している。ここで、特定観察者が所有する携帯電話やスマートフォンが、所謂、GPS機能を有していれば、このGPS機能を利用して検出される携帯電話やスマートフォンの位置情報(すなわち、特定観察者の位置情報)を携帯電話回線用の通信基地局(或いは、情報提供センタ)に送信することができる。このため、電子制御ユニット12は、通信ユニット13を介して通信基地局や情報通信センタと通信し、記憶ユニット14の所定記憶位置に記憶されている識別情報すなわち電話番号等と一致する携帯電話やスマートフォンの位置情報(すなわち、特定観察者の位置情報)を取得する。
【0029】
或いは、電子制御ユニット12は、記憶ユニット14の所定記憶位置に記憶されている特定観察者の識別情報すなわち電話番号等を取得し、この識別情報(電話番号等)を用いて特定観察者が所持している携帯電話やスマートフォンと通信ユニット13を介して通信する。これにより、電子制御ユニット12は、例えば、特定観察者が所持している携帯電話やスマートフォンが現在の通信に利用している通信基地局の位置に基づいて検出される位置情報を取得する。
【0030】
このように、特定観察者の位置情報を取得すると、電子制御ユニット12は、位置情報によって表される特定観察者の現在位置と、車両(車体表示部11)の現在位置との間の相対位置関係を特定する。すなわち、電子制御ユニット12は、位置検出ユニット17によって検出されて出力された現在位置情報を取得する。そして、電子制御ユニット12は、例えば、取得した現在位置情報によって表される車両(車体表示部11)の現在位置(車両の進行方向等の向きも含む)を基準としたときの特定観察者の現在位置(すなわち、車両周辺における存在位置)の相対位置関係を特定する。ここで、以下の説明における理解を容易とするために、今、車両の現在位置を基準としたときに特定観察者が、例えば、図3に示した車両の左前方にて車両のフードと左サイドパネルの両方を同時に見得る場所に位置するものとして説明する。そして、電子制御ユニット12は、特定観察者との間の相対位置関係を特定すると、この相対位置関係に基づいて特定観察者が車両(車体表示部11)を観察する方向、言い換えれば、観察者の視点方向を特定し、この観察者の視点方向を観察者方向として設定して記憶ユニット14の所定記憶位置に検索可能に登録する。具体的に、今、特定観察者は、図3に示した車両の左前方にて車両のフードと左サイドパネルの両方を同時に見得る場所に位置するものとしているため、この場合には、上述した図3の紙面垂直方向が観察者方向として登録される。そして、このように、特定観察者の観察者方向を登録すると、電子制御ユニット12はステップS15に進む。
【0031】
一方、前記ステップS12の判定処理(「No」判定)に従い、ステップS14においては、電子制御ユニット12は、特定観察者が指定されていないため、観察者方向として予め設定されている標準方向を登録する。すなわち、この場合においては、電子制御ユニット12は、例えば、車両(車体表示部11)の周囲に位置する不特定の人に画像(映像)やメッセージを提示する。このため、電子制御ユニット12は、予め設定されている車体表示部11の正面方向(例えば、サイドパネルの法線方向等)を標準方向とし、観察者方向として登録する。言い換えれば、特定観察者が指定されておらず、不特定の人に画像(映像)やメッセージを提示する状況においては、上述したように、比較的歪等が小さくて表示される画像等を視認し易い方向を標準方向すなわち観察者方向として登録する。尚、この場合においても、電子制御ユニット12は、標準方向を観察者方向として設定して記憶ユニット14の所定記憶位置に検索可能に登録する。そして、このように、標準方向を観察者方向として登録すると、電子制御ユニット12はステップS15に進む。
【0032】
ステップS15においては、電子制御ユニット12は、車体表示部11に表示すべき表示画像を特定し、この特定した表示画像を表す表示データを取得する。具体的に、特定される表示画像を表す表示データとしては、記憶ユニット14の所定記憶位置に記憶されている画像データ(例えば、写真等の静止画像データ)や映像データ(例えば、コマーシャルフィルムやアニメーション等の動画データ)、或いは、テキストデータ等である。ここで、これらの各データについては、上述したように、予め記憶されているデータであってもよいし、外部(情報提供センタやユーザが所有する携帯電話やスマートフォン、タブレット型端末、パーソナルコンピュータ等の情報端末装置)から提供されるデータであってもよい。又、車体表示部11に表示すべき表示画像の特定に関しては、例えば、ユーザ(運転者)によって操作ユニット16が操作されて記憶ユニット14の所定記憶位置に記憶されている表示画像が指定されていれば、電子制御ユニット12はこの表示画像を特定して表示データを取得し、外部の情報提供センタ(より詳しくは、同センタのオペレータ等)によって記憶ユニット14の所定記憶位置に記憶されている表示画像が指定されていれば、電子制御ユニット12はこの表示画像を特定して表示データを取得する。そして、このように特定した表示画像の表示データを取得すると、電子制御ユニット12はステップS16に進む。
【0033】
ステップS16においては、電子制御ユニット12は、前記ステップS15にて取得した表示データ(すなわち、この表示データによって表される表示画像)を、前記ステップS13のステップ処理又は前記ステップS14のステップ処理によって登録した観察者方向に応じて変換する。具体的に説明すると、図3にて示したように、例えば、車体表示部11において、フードに対応する部分とサイドパネルに対応する部分とに跨るように画像として「○」を表示させ、図3の紙面垂直方向(すなわち特定観察者の観察者方向)から表示された「○」を観察(見る)と、図3に概略的に示したように、「○」が大きく歪んで観察される。すなわち、特定観察者が存在している場合において、観察者方向に向けて単純に車体表示部11に画像(映像)やメッセージを表示させると、車体の3次元形状によって表示される画像等が大きく歪んで視認しにくく(見にくく)なる。又、車両のフードの面方向及びサイドパネルの面方向と観察者方向との間の角度が小さくなる、言い換えれば、フードの法線方向及びサイドパネルの法線方向と観察者方向との間の角度が大きくなるため、特定観察者は表示された画像(映像)やメッセージを斜め方向から観察(見る)ことになって視認しにくく(見にくく)なる。
【0034】
このため、電子制御ユニット12は、観察者方向、特に、特定観察者による観察者方向に応じて、より詳しくは、特定観察者(観察者)の視点方向に合わせて、表示データ(表示画像)を変換する。この場合、電子制御ユニット12は、観察者方向、すなわち、観察者の視点方向に合わせて表示する画像を変換する方法、例えば、画像の変換手法として広く知られている台形補正法や幾何歪補正法、或いは、表示面の曲面形状に応じて画像を変換する方法等を用いて表示データ(表示画像)を変換する。そして、このように、表示データ(表示画像)を観察者方向に応じて変換すると、電子制御ユニット12はステップS17に進む。
【0035】
ステップS17においては、電子制御ユニット12は、前記ステップS16にて変換した表示データによって表される表示画像、すなわち、写真やコマーシャルフィルム、アニメーション、或いは、メッセージを車体表示部11に表示させる。具体的に、電子制御ユニット12は、前記ステップS16にて変換した表示データを表示出力ユニット15に供給する。表示出力ユニット15は、複数の表示パネルからなる車体表示部11が1つの画面(表示部)となるように、例えば、供給された表示データによって表される画像(映像)やメッセージを表示を担当する(対応する)表示パネルごとに適宜分割して、表示データを車体表示部11に出力する。これにより、車体表示部11は、電子制御ユニット12が特定観察者(観察者)の視点方向に応じて変換した表示データによって表される画像(映像)やメッセージを車両の外部に存在する特定観察者や不特定の観察者に向けて表示することができる。
【0036】
ここで、特に、特定観察者に向けて画像(映像)やメッセージを提示する状況においては、例えば、特定観察者に対して上述したように「○」の画像を提示する場合、前記ステップS16にて特定観察者の観察者方向(具体的には、図3の紙面垂直方向)に合わせて「○」の画像が変換されることにより、図5に示すように、特定観察者の観察者方向(具体的には、図5(図3)の紙面垂直方向)から見る画像「○」は図3にて示した画像「○」に比して大幅に歪が小さくされており、より真円に近くなるように表示される。従って、特定観察者は、車体表示部11によって表示される写真やコマーシャルフィルム、アニメーション、或いは、メッセージを極めて見やすい状態で容易に視認することができる。又、特定観察者については、その現在位置を用いて観察者方向を特定するため、例えば、特定観察者が歩行中であり、車両を基準とした相対位置関係が逐次変化する場合であっても、変化した相対位置関係に基づいて観察者方向が特定される。これにより、特定観察者は、例えば、歩行中であっても、車体表示部11に表示された画像(映像)やメッセージを極めて容易に視認することができる。
【0037】
このように、車体表示部11に画像(映像)やメッセージを表示させると、電子制御ユニット12は、ステップS18に進み、表示制御プログラムの実行を一旦終了する。そして、電子制御ユニット12は、所定の短い時間の経過後、再び、ステップS10にて表示制御プログラムの実行を開始する。
【0038】
以上の説明からも理解できるように、本実施形態によれば、車体表示制御装置10においては、電子制御ユニット12が観察者の視点方向に合わせて観察者に提示する画像(映像)やメッセージを変換することができ、車体表示部11が変換された画像(映像)やメッセージを表示することができる。これにより、観察者、特に、指定された特定観察者にとっては、自身の視点に合わせた画像(映像)やメッセージが車体表示部11によって見やすく表示されるため、表示された画像(映像)やメッセージを極めて容易に視認することができる。
【0039】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態においては、車体表示制御装置10の電子制御ユニット12が、通信ユニット13を介して情報提供センタや通信基地局と通信して指定された特定観察者の位置情報を取得し、この位置情報によって表される特定観察者の現在位置と位置検出ユニット17によって検出された車両(車体表示部11)の現在位置とを用いて自動的に相対位置関係を特定し、観察者方向を登録するように実施した。この場合、例えば、ユーザ(運転者)が車両(車体表示部11)に近傍に特定観察者が既に位置していることを認識している場合には、ユーザ(運転者)は、操作ユニット16を介して手動により、車両(車体表示部11)を基準としたときの特定観察者の存在方向すなわち観察者方向を電子制御ユニット12に指示するように実施することも可能である。すなわち、この場合には、位置検出ユニット17を省略して実施することが可能である。この場合であっても、電子制御ユニット12は、上記実施形態と同様に、適切に観察者(特に、特定観察者)の観察者方向に合わせて表示データを変換することができるため、観察者、特に、指定された特定観察者にとっては、自身の視点に合わせた画像(映像)やメッセージが車体表示部11によって見やすく表示されるため、表示された画像(映像)やメッセージを極めて容易に視認することができる。
【0041】
又、上記実施形態においては、ユーザ(運転者)が操作ユニット16を操作して、車体表示部11による表示指示を入力したり、特定観察者を指定するにあたって識別情報を入力したりするように実施した。この場合、例えば、情報提供センタやユーザ(運転者)が所有する情報端末装置等の車両の外部から上記各入力を行うように実施することも可能である。すなわち、例えば、情報提供センタのオペレータが車両に対して車体表示部11による表示指示を表す指示情報を送信すると、電子制御ユニット12は、通信ユニット13を介して指示情報を受信し、この指示情報に基づいて上述した表示制御プログラムのステップS11の判定処理を実行することができる。又、例えば、情報端末装置を利用して、ユーザ(運転者)が車両に対して特定観察者の識別情報を送信すると、電子制御ユニット12は、通信ユニット13を介して識別情報を受信し、この識別情報を用いて上述した表示制御プログラムのステップS12の登録処理を実行することができる。従って、この場合においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
又、上記実施形態においては、1台の車両に設けられた車体表示部11が種々の画像(映像)やメッセージを単独で表示する場合を想定して実施した。この場合、車体表示制御装置10の搭載された他の車両と協働して、すなわち、複数の車両(車体表示部11)が所謂マルチディスプレイを構成して、このマルチディスプレイの画面上に種々の画像(映像)やメッセージを表示するように実施することも可能である。この場合においては、例えば、マルチディスプレイを構成する位置と特定観察者(観察者)の位置とを用いて観察者方向を特定して登録し、この観察者方向に応じて各車体表示制御装置10の電子制御ユニット12が表示すべき表示画像(表示データ)を変換し、各車両に設けられた車体表示部11が変換された表示データによって表される画像(映像)やメッセージを表示することができる。これにより、特定観察者(観察者)は、各車体表示部11によって構成されるマルチディスプレイ画面にて自身の視点に合わせた画像(映像)やメッセージが見やすく表示されるため、表示された画像(映像)やメッセージを極めて容易に視認することができる。
【0043】
尚、このようにマルチディスプレイを構成する場合、上述したように、車体表示部11は車両の外板の外表面上に設置(貼付)され、車両全体があたかも1つの画面(表示部)であるかのように構成することができるため、例えば、大規模な駐車場に車両を並べる(駐車する)ことによって、車両すなわち車体表示部11が極めて容易に大規模なマルチディスプレイの画面を構成することができる。又、並べる(駐車する)車両すなわち車体表示部11の数を増加させることにより、所謂、表示における解像度が向上することになり、大規模かつ高精細なマルチディスプレイの画面を容易に構成することもできる。
【0044】
更に、上記実施形態においては、薄板状とされた周知の自発光型表示パネルや透過光型表示パネル等からなる車体表示部11を車両の外板の外表面上に設置(貼付)するように実施した。この場合、車両の外方に位置する観察者に対して見やすい画像(映像)やメッセージを提示可能であれば、如何なるものを採用して車体表示部11を構成し、実施可能であることは言うまでもない。このような車体表示部11としては、例えば、周知の自発光型表示パネル(例えば、プラズマ表示パネルや有機EL表示パネル等)や透過光型表示パネル(例えば、バックライト有する液晶表示パネル等)からなる所謂筐体を有するディスプレイ装置を採用することができる。或いは、上記実施形態においては、車両に車体表示部11を設けて実施したが、例えば、携帯電話やスマートフォン、タブレット型端末やノートパソコン等の表示部を3次元的に並べて実施することも可能である。これらの場合においても、図4に示した制御プログラムを実行することによって上記実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0045】
10…車体表示制御装置、11…表示部、12…電子制御ユニット、13…通信ユニット、14…記憶ユニット、15…表示出力ユニット、16…操作ユニット、17…位置検出ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外方に位置する観察者に向けて種々の画像を表示する車体表示部と、この車体表示部による画像の表示態様を制御する制御手段とを備えた車体表示制御装置であって、
前記制御手段は、
前記観察者の位置と車両の位置との間の相対位置関係を特定し、
前記特定した相対位置関係に基づいて前記観察者の車両に対する視点方向を特定し、
前記観察者に向けて前記車体表示部が表示する画像を取得し、
前記取得した画像を前記特定した前記観察者の車両に対する視点方向に合わせて変換し、
前記変換した画像を前記車体表示部に表示させることを特徴とする車体表示制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車体表示制御装置において、
前記制御手段は、
車両の外方に位置する観察者のうち、前記車体表示部が表示する画像を提示すべき特定の観察者と車両の位置との間の相対位置関係を特定し、
前記特定した相対位置関係に基づいて前記特定の観察者の車両に対する視点方向を特定することを特徴とする車体表示制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した車体表示制御装置において、
前記車体表示部が前記車両の外板の外表面上に設けられたことを特徴とする車体表示制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−67266(P2013−67266A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207317(P2011−207317)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】