説明

車椅子のフットレスト装置

【課題】フットレストに足を乗せて体重を掛けていく動作のみによりフットレストを下降させることができるようにした。
【解決手段】車体フレーム10に上下方向摺動自在に支持され、下端のフットレスト42を昇降自在に支持する一対のガイドロッド44と、ガイドロッド44を上昇付勢するガスダンパー装置45と、ガスダンパー装置45をロックするダンパーロック装置46と、フットレスト42が踏込まれた下降位置においてガイドロッド44をロックする下部ロック装置47と、備える。そして、シート15下部に付勢手段により上昇するよう付勢され、搭乗者のシート15への着座による在席時に下降され且つ離席により上昇する在席検出装置と、在席検出装置の上昇移動によりダンパーロック装置46のロック状態を解除するダンパーロック解除手段28と、前記下部ロック装置47のロック状態を解除する下部ロック解除手段29と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子の前方に設けるフットレスト装置に関し、特に、乗降時に下降させて使用するに好適な車椅子のフットレスト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から車椅子への乗降に際してフットレストが邪魔にならないように、足を乗せて体重を掛けて下降させることができる車椅子のフットレスト装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、車椅子のフットレストを支持する垂直フレームのアウターパイプ内に、ばね等の伸縮部材により上昇付勢した状態で、インナーパイプを伸縮自在に挿入し、インナーパイプの下端部にフットレストを設けて、フットレストを昇降自在としている。また、アームレストに設けた操作レバーを離している状態で、アウターパイプに対してインナーパイプの移動を阻止する係止部を備える。
【0004】
このため、フットレストを下降させる場合には、操作レバーにより係止部を解除した状態で、フットレストに足を乗せて、体重を掛けていくことによりフットレストを下降可能にできる。そして、フットレストが接地状態にあるか、若しくは、任意の高さとなった時点で操作レバーを離すことによりフットレストが下降位置で固定される。また、下降位置から操作レバーを握ると係止部が解除され、伸縮部材によりインナーパイプが収縮してフットレストが上昇し、任意の位置で操作レバーを離すとその位置でフットレストが固定されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−93411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来例では、インナーパイプの伸縮を係止する係止部が、操作レバーを離すと係止状態となり、操作レバーを操作することにより解除状態となる構成を備える。このため、フットレストを下降させる場合には、操作レバーにより係止部を解除した状態にして、フットレストに足を乗せて体重を掛けていく操作手順を必要とする。また、フットレストが下降位置に到達した時点で、操作レバーを戻すことで係止部を作動させてフットレストを下降位置で保持させる操作を必要とする。従って、上記従来例では、誤って操作レバーを操作しないで、フットレストに足を乗せて体重を掛けてフットレストを下降させようとすると、車椅子が前方に転倒する虞があった。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、フットレストに足を乗せて体重を掛けていく動作のみによりフットレストを下降させることができる車椅子のフットレスト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフットレスト装置は、車体フレームに対して上下方向に摺動自在に支持され、下端部分をフットレストの左右端に連結されることによりフットレストを昇降自在に支持する一対のガイドロッドと、前記一対のガイドロッドを上昇付勢するガスダンパー装置と、ガスダンパー装置をロックするダンパーロック装置と、フットレストが踏込まれた下降位置においてガイドロッドをロックする下部ロック装置と、を備える。
【0009】
更に、本発明のフットレスト装置は、シート下部若しくはアームレスト下部に付勢手段により上昇するよう付勢され搭乗者のシートへの着座若しくはアームレストへの肘掛けによる在席時に下降され且つ離席により上昇する在席検出装置と、在席検出装置の上昇移動によりダンパーロック装置のロック状態を解除するダンパーロック解除手段と、前記下部ロック装置のロック状態を解除する下部ロック解除手段と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
したがって、本発明では、車椅子から下車する場合には、フットレストに体重を掛けつつシートより腰を浮かせる立上り動作により、在席検出装置およびダンパーロック解除手段によりダンパーロック装置が解除され、ガイドロッドが自動的に昇降可能となる。そして、フットレストに掛かる搭乗者の踏力(ほぼ体重)がガスダンパー装置の反力より大きいため、ガイドロッドを摺動させてフットレストは下降される。そして、ガイドロッドが下部ロック装置まで下降すると、下部ロック装置がガイドロッドをロックするため、フットレストを下降位置で固定する。このように、フットレストに足を乗せて体重を掛けていく動作のみにより、車椅子の前方への転倒を生ずることなく、フットレストを下降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した車椅子の構造を示す側面図。
【図2】同じく車椅子の平面図。
【図3】同じく車椅子の正面図。
【図4】同じく車椅子の背面図。
【図5】着座検出装置の正面図。
【図6】着座検出装置の側面図。
【図7】着座検出装置の平面図。
【図8】制動状態におけるブレーキ装置及びブレーキ解除装置を示す説明図。
【図9】非制動状態におけるブレーキ装置及びブレーキ解除装置を示す説明図。
【図10】ブレーキ解除装置を示す説明図。
【図11】ブレーキ解除装置の保持装置を示す説明図。
【図12】ブレーキ解除装置の作動保持状態を示す説明図。
【図13】ブレーキ解除装置の変形例を示す説明図。
【図14】フットレスト装置を示す側面図。
【図15】フットレスト装置を示す正面図。
【図16】ダンパーロック解除手段及び下部ロック装置を示す説明図。
【図17】下部ロック装置の断面図。
【図18】ガスダンパー装置及びダンパーロック装置を示す断面図。
【図19】ダンパーロック装置のロック解除状態を示す断面図。
【図20】本実施例の車椅子の各ケーブルの連携状態を説明する説明図。
【図21】在席検出装置の他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の車椅子のフットレスト装置を各実施例に基づいて説明する。図1〜図4は、本発明を適用した車椅子の構造を示す側面図、平面図、正面図および背面図である。なお、本明細書においては、車椅子に着座している搭乗者の視点を基準として、上下左右及び前後の各方向を規定するものとする。
【0013】
図1において、車椅子は、車両前部の左右両側においてキャスタ(輪)11を備えると共に、車両後部の左右両側において大径の主車輪12を備える。
【0014】
車体フレーム10は、図1〜図4に示すように、パイプフレームで形成した右側フレーム10Rと、同様にパイプフレームで形成した左側フレーム10Lと、左右フレーム10R,10Lを連結する前後一対のX字状のクロスメンバ10Xと、で構成される。左右フレーム10R,10Lは、図示する例では、パイプフレームにより同様の形状に形成されており、下方において前後方向に配置されたロアービーム13Aと、座席を支持するよう前後方向に配置されたセンタービーム13Bと、アームレストが取付られる前後方向に配置されたアッパービーム13Cと、を備える。センタービーム13Bは前方において斜め下方に屈曲されてロアービーム13Aの前端に連結され、斜め下方に延びる傾斜部分には後述するフットレスト装置40が取付られる。アッパービーム13Cは前方において下方に屈曲されてセンタービーム13Bに連結されると共に、その延長端がロアービーム13Aに連結されている。
【0015】
センタービーム13Bおよびアッパービーム13Cの後端は、ロアービーム13Aに下端が結合された上下ビーム13Dに連結され、上下ビーム13Dの上端は後方に屈曲されて介護者のハンドルを構成している。車両前部の左右両側のキャスタ11は、その旋回軸がアッパービーム13Cの下方への延長端に固定されている。また、車両後部の左右両側の主車輪12は、その軸が上下ビーム13Dの、センタービーム13Bとロアービーム13Aとの連結部分の中間位置にブラケットを介して固定されている。
【0016】
左右フレーム10R,10Lを連結する前後一対のX字状のクロスメンバ10Xは、図4〜図7に示すように、車両前後方向から見て互いに交差するよう斜め方向に配置されると共に中央部の交差部分において軸14Aにより互いの交差角度を変更可能とした一対のクロスビーム14B,14Cを車両前後方向に夫々備える。また、車両前後方向に配置される一対のクロスビーム14B,14Cの交差部分の軸14Aは、両者間に配置されたブロック21に先端をねじにより結合して、ブロック21と前後の軸14Aとは一体化されている。
【0017】
車両前後方向に配置される一対のクロスビーム14B,14Cは、その下端において夫々左右フレーム10R,10Lのロアービーム13Aに回動可能に連結される。また、車両前後方向に配置される一対のクロスビーム14B,14Cの上端は、車両前後方向のシート保持パイプ14Eにより、相互に連結されている。シート保持パイプ14Eには、搭乗者が着座するシート15が取付られる。
【0018】
一対のクロスビーム14B,14Cは、その交差角(一方のクロスビームの上方部分と他方のクロスビームの下方部分とがなす角度)を狭めることにより、左右フレーム10R,10L同士の間隔を拡大させることができ、その交差角を拡大させることにより左右フレーム10R,10Lの間隔を狭めることができる。一対のクロスビーム14B,14C同士の交差角を狭めることにより、シート保持パイプ14Eは下方に下降され、左右フレーム10R,10Lのセンタービーム13Bに設けたブラケット13Eに係合させることにより、左右フレーム10R,10Lを拡大させての車椅子の使用状態とすることができる。また、一対のクロスビーム14B,14C同士の交差角を拡大させて左右フレーム10R,10Lの間隔を狭めることにより、シート保持パイプ14Eは上方に上昇されると共に左右を互いに接近させてシート15を折り畳んだ状態として、車椅子を格納状態とすることができる。
【0019】
前記したブロック21には、車椅子の使用状態において、ブロック21の回転を防止するプレート22が固定されている。プレート22には一対の前方片22Aを備え、一対の前方片22Aが車椅子を使用状態とするよう一対のクロスビーム14B,14C同士の交差角を狭めた状態において、車両前方における交差部分より下方部分のクロスビーム14B,14C上面に接するようにしている。ただし、一対の前方片22Aは一対のクロスビーム14B,14C同士の交差角を拡大させて左右フレーム10R,10Lの間隔を狭めて車椅子を格納状態とした際には、交差部分より下方部分が前方片22Aより離れるため、車椅子の折り畳みの障害とならない。
【0020】
このブロック21には、上下方向に摺動自在に移動可能であり、同芯状に配置したばね23により上方へ移動するよう付勢され且つ後述するケーブル27,28により所定以上の上方への移動を阻止された前後一対のスライド軸25が取付けられている。この一対のスライド軸25の上端には、搭乗者の着座に応じて下方へ撓むシート15によりスライド軸25を押下げて下降し、搭乗者の離席に応じて下方への撓みが復元するシート15によりスライド軸25への押下げが解除されて上昇する着座検出プレート26が固定されている。着座検出プレート26は搭乗者の在席検出装置を構成している。
【0021】
着座検出プレート26の前記した上下移動は、ケーブルガイドがブロック21に固定され且つケーブル先端が着座検出プレート26に固定されたプルケーブルによりなる制動ケーブル27により、後述するブレーキ装置30に伝達される。また、着座検出プレート26の上下移動に連動して緊張され、後述するフットレスト装置40のガスダンパー45におけるダンパーロック装置46を解除するプルケーブルよりなるダンパーロックケーブル28が、制動ケーブル27を分岐するか若しくは制動ケーブル27とは独立させて設けられている。
【0022】
ブレーキ装置30は、図8に示すように、主車輪12と共に回転するブレーキドラム31に外周から図示しないブレーキバンドを巻付かせることにより、ブレーキドラム31を締付けて制動するバンドブレーキにより構成されている。この種のブレーキ装置は、ブレーキバンドの一端はブレーキバックプレート32に固定され、ブレーキドラム31に巻付けたブレーキバンドの他端を、ブレーキレバー33により巻付き方向に移動させることによりブレーキバンドをブレーキドラム31外周に巻付かせて制動する。また、ブレーキドラム31に巻付けたブレーキバンドの他端を、ブレーキレバー33により巻付き方向とは反対側に移動させることによりブレーキバンドをブレーキドラム31外周から離脱させることにより制動状態を非制動状態に解除する。
【0023】
また、ブレーキレバー33は、図示しないばねにより制動解除方向に一定の付勢力が付与されて、通常時はブレーキ非制動状態としている。このブレーキレバー33には制動ケーブル27の他端におけるケーブル先端が固定され、制動ケーブル27の他端におけるケーブルガイドがブレーキバックプレート32に固定されることにより、制動ケーブル27によりブレーキレバー33を制動方向に回動させることにより制動させることができる。即ち、この制動ケーブル27の他端は前述した着座検出プレート26に連結され、図に示すように、搭乗者の着座により制動ケーブル27が弛められてブレーキレバー33がばねによる付勢方向に回動してブレーキ非制動状態となる。また、図に示すように、搭乗者の離席により制動ケーブル27が緊張されてブレーキレバー33が、ばねによる付勢方向に抗して回動されてブレーキ制動状態となる。
【0024】
なお、ブレーキ装置30としては、上記したものに限定されるものでなく、例えば、ブレーキドラムの内面にブレーキシューを接触させることにより制動するものやブレーキドラムの外周にブレーキシューを接触させて制動するものであってもよい。
【0025】
また、前記ブレーキ装置30には、図8に示すように、制動状態のブレーキ装置30を外部より非制動状態に変更するブレーキ解除装置35が連結されている。このブレーキ解除装置35は、搭乗者の離席により制動ケーブル27が緊張されてブレーキ制動状態となった車椅子を介助者が運搬する際に、解除レバー36を操作することにより制動状態のブレーキ装置30を非制動状態に解除する。ブレーキ制動状態が解除されることにより、車椅子は介助者によりブレーキ抵抗なく運搬することができる。そして、車椅子の運搬が完了した際には、解除レバー36を初期位置に復帰させることにより、ブレーキ装置30を再び制動状態に戻して、車椅子を安定して停車させておくことができる。
【0026】
上記ブレーキ解除装置35は、解除レバー36と、解除レバー36の操作時に緊張されてブレーキ装置30のブレーキレバー33をブレーキ解除方向に回動させるプルケーブルよりなる解除ケーブル34と、を備える。ブレーキレバー33をブレーキ解除方向に回動させる解除ケーブル34は、ケーブルガイドがフレームに固定され、そのケーブル先端がブレーキレバー33に係合している。そして、解除レバー36が操作されていない状態において、搭乗者の着座によって制動ケーブル27が弛められてブレーキ装置30が非制動状態にある時には、解除ケーブル34先端は、図9に示すように、ブレーキレバー33の係合部分から浮き上がった状態となっている。しかしながら、搭乗者の離席によって制動ケーブル27が緊張されてブレーキ装置30が制動状態にある時には、解除ケーブル34先端は、図8に示すように、ブレーキレバー33の係合部分に係合した状態となる。
【0027】
この解除ケーブル34の他端は、解除レバー36に連結され、そのケーブルガイドは解除レバー36を回動自在に支持するブラケット37に固定されている。解除レバー36は、操作されていない状態においては、図8,9に示すように、ブラケット37で形成したストッパに接触した非操作位置にあり、ブレーキ装置30の制動状態を非制動状態に解除する際には、矢印方向に操作される。
【0028】
このレバー操作により、解除ケーブル34を緊張させてケーブル先端をブレーキレバー33への係合方向に移動させる。この時、搭乗者の離席によって制動ケーブル27が緊張されてブレーキレバー33が制動方向に回動されている時には、解除ケーブル34先端をブレーキレバー33に係合させ、次いでブレーキレバー33をブレーキ解除方向に回動させ、ブレーキ装置30を非制動状態とする。この時、解除レバー36には解除ケーブル34・ブレーキレバー33・制動ケーブル27・着座検出プレート26を介して、着座検出プレート26を元の位置に復帰させるよう付勢するばね23の反力が作用し、解除レバー36を非操作位置へ戻すよう作用する。
【0029】
このため、図10に示すように、解除レバー36に係合突起36Aを設けると共に、この係合突起36Aの移動軌跡上に出没可能なストッパ部材38をブラケット37に設け、係合突起36Aとストッパ部材38とを係合させることにより、解除レバー36を操作位置に保持するようにしている。出没可能なストッパ部材38は、図11に示すように、ブラケット37を構成するU字状部材に段付きピン38Aをピン軸方向に摺動自在に嵌め込むことにより構成する。
【0030】
即ち、ブラケット37を構成するU字状部材の一方に小径穴を、またU字状部材の一方に大径穴を、同軸上に設ける。また、段付きピン38Aは、小径穴に嵌合する小径部38Bと大径穴に嵌合する大径部38Cと大径部38Cの端部のピンヘッド38Dとを備えるものとする。そして、小径部38Bを小径穴に大径部38Cを大径穴に嵌合させ、ブラケット37から突出した小径部38Bに抜け止めリングを嵌め、ブラケット37と大径部38Cの端部のピンヘッド38Dとの間に圧縮ばね38Eを配置する。
【0031】
従って、通常時は圧縮ばね38Eによりブラケット37を構成するU字状部材間には段付きピン38Aの小径部38Bが配置され、この小径部38Bは解除レバー36の係合突起36Aの移動軌跡上にはないため、解除レバー36の非操作位置への復帰を阻止しない。しかし、ピンヘッド38D側から圧縮ばね38Eを撓ませて段付きピン38Aを押込むことでU字状部材間に大径部38Cを進出させると、図12に示すように、この大径部38Cは大径に形成されて解除レバー36の係合突起36Aの移動軌跡上に出っ張る。このため、解除レバー36の非操作位置への復帰を阻止することとなる。
【0032】
解除レバー36の係合突起36Aと大径部38Cとが係合すると、解除レバー36に作用している戻し力により段付きピン38Aの摺動移動を阻止し、解除レバー36から手を離しても、その操作状態を維持させることができ、解除ケーブル34を介してブレーキレバー33をブレーキ非制動状態に維持させることができる。なお、再び解除レバー36を操作方向に操作すると、係合突起36Aと大径部38Cとの係合が解除され、段付きピン38Aは圧縮ばね38Eの作用により通常位置に復帰し、解除レバー36を非操作位置へ戻すことができる。
【0033】
また、ブレーキ解除装置35には、解除レバー36によるブレーキ解除操作に連動して緊張される、プルケーブルからなるダンパーロックケーブル29B及び下部ロックケーブル29Aが、解除ケーブル34を分岐するか若しくは解除ケーブル34とは独立させて設けられている。ダンパーロックケーブル29Bは、後述するフットレスト装置40におけるガスダンパー45のダンパーロック装置46を解除するプルケーブルであり、下部ロックケーブル29Aは、後述するフットレスト装置40の下部ロック装置47を解除するプルケーブルである。
【0034】
なお、解除レバー36として、図13に示すように、ばねにより係合方向に付勢したラチェット爪39Aを備え、また、解除レバー36の移動軌跡上には、解除レバー36が所定角度以上操作された際にラチェット爪39Aと係合するラチェット歯39Bを設ける構成としてもよい。この構成では、解除レバー36が所定角以上操作された場合には、解除レバー36から手を離しても、その操作状態を保持させることができ、解除ケーブル34を介してブレーキレバー33をブレーキ非制動状態に維持させることができる。なお、ラチェット爪39Aは、解除レバー36に設けたノブ39Cを押込むことによりラチェット歯39Bから離脱させることができ、ノブ39Cを押した状態で解除レバー36を非操作位置へ戻すことができる。
【0035】
フットレスト装置40は、センタービーム13Bにおける斜め前方に延びる傾斜部分に夫々固定された左右一対の昇降ガイド41と、左右一対の昇降ガイド41の下端に両端が連結されて車両横方向に配置されるフットレスト42と、で構成される。
【0036】
左右一対の昇降ガイド41は、センタービーム13Bの傾斜部分に夫々固定された上下ガイド43A,43Bと、上下ガイド43A,43Bに案内されて上下方向に昇降自在な一対のガイドロッド44と、上下ガイド43A,43Bにシリンダ45A部分が固定されてガイドロッド44を上方へ引上げるよう付勢するガスダンパー45と、から構成されている。
【0037】
フットレスト42は、左右のガイドロッド44の下端に連結され、一方のガイドロッド44の下端に対しては前後方向の軸回りに回動可能とされ、他方のガイドロッド44の下端に対しては、上方から係合可能とされる。このため、車椅子の折り畳み時には、フットレスト42を他方のガイドロッド44に対する係合を外して、一方のガイドロッド44に対する軸回りに回動させて起して、車椅子の左右フレーム10R,10Lの接近移動を可能とするようにする。
【0038】
なお、図3に示すように、フットレスト42を左右のガイドロッド44の下端と一体となるよう完全に結合するようにしてもよい。この場合には、図示しないが、フットレスト42が中央部分で上方に山形に折れ曲り、左右のガイドロッド44近傍で谷折り状態に折れ曲るよう構成することにより、車椅子の折り畳みに対応させる。そして、フットレスト42を水平に延した状態においては、フットレスト42は一体となった剛体とでき、フットレスト42と左右のガイドロッド44とを完全に一体化され、左右のガイドロッド44の昇降動作が左右でバラバラになることが抑制できる。
【0039】
上下ガイド43A,43Bは、ブッシュを備えた上下方向の穴43Cによりガイドロッド44を摺動自在に案内するよう支持し、隣接する上下方向の穴43Dにガスダンパー45のシリンダ45A部分を固定して保持している。
【0040】
ガスダンパー45としては、図18に示すように、内蔵したガス45Eにより内圧が上昇されたシリンダ45Aと、シリンダ45A内に摺動自在に挿入されたピストン45Bと、ピストン45Bと一体となってシリンダ45A端から出没するピストンロッド45Cと、を備える。また、ガスダンパー45より突出したピストンロッド45Cの先端は、ガイドロッド44の上端にブラケット45Gを介して連結されている。このため、ピストンロッド45Cとガイドロッド44とは一体となって昇降移動する。
【0041】
また、ガスダンパー45は、ピストン45Bで区画するシリンダ室同士を連通及び遮断するバルブ45Dと、ピストンロッド45Cに内臓され押込み作動されることによりバルブ45Dを解放するプッシュロッド45Fと、を備える。シリンダ室は作動油で満たされており、作動油とガス45Eを区画するフリーピストンが設けられている。
【0042】
このガスダンパー45は、ガス45Eによりシリンダ45A内の内圧が上昇されていることにより、バルブ45Dが閉じている時には上部室(ピストンロッド45C回りの室)が流体ロックしてその伸縮が阻止されている。しかし、プッシュロッド45Fが押込まれてバルブ45Dが開かれる時には、図19に示すように、上部室と下部室とが連通されることにより伸縮可能となる。そして、バルブ45Dが開かれて伸縮可能となる時には、ガス45Eによりシリンダ45A内の内圧が上昇されていることにより、ピストンロッド45Cを伸び出させるよう作用する。
【0043】
また、バルブ45Dが開かれて伸縮可能となる時には、ガス45Eによる圧力に対向してピストンロッド45Cをシリンダ45A内に押込むことにより、シリンダ45A内にピストンロッド45Cを没入させることができる。また、ピストン45B及びピストンロッド45Cが任意の伸縮位置にある時点でプッシュロッド45Fに対する押込みを解除することにより、バルブ45Dを閉じると、その位置でピストン45B及びピストンロッド45Cの伸縮を停止させてロックすることができる。
【0044】
前記プッシュロッド45Fを操作するために、本実施形態においては、ガイドロッド44上端とピストンロッド先端とを連結するブラケット45Gにピンを介して回動可能に押込みレバー45Hを固定する。そして、この押込みレバー45Hにプッシュロッド45F上端を係合させると共に押込みレバー45H先端にダンパーロックケーブル28のケーブル端を係合させ、そのケーブルガイド端をブラケット45Gに係合させる。また、押込みレバー45H先端には、更に解除レバー36に連結されたダンパーロックケーブル29Bのケーブル端を係合させ、そのケーブルガイド端をブラケット45Gに係合させる。上記したバルブ45D,プッシュロッド45F,レバー45Hは、ダンパーロック装置46を構成している。
【0045】
この構成により、プッシュロッド45F先端のバルブ45Dを、着座検出プレート26の上下動により開閉可能としていると共に、ダンパーロックケーブル29Bを介して解除レバー36によってもプッシュロッド45F先端のバルブ45Dを開閉可能としている。
【0046】
このため、搭乗者のシートへの着座時には、着座検出プレート26が下降されてダンパーロックケーブル28が弛められることによりバルブは閉じた状態となる。また、搭乗者の離席時のシートに加わる体重による荷重が抜けて、座面下のばね23により着座検出プレート26が上昇する時には、ダンパーロックケーブル28が緊張されてレバー45H及びプッシュロッド45Fが押込まれて、バルブ45Dが開放され、フットレスト42を昇降可能とする。
【0047】
また、解除レバー36からダンパーロックケーブル29B、押込みレバー45H及びプッシュロッド45Fを介しても、バルブ45Dを開放して、フットレスト42を昇降可能とできる。
【0048】
また、下部ガイド43Bにはガイドロッド44を下降位置でロックする下部ロック装置47が設けられている。また、ガイドロッド44には、ガイドロッド44が下降された時に下部ロック装置47に臨む位置に設けた下部ロック溝47Aを備える。
【0049】
下部ロック装置47は、図17に示すように、ガイドロッド44に直交する方向に移動可能であり、背面に配置したばね47Bによりガイドロッド44に向かって進むように付勢され、先端が円弧状をなしてガイドロッド44に設けた下部ロック溝47Aに係合する下部ロック片47Cを備える。
【0050】
従って、ガイドロッド44が上下ガイド43A,43Bに案内されて下降されて、その下部ロック溝47Aが下部ロック片47Cと上下方向に位置が一致されると、下部ロック片47Cが背面のばね47Bの付勢力により下部ロック溝47Aに係合してガイドロッド44を下部位置でロックする。
【0051】
この下部ロック片47Cには、下部ロックケーブル29Aの他端におけるケーブル先端が連結され、下部ロックケーブル29Aの他端におけるケーブルガイドの先端は下部ガイド43Bに連結されている。このため、下部ロックケーブル29Aの一端に配置されているブレーキ解除装置35の解除動作に連動して下部ロック片47Cが移動する。即ち、ブレーキ解除装置35の解除レバー36を非操作位置から解除方向に操作することに伴い、下部ロックケーブル29Aが緊張される。このため、下部ロック片47Cがガイドロッド44の下部ロック溝47Aへの係合状態から背面のばね47Bに抗して外周側に移動され、下部ロック装置47のロック解除が実行される。
【0052】
図20は、以上に説明した車椅子のフットレスト装置40の着座検出プレート26、ブレーキ装置30、ブレーキ解除装置35、フットレスト装置40のダンパーロック装置46、下部ロック装置47間のプルケーブルの配索状態を示すものである。
【0053】
以上の構成の車椅子のフットレスト装置40の動作について以下に説明する。
【0054】
車椅子のシート15に搭乗者が着座している状態においては、搭乗者の着座に応じて下方へ撓むシート15により、シート15の下部に配置している着座検出プレート26がばね23に抗して下方に押下げられている。
【0055】
着座検出プレート26の下方への押下げにより、制動ケーブル27及びダンパーロックケーブル28の緊張が無くなり、夫々緩んだ状態となる。このため、制動ケーブル27に連結されているブレーキ装置30のブレーキレバー33は解除方向へ回動され、ブレーキ装置30は非制動状態となっている。
【0056】
また、ダンパーロックケーブル28の弛みにより、フットレスト装置40におけるダンパーロック装置46の押下げレバー45Hによるプッシュロッド45Fの押下げを解除する。このため、バルブ45Dが閉じ状態となり、ダンパーロック装置46はロック状態となり、フットレスト42を上昇位置で固定している。
【0057】
なお、ブレーキ解除装置35は操作されていないために、解除ケーブル34、下部ロックケーブル29A及びダンパーロックケーブル29Bも弛んだ状態にある。このため、下部ロックケーブル29Aに連結されているフットレスト装置40における下部ロック装置47の下部ロック片47Cも背面のばね47Bによりガイドロッド44の下部ロック溝47Aから外れた外周部分に押付けられている。また、ダンパーロックケーブル29Bも弛んだ状態にあるため、ガスダンパー45の押下げレバー45Hは押下げから開放された状態にあり、ダンパーロック装置46のロック状態が保持される。
【0058】
搭乗者が車椅子から下車する場合には、フットレスト42に体重を掛けつつシート15より腰を浮かせる。この立上り動作により、シート15に加わる体重による荷重が抜けて、座面下のばね23が伸び、着座検出プレート26が上昇する。この着座検出プレート26の上昇に伴い、制動ケーブル27及びダンパーロックケーブル28にばね23による緊張力が作用し、夫々のケーブルが引張られる。
【0059】
制動ケーブル27の緊張力はブレーキ装置30のブレーキレバー33を制動解除方向に付勢する図示しないばねに抗して制動方向に回動させ、ブレーキドラム31をブレーキバンドにより締付け、ブレーキ装置30を制動状態とし、車椅子の移動が自動的に規制される。このため、搭乗者の下車動作による車椅子の移動を阻止できることから、搭乗者は安全に下車動作を開始することができる。
【0060】
一方、ダンパーロックケーブル28の緊張力は、フットレスト装置40におけるガスダンパー45の押下げレバー45Hを押下げ、プッシュロッド45Fを介してダンパーロック装置46のバルブ45Dを開放し、フットレスト42を昇降可能とする。ガイドロッド44には、ガスダンパー45の反力により上昇させようとする付勢力が作用してフットレスト42を上昇させようとする。しかし、フットレスト42に掛かる搭乗者の踏力(ほぼ体重)がガスダンパー45の反力より大きいため、上下ガイド43A,43Bに沿ってガイドロッド44を摺動させてフットレスト42は下降される。
【0061】
そして、ガイドロッド44の下部ロック溝47Aが、下部ガイド43Bに設けた下部ロック装置47の位置まで下降すると、下部ロック片47Cが背面のばね47Bにより前進してガイドロッド44の下部ロック溝47Aに嵌まり、フットレスト42を下降位置で固定する。このため、搭乗者はフットレスト42から足を踏み出して下車することができる。
【0062】
搭乗者が車椅子に乗り込む場合には、フットレスト42は下降位置で固定されている状態であるため、フットレスト42を踏みつけて、そのまま乗車し、シート15に着座する。ブレーキ装置30は制動状態となっているため、搭乗者の乗車時に車椅子が移動することがなく、安全に乗り込むことができる。
【0063】
シート15に着座すると、シート15に搭乗者の体重が加わり、着座検知プレート26がばね23に抗して下降され、制動ケーブル27及びダンパーロックケーブル28を弛める。このため、制動ケーブル27に連結されているブレーキレバー33がばねにより解除方向に回動され、ブレーキ装置30が非制動状態となる。
【0064】
また、ダンパーロックケーブル28が弛められることにより、ダンパーロックケーブル28に連結されている押下げレバー45H及びプッシュロッド45Fが上昇し、バルブ45Dが閉じた状態となり、ガスダンパー45は伸縮がロックされる。
【0065】
次いで、ブレーキ解除装置35の解除レバー36を操作位置に操作する。解除レバー36の操作位置への回動により、解除ケーブル34、下部ロックケーブル29A及びダンパーロックケーブル29Bが緊張される。
【0066】
解除ケーブル34の緊張は、ブレーキ装置30のブレーキレバー33が非制動位置に回動しているため、解除ケーブル34のケーブル先端がブレーキレバー33へ係合する方向に空移動するのみとなる。
【0067】
下部ロックケーブル29Aの緊張は、フットレスト装置40における下部ロック装置47の下部ロック片47Cを背面のばね47Bに抗してガイドロッド44の下部ロック溝47Aより離脱させ、ガイドロッド44を非拘束状態とする。
【0068】
また、ダンパーロックケーブル29Bの緊張は、押下げレバー45H及びプッシュロッド45Fを押込み、バルブ45Dを開放させて、ダンパーロック装置46はロック解除状態となり、フットレスト42が昇降可能となる。
【0069】
ガイドロッド44はガスダンパー45の反力により上昇させようとする付勢力が作用しているため、上下ガイド43A,43Bに沿ってガイドロッド44を摺動させてフットレスト42は上昇される。そして、フットレスト42が搭乗者に適した高さまで上昇された段階で、解除レバー36を非操作位置に戻すことにより、ダンパーロックケーブル29B及び下部ロックケーブル29Aの緊張状態を解除する。ダンパーロック装置46の押下げレバー45H及びプッシュロッド45Fの押込みが解除され、バルブ45Dが閉じられ、ガスダンパー45をロック状態として、フットレスト42を任意の上昇位置で固定する。
【0070】
また、フットレスト42の高さ位置が、搭乗者に適した高さでない場合には、解除レバー36を操作位置に操作することにより、ダンパーロックケーブル29Bを介して押下げレバー45H及びプッシュロッド45Fを押込み、バルブ45Dを開放させて、フットレスト42を昇降可能な状態とすることができる。従って、この状態でフットレスト42をガスダンパー45の反力に抗して踏込み、適した高さ位置に調整する。そして、再び解除レバー36を非操作位置に戻して押下げレバー45H及びプッシュロッド45Fの押込みを解除することによりバルブ45Dを閉じて、ガスダンパー45をロック状態として、フットレスト42を任意の高さ位置で固定することができる。
【0071】
また、搭乗者が下車した空車状態の車椅子においては、空車状態であるためブレーキ装置30は制動状態となっており、また、搭乗者の下車に伴ってフットレスト42は下降位置で固定されている。このため、介護者が空車状態の車椅子を保管位置に移動させる場合には、ブレーキ装置30を非制動状態とする必要があり、ブレーキ解除装置35の解除レバー36を操作位置に移動させる。
【0072】
この時、解除レバー36には解除ケーブル34・ブレーキレバー33・制動ケーブル27・着座検出プレート26を介して、着座検出プレート26を元の位置に復帰させるよう付勢するばね23の反力が作用し、解除レバー36を非操作位置へ戻すよう作用している。このため、ストッパ部材38を操作して、段付きピン38Aの大径部38Cを係合突起36Aに臨ませ、解除レバー36の係合突起36Aをストッパ部材38の大径部38Cに係合させて、解除レバー36を操作位置で保持する。
【0073】
解除レバー36の操作位置への移動は、解除ケーブル34、ダンパーロックケーブル29B及び下部ロックケーブル29Aを緊張させる。解除ケーブル34の緊張は、解除ケーブル34先端をブレーキレバー33に係合させ、次いでブレーキレバー33をブレーキ解除方向に回動させ、ブレーキ装置30を非制動状態とする。
【0074】
また、ダンパーロックケーブル29Bの緊張は、押下げレバー45H及びプッシュロッド45Fを押込み、バルブ45Dを開放させて、ダンパーロック装置46はロック解除状態となり、ガスダンパー45を伸長可能とする。
【0075】
また、下部ロックケーブル29Aの緊張は、フットレスト装置40における下部ロック装置47において、下部ロック片47Cを背面のばね47Bに抗してガイドロッド44の下部ロック溝47Aより離脱させ、ガイドロッド44を非拘束状態とし、フットレスト42が昇降可能となる。ガイドロッド44には、ガスダンパー45の反力により上昇させようとする付勢力が作用しているため、上下ガイド43A,43Bに沿ってガイドロッド44を摺動させてフットレスト42は上昇される。そして、ガスダンパー45がストロークエンドまで伸びることにより、フットレスト42は上昇位置で停止する。
【0076】
以上のように、空車状態の車椅子のブレーキ装置30を非制動状態とできるため、介護者はブレーキ装置30のブレーキ抵抗を受けることなく、任意の保管位置に車椅子を移動させることができる。そして、移動した保管位置において、再び解除レバー36を操作位置を超える操作を加えることにより、ストッパ部材38を係合突起36Aと係合しない状態、即ち、段付きピン38Aの小径部38Bを係合突起36Aに臨ませて、解除レバー36を非操作位置に戻す。これにより、解除ケーブル34を弛めて、ブレーキレバー33を制動位置に回動させ、ブレーキ装置30を制動状態として、車椅子を保管位置に停止させることができる。
【0077】
なお、上記実施形態において、在席検出装置として、搭乗者のシート15への着座状態を検出するものについて説明したが、搭乗者の在席状態を検出できるものであればよい。例えば、図21に示すように、アームレスト61をばね62により上方に付勢されて上下動可能に形成し、アームレスト61が下降されていることにより乗車状態と検出し、アームレスト61が上昇されていることにより空車状態と検出するものであってもよい。この場合においては、着座検出プレート26に対すると同様に、アームレスト61に対して制動ケーブル27及びダンパーロックケーブル28を配索することにより、上記実施例と同様に作動させることができる。
【0078】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0079】
(ア)車体フレーム10に対して上下方向に摺動自在に支持され、下端部分をフットレスト42の左右端に連結されることによりフットレスト42を昇降自在に支持する一対のガイドロッド44と、前記一対のガイドロッド44を上昇付勢するガスダンパー装置45と、ガスダンパー装置45をロックするダンパーロック装置46と、フットレスト42が踏込まれた下降位置においてガイドロッド44をロックする下部ロック装置47と、シート15下部若しくはアームレスト下部に付勢手段により上昇するよう付勢され、搭乗者のシート15への着座若しくはアームレストへの肘掛けによる在席時に下降され且つ離席により上昇する在席検出装置と、在席検出装置の上昇移動によりダンパーロック装置46のロック状態を解除するダンパーロック解除手段28と、前記下部ロック装置47のロック状態を解除する下部ロック解除手段29と、を備える。
【0080】
即ち、搭乗者が車椅子から下車する場合には、フットレスト42に体重を掛けつつシート15より腰を浮かせる立上り動作により、在席検出装置およびダンパーロック解除手段28によりダンパーロック装置46が解除され、ガイドロッド44が自動的に昇降可能となる。そして、フットレスト42に掛かる搭乗者の踏力(ほぼ体重)がガスダンパー装置45の反力より大きいため、ガイドロッド44を摺動させてフットレスト42は下降される。そして、ガイドロッド44が下部ロック装置47まで下降すると、下部ロック装置47がガイドロッド44をロックするため、フットレスト42を下降位置で固定する。このように、搭乗者がフットレスト42に足を乗せて体重を掛けていく動作のみにより、車椅子の前方への転倒を生ずることなく、フットレスト42を下降させることができる。
【0081】
(イ)主車輪12にはその回転を停止させるブレーキ装置30を備えると共に、前記ブレーキ装置30は前記在席検出装置に機械的な伝達手段を介して連結され、在席検出装置の下降移動により非制動状態とされ、在席検出装置の上昇移動により制動状態とされる。即ち、車椅子への乗降時にブレーキ装置30が自動的に作動状態とされるため、車椅子の移動が自動的に規制され、搭乗者の乗降時の安全を確保することができる。
【0082】
(ウ)ブレーキ装置30を在席検出装置に対向して非制動状態に付勢するブレーキ解除装置35を備え、前記ブレーキ解除装置35は、第2のダンパーロック解除手段29Bを介してダンパーロック装置46のロック状態を解除すると共に、下部ロック解除手段29を介して下部ロック装置47を解除する。
【0083】
即ち、搭乗者が車椅子へ乗り込む際には、フットレスト42は下降位置で固定されている状態であるため、フットレスト42を踏みつけて、そのまま乗車し、シート15に着座する。ブレーキ装置30は制動状態となっているため、搭乗者の乗車時に車椅子が移動することがなく、安全に乗り込むことができる。そして、搭乗者がシート15に着座すると、在席検出装置によりブレーキ装置30が非制動状態となる。
【0084】
この状態において、ブレーキ解除装置35を操作すると、第2のダンパーロック解除手段29Bを介してダンパーロック装置46のロック状態を解除すると共に、下部ロック装置47が解除されてガイドロッド44が非拘束状態となり、フットレスト42が昇降可能となる。ガイドロッド44は、ガスダンパー装置45の反力により上昇され、フットレスト42は上昇され、フットレスト42が適正位置となる時にブレーキ解除装置35を非操作位置に戻すことにより、ダンパーロック装置46によりガスダンパー装置45の伸縮をロックして、フットレスト42を上昇位置に固定する。このように、フットレスト42を上昇位置に復帰させることができる。
【0085】
(エ)ブレーキ解除装置35は、その操作状態を保持する保持手段38を備えている。即ち、搭乗者が下車した空車状態の車椅子においては、空車状態であるためブレーキ装置30は制動状態となっており、また、搭乗者の下車に伴ってフットレスト42は下降位置で固定されている。この時、ブレーキ解除装置35には在席検出装置を元の位置に復帰させるよう付勢するばね23の反力が作用し、ブレーキ解除装置35を非操作位置へ戻すよう作用している。このため、介護者が空車状態の車椅子を保管位置に移動させる場合に、ブレーキ解除装置35の解除レバー36を操作位置に保持させると、ブレーキ装置30を非制動状態とでき、フットレスト42は下部ロック装置47が解除されることにより、上昇位置に復帰される。
【0086】
このように、空車状態の車椅子のブレーキ装置30を非制動状態とできるため、介護者はブレーキ装置30のブレーキ抵抗を受けることなく、任意の保管位置に車椅子を移動させることができる。
【0087】
(オ)車体フレーム10は、キャスタ11及び主車輪12が装着された左右のフレーム10R,10Lと、車両前方から見て互いに交差する斜め方向に配置されると共に中央部の交差部分で軸により互いの交差角度を変更可能とされ、交差する部材の夫々の下端が左右フレーム10R,10Lに回動可能に連結されることにより、左右のフレームを連結するX字状のクロスメンバ10Xと、を備え、前記在席検出装置は、前記クロスメンバ10Xの交差部分に配置される軸部材に基部が配置されると共に、交差する部材14B,14Cに接触することにより軸回りの倒れが規制されて、クロスメンバ10Xの上方に配置されるシート15への搭乗者の着座状態を検出するようにしている。
【0088】
このようにすると、在席検出装置が車椅子の折り畳みの障害とならず、車椅子を折畳むことができると共に、車椅子の使用時には、在席検出装置を正確に直立させることができる。
【0089】
(カ)フットレスト42は左右一対のガイドロッド44に対して一体に固定されている。このため、フットレスト42と左右のガイドロッド44とが完全に一体化され、左右のガイドロッド44の昇降動作が左右でバラバラになることが抑制できる。
【符号の説明】
【0090】
10 車体フレーム
10R,10L 左右フレーム
10X クロスメンバ
15 シート
26 着座検出プレート
27 制動ケーブル
28,29B ダンパーロックケーブル
29A 下部ロックケーブル
30 ブレーキ装置
31 ブレーキドラム
33 ブレーキレバー
34 解除ケーブル
35 ブレーキ解除装置
36 解除レバー
38 ストッパ部材
40 フットレスト装置
41 昇降ガイド
42 フットレスト
43A,43B 上下ガイド
44 ガイドロッド
45 ガスダンパー
46 ダンパーロック装置
47 下部ロック装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの前部に足を載置して安定化させるフットレストと旋回自在なキャスタとを備えると共に後部に左右主車輪を備え、左右主車輪間とキャスタとに跨ってシートが配置される車椅子であり、
車体フレームに対して上下方向に摺動自在に支持され、下端部分をフットレストの左右端に連結されることによりフットレストを昇降自在に支持する一対のガイドロッドと、
前記一対のガイドロッドを上昇付勢するガスダンパー装置と、
ガスダンパー装置をロックするダンパーロック装置と、
フットレストが踏込まれた下降位置においてガイドロッドをロックする下部ロック装置と、
シート下部若しくはアームレスト下部に付勢手段により上昇するよう付勢され搭乗者のシートへの着座若しくはアームレストへの肘掛けによる在席時に下降され且つ離席により上昇する在席検出装置と、
在席検出装置の上昇移動によりダンパーロック装置のロック状態を解除する第1のダンパーロック解除手段と、
前記下部ロック装置のロック状態を解除する下部ロック解除手段と、を備えることを特徴とする車椅子のフットレスト装置。
【請求項2】
前記主車輪にはその回転を停止させるブレーキ装置を備え、
前記ブレーキ装置は前記在席検出装置に機械的な伝達手段を介して連結され、在席検出装置の下降移動により非制動状態とされ、在席検出装置の上昇移動により制動状態とされることを特徴とする請求項1に記載の車椅子のフットレスト装置。
【請求項3】
前記ブレーキ装置を在席検出装置に対向して非制動状態に付勢するブレーキ解除装置を備え、
前記ブレーキ解除装置は、第2のダンパーロック解除手段を介してダンパーロック装置のロック状態を解除すると共に、下部ロック解除手段を介して下部ロック装置を解除することを特徴とする請求項2に記載の車椅子のフットレスト装置。
【請求項4】
前記ブレーキ解除装置は、その操作状態を保持する保持手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載の車椅子のフットレスト装置。
【請求項5】
前記車体フレームは、キャスタ及び主車輪が装着された左右のフレームと、車両前方から見て互いに交差する斜め方向に配置されると共に中央部の交差部分で軸により互いの交差角度を変更可能とされ、交差する部材の夫々の下端が左右フレームに回動可能に連結されることにより、左右のフレームを連結するX字状のクロスメンバと、を備え、
前記在席検出装置は、前記クロスメンバの交差部分に配置される軸部材に基部が配置されると共に、交差する部材に接触することにより軸回りの倒れが規制されて、クロスメンバの上方に配置されるシートへの搭乗者の着座状態を検出するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の車椅子のフットレスト装置。
【請求項6】
前記フットレストは左右一対のガイドロッドに対して一体に固定されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の車椅子のフットレスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−205675(P2012−205675A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72305(P2011−72305)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)