車椅子用昇降機
【課題】車椅子用昇降機において、設置スペースの省スペース化を図りつつ、目的の方向から車椅子をテーブル部へ搭乗可能とするとともに、車椅子をテーブル部へ案内するためのスロープが車椅子のテーブル部からの落下防止の効果を奏するようにした車椅子用昇降機を提供すること。
【解決手段】昇降手段により昇降可能かつ車椅子が搭乗可能なテーブル部に、該テーブル部へ車椅子を案内するためのスロープをテーブル部に対して起立または倒伏可能に配設する。前記スロープは、テーブル部が最低位置にあるとき、側面視において上り勾配部と下り勾配部を有する略々へ字形状を形成するように構成し、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子が方向転換してテーブル部上に完全に搭乗できるようにするためのスペースを確保する。また、スロープの上り勾配部の長さを車椅子の車輪のハンドリムを持ち替えることなく一漕ぎで越えられる長さとする。
【解決手段】昇降手段により昇降可能かつ車椅子が搭乗可能なテーブル部に、該テーブル部へ車椅子を案内するためのスロープをテーブル部に対して起立または倒伏可能に配設する。前記スロープは、テーブル部が最低位置にあるとき、側面視において上り勾配部と下り勾配部を有する略々へ字形状を形成するように構成し、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子が方向転換してテーブル部上に完全に搭乗できるようにするためのスペースを確保する。また、スロープの上り勾配部の長さを車椅子の車輪のハンドリムを持ち替えることなく一漕ぎで越えられる長さとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子を使用した状態で段差を越えるために、車椅子を昇降させる車椅子用昇降機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車椅子用昇降機は、一般的に車椅子が搭乗する昇降可能なテーブル部と、該テーブル部を昇降させる昇降手段を備えており、テーブル部を昇降させることで車椅子を移動させるものである。この車椅子用昇降機を設置するに当たっては、車椅子用昇降機自体の設置スペースの他に、車椅子をテーブル部へ案内するためのスロープの設置スペースや、該スロープに車椅子を案内するためのスペースも必要となる。
このような状況で、車椅子用昇降機の設置スペースの省スペース化を図るため、車椅子を搭乗させるテーブル部の形状は車椅子の形態に合せて最小限の大きさに設計される。その結果、通常、テーブル部の形状は車椅子の全長及び全幅よりもやや大きい平面視において矩形状となる。したがって、車椅子はテーブル部の短辺側から乗降することでテーブル部上に搭乗されることとなる。このとき、仮に車椅子をテーブル部の長辺側から乗降させると、車椅子はテーブル部の長手方向に沿うよう方向転換しなければテーブル部に搭乗することができないうえに、テーブル部上での方向転換は困難である。したがって、通常は方向転換の必要がないように、テーブル部の長手方向に沿うよう短辺側から車椅子をテーブル部へ進入させ、またテーブル部から退出させている。
ところが、車椅子用昇降機が、住宅の玄関等の出入り口、その他の十分なスペースが確保できない場所で使用されるときは、周囲の障害物によってテーブル部への進入方向が制限されることがある。すなわち、車椅子をテーブル部の短辺側から乗降するよう誘導できない場合がある。
【0003】
そこで、このような場合でも、車椅子がテーブル部への乗降を可能とした従来の車椅子用昇降機には、以下のようなものがある。
一つには、第12図に示すように、テーブル部の大きさをテーブル部上で車椅子が方向転換可能な大きさとし、さらに、車椅子の方向転換を行いやすいように回転台をテーブル部に設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この形態の車椅子用昇降機は、テーブル部上にて車椅子が方向転換できるだけのスペースを確保するため、テーブル部の大きさが大型化されており、初期の目的である車椅子用昇降機の省スペース化に反するとともに、車椅子用昇降機自体の設置場所が制限される問題がある。また、テーブル部に回転台をつけたことで、回転台を回転させるための装置が必要となり、その分コストがかかるとともに、テーブル部を大きくしたことで、テーブル部等車椅子用昇降機の構成部材が大型化するため昇降機の設置組立作業が面倒なものとなる問題がある。
また、別の形態の車椅子用昇降機には、第13図に示すように、テーブル部に車椅子を案内するためのスロープに傾斜面と水平部分を設け、車椅子をテーブル部へ搭乗させる際に、テーブル部とスロープの水平部分とで形成される水平面上で車椅子の方向転換を行えるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照。)。この形態の車椅子用昇降機は、テーブル部の大型化を伴うことなくテーブル部の長辺側から車椅子の乗降を可能とすることができ、テーブル部の短辺側から乗降するようにした車椅子用昇降機の設置スペースと車椅子用昇降機自体の設置スペースは変わらないようにできる。しかしながら、スロープを車椅子用昇降機とは別に設置する形態を採っているために、車椅子のテーブル部への乗降口となるテーブル部側部に、車椅子の落下を防止するためのガード板を別に設ける必要がある。
【特許文献1】特開2000−118971号公報
【特許文献2】登録実用新案第3101000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、車椅子用昇降機の設置スペースの省スペース化を図りつつ、目的の方向から車椅子をテーブル部へ搭乗可能とするとともに、車椅子をテーブル部へ案内するためのスロープが車椅子のテーブル部からの落下防止の効果を奏するようにした車椅子用昇降機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、少なくとも昇降手段にて昇降可能かつ車椅子が搭乗可能なテーブル部と、該テーブル部へ車椅子を案内するためのテーブル部に対して起立または倒伏可能に配設されたスロープを具備した車椅子用昇降機において、前記スロープは、テーブル部が最低位置にあるとき、側面視において上り勾配部と下り勾配部を有する略々へ字形状を形成するよう構成され、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子が方向転換してテーブル部上に完全に搭乗できるようにするためのスペースを確保するようにしたことを特徴とする。
請求項2の発明は、前記スロープの上り勾配部の長さを車椅子の車輪のハンドリムを持ち替えることなく越えられる長さとしたことを特徴とする。
請求項3の発明は、前記スロープが起立された状態にあるとき、上り勾配部が下り勾配部との枢結部を中心に下り勾配部に対して回動されて、スロープが折り畳まれるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、スロープは、テーブル部が最低位置にあるとき、側面視において上り勾配部と下り勾配部を有する略々へ字形状を形成するよう構成され、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子が方向転換してテーブル部上に完全に搭乗できるようにするためのスペースを確保するようにした。
これによると、この車椅子用昇降機は、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子を方向転換させるためのスペースを確保し、目的の方向から車椅子をテーブル部へ搭乗できるようにしたことで、テーブル部の大きさを車椅子の形状に合せた必要最小限の大きさとすることができ、車椅子用昇降機の設置スペースの省スペース化を図ることができる。さらに、車椅子用昇降機をコンパクトに構成できることから、車椅子用昇降機を安価かつ設置組立作業を行いやすいものとできる。
また、この車椅子用昇降機は、スロープを起立させることができ、該スロープが車椅子のテーブル部からの落下防止の効果を奏する。
さらに、この車椅子用昇降機は、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子を方向転換させるためのスペースを確保したことで、車椅子をスロープからテーブル部へ乗り込ませた際に、車椅子のキャスターはスロープの下り勾配部上にあり、車椅子を方向転換させる際、スロープの下り勾配部による重力作用にて、車椅子を方向転換させるための操作力を小さくすることができ、車椅子の方向転換をスムーズに行うことができる。
【0007】
請求項2の発明によれば、スロープの上り勾配部の長さを車椅子のハンドリムを持ち替えることなく越えられる長さとした。
これによると、この車椅子用昇降機は、車椅子をスロープからテーブル部へ乗り込ませる際に、ハンドリムを持ち替えることなく少なくともスロープの下り勾配部まで車椅子の車輪を移動させることができ、ハンドリムを持ち替える際に車椅子がテーブル部から離れる方向へ逆走することはなく、車椅子をスムーズにテーブル部へ乗り込ませることができる。
【0008】
請求項3の発明によれば、スロープが起立された状態にあるとき、上り勾配部が下り勾配部との枢結部を中心に下り勾配部に対して回動され、スロープが折り畳まれるようにした。
これによると、この車椅子用昇降機は、スロープの下り勾配部と上り勾配部が略々へ字形状を形成した状態を保ったままスロープを起立させた場合に比べて、スロープを起立させたときの閉塞感(圧迫感)を車椅子利用者に与えないようにできる。また、スロープを折り畳んだ状態におけるスロープのテーブル部端部からの突出量を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
車椅子用昇降機において、昇降手段により昇降可能かつ車椅子が搭乗可能なテーブル部に、該テーブル部へ車椅子を案内するためのスロープをテーブル部に対して起立または倒伏可能に配設させる。そして、前記スロープを、テーブル部が最低位置にあるとき、側面視において上り勾配部と下り勾配部を有する略々へ字形状を形成するよう構成させ、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子が方向転換してテーブル部上に完全に搭乗できるようにするためのスペースを確保させる。また、スロープの上り勾配部の長さを車椅子の車輪のハンドリムから手を放さずに一漕ぎで越えられる長さとさせる。
【0010】
これによると、この車椅子用昇降機は、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子を方向転換させるためのスペースを確保し、目的の方向から車椅子をテーブル部へ搭乗できるようにしたことで、テーブル部の大きさを車椅子の形状に合せた必要最小限の大きさとすることができ、車椅子用昇降機の設定スペースの省スペース化を図ることができる。さらに、車椅子用昇降機をコンパクトに構成できることから、車椅子用昇降機を安価かつ設置組立作業が行いやすいものとできる。
また、この車椅子用昇降機は、スロープを起立させることができ、該スロープが車椅子のテーブル部からの落下防止の効果を奏する。
さらに、この車椅子用昇降機は、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子を方向転換させるためのスペースを確保したことで、車椅子をスロープからテーブル部へ乗り込ませた際に、車椅子のキャスターはスロープの下り勾配部上にあり、車椅子を方向転換させる際、スロープの下り勾配部による重力作用にて、車椅子を方向転換させるための操作力を小さくすることができ、車椅子の方向転換をスムーズに行うことができる。
また、この車椅子用昇降機は、スロープの上り勾配部の長さを、車椅子の車輪のハンドリムから手を放さずに一漕ぎで越えられる長さとしたことで、車椅子をスロープからテーブル部へ乗り込ませる際に、ハンドリムを持ち替えることなく少なくともスロープの下り勾配部まで車椅子の車輪を移動させることができ、ハンドリムを持ち替える際に車椅子がテーブル部から離れる方向へ逆走することはなく、車椅子をスムーズにテーブル部へ乗り込ませることができる。
【実施例1】
【0011】
本発明にかかる車椅子用昇降機の一実施形態を図面に基づいて説明する。第1図は車椅子用昇降機を示す斜視図である。第2図は車椅子用昇降機の構成を示す説明図である。第3図は車椅子用昇降機の構成を示す説明図である。第4図はマストの構成を示す側断面図である。第5図は操作手段の動作を示す正面図である。第6図は自動操作手段の作用を示す説明図である。第7図はテーブル部へ車椅子が乗り込む様子を示す側面図である。第8図はテーブル部上で車椅子が方向転換する様子を示す平面図である。第9図は車椅子が昇降される状態を示す正面図である。第10図は上昇位置にて車椅子がテーブル部から降りる様子を示す正面図である。
【0012】
この車椅子用昇降機1は、段差下側の下段面DFに設置されるベース2と、該ベース2に立設される昇降手段3を有するマスト4と、該マスト4に配設されるテーブル部5と、該テーブル部5へ下段面DFから車椅子Wを案内するためのスロープ6と、該スロープ6をテーブル部5の昇降に連動して起立または倒伏させる自動操作手段7と、前記テーブル部5へ段差上側の上段面UFから車椅子Wを案内するためのブリッジ8と、該ブリッジ8を任意に起立または倒伏させるための操作手段9から主に構成されている。
【0013】
まず、下段面DFに設置される前記ベース2について説明する。
このベース2は、第2図に示すように、平面視において略々矩形状に構成されており、内部には補強桁2a,2aが複数本固着されている。また、このベース2の後部側の主桁2b中間部には、後述する前記マスト4が立設される取付ベース2cが固着されている。
【0014】
次に、前記ベース2に立設される昇降手段3を有する前記マスト4について説明する。
このマスト4は、内マスト10と外マスト11の間に昇降手段3が構成され、内マスト10に対して外マスト11が昇降可能に構成されている。詳述すると、第4図に示すように、内マスト10の上端部に取付けられた雌螺子具12に螺子軸13が螺合され、該螺子軸13上部が外マスト11上部に設けられた軸受具14に軸受されるとともに、螺子軸13の上端部がカップリング部材15を介して外マスト11上端部に取付けられたモーター16の回転軸16aに取付けられて、内マスト10と外マスト11が昇降手段3にて連結されている。すなわち、このマスト4は、モーター16を動作させると、カップリング部材15を介して螺子軸13が回転され、雌螺子具12上方の螺子軸13の突出量が変化されることで、内マスト10に沿って外マスト11が昇降されるようにされている。
このように構成されたマスト4は、第2図に示すように、内マスト10下端部に設けられた取付具10aを前記ベース2の取付ベース2cに固定させることで、ベース2に立設される。
なお、昇降手段3は上述したものに限らず、図示してはいないが、モーターとラックアンドピニオン機構を用いた昇降手段であっても良い。また、二つの部材間に掛け渡したベルトまたはワイヤー等をモーターにて巻き取ることで、一方の部材を昇降させる昇降手段であっても良い。さらに、二つの部材間に配設したアクチュエーターにて一方の部材を昇降させる昇降手段であっても良く、本実施例に限定するものではない。
【0015】
続いて、前記マスト4に配設されるテーブル部5について説明する。
このテーブル部5は、第2図に示すように、テーブルフレーム17と、該テーブルフレーム17の上面に配設されるテーブル板18から主に構成されている。
前記テーブルフレーム17は、第2図に示すように、平面視において略々矩形状に構成されており、内部には補強部材17a,17b,17bが複数本固着されるとともに、後側の主桁17c中間部に正面視において略々逆U字形状のアーム部材17dが固着され、さらに、アーム部材17dの中間部と前記主桁17cの中間部間に前記マスト4への取付具17eが固着されている。
このように構成されたテーブルフレーム17の上面にテーブル板18が止着されて、テーブル部5は構成されている。なお、このテーブル部5は、車椅子Wの全長及び全幅よりもやや大きい程度の平面視において略々矩形状に構成されるとともに、車椅子Wの長手方向がテーブル部5の長手方向に沿うよう車椅子Wを搭乗させたときに、初めて車椅子Wがテーブル部5に完全に搭乗した状態となれる最小限の大きさとされている。
このように構成されたテーブル部5は、第2図に示すように、テーブルフレーム17の取付具17eを前記マスト4の外マスト11下部に設けられた取付ベース11aに固定させることで、前記ベース2の上方にテーブル部5が位置するようマスト4に配設される。したがって、テーブル部5は前記昇降手段3の作用により昇降可能とされている。
【0016】
また、第1図及び第3図に示すように、前記ベース2の短辺側の一側部に止着される側面視において略々U字形状の柵部材19の立設部19a,19aにガイドプレート20のボス部材20a,20aが挿通され、該ガイドプレート20がテーブル部5に止着されるとともに、柵部材19の上端部間が側面視において略々逆U字形状の連結部材21にて連結されて、テーブルガイド機構22が構成されている。このテーブルガイド機構22によると、テーブル部5が昇降されるに伴って、ガイドプレート20のボス部材20a,20aが柵部材19に沿って移動することで、テーブル部5のマスト4周りにおける揺れを抑えることができる。なお、前記柵部材19と連結部材21間には、ガイドプレート20の移動を妨げないように、図示しないネット部材が配設されており、柵部材19及び連結部材21がテーブル部5からの車椅子Wの落下防止の効果を奏するようにされている。
【0017】
次に、前記テーブル部5へ上段面UFから車椅子Wを案内するためのブリッジ8と、該ブリッジ8を任意に起立または倒伏させるための操作手段9について説明する。
まず、ブリッジ8は、第2図に示すように、短辺側の両端部が上方へ曲折されたブリッジ板23の長辺側の一側部寄りに取付具24が固定されるとともに、該取付具24の回動板24a,24aに回動軸24b,24bが固着されている。なお、ブリッジ板23の長辺側の幅は前記テーブル部5の短辺側の長さと略々同等に構成されている。
このように構成されたブリッジ8は、第2図に示すように、前記テーブル部5のテーブルフレーム17短辺側にある横桁17f,17fに設けたフック部材17g,17g,・・・に、前記回動軸24b,24bを掛け、その上方からテーブル板18をテーブルフレーム17に配設させることで、テーブル部5からブリッジ8が脱落することを防止された状態かつブリッジ8が回動軸24b,24bを中心にテーブル部5に対して回動可能な状態で配設される。なお、ブリッジ8は前記テーブルガイド機構22が構成されていないテーブル部5の短辺側に配設される。
【0018】
次に、操作手段9は、第3図に示すように、正面視において前記テーブル部5の長辺側の長さと略々同じ大きさを有する略々台形状のレバー25にリンク片26,26の一端部を枢結させるとともに、リンク片26,26の他端部を前記テーブル部5のアーム部材17dに設けられた軸受部材17h,17hに枢結させて、平行リンクを構成させるとともに、一方のリンク片26と前記ブリッジ8の一方の回動板24aをロッド27にて連結させることで構成されている。すなわち、第5図に示すように、レバー25を二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へ移動させると、その動作に伴って、リンク片26,26が二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へ回動され、ロッド27が後方へ移動される。すると、ブリッジ8が二点鎖線で示す倒伏された状態から回動軸24b,24bを中心に回動され、実線で示す起立された状態となるよう操作手段9は構成されている。
【0019】
続いて、前記テーブル部5へ下段面DFから車椅子Wを案内するためのスロープ6と、該スロープ6をテーブル部5の昇降に連動して起立または倒伏させる自動操作手段7について説明する。
まず、スロープ6は、第2図に示すように、短辺側の両端部が上方へ曲折されたスロープ板28の長辺側の一側部寄りに取付具29が固定されるとともに、該取付具29の回動板29a,29aに回動軸29b,29bが固着されている。なお、スロープ板28の長辺側の幅は前記テーブル部5の長辺側の長さと同等またはそれより短く構成されている。また、第6図の(a)図に示すように、スロープ板28は、下段面DFとテーブル部5との間に掛け渡された、スロープ6が倒伏された状態にて、スロープ6からテーブル部5への下り勾配部28aを有するよう側面視において略々へ字形状に曲折されており、上り勾配部28bと下り勾配部28aを有するよう構成されている。すなわち、第7図に示すように、下段面DFからテーブル部5へ乗り込む際に、車椅子Wはスロープ6の上り勾配部28bを上った後に、下り勾配部28aを下り、テーブル部5へ乗り込むようにされている。
このように構成されたスロープ6は、第2図に示すように、前記テーブル部5のテーブルフレーム17長辺側にある前部側の主桁17iに設けたフック部材17j,17jに、前記回動軸29b,29bを掛け、その上方からテーブル板18をテーブルフレーム17に配設させることで、テーブル部5からスロープ6が脱落することを防止された状態かつスロープ6が回動軸29b,29bを中心にテーブル部5に対して回動可能な状態で配設される。
【0020】
次に、自動操作手段7は、第3図に示すように、スロープ6の前記テーブルガイド機構22が構成されている側の回動板29aに、平面視において略々L字形状に曲折されたアーム部材30の一端側を止着させるとともに、アーム部材30の他端側に設けたローラー30aを前記テーブルガイド機構22の柵部材19下方に位置させることで構成されている。すなわち、第6図の(a)図に示すテーブル部5が最低位置に位置し、スロープ6が倒伏された状態から、(b)図に示すようにテーブル部5を上昇させると、まず、(b)図に二点鎖線にて示すように、テーブル部5の上昇に伴ってスロープ6が上昇されることで、アーム部材30のローラー30aと前記テーブルガイド機構22の柵部材19が当接され、スロープ6が起立する方向へ回動軸29b,29bを中心に回動され始める。さらに、テーブル部5の上昇が進むと、前記柵部材19によりアーム部材30に設けたローラー30aが柵部材19に対して相対的に押し下げられ、スロープ6の回動がさらに進み、(b)図に実線にて示すようにスロープ6が起立された状態となり、スロープ6が起立された状態でテーブル部5とともに上昇するよう自動操作手段7は構成されている。
【0021】
続いて、上述のように構成された車椅子用昇降機1の一使用例について説明する。
まず、第7図に示すように、下段面DFからテーブル部5へ乗り込む際には、車椅子Wを後ろ向きにテーブル部5に乗り込ませる。このとき、スロープ6の上り勾配部28bの長さ(第7図中Aの長さ)を、車椅子Wの車輪W1のハンドリムW2から手を放さずに一漕ぎで越えられる長さとしておくと、ハンドリムW2を持ち替えることなく少なくともスロープ6の下り勾配部28aまで車椅子Wの車輪W1を移動させることができ、ハンドリムW2を持ち替える際に車椅子Wが下段面DFに向かって逆走することはなく、車椅子Wをスムーズにテーブル部5に乗り込ませることができる。なお、テーブル部5へ乗り込む際には、第8図に示すように、テーブルガイド機構22が構成されている側に車椅子Wが寄った状態で乗り込ませる。
次に、第8図に示すように、車椅子Wの長手方向がテーブル部5の長手方向に沿うように、車椅子Wを定置にて方向転換させ、車椅子Wをテーブル部5上に完全に搭乗させる。このとき、スロープ6の下り勾配部28aとテーブル部5にて車椅子Wを方向転換するためのスペースを確保しているため、車椅子WのキャスターW3はスロープ6の下り勾配部28a上にあり、車椅子Wを定置にて方向転換させる際、スロープ6の下り勾配部28aによる重力作用にて、車椅子Wを方向転換させるための操作力を小さくすることができ、車椅子Wの方向転換をスムーズに行うことができる。
続いて、図示しない制御装置を操作して、昇降手段3を動作させてテーブル部5を上昇させると、自動操作手段7によりスロープ6が倒伏された状態から起立され、第9図に示すように、車椅子Wの四方が車椅子用昇降機1の何らかの構成部材にて囲まれた状態で、テーブル部5は上昇される。
そして、テーブル部5が所望の高さまで上昇すると、図示しない制御装置の操作を止めて、テーブル部5の上昇を停止させ、第10図に示すように、操作手段9のレバー25を操作して、ブリッジ8を倒伏させてテーブル部5と上段面UF間に掛け渡し、テーブル部5からブリッジ8を経て上段面UFに移動する。
なお、逆に上段面UFから下段面DFに移動する際は、上述と逆の手順を行えば良い。
【0022】
このように、この車椅子用昇降機1は、スロープ6の下り勾配部28aとテーブル部5にて車椅子Wを方向転換させるためのスペースを確保し、目的の方向から車椅子Wをテーブル部5へ搭乗可能としたことで、テーブル部5の大きさを車椅子Wの大きさに合せた必要最小限の大きさとすることができ、車椅子用昇降機1の設置スペースの省スペース化を図ることができる。さらに、車椅子用昇降機1をコンパクトに構成できることから、車椅子用昇降機1を安価かつ設置組立作業が行いやすいものとできる。
また、この車椅子用昇降機1は、テーブル部5の昇降中は、スロープ6及びブリッジ8を自動操作手段7及び操作手段9にて起立させることができ、スロープ6及びブリッジ8が車椅子Wのテーブル部5からの落下防止の効果を奏するようにされている。すなわち、この車椅子用昇降機1は、テーブル部5の昇降中において、車椅子Wの四方を車椅子用昇降機1の何らかの構成部材にて囲むようにされており、車椅子Wを安全に移動させることができる。
【0023】
なお、本実施例においては、スロープ6は自動操作手段7にて起立または倒伏されるよう構成されているが、図示してはいないが、ブリッジ8を起立または倒伏させるための操作手段9の形態を採った操作手段を、スロープ6を起立または倒伏させるための操作手段として用いても良い。このようにすると、テーブル部が上昇した位置においても、テーブル部の長辺側からの車椅子Wの乗降を可能とでき、テーブル部への乗降を様々な方向から行えるようになる。しかしながら、テーブル部が上昇した位置にて、車椅子Wの方向転換を行うとともに乗降を行うことは、車椅子使用者にとっての危険性が増すため、本実施例に例示した、テーブル部5が最低位置において、車椅子Wの方向転換を行うとともに乗降を行う使用方法が最も望ましい形態と考える。
また、本実施例の車椅子用昇降機1は、図示してはいないが、第1図中とは異なる側のテーブル部5の短辺側にブリッジ8を付け替えるとともに、操作手段9のレバー25を反転させて付け替え、さらに、テーブルガイド機構22を第1図中とは異なる側に付け替えるとともに、自動操作手段7のアーム部材30を付け替えることで、第1図に示す乗降方向とは異なる方向からテーブル部5へ乗降可能な車椅子用昇降機1とすることもできる。
【実施例2】
【0024】
続いて、実施例2として別の形態の車椅子用昇降機を図面に基づいて説明する。第11図は自動操作手段の作用を示す説明図である。なお、実施例1の車椅子用昇降機1と共通する構成部材については同一符号を付記する。
【0025】
この車椅子用昇降機31は、実施例1の車椅子用昇降機1と略々同様の構成であり、異なる点は、スロープ32の構成のみである。以下、スロープ32について説明する。
【0026】
このスロープ32は、第11図の(a)図に示すように、下段面DFとテーブル部5との間に掛け渡された、スロープ32が倒伏された状態にて側面視において略々へ字形状を形成するように、上り勾配部32aが下り勾配部32bに枢結されており、(b)図に示すように、スロープ32が起立された状態においては、上り勾配部32aと下り勾配部32b間の枢結部Sを中心にスロープ32が折り畳まれるようにされている。すなわち、このスロープ32は、実施例1のスロープ6と同様に、スロープ32が倒伏された状態において、下り勾配部32bとテーブル部5にて、車椅子Wが方向転換するために必要なスペースを確保するようにしている。
このように構成されたスロープ32は、実施例1のスロープ6と同じ方法で、下り勾配部32bに設けられた取付具32cを介してテーブル部5の長辺側に回動可能に配設される。なお、スロープ32の上り勾配部32aの長さ(第11図中Bの長さ)を車椅子Wの車輪W1のハンドリムW2から手を放さずに一漕ぎで越えられる長さとしておくと、ハンドリムW2を持ち替えることなく少なくともスロープ32の下り勾配部32bまで車椅子Wの車輪W1を移動させることができ、ハンドリムW2を持ち替える際に車椅子Wが下段面DFに向かって逆走することはなく、車椅子Wをスムーズにテーブル部5に乗り込ませることができる。
【0027】
このようにテーブル部5に配設されたスロープ32は、自動操作手段7にて以下のように動作される。
まず、第11図の(a)図に示すテーブル部5が最低位置に位置し、スロープ32が倒伏された状態から(b)図に示すようにテーブル部5を上昇させると、スロープ32の取付具32cに取付けられた前記自動操作手段7のアーム部材30のローラー30aとテーブルガイド機構22の柵部材19が当接され、スロープ32の下り勾配部32bが(b)図中二点鎖線で示すように、起立する方向へ回動されるとともに、上り勾配部32aが枢結部Sを中心に下り勾配部32bに対して垂下される方向へ回動される。さらに、テーブル部5の上昇が進むと、前記柵部材19によりアーム部材30のローラー30aが柵部材19に対して相対的に押し下げられ、スロープ32の下り勾配部32bの回動がさらに進み、下り勾配部32bが起立された状態となるとともに、上り勾配部32aが枢結部Sを中心に下り勾配部32bに垂下される方向へさらに回動され、(b)図に実線で示す状態にてスロープ32は起立され、スロープ32はテーブル部5とともに上昇するようにされている。
【0028】
このように構成されたスロープ32を具備した車椅子用昇降機31は、スロープ32が倒伏された状態において、スロープ32の下り勾配部32bとテーブル部5にて車椅子Wが方向転換するためのスペースを確保するようにしたことで、実施例1の車椅子用昇降機1と同じ作用と効果を得ることができる。
さらに、この車椅子用昇降機31は、自動操作手段7にて、スロープ32が起立されると、上り勾配部32aが下り勾配部32bに垂下された状態で、スロープ32が折り畳まれるようにしたことで、スロープ32を起立させたときの閉塞感(圧迫感)を車椅子利用者に与えないようにできる。また、スロープ32を折り畳んだ状態におけるスロープ32のテーブル部5前端部からの前方への突出量を実施例1のスロープ6に比べて抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車椅子用昇降機を示す斜視図。(実施例1)
【図2】車椅子用昇降機の構成を示す説明図。(実施例1)
【図3】車椅子用昇降機の構成を示す説明図。(実施例1)
【図4】マストの構成を示す側断面図。(実施例1)
【図5】操作手段の動作を示す正面図。(実施例1)
【図6】自動操作手段の作用を示す説明図。(実施例1) (a)スロープが倒伏された状態を示す側面図。 (b)スロープが起立される様子を示す側面図。
【図7】テーブル部へ車椅子が乗り込む様子を示す側面図。(実施例1)
【図8】テーブル部上で車椅子が方向転換する様子を示す平面図。(実施例1)
【図9】車椅子が昇降される状態を示す正面図。(実施例1)
【図10】上昇位置にて車椅子がテーブル部から降りる様子を示す正面図。 (実施例1)
【図11】自動操作手段の作用を示す説明図。(実施例2) (a)別の形態のスロープが倒伏された状態を示す側面図。 (b)別の形態のスロープが起立される様子を示す側面図。
【図12】特許文献1の車椅子用昇降機を示す斜視図。
【図13】特許文献2の車椅子用昇降機を示す側面図。
【符号の説明】
【0030】
1 車椅子昇降機
3 昇降手段
5 テーブル部
6 スロープ
28a 下り勾配部
28b 上り勾配部
31 車椅子昇降機
32 スロープ
32a 上り勾配部
32b 下り勾配部
S 枢結部
W 車椅子
W1 車輪
W2 ハンドリム
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子を使用した状態で段差を越えるために、車椅子を昇降させる車椅子用昇降機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車椅子用昇降機は、一般的に車椅子が搭乗する昇降可能なテーブル部と、該テーブル部を昇降させる昇降手段を備えており、テーブル部を昇降させることで車椅子を移動させるものである。この車椅子用昇降機を設置するに当たっては、車椅子用昇降機自体の設置スペースの他に、車椅子をテーブル部へ案内するためのスロープの設置スペースや、該スロープに車椅子を案内するためのスペースも必要となる。
このような状況で、車椅子用昇降機の設置スペースの省スペース化を図るため、車椅子を搭乗させるテーブル部の形状は車椅子の形態に合せて最小限の大きさに設計される。その結果、通常、テーブル部の形状は車椅子の全長及び全幅よりもやや大きい平面視において矩形状となる。したがって、車椅子はテーブル部の短辺側から乗降することでテーブル部上に搭乗されることとなる。このとき、仮に車椅子をテーブル部の長辺側から乗降させると、車椅子はテーブル部の長手方向に沿うよう方向転換しなければテーブル部に搭乗することができないうえに、テーブル部上での方向転換は困難である。したがって、通常は方向転換の必要がないように、テーブル部の長手方向に沿うよう短辺側から車椅子をテーブル部へ進入させ、またテーブル部から退出させている。
ところが、車椅子用昇降機が、住宅の玄関等の出入り口、その他の十分なスペースが確保できない場所で使用されるときは、周囲の障害物によってテーブル部への進入方向が制限されることがある。すなわち、車椅子をテーブル部の短辺側から乗降するよう誘導できない場合がある。
【0003】
そこで、このような場合でも、車椅子がテーブル部への乗降を可能とした従来の車椅子用昇降機には、以下のようなものがある。
一つには、第12図に示すように、テーブル部の大きさをテーブル部上で車椅子が方向転換可能な大きさとし、さらに、車椅子の方向転換を行いやすいように回転台をテーブル部に設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この形態の車椅子用昇降機は、テーブル部上にて車椅子が方向転換できるだけのスペースを確保するため、テーブル部の大きさが大型化されており、初期の目的である車椅子用昇降機の省スペース化に反するとともに、車椅子用昇降機自体の設置場所が制限される問題がある。また、テーブル部に回転台をつけたことで、回転台を回転させるための装置が必要となり、その分コストがかかるとともに、テーブル部を大きくしたことで、テーブル部等車椅子用昇降機の構成部材が大型化するため昇降機の設置組立作業が面倒なものとなる問題がある。
また、別の形態の車椅子用昇降機には、第13図に示すように、テーブル部に車椅子を案内するためのスロープに傾斜面と水平部分を設け、車椅子をテーブル部へ搭乗させる際に、テーブル部とスロープの水平部分とで形成される水平面上で車椅子の方向転換を行えるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照。)。この形態の車椅子用昇降機は、テーブル部の大型化を伴うことなくテーブル部の長辺側から車椅子の乗降を可能とすることができ、テーブル部の短辺側から乗降するようにした車椅子用昇降機の設置スペースと車椅子用昇降機自体の設置スペースは変わらないようにできる。しかしながら、スロープを車椅子用昇降機とは別に設置する形態を採っているために、車椅子のテーブル部への乗降口となるテーブル部側部に、車椅子の落下を防止するためのガード板を別に設ける必要がある。
【特許文献1】特開2000−118971号公報
【特許文献2】登録実用新案第3101000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、車椅子用昇降機の設置スペースの省スペース化を図りつつ、目的の方向から車椅子をテーブル部へ搭乗可能とするとともに、車椅子をテーブル部へ案内するためのスロープが車椅子のテーブル部からの落下防止の効果を奏するようにした車椅子用昇降機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、少なくとも昇降手段にて昇降可能かつ車椅子が搭乗可能なテーブル部と、該テーブル部へ車椅子を案内するためのテーブル部に対して起立または倒伏可能に配設されたスロープを具備した車椅子用昇降機において、前記スロープは、テーブル部が最低位置にあるとき、側面視において上り勾配部と下り勾配部を有する略々へ字形状を形成するよう構成され、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子が方向転換してテーブル部上に完全に搭乗できるようにするためのスペースを確保するようにしたことを特徴とする。
請求項2の発明は、前記スロープの上り勾配部の長さを車椅子の車輪のハンドリムを持ち替えることなく越えられる長さとしたことを特徴とする。
請求項3の発明は、前記スロープが起立された状態にあるとき、上り勾配部が下り勾配部との枢結部を中心に下り勾配部に対して回動されて、スロープが折り畳まれるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、スロープは、テーブル部が最低位置にあるとき、側面視において上り勾配部と下り勾配部を有する略々へ字形状を形成するよう構成され、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子が方向転換してテーブル部上に完全に搭乗できるようにするためのスペースを確保するようにした。
これによると、この車椅子用昇降機は、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子を方向転換させるためのスペースを確保し、目的の方向から車椅子をテーブル部へ搭乗できるようにしたことで、テーブル部の大きさを車椅子の形状に合せた必要最小限の大きさとすることができ、車椅子用昇降機の設置スペースの省スペース化を図ることができる。さらに、車椅子用昇降機をコンパクトに構成できることから、車椅子用昇降機を安価かつ設置組立作業を行いやすいものとできる。
また、この車椅子用昇降機は、スロープを起立させることができ、該スロープが車椅子のテーブル部からの落下防止の効果を奏する。
さらに、この車椅子用昇降機は、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子を方向転換させるためのスペースを確保したことで、車椅子をスロープからテーブル部へ乗り込ませた際に、車椅子のキャスターはスロープの下り勾配部上にあり、車椅子を方向転換させる際、スロープの下り勾配部による重力作用にて、車椅子を方向転換させるための操作力を小さくすることができ、車椅子の方向転換をスムーズに行うことができる。
【0007】
請求項2の発明によれば、スロープの上り勾配部の長さを車椅子のハンドリムを持ち替えることなく越えられる長さとした。
これによると、この車椅子用昇降機は、車椅子をスロープからテーブル部へ乗り込ませる際に、ハンドリムを持ち替えることなく少なくともスロープの下り勾配部まで車椅子の車輪を移動させることができ、ハンドリムを持ち替える際に車椅子がテーブル部から離れる方向へ逆走することはなく、車椅子をスムーズにテーブル部へ乗り込ませることができる。
【0008】
請求項3の発明によれば、スロープが起立された状態にあるとき、上り勾配部が下り勾配部との枢結部を中心に下り勾配部に対して回動され、スロープが折り畳まれるようにした。
これによると、この車椅子用昇降機は、スロープの下り勾配部と上り勾配部が略々へ字形状を形成した状態を保ったままスロープを起立させた場合に比べて、スロープを起立させたときの閉塞感(圧迫感)を車椅子利用者に与えないようにできる。また、スロープを折り畳んだ状態におけるスロープのテーブル部端部からの突出量を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
車椅子用昇降機において、昇降手段により昇降可能かつ車椅子が搭乗可能なテーブル部に、該テーブル部へ車椅子を案内するためのスロープをテーブル部に対して起立または倒伏可能に配設させる。そして、前記スロープを、テーブル部が最低位置にあるとき、側面視において上り勾配部と下り勾配部を有する略々へ字形状を形成するよう構成させ、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子が方向転換してテーブル部上に完全に搭乗できるようにするためのスペースを確保させる。また、スロープの上り勾配部の長さを車椅子の車輪のハンドリムから手を放さずに一漕ぎで越えられる長さとさせる。
【0010】
これによると、この車椅子用昇降機は、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子を方向転換させるためのスペースを確保し、目的の方向から車椅子をテーブル部へ搭乗できるようにしたことで、テーブル部の大きさを車椅子の形状に合せた必要最小限の大きさとすることができ、車椅子用昇降機の設定スペースの省スペース化を図ることができる。さらに、車椅子用昇降機をコンパクトに構成できることから、車椅子用昇降機を安価かつ設置組立作業が行いやすいものとできる。
また、この車椅子用昇降機は、スロープを起立させることができ、該スロープが車椅子のテーブル部からの落下防止の効果を奏する。
さらに、この車椅子用昇降機は、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子を方向転換させるためのスペースを確保したことで、車椅子をスロープからテーブル部へ乗り込ませた際に、車椅子のキャスターはスロープの下り勾配部上にあり、車椅子を方向転換させる際、スロープの下り勾配部による重力作用にて、車椅子を方向転換させるための操作力を小さくすることができ、車椅子の方向転換をスムーズに行うことができる。
また、この車椅子用昇降機は、スロープの上り勾配部の長さを、車椅子の車輪のハンドリムから手を放さずに一漕ぎで越えられる長さとしたことで、車椅子をスロープからテーブル部へ乗り込ませる際に、ハンドリムを持ち替えることなく少なくともスロープの下り勾配部まで車椅子の車輪を移動させることができ、ハンドリムを持ち替える際に車椅子がテーブル部から離れる方向へ逆走することはなく、車椅子をスムーズにテーブル部へ乗り込ませることができる。
【実施例1】
【0011】
本発明にかかる車椅子用昇降機の一実施形態を図面に基づいて説明する。第1図は車椅子用昇降機を示す斜視図である。第2図は車椅子用昇降機の構成を示す説明図である。第3図は車椅子用昇降機の構成を示す説明図である。第4図はマストの構成を示す側断面図である。第5図は操作手段の動作を示す正面図である。第6図は自動操作手段の作用を示す説明図である。第7図はテーブル部へ車椅子が乗り込む様子を示す側面図である。第8図はテーブル部上で車椅子が方向転換する様子を示す平面図である。第9図は車椅子が昇降される状態を示す正面図である。第10図は上昇位置にて車椅子がテーブル部から降りる様子を示す正面図である。
【0012】
この車椅子用昇降機1は、段差下側の下段面DFに設置されるベース2と、該ベース2に立設される昇降手段3を有するマスト4と、該マスト4に配設されるテーブル部5と、該テーブル部5へ下段面DFから車椅子Wを案内するためのスロープ6と、該スロープ6をテーブル部5の昇降に連動して起立または倒伏させる自動操作手段7と、前記テーブル部5へ段差上側の上段面UFから車椅子Wを案内するためのブリッジ8と、該ブリッジ8を任意に起立または倒伏させるための操作手段9から主に構成されている。
【0013】
まず、下段面DFに設置される前記ベース2について説明する。
このベース2は、第2図に示すように、平面視において略々矩形状に構成されており、内部には補強桁2a,2aが複数本固着されている。また、このベース2の後部側の主桁2b中間部には、後述する前記マスト4が立設される取付ベース2cが固着されている。
【0014】
次に、前記ベース2に立設される昇降手段3を有する前記マスト4について説明する。
このマスト4は、内マスト10と外マスト11の間に昇降手段3が構成され、内マスト10に対して外マスト11が昇降可能に構成されている。詳述すると、第4図に示すように、内マスト10の上端部に取付けられた雌螺子具12に螺子軸13が螺合され、該螺子軸13上部が外マスト11上部に設けられた軸受具14に軸受されるとともに、螺子軸13の上端部がカップリング部材15を介して外マスト11上端部に取付けられたモーター16の回転軸16aに取付けられて、内マスト10と外マスト11が昇降手段3にて連結されている。すなわち、このマスト4は、モーター16を動作させると、カップリング部材15を介して螺子軸13が回転され、雌螺子具12上方の螺子軸13の突出量が変化されることで、内マスト10に沿って外マスト11が昇降されるようにされている。
このように構成されたマスト4は、第2図に示すように、内マスト10下端部に設けられた取付具10aを前記ベース2の取付ベース2cに固定させることで、ベース2に立設される。
なお、昇降手段3は上述したものに限らず、図示してはいないが、モーターとラックアンドピニオン機構を用いた昇降手段であっても良い。また、二つの部材間に掛け渡したベルトまたはワイヤー等をモーターにて巻き取ることで、一方の部材を昇降させる昇降手段であっても良い。さらに、二つの部材間に配設したアクチュエーターにて一方の部材を昇降させる昇降手段であっても良く、本実施例に限定するものではない。
【0015】
続いて、前記マスト4に配設されるテーブル部5について説明する。
このテーブル部5は、第2図に示すように、テーブルフレーム17と、該テーブルフレーム17の上面に配設されるテーブル板18から主に構成されている。
前記テーブルフレーム17は、第2図に示すように、平面視において略々矩形状に構成されており、内部には補強部材17a,17b,17bが複数本固着されるとともに、後側の主桁17c中間部に正面視において略々逆U字形状のアーム部材17dが固着され、さらに、アーム部材17dの中間部と前記主桁17cの中間部間に前記マスト4への取付具17eが固着されている。
このように構成されたテーブルフレーム17の上面にテーブル板18が止着されて、テーブル部5は構成されている。なお、このテーブル部5は、車椅子Wの全長及び全幅よりもやや大きい程度の平面視において略々矩形状に構成されるとともに、車椅子Wの長手方向がテーブル部5の長手方向に沿うよう車椅子Wを搭乗させたときに、初めて車椅子Wがテーブル部5に完全に搭乗した状態となれる最小限の大きさとされている。
このように構成されたテーブル部5は、第2図に示すように、テーブルフレーム17の取付具17eを前記マスト4の外マスト11下部に設けられた取付ベース11aに固定させることで、前記ベース2の上方にテーブル部5が位置するようマスト4に配設される。したがって、テーブル部5は前記昇降手段3の作用により昇降可能とされている。
【0016】
また、第1図及び第3図に示すように、前記ベース2の短辺側の一側部に止着される側面視において略々U字形状の柵部材19の立設部19a,19aにガイドプレート20のボス部材20a,20aが挿通され、該ガイドプレート20がテーブル部5に止着されるとともに、柵部材19の上端部間が側面視において略々逆U字形状の連結部材21にて連結されて、テーブルガイド機構22が構成されている。このテーブルガイド機構22によると、テーブル部5が昇降されるに伴って、ガイドプレート20のボス部材20a,20aが柵部材19に沿って移動することで、テーブル部5のマスト4周りにおける揺れを抑えることができる。なお、前記柵部材19と連結部材21間には、ガイドプレート20の移動を妨げないように、図示しないネット部材が配設されており、柵部材19及び連結部材21がテーブル部5からの車椅子Wの落下防止の効果を奏するようにされている。
【0017】
次に、前記テーブル部5へ上段面UFから車椅子Wを案内するためのブリッジ8と、該ブリッジ8を任意に起立または倒伏させるための操作手段9について説明する。
まず、ブリッジ8は、第2図に示すように、短辺側の両端部が上方へ曲折されたブリッジ板23の長辺側の一側部寄りに取付具24が固定されるとともに、該取付具24の回動板24a,24aに回動軸24b,24bが固着されている。なお、ブリッジ板23の長辺側の幅は前記テーブル部5の短辺側の長さと略々同等に構成されている。
このように構成されたブリッジ8は、第2図に示すように、前記テーブル部5のテーブルフレーム17短辺側にある横桁17f,17fに設けたフック部材17g,17g,・・・に、前記回動軸24b,24bを掛け、その上方からテーブル板18をテーブルフレーム17に配設させることで、テーブル部5からブリッジ8が脱落することを防止された状態かつブリッジ8が回動軸24b,24bを中心にテーブル部5に対して回動可能な状態で配設される。なお、ブリッジ8は前記テーブルガイド機構22が構成されていないテーブル部5の短辺側に配設される。
【0018】
次に、操作手段9は、第3図に示すように、正面視において前記テーブル部5の長辺側の長さと略々同じ大きさを有する略々台形状のレバー25にリンク片26,26の一端部を枢結させるとともに、リンク片26,26の他端部を前記テーブル部5のアーム部材17dに設けられた軸受部材17h,17hに枢結させて、平行リンクを構成させるとともに、一方のリンク片26と前記ブリッジ8の一方の回動板24aをロッド27にて連結させることで構成されている。すなわち、第5図に示すように、レバー25を二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へ移動させると、その動作に伴って、リンク片26,26が二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へ回動され、ロッド27が後方へ移動される。すると、ブリッジ8が二点鎖線で示す倒伏された状態から回動軸24b,24bを中心に回動され、実線で示す起立された状態となるよう操作手段9は構成されている。
【0019】
続いて、前記テーブル部5へ下段面DFから車椅子Wを案内するためのスロープ6と、該スロープ6をテーブル部5の昇降に連動して起立または倒伏させる自動操作手段7について説明する。
まず、スロープ6は、第2図に示すように、短辺側の両端部が上方へ曲折されたスロープ板28の長辺側の一側部寄りに取付具29が固定されるとともに、該取付具29の回動板29a,29aに回動軸29b,29bが固着されている。なお、スロープ板28の長辺側の幅は前記テーブル部5の長辺側の長さと同等またはそれより短く構成されている。また、第6図の(a)図に示すように、スロープ板28は、下段面DFとテーブル部5との間に掛け渡された、スロープ6が倒伏された状態にて、スロープ6からテーブル部5への下り勾配部28aを有するよう側面視において略々へ字形状に曲折されており、上り勾配部28bと下り勾配部28aを有するよう構成されている。すなわち、第7図に示すように、下段面DFからテーブル部5へ乗り込む際に、車椅子Wはスロープ6の上り勾配部28bを上った後に、下り勾配部28aを下り、テーブル部5へ乗り込むようにされている。
このように構成されたスロープ6は、第2図に示すように、前記テーブル部5のテーブルフレーム17長辺側にある前部側の主桁17iに設けたフック部材17j,17jに、前記回動軸29b,29bを掛け、その上方からテーブル板18をテーブルフレーム17に配設させることで、テーブル部5からスロープ6が脱落することを防止された状態かつスロープ6が回動軸29b,29bを中心にテーブル部5に対して回動可能な状態で配設される。
【0020】
次に、自動操作手段7は、第3図に示すように、スロープ6の前記テーブルガイド機構22が構成されている側の回動板29aに、平面視において略々L字形状に曲折されたアーム部材30の一端側を止着させるとともに、アーム部材30の他端側に設けたローラー30aを前記テーブルガイド機構22の柵部材19下方に位置させることで構成されている。すなわち、第6図の(a)図に示すテーブル部5が最低位置に位置し、スロープ6が倒伏された状態から、(b)図に示すようにテーブル部5を上昇させると、まず、(b)図に二点鎖線にて示すように、テーブル部5の上昇に伴ってスロープ6が上昇されることで、アーム部材30のローラー30aと前記テーブルガイド機構22の柵部材19が当接され、スロープ6が起立する方向へ回動軸29b,29bを中心に回動され始める。さらに、テーブル部5の上昇が進むと、前記柵部材19によりアーム部材30に設けたローラー30aが柵部材19に対して相対的に押し下げられ、スロープ6の回動がさらに進み、(b)図に実線にて示すようにスロープ6が起立された状態となり、スロープ6が起立された状態でテーブル部5とともに上昇するよう自動操作手段7は構成されている。
【0021】
続いて、上述のように構成された車椅子用昇降機1の一使用例について説明する。
まず、第7図に示すように、下段面DFからテーブル部5へ乗り込む際には、車椅子Wを後ろ向きにテーブル部5に乗り込ませる。このとき、スロープ6の上り勾配部28bの長さ(第7図中Aの長さ)を、車椅子Wの車輪W1のハンドリムW2から手を放さずに一漕ぎで越えられる長さとしておくと、ハンドリムW2を持ち替えることなく少なくともスロープ6の下り勾配部28aまで車椅子Wの車輪W1を移動させることができ、ハンドリムW2を持ち替える際に車椅子Wが下段面DFに向かって逆走することはなく、車椅子Wをスムーズにテーブル部5に乗り込ませることができる。なお、テーブル部5へ乗り込む際には、第8図に示すように、テーブルガイド機構22が構成されている側に車椅子Wが寄った状態で乗り込ませる。
次に、第8図に示すように、車椅子Wの長手方向がテーブル部5の長手方向に沿うように、車椅子Wを定置にて方向転換させ、車椅子Wをテーブル部5上に完全に搭乗させる。このとき、スロープ6の下り勾配部28aとテーブル部5にて車椅子Wを方向転換するためのスペースを確保しているため、車椅子WのキャスターW3はスロープ6の下り勾配部28a上にあり、車椅子Wを定置にて方向転換させる際、スロープ6の下り勾配部28aによる重力作用にて、車椅子Wを方向転換させるための操作力を小さくすることができ、車椅子Wの方向転換をスムーズに行うことができる。
続いて、図示しない制御装置を操作して、昇降手段3を動作させてテーブル部5を上昇させると、自動操作手段7によりスロープ6が倒伏された状態から起立され、第9図に示すように、車椅子Wの四方が車椅子用昇降機1の何らかの構成部材にて囲まれた状態で、テーブル部5は上昇される。
そして、テーブル部5が所望の高さまで上昇すると、図示しない制御装置の操作を止めて、テーブル部5の上昇を停止させ、第10図に示すように、操作手段9のレバー25を操作して、ブリッジ8を倒伏させてテーブル部5と上段面UF間に掛け渡し、テーブル部5からブリッジ8を経て上段面UFに移動する。
なお、逆に上段面UFから下段面DFに移動する際は、上述と逆の手順を行えば良い。
【0022】
このように、この車椅子用昇降機1は、スロープ6の下り勾配部28aとテーブル部5にて車椅子Wを方向転換させるためのスペースを確保し、目的の方向から車椅子Wをテーブル部5へ搭乗可能としたことで、テーブル部5の大きさを車椅子Wの大きさに合せた必要最小限の大きさとすることができ、車椅子用昇降機1の設置スペースの省スペース化を図ることができる。さらに、車椅子用昇降機1をコンパクトに構成できることから、車椅子用昇降機1を安価かつ設置組立作業が行いやすいものとできる。
また、この車椅子用昇降機1は、テーブル部5の昇降中は、スロープ6及びブリッジ8を自動操作手段7及び操作手段9にて起立させることができ、スロープ6及びブリッジ8が車椅子Wのテーブル部5からの落下防止の効果を奏するようにされている。すなわち、この車椅子用昇降機1は、テーブル部5の昇降中において、車椅子Wの四方を車椅子用昇降機1の何らかの構成部材にて囲むようにされており、車椅子Wを安全に移動させることができる。
【0023】
なお、本実施例においては、スロープ6は自動操作手段7にて起立または倒伏されるよう構成されているが、図示してはいないが、ブリッジ8を起立または倒伏させるための操作手段9の形態を採った操作手段を、スロープ6を起立または倒伏させるための操作手段として用いても良い。このようにすると、テーブル部が上昇した位置においても、テーブル部の長辺側からの車椅子Wの乗降を可能とでき、テーブル部への乗降を様々な方向から行えるようになる。しかしながら、テーブル部が上昇した位置にて、車椅子Wの方向転換を行うとともに乗降を行うことは、車椅子使用者にとっての危険性が増すため、本実施例に例示した、テーブル部5が最低位置において、車椅子Wの方向転換を行うとともに乗降を行う使用方法が最も望ましい形態と考える。
また、本実施例の車椅子用昇降機1は、図示してはいないが、第1図中とは異なる側のテーブル部5の短辺側にブリッジ8を付け替えるとともに、操作手段9のレバー25を反転させて付け替え、さらに、テーブルガイド機構22を第1図中とは異なる側に付け替えるとともに、自動操作手段7のアーム部材30を付け替えることで、第1図に示す乗降方向とは異なる方向からテーブル部5へ乗降可能な車椅子用昇降機1とすることもできる。
【実施例2】
【0024】
続いて、実施例2として別の形態の車椅子用昇降機を図面に基づいて説明する。第11図は自動操作手段の作用を示す説明図である。なお、実施例1の車椅子用昇降機1と共通する構成部材については同一符号を付記する。
【0025】
この車椅子用昇降機31は、実施例1の車椅子用昇降機1と略々同様の構成であり、異なる点は、スロープ32の構成のみである。以下、スロープ32について説明する。
【0026】
このスロープ32は、第11図の(a)図に示すように、下段面DFとテーブル部5との間に掛け渡された、スロープ32が倒伏された状態にて側面視において略々へ字形状を形成するように、上り勾配部32aが下り勾配部32bに枢結されており、(b)図に示すように、スロープ32が起立された状態においては、上り勾配部32aと下り勾配部32b間の枢結部Sを中心にスロープ32が折り畳まれるようにされている。すなわち、このスロープ32は、実施例1のスロープ6と同様に、スロープ32が倒伏された状態において、下り勾配部32bとテーブル部5にて、車椅子Wが方向転換するために必要なスペースを確保するようにしている。
このように構成されたスロープ32は、実施例1のスロープ6と同じ方法で、下り勾配部32bに設けられた取付具32cを介してテーブル部5の長辺側に回動可能に配設される。なお、スロープ32の上り勾配部32aの長さ(第11図中Bの長さ)を車椅子Wの車輪W1のハンドリムW2から手を放さずに一漕ぎで越えられる長さとしておくと、ハンドリムW2を持ち替えることなく少なくともスロープ32の下り勾配部32bまで車椅子Wの車輪W1を移動させることができ、ハンドリムW2を持ち替える際に車椅子Wが下段面DFに向かって逆走することはなく、車椅子Wをスムーズにテーブル部5に乗り込ませることができる。
【0027】
このようにテーブル部5に配設されたスロープ32は、自動操作手段7にて以下のように動作される。
まず、第11図の(a)図に示すテーブル部5が最低位置に位置し、スロープ32が倒伏された状態から(b)図に示すようにテーブル部5を上昇させると、スロープ32の取付具32cに取付けられた前記自動操作手段7のアーム部材30のローラー30aとテーブルガイド機構22の柵部材19が当接され、スロープ32の下り勾配部32bが(b)図中二点鎖線で示すように、起立する方向へ回動されるとともに、上り勾配部32aが枢結部Sを中心に下り勾配部32bに対して垂下される方向へ回動される。さらに、テーブル部5の上昇が進むと、前記柵部材19によりアーム部材30のローラー30aが柵部材19に対して相対的に押し下げられ、スロープ32の下り勾配部32bの回動がさらに進み、下り勾配部32bが起立された状態となるとともに、上り勾配部32aが枢結部Sを中心に下り勾配部32bに垂下される方向へさらに回動され、(b)図に実線で示す状態にてスロープ32は起立され、スロープ32はテーブル部5とともに上昇するようにされている。
【0028】
このように構成されたスロープ32を具備した車椅子用昇降機31は、スロープ32が倒伏された状態において、スロープ32の下り勾配部32bとテーブル部5にて車椅子Wが方向転換するためのスペースを確保するようにしたことで、実施例1の車椅子用昇降機1と同じ作用と効果を得ることができる。
さらに、この車椅子用昇降機31は、自動操作手段7にて、スロープ32が起立されると、上り勾配部32aが下り勾配部32bに垂下された状態で、スロープ32が折り畳まれるようにしたことで、スロープ32を起立させたときの閉塞感(圧迫感)を車椅子利用者に与えないようにできる。また、スロープ32を折り畳んだ状態におけるスロープ32のテーブル部5前端部からの前方への突出量を実施例1のスロープ6に比べて抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車椅子用昇降機を示す斜視図。(実施例1)
【図2】車椅子用昇降機の構成を示す説明図。(実施例1)
【図3】車椅子用昇降機の構成を示す説明図。(実施例1)
【図4】マストの構成を示す側断面図。(実施例1)
【図5】操作手段の動作を示す正面図。(実施例1)
【図6】自動操作手段の作用を示す説明図。(実施例1) (a)スロープが倒伏された状態を示す側面図。 (b)スロープが起立される様子を示す側面図。
【図7】テーブル部へ車椅子が乗り込む様子を示す側面図。(実施例1)
【図8】テーブル部上で車椅子が方向転換する様子を示す平面図。(実施例1)
【図9】車椅子が昇降される状態を示す正面図。(実施例1)
【図10】上昇位置にて車椅子がテーブル部から降りる様子を示す正面図。 (実施例1)
【図11】自動操作手段の作用を示す説明図。(実施例2) (a)別の形態のスロープが倒伏された状態を示す側面図。 (b)別の形態のスロープが起立される様子を示す側面図。
【図12】特許文献1の車椅子用昇降機を示す斜視図。
【図13】特許文献2の車椅子用昇降機を示す側面図。
【符号の説明】
【0030】
1 車椅子昇降機
3 昇降手段
5 テーブル部
6 スロープ
28a 下り勾配部
28b 上り勾配部
31 車椅子昇降機
32 スロープ
32a 上り勾配部
32b 下り勾配部
S 枢結部
W 車椅子
W1 車輪
W2 ハンドリム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも昇降手段にて昇降可能かつ車椅子が搭乗可能なテーブル部と、該テーブル部へ車椅子を案内するためのテーブル部に対して起立または倒伏可能に配設されたスロープを具備した車椅子用昇降機において、前記スロープは、テーブル部が最低位置にあるとき、側面視において上り勾配部と下り勾配部を有する略々へ字形状を形成するよう構成され、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子が方向転換してテーブル部上に完全に搭乗できるようにするためのスペースを確保するようにしたことを特徴とする車椅子用昇降機。
【請求項2】
前記スロープの上り勾配部の長さを車椅子の車輪のハンドリムを持ち替えることなく越えられる長さとしたことを特徴とする請求項1に記載の車椅子用昇降機。
【請求項3】
前記スロープが起立された状態にあるとき、上り勾配部が下り勾配部との枢結部を中心に下り勾配部に対して回動されて、スロープが折り畳まれるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の車椅子用昇降機。
【請求項1】
少なくとも昇降手段にて昇降可能かつ車椅子が搭乗可能なテーブル部と、該テーブル部へ車椅子を案内するためのテーブル部に対して起立または倒伏可能に配設されたスロープを具備した車椅子用昇降機において、前記スロープは、テーブル部が最低位置にあるとき、側面視において上り勾配部と下り勾配部を有する略々へ字形状を形成するよう構成され、スロープの下り勾配部とテーブル部にて車椅子が方向転換してテーブル部上に完全に搭乗できるようにするためのスペースを確保するようにしたことを特徴とする車椅子用昇降機。
【請求項2】
前記スロープの上り勾配部の長さを車椅子の車輪のハンドリムを持ち替えることなく越えられる長さとしたことを特徴とする請求項1に記載の車椅子用昇降機。
【請求項3】
前記スロープが起立された状態にあるとき、上り勾配部が下り勾配部との枢結部を中心に下り勾配部に対して回動されて、スロープが折り畳まれるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の車椅子用昇降機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−176310(P2006−176310A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373412(P2004−373412)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(394006129)株式会社いうら (63)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(394006129)株式会社いうら (63)
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