説明

車椅子電動化装置、車椅子電動化方法

【課題】 手動車椅子を電動化できると共に、手動車椅子への取り付けを容易化できる車椅子電動化装置および車椅子電動化方法を提供する。
【解決手段】 手動車椅子1の前輪部8に対し着脱自在な取り付け部16を有底箱状に前輪部8を保持するための凹部16dを有して設ける。取り付け部16に手動車椅子1を電動により駆動するための駆動輪20および従動輪18を設ける。駆動輪20を駆動するためのモータ部22を取り付け部16に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動車椅子を簡便に電動化できる車椅子電動化装置および車椅子電動化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、足の不自由な人の移動のために、手動車椅子が広く使われている。手動車椅子は、乗る人が手動車椅子の後輪である自立歩行サイドリングに付設されたハンドリムを回して、または介護者が手押しハンドルを持って手動車椅子を押すことにより移動される。
【0003】
このような手動車椅子は、坂道を登るときには多くの労力を必要とし、乗る人や介護者が非力な場合、手動車椅子の移動自由度が小さく、不便であるという問題を有している。
【0004】
そこで、上記問題を回避するために、手動車椅子に代えて、電動車椅子を用いることが考えられる。しかしながら、電動車椅子が高価なこと、また、今まで使用していた手動車椅子を廃棄しなければならず、車椅子を利用する者にとって経済的な負担が大きいという不都合を生じている。
【0005】
このような不都合による経済的負担を抑制するために、手動車椅子に対し取り付けて電動化できる動力化装置(特許文献1)および補助駆動装置(特許文献2)がそれぞれ提案されている。
【0006】
上記動力化装置では、手動車椅子のシートを上部に有するフレーム本体の内部に対し、モータを取り付けた板部材を取り外し可能に取り付け、上記モータの駆動力を手動車椅子の後輪である自立歩行サイドリングの外周部に直接伝達することにより、手動車椅子が電動化されている。
【0007】
上記補助駆動装置においては、手動車椅子のフレーム本体の下部における、各自立歩行サイドリングの間に、駆動輪とそれを駆動するモータとを備えた補助フレーム部をバネにより上記フレーム本体の下部に対し取り付けて、上記駆動輪を上記バネによって走行面に付勢しながら上記モータにより駆動されることにより、上記手動車椅子が電動化されている。
【特許文献1】特開平11−267157(公開日:1999年10月5日)
【特許文献2】特開2002−301113(公開日:2002年10月15日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の各公報に記載の構成では、取り付けに手間取るという問題点を生じる。すなわち、上記動力化装置では、たすき構造などにより剛性が強化されたフレーム本体の複雑なパイプ構造内に、モータを取り付けた板部材を取り付けるため、取り付けに手間取るという問題点を生じている。また、上記補助駆動装置においては、比較的重い後輪側の、やはり複雑なパイプ構造を備えたフレーム本体を、裏返すなどして、補助フレーム部を取り付ける必要があるので、その取り付けに手間取るという問題点を生じている。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、手動車椅子に対する取り付けを簡便化(容易化)できる車椅子電動化装置および車椅子電動化方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車椅子電動化装置は、上記課題を解決するために、手動車椅子の前輪部に対し、着脱自在な取り付け部と、上記取り付け部に設けられた、上記手動車椅子を電動により駆動するための駆動部とを具備していることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、手動車椅子の前輪部に対し、着脱自在な取り付け部を取り付けて、上記前輪部(例えば各前輪)を手動車椅子の走行面に対し離間させ、上記取り付け部に設けられた駆動部によって、上記手動車椅子を電動により駆動して電動化できる。
【0012】
また、上記構成は、手動車椅子の前輪部に対し、着脱自在な取り付け部を備えているので、手動車椅子の後輪側より軽量な前輪部に対し、例えば各後輪の回転軸を軸として上記前輪部を持ち上げて、上記取り付け部を取り付けることが可能なため、上記取り付けを容易化できる。
【0013】
上記車椅子電動化装置では、前記取り付け部は、前記前輪部を保持するようになっていることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、取り付け部が前輪部を保持するので、その取り付け部に設けられた駆動部による上記手動車椅子の電動駆動を安定化できる。
【0015】
上記車椅子電動化装置においては、前記取り付け部は、有底箱状に形成されていることが望ましい。
【0016】
上記構成によれば、取り付け部が有底箱状に形成されているので、手動車椅子の前輪部を取り付け部内に収納できて、上記前輪部への取り付け部の取り付けや、上記前輪部の保持を確実化できる。
【0017】
上記車椅子電動化装置では、前記取り付け部の底部に、前記前輪部の各前輪を嵌め込んで保持するために凹部がそれぞれ設けられていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、上記凹部をそれぞれ設けたことにより、各前輪が嵌め込まれて保持されるため、上記前輪部への取り付け部の取り付けや、上記前輪部の保持をより一層確実化できる。
【0019】
上記車椅子電動化装置においては、前記凹部は、前記底部を厚さ方向に貫通する孔部であってもよい。上記構成によれば、凹部を孔部により形成したから、上記凹部を簡素な打ち抜きといった加工により形成できて、上記凹部の形成を簡便化できる。
【0020】
上記車椅子電動化装置では、前記取り付け部の底部に、前輪が除去された前記前輪部の先端部を嵌め込んで保持するための嵌入部がそれぞれ設けられていてもよい。
【0021】
上記構成によれば、上記嵌入部をそれぞれ設けたことにより、各前輪部の先端部が嵌め込まれて保持されるため、上記前輪部への取り付け部の取り付けや、上記前輪部の保持をより一層確実化できる。その上、上記構成では、前輪部の前輪を除去したので、前輪の半径分の長さを調整分として確保できて、手動車椅子のシートの水平を走行面に対し維持できる。
【0022】
上記車椅子電動化装置においては、前記駆動部は、駆動輪と従動輪とを有していることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、駆動輪と従動輪とを設けたことで、取り付け部が走行面と摺動つまり接触して駆動を阻害することを防止でき、また、前輪部と走行面との離間も確保して、上記駆動を確実化できる。
【0024】
上記車椅子電動化装置では、前記駆動輪は、前記取り付け部の前部に設けられていてもよい。上記車椅子電動化装置においては、前記駆動輪は、前記取り付け部の後部に設けられていてもよい。上記車椅子電動化装置では、前記従動輪は、前記前輪部を挟むように、前記取り付け部にそれぞれ取り付けられていてもよい。
【0025】
上記構成によれば、駆動輪を取り付け部の前部または後部に設けたことで、従動輪を前輪部を間に挟むように、すなわち取り付け部の側部(走行方向に対する側部)にそれぞれ取り付けることができるので、駆動部の駆動源(モータや電池)および制御部の設置位置を各前輪部間に確保できる。
【0026】
上記車椅子電動化装置においては、さらに、前記駆動部を制御するための制御部と、前記制御部への制御指示を入力するための外部入力部とを具備し、前記外部入力部は、ジョイスティック、ボタンスイッチおよびプレススイッチからなる群から選択される少なくとも一つを有していることが好ましい。
【0027】
本発明に係る車椅子電動化装置は、上記課題を解決するために、手動車椅子の前輪部に対し着脱自在な取り付け部を取り付けて、前記手動車椅子の走行面に対し前記前輪部を離間させ、上記取り付け部に設けられた駆動部により、上記手動車椅子を電動により駆動することを特徴としている。
【0028】
上記方法によれば、手動車椅子の前輪部に対し、着脱自在な取り付け部を取り付けて、上記前輪部(例えば各前輪)を手動車椅子の走行面に対し離間させ、上記取り付け部に設けられた駆動部によって、上記手動車椅子を電動により駆動して電動化できる。
【0029】
また、上記方法は、手動車椅子の前輪部に対し、着脱自在な取り付け部を取り付けるので、手動車椅子の後輪側より軽量な前輪部に対し、例えば各後輪の回転軸を軸として上記前輪部を持ち上げて、上記取り付け部を取り付けることが可能なため、上記取り付けを容易化できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る車椅子電動化装置は、以上のように、手動車椅子の前輪部に対し、着脱自在な取り付け部と、上記取り付け部に設けられた、上記手動車椅子を電動により駆動するための駆動部とを具備している構成である。
【0031】
それゆえ、上記構成は、手動車椅子の前輪部に対し、着脱自在な取り付け部を備えているので、手動車椅子の後輪側より軽量な前輪部に対し、上記取り付け部を取り付けることが可能なため、上記取り付けを容易化できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明に係る車椅子電動化装置および車椅子電動化方法の実施の各形態について図1ないし図7に基づいて説明すると以下の通りである。すなわち、上記車椅子電動化装置は、図1に示すように、手動車椅子1の前輪部8に対し、着脱自在な取り付け部16と、上記取り付け部16に設けられた、上記手動車椅子1を電動により駆動するための駆動輪(駆動部)20とを具備している。
【0033】
まず、手動車椅子1の構成について以下に説明すると、図2に示すように、手動車椅子1は、パイプ等によるフレーム本体1aが、その外形が略直方体形状となるように設けられている。フレーム本体1aの上部には、使用者が着座するためのシート2、背もたれ3および各肘掛け4が取り付けられている。
【0034】
また、フレーム本体1aの下部における後部の両側部においては、一対の後輪である各自立歩行サイドリング6が、互いに独立に回転自在に取り付けられている。側部とは、手動車椅子1の走行方向に対する側部である。各自立歩行サイドリング6の外周は、自転車のタイヤと同様にゴム等の弾性体からなっており、直径としては50cm(20インチ)または55cm(22インチ)である。各自立歩行サイドリング6の各回転軸は、ほぼ一直線上に、かつ、手動車椅子1の走行面に対しほぼ平行となるように設定されている。各自立歩行サイドリング6は、それらに対応する各回転軸に対しハブ5により保持されている。さらに、各自立歩行サイドリング6には、それぞれ自立歩行するための円形状のハンドリム7が、自立歩行サイドリング6に対し同軸状となるように取り付けられている。
【0035】
一方、フレーム本体1aの下部における前部側の両側部では、一対の各前輪部8が互いに独立に回転自在に取り付けられている。よって、各前輪部8の下部には、それぞれ、前輪8aが互いに独立に水平方向に沿った回転軸にて回転自在に装着されている。前輪8aは、自立歩行サイドリング6より小径(例えば、直径20cm(8インチ))であり、その外周が、自転車のタイヤと同様にゴム等の弾性体からなっている。前輪8aを回転自在に支持するU字部8bが、フレーム本体1aの下部の前部に対し走行面に対し垂直な方向に回転自在に取り付けられている。よって、上記一対の各前輪部8は、走行面に対し平行な方向(水平方向)と、走行面に対し垂直な方向との双方において互いに独立に回転自在となっている。また、各前輪8aは、それらの回転軸が、走行時に互いに平行となるように設定されている。
【0036】
これら各自立歩行サイドリング6および各前輪8aを、個々に互いに独立して回転可能に設けることによって、手動車椅子1は、各ハンドリム7の回転をそれぞれコントロールすることで、何れの方向にも自立歩行や自立走行が可能となっている。
【0037】
手動車椅子1では、フレーム本体1aの下部の前方に、各足置き台10が、フレーム本体1aの下部の前部から下方に延びるハンガーブラケット11によりそれぞれ取り付けられている。
【0038】
続いて、本発明の車椅子電動化装置について、以下に説明する。前記取り付け部16は、図3および図4に示すように、前記一対の各前輪部8をそれぞれ保持するように、外形が略直方体形状の有底箱状に、金属板、例えばアルミニウム板から形成されている。よって、取り付け部16は、長方形板状の底部16aと、底部16aの四端部から立設される一対の互いに対向する各前後壁部16bおよび一対の互いに対向する各側壁部16cとを備えていることになる。
【0039】
このような取り付け部16は、その幅(走行方向に対し直交する方向の長さ)が、一対の各前輪部8の幅より広く、または一対の各前輪部8の幅と同程度に設定され、取り付け部16の長さ(走行方向に沿った方向の長さ)が、一対の各前輪部8における各前輪8aの直径より広く、または上記直径と同程度に設定され、取り付け部16の高さが、各前輪8aの半径の1/2より大きく、より好ましくは半径より大きく、各前輪8aの直径より小さく、より望ましくは直径の2/3より小さくなるようにと、上記半径程度に設定されている。よって、このような取り付け部16は、その内部に各前輪部8における各前輪8aを収納して、各前輪部8を走行面に対し離間して保持できるものとなっている。
【0040】
そして、上記取り付け部16の底部16aに、図5にも示すように、前記前輪部8の各前輪8aをそれぞれ嵌め込んで保持するために凹部16dがそれぞれ設けられている。凹部16dは、底部16aをその厚さ方向に貫通する孔部であることが加工の容易なことから好ましい。
【0041】
凹部16dの底部16aでの開口端部の形状としては、加工が容易な長方形状が好ましい。上記開口端部の形状が長方形状のとき、上記開口端部の四辺部は、それぞれ底部16aの四辺部とそれぞれ対向し、略平行に設定されていることが望ましい。上記開口端部における、走行方向に沿った各辺部の大きさとしては、前輪8aの直径より小さくなるように設定されている。上記開口端部における、走行方向に沿った各辺部の大きさは、前輪8aの直径の1/2より大きいことが好ましい。
【0042】
さらに、上記開口端部における、走行方向に直交した各辺部の大きさとしては、前輪8aの直径より小さくなるように設定されている。上記開口端部における、走行方向に直交した各辺部の大きさは、前輪8aの直径の1/2より大きいことが好ましい。また、上記開口端部の対角線の長さは、前輪8aの直径より小さいことが好ましい。このような寸法に開口端部を設定することで、前輪8aが凹部16dの開口端部を突き抜けることを防止できて、前輪8aを凹部16dにて確実に保持できる。
【0043】
その上、一方の凹部16dの開口端部における、それに対面する側壁部16c側と、他方の凹部16dの開口端部における、それに対面する側壁部16c側との間隔、すなわち各開口端部の幅は、各前輪部8の幅に応じて設定されている。各開口端部の幅は、各前輪部8の幅より広く、例えば、前輪部8の前輪8aの幅程度ずつ広く設定されていることが望ましい。
【0044】
このように各凹部16dを、各前輪部8の幅に応じる位置にそれぞれ設定すると共に、個々の凹部16dの開口端部における、走行方向に直交した各辺部の大きさを、それぞれ、前輪8aの幅より幅広に設定することで、各前輪部8の幅が異なる各手動車椅子1に対しても本発明の車椅子電動化装置を容易に取り付けることが可能となる。例えば、子供用の手動車椅子1では、その成長に応じて、その大きさが変わり、その各前輪部8の幅が変化するが、そのような手動車椅子1の取り換えに対しても、本発明の車椅子電動化装置は容易に対応できる。
【0045】
また、取り付け部16には、駆動部としての各駆動輪20と各従動輪18とがそれぞれ設けられている。各駆動輪20を駆動するためのモータ部22がそれぞれ取り付けられている。上記モータ部22は、モータによる駆動輪20を直接駆動できるものであり、例えば、減速機付きサーボモータ(連続定格100W)である。このような各駆動輪20は、個々に駆動されるので、上記両者が同速度にて駆動されると、手動車椅子1は直進し、上記両者の速度が相違して駆動されると、手動車椅子1は曲がって進むことが可能となる。
【0046】
また、このような各駆動輪20は、図4にも示すように、取り付け部16の前部側に設けられている。これにより、駆動部を前部に設けたので、障害物を乗り越えることを確実化できる。上記モータ部22へのバッテリとしては、充電できる二次電池が好ましいが、他の一次電池も使用可能である。上記二次電池としては、鉛二次電池(例えば、鉛シールド型、30V−10Ah)や燃料電池が挙げられる。そのバッテリの設置位置としては、各足置き台10の下側、ハンガーブラケット11の内側、取り付け部16内、またはフレーム本体1a内が挙げられる。
【0047】
前記一対の各従動輪18は、各前輪部8を挟むように取り付け部16の例えば各側壁部16cの外側にそれぞれ互いに独立に回転自在に取り付けられている。各従動輪18の各回転軸は、一直線上に設定され、それら回転軸の方向は取り付け部16の長手方向に沿うように設定されている。このように各従動輪18を、取り付け部16の側部にそれぞれ設けたことにより、各従動輪18には駆動源を必要としないので、取り付け部16内の各側部側に、各前輪部8をそれぞれ収納できるスペースを確保できる。
【0048】
さらに、取り付け部16内には、前記各モータ部22を制御するための制御部24が、マイコン制御にて設けられている。上記マイコン制御では、各駆動輪20の速度差による、手動車椅子1の走行方向を設定するためのステアリング機能、および各モータ部22のトルク条件(平坦地や傾斜地での走行時のトルクの変化)に応じた速度補正機能とが少なくとも設定されている。
【0049】
また、本発明の車椅子電動化装置においては、図1に示すように、制御部24への制御指示を入力するための外部入力部40が、使用者が右利きである場合、右側の肘掛け4における前方のフレーム本体1aの上側に設けられている。なお、外部入力部40を使用者が左利きである場合、左側の肘掛け4における前方のフレーム本体1aの上側に設けてもよい。外部入力部40は、ジョイスティック、ボタンスイッチおよびプレススイッチからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。図1では、外部入力部40として、ジョイスティックを設けた例を挙げた。
【0050】
ジョイスティックとしては、コントロール用棒が上方に突出しており、コントロール用棒を所望する方向に倒す事で、手動車椅子1の走行方向を指示でき、かつ、その倒す角度により手動車椅子1の走行速度を指示できるものが挙げられる。
【0051】
ボタンスイッチとしては、複数のボタンスイッチ、例えば4個のボタンスイッチを進行に方向を示すようにそれぞれ配置し、それらの各ボタンスイッチの何れかを使用者が選択して押すことで前進、後進、右回り、左回りといった手動車椅子1の走行を制御できるものが挙げられる。
【0052】
プレススイッチとしては、変位を検出できる、例えば圧電素子による圧力センサを複数、使用者の首回りに装着し、使用者が首を所望する進行方向に傾けることで、その傾きを上記各圧力センサにて検出し、その検出結果により手動車椅子1の走行を制御できるものが挙げられる。また、さらに、他の外部入力部40としては、使用者の両目のまばたきをそれぞれ、例えば光学的に検出し、両目のまばたきの回数により、手動車椅子1の走行を制御できるものも挙げられる。
【0053】
このような車椅子電動化装置を用いた車椅子電動化方法は、手動車椅子1の前輪部8に対し着脱自在な取り付け部16を上記前輪部8に取り付けて、手動車椅子1の走行面に対し前輪部8を離間させ、取り付け部16に設けられた駆動輪20により、上記手動車椅子1を電動により駆動するものである。
【0054】
これにより、本発明に係る車椅子電動化装置およびそれを用いた車椅子電動化方法は、手動車椅子1の前輪部8に対し、着脱自在な取り付け部16を取り付けるので、手動車椅子1の後輪側である自立歩行サイドリング6側より軽量な前輪部8に対し、例えば各自立歩行サイドリング6の回転軸を軸として上記前輪部8を持ち上げて、上記取り付け部16を手動車椅子1に対し取り付けることが可能なため、上記取り付けを容易化できる。
【0055】
なお、本実施の形態では、駆動輪20を取り付け部16の前部に設けた例を挙げたが、図6に示すように、取り付け部16の後部に設けることも可能である。これにより、取り付け部16の前部側(つまり、各足置き台10側)にスペースを確保できるので、各足置き台10の下側に、各モータ部22のためのバッテリや、前方の障害物についての検知のためのセンサを設置できる。
【0056】
また、本実施の形態においては、取り付け部16に凹部16dを設けた例を挙げた、各前輪部8を保持できればよく、図7に示すように、取り付け部16の底部16aに、前輪8aが除去された前輪部8を有する手動車椅子1bを用い、上記前輪部8の先端部を嵌め込んで保持するための嵌入部(図示せず)をそれぞれ設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の車椅子電動化装置および車椅子電動化方法は、手動車椅子を電動化できると共に、手動車椅子への取り付けを容易化できるから、身体機能を補助する補助機器の分野に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る車椅子電動化装置における実施の一形態の斜視図である。
【図2】上記車椅子電動化装置を用いる手動車椅子の斜視図である。
【図3】上記車椅子電動化装置の斜視図である。
【図4】上記車椅子電動化装置の拡大斜視図である。
【図5】上記車椅子電動化装置の他の拡大斜視図である。
【図6】本発明に係る車椅子電動化装置における実施の他の形態の斜視図である。
【図7】本発明に係る車椅子電動化装置における実施のさらに他の形態の斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1 手動車椅子
8 前輪部
16 取り付け部
18 従動輪(駆動部)
20 駆動輪(駆動部)
22 モータ部(駆動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動車椅子の前輪部に対し、着脱自在な取り付け部と、
上記取り付け部に設けられた、上記手動車椅子を電動により駆動するための駆動部とを具備していることを特徴とする車椅子電動化装置。
【請求項2】
前記取り付け部は、前記前輪部を保持するようになっていることを特徴とする請求項1記載の車椅子電動化装置。
【請求項3】
前記取り付け部は、有底箱状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の車椅子電動化装置。
【請求項4】
前記取り付け部の底部に、前記前輪部の各前輪を嵌め込んで保持するために凹部がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項3記載の車椅子電動化装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記底部を厚さ方向に貫通する孔部であることを特徴とする請求項4記載の車椅子電動化装置。
【請求項6】
前記取り付け部の底部に、前輪が除去された前記前輪部の先端部を嵌め込んで保持するための嵌入部がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項3記載の車椅子電動化装置。
【請求項7】
前記駆動部は、駆動輪と従動輪とを有していることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の車椅子電動化装置。
【請求項8】
前記駆動輪は、前記取り付け部の前部に設けられていることを特徴とする請求項7記載の車椅子電動化装置。
【請求項9】
前記駆動輪は、前記取り付け部の後部に設けられていることを特徴とする請求項7記載の車椅子電動化装置。
【請求項10】
前記従動輪は、前記前輪部を挟むように、前記取り付け部にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項7ないし9の何れか1項に記載の車椅子電動化装置。
【請求項11】
さらに、前記駆動部を制御するための制御部と、
前記制御部への制御指示を入力するための外部入力部とを具備し、
前記外部入力部は、ジョイスティック、ボタンスイッチおよびプレススイッチからなる群から選択される少なくとも一つを有していることを特徴とする請求項1ないし10の何れか1項に記載の車椅子電動化装置。
【請求項12】
手動車椅子の前輪部に対し着脱自在な取り付け部を取り付けて、前記手動車椅子の走行面に対し前記前輪部を離間させ、
上記取り付け部に設けられた駆動部により、上記手動車椅子を電動により駆動することを特徴とする車椅子電動化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−187472(P2006−187472A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1923(P2005−1923)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)