説明

車椅子

【課題】 背もたれフレームと座面フレームが形成する傾斜角度を適宜に設定でき、搭乗者に最適な角度に調整可能にあり、リクライニングする際もおしりの移動が起きず、持ち運びが容易で収納スペース効率もよい車椅子を提供する。
【解決手段】 留め部材164の着脱により折り畳み可能な背もたれフレーム160と、左右別々に着脱可能な脚フレーム128と、座面フレーム76と背もたれフレーム160を各々支持し傾斜角度を各々調整可能なダンパ58,62とを備える。背もたれフレーム160と座面フレーム76とを軸支した屈曲点の軸孔151が、座面フレーム76上方の搭乗者のほぼ腰部に位置する。座面フレーム76は、背もたれフレーム160とは別に揺動可能に軸支され、背もたれフレーム160と座面フレーム76は、各々ダンパ58,62を介した揺動機構と、ダンパ58,62のロックを解除するレバー188とにより揺動角度調節可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、介護を必要とする被介護者が搭乗する車椅子であって、リクライニング機構を備えた車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、介護を必要とする人を搭乗させて移動することのできる車椅子には、一般にスチール製やアルミ製等のパイプ材によりフレームが形成されている。このような車椅子の中には、傾倒可能に背もたれが取り付けられ、リクライニング可能な車椅子が知られている。リクライニング可能な車椅子は、座面シートが取り付けられた座面フレームと背もたれフレームが、座面シート後方端部近傍にて連結されており、背もたれが連結位置を中心に傾倒可能に取り付けられている。また、足を支えるフットサポートが取り付けられた車椅子もある。さらに、背もたれとフットサポートが、金属製パイプなどのリンクにより連結されたものもある。この車椅子は、傾倒可能に取り付けられた背もたれを後側に倒すと、リンクにより連動してフットサポートが座面フレーム前端部近傍を中心に回転上昇し、水平に近い状態に足を持ち上げるものである。
【0003】
上記のようなリクライニング可能な車椅子では、背もたれフレームを傾倒すると、搭乗者の背中が背もたれフレームの上面を滑り降りるようなずれが起きていた。また、逆に背もたれを起こす場合も、背もたれの起き上がりと共に臀部が前方に押される現象があった。特に、身体が不自由な搭乗者の場合では、背もたれを水平に近い状態で搭乗させることがあるが、この際は、搭乗後、傾倒状態から背もたれを起こすと、搭乗者の背中が背もたれにより押され、おしりの位置が前方へずれる問題があり、衣服の乱れや、車椅子から落ちる可能性もあった。
【0004】
これらの欠点を改善するため、特許文献1では、座面が、後部下がり傾斜となるように構成されているとともに、傾斜調整装置を設けて該座面の傾斜角度を調整可能に形成している。そして、背もたれが後方に倒されると、脚を支えるフットレストがリンク機構により上昇するとともに、座面の傾斜が緩くなる方向に座面を移動させる構成を設けたことを開示している。これにより、背もたれを倒してリクライニングする際でも、おしりの位置ずれが起きないとしている。
【0005】
また、特許文献2では、座席フレームは、前後方向中間部を中心として揺動可能に設け、背もたれフレームと座席フレームの間に、背もたれフレームの傾斜に伴い前端部を一旦上動させた後、元の状態へと下動させる、背腰連動機構を構成した車椅子を開示している。これにより、リクライニングの際に、利用者の腰部が前方へずれやすい背もたれフレームの傾斜途中までは、座席フレームを前上がりの傾斜状態にして、利用者の腰部が前方へずれないようにしている。そして、利用者の背中の荷重がほとんど背もたれフレームに掛かり、腰部が前方へずれなくなる背もたれフレームの傾斜途中からは、座席フレームが次第に水平状態に近付き、常に利用者が安定した状態に保持される構成としている。
【特許文献1】特開平成10−230002号公報
【特許文献2】特開平成11−155908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1,2では、背もたれフレームと座面フレームの連結箇所が座面の後端部と一致しているため、背もたれフレームの傾倒動作により、搭乗者の腰部分が後方へずれたり前方へ押されたりする現象がある。そのため、搭乗者にとって不安定なばかりか、背もたれフレームに掛かる荷重も大きくなり、部材の強度アップのために車椅子の重量の増加の原因ともなっていた。また、この車椅子を格納する際には、容易に折り畳みできないため、収納スペースを大きく取り、効率がよくないうえ、持ち運びする場合では、背もたれフレームなどが嵩張り、持ち運びしづらいものである。
【0007】
さらに、特許文献2では、背もたれフレームと座面フレームを、個別に傾斜角度調整することができないため、背もたれフレームと座面フレームが形成する傾斜角度を、搭乗者の身体状況に合わせて適切に調整することができない問題がある。
【0008】
この発明は、上記従来技術の問題に鑑みて成されたもので、背もたれフレームと座面フレームが形成する傾斜角度を適宜に設定でき、搭乗者に最適な角度に調整可能にあり、背もたれをリクライニングする際でも、おしりの移動が起きず、持ち運びが容易で、収納スペース効率もよい車椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、背もたれが後方に傾倒されると、背もたれフレームと脚フレームを連結した揺動機構により、前記脚フレームが上端部を中心にして回転上昇するリクライニング式の車椅子であって、留め部材の着脱により折り畳み可能な前記背もたれフレームと、左右別々に着脱可能な前記脚フレームと、前記座面フレームと前記背もたれフレームを各々支持しそれらの傾斜角度を各々調整可能なガスダンパや機械式位置調整装置等の調整装置とを備え、前記背もたれフレームと前記座面フレームとを軸支した屈曲点が、前記座面フレーム上方の搭乗者のほぼ腰部に形成された車椅子である。
【0010】
前記座面フレームは、前記背もたれフレームとは別に揺動可能に軸支され、前記背もたれフレームと前記座面フレームは、各々前記調整装置を介した揺動機構と、前記調整装置のロックを解除するレバーとにより揺動角度調節可能に設けられたものである。また、前記座面フレームの後端部は、車体フレームの連結部から後端へ下がる傾斜角を有し、この傾斜部分の後端部に前記座面上方で前記背もたれフレームを軸支した傾倒支持部が位置したものである。
【0011】
また、前記脚フレームは、前記揺動機構のリンクの係脱により、左右それぞれ独立に前記脚フレームを車体フレーム等に固定可能である。
【発明の効果】
【0012】
この発明の車椅子によれば、背もたれフレームと座面フレームとの間の傾斜角度を任意に設定することができ、背もたれをリクライニングする際や背もたれを起こす際も、着座状態でおしりが前方に押されることがないものである。さらに、シンプルな機構で軽量であり持ち運びが容易で、収納スペース効率もよいものである。また、背もたれフレームと座面フレームを、ダンパ等の調整装置を介した揺動機構により揺動可能に設けたので、背もたれのリクライニングに連動して、座面を適宜後方に傾斜させることができ、座り心地良く安定にリクライニング動作を行うことができる。
【0013】
また、左右の足を選択的にリクライニングに連動させることができ、搭乗者の障害の具合に合わせた動きや設定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の車椅子の一実施形態について、図1〜図6を基にして説明する。この発明の車椅子10は、被介護者を搭乗させ、介護者が後ろから押して移動させるものである。この実施形態の車椅子10は、図示するように、アルミ合金製のパイプ材を適宜切断して組み合わせ、溶接または螺子止めにより各部のフレームを形成している。まず、この車椅子10の基本となる車体フレーム16には、左右一対の前輪12と後輪14が取り付けられている。車体フレーム16は、左右一対のサイドフレーム18が、パイプ材にて形成された連結棒材20により互いにほぼ並行に位置して連結されて形成されている。前輪12は、複数の貫通孔22を設けたフォーク状の前輪支持部材24に支持され、車体フレーム16の前端部の前輪支持部材28に対して、前輪支持部材28内の取付軸により回動可能に設けられ、車体フレーム16に対して任意の進行方向に回転可能に取り付けられている。
【0015】
後輪14は、車体フレーム16に後輪軸受部30を設け、この後輪軸受部30に開口する複数の貫通孔32の適宜な孔に車軸部材34を挿着し取り付けられている。この後輪14の前方向で車軸部材34の高さ付近には、後輪14の表面に圧接する圧接金具38と操作レバー40により形成された左右一対の駐車ブレーキ42が、車体フレーム16に取り付けられている。また、駐車ブレーキ42近傍に、肘掛け44を形成する肘掛け支柱46が車体フレーム16に取り付けられている。肘掛け44の取付部には、略直方体の固定筒部50が設けられ、この固定筒部50の内側は四角形の貫通穴となっており、この貫通穴には、上下に高さ調整可能に摺動する略四角柱の肘掛け支柱46が挿通されている。肘掛け支柱46の一表面には凹凸が設けられ、固定部50に設けた固定機構のレバー50aの操作により、図示しないストッパが凹凸に嵌合し、肘掛け支柱46の位置が固定されるように形成されている。
【0016】
また、サイドフレーム18のパイプ状の後端部は開口し、後端部の端部周囲には複数の貫通孔66が設けられている。サイドフレーム18の後端部の開口には、車椅子10の転倒を防止する短いパイプ体であって一端部近傍に補助輪68が取り付けられた補助輪取付部材70が挿着されている。補助輪取付部材70には、パイプ材の周囲に設けられた貫通孔66に嵌合する突起が設けられ、この突起は、図示しない弾性体により突出方向に付勢され、一定以上の力により押圧すると退避する構造であり、補助輪取付部材70はサイドフレーム18に対して着脱可能に取り付けられている。
【0017】
車体フレーム16を構成する左右のサイドフレーム18の上部には、揺動連結部74が設けられ、搭乗者が座る座面フレーム76の揺動連結部78が軸支されている。これにより、座面フレーム76が、車体フレーム16に対して所定角度の範囲内で揺動可能に連結されている。この座面フレーム76は、左右一対のパイプ材により形成された座面サイドフレーム80と、図4、図5に示すように、各々の座面サイドフレーム80に連結された座面連結部材82と、座面サイドフレーム80を座面フレーム76の後端部近傍で連結した後端部連結材84により一体に構成されている。座面連結部材82と後端部連結材84の間には、2本の補強部材88がほぼ等間隔に設けられ、座面連結部材82の中間には、後述する上方のダンパ62の一端を軸支したダンパ支持部86が設けられている。この座面連結部材82は、図3に示すように、下方に略コ字上に湾曲して形成されている。
【0018】
さらに、座面フレーム76の左右一対の座面サイドフレーム80は、座面フレーム76の前側を水平にした状態で、揺動連結部78近傍から後方に向かって下方へ約5度の傾斜角を有して形成され、後端にはさらに大きく下方に屈折して形成されている。そして、座面サイドフレーム80の傾斜部分の後方には、略三角形に形成され角部が落とされた傾倒支持部94が一体に設けられている。傾倒支持部94は、座面フレーム76から上方に所定高さ突出して設けられ、後述する背もたれ連結フレーム148の両端部を軸支している。
【0019】
そして、図5に示すように、車体フレーム16のサイドフレーム18を連結する連結棒材20の中央には、下方のダンパ58の一端を支持するダンパ支持部60が設けられ、座面フレーム76の後端部の連結材84の中間には、ダンパ支持部96が設けられ、ダンパ支持部60との間に設けられたダンパ58の他方の端部が軸支されている。
【0020】
座面フレーム76の各座面サイドフレーム80の、揺動連結部78より前方の下側には、長板状に形成されフットレスト保持部100が各々設けられている。そして、フットレスト保持部100には、貫通孔100aが形成されている。座面サイドフレーム80の前方端部は、垂直方向に揺動自在の回転連結部104が形成され、脚フレーム支持部106が垂直方向に揺動可能に軸支されている。
【0021】
脚フレーム支持部106の側面には、略コの字形状の連結支持部材110が、着脱自在に取り付けられている。連結支持部材110は、台形状の平板部110aの上下に、板状で鉤状の取付支持部110b,110cが設けられ、略コの字状に形成されている。また、連結支持部材110の平板部110aの底辺寄りには、図6に示すように、底辺に平行に長円形の開口部112が設けられている。この開口部112には、両端に貫通孔を設けたリンク取付部材114が、ボルトとナットにより開口部112の所定位置で固定されて取り付けられている。リンク取付部材114は、後述するリンク146の先端部に連結されている。
【0022】
連結支持部材110の開口部112に取り付けられたリンク取付部材114の端部には、対称に配置された一対のリンク146の前端部が留めピンにより軸支されている。このリンク146の後端部は、背もたれ連結フレーム148の支持部150に軸支されている。
【0023】
さらに、脚フレーム支持部106に取り付けられた連結支持部材110の上下各々の取付支持部110b,110cには、それぞれ2箇所の貫通孔が設けられ、外側に位置する貫通孔には、嵌合ボルト122が上方に突出する状態にそれぞれ取り付けられている。一方の内側に位置する上下の貫通孔は間に、図4に示すように、固定レバー124を軸支するように貫通する取付ボルト126が挿通され取り付けられている。外側の上下各々の嵌合ボルト122には、脚フレーム128の一対の釣支部130が嵌挿されている。この釣支部130に固定レバー124の端部が係合し、脚フレーム128が脚フレーム支持部106に回動自在に設けられている。
【0024】
脚フレーム128は、下方前方に向かって、くの字状に湾曲しており、図4に示すように、湾曲箇所から下方よりに固定部材132を介して、略矩形の板状をした樹脂製のフットサポート134が取り付けられている。脚フレーム128の端部には、断面が略四角形の筒状の支持部136が設けられ、支持部136内には、上下に摺動可能な略四角柱の筒体140が挿通されている。筒体140の一表面には凹凸140aが設けられ、支持部136に設けられた固定機構136aのレバー操作により嵌合し、固定するように形成されている。また、筒体140の下側端部には、取付部材142を支点に上方へ回転し、略矩形の板状をした樹脂製のフットレスト144が、折り畳み可能に取り付けられている。
【0025】
背もたれ連結フレーム148は、略コの字状に湾曲し、板状に形成された両端部には、上下2個の軸孔151,152がそれぞれ設けられている。下側の軸孔151は、座面フレーム76の傾斜支持部94に対して回転可能に軸支されている。背もたれ連結フレーム148の中間にはダンパ支持部156が設けられ、上方のダンパ62の他端が軸支され、座面フレーム76の座面連結部材82に設けられたダンパ支持部86との間を、ダンパ62を介して連結している。背もたれ連結フレーム148のダンパ支持部156の両側近傍には、図4,図5に示すように、垂直方向に留め孔158が設けられ、背もたれフレーム160を構成する補強部材162に留め部材164により係脱可能に連結されている。
【0026】
さらに、背もたれフレーム160は、略L字状のパイプ材から形成された左右一対の背もたれサイドフレーム160a,160bを、補強部材162と連結部材166、及びL字の開口方向を後向きに略コの字状に湾曲したヘッドレスト固定部材168により連結されて構成されている。背もたれサイドフレーム160a,160bの下端近傍の屈曲部には、略三角形に形成され角部が落とされたフレーム支持部172が一体に設けられている。このフレーム支持部172には、背もたれ連結フレーム148の両端に設けられた上側の軸孔152がピン等により軸支され、背もたれフレーム160が回動可能に取り付けられている。
【0027】
背もたれサイドフレーム160a,160bの上方端部は開口しており、ハンドル部材176の一端が挿入され、背もたれサイドフレーム160a,160bの端部側面の止め螺子180により固定されている。このハンドル部材176には、ブレーキレバー182が設けられており、図示しないワイヤなどで後輪14の車軸部材34に内設された図示しないブレーキ機構に接続されている。また、ハンドル部材176には、グリップ部184が設けられ、ゴムなどの滑り難い材質でできた被覆材が被覆されている。
【0028】
ヘッドレスト固定部材168の中間近傍には、略直方体に形成され、断面が四角形の筒状の固定部186が取り付けられ、固定部186の両側には各ダンパ58,62のロックを解除する一対の解除レバー188がそれぞれ取り付けられている。この固定部186には、ヘッドレスト190を上下方向に高さ調整可能に摺動ガイドする略四角柱に形成された筒体192が挿通されている。筒体192の一表面には凹凸192aが設けられ、固定部186に設けた固定機構のレバー186aの操作により嵌合し、固定可能に形成されている。
【0029】
さらに、筒体192の上側端部にも、筒体192に対して内部に水平方向の貫通穴が形成された筒状の固定部194が取り付けられている。固定部194の貫通穴には、略四角柱に形成された筒体196が摺動可能に挿通されている。筒体196の一表面にも凹凸196aが設けられ、固定部194に設けた固定機構のレバー194aの操作により嵌合し、固定可能に形成されている。この筒体196の前方向には、上下方向に揺動可能に軸支する取付部材198を介してヘッドレスト190が取り付けられている。
【0030】
この実施形態の車椅子10の座面は、布で形成されており、図5に示すように、座面フレーム76を構成する一対の座面サイドフレーム80間に座面布200などを渡して、座席の座面が形成されている。また、座面フレーム76の座面布200の裏面に一端が固定され、背もたれフレーム160を形成する連結部材166に掛け渡して折り返して、おしりを支えるように形成された後部座面紐ベルト202が設けられている。後部座面紐ベルト202の他端部には面ファスナが設けられ、連結部材166に掛け渡して後部座面紐ベルト202の裏の貼付部に位置調節可能に貼付されている。さらに、背もたれサイドフレーム160a,160b間に図示しない布などを渡して、座席の背面が形成されている。
【0031】
この実施形態の車椅子の機能は、座面フレーム76が揺動連結部78に軸支され、座面フレーム76の連結材84のダンパ支持部96と、車体フレーム16のサイドフレーム18を連結する連結棒材20のダンパ支持部60との間のダンパ58により、座面フレーム76が、約水平位置から前方に約5°後方に約15°傾斜した位置まで調節可能に設けられている。この調節は、ダンパ58につながれた一対の解除レバー188の一方により、ダンパ58のロックが解除され、揺動可能にされた状態で適宜の角度に設定し、その位置で解除レバー188を離すことにより固定される。
【0032】
また、この車椅子の背もたれフレーム160は、図2、図5等に示すように、背もたれフレーム160を構成する補強部材162に背もたれ連結フレーム148が支持され、背もたれ連結フレーム148が、そのダンパ支持部156と、座面フレーム76の座面連結部材82に設けられたダンパ支持部86との間のダンパ62により、揺動可能に設けられている。そして、背もたれ連結フレーム148の揺動により背もたれフレーム160がリクライニング可能に設けられている。背もたれフレーム160の揺動角の設定は、ダンパ62につながれた一対の解除レバー188の他方により、ダンパ62のロックが解除され、背もたれ連結フレーム148が揺動可能にされた状態で、適宜の角度に背もたれフレーム160を設定し、その位置で他方の解除レバー188を離すことにより固定される。
【0033】
さらに、背もたれ連結フレーム148の支持部150に一端が軸支されたリンク146の他端が、連結支持部材110に軸支され、連結支持部材110が脚フレーム支持部106に接続されて、脚フレーム128がリンク146により揺動される。そして、背もたれフレーム160のリクライニングに伴って、背もたれ連結フレーム148が揺動し、リンク146を介して脚フレーム128を上方に揺動させる。この揺動動作は、一対のリンク146により、左右の脚フレーム128が各々個別に揺動される。
【0034】
また、脚フレーム128の片側だけを固定し、背もたれフレーム160の傾倒に連動させたくない場合は、連結支持部材110とリンク146を連結するリンク取付部114を外し、リンク146を取り外す。そして、連結支持具110の開口部112とフットレスト保持部100の貫通孔110aとの間に、図示しない留め具を固定する。これにより、脚フレーム128を背もたれの傾倒に関係なく固定することも可能である。さらに、一対の脚フレーム128は、連結支持部材110により各々着脱自在に設けられ、脚フレーム支持部106の固定レバー124を解放し、取付支持部110b,110cの嵌合ボルト122に釣支されている釣支部130を外して、脚フレーム128を外すこともできる。
【0035】
また、背もたれフレーム160は、留め部材164により背もたれ連結フレーム148と連結されており、留め部材164を外すことにより、背もたれフレーム160を支持部172の回動軸を中心に前方に倒すことが出来る。
【0036】
また、この実施形態の車椅子の背もたれフレーム160のリクライニング時の回動中心は、座面フレーム76を構成する一対の座面サイドフレーム80の後端部から上方に所定高さ突出して設けられた傾倒支持部94に設けられているので、搭乗者の腰部のやや上方で背もたれフレームがリクライニングする。これにより、背もたれフレーム160の回動時に、搭乗者のおしりを前方に押すことがない。また、座面フレーム76の後方部分がやや下方に傾斜して下がっているので、搭乗者のおしりがより安定する。
【0037】
この実施形態の車椅子10によれば、背もたれフレーム160及び座面フレーム76の各々について傾斜調整用にダンパ58,62が設けられ、角度を自由に設定できるものである。そのため、背もたれをリクライニングする際でも、背もたれのフレーム160と座面フレーム76により形成される角度を任意に調整可能なものである。また、背もたれフレーム160と座面フレーム76の屈曲点である軸孔151の位置が、搭乗者の腰部の屈曲位置の上方にあり、背もたれフレーム160の揺動動作に伴って、座っている人が前方に押し出されることがないものである。さらに、座面フレーム76に形成される座席が、面ファスナを備えた座面布200後部座面紐ベルト202により腰掛け深さを調節可能にあり、おしりを保持し易いため、前方にずれることがないものである。さらに、背もたれフレーム160と背もたれ連結フレーム148とを連結している留め部材164を取り外すことにより、背もたれフレーム160が折り畳み可能になるため、持ち運びが容易で、収納スペースの効率もよいものである。
【0038】
また、脚フレーム128の片側だけを固定し、他方の脚フレーム128のみを背もたれフレーム160の傾倒に連動させることもでき、搭乗者の状態に対応した細かな設定を可能にしている。さらに、脚フレーム128の片側が邪魔な際には、脚フレーム128を取り外すことも可能である。
【0039】
なお、この発明の車椅子は上記実施形態に限定されるものではなく、図7に示すように、体フレーム16の左右一対のサイドフレーム18の上側のフレーム端に、略L字状の補助輪取付部材70を着脱可能に取り付けたものでも良い。さらに、駐車ブレーキを無くしてシンプルにしても良い。また、調整装置は、ガスダンパの他、機械式の位置調節可能な調整装置でも良く、その構成は問わない。また、フレームの素材や座席を形成する素材など適宜選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の一実施形態の車椅子を示す側面図である。
【図2】この実施形態の車椅子を示す正面図である。
【図3】図2のフットサポートを除いた状態を示す正面図である。
【図4】この実施形態の車椅子を示す上面図である。
【図5】この実施形態の車椅子を示す背面図である。
【図6】この実施形態の車椅子を示す斜視図である。
【図7】この発明の他の実施形態の車椅子を示す側面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 車椅子
12 前輪
14 後輪
16 車体フレーム
18 サイドフレーム
44 肘掛け
58,62 ダンパ
60,86,96,156 ダンパ支持部
70 補助輪取付部材
74,78 揺動連結部
76 座面フレーム
94 傾倒支持部
100 フットレスト保持部
104 回転連結部
106 脚フレーム支持部
110 連結支持部材
128 脚フレーム
144 フットレスト
151,152 軸孔
160 背もたれフレーム
164 留め部材
188 解除レバー
190 ヘッドレスト
200 座面布
202 後部座面紐ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれが後方に傾倒されると、背もたれフレームと脚フレームを連結した揺動機構により、前記脚フレームが上端部を中心にして回転上昇するリクライニング式の車椅子において、留め部材の着脱により折り畳み可能な前記背もたれフレームと、左右別々に着脱可能な前記脚フレームと、前記座面フレームと前記背もたれフレームを各々支持しそれらの傾斜角度を各々調整可能にした調整装置とを備え、前記背もたれフレームと前記座面フレームとを軸支した屈曲点が、前記座面フレーム上方の搭乗者のほぼ腰部に形成されたことを特徴とする車椅子。
【請求項2】
前記座面フレームは、前記背もたれフレームとは別に揺動可能に軸支され、前記背もたれフレームと前記座面フレームは、各々前記調整装置を介した揺動機構と前記調整装置のロックを解除するレバーとにより揺動角度調節可能に設けられたことを特徴とする請求項1記載の車椅子。
【請求項3】
前記座面フレームの後端部は、車体フレームの連結部から後端へ下がる傾斜角を有し、この傾斜部分の後端部に前記座面上方で前記背もたれフレームを軸支した傾倒支持部が位置したことを特徴とする請求項2記載の車椅子。
【請求項4】
前記脚フレームは前記揺動機構のリンクの係脱により、左右それぞれ独立に前記脚フレームを固定可能であることを特徴とする請求項1記載の車椅子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−167099(P2006−167099A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362844(P2004−362844)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(596004772)カナヤママシナリー株式会社 (7)