説明

車検顧客待合設備

【課題】顧客整備用端末の大型化を図るとともに顧客のプライバシーを保護することができる車検顧客待合設備を提供する。
【解決手段】顧客が着座する椅子3と、この椅子3から視認可能な箇所に配置され、かつ他の顧客との仕切りを構成する間仕切り壁4と、この間仕切り壁4の後壁面に設置され、遠隔の車検整備工場へ指示を送信しまたは車検整備工場の映像を表示することができるディスプレイ6を有する顧客用端末5とからなる顧客待機ユニット2を直列に複数組配置した車検顧客待合設備1であって、椅子3を後ろ隣りの顧客待機ユニット2の間仕切り壁4に近接させて据え付け、間仕切り壁4によって椅子3に着座した顧客から前隣りの顧客待機ユニット2のディスプレイ6を遮蔽する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車検などにおける自動車の点検に際して、顧客が待機する車検顧客待合設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路運送車両法による車両検査(車検)やその他の定期検査を行う場合には、車両整備業者が、顧客から車両を預かり、代車を引き渡した上で、数日かけて行われていた。しかし、このような方法では、車検に長時間を要するという問題があるとともに、顧客には車検の様子を知ることができず、不当な部品交換が行われているという疑念が生じることがあった。
そこで、即時に顧客に車の整備状況を確認させる透明性の高い立会い車検が注目を集めるようになった。しかし、長時間に亘り顧客を店舗内で待たせる訳にはいかず、作業時間短縮のために、人件費は増加するものの、整備士の人数を増やして分業させるなどして、数十分から数時間で車検を完了させる方法が一般的に行われるようになった。
【0003】
顧客への透明性を向上させるために、特許文献1には、顧客を車検に立ち会わせることが記載されているが、車両の整備が行われている整備工場内に顧客を案内するのは危険であり、また、整備士に顧客への接客力が求められることとなっていた。
そこで、顧客用の待合室に顧客用端末を設置し、この顧客用端末と整備工場とを通信回線で接続することにより、待合室にいる顧客が顧客用端末のディスプレイに表示される整備工場の映像により整備箇所を確認するとともに、顧客用端末を操作して修理提案箇所等の作業意思の決定を直接車検整備工場へ送信できるようにした車両点検システムがあった(特許文献2)。
【0004】
しかし、特許文献2の車両点検システムでは、顧客用端末を携帯できる小型端末とした場合には画面が小さすぎて素人である顧客が車両の整備箇所を確認しづらいという問題があった。他方、顧客用端末に大型のディスプレイを用いた場合には車両の故障情報等が他の顧客に知られてしまい、プライバシーが損なわれてしまうという問題があった。そのため、顧客用端末ごとに個室を設けることも考えられるが、設備が大掛かりになるとともに費用がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−63293号公報
【特許文献2】特開2004−171378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、顧客整備用端末の大型化を図るとともに顧客のプライバシーを保護することができる車検顧客待合設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、上記課題が解決される手段は以下の通りである。
第1の発明は、顧客が着座する椅子と、この椅子から視認可能な箇所に配置され、かつ他の顧客との仕切りを構成する間仕切り壁と、この間仕切り壁の後壁面に設置され、遠隔の車検整備工場へ指示を送信しまたは車検整備工場の映像を表示することができるディスプレイを有する顧客用端末とからなる顧客待機ユニットを直列に複数組配置した車検顧客待合設備であって、上記椅子を後ろ隣りの上記顧客待機ユニットの上記間仕切り壁に近接させて据え付け、上記間仕切り壁によって上記椅子に着座した顧客から前隣りの上記顧客待機ユニットの上記ディスプレイを遮蔽することを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、上記間仕切り壁の内部に上記顧客用端末を収容し、その前壁面に上記顧客用端末を出し入れする開口または扉を設け、かつ、上記椅子をこの開口または扉に近接させて配置することを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、上記顧客用端末に2つのディスプレイを具備し、一方のディスプレイには顧客の指示入力用情報を表示し、他方のディスプレイには車両の情報を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、間仕切り壁の後壁面に設置され、遠隔で車検整備工場へ指示を送信しまたは車検整備工場の映像を表示することができる画面を有する顧客用端末を設けたことにより、大型の顧客用端末を用いる場合にも省スペース化することができる。
また、上記間仕切り壁によって上記椅子に着座した顧客から前隣りの上記顧客待機ユニットの顧客用端末を遮蔽することにより、顧客の車両に関する故障情報等を他の顧客に知られることを防止して、プライバシー保護を向上させることができる。
また、上記椅子を後ろ隣りの上記顧客待機ユニットの上記間仕切り壁に近接させて据え付けたことにより、省スペース化を図ることができる。
【0011】
第2の発明によれば、上記間仕切り壁の内部に上記顧客用端末を収容することにより、顧客用端末を間仕切り壁によって保護することができる。
また、その前壁面に上記顧客用端末を出し入れする開口または扉を設け、かつ、上記椅子をこの開口または扉に近接させて配置することにより、顧客用端末のメンテナンスおよび交換を行うことができるとともに、扉または開口を椅子によって隠すことができて車検顧客待合設備の外観が損なわれるのを防止することができる。
【0012】
第3の発明によれば、上記顧客用端末に2つのディスプレイを具備し、一方のディスプレイには顧客の指示入力用情報を表示し、他方のディスプレイには車両の情報を表示することにより、後者のディスプレイで部品交換を終えた箇所や部品交換が必要な箇所等の車両の情報を確認しながら、前者のディスプレイで車検整備工場への部品交換等の指示を入力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る車検顧客待合設備の斜視図である。
【図2】同車検顧客待合設備の一部切り欠き側方図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る車検顧客待合設備について説明する。
この車検顧客待合設備1は、顧客の車両を車検整備工場で検査している間、顧客が待機スペースとして利用できるものであり、営業所等に設置される。顧客の安全のため、この車検顧客待合設備1は車検整備工場から隔てられた場所に設けられるのが好ましい。
【0015】
図1に示すように、車検顧客待合設備1は、複数組の顧客が別々に待機できるように、複数の顧客待機ユニット2を直列に配置してなる。
顧客待機ユニット2は、一組の顧客が待機できる単位区画であって、顧客が着座する椅子3と、この椅子の前方に配置された間仕切り壁4と、この間仕切り壁4の後壁面に設置された顧客用端末5とからなる。車検顧客待合設備1の側部には、前後方向に延在する側壁7が設けられている。
車検顧客待合設備1は、顧客待機ユニット2を一列に並べたものには限定されず、通路を挟むなどして複数列に配置してもよい。
【0016】
本実施形態では3人掛け用の椅子3を用いて、顧客が家族で楽しみ、ゆったりとくつろぐことのできる待機スペースを提供することを目的とする。
図2に示すように、この椅子3は、後ろ隣りの顧客待機ユニット2の間仕切り壁4の前壁面に近接させて据え付けられている。
【0017】
椅子3の前方に配置した間仕切り壁4には顧客用端末5を収容し、後壁面に顧客用端末5のディスプレイ6の表示面が椅子3側に露出するように設置している。
顧客用端末5は、車検整備場のカメラまたはビデオカメラから受信する車両の整備箇所の静止画または動画をディスプレイ6に表示することができる。また、ディスプレイ6には車両の模式図等を表示することもでき、顧客が部品の交換等の指示をタッチパネル操作で入力し、車検整備工場の受信端末に送信することができる。
顧客用端末5は、間仕切り壁4に収容する代わりに、薄型のディスプレイ6を間仕切り壁4の後壁面に掛けるようにしてもよい。
【0018】
また、間仕切り壁4には顧客用端末5と並べてテレビモニター8を設置し、顧客が待ち時間にテレビを鑑賞したり、インターネットへ接続して各種サイトを閲覧することもできるようにしている。
その他の実施例として、テレビモニターを設置する代わりに、間仕切り壁4に顧客用端末5のディスプレイ6を2つ設置して、ディスプレイ6の一方には顧客が部品交換等を決定する際に車検整備工場への指示を入力、確認するための情報を表示し、他方には部品を交換した箇所の画像や交換しなかった際の問題点等の車両の情報を表示することもできる。
【0019】
間仕切り壁4は、内部を空洞にして、下部に顧客用端末5の制御用の本体9を収容しているとともに、後壁面の上部に開口を形成して顧客用端末5のディスプレイ6およびテレビモニター8を設置する。
また、間仕切り壁4は十分な高さ及び幅に設定され、椅子3に着座した顧客から、前隣りの顧客待機ユニット2のディスプレイ6を遮蔽するようになっている。
さらに、間仕切り壁4のディスプレイ6の設置位置の下方からは、板材からなる作業台10が後方へ張り出されて、顧客が各種作業を行ったり、車検の資料等を置いたりすることができるようになっている。
【0020】
図1に示すように、間仕切り壁4の前壁面の下部には、蝶番によって開閉する扉11が形成されており、この扉11を開けて、顧客用端末5のメンテナンスを行ったり、交換を行ったりすることができる。
また、図2に示すように、間仕切り壁4の前壁面には椅子3が近接に据え付けられて、扉11を隠している。そのため、扉11によって間仕切り壁4の外観が損なわれることが防止されるとともに、顧客用端末5への悪戯も防止することができる。
間仕切り壁4の前壁面の下部には、扉11を設けずに単に開口を形成して、この開口を近接配置した椅子3で隠すようにしてもよい。なお、埃などの侵入を防ぐことができるため、扉11を設けるほうがより望ましい。
【0021】
なお、椅子3の配置は、前方の間仕切り壁4を視認可能な位置であれば特に限定されないが、本実施形態のように間仕切り壁4と対向するように配置すれば、後ろ隣りの間仕切り壁4の扉11を隠すことができ、美観を損なうことがないため、望ましい。
【0022】
以上のような車検顧客待合設備では、間仕切り壁4の後壁面に顧客用端末5を設置したことにより、顧客用端末5を設置する机等を独立に設ける必要がなくなり、省スペース化を図ることができるとともに、顧客用端末5のディスプレイ6を大型化することができる。
また、間仕切り壁4によって、椅子3に着座した顧客から、前隣りの顧客待機ユニット2のディスプレイ6が遮蔽されることにより、顧客が車両の故障情報等を他の顧客に知られてしまうことを防止することができる。
【0023】
さらに、椅子を後ろ隣りの顧客待機ユニット2の間仕切り壁4に近接させて据え付けたことにより、椅子3後方のデッドスペースをなくして顧客待機ユニット2の省スペース化を図ることができるとともに、間仕切り壁4の後壁面に扉11等を設けた場合にも扉11を椅子3によって隠すことができて、車検顧客待合設備1の外観を向上させることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 車検顧客待合設備
2 顧客待機ユニット
3 椅子
4 間仕切り壁
5 顧客用端末
6 ディスプレイ
7 側壁
8 テレビモニター
9 (顧客用端末)本体
10 作業台
11 扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客が着座する椅子と、
この椅子から視認可能な箇所に配置され、かつ他の顧客との仕切りを構成する間仕切り壁と、
この間仕切り壁の後壁面に設置され、遠隔の車検整備工場へ指示を送信しまたは車検整備工場の映像を表示することができるディスプレイを有する顧客用端末とからなる顧客待機ユニットを直列に複数組配置した車検顧客待合設備であって、
上記椅子を後ろ隣りの上記顧客待機ユニットの上記間仕切り壁に近接させて据え付け、
上記間仕切り壁によって上記椅子に着座した顧客から前隣りの上記顧客待機ユニットの上記ディスプレイを遮蔽することを特徴とする車検顧客待合設備。
【請求項2】
上記間仕切り壁の内部に上記顧客用端末を収容し、その前壁面に上記顧客用端末を出し入れする開口または扉を設け、
かつ、上記椅子をこの開口または扉に近接させて配置することを特徴とする請求項1記載の車検顧客待合設備。
【請求項3】
上記顧客用端末に2つのディスプレイを具備し、一方のディスプレイには顧客の指示入力用情報を表示し、他方のディスプレイには車両の情報を表示することを特徴とする請求項1記載の車検顧客待合設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−91930(P2013−91930A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233314(P2011−233314)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(511257414)株式会社システム45 (2)