説明

車載用回路ユニットの取付構造及び前記車載用回路ユニットが組み込まれた電気接続箱

【課題】放熱部材とボディとの間に生じる微小隙間を有効に削減し、また車両の振動に伴う衝撃や異音の発生を回避しながら、良好な冷却性能を確保する。
【解決手段】回路ユニットUにおいて回路体30が固着される放熱部材10の外側面11Bを車両のボディ表面Sに隙間をもって対向させるようにして回路ユニットUを取付ける。好ましくは、車両のボディに固定される取付部12を延設し、この取付部12がボディに接触する面13を放熱部材外側面11Bと略平行にしてかつ両面13,11Bに段差を与えることにより、取付状態でボディと放熱部材外側面11Bとが略平行な姿勢で対向し、かつ前記取付部12を除く全域にわたってボディと放熱部材外側面11Bとの間に隙間が形成されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された電源から車載機器等に配電を行うためのパワーディストリビュータ等に用いられる車載用回路ユニットの取付構造、及び前記車載用回路ユニットが組み込まれた電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、共通の車載電源から各車載機器に電力を分配する手段として、複数枚のバスバー基板を積層することにより配電用回路を構成し、これにヒューズやリレースイッチを組み込んだ回路ユニットが一般に知られている。さらに近年は、かかる回路ユニットの小型化を実現すべくバスバーと制御回路体とを貼り合わせたり、前記リレーに代えてFET等の半導体スイッチング素子を導入したりすることも検討されている。
【0003】
ところで、このような回路ユニットでは、前記バスバーに比較的大きな電流が流れることにより発熱が生じ易く、特に、前記FETやリレースイッチといったスイッチング素子の発熱量が大きいため、その放熱をいかに効率良く行うかが大きな課題となる。
【0004】
その解決手段として、特許文献1には、放熱基板上に電気電子部品を含む回路パターンが設けられたコントロールボックスが開示されている。このコントロールボックスでは、前記放熱基板が平板状に形成され、その片側の縁部に設けられた取付孔にボルトが通されて車両のボディに締結されることにより、前記放熱基板の外表面の略全域が前記ボディに接触する状態で当該コントロールボックスの取付が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−343871号公報(図1,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載されるコントロールボックスは、放熱基板全体が平板状でかつ基本的に当該放熱基板の外表面全域が車両のボディに接触するように設計されたものであるが、実際には前記放熱基板の外表面に凹凸や反り、撓み等が存在するため、これに起因して当該放熱基板の外表面とボディの表面との間に微小隙間が散在しやすく、当該微小隙間に水が溜まって錆が発生する等の不都合が生じるおそれがある。特に、前記ボルトによってボディに直接固定される部位から離れた部位では放熱基板外表面がボディから僅かに浮き易く、この部分が車両の振動に伴ってボディ表面に繰り返し当ることにより、その衝撃で回路の正常な動作に悪影響を与えたり、異音発生の原因となったりするおそれがある。
【0007】
このような振動による不都合を解消する手段として、前記放熱基板の周縁部にその全周にわたって均等にボルト挿通孔を設け、当該周縁部全域をボルトによって直接締結することが考えられるが、このような構造を採用しても前記微小隙間の効果的な削減は期待できない。しかも、車体においてコントロールボックスを取付けるためのスペースは限られており、例えば狭いエンジンルーム内にコントロールボックスを取付ける場合において、前記放熱基板の周縁部を全周にわたってボディ側壁に締結する作業は事実上困難である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、放熱部材とボディとの間に生じる微小隙間を有効に削減し、また車両の振動に伴う衝撃や異音の発生を回避しながら、前記放熱部材による良好な冷却性能を確保することができる車載用回路ユニットの取付構造、及び前記車載用回路ユニットが組み込まれた電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、電力回路を構成する回路体と、この回路体の周りを囲むケース本体と、前記回路体が熱伝導可能な状態で固着される内側面とその反対側で外部に露出することにより放熱面とされる外側面とを有する放熱部材とを備えた車載用回路ユニットが他の回路体とともに共通の電気接続箱に組み込まれた状態で車両に取付けられる構造であって、前記放熱部材の外側面を外部に露出させた状態で前記車載用回路ユニットが前記電気接続箱に組み込まれ、前記放熱部材がその外側面を前記車両のボディに向けると共に前記回路体とケース本体とを配置された内側面を前記ボディと反対側に向けた状態で、前記電気接続箱の外部に露出した外側面と当該ボディとの間に隙間をおいて対向する姿勢で当該ボディに当該車載用回路ユニットが取付けられているものである。
【0010】
この構成によれば、他の回路体とともに共通の電気接続箱に組み込まれた状態であるにも関わらず、放熱部材における電気接続箱の外部に露出した外側面とボディとの間に隙間をおいて対向する姿勢で当該車載用回路ユニットが当該ボディに取付けられる。これにより、電気接続箱に組み込まれているにも関わらず、車載用回路ユニットにおいて、放熱部材の外側面とボディとの間に微小隙間が散在するおそれがなく、しかも、放熱部材の外側面とボディとが離間していても当該放熱部材からボディへの輻射による有効な熱伝達を実現して良好な冷却効果を得ることができる。
【0011】
このような熱伝達の観点からは、前記ボディと前記車載用回路ユニットの放熱部材の外側面とが略平行な姿勢で対向するように当該車載用回路ユニットが当該ボディに取付けられていることが、より好ましい。
【0012】
前記放熱部材は、その外側面全体がボディから離間していてもよいが、この放熱部材が、車両のボディに接触する状態で当該ボディに固定される取付部を有し、かつ、この取付部が前記ボディに固定された状態で当該取付部を除く放熱部材外側面が前記ボディと隙間をおいて対向するようにすれば、その取付部からボディへの熱伝導によって冷却性能をさらに高めることができる。しかも、この取付部とボディとの接触は局所的なものであるので、従来のように放熱部材外側面全体がボディに接触するものと異なり、当該放熱部材外側面とボディとの間に微小隙間が散在するおそれはほとんどない。また、当該取付部を放熱部材の全周ではなくその一部に設けても、車両振動時に放熱部材がボディに繰り返し当ることによる異音・衝撃の発生を回避することができる。
【0013】
前記車載用回路ユニットの具体的な取付位置は問わないが、特に狭いスペース内で取付が行われる場合、例えば、前記車載用回路ユニットの取付部がエンジンルームの内側面に接触する状態で固定される場合に、特に有効である。
【0014】
この場合、前記取付部が上を向く姿勢で前記車載用回路ユニットを前記ボディに取付けるようにすれば、車載機器が密集するエンジンルーム内でも当該回路ユニットの取付作業を上方から容易に行うことができる。
【0015】
また、一般に車両のボディは、側壁部分が中空構造(二重構造)になっていて外部への放熱性が比較的低いのに対して底壁部分は放熱性が高いので、前記取付部がエンジンルームの底面に接触する状態で当該底面に当該取付部を固定するようにすれば、より高い冷却性能が得られる。
【0016】
前記取付部と車両のボディとの具体的な連結構造としては、例えば、前記取付部にボルト挿通孔が設けられ、このボルト挿通孔に挿通される金属製ボルトによって当該取付部が車両のボディに締結されているものが、好適である。この構造によれば、前記金属製ボルトを媒介として放熱部材からボディへの熱伝達をより効果的にすることができる。
【0017】
また本発明では、前記放熱部材の外側面を車両のボディに対向させる代わりにエンジンルーム内のバッテリーに対向させるようにしても有効である。当該バッテリーの温度はエンジンルーム内温度に比べてかなり低いため、このバッテリーに放熱部材の外側面を対向させれば当該放熱部材に良好な冷却性能を発揮させることができる。
【0018】
また本発明は、電力回路を構成する回路体と、この回路体の周りを囲むケース本体と、前記回路体が熱伝導可能な状態で固着される内側面とその反対側で外部に露出することにより放熱面とされる外側面とを有する放熱部材とを備えた車載用回路ユニットが他の回路体とともに組み込まれ、かつ、車両のボディに固定される取付片を有する電気接続箱であって、前記車載用回路ユニットは、前記放熱部材の外側面を外部に露出させた状態で組み込まれ、この車載用回路ユニットの放熱部材は、前記接続箱の取付片が車両のボディに固定されたときに前記ボディに接触した状態で当該ボディに固定される取付部を有し、かつ、前記電気接続箱から露出した外側面が前記ボディを向くとともに前記回路体とケース本体とが配置された内側面が前記ボディと反対側を向くように当該取付部が前記ボディに固定された状態で当該取付部を除く放熱部材の前記電気接続箱の外部に露出した外側面が前記ボディと隙間をおいて対向するように、前記取付部が前記ボディに接触する面と前記放熱部材の外側面との間に段差が与えられているものである。
【0019】
この電気接続箱の取付片を車両のボディに固定するとともに車載用回路ユニットの取付部を前記ボディに固定すれば、他の回路体とともに電気接続箱に組み込まれた状態であるにも関わらず、この電気接続箱に組み込まれた車載用回路ユニットにおいて、前記ボディと前記取付部以外の放熱部材の外側面とが隙間をおいて対向する構造を得ることができる。
【0020】
ここで、前記取付部が前記ボディに接触する面と前記放熱部材の外側面とが略平行であれば、当該放熱部材の外側面とボディとを略平行な姿勢で対向させることが可能になる。
【0021】
前記放熱部材の具体的な形状は問わないが、当該放熱部材が金属板で構成され、当該金属板の縁部から前記段差をもって前記取付部が延長されているものでは、簡単な構造で前記放熱部材の外側面とボディとの間に良好な隙間を確保することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、他の回路体とともに電気接続箱に組み込まれた状態であるにも関わらず、車載用回路ユニットにおいて、放熱部材とボディとの間に生じる微小隙間を有効に削減し、また車両の振動に伴う衝撃や異音の発生を回避しながら、当該放熱部材からボディへの輻射による有効な熱伝達を実現して良好な冷却効果を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が適用された回路ユニットを示す斜視図である。
【図2】前記回路ユニットの断面図である。
【図3】前記回路ユニットが組み込まれた電気接続箱の斜視図である。
【図4】前記電気接続箱がエンジンルーム内に設置された状態を示す平面図である。
【図5】前記エンジンルーム内の構造を示す断面正面図である。
【図6】前記エンジンルームにおいて内壁に段差を与えた例を示す断面正面図である。
【図7】前記エンジンルームにおいて内壁の下部が傾斜している例を示す断面正面図である。
【図8】前記エンジンルームにおいて内壁全体が傾斜している例を示す断面正面図である。
【図9】前記エンジンルーム内に設置される回路ユニットの放熱板の取付部を省略した例を示す断面正面図である。
【図10】(a)はホイールハウスの上面に取付けられる回路ユニットの例を示す側面図、(b)はその取付状態を示す断面正面図である。
【図11】前記エンジンルーム内においてバッテリーに回路ユニットの放熱板外側面を対向させた例を示す断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、ここに示す実施の形態は、共通の電源から複数の車載機器に電力を分配する配電回路を構成する回路ユニットUに本発明を適用したものであるが、本発明はこれに限らず、各種回路を構成する回路ユニットについて広く適用し得るものである。
【0025】
図1及び図2に示す回路ユニットUは、放熱板(放熱部材)10と、ケース本体20と、シート状の回路体30とを備え、この回路体30には、基板実装素子40及びコネクタ50,60が実装される。また、両コネクタ50,60上には前記回路体30を覆うカバー70が装着されるようになっている。
【0026】
前記放熱板10は、アルミニウム合金等の熱伝導性に優れた金属板により構成され、その外側面(図1及び図2では下面)11Bが放熱面とされる一方、内側面(図1及び図2では上面)11Aに前記ケース本体20と回路体30とが共通の接着シート18を介して絶縁状態で接着されるようになっている。
【0027】
ケース本体20は、合成樹脂等の絶縁材料により成形されたものであり、図例では前記回路体30の周りを囲む枠状をなしている。
【0028】
回路体30は、車載電源から複数の負荷に電力を分配するための配電回路と、この電力回路のオンオフを制御する制御回路とを併有している。前記電力回路は、複数枚のバスバーが同一平面上に配列されたバスバー層32によって構成され、制御回路は薄肉のプリント回路基板34に組み込まれており、このプリント回路基板34の下面に前記各バスバー32が接着層36を介して絶縁状態で接着されている。
【0029】
なお、本発明では回路体の具体的な構成を問わず、例えば従来のバスバー基板のようにバスバーと絶縁板とが複数層にわたって交互に重ね合わされたものでもよい。
【0030】
前記基板実装素子40には、図示のようなリレースイッチ素子のほか、FET等の半導体素子や、抵抗素子その他の電気回路素子等が含まれ、回路体30のバスバー層32やプリント回路基板34上に適宜実装される。
【0031】
コネクタ50は、前記回路体30に電源を入力するためのものであり、コネクタ60は、前記回路体30から各車載機器へ電力を出力するとともに当該回路体30と各種センサや他の制御ユニットとの間で信号の送受信を行わせるためのものである。これらのコネクタ50,60は、それぞれ、基板接続端子52,62を含むコネクタ端子と、これらの端子を保持するハウジング54,64とを備え、前記基板接続端子52,62が前記回路体30を貫通する状態で当該回路体30に半田付け等により接続されている。
【0032】
なお、図例では、前記回路体30の下面から突出する基板接続端子52,62と接着シート18及び放熱板10との接触を回避するため、当該接着シート18に貫通孔18a,18b,18cが設けられるとともに、放熱板10に凹み部16A,16B,16Cが形成されている。これらの凹み部16A,16B,16Cは、放熱板10の途中部分をプレスにより下向きに凹ませたもので、当該凹み部16A,16B,16Cの形成位置では放熱板10の外側面11Bが局所的に突出した状態となっている。
【0033】
次に、この回路ユニットUを車両のボディに取付けるための構造について説明する。
【0034】
前記放熱板10の縁部の特定位置からは取付部12が延長され、この取付部12の外側面(図1及び図2では下面)がボディ表面Sと接触する接触面13とされるとともに、当該取付部12にこれを板厚方向に貫通するボルト挿通孔14が設けられている。
【0035】
また、前記ケース本体20の側部には、前記放熱板の車体取付部12に重ね合わされる取付部カバー22が形成され、この取付部カバー22に前記ボルト挿通孔14と合致するボルト挿通孔24が設けられている。そして、前記接触面13がボディ表面Sと接触する状態で両ボルト挿通孔14,24にボルトが挿通されることにより、当該ボルトを利用して取付部12がボディに締結されるようになっている。
【0036】
さらに、この回路ユニットUの特徴として、前記取付部12のつけ根部分は斜め向きに延びており、これにより、当該取付部12の接触面13と放熱板10の外側面11Bとが略平行でありながら両面13,11B同士の間に段差が与えられている。
【0037】
このような回路ユニットUの取付部12の接触面13をボディ表面Sの適当な部位に接触させ、当該取付部12及び取付部カバー22のボルト挿通孔14,24に挿通したボルトによってボディに締結すれば、例えば前記ボディ表面Sが平面である場合、前記回路ユニットUにおいて前記取付部12を除く放熱板外側面11Bの全域がボディ表面Sに対して前記段差の寸法に相当する寸法の隙間をおいて略平行な姿勢で対向することになる。このように放熱板外側面11Bを確実にボディ表面Sから離間させることによって、水滴の滞留による発錆を防ぐことができる。
【0038】
ここで、前記隙間の寸法は適宜設定すればよいが、その最小値(図例では凹み部16A〜16Cの形成部位における外側面11Bとボディ表面Sとの間に形成される隙間の寸法)d1は、3mm以上に設定することが好ましい。この程度の隙間を確保しておけば、車両の振動等に伴って放熱板外側面11B(特に取付部12と反対側の端部の外側面11B)がボディに繰り返し当接してしまうのを確実に回避することができ、このような当接に起因する異音や衝撃の発生を未然に防止することができる。
【0039】
また、当該外側面11Bとボディ表面Sとが離間していても、当該外側面11Bから輻射によってボディに有効に熱伝達を行わせて高い冷却効果を確保することが可能である。ここで、前記ボディや放熱板10の母材となるアルミニウム板や鉄板の輻射率は0.2程度であるが、これに塗装を施すことにより0.7程度の輻射率は容易に得ることが可能である。従って、前記放熱板外側面11B及びこれに対向するボディ表面Sは0.7以上1.0以下の輻射率をもつものとすることがより好ましい。
【0040】
一方、前記隙間寸法の最大値(図例では凹み部16A〜16C以外の部位における外側面11Bとボディ表面Sとの間に形成される隙間の寸法)d2は、20mm以下に設定することが好ましい。これにより、回路ユニットUとボディとを近接させてその取付スペースを小さく抑えることができる。
【0041】
なお、前記ボディ表面Sが平面でない場合、例えば曲面であったり凹凸のある面である場合には、その起伏を見込んで、最終的に当該ボディ表面Sと放熱板外側面11Bとの隙間寸法が前記範囲に収まるように当該外側面11Bと接触面13との段差寸法を設計すればよい。
【0042】
この回路ユニットUは、それ単独で車両のボディに取付けられるものでもよいが、他の回路体とともに共通の電気接続箱に組み込まれた状態で取付けられるものでもよい。その例を図3に示す。
【0043】
図示の電気接続箱90は、ロアケース92と図略のアッパケースとを備え、そのロアケース92内に前記回路ユニットUと他の回路体94とが組み込まれている。回路ユニットUは、その放熱板10の外側面11Bがロアケース92の側壁から外部に露出するように当該ロアケース92に組み込まれており、当該ロアケース92の側壁から前記取付部12及び取付部カバー22が側方に突出した状態となっている。また、当該ロアケース92には、前記取付部12とは別に取付片95,96が突設され、各取付片95,96にもボルト挿通孔95a,96aが設けられている。
【0044】
図4及び図5は前記電気接続箱90をボンネット104の下方のエンジンルーム100内に取付けた例を示したものである。図示のエンジンルーム100の前部にはラジエータファン105が設置され、中央部にはエンジン106が設置されており、当該エンジン106の側方にエアクリーナ107及びバッテリー108が設置されている。そして、このバッテリー108とエンジンルーム内壁とで挟まれた狭いスペース内に前記電気接続箱90が縦置きに設置されている。
【0045】
具体的に、前記エンジンルーム100の左右両側部では、レインフォースメント102が前後に延びており、このレインフォースメント102により形成されるエンジンルーム底壁102a上にロアケース90の取付片96がそのボルト挿通孔96aに挿通される金属製ボルト104によって締結されるとともに、当該レインフォースメント102により形成されるエンジンルーム内壁(側壁)102bに回路ユニットUの取付部12及びロアケース90の取付片95がそのボルト挿通孔14,95aに挿通される金属製ボルト104によって締結されている。具体的には、前記エンジンルーム底壁102a及び内壁102bの適所にボルト挿通孔が設けられてその裏側にナット103が溶接等で固定されており、このナット103に前記ボルト挿通孔14,95aに挿通された金属製ボルト104がねじ込まれることにより、各取付片95,96がエンジンルーム底壁102a及び内壁102bに締結される。
【0046】
この構造では、放熱板外側面11Bがエンジンルーム内壁102bに略一定の隙間をおいて対向しており、かつ、当該放熱板10の熱は輻射だけでなく接触面13や金属製ボルト104を通じて熱伝導によりレインフォースメント102側に有効に伝達される。また、取付部12が上を向く姿勢で内壁12に取付けられるので、その取付作業をエンジンルーム100の上方から容易に行うことができる。
【0047】
なお、前記取付部12の接触面13と放熱板10の外側面11Bとの間に段差を与える代わりに、図6に示すように、エンジンルーム内壁102bに段部102cを形成して前記取付部12が固定される部位とその下側の部位との間に段差を与えるようにしても、放熱板外側面11Bとエンジンルーム内壁102bとを前記段差に相当する寸法の隙間をもって対向させることが可能である。
【0048】
また、前記取付部12を除く放熱板外側面11Bの全域がエンジンルーム内壁102bと略平行であるものに限られず、例えば図7及び図8に示すように、エンジンルーム内壁102bのうち放熱板外側面11Bの下部と対向する部位あるいは放熱板外側面11Bの全面に対向する部位が当該外側面11Bに対して傾斜する傾斜面102dとなっていてもよい。
【0049】
また、図9に示すように、前記取付部12を省略して放熱板外側面11Bの全面をエンジンルーム内壁102bに対向させるようにしてもよい。この場合、放熱板10からエンジンルーム内壁102bへの熱伝導は生じないが、輻射による熱伝達によって放熱部材10の冷却を図ることができる。
【0050】
本発明において、放熱板外側面11Bを対向させる部位や取付部12を固定する部位は前記のようなエンジンルーム内壁102bに限られず、エンジンルーム100の底面、例えば図10に示すようにホイールハウス120の上面に取付部12を接触させて固定することにより、当該ホイールハウス120の上面に放熱板外側面11Bを対向させるようにしてもよい。
【0051】
一般に、車両ボディの側壁(例えばエンジンルーム100を左右両側から囲むフェンダー部)は中空の二重構造となっていて外部への放熱性が比較的低い構造となっていることが多いのに対し、前記ホイールハウス120をはじめとするボディ底壁は単一の金属板で構成されていて放熱性が比較的高い構造となっていることが多いので、ボディ底面に放熱板外側面11Bを対向させることは良好な冷却性能を得る上で有効である。
【0052】
この場合も、例えば、回路ユニットUが組み込まれる電気接続箱90のケースから取付部を延設してこの取付部を前記ホイールハウス120やエンジンルーム側壁等に固定するようにしてもよい。
【0053】
また、前記エンジンルーム内壁102bやホイールハウス120に代え、図11に示すように前記エンジンルーム100内のバッテリー108に放熱板外側面11Bが対向するように回路ユニットUを配置するようにしても有効である。一般に、バッテリー108は分解液を収容していてその表面はエンジンルーム内の昇温にかかわらず低温を維持できるので、当該バッテリー108の表面に放熱板10の外側面11Bを対向させることによってその良好な冷却性能を発揮させることができる。
【0054】
なお、本発明にかかる放熱部材は前記放熱板10のような板状のものに限らず、例えばブロック状のものでもよい。ただし、図示の放熱板10のように金属板で放熱部材を構成し、当該金属板の縁部から段差をもって取付部12を延長させるようにすれば、簡素な構造で高い放熱性能をもつ放熱部材を構築することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 放熱板(放熱部材)
11A 放熱板内側面
11B 放熱板外側面
12 取付部
13 接触面
14 ボルト挿通孔
30 回路体
90 電気接続箱
100 エンジンルーム
102b エンジンルーム内壁
104 金属製ボルト
108 バッテリー
U 回路ユニット
S ボディ表面
d1,d2 隙間寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力回路を構成する回路体と、この回路体の周りを囲むケース本体と、前記回路体が熱伝導可能な状態で固着される内側面とその反対側で外部に露出することにより放熱面とされる外側面とを有する放熱部材とを備えた車載用回路ユニットが他の回路体とともに共通の電気接続箱に組み込まれた状態で車両に取付けられる構造であって、
前記放熱部材の外側面を外部に露出させた状態で前記車載用回路ユニットが前記電気接続箱に組み込まれ、前記放熱部材がその外側面を前記車両のボディに向けると共に前記回路体とケース本体とを配置された内側面を前記ボディと反対側に向けた状態で、前記電気接続箱の外部に露出した外側面と当該ボディとの間に隙間をおいて対向する姿勢で当該ボディに当該車載用回路ユニットが取付けられていることを特徴とする車載用回路ユニットの取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の車載用回路ユニットの取付構造において、前記ボディと前記車載用回路ユニットの放熱部材の外側面とが略平行な姿勢で対向するように当該車載用回路ユニットが当該ボディに取付けられていることを特徴とする車載用回路ユニットの取付構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車載用回路ユニットの取付構造において、前記放熱部材は、車両のボディに接触する状態で当該ボディに固定される取付部を有し、かつ、この取付部が前記ボディに固定された状態で当該取付部を除く放熱部材外側面が前記ボディと隙間をおいて対向することを特徴とする車載用回路ユニットの取付構造。
【請求項4】
請求項3記載の車載用回路ユニットの取付構造において、前記車載用回路ユニットの取付部がエンジンルームの内側面に接触する状態で当該内側面に固定されていることを特徴とする車載用回路ユニットの取付構造。
【請求項5】
請求項3または4記載の車載用回路ユニットの取付構造において、前記取付部がエンジンルームの底面に接触する状態で当該底面に固定されていることを特徴とする車載用回路ユニットの取付構造。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の車載用回路ユニットの取付構造において、前記取付部にボルト挿通孔が設けられ、このボルト挿通孔に挿通される金属製ボルトによって当該取付部が車両のボディに締結されていることを特徴とする車載用回路ユニットの取付構造。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の車載用回路ユニットの取付構造において、前記取付部が前記ボディに固定された状態で当該取付部を除く放熱部材外側面が前記ボディと隙間をおいて対向するように、前記取付部が前記ボディに接触する面と前記放熱部材の外側面との間に段差が与えられていることを特徴とする車載用回路ユニットの取付構造。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれかに記載の車載用回路ユニットの取付構造において、前記取付部が上を向く姿勢で前記車載用回路ユニットが前記ボディに取付けられていることを特徴とする車載用回路ユニットの取付構造。
【請求項9】
電力回路を構成する回路体と、この回路体の周りを囲むケース本体と、前記回路体が熱伝導可能な状態で固着される内側面とその反対側で外部に露出することにより放熱面とされる外側面とを有する放熱部材とを備えた車載用回路ユニットが他の回路体とともに共通の電気接続箱に組み込まれた状態で車両に取付けられる構造であって、
前記放熱部材の外側面を外部に露出させた状態で前記車載用回路ユニットが前記電気接続箱に組み込まれ、前記放熱部材がその外側面を前記車両のエンジンルーム内のバッテリーの表面に向けると共に前記回路体とケース本体とを配置された内側面を前記ボディと反対側に向けた状態で、前記電気接続箱の外部に露出した外側面と当該バッテリーの表面との間に隙間をおいて対向する姿勢で当該エンジンルーム内に当該車載用回路ユニットが取付けられていることを特徴とする車載用回路ユニットの取付構造。
【請求項10】
電力回路を構成する回路体と、この回路体の周りを囲むケース本体と、前記回路体が熱伝導可能な状態で固着される内側面とその反対側で外部に露出することにより放熱面とされる外側面とを有する放熱部材とを備えた車載用回路ユニットが他の回路体とともに組み込まれ、かつ、車両のボディに固定される取付片を有する電気接続箱であって、
前記車載用回路ユニットは、前記放熱部材の外側面を外部に露出させた状態で組み込まれ、
この車載用回路ユニットの放熱部材は、前記電気接続箱の取付片が車両のボディに固定されたときに前記ボディに接触した状態で当該ボディに固定される取付部を有し、かつ、前記電気接続箱から露出した外側面が前記ボディを向くとともに前記回路体とケース本体とが配置された内側面が前記ボディと反対側を向くように当該取付部が前記ボディに固定された状態で当該取付部を除く放熱部材の前記電気接続箱の外部に露出した外側面が前記ボディと隙間をおいて対向するように、前記取付部が前記ボディに接触する面と前記放熱部材の外側面との間に段差が与えられていることを特徴とする車載用回路ユニットが組み込まれた電気接続箱
【請求項11】
請求項10記載の車載用回路ユニットが組み込まれた電気接続箱において、前記取付部が前記ボディに接触する面と前記放熱部材の外側面とが略平行であることを特徴とする車載用回路ユニットが組み込まれた電気接続箱
【請求項12】
請求項10または11に記載の車載用回路ユニットが組み込まれた電気接続箱において、前記放熱部材は金属板で構成され、当該金属板の縁部から前記段差をもって前記取付部が延長されていることを特徴とする車載用回路ユニットが組み込まれた電気接続箱

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−173645(P2010−173645A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103729(P2010−103729)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【分割の表示】特願2004−265855(P2004−265855)の分割
【原出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】