説明

車輌用前照灯

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規な車輌用前照灯に関する。詳しくは、レンズが光軸方向に対して傾斜されている車輌用前照灯において所望しない方向に向かう電球の光を遮光するための金属製のシェードが2次光源となってレンズを変形させてしまうことを防止しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】車輌用前照灯、例えば、自動車用の前照灯にあっては、電球からの光をリフレクタで反射させて、該反射光をレンズで制御して所望の配光を得るようにしている。
【0003】そして、電球の光がリフレクタの有効反射面以外の部分に向かうと制御が難しいかあるいは制御不能な光が出射されてしまうので、電球から出射する光のうち上記リフレクタの有効反射面以外の部分に向かう光を遮光するシェードが使用される。
【0004】図9はそのような自動車用前照灯の一例を示すものである。
【0005】aは電球であり、リフレクタbに支持されている。cは電球aを囲繞するように配置された金属製のシェードである。該シェードcはほぼ円筒状をしており、その側面部dには、図示しないが、電球aの光をリフレクタbの有効反射面に向けて透過させる切欠部が形成されている。
【0006】eは合成樹脂製のレンズであり、光軸x−x方向に対して傾斜されている。
【0007】しかして、電球aの光はリフレクタbの有効反射面にのみ向かい、レンズeによって制御可能な光が得られる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記した自動車用前照灯のように、レンズeが光軸x−x方向に対して傾斜しているものにあっては、シェードcの先端部がレンズeに接近し過ぎており、このために、レンズeに変形が生じてしまうという問題がある。
【0009】即ち、電球aが点灯すると、その熱によってシェードcが加熱され、極めて高温となるため、シェードcが合成樹脂で形成されているレンズeに接近し過ぎていると、シェードcが2次熱源となってレンズeのうちシェードcに近接している部分が熱変形を起こしてしまうという問題がある。
【0010】そこで、図10に示すように、先端部fを円形や楕円の曲面状としたシェードgを使用することが考えられる。
【0011】このようにすることによって、シェードgの先端部をレンズeから遠去けてレンズeの熱変形を抑えることはできるが、シェードgによって囲まれて電球aが位置する部分の内容積が小さくなってしまい、該電球aが位置する部分の温度が高温となり、電球aの寿命を短くしてしまうという問題がある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、ランプボデイと、該ランプボデイの前面開口を覆う樹脂製のレンズと、ランプボデイとレンズとで囲まれた空間内に配置されたリフレクタと、リフレクタに支持された電球と、該電球を囲繞するように配置され電球から出射する光のうち上記リフレクタの有効反射面以外の部分に向かう光を遮光する金属製のシェードを備えた車輌用前照灯であって、上記レンズは光軸方向に対して傾斜されており、上記シェードはほぼ円筒状を成しその側面部に電球からの光をリフレクタの有効反射面に向けて透過させる切欠部が形成されると共に前端部のうちレンズがその傾斜に従って近づいて来る側に該レンズから遠去かる方向に傾斜した傾斜部が形成されたものである。
【0013】
【作用】従って、本発明車輌用前照灯にあっては、傾斜部によってシェードがレンズから遠去かるので、レンズが熱変形を起し難くなり、また、シェードは基本的に円筒状をしていて、レンズに近接し過ぎる部分だけを傾斜させてレンズから遠去けるようにしているので、電球を囲んだ部分の内容積が小さくなり過ぎることもない。
【0014】
【実施例】以下に、本発明車輌用前照灯の詳細を図示した実施例に従って説明する。
【0015】図中1は自動車用の補助前照灯、例えば、フォグランプであり、2はそのランプボデイである。
【0016】ランプボデイ2は合成樹脂で形成されており、前方(図1における左方に向かう方向を前方とし、右方に向かう方向を後方とし、上方に向かう方向を右方とし、下方に向かう方向を左方とする。また、紙面側に向かう方向を上方とし、紙背側に向かう方向を下方とする。本明細書において方向を示す場合は、この向きによる。)に向かって開口した容器状をしている。ランプボデイ2の開口面は左端で最も前方に位置し、右方に行くに従って後方に変位するように傾斜されている。また、該開口面は上方に行くに従ってやや後方へ変位するように傾斜されている。そして、ランプボデイ2の開口縁には前方に向かって開口した据付溝3が形成されている。
【0017】4は透明な合成樹脂、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂等で形成されたレンズであり、その内面には後述するリフレクタからの反射光を制御するための図示しないレンズステップが形成されている。さらに、該レンズ4の開口縁部の背面には後方へ向けて据付脚5が一体に突設されている。そして、該レンズ4はランプボデイ2の開口面を覆うように位置され、その据付脚5がランプボデイ2の据付溝3内に嵌合され、ホットメルト6によって固定とシールが為される。尚、レンズ4のランプボデイ2への固定にはネジ止めやカシメ手段を補助的に用いても良い。
【0018】7はリフレクタであり、合成樹脂によって形成されている。該リフレクタ7は後部の反射部8と該反射部8の周縁から前方へ向かって延びる周壁部9とが一体に形成されて成り、反射部8の内面8aは回転放物面の一部を成す曲面に形成され、かつ、アルミニウム蒸着等の適宜手段により反射面に形成されている。そして、周壁部9の前縁、即ち、開口面は右方に行くに従って後方へ変位するように傾斜されている。
【0019】ランプボデイ2の反射部8には電球取付孔10が形成され、該電球取付孔10に電球11が着脱自在に取着されている。
【0020】そして、電球11が取着されたリフレクタ7はランプボデイ2とレンズ4とによって囲まれた空間内にランプボデイ2に対して傾動可能なように図示しない支持機構によって支持されている。
【0021】12はシェードであり、板金材料によって前端が閉塞されたほぼ円筒状に形成されている。そして、該シェード12の側面部13には切欠14が形成されている。また、側面部13の切欠14の縁からは後方へ向けて取付脚15、15、15が突設されており、該取付脚15、15、15の後端部が上記リフレクタ7の電球取付孔10の開口縁部に支持されている。これによって、該シェード12は電球11の前方及び側部を覆うように位置され、これによって、電球11の光はシェード12の切欠14を通してリフレクタ7の有効反射面、即ち、反射面8aにのみ向かうことになる。即ち、電球11からリフレクタ7の有効反射面8a以外に向かう光はシェード12によって遮光されることになる。
【0022】また、シェード12の前面部16はその右側のほぼ半分の部分16aが右方に行くに従って後方へ変位するように、また、上方へ行くに従ってやや後方へ変位するように傾斜している。
【0023】尚、上記したようなシェード12は、例えば、板金材料から、図5に示すように、板取をして、側面形成部13′と前面部形成部16′とを連続片17で一体に接続して形成し、そして、側面形成部13′を円筒状にカーリングしてその端部同士を結合して側面部13とし、かつ、前面部形成部16′を連続片17で折り曲げて上記側面部13の前面を覆うようにして形成することができる。
【0024】しかして、上記した補助前照灯1にあっては、電球11が点灯すると、その光は前方に向かうもの及び側方へ向かうものの一部はシェード12の前面部16及び側面部13によって遮られ、切欠14を通ったものがリフレクタ7の有効反射面8aへ向かう。そして、該有効反射面8aで反射された光がほぼ平行光束となってレンズ4を透過して照射される。
【0025】そして、レンズ4は右方に行くに従い、また、上方に行くに従い熱源、即ち、1次的な電球11や2次的なシェード12に近付くように傾斜しているが、2次的光源としてレンズ4に影響するシェード12の前面部16はその右側のほぼ半分の部分16aが右方に行くに従って後方へ変位するように、また、上方へ行くに従ってやや後方へ変位するように傾斜しているので、レンズ4との近接し過ぎが回避され、レンズ4の熱による変形を避けることができる。
【0026】
【発明の効果】以上に記載したところから明らかなように、本発明車輌用前照灯は、ランプボデイと、該ランプボデイの前面開口を覆う樹脂製のレンズと、ランプボデイとレンズとで囲まれた空間内に配置されたリフレクタと、リフレクタに支持された電球と、該電球を囲繞するように配置され電球から出射する光のうち上記リフレクタの有効反射面以外の部分に向かう光を遮光する金属製のシェードを備えた車輌用前照灯であって、上記レンズは光軸方向に対して傾斜されており、上記シェードはほぼ円筒状を成しその側面部に電球からの光をリフレクタの有効反射面に向けて透過させる切欠部が形成されると共に前端部のうちレンズがその傾斜に従って近づいて来る側に該レンズから遠去かる方向に傾斜した傾斜部が形成されたことを特徴とする。
【0027】従って、本発明車輌用前照灯にあっては、傾斜部によってシェードがレンズから遠去かるので、レンズが熱変形を起し難くなり、また、シェードは基本的に円筒状をしていて、レンズに近接し過ぎる部分だけを傾斜させてレンズから遠去けるようにしているので、電球を囲んだ部分の内容積が小さくなり過ぎることもない。
【0028】尚、上記した実施例に示した各部の具体的形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際しての具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2乃至図8と共に本発明車輌用前照灯を自動車用の補助前照灯に適用した実施の一例を示すものであり、本図は水平断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】リフレクタの正面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図6乃至図8と共にシェードを示すものであり、本図は展開図である。
【図6】正面図である。
【図7】平面図である。
【図8】右側面図である。
【図9】従来の車輌用前照灯の一例を示す断面図である。
【図10】従来の車輌用前照灯の別の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 自動車用補助前照灯(車輌用前照灯)
2 ランプボデイ
4 レンズ
7 リフレクタ
8a 反射面(有効反射面)
11 電球
12 シェード
13 側面部
14 切欠(切欠部)
16 前面部(前端部)
16a 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ランプボデイと、該ランプボデイの前面開口を覆う樹脂製のレンズと、ランプボデイとレンズとで囲まれた空間内に配置されたリフレクタと、リフレクタに支持された電球と、該電球を囲繞するように配置され電球から出射する光のうち上記リフレクタの有効反射面以外の部分に向かう光を遮光する金属製のシェードを備えた車輌用前照灯であって、上記レンズは光軸方向に対して傾斜されており、上記シェードはほぼ円筒状を成しその側面部に電球からの光をリフレクタの有効反射面に向けて透過させる切欠部が形成されると共に前端部のうちレンズがその傾斜に従って近づいて来る側に該レンズから遠去かる方向に傾斜した傾斜部が形成されたことを特徴とする車輌用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【特許番号】特許第3013141号(P3013141)
【登録日】平成11年12月17日(1999.12.17)
【発行日】平成12年2月28日(2000.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−101568
【出願日】平成6年4月15日(1994.4.15)
【公開番号】特開平7−288005
【公開日】平成7年10月31日(1995.10.31)
【審査請求日】平成10年3月31日(1998.3.31)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【参考文献】
【文献】実開 平3−131008(JP,U)
【文献】実開 昭64−56101(JP,U)
【文献】実開 昭62−137505(JP,U)
【文献】実開 昭62−133301(JP,U)