説明

車輌用灯具の反射鏡及びその形成方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】車輌用配光において中心光度の確保と水平方向への充分な光拡散とを両立させることができるようにした車輌用灯具の反射鏡及びその形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】回転放物面状をした反射鏡と、その前方にレンズステップを有する前面レンズとを備えた灯具では、前面レンズのスラント化(車体のフロントノーズの形状に合せて前面レンズが鉛直面内において大きく傾斜された状態とされること。)に対応することが困難であり、配光パターンにおける左右の両端部分で湾曲や減光等が生じるという不都合を解決するために、本願出願人は、特開平4−248202号公報において、これまで前面レンズが担って来た配光制御機能を反射鏡側に転嫁するとともに、反射面の全面を有効に利用することによって、自動車用配光に係るすれ違いビームに特有のカットラインを有する配光パターンを形成することができるようにした車輌用灯具の反射鏡を提案した。
【0003】この反射鏡の反射面は、反射鏡の光軸を含む水平面に設定される基準放物線、又は反射鏡の光軸を含む水平面に対して所定の角度をもって光軸回りに回転された面内に設定される放物線を、光軸を含む水平面に投射することで得られる基準放物線を有し、該基準放物線の頂点と焦点とを通る軸上であって頂点に関して焦点と同じ側で、かつ、頂点からの距離が基準放物線の焦点距離より大きくされた点を基準点とし、該基準点と焦点との間において光軸に沿って延びる光源体が配置されるものであり、基準点から発したと仮定した光が基準放物線上の任意の点で反射されたときの反射光の光線ベクトルに平行な光軸を有し、該反射点を通り基準点を焦点とする仮想的な回転放物面を、上記光線ベクトルを含み鉛直軸に平行な平面で切った交線の集合体として反射面が形成されるようにしたものである。
【0004】ところで、このような反射鏡に対して、より大きな水平拡散角を得ようとすると、基準曲線である放物線を楕円状又は双曲線状に設定することが考えられる。
【0005】図41乃至図44は、光軸を含む水平面内に楕円状の基準曲線を設定して、該基準曲線に沿って当該基準曲線上の各点での反射光線の方向ベクトルに平行な軸を有しかつ鉛直方向に延びる放物線を点毎に割り付けることによって包絡面として得られる反射面aを示すものである。尚、これらの図においては、光軸をx軸とし、これに直交する水平軸をy軸とし、鉛直軸をz軸とする直交座標系が設定され、3軸の交点Oが原点とされている。
【0006】図41に示すように、x−z平面によって反射面aを切断した場合の断面曲線bはx軸に関して対称性を有する形状とはなっておらず、x−y平面の上側に位置する曲線b1が、x軸上に焦点F1(その焦点距離を「f1」とする。)を有する放物線状をなし、x−y平面の下側に位置する曲線b2が、x軸上に焦点F2(その焦点距離を「f2(>f1)」とする。)を有する放物線状をなしている。そして、反射面aを正面から見た時の外形形状は、図42に実線で示すように、破線で示す円形からずれた形状となっており、下方(z軸の負方向)に張り出すとともにy軸方向には幅狭となってやや潰れた形状となっている。
【0007】尚、光源体であるフィラメントcは、その理想的な形状が円柱状をなすものと仮定され、該フィラメントcは、その中心軸がx軸に対して平行であってx軸に上側から接する状態で上記焦点F1とF2との間に位置されている。
【0008】反射面aにおいて、x−y平面上に設定される基準曲線dは、図43に示すように、その頂点が原点Oでy軸に接しかつ点F1を焦点の1つとする楕円状をしており、よってこの焦点F1に点光源を置いたと仮定した場合に当該点光源から基準曲線d上の任意の点Pで反射された光は、光線e、e、・・・に示すように、x軸上に位置する楕円の他方の焦点に集光した後x軸を横切って水平方向に拡散される。
【0009】図44は、反射面aによってその前方に充分な距離をおいて配置されたスクリーン上に投影されるフィラメント像の配置傾向を概略的に示すものであり、図中の「H−H」線は、スクリーン上でy軸に対応する水平線、「V−V」線はスクリーン上でz軸に対応する鉛直線をそれぞれ示している。
【0010】上記の説明から明らかなように、反射面aのうち正面から見てx−y平面の左側に位置する領域によってスクリーン上に投影されるフィラメント像g、g、・・・はV−V線の左側であってH−H線のほぼ下側に配置され、正面から見てx−y平面の右側に位置する領域によってスクリーン上に投影されるフィラメント像h、h、・・・はV−V線の右側であってH−H線のほぼ下側に配置される。
【0011】尚、反射面aにおいてx軸寄りの位置で投影されるフィラメント像ほど投影面積が大きく、x軸から離れた反射面aの周縁寄りの位置で投影されるフィラメント像ほど投影面積が小さくなっており、上記光線e、e、・・・に示すように、反射面aの周縁寄りの位置での反射光線ほどx軸に平行な直線に対してなす角度が大きくなることから明らかなように、投影面積の小さいフィラメント像がV−V線から離れたところに位置し、投影面積の大きなフィラメント像がV−V線寄りに位置している。尚、V−V線に沿ってその上に位置するフィラメント像i、i、・・・は、反射面aとx−z平面との交線上の点によって投影される像を示している。
【0012】これらのフィラメント像の集合として得られる投影パターンは、図44に破線で示すように、V−V線から離れるにつれて鉛直方向の幅が狭くなって先細りの形状となる。
【0013】図45乃至図48は、光軸を含む水平面内に双曲線状の基準曲線を設定して、該基準曲線に沿って当該基準曲線上の各点での反射光線の方向ベクトルに平行な軸を有しかつ鉛直方向に延びる放物線を点毎に割り付けることによって包絡面として得られる反射面jを示すものである。尚、これらの図においては、光軸をx軸とし、これに直交する水平軸をy軸とし、鉛直軸をz軸とする直交座標系が設定され、点Oが原点とされている。
【0014】図45に示すように、x−z平面によって反射面jを切断した場合の断面曲線kはx軸に関して対称性を有する形状とはなっておらず、x−y平面の上側に位置する曲線k1が、x軸上に焦点F1(その焦点距離を「f1」とする。)を有する放物線状をなし、x−y平面の下側に位置する曲線k2が、x軸上に焦点F2(その焦点距離を「f2(>f1)」とする。)を有する放物線状をなしている。そして、反射面jを正面から見た時の外形形状は、図46に実線で示すように、破線で示す円形からずれた形状となっており、下方(z軸の負方向)に張り出すとともにy軸方向に幅広となってやや横に膨れた形状となっている。
【0015】尚、光源体であるフィラメントcは、その理想的な形状が円柱状をなすものと仮定され、該フィラメントcは、その中心軸がx軸に対して平行であってx軸に上側から接する状態で上記焦点F1とF2との間に位置されている。
【0016】反射面jにおいて、x−y平面上に設定される基準曲線lは、図47に示すように、その頂点が原点Oでy軸に接しかつ点F1を焦点とする双曲線状をしており、よってこの焦点F1に点光源を置いたと仮定した場合に当該点光源から基準曲線l上の任意の点Pで反射された光は、光線m、m、・・・に示すように、前方(x軸の正方向)にいくにつれて次第にx軸から離れるようにして水平方向に拡散される。
【0017】図48は、反射面jによってその前方に充分離れたところに設置されたスクリーン上に投影されるフィラメント像の配置傾向を概略的に示すものであり、図中の「H−H」線は、スクリーン上でy軸に対応する水平線、「V−V」線はスクリーン上でz軸に対応する鉛直線をそれぞれ示している。
【0018】上記の説明から明らかなように、反射面jのうち正面から見てx−y平面の左側に位置する領域によってスクリーン上に投影されるフィラメント像n、n、・・・は、V−V線の右側であってH−H線のほぼ下側に配置され、また、正面から見てx−y平面の右側に位置する領域によってスクリーン上に投影されるフィラメント像o、o、・・・はV−V線の左側であってH−H線のほぼ下側に配置される。
【0019】尚、反射面jにおいてx軸寄りの位置で投影されるフィラメント像ほど投影面積が大きく、x軸から離れた反射面jの周縁寄りの位置で投影されるフィラメント像ほど投影面積が小さくなっており、上記光線m、m、・・・に示すように、反射面jの周縁寄りの位置での反射光線ほどx軸に平行な直線に対してなす角度が大きくなることから明らかなように、投影面積の小さいフィラメント像がV−V線から離れたところに位置し、投影面積の大きなフィラメント像がV−V線寄りに位置している。尚、鉛直方向に沿ってV−V線上に位置するフィラメント像p、p、・・・は、反射面jとx−z平面との交線上の点によって投影される像を示している。
【0020】これらのフィラメント像の集合として得られる投影パターンは、図48に破線で示すように、V−V線から離れるにつれて鉛直方向の幅が狭くなって先細りの形状となる。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のような反射面を有する反射鏡にあっては、配光パターンにおいて所定の中心光度を確保することと、鉛直方向に充分な幅をもって光を水平方向に拡散させることとの両立を図ることが難しいという問題がある。
【0022】即ち、上記のように基準曲線を楕円状又は双曲線状に設定した反射面にあっては下記に示すような不都合が生じる。
【0023】(1)反射面の周縁部によって投影される小フィラメント像が水平方向に拡がってしまう。
【0024】図44や図48で説明したように、反射面の周縁寄りの位置で投影されるフィラメント像は、水平方向に大きく拡散されたものほどその投影面積が小さくなるため、投影パターンにおける左右の端部が水平方向に沿ってV−V線から離れるにつれて先細りとなって周辺部における視認性が低下する。
【0025】(2)反射面における光源の挿入用孔の形成によって配光パターンの中心光度部(所謂ホットゾーン)の光が不足する。
【0026】反射面にはx軸との交点の近辺に電球の挿入用孔が形成されるため、反射面のうち、図41乃至図4343や図45乃至図47に示す範囲ARの領域では光が反射されず、図44に示すフィラメント像i、i、・・・や図48に示すフィラメント像p、p、・・・のように投影面積の大きな像が欠落することになる。
【0027】これらのフィラメント像i、pの上端寄りの部分は、配光パターンの中心光度部の形成に寄与しており、その欠落はそのまま光度の低下につながるため、中心光度部の形成に寄与するフィラメント像を何等かの曲面操作手段によって反射面の他の部分から補うか、あるいは前面レンズに形成されるレンズステップの作用によって補償しない限り、図44や図48に2点鎖線の円内に示す部分の光度を充分に確保することが困難となる。
【0028】以上の事情に鑑み、本発明は上記(1)、(2)に示す不都合を反射面の曲面設計について工夫を凝らすことによって解決することを課題とする。
【0029】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するために、本発明は水平方向に光拡散されかつ所定の中心光度を必要とする配光分布を有する配光パターンを得ることができる車輌用灯具の反射鏡において、下記の(イ)乃至(ホ)に示す構成を有するようにしたものである。
【0030】(イ)光軸を含む水平面に設定される曲線、又は光軸を含む水平面に対して光軸を回転軸として所定の角度をもって傾斜された面内に設定される曲線を光軸を含む水平面に投射した曲線を基準曲線とする。
【0031】(ロ)上記(イ)の基準曲線は、光軸上に焦点を有する双曲的な曲線部と楕円的な曲線部とが、光軸から離れる方向に交互に繰り返されることによって複合曲線として形成されている。
【0032】(ハ)反射面のほぼ中央部に光源体の挿入用孔が形成され、該挿入用孔を通して反射鏡内に挿入される光源体は、その中心軸が光軸に沿って延びており、基準曲線の焦点の前方又は後方に設定される基準点の近傍に位置される。
【0033】(ニ)基準曲線の各曲線部上の点における反射光線が光軸に対してなす角度が光軸寄りに位置する曲線部ほど大きくされている。
【0034】(ホ)光軸上に位置する基準曲線の基準点から発したと仮定した光が基準曲線上の任意の点で反射されたときの反射光の光線ベクトルに平行な軸を有し、該反射点を通り基準点を焦点とする仮想的な回転放物面を、上記光線ベクトルを含み鉛直軸に平行な仮想平面で切った交線の集合体として反射面が形成される。
【0035】従って、本発明によれば、反射面の設計上の基準である基準放物線を、双曲的な曲線部と楕円的な曲線部との繰り返しによって形成し、反射面の中心寄りの部分によって得られる投影面積の大きなフィラメント像(歪み大)を大きく水平方向に拡散することによって、配光パターンの水平方向における端部寄りの部分の鉛直幅を充分に確保し、また、反射面の周縁寄りの部分によって得られる投影面積の小さなフィラメント像(歪み小)が配光パターンにおける中心光度部の形成に寄与するように制御することで、反射面における電球の挿入用孔の形成に起因する光度不足を補うことができる。
【0036】
【発明の実施の形態】以下に本発明車輌用灯具の反射鏡及びその形成方法について詳細に説明する。
【0037】図1乃至図20は、本発明に係る反射面の基本面及びその形成について示すものである。
【0038】図1は基本面1を概略的に示す正面図であり、紙面に垂直に延びる光軸をx軸(手前側を正の向きとする。)とし、これに直交する水平軸をy軸(図の右方を正の向きとする。)とし、鉛直軸をz軸(図の上方を正の向きとする。)とする直交座標系が設定されており、3軸の交点Oが原点とされている。
【0039】基本面1には、正面から見て原点Oを中心とする直径rの円孔2が形成されており、該円孔2を通して光源体が反射鏡内に配置されるようになっている。
【0040】図2は基本面1とx−z平面との交線3の形状を概略的に示すものであり、x−y平面の上側に位置する曲線3aは、x軸上に焦点F1(その焦点距離を「f1」とする。)を有する放物線状をなし、x−y平面の下側に位置する曲線3bが、x軸上に焦点F2(その焦点距離を「f2(>f1)」とする。)を有する放物線状をなしている。
【0041】尚、光源としては電球や放電灯等を用いることができ、例えば、白熱電球を使用する場合の光源体はフィラメントであり、該フィラメントcの理想的な形状が円柱状をなすものと仮定され、該フィラメントcは、その中心軸がx軸に対して平行であってx軸に上側から接する状態で上記焦点F1とF2との間に位置されている。
【0042】図3はx軸を含む水平面に設定される基準曲線4、つまり、基本面1とx−y平面との交線の形状を概略的に示すものであり、この例では、基準曲線4がx−z平面に関して対称性を有するので、図ではx−y平面の第1象限(x>0、y>0)において設定される曲線部分を主に示している。
【0043】基準曲線4は、x軸上に焦点F(上記焦点F1、F2に一致するとは限らない。)を有する「双曲的」な曲線部と「楕円的」な曲線部とを、x軸から離れる方向に交互に繰り返したり、場合によっては、「双曲的」な曲線部と「楕円的」な曲線部との間に「放物的」な曲線部を介在させる等の曲線操作によって得られるスプライン曲線として形成されている。
【0044】尚、ここにいう「双曲的」、「楕円的」、「放物的」とは、基準曲線4上の反射点での反射光線の狙い方向、つまり、反射点を通ってx軸に平行な直線に対して反射光線の向きがどのような傾向を有しているかによって定義される用語であって、反射点における反射光線の方向ベクトルや基準曲線4の一部をなす曲線部に対する修飾語として用いられるものである。
【0045】図4は反射光線の方向ベクトルに対する上記の用語の定義について示すものである。
【0046】x軸上に設定される焦点Fに点光源をおいたと仮定して、該点光源から基準曲線4上の点Qに向けて発した光が点Qで反射したときの反射光線の向きを示す単位方向ベクトルの3態様を示しており、ベクトル「v_Qp」は、点Qを通ってx軸に平行に延びる直線Lに沿ってx軸の正の向きと同じ向きをもつベクトル、ベクトル「v_Qe」はその先端がx軸側を向いたベクトル、ベクトル「v_Qh」はその先端がx軸から離れる方向に向いたベクトル、をそれぞれ示している。
【0047】これらのベクトルに対しては、放物線においてその焦点から発した後放物線上の点で反射した光が放物線の軸に平行であるという幾何光学上の性質から類推して、ベクトル「v_Qp」を「放物的」であるとし、また、楕円にあっては、その焦点の一から発した後楕円上の点で反射した反射光線が他方の焦点で楕円の長軸と交差するという幾何光学上の性質から類推してベクトル「v_Qe」を「楕円的」であると定義する。そして、双曲線にあっては、その焦点の一から発した後双曲線上の点で反射した反射光線がその進行方向にいくにつれて双曲線の軸から離れていくという幾何光学上の性質から類推して、ベクトル「v_Qh」を「双曲的」であると定義する。
【0048】図5乃至図7は基準曲線4の曲線部に対する上記の用語の定義について説明するための図である。尚、これらの図において、基準曲線4の一部をなす曲線部の端点のうちx軸寄りの端点を点Sとし、x軸から離れた方の端点を点Eとしている。
【0049】図5は「双曲的」な曲線部4hについて説明するものであり、その端点Eにおける反射光線の進行方向を示す方向ベクトルv_Eが「双曲的」であり、端点Sにおける反射光線の進行方向を示す方向ベクトルがベクトルv_Seに示すように「楕円的」であるか、又はベクトルv_Spに示すように「放物的」となっている。
【0050】ベクトルV_Seやベクトルv_Spを、その端点Sがベクトルv_Eの端点Eに一致するように平行移動させると、図5の右側の図に示すようにベクトルの回転の様子が明らかとなる。つまり、曲線部4h上の任意の点Qにおける反射光線の進行方向を示すベクトルv_Qは、点SにおいてベクトルV_Seやベクトルv_Spと一致しているが、点Qが曲線部4h上を点Eに向かって移動するにつれて、図5に矢印CWに示すように、ベクトルv_Qが時計回り方向に回転して、端点Eにおいてベクトルv_Qがベクトルv_Eに一致する。
【0051】図6は「楕円的」な曲線部4eを示すものであり、その端点Eにおける反射光線の進行方向を示す方向ベクトルv_Eが「楕円的」であり、端点Sにおける反射光線の進行方向を示す方向ベクトルがベクトルv_Shに示すように「双曲的」であるか、又はベクトルv_Spに示すように「放物的」となっている。
【0052】ベクトルV_Shやベクトルv_Spを、その端点Sがベクトルv_Eの端点Eに一致するように平行移動させると、図6の右側の図に示すようにベクトルの回転の様子が明らかとなる。つまり、曲線部4e上の任意の点Qにおける反射光線の進行方向を示すベクトルv_Qは、点Sにおいてベクトルv_Shやベクトルv_Spと一致しているが、点Qが曲線部4e上を点Eに向かって移動するにつれて、図6に矢印CCWに示すように、ベクトルv_Qが反時計回り方向に回転して、端点Eにおいてベクトルv_Qがベクトルv_Eに一致するように変化する。
【0053】図7は「放物的」な曲線部4pを示すものであり、その端点Eにおける反射光線の進行方向を示す方向ベクトルv_Eが「放物的」であり、端点Sにおける反射光線の進行方向を示す方向ベクトルがベクトルv_Shに示すように「双曲的」であるか、又はベクトルv_Seに示すように「楕円的」となっている。
【0054】ベクトルv_Shやベクトルv_Seを、その端点Sがベクトルv_Eの端点Eに一致するように平行移動させると、図7の右側の図に示すようにベクトルの回転の様子が明らかとなる。つまり、曲線部4p上の任意の点Qにおける反射光線の進行方向を示すベクトルv_Qは、点Sにおいてベクトルv_Sh又はベクトルv_Spと一致しているが、点Qが曲線部4p上を点Eに向かって移動するにつれて、端点Sでの方向ベクトルがベクトルv_Seである場合には、図に矢印CWに示すように、ベクトルv_Qが時計回り方向に回転して、端点Eにおいてベクトルv_Qがベクトルv_Eに一致するように変化し、また、端点Sでの方向ベクトルがベクトルv_Shである場合には、図7に矢印CCWに示すように、ベクトルv_Qが反時計回り方向に回転して、端点Eにおいてベクトルv_Qがベクトルv_Eに一致するように変化する。
【0055】以上のように、基準曲線4を構成する曲線部は、その境界点Eにおける反射光線の方向ベクトルと、境界点Sにおける反射光線の方向ベクトルとの間で、曲線部上の点Qにおける反射光線の方向ベクトルがどのように変化するかに応じて、「双曲的」、「楕円的」、「放物的」の何れかに区別される。
【0056】よって、これらの用語を使うと、図3に示す基準曲線4は、x軸から離れるにつれて楕円的な曲線部と双曲的な曲線部とが交互に繰り返されて、最終的に放物的な曲線部に連続されることによって構成されていると言うことができる。即ち、原点Oにおいてx軸の正方向を向いた方向ベクトルv0を有する楕円的な曲線部4e1の右側(yの正方向)に双曲的な曲線部4h1が隣接し、両曲線部の境界点Q1における反射光線の方向ベクトルv1が楕円的とされている。そして、曲線部4h1の右側に楕円的な曲線部4e2が隣接し、さらにその右側に双曲的な曲線部4h2が隣接して、最後にx軸から最も遠くに位置する放物的な曲線部4p1に連続される。尚、ベクトルv2は曲線部4h1と曲線部4e2との境界点Q2における反射光線の方向ベクトル、ベクトルv3は曲線部4e2と曲線部4h2との境界点Q3における反射光線の方向ベクトル、ベクトルv4は、曲線部4h2と曲線部4p1との境界点Q4における反射光線の方向ベクトル、をそれぞれ示しており、明らかに、ベクトルv2、v4が双曲的、ベクトルv3が楕円的である。
【0057】また、ベクトルv1乃至v4の各々が、x軸に対してなす角度は、基本的に各ベクトルがx軸から離れるにつれて次第に小さくなっていく傾向を有しており、この例では基準曲線4の端部に位置する放物的な曲線部4p1の端点Q5でのベクトルv5がx軸に対してなす角度ゼロ(つまり、ベクトルv5とx軸とが平行である。)へと漸近していく。
【0058】図8は、図3の基準曲線4上の境界点Q1乃至Q4とx−z平面に関して対称な点(便宜上これらも境界点Q1乃至Q4とする。)によって、その前方に充分の距離をおいて配置されたスクリーンSCN上に投影されるフィラメント像の配置傾向について説明するための概略図であり、スクリーンSCN上の点Nはx軸とスクリーンSCNとの交点を示している。
【0059】境界点Q1において投影されるフィラメント像5(Q1)は、点Nを通りz軸に平行に延びる鉛直線V−Vから左側に遠く離れたところに位置し、また、境界点Q2において投影されるフィラメント像5(Q2)は、鉛直線V−Vから右側に遠く離れたところに位置しており、境界点Q1やQ2がx軸に近いことから明らかなように、これらのフィラメント像はその投影面積が比較的大きい。
【0060】これに対して、境界点Q3において投影されるフィラメント像5(Q3)は鉛直線V−Vの左脇に位置し、また、境界点Q4において投影されるフィラメント像5(Q4)は鉛直線V−Vの右脇に位置しており、境界点Q3やQ4がx軸から遠い位置にあることから明らかなようにこれらのフィラメント像はその投影面積が比較的小さい。
【0061】このように、基準曲線4は、x軸寄りの領域ほど大きな拡散作用を有しており、基準曲線4のうちx軸から離れた領域が鉛直線V−V寄りに位置する範囲の光度分布の形成に寄与していることが分かる。
【0062】尚、上記の基準曲線4はあくまで一例に過ぎないものであって、本発明に係る基準曲線が図3に示す基準曲線4のみに限られる訳ではない。例えば、図9の基準曲線6に示すように、原点O寄りに位置する双曲的な曲線部6h1の右側(yの正方向)に楕円的な曲線部6e1が隣接し、そして、その右側に双曲的な曲線部6h2が隣接し、さらにその右側に楕円的な曲線部6e2が隣接して、最後に放物的な曲線部6p1に連続されるようなスプライン曲線を基準曲線として設定しても良い。尚、図9において、ベクトルv1は曲線部6h1と曲線部6e1との境界点Q1における反射光線の方向ベクトル、ベクトルv2は曲線部6e1と曲線部6h2との境界点Q2における反射光線の方向ベクトル、ベクトルv3は曲線部6h2と曲線部6e2との境界点Q3における反射光線の方向ベクトル、ベクトルv4は曲線部6e2と曲線部6p1との境界点Q4における反射光線の方向ベクトルをそれぞれ示しており、明らかに、ベクトルv1、v3が双曲的で、ベクトルv2、v4が楕円的である。そして、ベクトルv1乃至v4の各々が、x軸に対してなす角度は、基本的に各ベクトルがx軸から離れるにつれて次第に小さくなっていく傾向を有しており、この例では基準曲線6の端部に位置する放物的な曲線部6p1の端点Q5でのベクトルv5がx軸に対してなす角度ゼロ(つまり、ベクトルv5とx軸とが平行である。)へと漸近していく。
【0063】また、基準曲線4や6において、図10(a)に示すように、楕円的な曲線部7eと双曲的な曲線部7hとの間に放物的な曲線部7pを介在させたり、あるいは、図10(b)に示すように、双曲的な曲線部8hと楕円的な曲線部8eとの間に放物的な曲線部8pを介在させるようにすると、楕円的な曲線部と双曲的な曲線部との間で反射光線の狙い方向が大きく変化するような場合でも、両曲線部の間を放物的な曲線部で補間することにより円滑に連続させることができる。つまり、放物的な曲線部はその両脇の曲線部に対して中立的な立場をとるので、放物的な曲線部の介在により方向ベクトルの変化を緩和することができる。
【0064】そして、上記の説明では、光軸を含む水平面(x−y平面)に基準曲線4を設定したが、これに限らず、光軸を含む水平面に対してx軸回りに所定の角度をもって傾斜された面(平面又は曲面)上に上記のようなスプライン曲線を設定して、これを水平面に投射した曲線を基準曲線とすることができる。
【0065】即ち、図11に示すように、x−y平面に対してある角度(これを「θ」とする。)をもってx軸回りに回転された傾斜面IS上に、双曲的と楕円的及び/又は放物的な曲線部からなるスプライン曲線9を設定し、これをx−y平面上に投射して得られる曲線10を基準曲線として採用することができる。
【0066】以上のように、基準曲線は、基本的には楕円的な曲線部と双曲的な曲線部とが交互に又は放物的な曲線部が介在された状態で交互に繰り返えされることによってスプライン曲線として形成される。尚、基準曲線の末端に位置する曲線部が、図3や図9では放物的な曲線部となっているが、この曲線部が必ずしも放物的な曲線部に限らないことは勿論である。
【0067】図12乃至図15は、上記のように設定される基準曲線に基づいて基本面を形成する方法について説明するためのものである。
【0068】図12に示すように、基準曲線11上の点Qには、その位置での反射光線の方向ベクトルv_Qが一意に決定される。即ち、x軸上で上記焦点Fの前方又は後方に設定される基準点Dに点光源を置いたと仮定した時に該点光源から発した後点Qで反射した光は、方向ベクトルv_Qに方向に進行する。
【0069】図13は、点Qについて想定される仮想回転放物面PSを示すものである。仮想回転放物面PSは、基準点Dを焦点とし、ベクトルv_Qに平行な回転対称軸ASを有しており、点Qが面PS上に位置するように想定される曲面である。
【0070】今、図14に示すように、点Qを通りz軸に平行な仮想平面πによって、上記仮想回転放物面PSを切断したときの交線は、放物線12となる。このような放物線は基準曲線11上の任意の点Qについて一意に決定されるので、図15に示すように、基準曲線11に沿って点Qに放物線12を付与していくことによって該放物線12の集合体として曲面が形成され、これが基本面となる。即ち、基準曲線11に沿う仮想回転放物面の包絡面として基本面が得られることになる。尚、x軸上に設定される点Fの数が一つである必要はなく、また、反射面のうちx−y平面の上側の領域と下側の領域とで基準点Dを異なる位置に設定する等、各種の設定が可能である。
【0071】図16は基本面1によってその前方に充分離れたところに設置されたスクリーン上に投影されるフィラメント像の配置傾向を概略的に示すものであり、図中の「H−H」線はスクリーン上でy軸に対応する水平線、「V−V」線はスクリーン上でz軸に対応する鉛直線をそれぞれ示しており、点「HV」はH−H線とV−V線との交点を示している。
【0072】本例では基本面1がx−z平面に関して対称であることから明らかなように、フィラメント像がV−V線に関して対称的に配置され、これらは概ねH−H線の下側に位置されるとともに、投影面積の大きいフィラメント像ほどV−V線から離れたところに位置し、投影面積の小さなフィラメント像が点HVの近辺に位置されるという傾向をもっている。
【0073】つまり、基本面1においてx軸寄りの位置で投影されるフィラメント像13、13、・・・は、その投影面積が大きく、V−V線から遠いところに位置しており、また、基本面1においてx軸から稍離れた位置で投影されるフィラメント像14、14、・・・は、その投影面積が中程度であって、上記フィラメント像13、13、・・・に比してV−V線に近いところに位置している。そして、基本面1の周縁部、つまり、x軸から離れた位置で投影されるフィラメント像15、15、・・・は、その投影面積が小さく、点HVの近辺の比較的範囲の狭い領域に集まっている。
【0074】このような配置傾向は、上述したように基準曲線においてx軸に近い方向ベクトルほどx軸との間になす角度が大きいことに由来している。即ち、楕円的、双曲的な曲線部についての水平方向の拡散角は、基準曲線上をx軸から離れるにつれて次第に小さくなっていく傾向を有している。
【0075】このような拡散角の制御は、白熱電球のようにフィラメントの周囲を包むガラス球の形状の歪み等がフィラメント像の形状に影響を及ぼす場合に配光制御上有利である。
【0076】図17は白熱電球16の構造を概略的に示すものであり、そのガラス球17内には、フィラメント18が設けられており、該フィラメント18はその中心軸がx軸(光軸)方向に沿って配置されている。ガラス球17は、円筒状をしたガラス材を切り出してその端部を封止することによって形成されるため、ピンチシール部19の近辺における歪みを完全に除去することが困難である。よって、フィラメント18から発してガラス球17の円筒部17aを通過した後反射面20で反射される光21と、フィラメント18から発してガラス球17のうちピンチシール部19寄りの部分17bを通過した後反射面20で反射される光22とでは、フィラメント像の形成に与える影響が異なり、後者の場合にはピンチシール部19の近辺に生じる歪みによってフィラメント像に歪みが生じることになる。
【0077】つまり、この影響は、図17から分かるように、フィラメント18から発した光がピンチシール部19寄りの部分17bを通って、反射面20のうちx軸に近いところで反射されるため、投影面積の大きなフィラメント像に現れることになる。
【0078】よって、形状に歪みのあるフィラメント像に対しては、これらを水平方向に大きく拡散させることで、図16に破線23に示すような投影パターンを形成することが配光制御の上で好ましく、このためには、基準曲線において楕円的な曲線部と双曲的な曲線部を交互に繰り返すという操作が有効である。
【0079】これとは逆に、フィラメント18から発してガラス球17の円筒部17aを通過した後反射面20の周辺部寄りの位置で反射する光は、ガラス球17の歪みによる影響がほとんどないので、投影面積の小さなフィラメント像を、水平方向にそれほど拡散させることなく、図16に破線24内の範囲に示すように点HVの近くに集め、これらのフィラメント像が配光パターンにおける中心光度部の形成に寄与するように制御することが好ましい。よって、このためには、基準曲線における楕円的な曲線部や双曲的な曲線部の寄与を減らすためにそれらの拡散角を小さくしたり、あるいは放物的な曲線部の寄与を大きくすることが有効である。
【0080】以上のように、基本面1のうち光軸寄りの位置において投影される投影面積の大きなフィラメント像が、水平方向に大きく拡散されるので、これらのフィラメント像の集合である投影パターンは、その左右両端部の鉛直方向における幅が充分確保されることになる。
【0081】そして、基本面1のうち光軸から離れた位置において投影される投影面積の小さなフィラメント像が、点HVに近い部分の形成に寄与する。
【0082】尚、図16において、鉛直方向に沿ってV−V線上に位置するフィラメント像25、25、・・・は、基本面1とx−z平面との交線上の点によって投影される像を示しており、これらのフィラメント像は、その上端部寄りの部分が本来配光パターンにおける中心光度部の形成に寄与するものであるが、電球挿入孔である円孔2の形成によって欠落するため、配光パターンの形成には寄与しないことになる。
【0083】しかしながら、本発明に係る基本面によれば、投影面積の小さなフィラメント像15、15、・・・を、図16に破線24に示す範囲に集めることによって、フィラメント像25の欠落により生じる光度の不足を補うことができる。
【0084】尚、上記の基本面1に対しては、以下に示すような波状化の操作を加えることによって、光拡散の度合をさらに強めることが可能である。
【0085】先ず、パラメータX及びWを用いた正規分布型関数「Aten(X,W)=exp(−(2・X/W)^2)を用意する。ここで、関数「exp()」は指数関数、「^」は累乗を表しており、パラメータ「W」は減衰の度合を規定するものである。Y=Aten(X,W)の関数の形状を図18に示す。
【0086】次に、パラメータX及びλを用いた周期関数「WAVE(X,λ)=(1−cos(360°・X/λ))/2を用意する。尚、パラメータλは余弦波の波数、つまり、波の間隔を表わしており、Y=WAVE(X,λ)の関数の形状を図19に示す。この例では、周期関数WAVEとして余弦関数を用いているが、必要に応じて各種の周期関数を用いることができる。
【0087】今、上記パラメータWをW=λ・Tsとおき、関数Aten(X,W)と関数WAVE(X,λ)とを掛け合わせた関数をDamp(X,λ,Ts)と定義すると、図20に示すように、関数Y=Damp(X,λ,Ts)はX=0を中心としてその周辺にいくにつれて減衰する周期関数となる。
【0088】このような減衰周期関数の値を、基本面1の表現式又はデータ値に加え合わせることによって反射面に拡散作用をもたせることができ、これによって、光軸に近い部分による反射光を拡散させ、光軸から離れた周辺部による反射光を、配光パターンにおける中心光度部やその近辺部の形成に寄与するように制御することができる。
【0089】尚、このような面の波状化は、常に全面に対して行う必要はなく、面の一部分(例えば、光軸寄りの領域のみ)に対して行うことができる。
【0090】以上に説明した本発明に係る反射面の形成方法をまとめると下記のようになる。
【0091】(1)基準曲線を設定する面の選定及び光源体の設定。
【0092】光軸を含む水平面、つまりx−y平面に設定される曲線、又はx−y平面に対してx軸回りに所定の角度をもって傾斜された平面IS内に設定される曲線をx−y平面に投射した曲線を基準曲線として設定するに際して、光源体(フィラメント等)をその中心軸が光軸に沿って延び、かつ基準曲線の基準点Dの近傍に位置されるように設定する。
【0093】(2)基準曲線の形状設計。
【0094】光軸上に位置する焦点を有する双曲的な曲線部と楕円的な曲線部とを、光軸から離れる方向に沿って交互に繰り返して配置することによって基準曲線を構成するとともに、その際、光源体から発して基準曲線の各曲線部上の点における反射光線が光軸に対してなす角度が光軸寄りに位置する曲線部ほど大きくなるように基準曲線の形状を規定する。
【0095】(3)仮想回転放物面の設定。
【0096】光軸上に位置する基準曲線の基準点Dから発したと仮定した光が基準曲線上のある点Qで反射されたときの反射光の光線ベクトルv_Qに平行な軸を有し、該反射点Qを通り基準点Dを焦点とする仮想回転放物面PSを設定する。
【0097】(4)仮想平面の設定及び交線の算出。
【0098】即ち、(3)の光線ベクトルv_Qを含み鉛直軸に平行な仮想平面πで仮想回転放物面PSを切った時の交線を求める。
【0099】(5)交線集合としての包絡面の生成。
【0100】上記(3)及び(4)の操作を基準曲線上の任意の点Qで繰り返すことによって得られる交線の集合体として曲面を形成する。
【0101】(6)波状化。
【0102】反射面に対して正規分布型関数と周期関数の積からなる関数の加算演算によって、反射面の全面又は一部分を波立たせる。
【0103】尚、図1に示す基本面1はその正面形状が四角形状をしているが、本発明に係る反射面の基本面の正面形状は全く任意であり、円形又は丸味を帯びた形状等を適宜に設計することができる。
【0104】
【実施例】図21乃至図40は、本発明を自動車用前照灯の反射鏡に適用した実施の一例を示すものであり、正面形状が横長の四角形状をした反射鏡の反射面に上記の基本面1を適用したものである。
【0105】図21は、反射鏡26の反射面26aの正面図であり、紙面に対して垂直に延びる光軸をx軸(手前側を正の向きとする。)とし、これに直交する水平軸をy軸(図の右方を正の向きとする。)とし、鉛直軸をz軸(図の上方を正の向きとする。)とする直交座標系が設定されており、3軸の交点Oが原点とされている。
【0106】反射面26aには、正面から見て原点Oを中心とする円孔27が電球挿入用孔として形成されており、該円孔27を通して光源体であるフィラメントが反射鏡26内に配置されるようになっている。
【0107】そして、該反射面26aは、x−z平面及びx−y平面、そして、x−y平面に対してx軸に関して反時計回り方向に角度θ1をもって傾斜された半平面(これを「PL1」とする。)、x−y平面に対してx軸に関して時計回り方向に角度θ2(<θ1)をもって傾斜された半平面(これを「PL2」とする。)とによって6つの領域28(i)(i=1乃至6)に区分されている。
【0108】領域28(1)は正面から見てy−z平面の第1象限(y>0、z>0)に位置し、領域28(2)は正面から見てy−z平面の第2象限(y<0、z>0)に位置している。
【0109】そして、領域28(3)、28(4)は正面から見てy−z平面の第3象限(y<0、z<0)に位置しており、その一方28(3)が半平面PL1の上側に位置し、他方28(4)が半平面PL1の下側に位置している。
【0110】残りの領域28(5)、28(6)は正面から見てy−z平面の第4象限(y>0、z<0)に位置しており、その一方28(5)が半平面PL2の下側に位置し、他方28(6)が半平面PL2の上側に位置している。
【0111】図22は反射面26aをx−y平面で切断した場合の交線の形状を示すものである。
【0112】この例では、x−y平面に設定される基準曲線29がx−z平面に関して対称性を有する形状とはなっていないが、x軸から離れるにつれて楕円的な曲線部と双曲的な曲線部とが交互に繰り返しによって構成されるという点では共通性を有している。
【0113】即ち、基準曲線29においてy>0側に位置する部分30は、原点O寄りに位置する楕円的な曲線部30e1からyの正方向に離れるにつれて双曲的な曲線部30h1、楕円的な曲線部30e2、双曲的な曲線部30h2、楕円的な曲線部30e3、双曲的な曲線部30h3がこの順序で連続されたスプライン曲線とされている。
【0114】尚、y軸上の座標値「yi」(i=1乃至6)は、各曲線部の境界点等のy座標値を示しており、y1が曲線部30e1と30h1との境界点のy座標値、y2が曲線部30h1と30e2との境界点のy座標値、y3が曲線部30e2と30h2との境界点のy座標値、y4が曲線部30h2と30e3との境界点のy座標値、y5が曲線部30e3と30h3との境界点のy座標値、y6が曲線部30h3の端点のy座標値、をそれぞれ示しており、y0=0である。
【0115】また、原点Oでの方向ベクトルv0が、放物的であってx軸の正方向を向いており、曲線部30e1と30h1との境界点での方向ベクトルv1が楕円的、曲線部30h1と30e2との境界点での方向ベクトルv2が双曲的、曲線部30e2と30h2との境界点での方向ベクトルv3が楕円的、曲線部30h2と30e3との境界点での方向ベクトルv4が双曲的、曲線部30e3と30h3との境界点での方向ベクトルv5が楕円的、曲線部30h3の端点での方向ベクトルv6が双曲的である。
【0116】他方、基準曲線29においてy<0側に位置する部分31は、原点O寄りに位置する楕円的な曲線部31e1からyの正方向に離れるにつれて双曲的な曲線部31h1、楕円的な曲線部31e2、双曲的な曲線部31h2、楕円的な曲線部31e3、双曲的な曲線部31h3がこの順序で連続されたスプライン曲線とされている。
【0117】尚、y軸上の座標値「−yi」(i=1乃至6)は、上記の座標値「yi」に負符号を負したものであり、各曲線部の境界点等のy座標を示している。また、曲線部31e1と31h1との境界点での方向ベクトルu1が楕円的、曲線部31h1と31e2との境界点での方向ベクトルu2が双曲的、曲線部31e2と31h2との境界点での方向ベクトルu3が楕円的、曲線部31h2と31e3との境界点での方向ベクトルu4が双曲的、曲線部31e3と31h3との境界点での方向ベクトルu5が楕円的、曲線部31h3の端点での方向ベクトルu6が双曲的である。
【0118】図23は、反射面に対するフィラメントの位置関係を示すものである。尚、本実施例では、中心軸が反射鏡26の光軸に沿って延びる2つのフィラメントを有する白熱電球(所謂H4バルブ)を光源として用いている。
【0119】図示するように、光源体であるフィラメントMB、SBは、その投影像に係る光線追跡の便宜上円柱状をなすものと仮定されており、x軸上又はx軸に接するように位置されている。
【0120】即ち、原点Oに近い方のフィラメントMBは、自動車用配光における走行ビームの形成に関与し、その中心軸がx軸に一致するように設定されている。尚、焦点F′は反射面26aのうちx−y平面の上側(z>0)の領域28(1)、28(2)の水平基準曲線の設定に係る焦点であり、点F′はフィラメントMBの前端面とx軸との交点に一致するように選ばれている。また、焦点F′′は反射面26aのうちx−y平面の下側(z<0)の領域28(3)乃至28(6)の水平基準曲線の設定に係る焦点であり、点F′′は上記点F′よりやや原点O側に寄った位置に設定されている。
【0121】上記フィラメントMBの前方(x軸の正方向)に稍離れて位置するフィラメントSBは、自動車用配光におけるすれ違いビームの形成に関与し、その中心軸がx軸に対して平行であってx軸に上側から接している。尚、図中の基準点Dは、フィラメントSBの前端面と後端面がそれぞれx軸に接する点同士を結ぶ線分の中点に設定されている。
【0122】フィラメントSBの下方にはほぼ舟型をしたシェードSDが配置されており、図24に示すように、その上縁部が水平面に対して稍傾斜された状態で電球のガラス球内の図示しない支持部材に固定されている。このシェードSDは、すれ違いビームの照射時において、フィラメントSBから領域28(4)、28(5)に向かう光の全部及びフィラメントSBから領域28(3)、28(6)に向かう光の一部を遮蔽するために設けられている。
【0123】図25乃至図29及び図31乃至図37は、各反射領域によって反射面26aの前方に配置されたスクリーン上に投影されるフィラメント像の配置傾向について説明するための図であり、これらの図において、「H−H」線はスクリーン上でy軸に対応する水平線、「V−V」線はスクリーン上でz軸に対応する鉛直線をそれぞれ示しており、点「HV」はH−H線とV−V線との交点を示している。
【0124】尚、図示したフィラメント像は、y=yi又はy=−yi(i=1乃至6)、y=y0の平面と反射面26aと交線上に選ばれた幾つかの代表点によって投影される像を例示したものである。
【0125】図25乃至図29は、すれ違いビームの照射時におけるフィラメント像の配置例を示すものである。
【0126】図25は領域28(1)によって投影されるフィラメント像の配置傾向を示すものであり、H−H線のほぼ下側に位置するフィラメント像32(yi)(i=1乃至6)は、y=yi(i=1乃至6)の平面と領域28(1)の曲面との交線上で選ばれた幾つかの代表点によってそれぞれ投影されるフィラメント像を示している。
【0127】図示するように、フィラメント像32(y1)、32(y3)、32(y5)がV−V線の右側に位置しており、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0128】また、フィラメント像32(y2)、32(y4)、32(y6)がV−V線の左側に位置し、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0129】このような配置傾向は、上述したように、基準曲線においてx軸寄りに位置する方向ベクトルほどx軸に対してなす角度が大きくされているためである。
【0130】尚、V−V線上に位置するフィラメント像32(y0)は、領域28(1)と28(2)との境界線(y=y0(=0)の平面と反射面26aとの交線のうちz>0側の部分)上に位置する点による投影像である。
【0131】図26は領域28(2)によって投影されるフィラメント像の配置傾向を示すものであり、H−H線のほぼ下側に位置するフィラメント像33(yi)(i=1乃至6)は、y=yi(i=1乃至6)の平面と領域28(2)の曲面との交線上で選ばれた幾つかの代表点によってそれぞれ投影されるフィラメント像を示しており、その配置傾向は、上記のフィラメント像32(yi)の場合とV−V線に関して反対となる。
【0132】即ち、フィラメント像33(y1)、33(y3)、33(y5)がV−V線の左側に位置しており、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0133】また、フィラメント像33(y2)、33(y4)、33(y6)がV−V線の右側に位置し、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0134】図27は領域28(3)によって投影されるフィラメント像の配置傾向を示すものであり、H−H線の近傍又はH−H線の稍上方に位置するフィラメント像34(yi)(i=1乃至6)は、y=yi(i=1乃至6)の平面と領域28(3)の曲面との交線上で選ばれた幾つかの代表点によってそれぞれ投影されるフィラメント像を示している。
【0135】フィラメント像34(y1)、34(y3)、34(y5)はV−V線の左側に位置し、点HVに関してほぼ放射状に配置されており、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0136】また、フィラメント像34(y2)、34(y4)、34(y6)はV−V線の右側であって点HVの右下に位置する比較的狭い範囲内に集まっており、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0137】尚、同図において斜線を付した範囲はすれ違いビーム用のフィラメントSBによる光がシェードSDによって遮られることによってマスクされる範囲である。
【0138】図28は領域28(6)によって投影されるフィラメント像の配置傾向を示すものであり、H−H線の近傍又はH−H線の稍上方に位置するフィラメント像35(yi)(i=1乃至6)は、y=yi(i=1乃至6)の平面と領域28(6)の曲面との交線上で選ばれた幾つかの代表点によってそれぞれ投影されるフィラメント像を示している。
【0139】フィラメント像35(y1)、35(y3)、35(y5)はV−V線の右側に位置し、点HVに関してほぼ放射状に配置されており、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0140】また、フィラメント像35(y2)、35(y4)、35(y6)はV−V線の左側であって点HVの左下に位置する比較的狭い範囲内に集まっており、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0141】尚、同図において斜線を付した範囲はすれ違いビーム用のフィラメントSBによる光がシェードによって遮られることによってマスクされる範囲である。
【0142】図29は以上のような配置傾向をもったフィラメント像の集合として得られる投影パターン36を概略的に示すものである。
【0143】ほぼハート形をした投影パターン36は、その上縁部がH−H線の上方に張り出しており、図に斜線で示す範囲がシェードSDによって遮られる。
【0144】図示するように、投影面積の小さなフィラメント像ほど、点HV寄りに位置されていることが分かる。
【0145】図30は反射面26aに対して上述した波状化の操作を加えることによって形成される投影パターン37を概略的に示すものである。
【0146】本実施例では、反射面26aのうちx軸寄りの範囲だけに減衰周期関数による波状化を施しており、これによって、投影パターン37は上記投影パターン36に比して水平方向により拡散されるとともに、カットラインの形成に係る範囲が拡大している。尚、H−H線に対して傾斜された傾斜カットラインやH−H線に平行な水平カットラインは、図に斜線で示す範囲がシェードSDによってマスクされることによって形成される。
【0147】図31乃至図37は、走行ビームの照射時におけるフィラメント像の配置例を示すものである。
【0148】図31は領域28(1)によって投影されるフィラメント像の配置傾向を示すものであり、H−H線上又はH−H線の上側に位置するフィラメント像38(yi)(i=1乃至6)は、y=yi(i=1乃至6)の平面と領域28(1)の曲面との交線上で選ばれた幾つかの代表点によってそれぞれ投影されるフィラメント像を示している。
【0149】図示するように、フィラメント像38(y1)、38(y3)、38(y5)がV−V線の右側に位置しており、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0150】また、フィラメント像38(y2)、38(y4)、38(y6)がV−V線の左側に位置し、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0151】尚、V−V線上に位置するフィラメント像38(y0)は、領域28(1)と28(2)との境界線(y=y0(=0)の平面と反射面26aとの交線のうちz>0側の部分)上に位置する点による投影像である。
【0152】図32は領域28(2)によって投影されるフィラメント像の配置傾向を示すものであり、H−H線上又はH−H線の上側に位置するフィラメント像39(yi)(i=1乃至6)は、y=yi(i=1乃至6)の平面と領域28(2)の曲面との交線上で選ばれた幾つかの代表点によってそれぞれ投影されるフィラメント像を示しており、その配置傾向は、上記のフィラメント像38(yi)の場合とV−V線に関して反対となる。
【0153】即ち、フィラメント像39(y1)、39(y3)、39(y5)がV−V線の左側に位置しており、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0154】また、フィラメント像39(y2)、39(y4)、39(y6)がV−V線の右側に位置し、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0155】図33は領域28(3)によって投影されるフィラメント像の配置傾向を示すものであり、H−H線上又はH−H線の近傍に位置するフィラメント像40(yi)(i=1乃至6)は、y=yi(i=1乃至6)の平面と領域28(3)の曲面との交線上で選ばれた幾つかの代表点によってそれぞれ投影されるフィラメント像を示している。
【0156】フィラメント像40(y1)、40(y3)はV−V線の左側に位置し、点HVに関して放射状に配置されており、フィラメント像40(y3)の方がフィラメント像40(y1)より点HV寄りに位置している。また、フィラメント像40(y5)は点HVの近傍に位置している。
【0157】そして、フィラメント像40(y2)、40(y4)、40(y6)はV−V線の右側であってH−H線上又はH−H線の下方に位置し、y座標値が大きいものほどV−V線寄りに位置している。
【0158】図34は領域28(4)によって投影されるフィラメント像の配置傾向を示すものであり、H−H線のほぼ下側に位置するフィラメント像41(yi)(i=1乃至6)は、y=yi(i=1乃至6)の平面と領域28(4)の曲面との交線上で選ばれた幾つかの代表点によってそれぞれ投影されるフィラメント像を示している。
【0159】図示するように、フィラメント像41(y1)、41(y3)がV−V線の左側に位置しており、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置し、フィラメント像41(y5)が点HVの近傍に位置している。
【0160】また、フィラメント像41(y2)、41(y4)、41(y6)がV−V線の右側においてH−H線に下方から近接して配置されており、y座標値が大きいものほどV−V線寄りに位置している。
【0161】尚、V−V線上に位置するフィラメント像41(y0)は、領域28(3)と28(4)との境界線(y=y0(=0)の平面と反射面26aとの交線のうちz<0側の部分)上の点による投影像である。
【0162】図35は領域28(5)によって投影されるフィラメント像の配置傾向を示すものであり、ほぼH−H線上に位置するフィラメント像42(yi)(i=1乃至6)は、y=yi(i=1乃至6)の平面と領域28(5)の曲面との交線上で選ばれた幾つかの代表点によってそれぞれ投影されるフィラメント像を示しており、その配置傾向は、上記のフィラメント像41(yi)の場合とV−V線に関して反対となる。
【0163】即ち、フィラメント像42(y1)、42(y3)がV−V線の右側に位置しており、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置し、フィラメント像42(y5)が点HVの近傍に位置している。
【0164】また、フィラメント像42(y2)、42(y4)、42(y6)がV−V線の左側においてほぼH−H線上に位置されており、y座標値が大きいものほどV−V線寄りに位置している。
【0165】図36は領域28(6)によって投影されるフィラメント像の配置傾向を示すものであり、H−H線上又はH−H線の近傍に位置するフィラメント像43(yi)(i=1乃至6)は、y=yi(i=1乃至6)の平面と領域28(6)の曲面との交線上で選ばれた幾つかの代表点によってそれぞれ投影されるフィラメント像を示している。
【0166】フィラメント像43(y1)、43(y3)、43(y5)はV−V線の直ぐ右側のほぼH−H線上に位置しており、y座標値が大きいものほどV−V線に近いところに位置している。
【0167】また、フィラメント像43(y2)、43(y4)、43(y6)は、V−V線の左側においてH−H線に近接して配置されており、y座標値が大きいものほどV−V線寄りに位置している。
【0168】図37は以上のような配置傾向をもったフィラメント像の集合として得られる投影パターン44を概略的に示すものであり、該投影パターン44は点HVを中心とするやや横長の楕円状をしている。
【0169】図38は反射面26aに上述した波状化の操作を加えることによって形成される投影パターン45を概略的に示すものである。
【0170】投影パターン45は、上記の投影パターン44を原形とし、反射面26aのうちx軸寄りの範囲だけに減衰周期関数による波状化を施した結果得られるものであり、上記投影パターン44を水平方向に大きく拡散させたパターンとなっている。
【0171】灯具の配光パターンは、反射面26aによる投影パターンに対する前面レンズの作用を通して最終的に得られることになるが、本発明に係る反射鏡によれば、反射面26aの作用によって所定の配光規格を充分満たすパターンを得ることができるので、素通し又はほとんど素通しに近い状態の前面レンズを用いることができる。
【0172】図39及び図40は、配光パターンを概略的に示すものであり、図39がすれ違いビームに係る配光パターン46を示し、図40が走行ビームに係る配光パターン47を示している。尚、図39における破線は、図41乃至図43に示す反射面aや図45乃至図47に示す反射面jを用いた場合の配光パターンの下縁を比較例として示すものであり、配光パターンの鉛直方向の幅がV−V線から離れるにつれて急速に狭くなっていくのに対して、本発明に係る配光パターン46では、鉛直方向の幅が充分に確保されているのが分かる。
【0173】
【発明の効果】以上に記載したところから明らかなように、請求項1や請求項4に係る発明によれば、基準曲線を双曲的な曲線部と楕円的な曲線部との繰り返しによって形成することによって、反射面の中心寄りの部分によって得られる投影面積の大きなフィラメント像を大きく水平方向に拡散させ、鉛直方向に充分な幅をもって光を水平方向に拡散させることができ、また、反射面の周縁寄りの部分によって得られる投影面積の小さなフィラメント像を配光パターンにおける中心光度部に集めることができるので、配光規格上必要な中心光度を確保することができる。よって、配光パターンにおける水平方向の端部寄りの部分が先細りとなり周辺部における視認性が低下したり、あるいは、水平方向への拡散光を得ようとするあまり中心光度部に必要な光が不足してしまうといった不都合を解消することができる。
【0174】また、請求項2に係る発明によれば、基準曲線のうち双曲的な曲線部と楕円的な曲線部との間に放物的な曲線部を介在させたり、双曲的な曲線部若しくは楕円的な曲線部を反射面の周縁部で放物的な曲線部へと連続させることによって、基準曲線を構成する各曲線部を円滑に接続させることができる。
【0175】そして、請求項3や請求項5に係る発明によれば、正規分布型関数と周期関数の積からなる関数に基づいて反射面の全面又は一部分を波状に形成して、水平方向にさらに大きく拡散された光を得ることによって、反射鏡の前面レンズによる拡散作用への依存度を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2乃至図21とともに本発明に係る反射面の形成方法について説明するための図であり、本図は反射面の正面図である。
【図2】縦断面図である。
【図3】水平断面図である。
【図4】反射光線の方向ベクトルについての説明図である。
【図5】図6及び図7とともに基準曲線を構成する曲線部について説明するための図であり、本図は「双曲的」な曲線部を示す。
【図6】「楕円的」な曲線部を示す説明図である。
【図7】「放物的」な曲線部を示す説明図である。
【図8】図3の基準曲線上の境界点によって、その前方に充分の距離をおいて配置されたスクリーン上に投影されるフィラメント像の配置傾向について説明するための概略図である。
【図9】図3とは別の基準曲線を示す水平断面図である。
【図10】「双曲的」な曲線部と「楕円的」な曲線部との間に「放物的」な曲線部を介在させることによって両曲線部を円滑に接続させる方法について説明するための図であり、(a)はx軸寄りに位置する「楕円的」な曲線部に「放物的」な曲線部を隣接させた後これに「双曲的」な曲線部を接続させた例、(b)はx軸寄りに位置する「双曲的」な曲線部に「放物的」な曲線部を隣接させた後これに「楕円的」な曲線部を接続させた例をそれぞれ示す。
【図11】光軸を含む水平面に対して光軸回りに所定の角度をもって傾斜された平面上に設定される曲線を、光軸を含む水平面上に投射することによって基準曲線を設定する方法の説明図である。
【図12】図13乃至図15とともに曲面の形成方法について説明するための図であり、本図は基準曲線及びその上の任意の点Qと当該点での反射光線の方向ベクトルを示すものである。
【図13】基準曲線上の点Qに対する仮想的な回転放物面を示す図である。
【図14】基準曲線上の点Qでの反射光線の方向ベクトルを含みz軸に平行な仮想平面と仮想的な回転放物面との交線を示す図である。
【図15】図14の交線の集合として得られる曲面を示す図である。
【図16】反射面の基本面によってその前方に充分離れたところに設置されたスクリーン上に投影されるフィラメント像の配置傾向を概略的に示す図である。
【図17】白熱電球の構造とフィラメント像の歪みとの関係についての説明図である。
【図18】正規分布型関数の一例を示すグラフ図である。
【図19】周期関数の一例を示すグラフ図である。
【図20】減衰周期関数の一例を示すグラフ図である。
【図21】図22乃至図40とともに本発明に係る反射鏡の実施の一例を示すもので、本図は反射面の正面図である。
【図22】水平断面図である。
【図23】フィラメント及びシェードの配置と焦点や基準点の設定位置との関係を示す斜視図である。
【図24】すれ違いビーム用フィラメントに対するシェードの位置関係を示す正面図である。
【図25】図26乃至図29とともにすれ違いビームの照射時において反射面の各領域による投影パターンを概略的に示す図であり、本図は領域28(1)によるフィラメント像の配置傾向及び投影パターンを示すものである。
【図26】領域28(2)によるフィラメント像の配置傾向及び投影パターンを示す図である。
【図27】領域28(3)によるフィラメント像の配置傾向及び投影パターンを示す図である。
【図28】領域28(6)によるフィラメント像の配置傾向及び投影パターンを示す図である。
【図29】領域28(1)乃至28(3)及び28(6)による合成された投影パターンを示す図である。
【図30】反射面の基本面に対する減衰周期関数の加算演算によって得られる反射面による投影パターンを概略的に示す図である。
【図31】図32乃至図37とともに走行ビームの照射時において反射面の各領域による投影パターンを概略的に示す図であり、本図は領域28(1)によるフィラメント像の配置傾向及び投影パターンを示すものである。
【図32】領域28(2)によるフィラメント像の配置傾向及び投影パターンを示す図である。
【図33】領域28(3)によるフィラメント像の配置傾向及び投影パターンを示す図である。
【図34】領域28(4)によるフィラメント像の配置傾向及び投影パターンを示す図である。
【図35】領域28(5)によるフィラメント像の配置傾向及び投影パターンを示す図である。
【図36】領域28(6)によるフィラメント像の配置傾向及び投影パターンを示す図である。
【図37】領域28(1)乃至28(6)による合成された投影パターンを示す図である。
【図38】反射面の基本面に対する減衰周期関数の加算演算によって得られる反射面による投影パターンを概略的に示す図である。
【図39】すれ違いビームの照射時における配光分布を概略的に示す図である。
【図40】走行ビームの照射時における配光分布を概略的に示す図である。
【図41】図42乃至図44とともに、光軸を含む水平面内に楕円状の基準曲線を設定して曲面を形成した例を示す図であり、本図は縦断面図である。
【図42】正面図である。
【図43】水平断面図である。
【図44】反射面の前方に投影されるフィラメント像の配置傾向を概略的に示す図である。
【図45】図46乃至図48とともに、光軸を含む水平面内に双曲線状の基準曲線を設定して曲面を形成した例を示す図であり、本図は縦断面図である。
【図46】正面図である。
【図47】水平断面図である。
【図48】反射面の前方に投影されるフィラメント像の配置傾向を概略的に示す図である。
【符号の説明】
2 円孔(挿入用孔)
4 基準曲線
4h、4h1、4h2 双曲的な曲線部
4e、4e1、4e2 楕円的な曲線部
4p、4p1 放物的な曲線部
6h1、6h2 双曲的な曲線部
6e1、6e2 楕円的な曲線部
6p1 放物的な曲線部
7h、8h 双曲的な曲線部
7e、8e 楕円的な曲線部
7p、8p 放物的な曲線部
10 基準曲線
11 基準曲線
12 交線
18 フィラメント(光源体)
26 車輌用灯具の反射鏡
26a 反射面
30h1、30h2、30h3 双曲的な曲線部
30e1、30e2、30e3 楕円的な曲線部
31h1、31h2、31h3 双曲的な曲線部
31e1、31e2、31e3 楕円的な曲線部
c フィラメント(光源体)
x 光軸
F 焦点
D 基準点
v_Q 光線ベクトル
π 仮想平面
PS 仮想的な回転放物面
MB フィラメント(光源体)
SB フィラメント(光源体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 水平方向に光拡散されかつ所定の中心光度を必要とする配光分布を有する配光パターンを得ることができる車輌用灯具の反射鏡において、(イ)光軸を含む水平面に設定される曲線、又は光軸を含む水平面に対して光軸を回転軸として所定の角度をもって傾斜された面内に設定される曲線を光軸を含む水平面に投射した曲線を基準曲線とすること、(ロ)上記(イ)の基準曲線は、光軸上に焦点を有する双曲的な曲線部と楕円的な曲線部とが、光軸から離れる方向に交互に繰り返されることによって複合曲線として形成されていること、(ハ)反射面のほぼ中央部に光源体の挿入用孔が形成され、該挿入用孔を通して反射鏡内に挿入される光源体は、その中心軸が光軸に沿って延びており、基準曲線の焦点の前方又は後方に設定される基準点の近傍に位置されること、(ニ)基準曲線の各曲線部上の点における反射光線が光軸に対してなす角度が光軸寄りに位置する曲線部ほど大きくされていること、(ホ)光軸上に位置する基準曲線の基準点から発したと仮定した光が基準曲線上の任意の点で反射されたときの反射光の光線ベクトルに平行な軸を有し、該反射点を通り基準点を焦点とする仮想的な回転放物面を、上記光線ベクトルを含み鉛直軸に平行な仮想平面で切った交線の集合体として反射面が形成されること、を特徴とする車輌用灯具の反射鏡。
【請求項2】 請求項1に記載の車輌用灯具の反射鏡において、基準曲線のうち双曲的な曲線部と楕円的な曲線部との間に放物的な曲線部が介在され及び/又は双曲的な曲線部若しくは楕円的な曲線部が反射面の周縁部で放物的な曲線部へと連続されていることを特徴とする車輌用灯具の反射鏡。
【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の車輌用灯具の反射鏡において、反射面に対して正規分布型関数と周期関数の積からなる関数に基づく加算演算を施すことによって、反射面の全面又は一部分を波状に形成したことを特徴とする車輌用灯具の反射鏡。
【請求項4】 水平方向に光拡散されかつ所定の中心光度を必要とする配光分布を有する配光パターンを得ることができる車輌用灯具の反射鏡の形成方法において、(イ)光軸を含む水平面に設定される曲線、又は光軸を含む水平面に対して光軸を回転軸として所定の角度をもって傾斜された面内に設定される曲線を光軸を含む水平面に投射した曲線を基準曲線として設定するに際して、先ず、光源体をその中心軸が光軸に沿って延び基準曲線の基準点の近傍に位置されるように設定し、(ロ)光軸上に焦点を有する双曲的な曲線部と楕円的な曲線部とを、光軸から離れる方向に沿って交互に繰り返して配置させることによって基準曲線を構成するとともに、その際、光源体から発して基準曲線の各曲線部上の点で反射した光線が光軸に対してなす角度が光軸寄りに位置する曲線部ほど大きくなるように基準曲線の形状を規定し、(ハ)光軸上に位置する基準曲線の基準点から発したと仮定した光が基準曲線上のある点で反射されたときの反射光の光線ベクトルに平行な軸を有し、該反射点を通り基準点を焦点とする仮想的な回転放物面を設定し、(ニ)(ハ)の光線ベクトルを含み鉛直軸に平行な仮想平面で仮想的な回転放物面を切った時の交線を求め、(ホ)上記(ハ)及び(ニ)の操作を基準曲線上の任意の点で繰り返すことによって得られる交線の集合体として反射面を形成するようにしたことを特徴とする車輌用灯具の反射鏡の形成方法。
【請求項5】 請求項4に記載の車輌用灯具の反射鏡の形成方法において、反射面に対して正規分布型関数と周期関数の積からなる関数に基づく加算演算を施すことによって反射面の全面又は一部分を波状化させるようにしたことを特徴とする車輌用灯具の反射鏡の形成方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図24】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図31】
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【図30】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図43】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【特許番号】特許第3136465号(P3136465)
【登録日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【発行日】平成13年2月19日(2001.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−252041
【出願日】平成7年9月6日(1995.9.6)
【公開番号】特開平9−82106
【公開日】平成9年3月28日(1997.3.28)
【審査請求日】平成11年3月16日(1999.3.16)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【参考文献】
【文献】特開 平4−248202(JP,A)
【文献】特開 平1−255102(JP,A)
【文献】特開 平2−148601(JP,A)