説明

車輌用灯具の部品

【課題】 曲げ強度、耐衝撃性及び耐振動性の向上を図る。
【解決手段】 ポリプロピレンと有機溶剤抽出成分量が1重量%未満のジュート又はケナフとを含み、ポリプロピレンの含有率が60〜95重量%であり、ジュート又はケナフの含有率が5〜40重量%であるようにした。
これにより車輌用灯具の部品として十分な曲げ強度、耐衝撃性及び耐振動性が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用灯具の部品に関する。詳しくは、ポリプロピレンにジュート又はケナフを含有した合成樹脂を用いて曲げ強度、耐衝撃性及び耐振動性の向上を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用灯具は、例えば、一方に開口されたランプボデイに開口を覆う透明なカバーが取り付けられて灯具外筐が形成され、灯具外筐の内部に光源が配置されることにより構成されている。
【0003】
このような車輌用灯具において、例えば、ランプボデイの材料として合成樹脂が用いられる。ランプボデイには一定以上の耐熱性等が必要であるため、ランプボデイの材料として、例えば、ポリプロピレン樹脂組成物が用いられているが、近年の化石資源の枯渇問題から、ポリ乳酸系樹脂や植物系天然繊維が含有された合成樹脂が用いられたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2008−88358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車輌用灯具は、走行される車輌に用いられるものであるため、走行時の振動や屋外での使用に耐え得るものでなければならず、一定以上の曲げ強度、耐衝撃性及び耐振動性が必要とされる。
【0006】
また、車輌用灯具は、万が一、車輌が衝突したときにおいても、衝撃を軽減できるような材料で形成されていることが望ましい。
【0007】
そこで、本発明車輌用灯具の部品は、曲げ強度、耐衝撃性及び耐振動性の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車輌用灯具の部品は、上記した課題を解決するために、ポリプロピレンと有機溶剤抽出成分量が1重量%未満のジュート又はケナフとを含み、前記ポリプロピレンの含有率が60〜95重量%であり、前記ジュート又は前記ケナフの含有率が5〜40重量%であるようにしたものである。
【0009】
従って、車輌用灯具の部品にあっては、高い剛性、耐衝撃性及び耐振動性が確保される。
【発明の効果】
【0010】
本発明車輌用灯具の部品は、ポリプロピレンと有機溶剤抽出成分量が1重量未満のジュート又はケナフとを含み、前記ポリプロピレンの含有率が60〜95重量%であり、前記ジュート又は前記ケナフの含有率が5〜40重量%であることを特徴とする。
【0011】
従って、曲げ強度及び耐衝撃性の向上を図ることができると共に耐振動性の向上を図ることができる。
【0012】
請求項2に記載した発明にあっては、曲げ弾性率が2000MPa以上であり、衝撃強度が3.5KJ/m以上であるので、曲げ強度及び耐衝撃性の一層の向上を図ることができる。
【0013】
請求項3に記載した発明にあっては、110°Cで24時間加熱したときのガラス平板に対するヘーズ値が10%以下であるので、レンズの曇りが発生し難い良好な車輌用灯具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明車輌用灯具の部品を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0015】
車輌用灯具の部品1は、車輌用灯具100、例えば、車輌用前照灯の部品として用いられる(図1参照)。車輌用灯具100は、例えば、一方に開口されたランプボデイ101に開口を覆う透明なカバー102が取り付けられて灯具外筐103が形成され、灯具外筐103の内部に光源104が配置されることにより構成されている。
【0016】
車輌用灯具の部品1は、例えば、ランプボデイ101である。
【0017】
車輌用灯具の部品はポリプロピレンとジュート又はケナフとを含む合成樹脂の射出成形によって形成されている。車輌用灯具の部品を形成する合成樹脂は、曲げ弾性率が2000MPa以上にされ、衝撃強度が3.5KJ/m以上にされている。
【0018】
以下に、車輌用灯具の部品として好適な合成樹脂について説明する(図2参照)。
上記したように、車輌用灯具の部品はポリプロピレンとジュート又はケナフとを含む合成樹脂によって形成されている。
【0019】
尚、車輌用灯具の部品(ランプボデイ)としてポリプロピレン等の樹脂材料にジュート又はケナフ等の繊維材料が含有されている場合には、繊維材料に含まれる油脂等によって、車輌用灯具の連続点灯試験においてフォギング(カバーの内面の曇り)が発生するおそれがある。
【0020】
そこで、車輌用灯具の部品において、ジュート又はケナフを含有して合成樹脂化する際に、フォギングの原因となるジュート又はケナフの繊維中に含まれる紡糸油や繊維を構成している低分子成分を予め溶媒洗浄処理や熱処理することにより、フォギングの発生を防止することが可能となる。また、ポリプロピレンとジュート又はケナフの繊維とをペレット化した段階において熱処理することにより、フォギングの発生の防止に対して一層効果的となる。
【0021】
車輌用灯具の部品として好適なポリプロピレンとジュート又はケナフとの含有率(重量%)を以下の測定によって求めた。
【0022】
測定においては、ポリプロピレンとジュート又はケナフとの含有率を変更した各合成樹脂に対して曲げ弾性試験、アイゾット衝撃試験、振動試験及びフォギング試験を行い、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度、耐振動性及び曇価を求めた。
【0023】
ジュートは有機溶剤抽出成分量(重量%)の異なる3種類(図2に示すジュート1、ジュート2、ジュート3)を用いた。
【0024】
ジュート1としてはジュートの紐(小泉製麻(株)社製)の2mm裁断物を用い、ジュート2としてはジュートのモラ(小泉製麻(株)社製)の2mm裁断物を用い、ジュート3としてはジュートの紐(小泉製麻(株)社製)の2mm裁断物を用いた。ケナフとしてはケナフのモラ(2mm裁断物)を用いた。
【0025】
測定に用いた合成樹脂としては、メルトフローレートが30であるブラックポリプロピレン(プライムポリマー(株)社製、商品名J707G)と紐又はモラ3kgをキシレン18リットルに一晩浸漬した後に乾燥させたジュートのキシレン洗浄品とを二軸押出機(日本製鋼所製TEX30)によって溶融混練して生成した複合樹脂組成物ペレットを用いた。
【0026】
実施例1〜11及び比較例12〜18におけるポリプロピレンの含有率と使用した植物繊維(ジュート又はケナフ)の種類や含有率とは図2に示す通りである。
【0027】
曲げ弾性試験は、試験片を両端支持梁の状態として配置し、試験片の中央に集中荷重を付与し、試験片が破壊又は規定の撓み状態に達するまで一定速度で撓ませ、集中荷重を付与している時間に付与される荷重の大きさを計測することにより行った(ASTM D 790−86に従う。)。
【0028】
アイゾット衝撃試験は、試験片を垂直な状態で保持して片持梁の状態とし、振り子を振り下ろして試験片に衝突させて衝撃強度を測定することにより行った(ASTM D 256−06に従う。)。
【0029】
振動試験は、ランプボデイが対象となる合成樹脂(ポリプロピレン+ジュート又はケナフ)によって形成された車輌用灯具を正規の取付面を有するテストスタンドに取り付け、振動試験器の台上にボルトによって固定して行った。このとき車輌用灯具を点灯し、振動数、振動加速度及び振幅を適宜変化させ、上下振動4時間、左右振動2時間、前後振動2時間の測定を行った。判定は目視により行った。
【0030】
フォギング試験は、上方に開口された容器(ビーカー)に試験片を収容し、容器を所定の温度に調節されたオイルバスに入れて24時間110°Cで加熱することにより行った。このとき容器の開口側に配置したガラス平板の曇価(ヘイズ値)を測定した。
【0031】
図2は、上記の各試験を実施例1〜11と比較例12〜18について行った測定結果を示す図である。図2中のポリプロピレン、ジュート、ケナフの数値は含有率(重量%)であり、「◎」、「○」、「×」は判定結果を示し、「◎」は「非常に好ましい」、「○」は「好ましい」、「×」は「使用不可(好ましくない)」である。また、振動試験については、目視により異常が認められなかった場合には「異常なし」として示し、目視により異常が認められた場合には「異常あり」として示した。
【0032】
上記の測定において、実施例1〜11は曲げ弾性試験、アイゾット衝撃試験、振動試験及びフォギング試験とも良好な結果が得られ、実施例3〜5については特に良好な結果が得られた。
【0033】
以上の結果により、ポリプロピレンに混合する材料としては、有機溶剤抽出成分量が1重量%未満であるジュート又はケナフが好ましく、特に、有機溶剤抽出成分量が0.1重量%以下であることが望ましい。この場合に、ポリプロピレンとジュートの含有率が60〜95重量%:5〜40重量%であることが好ましい結果となった。
【0034】
また、有機溶剤抽出成分量が0.01重量%のジュートを用いた場合に、ポリプロピレンとジュートの含有率が60〜80重量%:20〜40重量%であることがより好ましい結果となった。
【0035】
以上に記載した通り、車輌用灯具の部品は、ポリプロピレンと有機溶剤抽出成分量が1重量%未満のジュート又はケナフとを含み、ポリプロピレンの含有率が60〜95重量%であり、ジュート又はケナフの含有率が5〜40重量%である。
従って、曲げ強度及び耐衝撃性の向上を図ることができると共に耐振動性の向上を図ることができる。
【0036】
また、曲げ弾性率が2000MPa以上であり、衝撃強度が3.5KJ/m以上であるため、曲げ強度及び耐衝撃性の一層の向上を図ることができる。
【0037】
さらに、110°Cで24時間加熱したときのガラス平板に対するヘーズ値が10%以下であるため、レンズの曇りが発生し難い良好な車輌用灯具を提供することができる。
【0038】
上記した最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】車輌用灯具の部品が用いられる車輌用灯具の一例を示す概略断面図である。
【図2】車輌用灯具の部品として用いられる合成樹脂に対して行われた試験の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1…車輌用灯具の部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンと有機溶剤抽出成分量が1重量%未満のジュート又はケナフとを含み、
前記ポリプロピレンの含有率が60〜95重量%であり、
前記ジュート又は前記ケナフの含有率が5〜40重量%である
ことを特徴とする車輌用灯具の部品。
【請求項2】
曲げ弾性率が2000MPa以上であり、
衝撃強度が3.5KJ/m以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用灯具の部品。
【請求項3】
110°Cで24時間加熱したときのガラス平板に対するヘーズ値が10%以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌用灯具の部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−38588(P2012−38588A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177862(P2010−177862)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000104364)出光ライオンコンポジット株式会社 (23)
【Fターム(参考)】