説明

車輪推進システム

【課題】電気自動車又はハイブリッド車で利用することができる制御システム及び電力貯蔵システムを提供する。
【解決手段】交流(AC)トラクション駆動装置147と、直流(DC)リンクを介してトラクション駆動装置に対して電気的に結合された第1のエネルギー貯蔵システム140と、トラクション駆動装置に対して電気的に結合されてそれからの電圧出力が双方向ブーストコンバータ120を使用してDCリンクから結合解除されるようになった第2のエネルギー貯蔵システムと、ブーストコンバータの低電圧側から該ブーストコンバータの高電圧側に電流を導通させるように分極させる一方向電流装置150とを含む

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には車両駆動システムに関し、より具体的には、バッテリ駆動式電気自動車又はハイブリッド車に使用されるようなバッテリ電源式駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、バッテリ式電気自動車及びさらにハイブリッド車において使用される公知の交流(AC)電気駆動システムを示す。図示するように、バッテリとすることができるエネルギー貯蔵ユニットは、DC−ACトラクションインバータの直流(DC)リンクに対して電気的に接続される。
【0003】
図2は、ブーストコンバータの低電圧側に結合された第1のバッテリとブーストコンバータの高電圧側に結合された第2のバッテリとを含む公知のハイブリッド駆動システムを示す。運転時に、この構成は、高比エネルギーバッテリをエネルギー貯蔵ユニットとして使用することを可能にし、この場合低電圧側エネルギー貯蔵ユニットの電圧定格は一般的に、DC−ACトラクションインバータのDCリンクよりも低い。
【0004】
図3は、高比エネルギーバッテリと、ウルトラキャパシタと、 図3に示す構成で配置した場合においてウルトラキャパシタの電圧がバッテリの電圧よりも低い時に電流の流れを可能にするように分極させる(pole(一方向に導通させる))ダイオードとを含む公知のハイブリッド駆動システムを示す。図3の構成は、高いレベルの電力がバッテリから2チャネルブーストコンバータを介してDCリンクに送られることを可能にし、この場合各チャネル又はフェーズは、同一の最大電力定格を有する。
【0005】
上記のシステムは、様々な走行条件時において有効であるが、車両が典型的な市街地走行時に見られるように比較的低速で運転される時には、殆ど効果がない可能性がある。その結果、車両の性能又は燃料効率が低下するおそれがある。
【特許文献1】米国特許第5,589,743号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、車両推進システムを提供する。本推進システムは、交流(AC)トラクション駆動システムと、直流(DC)リンクを介してトラクション駆動システムに対して電気的に結合された第1のエネルギー貯蔵システムと、トラクション駆動システムに対して電気的に結合されてそれからの電圧出力が双方向ブーストコンバータを使用してDCリンクから結合解除されるようになった第2のエネルギー貯蔵システムと、車両が事前充電モード及びトラクション駆動システムが有効に機能する通常運転モードの少なくとも1つのモードで運転されている時に第1及び第2のエネルギー貯蔵システムを制御するように構成されたエネルギー管理システムとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書に記載しているのは、電気自動車又はハイブリッド車で利用することができる制御システム及び電力貯蔵システムである。本明細書で使用する場合のハイブリッド車とは、電気モータとヒートエンジン(熱機関)との組合せを利用して車両に推進力を提供する車両を意味する。さらに、本明細書で使用する場合に、電気自動車とは、モータと複数のバッテリとを含み、バッテリが車両を走行させる推進力の少なくとも一部分を提供する車両を意味する。
【0008】
本システムは、交流(AC)トラクション駆動装置と、直流(DC)リンクを介してトラクション駆動装置に対して電気的に結合された第1のエネルギー貯蔵システムと、トラクション駆動装置に対して電気的に結合されてそれからの電圧出力が双方向ブーストコンバータを使用してDCリンクから結合解除されるようになった第2のエネルギー貯蔵システムと、ブーストコンバータの低電圧側から該ブーストコンバータの高電圧側に電流を導通させるように分極させる一方向電流装置とを含む
具体的には、 図4は、例示的な車両推進システム100を示し、車両推進システム100は、負DCリンクとも呼ばれる第1のバス114に結合された入力又は負端子と、正DCバスとも呼ばれる第2のバス112に対して電気的に結合された出力又は正端子とを有する第2の貯蔵ユニット110を含む。この例示的な実施形態では、第2の貯蔵ユニット110は、それぞれ正及び負DCバス112及び114間に電気的に結合された高比エネルギーバッテリである。従って、高エネルギーバッテリ110とウルトラキャパシタ130との負端子は各々、ブーストコンバータ及びDC−ACインバータの負DCバス114に対して電気的に結合される。
【0009】
システム100はまた、エネルギー管理システム(EMS)120を含み、エネルギー管理システム(EMS)120は、第2の貯蔵ユニット110から得られる電圧を高めるブーストコンバータ回路(回路の詳細は図示せず)を含む。ブーストコンバータ回路は、第2のバス112を半導体スイッチング装置(図示せず)に結合するインダクタ(図示せず)を含むことができる。半導体スイッチング装置は、高電圧側DCリンクと呼ばれるEMS120の高電圧側124に結合している。DCリンク又は時にはインバータDCリンクという用語は、本明細書では114に対して正及び負DCバス124を指すために使用する。DCリンクの負部分は、高比エネルギーバッテリ110の負端子、第1の受動貯蔵装置140の負端子及びDC−ACインバータ144の負端子に対して電気的に結合される。より具体的には、EMS120は、第2の貯蔵ユニット110の電圧にほぼ等しい電圧を見る入力側122を有し、この電圧をEMS出力側124で見られる第1のより高い電圧に変換する。従って、ブーストコンバータ出力側124は、回路の高電圧側と呼ばれる。システム100はまた、電流センサ160及び電圧センサ162を含み、これらのセンサは、EMS120に送信するようにされ、EMS高電圧側124のそれぞれの電圧及びDCリンク負荷電流をモニタするためにEMS120によって利用される。システム100はまた、第2の高比エネルギーバッテリ110のそれぞれの電流をモニタする電流センサ164を含む。電流センサ164は、初期事前充電中、通常運転中、及びさらに任意選択的な車外バッテリ充電器(図示せず)使用中における電流を検知するように構成される。電流及び電圧センサ(EMS内部の)が、それぞれEMS低電圧側122及び高電圧側128におけるモニタを行う。
【0010】
システム100はまた、インダクタ(図示せず)を介してブーストコンバータの低電圧側の第2のチャネル128に接続された例えばウルトラキャパシタ130のような第2の受動貯蔵装置130を含む。例えばダイオードのような一方向導通装置132が、ブーストコンバータの高エネルギーバッテリ入力チャネルからウルトラキャパシタ130に電流を導通させるように分極させる。図示するように、受動貯蔵装置130、一方向導通装置132及びコンタクタ134は、第2のチャネルブーストコンバータの低電圧側128の正DCバス112及び負DCリンク114間に直列に結線される。本明細書で使用する場合のウルトラキャパシタとは、各々が500ファラドよりも大きいキャパシタンスを有する直列配置で接続された複数キャパシタセルから成るキャパシタを意味する。ウルトラキャパシタは、しばしば「二層」キャパシタ又はスーパキャパシタと呼ばれる。この例示的な実施形態では、ウルトラキャパシタ130は、直列に接続された63個のセルを有し、各セルは、約2.7Vの電圧定格とセル当たり1000ファラドよりも大きいキャパシタンス値を有する。
【0011】
システム100はまた、正DCリンク124及び負DCリンク114間にブーストコンバータ120と並列に結合された第1の受動貯蔵装置140を含む。具体的には、受動貯蔵装置140は、ブーストコンバータ120の高電圧側124と並列に結合される。この例示的な実施形態では、第1の貯蔵装置140は、ウルトラキャパシタである。
【0012】
システム100はまた、正DCリンク124及び負DCリンク114間で第1の貯蔵装置140と並列に結合された動的リターダシステム142と、インバータ144に結合されたトラクションモータ146とを含む。インバータ144とトラクションモータ146との組合せは、しばしばトラクション駆動システム147と呼ばれる。モータタコメータ149のようなACモータ速度検知装置が、モータの回転速度及び方向に比例した電気信号を提供する。この例示的な実施形態では、動的リターダシステム142は、高ワット損グリッドレジスタ、直列接続スイッチング装置及びフライバックダイオードを含むことができ、このフライバックダイオードは、DCリンク124に加わる有効抵抗を制御可能に変化させるようにスイッチング装置と逆並列に接続され、それによって、インバータ144を介して電力をリンク124に戻す回生モードでトラクションモータ146が作動している時に、リンク124上に発生するDC電圧を制限することができる。
【0013】
1つの実施形態では、インバータ144は、交流電流を供給するためのDC−ACインバータであり、トラクション駆動システム147は、ACモータ146を利用する。任意選択的に、インバータ144は、直流を提供するためのDCチョッパ又はパルス幅変調回路であり、トラクション駆動モータ146は、DCモータである。システム100はまた、本明細書では車両システム制御装置(VSC)148と呼ぶ制御システムを含み、この制御システムは、本明細書で後述することにする様々なモードでシステム100を作動させるように構成される。
【0014】
この例示的な実施形態では、システム100はまた、第2の貯蔵ユニット110からトラクションブーストコンバータ120の高電圧側124への電流の流れを可能にするように分極させる外部一方向電流装置150と、事前充電回路152と、少なくとも1つのDCコンタクタ154とを含む。この例示的な実施形態では、一方向電流装置150は、ダイオードである。使用中には、外部一方向電流装置150は、事前充電回路152からトラクションブーストコンバータ120の高電圧側124に電流を流して高電圧側ウルトラキャパシタ140をその初期推定放電状態から少なくとも部分的に事前充電するのを可能にし、またさらにブーストコンバータシステムの故障時における「のろのろ(Limp−home)」運転モード時にトラクション駆動システム147に電力を供給する。
【0015】
運転時に、高電圧側ウルトラキャパシタ140は、事前充電回路152を使用して、ブーストコンバータ120の低電圧側122に結合された高比エネルギーバッテリ110のほぼ公称電圧まで急速に事前充電される。この初期事前充電機能のためのエネルギーは、高比エネルギーバッテリ110によって供給され、これは、オペレータが例えば点火スイッチコマンドにより始動を開始している数秒の範囲内で車両が静止している間に完了することができる。ウルトラキャパシタ140の初期事前充電が完了した後に、DCコンタクタ154が励起されて、その関連する電力接点が電気的に閉じられる。この時点において、トラクション駆動システム147は、比較的低速度で車両を運転することができるように有効に機能することができる。高電圧側124の電圧への付加的な電圧増大は、車両が減速している間の回生制動時にトラクション駆動システム147により、及び/又はハイブリッド車用途における熱機関により得ることができる。
【0016】
通常運転モードにおいては、低電圧側ウルトラキャパシタ130は、高比エネルギーバッテリ110から供給される高電圧側からのエネルギーを使用して部分的に事前充電される。ブーストコンバータ120の低電圧側入力122、128の部分的事前充電の後に、DCコンタクタ134が閉じられて、ブーストコンバータ120を介してウルトラキャパシタ140の事前充電が続行される。使用中には、ウルトラキャパシタ130の最大電圧は、高比エネルギーバッテリ110の電圧の少なくとも約2倍であるが、ウルトラキャパシタ130の最大電圧は、高比エネルギーバッテリ110の電圧よりも約25倍大きくすることも可能である。さらに、通常運転時に、ウルトラキャパシタ130は、その最大電圧からその最大電圧の約50%まで低下するように作動して、その全貯蔵エネルギー(使用可能なエネルギー)の約75%を取り出される。ウルトラキャパシタ130の使用可能なエネルギーが消尽しかつオペレータが車両を運転するために付加的な電力を要求し続けている場合には、例えば高比エネルギーバッテリ110からトラクション駆動システム147への電圧を高める電力能力を約2倍にするような2フェーズブーストコンバータでは、ダイオード132が導通し、次にブーストコンバータ120が高度の有効モードで作動する。動的リターダ機能142及びその関連する制御装置は、ブーストコンバータ120の高電圧側に設けられる。
【0017】
図4に示す車両システム100と実質的に同様である車両システム101を示している。この実施形態では、車両システム101は、一方向導通装置132(図4に示す)を含まない。従って、この実施形態では、電流は、ダイオードを介してブーストコンバータの高エネルギーバッテリ入力チャネルからウルトラキャパシタ130に導通されない。さらに、システム101は、外部一方向電流装置150(図4に示す)を含まない。従って、この実施形態では、電流の流れは、エネルギー管理システム120の外部の装置によって、第1の貯蔵ユニット110からトラクションブーストコンバータ120の高電圧側124に分極させられることはない。
【0018】
図6は、EMS120(図4に示す)内にプログラムされた電力制御アルゴリズム200を示すフロー図である。この例示的な実施形態では、少なくとも4つの入力がEMS120に提供される。これらの入力は、電圧センサ162によって検知されたDCバス電圧と、電流センサ160によって検知されたDC負荷電流と、モータタコメータ149によって検知されかつ車両システム制御装置148内で処理されたトラクションモータ速度と、車両が前方方向に走行している時におけるモータリングモードつまり正のトルクで又は車両が前方方向に走行している間における回生モードつまり負のモータトルクでハイブリッド車駆動装置が作動している時を表示するモード信号とを少なくとも含む。上述したように、モータリングモード及び回生モードはまた、車両が後方方向に走行している時にも存在する。
【0019】
この例示的な実施形態では、アルゴリズム200は、全EMS電力コマンド220を生成するように組合された個別のサブル−チンを含む。第1のサブル−チン210は、DCバス電圧センサ162から入力を受け、この信号に基づいて高電圧側124(図4及び図5に示す)を変化するDCバス基準電圧166に向けて近づける比例積分コントローラ(PIコントローラ又はPIDコントローラ)を含む。第2のサブル−チン212は、センサ160から送信された電流信号を受信しかつフィルタ処理し、それをDCバス電圧検知信号と乗算した後に、トラクション駆動負荷電力を計算する。トラクション駆動負荷電力には、DCバス電圧162の値及び特定モードの運転信号164に基づいた調整可能なゲインが乗算される。第3のサブル−チン214は、過電圧保護のために使用する比例ゲインを生成する。変化するDCバス基準電圧166信号は、以下のように二次元参照用テーブル217を使用してサブル−チン210内で計算され、つまり、車両システム制御装置148から受けたトラクションモータ速度に対して低域フィルタ処理を行なった後に、プロセッサにより、参照用テーブル217への1つの入力である%モータ定格速度信号を表す信号を計算する。サブル−チン212の一部として計算したトラクション駆動負荷電力は、参照用テーブル217への第2の入力である。参照用テーブル217は、モータ及び駆動構成要素のシステム損失を最少にして特に低速軽トルク運転時における駆動システム効率を向上させる最適な方式で、モータトルク曲線群のモータ速度の関数として変化するDCバス基準電圧コマンド出力信号を提供するように構成される。サブル−チン210、212及び214からの出力は、次に合算216されかつ非対称リミッタ機能218を通過させて、EMS全電力コマンド220を生成し、この例示的な実施形態では、このEMS全電力コマンド220は、バス124(図5に示す)を介してトラクション駆動システム147に供給される電力を決定するコマンドである。運転中には、非対称リミッタ218は、モータリング運転に関連する正電力と比べて一層高レベルの負又は回生電力を可能にする。
【0020】
図7は、EMS120(図4に示す)内にプログラムされた別の電力制御アルゴリズム230を示しているフロー図である。この例示的な実施形態では、EMS全電力コマンド220は、低電圧側ウルトラキャパシタ130と比較的低電圧の高比エネルギーバッテリ110との間に分配される。電流センサ164によって検知されたバッテリDC電流は、EMS制御装置に入力され、高比エネルギーバッテリ110のアンペア時(AH)を計算するために使用される。アルゴリズム230は、瞬間バッテリアンペア時(AH)と低電圧側ウルトラキャパシタ130の電圧との関数である。使用中には、バッテリ110のAHが所定の閾値以上である場合には、アルゴリズム230は、第1のサブルーチン232を実行して、この第1のサブルーチン232では、電力のより高い部分がブーストコンバータのフェーズbによって制御されるウルトラキャパシタ130に分配される。より具体的には、電力対ブーストコンバータの検知フェーズb電圧の区分線形極限関数が、電力コマンドを制限するために使用される。この例示的な実施形態では、モードがモータリングであるか又は回生であるかに応じて、異なる電力極限関数が使用される。要求電力が制限されていないとすると、フェーズa電力コマンドとフェーズb電力コマンドとの合計は、EMS全電力コマンド220に等しくなる。
【0021】
任意選択的に、バッテリ110のAHが指定した閾値以下である場合には、アルゴリズム230は、第2のサブル−チン234を実行し、この第2のサブル−チン234では、電力のより高い部分がブーストコンバータのフェーズaによって制御されるバッテリ110に分配される。さらに、本明細書でエネルギー貯蔵充電コマンドと呼ぶ付加的信号236が、充電電力を増大させるために車両システムコントローラ(VSC)148に送信される。電力対ブーストコンバータの検知バッテリ電流及び計算アンペア時(AH)の区分線形極限関数が、電力コマンドを制限するために使用される。モードがモータリングであるか又は回生であるかに応じて、異なる電力極限関数が使用され、つまりモードがモータリングである場合には、制限は常にゼロである。要求電力が制限されていないとすると、フェーズa電力コマンドとフェーズb電力コマンドとの合計は、EMS全電力コマンド220に等しくなる。
【0022】
図4に示すシステム100と実質的に同様であるシステム300を示している。従って、図8における同様な構成要素を表すために、図4において構成要素を表すために使用した参照符号を使用することにする。この実施形態では、高電圧側ウルトラキャパシタ140の部分的事前充電は、図4に示すのと同じ方式で行われるが、低電圧側エネルギー貯蔵ユニットの事前充電装置及び制御装置は、単純化している。より具体的には、システム300は、コンタクタ134(図4に示す)は含むのではなく、高エネルギーバッテリ110の電圧レベルへの高電圧側の部分的事前充電は、 図4〜図7に示すEMS120を使用して達成される。
【0023】
使用時に、EMS120が有効に機能するようになり、EMS120内にプログラムされた関連する制御アルゴリズムは、局部フェーズaフィルタキャパシタ310を事前充電する。具体的には、EMS120は、適当なインダクタ312によってキャパシタ310及びその関連する電圧センサ313を高エネルギーバッテリ110の電圧レベルにほぼ等しいレベルまで事前充電する。この時点において、コンタクタ314は、関連する電気的コンタクタ316を介しての最小過渡電流で励起され、従って長寿命を達成する。さらに、高電圧側ウルトラキャパシタ140の所定の電圧値への事前充電が、高エネルギーバッテリ110からのエネルギーを使用して行われる。フェーズbフィルタキャパシタ330及びその関連する電圧センサ332は次に、適当なインダクタ315によって約9.95*Vclの範囲内の電圧レベルまで事前充電され、ここで、Vclとは、キャパシタ130において見られる電圧レベルである。次に、別のコンタクタ340が、関連する電気接点を介しての最小過渡電流で励起され、従って長寿命を達成する。この時点において、ウルトラキャパシタ130は、EMS120と高電圧側ウルトラキャパシタ140及び高エネルギーバッテリ110の組合せから供給されるエネルギーとを使用して、高電圧側バス124において見られる電圧レベルよりも低い所定の電圧レベルまで部分的に事前充電される。
【0024】
図4に示すシステム100と実質的に同様であるシステム400を示している。従って、図9における同様な構成要素を表すために、図4において構成要素を表すために使用した参照符号を使用することにする。この実施形態ではシステム400は、車両オルタネータ410を使用して高エネルギーバッテリ110を充電するように構成される。より具体的には、システム400は、熱機関412によって駆動されるオルタネータ410と、整流器414と、DC−DCコンバータ418を介して高比エネルギーバッテリ110を充電するために利用される12V始動点火及び点火(SLI)バッテリ416とを含む。この例示的な実施形態では、コンバータ418は、バッテリ110に供給される電圧を車両シャシから切り離すのを可能にする。この例示的な実施形態では、オルタネータ410は、車両内部の公知のエンジン412に結合されかつエンジン412によって駆動される。運転時に、バッテリ110の充電電力レベルは、オルタネータ410及びその関連する回路の電流定格に基づいて、またさらにオルタネータの比較的低い効率によって制限される可能性がある。しかしながら、この特徴は、特に車両がアイドリング運転又は低速走行している時に、或る低レベルの充電を行うことになる。
【0025】
運転時に、EMS120は、 図6において説明したようにDC−DCコンバータ418を有効に機能させるようにプログラムされており、この場合、DC−DCコンバータ418は、米国特許第5,589,743号においてKingによって教示されているような一連のハイブリッド駆動システムのための統合型クランキングインバータ・ブーストコンバータの簡易型のAC−DCコンバータである。さらに、システム400は、依然として本明細書の以前の図に示した動的リターダ142を含んでいる。
【0026】
図9に示すシステム400と実質的に同様であるシステム500を示している。従って、 図10における同様な構成要素を表すために、 図9において構成要素を表すために使用した参照符号を使用することにする。この実施形態では、システム500は、 図9に示すDC−DCコンバータ418と比べて高い出力電圧を有し、運転時にEMS120によって送信されたイネーブル(有効機能化)信号が、高電圧側エネルギー貯蔵ユニットつまりウルトラキャパシタ140を充電するようにプログラムされるようになった分離したDC−DCコンバータ518を含む。
【0027】
図11は、図9に示すシステム400と実質的に同様であるシステム600を示している。従って、 図11における同様な構成要素を表すために、図9において構成要素を表すために使用した参照符号を使用することにする。具体的には、図11は、低電圧で作動するウルトラキャパシタ130の作動時にEMSが有効に作動するようになった別の例示的な事前充電制御装置を示している。従って、システム600はまた、コンタクタ610とダイオード612とを含み、これらは協働して、ウルトラキャパシタ130が高比エネルギーバッテリ110にほぼ等しいレベルにまで放電された期間中にEMSの2つのフェーズを使用することによって、EMS120の高い作動効率を可能にする。
【0028】
この例示的な実施形態では、システム600はまた、事前充電回路152を介しての第2の貯蔵ユニット110からEMS120の高電圧側124への電流の流れを可能にするように分極させる外部一方向電流装置620を含む。この例示的な実施形態では、外部一方向電流装置620は、ダイオード612である。使用中には、外部一方向電流装置620は、事前充電回路152からEMS/トラクションブーストコンバータ120の高電圧側124に電流を流して高電圧側ウルトラキャパシタ140をその初期推定放電状態から少なくとも部分的に事前充電するのを可能にし、またさらにブーストコンバータシステムの故障時における「のろのろ」運転モード時にトラクション駆動システム147に電力を供給する。任意選択的に、システム600は、外部ダイオード620を含まない。
【0029】
図12は、DCリンク電圧124がモータ速度及びトルクの関数として示され、また点線が関連するエネルギー貯蔵構成要素電圧の例示的な基準値を表しているグラフ図である。図示するように、例示的なACモータ設計での駆動装置の全トルクは、基準電圧を或る所定の最小値から定格速度の約50%のモータ速度における所定の最大基準値まで上昇させることによって達成可能である。50%〜100%の定格モータ速度においては、基準DCリンク電圧は、実質的に一定に保たれる。図示するように、ウルトラキャパシタ140の電圧は、エネルギーがこの装置から取り出され又はこの装置に供給されるにつれて、基準線の上方及び下方に変動する。ウルトラキャパシタ140電圧つまり充電状態が限界値に近づいた時、閉ループ制御装置は、ウルトラキャパシタ130がその通常作動範囲(SOC)内にあるとすると、主としてこのウルトラキャパシタ130から付加的エネルギーを提供する。ウルトラキャパシタ130がエネルギーを提供できない時には、高比エネルギーバッテリ110を利用して付加的エネルギーを提供する。例えば、長時間にわたり急勾配を登攀している間の運転時には、ウルトラキャパシタ130及び140の両方内に貯蔵されたエネルギーは実質的に使い尽くされているので、高比エネルギーバッテリ110がエネルギーを提供する。また、「のろのろ」運転モード時には、車両を推進させるために提供されるエネルギーは、バッテリ110を使用して補給されることになる。
【0030】
図13は、 図4に示すシステム100と実質的に同様なシステム700を示している。従って、図13における同様な構成要素を表すために、図4において構成要素を表すために使用した参照符号を使用することにする。システム700において、動的リターダ142は、ブーストコンバータ120の高電圧側に結合されるのではなく、ブーストコンバータ120の低電圧側に結合される。EMS120の付加的なフェーズは、エネルギー貯蔵ユニットがそれらの最大電圧限界値付近にある時には、厳しい回生運転時におけるDCリンクの値を制御する電力コマンドを使用する。より具体的には、この構成においては、動的リターダ142は、ブーストコンバータの制御によりDCリンク124での有効電力消散を制御可能に変化させ、それによってインバータDCリンク124の114に対しての間に生じるDC電圧を制限する。
【0031】
図14は、図4に示すシステム100と実質的に同様であるシステム800を示している。従って、 図14における同様な構成要素を表すために、図4において構成要素を表すために使用した参照符号を使用することにする。この実施形態では、システム800は、電気推進システムの低電圧側の高比エネルギーバッテリ110によって提供された電力を使用して、少なくとも1つのファン810の分離した電力作動を行ってウルトラキャパシタ130、140及び/又はバッテリ110を含むエネルギー貯蔵ユニットの温度制御を行うように構成される。車両システム制御装置は、それぞれのエネルギー貯蔵ユニット110、130及び140からの検知フィードバック温度を使用して閉ループ作動を構成する。温度が所定の設定値を超えた時、分離したDC−DCコンバータ812が有効に機能して、エネルギー貯蔵ユニットをそれらのそれぞれの12VDC又は24VDC電力供給源から切り離す。この例示的な実施形態では、システム800は、トラクション駆動装置が有効に機能していない期間中であってもエネルギー貯蔵ユニットの冷却を可能にする。このことは、車両が日中の陽射しの下でアスファルト舗装上に駐車している時に特に重要である。ウルトラキャパシタ又はバッテリの寿命は高温の期間中に短縮されるので、システム800は、冷却ファン810を起動させて、それぞれのエネルギー貯蔵装置の温度を低下させる。後刻車両が再び運転状態になった時に、高比エネルギーバッテリは、回生制動事象の間におけるトラクション駆動により提供される又は熱機関がエネルギー貯蔵システムを充電している間に提供されるかのいずれかのエネルギーを使用して再充電される。
【0032】
本明細書に記載したシステムは、ウルトラキャパシタ/バッテリエネルギー貯蔵システムの高度に有効な利用を行うのを可能にする。具体的には、高いモータ速度及びトルクでの運転のための過渡エネルギーは、主として高電圧ウルトラキャパシタを高い効率モードで使用し、中程度の速度及びトルクでの運転のための過渡エネルギーは、主として高電圧及び中電圧ウルトラキャパシタの組合せを使用し、また低いモータ速度及び全範囲のモータトルクでの運転のための過渡エネルギーは、主として低電圧バッテリ及び中電圧ウルトラキャパシタの組合せによって提供される。従って、ウルトラキャパシタセルのバランス問題は、高電圧及び中電圧要求に応じて両方の複数ウルトラキャパシタを使用することによって最小になる。
【0033】
従って、本明細書に記載したシステムは、中電圧及び低電圧エネルギー貯蔵構成要素からDCリンク電圧を結合解除するのを可能にし、このことにより、モータ速度及びトルクに応じて適切なエネルギー貯蔵システム及びその関連する制御装置を利用することによって、システム性能及び効率の向上が可能になる。システムの重量、従って車両の重量は、エネルギー貯蔵の1つの構成要素として低電圧軽量バッテリを使用することによって最小になる。全電気運転モード、そしてまたのろのろ運転モード時に、本システムは、ウルトラキャパシタエネルギー貯蔵システムのみを使用する構成と比べて、構成要素の使用範囲を増大するのを可能にする。さらに、電気駆動システムのための構成要素のサイズ及び重量限界値の範囲内で所望の性能を達成すると同時に、高電圧側ウルトラキャパシタエネルギー貯蔵装置の事前充電機能が従来型の高電圧バッテリから行う場合よりも短時間で達成されるようなサイズにエネルギー貯蔵ユニットを作ることによって、システム全体のコストが低減される。
【0034】
様々な特定の実施形態に関して本発明を説明してきたが、本発明が特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内の変更で実施することができることは、当業者には分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】公知の交流(AC)電気駆動システムを示す図。
【図2】公知のハイブリッド駆動システムを示す図。
【図3】公知のハイブリッド駆動システムを示す図。
【図4】例示的な車両推進システムを示す図。
【図5】別の例示的な車両推進システムを示す図。
【図6】車両推進システムを制御するための例示的アルゴリズムを示すフロー図。
【図7】車両推進システムを制御するための別の例示的アルゴリズムを示すフロー図。
【図8】別の例示的な車両推進システムを示す図。
【図9】別の例示的な車両推進システムを示す図。
【図10】別の例示的な車両推進システムを示す図。
【図11】別の例示的な車両推進システムを示す図。
【図12】運転時における 図11に示すシステムのグラフ図。
【図13】別の例示的な車両推進システムを示す図。
【図14】別の例示的な車両推進システムを示す図。
【符号の説明】
【0036】
100 車両推進システム
101 車両システム
110 高比エネルギーバッテリ又は第2の貯蔵ユニット
112 正DCバス
114 負DCバス
120 エネルギー管理システム(EMS)又はブーストコンバータ
122 低電圧側入力
124 高電圧側電圧
128 低電圧側入力
130 ウルトラキャパシタ
132 ダイオード
134 コンタクタ
140 ウルトラキャパシタ
142 動的リターダシステム
144 DC−ACインバータ
146 トラクションモータ
147 トラクション駆動システム
148 車両システム制御装置
149 モータタコメータ
150 一方向電流装置
152 事前充電回路
154 DCコンタクタ
160 電流センサ
162 電圧センサ
164 電流センサ
164 電流センサ
166 DCバス基準電圧
200 電力制御アルゴリズム
210 サブル−チン
212 第2のサブル−チン
214 第3のサブル−チン
216 サブル−チン
217 参照用テーブル
218 非対称リミッタ機能
220 EMS全電力コマンド
230 電力制御アルゴリズム
232 第1のサブル−チン
234 第2のサブル−チン
236 付加的信号
300 システム
310 事前充電キャパシタ
310 フェーズaフィルタキャパシタ
312 インダクタ
313 電圧センサ
314 コンタクタ
315 インダクタ
316 電気的コンタクタ
330 相bフィルタキャパシタ
332 電圧センサ
340 コンタクタ
400 システム
410 車両オルタネータ
412 熱機関
414 整流器
416 バッテリ
418 DC−DCコンバータ
500 システム
518 DC−DCコンバータ
600 システム
610 コンタクタ
612 ダイオード
620 一方向電流装置又は外部ダイオード
700 システム
800 システム
810 冷却ファン
812 DC−DCコンバータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流(DC)リンク(114)と電気的に結合された交流(AC)トラクション駆動システム(147)と、
第1の高比電力バッテリ(110)と、
高電圧側(124)及び低電圧側(128)を含む双方向ブーストコンバータ(120)であって、該ブーストコンバータ(120)の前記低電圧側(128)に結合された前記第1の高比電力バッテリ(110)から得られる電圧を高め、前記直流(DC)リンク(114)に供給する、前記ブーストコンバータ(120)と、
前記ブーストコンバータ(120)の前記高電圧側(124)に結合され、前記直流(DC)リンク(114)を介して前記トラクション駆動システムに対して電気的に結合された第1のキャパシタ(140)と、
前記ブーストコンバータ(120)の前記低電圧側(128)に結合された第2のキャパシタ(130)と、
前記第1の高比電力バッテリ(110)及び、前記第1及び第2のキャパシタ(140、130)と結合する、エネルギー管理システムであって、
前記トラクション駆動システムの通常運転時に、前記第2のキャパシタ(130)から電圧を取り出し、
急勾配を登攀している間の運転時において、前記第1及び第2のキャパシタ(140、130)から電圧を取り出し、
「のろのろ」運転モード時において、前記第1の高比電力バッテリ(110)から電圧を取り出すように制御を行う前記エネルギー管理システムと、
を含む車両推進システム(100)。
【請求項2】
前記第1の高比電力バッテリ(110)と前記ブーストコンバータ(120)との間に配置されるダイオード(150)を含み、
前記ブーストコンバータ(120)の故障時に、前記ダイオード(150)が、前記第1の高比電力バッテリ(110)から電圧を前記ブーストコンバータ(120)の高電圧側(124)に電流を流し、前記トラクション駆動システム(147)に電力を供給する、請求項1に記載の車両推進システム(100)。
【請求項3】
前記エネルギー管理システムは、前記通常運転時において、前記第2のキャパシタ(130)の使用可能なエネルギーが所定以上に消尽した時に前記第1の高比電力バッテリ(110)から電圧を取り出す、請求項1または2に記載の車両推進システム(100)。
【請求項4】
前記第2のキャパシタ(130)が、前記第1の高比エネルギーバッテリ(110)の公称電圧定格よりも約2倍〜約25倍大きい電圧定格を有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の車両推進システム(100)。
【請求項5】
前記ブーストコンバータは、2フェーズブーストコンバータである、請求項1乃至4のいずれかに記載の車両推進システム(100)。
【請求項6】
前記第1の高比電力バッテリ(110)の電荷使用量が、所定の閾値以上である場合には、電力が前記第2のキャパシタ(130)に分配され、
前記電荷使用量が、前記所定の閾値以下である場合には、電力が前記第1の高比電力バッテリ(110)に分配される、請求項1乃至5のいずれかに記載の車両推進システム(100)。
【請求項7】
前記第1及び第2のキャパシタ(140、130)を少なくとも部分的に充電するように構成された事前充電回路(152)をさらに含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の車
両推進システム(100)。
【請求項8】
前記直流リンク(114)に結合された電流センサ(164)及び/又は電圧センサ(162)をさらに含み、
前記エネルギー管理システム(120)が、前記電流センサ及び/又は電圧センサ(162)からの出力を受けて、車両が前記トラクション駆動システム(147)が有効に機能する通常運転モードで運転されている時に前記第1の高比電力バッテリ(110)と前記第1のキャパシタ(140)を制御するように構成される、
請求項1乃至7のいずれかに記載の車両推進システム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−59253(P2013−59253A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252813(P2012−252813)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【分割の表示】特願2007−8873(P2007−8873)の分割
【原出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】