説明

車速出力装置

【課題】処理負荷の増大を招かない車速出力装置を提供すること。
【解決手段】本発明による車速出力装置1は、複数の車輪のタイヤ空気圧を取得するタイヤ空気圧取得手段1aと、複数の車輪に対応する車輪速センサ11の検出した複数の車輪速に基づいて演算された車速を所定周期で出力する車速出力手段1bと、タイヤ空気圧の増加に逆比例させて前記所定周期を減少させる減少手段1cを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両に適用されて好適な車速出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては一般に、車輪速センサにより車輪速を検出して、車輪速を平均する等の処理を行って車速を演算して、ブレーキ、シフト制御、ドアロック等その他の制御に利用することが行われる。車速検出装置としては例えば、特許文献1に記載されるようなものが提案されている。
【0003】
また、車両を安全に運転させるにあたっては、タイヤとリムとの間に画成される空間の空気圧すなわちタイヤ空気圧を適切な範囲内に保つことが必要となる。このため、タイヤ空気圧を運転者に表示し、適切な範囲から逸脱する場合には警報を行う、例えば特許文献2に記載されているようなタイヤ空気圧検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−117012号公報
【特許文献2】特開2003−154827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるように、車速を検出するのは例えばブレーキECU(Electronic Control Unit)であって、ブレーキECU以外のECU、例えばメータECUや、エンジンECU、ハイブリッドECU等に対しては、ブレーキECUからCAN(Controller Area Network)等のLANを介して、車速を含むデータフレームを送信し、このデータフレームをその他のECUが受信することによって他のECUは車速データを取得している。
【0006】
ここで、ブレーキECUは各車輪の車輪速センサの検出した車輪速を算術平均することにより車速を演算し、演算周期に対応する出力周期にて他のECUに車速を含むデータフレームを送信している。ところが、各車輪のいずれかのタイヤ空気圧が適正値よりも低い場合には、車輪回転数は高くなり、タイヤ空気圧が適正値よりも高い場合には車輪回転数は低くなる。
【0007】
このため、タイヤ空気圧が低いほどブレーキECUの出力周期は短くなり、他のECUの車速割り込み処理が増大し、ソフトの処理負荷が増加するという問題が生じる。また、車速が同じであっても、タイヤ空気圧によって、割り込み処理の間隔が変更されてしまい、割り込み処理によって制御タイミングが変更されてしまうという問題も生じる。ここで、上記特許文献2に示されるように、タイヤ空気圧の検出そのものは現在では比較的容易である。
【0008】
そこで本発明は、上記問題と実情に鑑み、タイヤ空気圧に基づいて出力周期を適切なものとして他機器の処理負荷を軽減することができる車速出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するため、本発明に係る車速出力装置は、
複数の車輪のタイヤ空気圧を取得するタイヤ空気圧取得手段と、
前記複数の車輪に対応する車輪速センサの検出した複数の車輪速に基づいて演算された車速を所定周期で出力する車速出力手段と、
前記タイヤ空気圧の増加に逆比例させて前記所定周期を減少させる減少手段を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タイヤ空気圧に基づいて出力周期を適切なものとして他機器の処理負荷を軽減することができる車速出力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施例の車速出力装置1の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】実施例の車速出力装置1の制御内容に用いられるタイヤ空気圧と補正係数の逆比例関係を示す模式図である。
【図3】本発明に係る車速出力装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態の具体例について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0013】
本実施例の車速出力装置は図1に示すECBECU1(Electronically Controlled Brake System)により構成される。ECBECU1にはCAN等の通信規格によりメータECU2が接続され、メータECU2は、ハイブリッドECU3及びエンジンECU4にCAN等により接続されている。ECBECU1には、タイヤ空気圧検出装置5が接続されている。
【0014】
ECBECU1は、CPU、ROM、RAM、EEPROMおよびそれらを相互に接続するデータバスを含んで構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、ブレーキ制御を行うものであり、各車輪に対応して設けられた車輪速センサ11から各車輪速を検出し、それらの各車輪速の平均から車速を演算して、車速を含むデータフレームを他のECUに送信する車速出力手段1bを構成する。
【0015】
この際、ECBECU1は、後述するタイヤ状態ECU73から受信したデータフレームに含まれる複数の車輪のタイヤ空気圧を取得するタイヤ空気圧取得手段1aを構成するとともに、変動のあるタイヤ空気圧と図2に示すマップに基づいて演算された補正係数を、車輪速センサ11の割り込み周期である所定周期に乗じた出力周期でメータECU2及びハイブリッドECU3、エンジンECU4に送信する。つまり、ECBECU1は、車速を含むデータフレームを送信する所定周期を、タイヤ空気圧に逆比例させて減少させる減少手段1cをも構成する。
【0016】
メータECU2は、CPU、ROM、RAM、EEPROMおよびそれらを相互に接続するデータバスを含んで構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CANを介して受信したデータフレームから車速を取得して図示しないメータパネル上の速度計により速度を表示する制御を行い、車速と走行時間から車両の走行距離を演算してメータパネル上のオドメータにより表示する制御を行うものである。
【0017】
なお、速度計つまりスピードメータの速度支持機構はJISD5601による規格に基づくものであり、駆動輪が637rpmの回転をしたとき、60km/hの指示をする割合としている。この場合に、メータECU2に対して入力部となるECUECU1における入力信号周波数は車速にパルス数4を乗じて637rpmを乗じ、60secと60km/hで除した値となる。
【0018】
ハイブリッドECU3は、CPU、ROM、RAM、EEPROMおよびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、図示しない動力分割機構やインバータ、バッテリ、エンジンを統括的に制御し、車速に基づいたシフト制御、ECBECU1によるブレーキ制御と、エンジンECU4のエンジン制御を統括的に実行するものである。
【0019】
エンジンECU4は、CPU、ROM、RAM、EEPROMおよびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、アクセルペダルセンサにより検出したアクセル開度に基づいて、図示しないエンジンのスロットル開度を主に制御するものである。
【0020】
タイヤ空気圧検出装置5は、タイヤ側機6と、車載機7とを備えて構成される。また、タイヤ側機6は、タイヤ空気圧検出センサ61、タイヤ内温度検出センサ62、送信回路63、アンテナ64、バッテリ65を備えて構成されており、車両の前後左右四箇所の車輪に設けられる。さらに、車載機7は、アンテナ71、受信回路72、タイヤ状態ECU73、タイヤセレクトスイッチ74、ウォーニングランプ75を備えて構成され、車両の速度計やタコメータが設置されるフロントパネルに設けられている。
【0021】
タイヤ空気圧検出センサ61は、車輪を構成するタイヤ及びホイールにより画成される空間のいずれかの箇所、例えばホイールにおいて、タイヤをホイールに脱着する際に、脱着作業を容易にするために設けられる広幅の溝状部分であるウェルにネジ機構により螺合して設けられて、タイヤ空気圧を検出して検出結果を送信回路63に出力して、タイヤ空気圧検出手段を構成するものである。
【0022】
タイヤ内温度検出センサ62も、ホイールのウェルにネジ機構により螺合して設けられて、タイヤ内温度を検出して検出結果を送信回路63に出力して、タイヤ内温度検出手段を構成するものである。
【0023】
送信回路63も、ホイールのウェルにネジ機構により螺合して設けられて、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスから構成され、バッテリ65からの電源供給に基づき、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが以下に述べる所定の処理を行うものであって、送信手段を構成する。
【0024】
送信回路63の送信手段は、周知の変調回路を含んで構成されるものであって、アンテナ64を介して通信用周波数にて、タイヤ空気圧検出センサ61の検出したタイヤ空気圧と、タイヤ内温度検出センサ62の検出したタイヤ内温度を含み、車輪の前後左右の位置を示すID、送信回路63の正常又は故障を示す状態及びCRC(Cyclic Redundancy Check)を含むデータフレームを車載機7に対して、基準頻度にて送信する。なお、CRCとは、後述する受信回路72が正常に受信できたかどうかの判断を行うにあたり用いるものである。
【0025】
なお、基準頻度とは、タイヤ空気圧が例えば150〜300kPaに属する10の倍数のいずれかである閾値を下回る場合に警報を行うにあたって、下回ったタイミングからある時間以内に警報を行わなければならないということが法規により定まっていることに基づいて、設定される値である。例えばある時間が10分である場合には、基準頻度は一時間で6回以上と設定されるが、本実施例では上述した補正係数の設定に用いられることから、基準頻度を所定周期よりも高く設定するものとする。
【0026】
受信回路72はアンテナ71を介して通信用周波数にてタイヤ側機6から送信された、タイヤ空気圧検出センサ61の検出したタイヤ空気圧、タイヤ内温度検出センサ62の検出したタイヤ内温度を含み、車輪の前後左右の位置を示すID及びCRCを含むデータフレームを受信するものであり、これも周知の復調回路を含んで構成されるものである。
【0027】
タイヤ状態ECU73は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータフレームバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが以下に述べる所定の処理を行うものである。ウォーニングランプ75は、車両の速度計やタコメータが設置されるフロントパネルに設けられている。
【0028】
タイヤ状態ECU73は、受信回路72の受信したタイヤ空気圧及びタイヤ内温度及び車輪の前後左右の位置及びCRCを含むデータフレームを受信して記憶して、タイヤセレクトスイッチ74により選択された車輪の前後左右の位置に対応させて、タイヤ空気圧が閾値を下回る場合にはウォーニングランプ75を点灯させ、タイヤ内温度が上限値を超える場合には同じくウォーニングランプ75を点滅させて警報を行い、図示しないLEDによりタイヤ空気圧を10kPa単位で表示する。
【0029】
以下、本実施例の車速出力装置1の制御内容について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0030】
ステップS1において、ECBECU1の減少手段1cは、車輪速センサ11の出力周期から、ECBECU1に対する車輪速の割り込み周期を所定周期として算出する。つづいて、ステップS2において、減少手段1cはタイヤ状態ECU73から受信したデータフレームから、四箇所のタイヤ空気圧を取得して、四箇所のタイヤ空気圧のうち変動のあるタイヤ空気圧に対応する補正係数を、図2に示すマップから演算する。
【0031】
ステップS3において、減少手段1cは割り込み周期に補正係数を乗じて出力周期を演算し補正する。ステップS4において、ECBECU1の車速出力手段1bは、補正された出力周期により車速を含むデータフレームを、他ECUつまりメータECU2、ハイブリッドECU3、エンジンECU4に送信する。
【0032】
なお、上述したステップS1からステップS4までの処理はある周期にて連続的に実行される。以上述べた本実施例の車速出力装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0033】
すなわち、本実施例によれば、ECBECU1は各車輪の車輪速センサ11の検出した車輪速を算術平均することにより車速を演算し、タイヤ空気圧の増大に伴い減少する補正係数を所定周期に乗じた出力周期にて、他のECUに車速を含むデータフレームを送信している。つまり、ECUECU1は、タイヤ空気圧が増大するにつれて減少する所定周期にて、車速を含むデータフレームを他ECUに送信している。
【0034】
このため、各車輪のいずれかのタイヤ空気圧が適正値よりも低い場合に、動荷重半径が低下して車輪回転数が高くなったとしても、他ECUにおける車速の割り込み周期を過度に増大させて、処理負荷が過大となることを防止することができ、割り込み制御タイミングについても適正化を図ることができる。また、タイヤ空気圧が適正値よりも高い場合には動荷重半径が増大して車輪回転数は低くなるが、この場合においても、割り込みタイミングの適正化を図ることができる。
【0035】
このため本実施例においては、タイヤ空気圧が低いほどECBECU1の出力周期が短くなり、他のECUの車速割り込み処理が増大し、ソフトの処理負荷が増加するという問題を解消することができる。また、車速が同じであっても、タイヤ空気圧によって、割り込み処理の間隔が変更されてしまい、割り込み処理によって制御タイミングが変更されてしまうという問題も解消することができる。また、現在では取得が容易なタイヤ空気圧の検出に基づいて、システムを比較的容易に構成することができる。
【0036】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0037】
例えば、上述した実施例で示したタイヤ空気圧検出装置5は例示的なものであり、タイヤ内温度については測定しないものであってもよい。すなわち、タイヤ空気圧を車速出力装置1が取得できるものであればよく、TPMS(Tire Pressure Monitoring System)の型式、方式については特に限定するものではない。
【0038】
また、上述した実施例において、前後左右のタイヤ空気圧についていずれかが低下又は増加した場合に図2に示したマップを用いて補正係数を演算することとしているが、四箇所のタイヤ空気圧について予め平均値を算出して、図2に示したマップに基づいて補正係数を演算することとしてもよい。
【0039】
さらに、上述した実施例においてはECBECU1が車速出力装置を構成する形態を示しているが、例えばメータECU2が車輪速センサ11の出力を直接的に自身の入出力インターフェースに取り込んで、メータECU2が車速出力装置を構成することももちろん可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、各車輪の車輪速に基づいて車速を演算して他機器に車速を含むデータフレームを出力する車速出力装置に関するものであり、既存の装備を利用して比較的軽微なロジックの変更により、タイヤ空気圧に基づいて出力周期を適切なものとして他機器の処理負荷を軽減することができるという所望の効果を得ることができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に用いられる車速出力装置に適用して有益なものである。
【符号の説明】
【0041】
1 ECBECU(車速出力装置)
1a タイヤ空気圧取得手段
1b 車速出力手段
1c 減少手段
11 車輪速センサ
2 メータECU
3 ハイブリッドECU
4 エンジンECU
5 タイヤ空気圧検出装置
6 タイヤ側機
7 車載機
61 タイヤ空気圧検出センサ(タイヤ空気圧検出手段)
62 タイヤ内温度検出センサ
63 送信回路
64 アンテナ
65 バッテリ
71 アンテナ
72 受信回路
73 タイヤ状態ECU
74 タイヤセレクトスイッチ
75 ウォーニングランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪のタイヤ空気圧を取得するタイヤ空気圧取得手段と、前記複数の車輪に対応する車輪速センサの検出した複数の車輪速に基づいて演算された車速を所定周期で出力する車速出力手段と、前記タイヤ空気圧の増加に逆比例させて前記所定周期を減少させる減少手段を含むことを特徴とする車速出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−198064(P2012−198064A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61315(P2011−61315)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)