説明

軟弱地盤の表層処理材

【課題】充填材が充填された被覆体同士を弱部を形成することなく一体化し、広範囲において均一な補強効果を得ることができる軟弱地盤の表層処理材を提供すること。
【解決手段】接続治具3の内部に袋体1aの端部10aおよび袋体1bの端部10bが挿入され、突き合わされる。袋体1aおよび袋体1bの内部には、流動固化材11が充填される。袋体1a、袋体1bへの流動固化材11の充填時には、確認口8に設置した圧力センサ9により充填状況を確認する。流動固化材11の固化後、袋体1aおよび袋体1bと接続治具3とは密着し、摩擦により一体性が確保される。また、接続治具3の内周面5に設けられた凹凸7により、袋体1aおよび袋体1bと接続治具3とのずれが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤の表層処理材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤の表層を補強するために、地盤上に面状補強材を敷設し、面状補強材の表面に設置した表層処理用袋体に流動固化材を充填して、表層処理用補強材を形成する方法があった。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
軟弱地盤上にこの表層処理用補強材を敷設すると、覆土を行った場合の不等沈下を抑制し、シートの破断を防止して覆土材の消失等を回避することができた。また、軟弱地盤上に敷設した表層処理用補強材上に路床、路盤を構築した場合、交通荷重に耐えうるだけの十分な支持力を有する交通路などを構築することが可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4307967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表層処理用袋体への流動固化材の充填長さには限界があり、充填長さが長すぎる場合には、十分に充填できない可能性があった。これを回避するためには、表層処理用袋体に充填長さを制約するための治具を取り付け、注入可能な長さ毎に流動固化材を充填していく方法が考えられるが、この方法では、流動固化材が固化した後に、袋体と流動固化材とが完全に密着するため、所定の断面積が得られず、曲げ荷重に対する弱部を形成する可能性が高い。
【0006】
他に、表層処理用袋体の複数個所から同時に流動固化材の注入・充填を行う方法もあるが、費用や敷地、モルタル製造能力等の条件から、実施できない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、充填材が充填された被覆体同士を弱部を形成することなく一体化し、広範囲において均一な補強効果を得ることができる軟弱地盤の表層処理材を提供することである。
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明は、内部に流動固化材が充填された第1の被覆体と、内部に流動固化材が充填された第2の被覆体と、前記第1の被覆体と前記第2の被覆体とを接続する筒状の接続治具と、を具備することを特徴とする軟弱地盤の表層処理材である。
【0009】
本発明で用いる接続治具は、例えば、内径が第1の被覆体および第2の被覆体の外径よりも小さく、接続治具の内周面に、第1の被覆体および第2の被覆体のずれを防止する係止部が設けられるものとする。
【0010】
係止部は、例えば、接続治具の内周面に設けられた凹凸部とする。この場合、第1の被覆体の端部と第2の被覆体の端部とが、接続治具の内部で突き合わされる。そして、係止部である凹凸により、第1の被覆体および第2の被覆体と接続治具との一体性が確保される。
【0011】
係止部は、例えば、接続治具の側面に設けられた孔に設けられ、接続治具の内周面に突出する固定具としてもよい。この場合にも、第1の被覆体の端部と第2の被覆体の端部とが接続治具の内部で突き合わされる。そして、係止部である固定具により、第1の被覆体および第2の被覆体と接続治具との一体性が確保される。
【0012】
接続治具には、必要に応じて、流動固化材の充填状況を確認するための確認口が設けられる。接続治具には、流動固化材の充填圧力を確認するための圧力センサを設けてもよい。
【0013】
本発明で用いる接続治具は、外径が第1の被覆体および第2の被覆体の内径よりも小さく、外周面に凹凸が設けられたものでもよい。この場合、第1の被覆体および第2の被覆体は、端部が開口した筒体とされ、第1の被覆体の端部および第2の被覆体の端部が接続治具の外周面に固定される。そして、接続治具の外周面に設けられた凹凸により、第1の被覆体および第2の被覆体に充填された流動固化材と接続治具との一体性が確保される。
【0014】
第1の発明では、筒状の接続治具を用いることにより、充填材が充填された第1の被覆体と第2の被覆体とを弱部を形成することなく一体化することができる。
【0015】
第2の発明は、内部に流動固化材が充填された第1の筒状被覆体と、前記第1の筒状被覆体の端部に挿入されて固定された第1の円筒部材と、前記第1の円筒部材の端面を塞ぐように固定された第1の板状部材とからなる第1の接続治具と、内部に流動固化材が充填された第2の筒状被覆体と、前記第2の筒状被覆体の端部に挿入されて固定された第2の円筒部材と、前記第2の円筒部材の端面を塞ぐように固定された第2の板状部材とからなる第2の接続治具と、を具備し、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とが突き合わされて一体化されたことを特徴とする軟弱地盤の表層処理材である。
【0016】
第2の発明では、円筒部材と板状部材とからなる2つの接続治具を用い、2つの接続治具の板状部材同士を接続することにより、充填材が充填された第1の被覆体と第2の被覆体とを弱部を形成することなく一体化することができる。
【0017】
第3の発明は、内部に流動固化材が充填された第1の筒状被覆体と、端部に前記第1の筒状被覆体が挿入されて固定され、内部に流動固化材が充填された第2の筒状被覆体と、を具備することを特徴とする軟弱地盤の表層処理材である。
【0018】
第3の発明では、第2の筒状被覆体の端部に第1の筒状被覆体を挿入して固定することにより、充填材が充填された第1の被覆体と第2の被覆体とを弱部を形成することなく一体化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、充填材が充填された被覆体同士を弱部を形成することなく一体化し、広範囲において均一な補強効果を得ることができる軟弱地盤の表層処理材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】接続治具3を用いて袋体1同士を接続した表層処理材2を示す図。
【図2】接続治具3aを用いて袋体1同士を接続した表層処理材2aを示す図。
【図3】接続治具23を用いて袋体1同士を接続した表層処理材22を示す図。
【図4】ナット25およびボルト27の設置例を示す図。
【図5】接続治具33を用いて筒体31同士を接続した表層処理材28を示す図。
【図6】接続治具33aを用いて筒体31同士を接続した表層処理材28aを示す図。
【図7】接続治具53を用いて筒体51同士を接続した表層処理材52を示す図。
【図8】筒体71同士を接続した表層処理材72を示す図。
【図9】表層処理材85と面状補強材87との配置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、接続治具3を用いて袋体1同士を接続した表層処理材2を示す図である。図1の(a)図は、表層処理材2の断面図である。
【0022】
図1の(a)図に示すように、表層処理材2は、第1の被覆体である袋体1a、第2の被覆体である袋体1b、筒状の接続治具3、充填材である流動固化材11等からなる。袋体1は、水密性のない材質とする。袋体1は、流動固化材11を無理なく充填できる長さとする。接続治具3は、鉄やステンレス等の高い剛性を有する金属の他、塩化ビニル等の比較的硬質な材質とする。流動固化材11は、モルタル等とする。
【0023】
接続治具3の内周面5には、袋体1のずれを防止する係止部である凹凸7が設けられる。接続治具3の内径13は、例えば、袋体1の外径15よりも小さいものとする。接続治具3の内径13は、摩擦による接続治具3と袋体1との一体性を確保するために、袋体1の外径15の9割程度とするのが望ましい。接続治具3の長さ17は、袋体1の外径15の10倍程度とするのが望ましい。
【0024】
接続治具3は、袋体1aの端部10a付近が配置される部分と、袋体1bの端部10b付近が配置される部分とに確認口8が設けられる。確認口8には、圧力センサ9が設置される。
【0025】
袋体1aの内部および袋体1bの内部には、流動固化材11が充填される。袋体1aと袋体1bとは、端部10aと端部10bとが接続治具3の内部で突き合わされる。表層処理材2では、袋体1aおよび袋体1bと接続治具3との一体性が摩擦により確保される。また、接続治具3の内周面5に設けられた凹凸7が、袋体1aおよび袋体1bと接続治具3とのずれを防止する。
【0026】
図1の(b)図は、接続治具3の内部に袋体1を挿入した状態を示す図である。接続治具3を用いて袋体1同士を接続するには、まず、図1の(b)図に示すように、接続治具3の内部に袋体1aの端部10aを挿入する。また、接続治具3の内部に袋体1bの端部10bを挿入する。そして、袋体1aの端部10aと袋体1bの端部10bとを突き合わせる。
【0027】
次に、図1の(b)図の矢印Aに示すように、袋体1aおよび袋体1bの内部に流動固化材11を充填する。袋体1a、袋体1bへの流動固化材11の充填は、同時に行ってもよいし、順番に行ってもよい。袋体1a、袋体1bへの流動固化材11の充填時には、図1の(a)図に示すように、確認口8に設置した圧力センサ9により、袋体1aおよび袋体1bへの流動固化材11の充填状況を確認する。圧力センサ9は、確認口8に固定しておいても良いし、確認口8に必要に応じて着脱してもよい。
【0028】
接続治具3を用いて袋体1同士を接続するには、袋体1aへの流動固化材11の充填後に袋体1bを接続治具3に挿入し、袋体1aと袋体1bとを突き合わせてもよい。
【0029】
袋体1aおよび袋体1bは、水密性のない材質であるので、内部に充填された流動固化材11は、脱水により固化時の強度が高まる。流動固化材11の固化後、袋体1aおよび袋体1bと接続治具3とは密着し、摩擦により一体性が確保される。また、接続治具3の内周面5に凹凸7を設けることにより、袋体1aおよび袋体1bと接続治具3とがより確実に一体化される。
【0030】
このように、第1の実施の形態によれば、作業スペースや流動固化材11の製造能力等に制限がある場合にも、流動固化材11が充填された袋体1同士を弱部を形成することなく一体化して、表層処理材2を形成できる。複数の袋体1を一体化して形成された表層処理材2を用いることにより、広範囲において均一な補強効果を得ることができる。
【0031】
なお、第1の実施の形態では、接続治具3の2箇所に確認口8を設けて圧力センサ9を設置する例について説明したが、確認口8に圧力センサ9を設置せず、確認口8から目視で流動固化材11の充填状況を確認してもよい。また、目視と圧力センサ9とを併用して流動固化材11の充填状況を確認してもよい。さらに、確認口8の設置位置は、図1に示す位置に限らない。
【0032】
図2は、接続治具3aを用いて袋体1同士を接続した表層処理材2aを示す図である。図2に示す表層処理材2aは、図1に示す表層処理材2とほぼ同様の構成であるが、接続治具3の替わりに接続治具3aが用いられる。接続治具3aは、接続治具3とほぼ同様の部材であるが、2箇所の確認口8の替わりに、1箇所に確認口21が設けられる。確認口21は、接続治具3aの中央付近に設けられる。
【0033】
接続治具3aを用いて袋体1同士を接続するには、接続治具3aの内部に袋体1aの端部10aおよび袋体1bの端部10bを挿入する。そして、袋体1aの端部10aと袋体1bの端部10bとを突き合わせる。次に、袋体1aおよび袋体1bの内部に流動固化材11を充填する。袋体1a、袋体1bへの流動固化材11の充填時には、確認口21から目視で、袋体1aおよび袋体1bへの流動固化材11の充填状況を確認する。但し、袋体1aへの流動固化材11の充填後に袋体1bを接続治具3aに挿入し、袋体1aと袋体1bとを突き合わせてもよい。
【0034】
図1に示す接続治具3、図2に示す接続治具3aでは、接続治具3、3aの内周面5に凹凸7を設けたが、内周面5の形状はこれに限らない。接続治具3、3aの内周面5は、袋体1aおよび袋体1bとのずれが防止できるような、接続延長方向に断面が変化する形状であればよい。
【0035】
次に、第2の実施の形態について説明する。図3は、接続治具23を用いて袋体1同士を接続した表層処理材22を示す図である。図3の(a)図は、表層処理材22の断面図を示す。表層処理材22は、第1の実施の形態の表層処理材2とほぼ同様の構成であるが、接続治具3の替わりに、接続治具23が用いられる。
【0036】
接続治具23は接続治具3とほぼ同様の部材であるが、内周面5に凹凸が設けられない。接続治具23は、所定の箇所にナット25と、固定具であるボルト27とが設置される。
【0037】
図3の(b)図は、図3の(a)図に示す範囲Bの拡大図である。図3の(b)図に示すように、ナット25は、ナット25のサイズに対応する径の孔29に設けられる。ナット25は、例えば、溶接等により孔29に固定される。ボルト27は、接続治具23の内周面5から突出するようにボルト25に導入される。
【0038】
図3の(c)図は、図3の(a)図に示す矢印D−Dによる断面図である。ナット25およびボルト27は、図3の(a)図に示すように、接続治具23の軸方向に所定の間隔をおいて設置される。また、図3の(c)図に示すように、接続治具23の周方向に、例えば90度間隔で設置される。
【0039】
袋体1aの内部および袋体1bの内部には、流動固化材11が充填される。袋体1aと袋体1bとは、端部10aと端部10bとが接続治具3の内部で突き合わされる。表層処理材22では、袋体1aおよび袋体1bと接続治具3との一体性が摩擦により確保される。また、接続治具23に設けられたボルト27により、袋体1aおよび袋体1bと接続治具3とのずれが防止される。ナット25およびボルト27の設置個数は、期待する固定の度合いに応じて決定される。
【0040】
図3の(d)図は、接続治具23の内部に袋体1を挿入した状態を示す図である。接続治具23を用いて袋体1同士を接続するには、まず、図3の(d)図に示すように、接続治具23の内部に袋体1aの端部10aを挿入する。また、接続治具23の内部に袋体1bの端部10bを挿入する。そして、袋体1aの端部10aと袋体1bの端部10bとを突き合わせる。
【0041】
次に、図3の(d)図の矢印Cに示すように、袋体1aおよび袋体1bの内部に流動固化材11を充填する。袋体1a、袋体1bへの流動固化材11の充填は、同時に行ってもよいし、順番に行ってもよい。袋体1a、袋体1bへの流動固化材11の充填時には、図3の(a)図に示すように、確認口8に設置した圧力センサ9により、袋体1aおよび袋体1bへの流動固化材11の充填状況を確認する。圧力センサ9は、確認口8に固定しておいても良いし、確認口8に必要に応じて着脱してもよい。
【0042】
接続治具23を用いて袋体1同士を接続するには、袋体1aへの流動固化材11の充填後に袋体1bを接続治具23に挿入し、袋体1aと袋体1bとを突き合わせてもよい。
【0043】
袋体1aおよび袋体1bは、水密性のない材質であるので、内部に充填された流動固化材11は、脱水により固化時の強度が高まる。流動固化材11の固化後、接続治具23に設けられた孔29に固定されたナット25に、ボルト27を接続治具23の内周面5から突出するように導入する。孔29およびナット25は、例えば、事前に設けておく。
【0044】
流動固化材11の固化後、袋体1aおよび袋体1bと接続治具23とは密着し、摩擦により一体性が確保される。また、接続治具23にボルト27を設けることにより、袋体1aおよび袋体1bと接続治具23とがより確実に一体化される。
【0045】
このように、第2の実施の形態によれば、作業スペースや流動固化材11の製造能力等に制限がある場合にも、流動固化材11が充填された袋体1同士を弱部を形成することなく一体化して、表層処理材22を形成できる。複数の袋体1を一体化して形成された表層処理材22を用いることにより、広範囲において均一な補強効果を得ることができる。
【0046】
なお、第2の実施の形態においても、確認口8に圧力センサ9を設置せず、確認口8から目視で流動固化材11の充填状況を確認してもよい。また、目視と圧力センサ9とを併用して流動固化材11の充填状況を確認してもよい。さらに、接続治具23の中央付近の1箇所に確認口を設置し、目視で流動固化材11の充填状況を確認してもよい。
【0047】
ナット25およびボルト27の設置個数および設置箇所は、図3に示すものに限らない。図4は、ナット25およびボルト27の設置例を示す図である。図4の(a)図に示す接続治具23aでは、接続治具23aの周方向に120度間隔でナット25およびボルト27が設置される。図4の(b)図に示す接続治具23bでは、接続治具23bの周方向に180度間隔でナット25およびボルト27が設置される。ナット25およびボルト27は、接続治具23(23a、23b)の軸方向に1箇所以上設けるのが良い。
【0048】
図3、図4では、接続治具23(23a、23b)に設けられた孔29にナット25を設置し、ボルト27を導入したが、ナット25を設けず、接続治具23(23a、23b)に設けられた孔29に直接タップを切り、ボルト27を導入してもよい。
【0049】
第2の実施の形態では、固定具としてボルト27を用いたが、ボルト27以外の固定具を用いてもよい。ボルト27以外の固定具とは、例えば、鋼製や樹脂製の棒材等である。
【0050】
次に、第3の実施の形態について説明する。図5は、接続治具33を用いて筒体31同士を接続した表層処理材28を示す図である。図5の(a)図は、表層処理材28の断面図である。
【0051】
図5の(a)図に示すように、表層処理材28は、第1の被覆体である筒体31a、第2の被覆体である筒体31b、筒状の接続治具33、充填材である流動固化材41等からなる。筒体31は、水密性のない材質とする。筒体31は、流動固化材41を無理なく充填できる長さとする。接続治具33は、流動固化材41を充填した筒体31と同程度かそれ以上の圧縮強度および曲げ強度を期待できる材質とする。流動固化材41は、モルタル等とする。
【0052】
図5の(b)図は、接続治具33の斜視図である。図5の(a)図、図5の(b)図に示すように、接続治具33の外周面35には、凹凸37が設けられる。接続治具33の外径46は、筒体31の内径48よりも小さいものとする。接続治具33は、中央付近に確認口36が設けられる。確認口36には、圧力センサ34が設置される。接続治具33は、軸方向の貫通孔47を有する。接続治具33は、一方の端部の外周にネジ部45が設けられ、蓋49がネジ部45に螺合される。
【0053】
図5の(a)図に示すように、筒体31aの内部および筒体31bの内部には、流動固化材41が充填される。筒体31aの端部32aは、バンド32aにより接続治具33の外周面35に固定される。筒体31bの端部32bは、バンド32bにより接続治具33の外周面35に固定される。バンド32a、バンド32bは、紐、金属ワイヤ等とする。
【0054】
表層処理材28では、筒体31aおよび筒体31bと接続治具33との一体性が摩擦により確保される。また、接続治具33の外周面35に設けられた凹凸37により、筒体31aおよび筒体31bと接続治具33とのずれが防止される。
【0055】
図5の(c)図は、筒体31aの内部に流動固化材41を充填した状態を示す図である。接続治具33を用いて筒体31同士を接続するには、まず、図5の(c)図に示すように、接続治具33の中央付近の外周面35に、筒体31aの端部30aをバンド32aにより固定する。この時、接続治具33は、ネジ部45を有する側が露出し、ネジ部45には蓋49が取り付けられる。
【0056】
次に、図5の(c)図の矢印Eに示すように、筒体31aの内部および接続治具33の内部43に流動固化材41を充填する。筒体31aおよび接続治具33への流動固化材41の充填時には、確認口36に設置した圧力センサ34により、筒体31aおよび接続治具33への流動固化材41の充填状況を確認する。圧力センサ34は、確認口36に固定しておいても良いし、確認口36に必要に応じて着脱してもよい。
【0057】
図5の(d)図は、筒体31bを接続治具33に固定した状態を示す図である。筒体31aおよび接続治具33に充填した流動固化材41が固化した後、図5の(d)図に示すように、接続治具33から蓋49を取り外す。次に、接続治具33の中央付近の外周面35に、筒体31bの端部30bをバンド32bにより固定する。そして、図5の(d)図の矢印Eに示すように、筒体31bの内部に流動固化材41を充填する。
【0058】
筒体31aおよび筒体31bは、水密性のない材質であるので、内部に充填された流動固化材41は、脱水により固化時の強度が高まる。流動固化材41の固化後、筒体31aおよび筒体31bに充填された流動固化材41と接続治具33とは、付着により一体性が確保される。また、接続治具33の外周面35に凹凸37を設けることにより、流動固化材41と接続治具33とがより確実に一体化される。
【0059】
このように、第3の実施の形態によれば、作業スペースや流動固化材41の製造能力等に制限がある場合にも、流動固化材41が充填された筒体31同士を弱部を形成することなく一体化して、表層処理材28を形成できる。複数の筒体31を一体化して形成された表層処理材28を用いることにより、広範囲において均一な補強効果を得ることができる。
【0060】
第3の実施の形態では、接続治具33の外径を筒体31の内径46と同等の大きさとしてもよい。図6は、接続治具33aを用いて筒体31同士を接続した表層処理材28aを示す図である。接続治具33aは、図5に示す接続治具33と同様の構成であるが、外径46aが筒体31の内径48と同等の大きさである。図6に示す例では、バンド32a、バンド32bを接続治具33aの凹凸37aの凹部に配置し、接続治具33aと筒体31との固定の度合いを高める。
【0061】
なお、第3の実施の形態では、接続治具33に確認口36を設けて圧力センサ34を設置する例について説明したが、確認口36に圧力センサ34を設置せず、目視で流動固化材41の充填状況を確認してもよい。また、目視と圧力センサ34とを併用して流動固化材41の充填状況を確認してもよい。
【0062】
第3の実施の形態では、接続治具33の外周面35に凹凸37を設けたが、外周面35の形状はこれに限らない。接続治具35の外周面35は、固化した流動固化材41との一体化が図れるような、接続延長方向に断面が変化する形状であればよい。
【0063】
次に、第4の実施の形態について説明する。図7は、接続治具53を用いて筒体51同士を接続した表層処理材52を示す図である。図7の(a)図は、表層処理材52の断面図である。
【0064】
図7の(a)図に示すように、表層処理材52は、第1の筒状被覆体である筒体51a、第2の筒状被覆体である筒体51b、第1の接続治具である接続治具53a、第2の接続治具である接続治具53b、充填材である流動固化材61等からなる。筒体51は、水密性のない材質とする。筒体51は、流動固化材61を無理なく充填できる長さとする。接続治具53は、高い剛性を有する金属の他、比較的硬質な材質とする。流動固化材61は、モルタル等とする。
【0065】
図7の(b)図は、接続治具53の斜視図である。図7の(a)図、図7の(b)図に示すように、接続治具53は、円筒部材57、板状部材55からなる。板状部材55は、円筒部材57の端面を塞ぐように固定される。板状部材55には、ボルト59を導入するための孔67が設けられる。円筒部材57の長さ63は、筒体51の径65以上とするのが望ましい。
【0066】
図7の(a)図に示すように、筒体51aの内部および筒体51bの内部には、流動固化材61が充填される。筒体51aの端部54aには、接続治具53aの円筒部材57が挿入される。筒体51aの端部54aは、バンド70により円筒部材57の外周面に固定される。筒体51bの端部54bには、接続治具53bの円筒部材57が挿入される。筒体51bの端部54bは、バンド70により円筒部材57の外周面に固定される。バンド70は、紐、金属ワイヤ等とする。
【0067】
接続治具53aと接続治具53bとは、板状部材55が相互に突き合わされ、双方の孔67を貫通するボルト59により、一体化される。接続治具53の板状部材55の大きさおよび形状は、ボルト59を設置する際の作業性を考慮して定める。円筒部材57の板状部材55への固定位置は、筒体51の下面68と板状部材55の下面69とが一致するように決定される。
【0068】
接続治具53を用いて筒体51同士を接続するには、まず、図7の(a)図に示すように、筒体51aの端部54aに接続治具53aの円筒部材57を挿入し、バンド70で固定する。また、筒体51bの端部54bに接続治具53bの円筒部材57を挿入し、バンド70で固定する。
【0069】
次に、図7の(a)図の矢印Fに示すように、筒体51aおよび筒体51bの内部に流動固化材61を充填する。そして、接続治具53aの板状部材55と接続治具53bの板状部材55とを、孔67にボルト59を導入して一体化する。
【0070】
接続治具53を用いて筒体51同士を接続するには、筒体51aへの流動固化材61の充填後に筒体51bに接続治具53bの円筒部材57を挿入し、接続治具53aの板状部材55と接続治具53bの板状部材55とを一体化してもよい。
【0071】
筒体51aおよび筒体51bは、水密性のない材質であるので、内部に充填された流動固化材61は、脱水により固化時の強度が高まる。流動固化材61の固化後、筒体51aおよび筒体51bに充填された流動固化材61と接続治具53とは、付着により一体性が確保される。
【0072】
このように、第4の実施の形態によれば、作業スペースや流動固化材61の製造能力等に制限がある場合にも、流動固化材61が充填された筒体51同士を弱部を形成することなく一体化して、表層処理材52を形成できる。複数の筒体51を一体化して形成された表層処理材52を用いることにより、広範囲において均一な補強効果を得ることができる。
【0073】
第4の実施の形態では、接続治具53の円筒部材57の外周面を滑らかな形状としたが、円筒部材57の外周面を、接続延長方向に断面が変化する形状としてもよい。また、板状部材55に孔67を設け、2枚の板状部材55を孔67にボルト59を導入して一体化したが、一体化する方法はこれに限らない。2枚の板状部材55を、溶接等により一体化してもよい。
【0074】
次に、第5の実施の形態について説明する。図8は、筒体71同士を接続した表層処理材72を示す図である。図8に示すように、表層処理材72は、第1の筒状被覆体である筒体71a、第2の筒状被覆体である筒体71b、充填材である流動固化材75等からなる。筒体71は、水密性のない材質とする。筒体71は、流動固化材75を無理なく充填できる長さとする。流動固化材75は、モルタル等とする。
【0075】
図8に示すように、筒体71aの内部および筒体71bの内部には、流動固化材75が充填される。筒体71bの端部77bには、筒体71aの端部77aが挿入される。筒体71bの端部77bは、バンド81により筒体71aの外周面79に固定される。筒体71b内に配置される筒体71aの端面は、キャッピング73により処理される。キャッピング73は、筒体71aの先端部を縫合することにより処理される。筒体71aと筒体71bとの重なり長さは、例えば、筒体71aの直径の20倍程度とする。バンド81は、紐、金属ワイヤ等とする。
【0076】
表層処理材72を形成するには、まず、図8の矢印Gに示すように、筒体71aの内部に流動固化材75を充填し、筒体71aの端面をキャッピング73により処理する。次に、筒体71bの端部77bに筒体71aの端部77aを挿入し、バンド81で固定する。そして、図8の矢印Hに示すように、筒体71bの内部に流動固化材75を充填する。
【0077】
筒体71aおよび筒体71bは、水密性のない材質であるので、内部に充填された流動固化材75は、脱水により固化時の強度が高まる。流動固化材75の固化後、筒体71aおよび筒体71bと流動固化材75とは、付着により一体性が確保される。
【0078】
このように、第5の実施の形態によれば、作業スペースや流動固化材75の製造能力等に制限がある場合にも、流動固化材75が充填された筒体71同士を弱部を形成することなく一体化して、表層処理材72を形成できる。複数の筒体71を一体化して形成された表層処理材72を用いることにより、広範囲において均一な補強効果を得ることができる。
【0079】
図9は、表層処理材85と面状補強材87との配置例を示す図である。図9に示すように、面状補強材87の表面に格子状の表層処理材85を配置する際には、表層処理材85の被覆体81同士の接続部83と面状補強材87の接続部89とを、同一断面に配置しないことが望ましい。なお、面状補強材87の接続部89は、面状補強材同士を重ねて配置する、面状補強材同士を縫合する、面状補強材に予め設けた孔にロープ等を通して相互に締結するなどの方法で形成される。
【0080】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0081】
1、1a、1b………袋体
2、2a、22、28、28a、52、72、85………表層処理材
3、3a、23、33、33a、53………接続治具
5………内周面
7、37………凹凸
8、21、36………確認口
9、34………圧力センサ
10a、10b、30a、30b、54a、54b、77a、77b………端部
11、41、61、75………流動固化材
13、24、48………内径
15、26、46………外径
19、35、79………外周面
27、59………ボルト
29、67………孔
31、31a、31b、51、51a、51b、71、71a、71b………筒体
55………板状部材
57………円筒部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流動固化材が充填された第1の被覆体と、
内部に流動固化材が充填された第2の被覆体と、
前記第1の被覆体と前記第2の被覆体とを接続する筒状の接続治具と、
を具備することを特徴とする軟弱地盤の表層処理材。
【請求項2】
前記接続治具は、内径が前記第1の被覆体および前記第2の被覆体の外径よりも小さく、
前記接続治具の内周面には、前記第1の被覆体および前記第2の被覆体のずれを防止する係止部が設けられることを特徴とする請求項1記載の軟弱地盤の表層処理材。
【請求項3】
前記係止部は、前記接続治具の内周面に設けられた凹凸部であり、
前記第1の被覆体の端部と前記第2の被覆体の端部とが、前記接続治具の内部で突き合わされ、
前記凹凸により、前記第1の被覆体および前記第2の被覆体と前記接続治具との一体性が確保されることを特徴とする請求項2記載の軟弱地盤の表層処理材。
【請求項4】
前記接続治具の側面には孔が設けられ、
前記係止部は、前記孔に設けられ、前記接続治具の内周面に突出する固定具であり、
前記第1の被覆体の端部と前記第2の被覆体の端部とが前記接続治具の内部で突き合わされ、
前記固定具により、前記第1の被覆体および前記第2の被覆体と前記接続治具との一体性が確保されることを特徴とする請求項2記載の軟弱地盤の表層処理材。
【請求項5】
前記接続治具は、前記流動固化材の充填状況を確認するための確認口を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の軟弱地盤の表層処理材。
【請求項6】
前記接続治具は、前記流動固化材の充填圧力を確認するための圧力センサを有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の軟弱地盤の表層処理材。
【請求項7】
前記第1の被覆体および前記第2の被覆体は、端部が開口した筒体であり、
前記接続治具は、外径が前記第1の被覆体および前記第2の被覆体の内径よりも小さく、外周面に凹凸が設けられ、
前記第1の被覆体の端部および前記第2の被覆体の端部が前記接続治具の外周面に固定され、
前記凹凸により、前記第1の被覆体および前記第2の被覆体に充填された流動固化材と前記接続治具との一体性が確保されることを特徴とする請求項1記載の軟弱地盤の表層処理材。
【請求項8】
内部に流動固化材が充填された第1の筒状被覆体と、
前記第1の筒状被覆体の端部に挿入されて固定された第1の円筒部材と、前記第1の円筒部材の端面を塞ぐように固定された第1の板状部材とからなる第1の接続治具と、
内部に流動固化材が充填された第2の筒状被覆体と、
前記第2の筒状被覆体の端部に挿入されて固定された第2の円筒部材と、前記第2の円筒部材の端面を塞ぐように固定された第2の板状部材とからなる第2の接続治具と、
を具備し、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とが突き合わされて一体化されたことを特徴とする軟弱地盤の表層処理材。
【請求項9】
内部に流動固化材が充填された第1の筒状被覆体と、
端部に前記第1の筒状被覆体が挿入されて固定され、内部に流動固化材が充填された第2の筒状被覆体と、
を具備することを特徴とする軟弱地盤の表層処理材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−247005(P2011−247005A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122250(P2010−122250)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】