説明

軟質ポリオレフィン系樹脂組成物

【構成】 (1)プロピレンおよび/またはブテン−1の含有率が50%以上の低結晶性ポリオレフィンを20〜100wt%(2)結晶性ポリプロピレンを80〜0%からなる樹脂組成物100重量部に対して(3)油ゲル化剤0.5重量部以上添加してなる軟質ポリオレフィン系樹脂組成物。
【効果】 本発明により、軟質ポリオレフィン系樹脂のベタ付き成分である低結晶性低分子量成分のブリード現象を防止でき、チップ状樹脂やフィルム、シートにした時の表面ベタ付き性を改良できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は表面粘着性のない軟質ポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および問題点】従来、軟質系ポリオレフィン系樹脂としては、可塑化ポリ塩化ビニルやポリエチレン系樹脂がほとんどであり、プロピレン系は高結晶性ポリプロピレンを使用した硬質系樹脂が主体であった。軟質のポリプロピレン系樹脂を得るためにはポリプロピレンとして低結晶性ポリプロピレン系重合体を使用することが考えられるが、通常、当該重合体は低結晶性低分子量成分を多量に含むため表面粘着性がある。このため、押出機で連続的に成形するために当該樹脂をチップ状にしても、表面粘着性のためチップが互いに粘着して団子状になりホッパーから連続供給できないなどの問題があった。さらに、フィルム状に成形したとしても、時間の経過とともに表面に粘着性成分がブリードして、フィルムはブロッキングしやすく、フィルムの口開きの悪さが避けられず、通常のフィルム用途としては実用性に乏しいものであった。本発明者は、前述のような問題に対して鋭意検討を加えた結果、低結晶性低分子量重合体を多量に含む軟質ポリオレフィン系樹脂に油ゲル化剤を添加することでベタ付き成分の表面への移行を阻止でき、結果として、表面粘着性のない軟質樹脂を得ることを見いだし発明を完成した。
【0003】
【問題点を解決するための手段】本発明は、この油ゲル化剤の作用を利用し、軟質ポリオレフィンのブリードしやすい低分子量でかつ低結晶性成分を油ゲル化剤の3次元構造体の中に閉じ込めることで、樹脂本来の軟質性を保ちつつ、ベタ付き成分のブリードを防止することに成功した。本発明は(1)プロピレンおよび/またはブテン−1の含有率が50%以上の低結晶性ポリオレフィンを20〜100wt%(2)結晶性ポリプロピレンを80〜0%からなる樹脂組成物100重量部に対して(3)油ゲル化剤0.5重量部以上添加してなる軟質ポリオレフィン系樹脂組成物を提供するものである。本発明のプロピレンおよび/またはブテン−1の含有率が50%以上の低結晶性ポリオレフィンとしては、プロピレンおよび/またはブテン−1成分含有量が所定量のポリプロピレン、ポリブテン−1、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ブテン−1・エチレン3元共重合体、プロピレン・ヘキセン−1・4メチルペンテン−13元共重合体などのプロピレン成分が主成分である低結晶性ポリオレフィンが挙げられる。低結晶性ポリオレフィンがプロピレン・エチレン共重合体の場合にはエチレン成分が0〜30wt%、好ましくは1〜20wt%のものが望ましい。エチレンが30wt%を越えると樹脂が柔らかくなりすぎ実用的でない。また、プロピレン・ブテン−1共重合体の場合には、ブテン−1成分含有量が0〜50wt%、好ましくは1〜50wt%、特に好ましくは10〜50wt%のものが望ましい。ブテン−1成分含有量が50wt%より大きくなると樹脂の軟化点が低くなりすぎる。本発明でいう結晶性ポリプロピレンは、プロピレン単独重合体、エチレン成分を1〜30wt%、好ましくは2〜25wt%含有するプロピレン・エチレンのランダム共重合体またはブロック共重合体、ブテン−1を1〜20wt%含有するプロピレン・ブテン−1のランダム共重合体またはブロック共重合体が挙げられる。これらは一般に押出成形、射出成形、ブロー成形などに使用される。本発明の油ゲル化剤は低分子化合物であるがそれ自身が形成する水素結合によって分子会合体を形成し、3次元構造体を構成する。この3次元構造体の内部に油、流動パラフィンをはじめとする低分子量物を取り込んで、ゲル状となり、油などの成分を外部に浸出することなく一定の形状を保つことができるものである。本発明の油ゲル化剤として、特に限定されないが、12ヒドロキシステアリン酸、N−アシルアミノ酸アミン塩、N−アシルアミノ酸アミド、N−アシルアミノ酸エステルなどが挙げられる。これらの油ゲル化剤のうち、N−アシルアミノ酸アミン塩、N−アシルアミノ酸アミド、N−アシルアミノ酸エステルについてはα、β、ω−アミノ酸が用いられ、特にグリシン、αまたはβアラニン、バリン、セリン、フェニルアラニン、3.4ジオキシフェニルアラニン、システイン、メチオニン、β−アミノカプロン酸、リジンオルニチン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸などが好ましい。N−アシル基としては炭素数1〜30の直鎖および分岐の飽和、不飽和の脂肪族アシル基または芳香族アシル基であればよく、特にカプロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、ステアロイル基やこれらの混合物が好ましい。エステル化に使用するアルコールは炭素数1〜30の直鎖および分岐の飽和、不飽和の脂肪族アルコールが用いられ、特にオクチルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、ステアリルアルコールなどがよい。さらに、シクロヘキサノールの如き脂環式アルコール、ベンジルアルコールも同様に用いられる。また、アミド化、アミン塩に使用するアミンはアンモニウムおよび炭素数1〜60の直鎖および分岐の飽和、不飽和の一級、二級アミン、モノ、ジアルコールアミンが用いられる。アミン塩は三級アミン、トリアルコールアミンも用いられ特に、ブチルアミンオクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミンなどがよい。脂肪族アミンの他に、脂環式アミン、芳香族アミンであってもよい。本発明に用いるこれらの油ゲル化剤は単独あるいは複数組合せて使用することもできる。油ゲル化剤の添加量は樹脂組成物の構成によって異なり一概に言えないが、樹脂組成物100重量部に対して0.5重量部以上、好ましくは1.0重量部以上である。油ゲル化剤を加える方法は公知の種々の方法を用いることができる。例えばドライブレンドする方法、あるいは押出機で溶融混合してペレット化する方法がある。なお、本発明の特徴を失わない範囲において、必要に応じて酸化防止剤、難燃剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤を添加できる。以下、実施例にしたがってさらに詳細に述べる。
【0004】
【実施例】低結晶性ポリオレフィンとして以下のa)〜c)の宇部レキセン社製の樹脂を使った。
a)プロピレンホモ系:UT2115(溶融粘度1500cps/190℃)
b)プロピレン・エチレン共重合体系:UT−2535(エチレン含量14wt%、溶融粘度3000cps/190℃)
c)プロピレン・ブテン−1共重合体系:UT−2715(ブテン−1含量35wt%、溶融粘度1500cps/190℃)
結晶性ポリプロピレンとして密度0.90g/cm3 、メルトフローレイト(MFR)(230℃)=1.0g/10分(宇部興産(株)製、B301H)を使用した。油ゲル化剤として12ヒドロキシステアリン酸とラウロイルL−グルタミン酸α、γジブチルアミドを使用した。実施例、比較例を表1、2に示す配合割合の樹脂組成物と油ゲル化剤とを溶融混練し、溶融物をテフロンシート上に流延し、約0.5mmの厚みになるようにドクタブレードで製膜した。次いで、テフロンシートごと40℃の恒温槽中で30日間放置後、取り出し、膜の表面に高密度ポリエチレンフィルム(厚み0.1mm)を軽く押し付け、引きはがしやすさで表面粘着性を評価した。これらの結果を表1、2に示す。
【0005】
【表1】


【0006】
【表2】


【0007】
【発明の効果】本発明により、軟質ポリオレフィン系樹脂のベタ付き成分である低結晶性低分子量成分のブリード現象を防止でき、チップ状樹脂やフィルム、シートにした時の表面ベタ付き性を改良できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (1)プロピレンおよび/またはブテン−1の含有率が50%以上の低結晶性ポリオレフィンを20〜100wt%(2)結晶性ポリプロピレンを80〜0%からなる樹脂組成物100重量部に対して(3)油ゲル化剤0.5重量部以上添加してなる軟質ポリオレフィン系樹脂組成物。