説明

軟質乳房シールド

乳房シールドが、低ジュロメータ硬度の材料で構成されている。乳房シールドは、全体として乳首の形状に対応した乳首トンネルと、乳房シールドを通って流体を運ぶ孔とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、搾乳器(「搾乳ポンプ」と呼ばれることがある)に関し、特に、授乳中の母親により搾乳器と共に使用される乳房シールドに関する。
【背景技術】
【0002】
搾乳器は周知であり、かかる搾乳器は一般に、乳首を含む乳房の一部に被さる乳房シールド(フードとも呼ばれる)、乳房シールドに連結されていて、間欠的な真空(負圧)状態を乳房シールド内に生じさせる真空ポンプ及び典型的には絞り出した母乳の受け器で構成されている。真空ポンプの間欠的吸引作用は、その最も単純で且つ最も一般的な形態では、乳房を引っ張り、これをマッサージして母乳を絞り出すのに役立つ。絞り出された母乳は典型的には、シールドから出て収集容器、例えば哺乳瓶内へ流入し、この収集容器は、通常乳房シールド器具に直接取り付けられているが、これも又、遠くに位置する場合がある(管状導管連結部により)。搾乳器の場合、手動駆動式真空ポンプ並びにモータ(家庭用電流、電池、空気圧等により)駆動される真空ポンプが、ありふれたものである。本発明は、いかなる種類のポンプ排出機構にも限定されない。
【0003】
真空ポンプは間欠的に真空(場合によっては、一部を圧縮するための正圧)を乳房シールド内に生じさせ、乳房シールドは、乳首を覆うと共に典型的にはその隣りの乳房それ自体の一部を覆う。真空ポンプの間欠的な吸引作用は、乳房を(真空により)引っ張って乳房を圧縮し、それにより乳飲みに似た動作で母乳を絞り出すのに役立つ。絞り出された母乳は通常、乳房シールドから収集容器、例えば瓶の中に流れ、保存されて後で使用される。上述の搾乳器は、米国特許第4,857,051号明細書及び同第4,929,229号明細書に示されており、搾乳器一般に関するそれ以上の詳細についてはこれら米国特許を参照されたい。
【0004】
恐らくは、典型的には搾乳器と関連して用いられる最もありふれた乳房シールドは、円錐形の形態をしており、通常は漏斗の形をしている。これら乳房シールドは伝統的には、定形の切頭した部分円錐形部分及び円錐形部分の下流側端部のところに設けられた乳首トンネル延長部を用いて作られている。乳首及びその周りの乳房は、乳首が乳首トンネル内に延びる状態で円錐形部分内に受け入れられる。真空下において、乳房は、乳房シールド内に更に引き込まれ、通常は次に乳首が乳首トンネル内に更に引き込まれ、それにより周囲の乳房も又、乳首の周りで圧縮される。
【0005】
かくして、授乳中の母親の乳首を真空下で乳首トンネルの壁に押し付けることができる。これにより、乳首が乳首トンネル内へ深く動くときに壁との摩擦が生じる場合がある。また、乳房と乳首トンネルだけでなく、円錐形部分との間にも摩擦が生じる場合がある。母親の乳房が押し付けられる硬質構造体は、率直に言えば赤ん坊の柔らかい口や口蓋を彷彿させるものではない。
【0006】
硬質乳房シールド組立体のフード又はシールド内に用いられるインサートも又知られており、乳房シールドをサイズ変更するために用いられている。即ち、インサートは、小さい乳房のために円錐形部分及び(又は)乳首トンネルの内径を減少させるために大型の漏斗状乳房シールド内に用いられる。幾つかの硬質型乳房シールドも又、サイズ変更機構と同じほど多くではないが、母乳の絞り出し及び快適さを向上させようとして、硬質外部支持体又はフレームの内部に設けられた軟質乳房係合部分又は器具と共に用いられる場合がある。
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,857,051号明細書
【特許文献2】米国特許第4,929,229号明細書
【発明の開示】
【0008】
本発明の主目的は、搾乳器用の改良型乳房シールド(又はフード)を提供することにあり、この乳房シールドは、大きな一特徴では、乳首の領域が非常に軟質且つ柔軟であり、周りの乳房がどこであれ、これを一層包囲することができる。上述の目的を達成する実施形態は実質的に、乳房係合領域の全てが低ジュロメータ硬度の材料で作られる。特に望ましい形態のこの実施形態は、低ジュロメータ硬度材料から成る全体として中実の部品である。この望ましい形態では、乳房シールドは、赤ん坊の口や口蓋と非常によく似て極めて軟質且つ柔軟である。これは更に有利には、乳首及び乳房を受け入れるオリフィス(開口部)が非常に軟質の材料に照らして圧力下で(負圧及び(又は)正圧下で)縮むことができる限り、多種多様な乳房サイズに適合する(一サイズで全てのサイズに間に合う)。したがって、この形態では内部アダプタは不要である。さらに、本発明の乳房シールドは、乳房及び乳首接触部分になんら追加の構造体を設けないで用いられる。換言すると、硬質シェルと比較的柔軟性のあるライナ又はインサート、或いは袋部分の両方を有する場合のある多くの先行技術の乳房シールドとは異なり、本発明は、外側シェル又は硬質要素、或いは主シールド部分を支持する取付け状態の支持要素を用いないで働く。本発明の乳房シールドは、硬質又は外側シェル要素をなんら必要としないで機能する。
【0009】
上述の発明の特定の特徴では、乳房シールドは、約20又は20未満のショアAスケール硬さのものであるのがよい。乳房シールドは、約10又は10以下、実際には1又は1以下のショアAスケール硬さのものであってもよい。より詳細には、ショア00スケールでは、約20〜約45が、現在最も望ましい範囲であると考えられる。本発明の最も重要な属性のうちの1つは、乳房シールドが非常に低いジュロメータ硬度の材料で作られていること及びその材料がこれに負圧が印加された場合にどのように挙動するかであると考えられる。低ジュロメータ硬度材料は、使用中、乳房と乳房シールドとの間の摩擦を最小限に抑えると考えられる。本明細書で明らかなように、最も好ましいジュロメータ硬度は、ショアAスケール硬さが5又は5以下、最も好ましくは、ショア00スケール硬さが約20〜約45であると考えられる。上述した範囲よりも低い値でも、本発明の乳房シールドでは有用な場合がある。
【0010】
軟質乳房シールド材料の固有の適合性自体では十分でない場合、本発明の別の特徴は、乳房シールドに用いられる1つ又は複数の圧縮リングを提供することであり、これらリングは各々、乳首トンネルの領域内で乳房シールドの外部周りに位置決めされ、乳首トンネルの内径を変化させる。かかる一実施形態では、アダプタリングが、様々な互いに異なる内径の状態で提供される。ユーザは、自分の望むサイズに合わせて乳首トンネル材料を圧縮するリングを選択し、選択されたリングが単に乳首トンネル周りに取り付けられて乳首トンネルを所定のサイズに合わせて圧縮し、或いは、もっと詳しく言えば、トンネルについて別の形状が望ましい場合、リングシステムが容易に受け入れる形状を選択する。かくして、別々のリングは、快適さの選択のために種々のサイズ(直径)及び様々な形状を含むのがよい。圧縮リングは、硬質材料、例えば硬質プラスチック又は所望の圧縮を生じさせる弾性バンド、ラチェット式ベルト等で構成されたものであるのがよい。
【0011】
乳首トンネルの可変内径をもたらす他の手段が想定されている。例えば、インフレート可能又は調節可能な袋又は弱められた材料の領域を本発明の乳房シールドの乳首トンネル領域に隣接して設けるのがよく、これは、加圧時に、負圧か正圧かのいずれかが、乳首トンネルの直径の変化を生じさせるよう機能できる流体源を備えるのがよい。本明細書において提供される例は、性質上本発明を限定するものではないことは理解されよう。
【0012】
本発明の乳房シールドは、搾乳器の一部(例えば、ベース構造体又はハウジングから延びる取付けカラー又は瓶に取り付けられた導管部分)に取付け可能である別個の部品であってもよく、或いは搾乳器の隣接の部分(例えば、上述のベース構造体)と一体に作られたものであってもよい。後者の場合、本発明の別の特徴は、収集チャンバ(例えば、瓶)に取り付けられ、一体形弁構造体を更に有するのがよい搾乳器の部分と一体の乳房シールドを提供することにある。
【0013】
本発明の一体形乳房シールドの一形態は、2種類のジュロメータ硬度の特徴部、即ち、乳房シールド部分用の上述の低ジュロメータ硬度材料及びそれ自体瓶の口に取り付けられる収集(又は捕集)チャンバ部分を含むベース構造体用の比較的高いジュロメータ硬度材料を有する。収集チャンバ部分は、母乳が乳首トンネルから流れ、容器に移される前に一時的に貯まることができる領域である。ベース構造体は、適切な容器口向きの嵌合取付け具を備えたカラー又は取付け部分を備えた状態で(例えば、成形により)作られる。これは、螺合、スナップ嵌合等であるのがよい。このデュアルジュロメータ硬度形態では、搾乳器の全て(収集容器及び真空源)を一体部品の状態で形成するのがよい。これは、収集チャンバの下流側端部のところに一体形弁構造体を更に有するのがよい。例えば、一実施形態では、同じ高いジュロメータ硬度材料から成形されたダックビル(duckbill)型弁を想定しており、この弁は、真空下で閉じるが、圧力を解除すると、母乳が通過できるようにする。
【0014】
本発明の実施形態の更に別の特徴は、快適さが得られるよう全体又は一部が湾曲し又は湾曲可能な軟質乳房シールドを提供することにある。代表的には、搾乳器は、全体として立った姿勢の母親に用いられるよう設計されている。かくして、乳房シールドは、収集容器に対して上方に傾けられており、収集容器は、この形態では全体として垂直である。授乳中の母親は、幾分もたれ掛かりたいと望む場合があり、又は場合によっては椅子に深く腰掛けたいと思う場合がある。しかしながら、標準型搾乳器は、典型的にはこの後にもたれ掛かった姿勢に対応するのに好都合ではない。というのは、絞り出された母乳は、まず最初に本質的に漏斗内へ「アップヒル又は上り坂(up hill)」状態で流れなければならないからである。湾曲した本体を備える乳房シールドを提供することにより、収集容器への「ダウンヒル又は下り坂(down hill)」母乳の流れを依然として維持しながら、快適に椅子に深く掛けるのが容易になる。この湾曲本体は、本発明では、軟質(低ジュロメータ硬度)の乳房シールドの細長いトンネルにより提供でき、この細長いトンネルは、一部が湾曲しているものであってよいが、乳房シールドを必要な角度に適合させるよう母親が単に軟質乳房シールドを定位置に曲げることにより一段と湾曲させるのがよい。
【0015】
現時点において計画された実施形態の例についての以下の詳細な説明を添付の図面と関連して参照すると、本発明の内容が更に理解されると共にその属性及び利点が更に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書において説明する第1の実施形態は、図1、図5、図7及び図9にも示されている所謂デュアルジュロメータ型(2種類のジュロメータ硬度を有する)バージョンである。以下に詳細に説明するように、このバージョンは、乳房シールド本体を構成する非常に軟質で低ジュロメータ硬度の部品及び乳房シールド本体に合わせて成形され、搾乳器の残部(母乳を受け入れるべき容器及び真空源を除く)を構成する硬質で高ジュロメータ硬度の部品を有する。
【0017】
図1に示すように、乳房シールド5は、ベース構造体40に連結され、このベース構造体は、液体導管(図示していないが、ベース40の内部に設けられている)と、収集又は捕集チャンバ6及び収集器具(ここでは、瓶8)に取付け可能な取付け部分44を備えた下流側端部42を有している。図7を参照すると、収集チャンバ6の出口のところには、弁28を設けるのがよく、この弁は、収集チャンバ6から瓶8まで延びる液体導管の一部である通路(図示せず)を閉鎖する。弁28は、この場合、ダックビル(duckbill)弁(図7)と呼ばれている。真空又は負圧を周知形式の吸引装置10(これは、手動操作式であってもよく、モータ駆動式であってもよい)から乳房シールド5にかけられると、弁28は、収集チャンバ出口48を閉鎖し、負圧が乳房シールド5の内部にかけられる。出口48は、負圧が解除されると開かれて弁が開き、それにより絞り出されたミルクを乳房シールド内に流入させ、ここから収集チャンバ6に至らせ、瓶8内に流れるようにする。弁機構体は、多くの他の形式のものであってよいが、以下に更に説明するように、ダックビル型弁が、この一体成形デュアルジュロメータ装置との関連においては最も利用可能性が高いと考えられる。
【0018】
真空又は吸引装置10は、とりわけ、手動操作式ピストンポンプ、電池式ダイヤフラムポンプ、真空ライン(管)を用いる家庭用電流駆動式真空ポンプであるのがよい。この場合も又、本発明に使用できるポンプの動作の詳細を把握するには米国特許第4,857,015号明細書及び同第4,929,229号明細書を参照するのがよい。しかしながら、本明細書において開示する本発明は、それに関しては、任意特定の真空装置又は正圧装置には限られない。真空源10は、管7を介して乳房シールド/ベース構造体に設けられたポート9に連結されている。ポート9は、乳房シールド5の内部56(図4参照)と通じている。
【0019】
乳房シールド5は、任意適当な軟質の、即ち、低ジュロメータ硬度の材料で作られるのがよいが、好ましい形態では、軟質シリコーン材料、例えばシリコーンゴムで作られる。変形例として、乳房シールドは、他の材料、例えば熱可塑性エラストマー(TPE)のものであってもよい。
【0020】
乳房シールド5の構成材料が、実質的に約1〜約20のジュロメータAスケール(又はショアAスケール)硬さを有することが最も望ましい。より好ましくは、材料は、約1〜約5のジュロメータAスケール硬さを有し、この材料は、ショア00スケール硬さで言えば、最も好ましくは約20〜約45のものである。それにもかかわらず、この範囲以下でも、作用効果があると考えられる。
【0021】
乳房シールド5の肉厚は、約1/8インチ〜約1/2インチ(3.18mm〜12.7mm)である。より好ましい形態では、肉厚は、約3/8インチ(9.53mm)である。
【0022】
ベース構造体40の残部のジュロメータ硬度は、乳房シールドを安定した形態で取り付け、乳房シールドへの真空又は正圧の印加に抵抗する仕方で容器の口への取付けを容易にするのに十分な剛性をもたらす硬さのものである。
【0023】
この種のデュアルジュロメータ構造体を構成する仕方の詳細及び最も効率が高いと考えられる種々のジュロメータ硬度に関する好ましい範囲についてのそれ以上の詳細は、同時係属米国特許出願第10/696,190号明細書から把握することができ、かかる米国特許出願明細書は、授乳用乳首と関連してかかるデュアルジュロメータ構造を開示している。この出願に開示された新規な構造は、乳房シールドに係る本願に容易に移入できる。
【0024】
乳房シールド5は、容器8に流体密に取付け可能であるように設計されている収集チャンバ部分6を有している。変形例として、第2のカラー又はこれと同様な取付け部品を用いて乳房シールドを容器に取り付けてもよい。収集チャンバ部分6の構成材料は好ましくは、乳房シールド部分5と同じ又はこれよりも大きなジュロメータ硬度であるのがよいジュロメータAスケール硬さを有する。一実施形態では、収集チャンバ部分6は、約1〜約100のジュロメータAスケール硬さを有する。より好ましくは、収集チャンバ部分6の材料のジュロメータAスケール硬さは、実質的に約20〜約90であり、より好ましくは、約70〜約90である。収集チャンバ部分6は、容器への堅固且つ漏れのない取付けを可能にするのに十分なジュロメータAスケール硬さを有するべきであることは理解されよう。容器8への取付けのための手段としては、例えば、ねじ山、スナップ嵌合等が挙げられる。
【0025】
圧縮リング30が、乳房シールド5の外部を包囲している。乳房シールド5の材料が非常に軟質であり且つ柔軟性があるので、乳房シールドを容易に圧縮し、それにより乳首及びその隣の乳房を受け入れるトンネル24のサイズを変化させることができる。当然のことながら、乳房シールド単独で、圧縮装置を必要としないで、ぴったりと嵌まるのに十分な弾性度をもたらすことができる。しかしながら、この場合、リング30は、大きさを変えることができるように使用できる。リングは、硬質プラスチックで作られている。ただし、その機能は、他の多くの仕方で同様に達成できる。図6を参照すると、複数個のリング30を利用でき、かかるリングの各々の内径Dが互いに異なっていることが意図されている。変形例として、分割され、それにより調節可能な単一の硬質リングを、このリングを所望のサイズにロックする或る適当な固定機構体と共に用いてもよい。リング30を乳房シールド5上でこれに沿って定位置まで滑らせる。
【0026】
次に図2を参照すると、本発明の教示に従って構成された乳房シールドの別の実施形態が示されている。この乳房シールドは、低ジュロメータ硬度の材料で構成されている。この実施形態は、乳房シールド5′のものであり、この乳房シールドは、これに取り外し可能に取り付けられるようになった搾乳器の残部とは別体である。この実施形態5′の第1の端部12は、広い断面(大きな直径)を有し、断面形状が全体として円形である(その長い方の軸線に沿って見て)。なお、任意の適当な断面形状が想定されている。第1の端部12は、円周方向フランジ又はリム14を更に有している。乳首トンネル24が、第1の端部12内へ開口し、この乳首トンネルは、第2の下流側端部16に向かって長手方向に延びている。使用中、円周方向リム14のベースが、ユーザの乳房に被せられて、乳首トンネル24が乳房の乳首を覆って位置する(これを包囲する)ようになっている。乳房シールド5の第2の端部16は、端部12の断面よりも僅かに小さな断面を有している。
【0027】
この乳房シールド5′の本体全体は、全体として円筒形である。なお、本体全体について任意の形状が想定されている。第2の端部16は、複数個の孔20を有している。これら孔は、母乳の通過並びに乳房シールド5′の内部56への真空の印加及び(又は)これからの解除を可能にする。
【0028】
複数個の孔20の一配列状態が示されている。孔20は、全部で3つの個々の穴である。ただし、1つを含む任意適当な数の孔が想定されている。孔20は、「インゲンマメ」の形をしている。ただし、台形を含む任意の形状が想定されている。孔20は、乳房シールド5′の中間軸線又は中央軸線から外方に間隔を置いた円形のパターンに配置されている。乳房シールド5′を通って流体を効果的に運搬する孔20の他の配列状態が想定されており、これは、まさにかかる配列状態の1つである。
【0029】
図4に示すように、孔20は、乳房シールド5′の材料中に形成された長手方向(軸方向)通路である。各孔20は、乳首トンネル24と連通状態にある内側開口部21を有している。各孔20は、乳房シールド5′の外部に開口した外側開口部22を有している。流体が、負圧がかけられると、乳首トンネル24から内側開口部21内へ流入し、孔20を通り、そして外側開口部22を通って流出することができる。これと同様に、負の流体圧力は、孔20を通って乳首トンネル24に出入りする。
【0030】
孔20を包囲して、端部16に形成された環状隙間18が設けられている。この隙間は、相補形状の硬質リング形状のカラー32(図8参照)を収納するのに役立ち、このカラーは、それにより、乳房シールド5′を搾乳器のベース構造体の残部に取り付ける。この種の搾乳器ベースの取付け構造は、当該技術分野においては公知であるが、硬質乳房シールド、例えば、締り嵌め関係をなしてカラー32に取り付けられる硬質乳房シールドを備えたものであるに過ぎない。
【0031】
乳首トンネル24は、内周部25及び外周部26を備える。内周部25及び外周部26は、乳房シールド5の肉厚を更に定めている。肉厚は、乳首トンネル24がその全体的な形状を保持する構造をもたらす。
【0032】
図8は、別の実施形態としての乳房シールド5″を示しており、この乳房シールド5″は、その長手方向長さに沿って湾曲している。湾曲した本体を備える乳房シールドを提供することにより、収集容器を比較的垂直状態のままであるようにすることができる状態で、快適に椅子に深く掛けやすくなる。このような曲率により、所望ならば、上述したのと同一の低ジュロメータ硬度材料で作られた乳房シールド5″が性質上非常に軟質であり且つ柔軟であるとすれば、母親による乳房シールド5″のより一層の曲げが容易になる。
【0033】
図9は、本発明の更に別の実施形態としての乳房シールド105を示している。乳房シールド105は、母親の乳首及び周りの乳房組織の少なくとも一部を受け入れるような寸法形状の第1の端部112を有している。第1の端部112は、半径方向に延びる環状のフランジ又はリム114を有している。リム114の肉厚は、約3/8インチであるが、或る範囲の肉厚が意図されていることは理解されよう。リム114は、内面125により画定された乳房シールド105の内部156内に通じる乳首トンネル124を備えている。乳房シールド105の第1の区分“L”は、上述した低ジュロメータ硬度の材料で作られ、乳房シールドの第2の区分“H”は、上述した比較的高いジュロメータ硬度の材料で作られている。この実施形態の部分112の肉厚は、約1/4インチ(6.35mm)である。
【0034】
この実施形態では、区分Lの断面は、円筒形である。乳房シールド105は、第1の区分Lから、区分Hへ内方にテーパし又は傾斜しており、この区分Hは、第2の又は下流側端部116に形成された環状隙間又は溝118を備えた取付け区分160を含む。取付け区分160は、ベース構造体140のカラー132を受け入れる。カラー132は、ベース構造体140のハウジングの円筒形延長部である。
【0035】
区分Hは好ましくは、上記において詳細に説明したように区分Lよりも高いジュロメータ硬度の材料で作られ、区分Lとベース140の両方のより軟質のシリコーンへのしっかりとした取付けを可能にするのがよい。ベース140は、剛性を増大させた区分Hの一部であってもよく、又は別体の部品であってもよい。
【0036】
かくして、多くの実施形態を本明細書において様々に説明したが、当業者であれば、種々の実施形態が他の実施形態に用いることができる種々の潜在的な特徴及び(又は)設計を示していることは認識されよう。さらに別の変形例、応用例及び改造例は、全て特許請求の範囲に記載された本発明の範囲及び均等範囲に属するものである限り、本発明の精神及び範囲に依然として含まれよう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の或る幾つかの特徴に従って構成された組立て状態の乳房シールド及び関連の収集容器付き一体成形ベース構造体の立面図である。
【図2】別個に取付け可能な要素としての本発明に従って構成された乳房シールドの斜視図である。
【図3】図2の乳房シールドの正面図である。
【図4】図2の乳房シールドの断面側面図である。
【図5】図1の乳房シールド及び関連の一体形ベース構造体の斜視図である。
【図6】図1及び図5に示す圧縮リングの斜視図である。
【図7】弁装置を示すための部分切除立面図である。
【図8】図2〜図4の乳房シールドの改造型バージョンを示す図である。
【図9】本発明の乳房シールドの別の実施形態の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房シールドであって、低ジュロメータ硬度の材料で作られた軟質の乳房シールドから成る、乳房シールド。
【請求項2】
前記軟質乳房シールドは、乳首受け具が形成された実質的に中実のものであり、前記乳首受け具は、流体導管内へ延びる、請求項1記載の乳房シールド。
【請求項3】
前記軟質乳房シールドは、形状が円筒形であり、前記乳首受け具は、乳首トンネル内へ延びている、請求項1記載の乳房シールド。
【請求項4】
前記軟質乳房シールドは、約20以下のショアAスケール硬さを有する、請求項1記載の乳房シールド。
【請求項5】
搾乳器であって、
約20以下のショアAスケール硬さを有する乳房シールドを有し、該乳房シールドは、第1の端部のところに設けられていて、乳首トンネル内へ延びる乳首開口部を有し、該開口部は、前記搾乳器の流体導管と連通しており、前記乳首トンネルは、乳首を受け入れるような寸法形状になっており、
前記流体導管と連通していて、前記乳首から絞り出された流体を受け入れる収集容器を有し、
前記乳首開口部と連通していて、該乳首開口部に間欠的な圧力を加える圧力源を有する、搾乳器。
【請求項6】
約20以下のショアAスケール硬さを有する材料で作られた乳房シールド。
【請求項7】
約10以下のショアAスケール硬さを有する材料で作られた乳房シールド。
【請求項8】
約20〜約45のショア00スケール硬さを有する材料で作られた乳房シールド。
【請求項9】
乳房シールドであって、
乳首トンネルの一端部のところに乳首受け具を有する細長い乳房シールド部材を有し、前記乳首トンネルは、前記乳房シールド部材の長手方向長さに沿って延び、前記乳房シールド部材は、使用の際に曲げることができる軟質部材で作られている、乳房シールド。
【請求項10】
前記乳房シールド部材は、前記長手方向長さに沿って湾曲している、請求項9記載の乳房シールド。
【請求項11】
調節可能なリングが、前記乳首トンネルの外壁内に位置決めされている、請求項9記載の乳房シールド。
【請求項12】
複数個のリングのうちの1つが、前記乳首トンネルの外壁上に位置決めされ、前記複数個のリングは各々、互いに異なる内径を有する、請求項9記載の乳房シールド。
【請求項13】
乳房シールドであって、
母親の乳首を受け入れるようになった実質的に中実の部材を有し、該部材には、乳首受け具が形成され、
前記実質的に中実の材料は、約20以下のショアAスケール硬さで表された低ジュロメータ硬度を有する、乳房シールド。
【請求項14】
搾乳器であって、
少なくとも母親の乳首を受け入れるようになった乳房シールドを有し、前記乳房シールドは、低ジュロメータ硬度の材料で作られ、
前記低ジュロメータ硬度よりも比較的高いジュロメータ硬度を有する材料で作られたベース構造体を有し、該ベース構造体は、前記ベース構造体を容器の口に取り付けるようになった容器取付け部分を有し、
前記ベース構造体及び前記乳房シールドは、一体部品で形成され、
間欠的圧力源を有し、
前記乳房シールド内に配置された母親の乳房から母乳を絞り出すよう前記間欠的圧力を前記乳房シールドに伝える導管構造体を有する、搾乳器。
【請求項15】
乳房シールドであって、低ジュロメータ硬度の材料で作られた軟質の一体形乳房シールドから成る、乳房シールド。
【請求項16】
前記材料は、約20以下のショアAスケール硬さを有する、請求項15記載の乳房シールド。
【請求項17】
前記材料は、約10以下のショアAスケール硬さを有する、請求項15記載の乳房シールド。
【請求項18】
前記材料は、約20以下のショアAスケール硬さを有する、請求項15記載の乳房シールド。
【請求項19】
前記乳房シールドは、約1/8インチ〜約1/2インチ(3.18mm〜12.7mm)の肉厚を有する、請求項15記載の乳房シールド。
【請求項20】
前記乳房シールドは、約1/4(6.35mm)インチの肉厚を有する、請求項15記載の乳房シールド。
【請求項21】
前記乳房シールドは、約3/8インチ(9.53mm)の肉厚を有する、請求項15記載の乳房シールド。
【請求項22】
前記乳房シールドは、乳首及び幾分かのその周りの乳房組織を受け入れるような寸法形状の開口部を備えた円筒形部分を有する、請求項15記載の乳房シールド。
【請求項23】
前記乳房シールドを搾乳器の受入れ部分に取り付けるようになった取付け部分を更に有する、請求項22記載の乳房シールド。
【請求項24】
前記取付け部分は、前記円筒形部分から半径方向内方に傾斜した上流側部分を有する、請求項23記載の乳房シールド。
【請求項25】
前記取付け部分は、前記搾乳器の前記受入れ部分に取り付けられるように寸法決めされると共に位置決めされている環状溝を備えた下流側部分を有する、請求項24記載の乳房シールド。
【請求項26】
前記取付け部分は、前記円筒形部分と比較して比較的高いジュロメータ硬度の材料で作られている、請求項23記載の乳房シールド。
【請求項27】
前記開口部から半径方向外方に延びるよう位置決めされたフランジを更に有する、請求項22記載の乳房シールド。
【請求項28】
乳房シールドであって、
低ジュロメータ硬度の材料で作られていて、可変直径を有する軟質の一体形乳房シールドから成る、乳房シールド。
【請求項29】
前記乳房シールドの外面に被さるように寸法決めされた1つ又は2つ以上のサイズ変更リングを更に有する、請求項28記載の乳房シールド。
【請求項30】
前記1つ又は2つ以上のサイズ変更リングは、複数個のサイズ変更リングであり、各リングは、互いに異なる内径を有する、請求項28記載の乳房シールド。
【請求項31】
乳房シールド及びサイズ変更キットであって、
低ジュロメータ硬度の材料で作られていて、可変直径を有する軟質の一体形乳房シールドと、
前記乳房シールドの外面に被さるように寸法決めされた1つ又は2つ以上のサイズ変更リングとを有する、乳房シールド及びサイズ変更キット。
【請求項32】
前記1つ又は2つ以上のサイズ変更リングは、複数個のサイズ変更リングであり、各リングは、互いに異なる内径を有する、請求項31記載の乳房シールド及びサイズ変更キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−531582(P2007−531582A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506327(P2007−506327)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/011146
【国際公開番号】WO2005/097230
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(503134413)メデラ ホールディング アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】