説明

軟骨および骨の変性疾患の処置および女性不妊症の処置のための、単独またはTSG−6と組み合わせてPTX3を含有する医薬

骨または軟骨疾患の処置および女性不妊症の処置のための医薬の調製における、単独およびTSG−6と組み合わせた、ペントラキシンPTX3の使用が記載される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本明細書中に記載する発明は、軟骨および骨疾患の処置および女性不妊症の処置のための医薬の調製における、単独またはTSG−6と組み合わせた、長いペントラキシンPTX3(PTX3)またはその機能誘導体の1つの使用に関する。
【0002】
(背景技術)
PTX3は、様々な細胞型において(Bottazziら.,J.Biol.Chem.,1997;272.32817−32823)、特に、炎症性サイトカインインターロイキンlベータ(IL−lベータ)および腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)に曝された後の単核食細胞および内皮細胞において発現される蛋白質である。
【0003】
現在まで、PTX3の生物学的機能は十分には理解されていない。
【0004】
この蛋白質は、2つの構造ドメイン、任意の既知の分子に関連性のないN−末端およびC−反応性蛋白質(CRP)のごとき短いペントラキシンに類似しているC−末端からなる。ヒトPTX3(hPTX3)および動物のPTX3の間には実質的な類似性が見られる。
【0005】
PTX3遺伝子は、マウス染色体3の、ヒト3q領域(q24−28)に類似する領域に位置しており、hPTX3が3q25領域に位置しているという報告と一致する。さらに、マウスPTX3(mPTX3)(Introna,Mら.:Blood,87(1996);1862−1872)は、組成、位置および配列に基づき、hPTX3と非常に類似している(Breviario,F.ら.:J.Biol.Chem.,267.22190,1992)。
【0006】
特に、ヒト遺伝子およびマウス遺伝子の間の配列同一性の程度は82%であり、保存的置換を考慮するならば、92%に達する。
【0007】
hPTX3およびmPTX3配列の間の高度な類似性は、進化の過程でペントラキシンが高度に保存されてきたことを示す(Pepys,MB,Baltz.ML:Adv.Immunol.,34:141,1983)。
【0008】
ペントラキシンの概説としては、H.Gewurzら.,Current Opinion in Immunology,1995,7.54−64を参照のこと。
【0009】
PTX3の先使用は既に知られている。
【0010】
本出願人の名義で出願された、国際特許出願W0 99/32516は、感染性、炎症性または腫瘍性疾患の治療のための長いペントラキシンPTX3の使用を記載している。
【0011】
W0 02/38169は、成長因子FGF−2の異常な活性化に関連する疾患の処置のために有用な医薬の調製のための、長いペントラキシンPTX3の使用を記載している。
【0012】
W0 02/36151は、自己免疫疾患の処置のための長いペントラキシンPTX3の使用を記載している。
【0013】
W0 03/011326は、女性不妊症の処置のための長いペントラキシンPTX3の使用を記載している。
【0014】
W0 03/084561は、成長因子FGF−8の異常な活性化に関連する腫瘍性疾患の処置のための医薬の調製のための、長いペントラキシンPTX3の使用を記載している。
【0015】
米国特許第5,767,252号は、ペントラキシンファミリーに属するニューロン細胞成長因子を記載している(そこで引用された文献も参照のこと)。この特許は神経生物学分野に関連付けられる。
【0016】
TSG−6は、TNFのごとき炎症性刺激により誘導できる蛋白質であり;それは、線維芽細胞および結合組織細胞を含む異なる型の細胞により産生される。
【0017】
TSG−6は、2つのドメイン、CUBドメインおよびLINKドメインからなる。TSG−6のLINKドメインはヒアルロン酸に結合する。加えて、TSG−6は、インター−α−トリプシン阻害剤(IαI)に結合する。TSG−6とIαIの相互作用は、ヒアルロン酸に富むマトリックスのアセンブリにおいて恐らく重要であろう(Caroline M.Miller and Anthony J.Day,J.of Cell Science,2003,116(10):1863−73)。
【0018】
米国特許第6,518,401号は、TSG−6蛋白質(腫瘍壊死因子刺激遺伝子6(TSG−6)蛋白質)を記載している。
【0019】
米国特許第6,210,905号は、TSG−6結合分子(腫瘍壊死因子刺激遺伝子6(TSG−6)結合分子)を記載している。
【0020】
米国特許第5,846,763号は、DNAがコードするTSG−6[DNAがコードする腫瘍壊死因子刺激遺伝子6(TSG−6)]を記載している。
【0021】
米国特許第5,386,013号は、TSG−6(腫瘍壊死因子誘導蛋白質6(TSG−6))を記載している。
【0022】
さらに、J.,Biol.,Chem.,2002,Dec.27;277(52):51068−76.Epub 2002 Oct.24では、TSG−6の静脈内投与が多数の炎症メディエーターの濃度を減少させ、かつ抗炎症性活性を付与することが報告されている。
【0023】
Development,2003,May;30(10):2253−61では、TSG−6が卵丘の細胞外マトリックスの形成において主要な触媒であり、かつ女性の生殖能力に必須であるという明らかな証拠が報告されている。
【0024】
Arthritis Rheum.,2002,Aug;46(8):2207−18では、TSG−6の軟骨特異的構成的発現は、抗原特異的関節炎について軟骨保護効果だけでなく抗炎症性効果も与えることが報告されている。この研究において、TSG−6は、急性炎症がある場合でさえ、軟骨を保護し得ることが示唆されている。
【0025】
多数の骨および軟骨疾患は、様々な型の関節炎に関連している。概略すると、2つの主要な事象:1)炎症、サイトカイン産生および関節膨張ならびに:2)軟骨変性および骨侵食が関節炎に同定され得る。
【0026】
一般的に、2つの事象は必然的なもの(原因および結果)と言われているが、治療的観点からは、炎症は阻害できないが、骨侵食および軟骨変性は予防できると考えられる(Glant,ら.,2002,Arthritis&Rheumatism,46:2207−2218)。様々なセリンプロテアーゼは、骨および軟骨変性事象において根本的な役割を担うことが知られている(Ronday,ら.,1996,Br.J.Rheumatol.35:416−23)。それらの活性は、組織化の程度および細胞外マトリックスの組成により変調しやすいと言われている。
【0027】
本発明は、様々な構成成分への細胞外マトリックスの凝集効果の結果としての、骨および軟骨の変性疾患における、単独またはTSG−6と組み合わせたPTX3の保護的役割に関連付けられる。
【0028】
TSG−6と組み合わせたPTX3の分子凝集機能は、細胞外マトリックスレベルで、卵巣の卵丘、顆粒膜細胞からなる構造および卵母細胞周囲のマトリックスの維持において決め手となることも証明されている。
【0029】
(発明の開示)
この度、TSG−6が長いペントラキシンPTX3の新規リガンドであり、この結合のおかげで、PTX3は軟骨および骨疾患へ強力な予防的および治療的効果を与えることが見出された。
【0030】
故に、本発明の目的の1つは、骨および軟骨疾患の処置のための医薬の調製のための、PTX3またはその機能誘導体の1つの使用である。
【0031】
本発明のさらなる目的は、骨または軟骨疾患の処置のための医薬の調製における、TSG−6と組み合わせた、PTX3またはその機能誘導体の1つの使用である。骨または軟骨疾患の例は、骨関節炎;変形性関節症;関節の変性疾患;コラーゲン欠乏;軟骨内骨化により特徴付けられる軟骨または骨疾患:例えば、関節リウマチ、若年性関節炎、未分化型慢性関節炎および多発性関節炎を含む、原発性関節炎;例えば、全身性エリテマトーデス関節炎、乾癬性関節炎、クローン病関節炎を含む、自己免疫に由来する続発性関節炎;例えば、尿酸一ナトリウム関節症、ピロリン酸関節症、シュウ酸カルシウム関節症を含む、代謝異常に由来する関節炎;感染性関節炎、骨粗鬆症に起因する関節炎、無菌性骨壊死、良性および悪性骨腫瘍:からなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明のさらなる目的は、その処置の必要な女性において生殖能力を改善するために有用な医薬の調製のための、TSG−6と組み合わせた、PTX3またはその機能誘導体の1つの使用である。
【0033】
本発明のさらなる目的は、PTX3またはその誘導体の1つおよびTSG−6を含む組み合わせ物である。
【0034】
本発明のさらなる目的は、PTX3またはその誘導体の1つおよびTSG−6を含む組み合わせの医薬としての使用である。
本発明のさらなる目的は、有効成分としてPTX3またはその誘導体の1つおよびTSG−6ならびに少なくとも1つの医薬上許容される賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物を包含する。
【0035】
本発明に記載の組み合わせ物は、軟骨および骨変性を減少させること、ならびに卵母−卵丘複合体の凝集を改善し、それにより、女性の生殖能力を改善することの両方において、個別の成分よりも有効である。
【0036】
(発明の詳細な記載)
「長いペントラキシンPTX3」は、任意の、すなわち、それが天然(ヒトまたは動物)、組換えまたは合成に由来するかに関わらず、長いペントラキシンPTX3を意味する。
【0037】
誘導体は、1またはそれ以上の突然変異、欠失、挿入または形質導入後修飾を有し、かつTSG−6に結合する機能的能力が保存されている長いペントラキシンPTX3の機能的アナログを意味する。
【0038】
長いペントラキシンPTX3の好ましい型はヒトの長いペントラキシンPTX3であり、その配列はW0 99/32516に記載されている。
【0039】
TSG−6は、米国特許第6,518,401号および上記した他の米国特許において記載されているTSG−6を意味する。
【0040】
産業上の利用可能性に関連する態様については、長いペントラキシンPTX3またはその誘導体およびTSG−6は、有効成分が可溶化され、および/または、医薬上許容される賦形剤および/または希釈剤、例えば、無菌生理的食塩水溶液、カルボキシメチルセルロースまたは当業者に知られている他の賦形剤が加えられている医薬組成物の形態であり得る。
【0041】
長いペントラキシンPTX3のために利用できる医薬組成物の例は、WO 99/32516に記載されている。
【0042】
本発明に記載の化合物は、経腸、非経口および経膣経路により投与され得、特に好ましい医薬形態は、徐放性インプラントまたは関節内注入用形態である。
【0043】
一日用量は、主な担当医師の判断に従って、患者の体重、年齢および一般的な状態に依存するだろう。
【0044】
徐放性形態を含む医薬組成物の調製は、薬剤師および医薬技術の専門家によく知られている慣用的な技法および装置を用いて行われ得ることが注目されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨または軟骨疾患の処置のための医薬の調製のための、PTX3またはその機能誘導体の1つの使用。
【請求項2】
骨または軟骨疾患の処置のための医薬の調製のための、TSG−6と組み合わせた、PTX3またはその機能誘導体の1つの使用。
【請求項3】
生殖能力を改善する必要のある女性において生殖能力を改善するために有用な医薬の調製のための、TSG−6と組み合わせた、PTX3またはその機能誘導体の1つの使用。
【請求項4】
PTX3が任意の、すなわち、それが天然(ヒトまたは動物)、組換えまたは合成に由来するかに関わらず長いペントラキシンPTX3を意味する、請求項1ないし3に記載の使用。
【請求項5】
誘導体が、1またはそれ以上の突然変異、欠失、挿入または形質導入後修飾を有し、かつTSG−6に結合する機能的能力が保存されている長いペントラキシンPTX3の機能的アナログを意味する、請求項1ないし4記載の使用。
【請求項6】
長いペントラキシンPTX3がヒトの長いペントラキシンPTX3である、請求項6記載の使用。
【請求項7】
疾患が、骨関節炎;変形性関節症;関節の変性疾患;コラーゲン欠乏;軟骨内骨化により特徴付けられる軟骨または骨疾患:例えば、関節リウマチ、若年性関節炎、未分化型慢性関節炎および多発性関節炎を含む、原発性関節炎;例えば、全身性エリテマトーデス関節炎、乾癬性関節炎、クローン病関節炎を含む、自己免疫に由来する続発性関節炎;例えば、尿酸一ナトリウム関節症、ピロリン酸関節症、シュウ酸カルシウム関節症を含む、代謝異常に由来する関節炎;感染性関節炎、骨粗鬆症に起因する関節炎、無菌性骨壊死、良性および悪性骨腫瘍からなる群より選択される、請求項1または2記載の使用。
【請求項8】
PTX3またはその誘導体の1つおよびTSG−6を含む組み合わせ物。
【請求項9】
請求項8記載の組み合わせ物の医薬としての使用。
【請求項10】
有効成分として請求項8記載の組み合わせ物および少なくとも1つの医薬上許容される賦形剤および/または希釈剤を含む、医薬組成物。


【公表番号】特表2007−516277(P2007−516277A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546491(P2006−546491)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/IT2004/000745
【国際公開番号】WO2005/060988
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(306020368)デフィアンテ・ファルマセウティカ・ソシエダデ・ポル・クオタス・デ・レスポンサビリダデ・リミターダ (4)
【氏名又は名称原語表記】DEFIANTE Farmaceutica Lda
【Fターム(参考)】