説明

転倒防止具

【課題】本棚、家具やキャビネット等の各種什器の転倒を防止する、什器の上面と天井との空隙に高さ調整可能な箱状容器であって、組み立てや取り扱いの容易な転倒防止具を提供する。
【解決手段】転倒防止具10は、一方面14が家具上面に載置される本体部12と、一方面が開放した開口面24であり、他方面26が天井面に相対する、本体部12を覆うように配置される覆い部22と、本体部12の一方面14と覆い部22の他方面26との間を所定距離離間させる位置決め部27と、を概略具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本棚、家具やキャビネット等の各種什器が地震等による振動で転倒することを防止する転倒防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1乃至3に示すとおり、本棚、家具やキャビネット等の各種什器の転倒を防止するために、什器の上面と天井との空隙に高さ調整可能な箱状容器を収容する転倒防止具が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される家具転倒防止器具は、直方体状に形成された外箱と、その外箱の内部に嵌入される中箱と、外箱の天井面の内側に固着され、中箱の天井面と当接した状態で高さ方向に屈曲可能な高さ調整体と、高さ調整体を所定の屈曲状態で保持するための保持手段とで構成されている。
【0004】
また、特許文献2に開示される転倒防止用具は、外覆体と、外覆体の内側に挿脱自在に挿入される内覆体と、外覆体と内覆体とを繋止する繋止手段としてのテープ状部材と、外覆体の長さと前記内覆体の露出部の長さの和を調整する長さ調整手段とで構成され、該テープ状部材の一端部を内覆体と重なる外覆体の端部付近の外壁面に固着し、中央部付近を外覆体の内壁面と内覆体の外壁面で挟み、他端部を外覆体と重なる内覆体の端部付近の内壁面に固着するようになっている。
【0005】
また、特許文献3に開示される家具等の転倒防止キャビネットおよび支持具は、升状の側板の一面を切り抜いた下箱と、これに上から被せた升状の側板の一面を切り抜いた上箱を高さ方向に上下に調整し、家具等と天井との隙間に装着し、下箱は家具等に固着し、また、上箱は天井に密着させた状態で下箱側板と上箱側板の重なり部位を連結ネジにて固着、または保持柱にて固定する構成となっている。
【0006】
これら特許文献1乃至3に示される転倒防止具は、何れも、什器上面に箱状容器の下面が面し、天井面に箱状容器の上面が面することで、什器の上面と天井とが面で支えられる構成となっており、地震による各種什器の転倒防止に効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開2007−143641号公報
【特許文献2】 特開2007−090018号公報
【特許文献3】 実用新案登録第3028930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの転倒防止具は、構造が複雑で組み立てが煩雑(特許文献1乃至3)、または、上箱と下箱の側板の一面を切り抜いた構成による強度不足の可能性がある(特許文献3)等の課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の目的は、上述した事情に鑑みなされたもので、本棚、家具やキャビネット等の各種什器の転倒を防止する、什器の上面と天井との空隙に高さ調整可能な箱状容器を収容する転倒防止具であって、組み立てや取り扱いの容易な転倒防止具を提供することである。
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明に係わる転倒防止具は、請求項1の記載によれば、一方面が什器上面に載置される本体部と、一方面が開放し、他方面が天井面に相対する、前記本体部を覆うように配置される覆い部と、前記本体部の一方面と前記覆い部の他方面との間を所定距離離間させる位置決め部と、を具備することを特徴とする。
【0011】
また、この発明に係わる転倒防止具は、請求項2の記載によれば、前記位置決め部は、前記覆い部の内部側面に取り付けられる内側位置決め板部であり、前記覆い部の一方面の側となる前記内側位置決め板部の下側端面が前記本体部の他方面に当接されることを特徴とする。
【0012】
また、この発明に係わる転倒防止具は、請求項3の記載によれば、前記内側位置決め板部は、補助板部を備えることを特徴とする。
【0013】
また、この発明に係わる転倒防止具は、請求項4の記載によれば、前記位置決め部は、前記本体部の外部側面に取り付けられる外側位置決め板部であり、前記本体部の他方の面の側となる前記外側位置決め板部の上側端面が前記覆い部の開放端部に当接されることを特徴とする。
【0014】
また、この発明に係わる転倒防止具は、請求項5の記載によれば、前記本体部の一方面と、前記覆い部の他方面の少なくとも一方に滑り止め部を備えることを特徴とする。
【0015】
また、この発明に係わる転倒防止具は、請求項6の記載によれば、前記覆い部の側面外側に意匠を施したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、什器上面に箱状容器の下面が面し、天井面に箱状容器の上面が面することで、什器の上面と天井とを面で支え、確実かつ強固に各種什器の転倒防止する転倒防止具を提供することが可能となる。
【0017】
また、この発明によれば、組み立て及び取り扱いが容易な転倒防止具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明の転倒防止具の使用例を示す斜視図
【図2】 本発明の転倒防止具の使用例を示す側面図
【図3】 本発明の転倒防止具の構成を示す一部透視斜視図
【図4】 転倒防止具の覆い部の一部を示す図
【図5】 本発明の転倒防止具の第2の実施例の構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
<第1の実施例>
以下に図面を用いて本発明の第1の実施例を説明する。図1は、本発明の転倒防止具の使用例を示す斜視図である。図2は、転倒防止具の使用例を示す側面図である。図3は、転倒防止具の構成を示す一部透視斜視図である。図4は、転倒防止具の覆い部の一部を示す図である。
【0020】
本発明の転倒防止具10は、家庭の食器棚、本棚、洋服ダンス等の家具や事務所のキャビネット等の各種什器に用いられる。なお、図1においては、その一例として、家具100を示している。
【0021】
図1及び図2は、転倒防止具10を家具100に設置した状態を示す図である。家具100は、背面が壁面120に当接するように床面122に載置されている。また、家具100の上面102と天井面124との間は空隙となっている。
【0022】
転倒防止具10は、図3に示すとおり、一方面14が家具上面102に載置される本体部12と、一方面が開放した開口面24であり、他方面26が天井面124に相対する、本体部12を覆うように配置される覆い部22と、本体部12の一方面14と覆い部22の他方面26との間を所定距離離間させる位置決め部27と、を概略具備している。
【0023】
本体部12は、6面を有する直方体または立方体で、内部に非常用食料品や懐中電灯、簡易トイレ等の防災グッズが収納可能となっている。また、本体部12の材質は、例えば、段ボール等の紙が用いられ、その大きさは、例えばみかん箱等の規格サイズの箱が用いられており、非常に安価かつ入手しやすくなっている。
【0024】
また、この本体部12は、上記の通り、6面を有することで頑丈な作りとなっており、本体部12の一方面14と一方面に対面する他方面16との間の耐荷重が非常に大きい。
【0025】
覆い部22は、一方面が開放した開口面24を有し、該開口面24を本体部12の他方面16の側から覆い被せて本体部12を覆うことが可能な形状(即ち、本体部12と同一の大きさの直方体または立方体)となっている。
【0026】
また、覆い部22の他方面26は天井面124に相対し、後述する位置決め部により、本体部12の一方面14と覆い部22の他方面26との間が所定距離離間可能となっている。
【0027】
なお、覆い部22の開口面24と他方面26とを接続する4面の側面25の内寸は、本体部12の一方面14と他方面16とを接続する4面の側面15の外寸と概略同じとなっている。
【0028】
また、覆い部22の材質は、例えば、段ボール等の紙が用いられており、安価となっていると共に、側面25は4面を有するので、覆い部22の開口面24と他方面26との間の耐荷重も非常に大きい。
【0029】
この覆い部22の側面25の内側には、図3において波線で示す位置決め部27が設けられている。この位置決め部27は、覆い部22の4面の側面25の内側に各々取り付けられた4個の内部位置決め板部28で構成されている。この内部位置決め板部28は、段ボール等を材質とする板状部材であり、覆い部22の側面25の内側に取り付けられた状態で、覆い部22の開口面24の側となる下側端面29が本体部12の他方面16に当接される。
【0030】
この内部位置決め板部28の覆い部22の側面25の内側への取り付けは、例えば両面接着テープや接着剤で貼り付けることで行われる。なお、内部位置決め板部28や覆い部22の側面25の内側に取り付け部を設けても良い。また、内部位置決め板部28の覆い部22の側面25の内側への取り付けにテープ状の両面接着テープを使用する場合、使用する両面接着テープの面積が同じであるなら、テープの長さ方向が覆い部22の開口面24に平行な方向に貼り付けるより、開口面24に垂直な方向に貼り付けるほうが内部位置決め板部28の貼り付け強度が高くなる。これは、両面接着テープの貼り付け強度が剪断方向に対する距離が大きいほど強くなることに着目し、地震による家具100の揺動で負荷のかかる上下方向(開口面24に垂直な方向)に対してテープの距離を大きくできるからである。
【0031】
なお、図4は、覆い部22を開口面24の側から見た図である。覆い部22が段ボール等で作製されている場合、図4に示すとおり、側面25の一部に段ボールを箱形にするための折り曲げ部25aを有している。この折り曲げ部25aの部分に、そのまま内部位置決め板部28を取り付けると、下側端面29の本体部12の他方面16への当接の面積が小さくなってしまい、耐荷重が小さくなる可能性がある。
【0032】
このため、図4に示すとおり、内部位置決め板部28の側面25に取り付ける側とは反対の面に、さらに補助板部28aを取り付け、下側端面29の本体部12の他方面16への当接の面積が小さくならないようにし、耐荷重が小さくならないようにしている。
【0033】
また、内部位置決め板部28の覆い部22の側面25の内側への取り付け位置は、本体部12の一方面14と他方面16との間の距離と、覆い部22の他方面26と内部位置決め板部28の下側端面29との間の距離との和が、家具100の上面102と天井面124との間の空隙の距離と概略同じとなる位置に取り付けられる。
【0034】
なお、この内部位置決め板部28の覆い部22の側面25の内側への取り付け位置決定を簡便にするために、別途、家具100の上面102と天井面124との間の空隙の距離を測るための簡易メジャーを準備し、該簡易メジャーの目盛りに合わせて、覆い部22の側面25の内側へ開口面24と垂直な方向に目盛りを設けても良い。
【0035】
以上のような構成を有する本発明の転倒防止具10の使用方法について、以下に説明する。
【0036】
最初に、本体部12と覆い部22を組み立てる。次に、家具100の上面102と天井面124との間の空隙の距離を測る。
【0037】
次に、本体部12の一方面14と他方面16との間の距離と、覆い部22の他方面26と内部位置決め板部28の下側端面29との間の距離との和(距離Aとする)が、家具100の上面102と天井面124との間の空隙の距離(距離Bとする)と概略同じとなるように、内部位置決め板部28を覆い部22の側面25の内側へ取り付ける。なお、この際、距離Aが距離Bより大きいと、家具100の上面102と天井面124との間の空隙に転倒防止具10が収容できなくなるので注意する。
【0038】
この後、覆い部22を開口部24の側から本体部12へ覆い被せ、転倒防止具10を完成させる。この完成させた転倒防止具10を家具100の上面102と天井面124との間の空隙に収納する。
【0039】
この転倒防止具10が家具100の上面102と天井面124との間の空隙に収納された状態で、地震等の揺れが発生すると、家具100の上面102に転倒防止具10の本体部12の一方面14が面し、天井面124に転倒防止具10の覆い部22の他方面26が面することで、家具100の上面102と天井面124とが面で支えられ、地震による家具100の揺動が制限され、家具100が転倒防止されることになる。
【0040】
なお、距離Aと距離Bとは全く同一にする必要はなく、例えば覆い部22の他方面26と天井面124との間に若干の隙間があっても問題ない。これは、家具100が地震等で揺動することで、上面102に載置されている転倒防止具10の覆い部22の他方面26が天井面124へ当接することで家具100の揺動が抑えられるためである。
【0041】
また、このような構成を有する転倒防止具10は、従来の転倒防止具と同様の転倒防止の効果を有すると共に、非常に構造が簡単であるために、安価に製造でき、かつ組み立ても容易である。
【0042】
<第2の実施例>
次に、図5を用いて、本発明の転倒防止具の第2の実施例を説明する。なお、上述した第1の実施例と構成が同じ箇所については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0043】
図5は、本発明の転倒防止具の第2の実施例の構成を示す斜視図である。この第2の実施例においては、本体部12の一方面14と覆い部22の他方面26との間を所定距離離間させるための位置決め部17が本体部12の側面15の外側に設けられている。
【0044】
この位置決め部17は、本体部12の4面の側面15の外側に各々取り付けられた4個の外部位置決め板部18で構成された、段ボール等を材質とする板状部材であり、本体部12の側面15の外側に取り付けられた状態で、覆い部22の開口面24の開口端面24aが外部位置決め板部18の上側端面19に当接される。
【0045】
この外部位置決め板部18の本体部12の側面15の外側への取り付けは、例えば両面接着テープや接着剤で貼り付けることで行われる。なお、外部位置決め板部18や本体部12の側面15の外側に取り付け部を設けても良い。
【0046】
また、外部位置決め板部18の本体部12の側面15の外側への取り付け位置は、本体部12の一方面14と外部位置決め板部18の上側端面19との間の距離と、覆い部22の開口面24と他方面26との間の距離との和が、家具100の上面102と天井面124との間の空隙の距離と概略同じとなる位置に取り付けられる。
【0047】
以上のような構成を有する第2の実施例の転倒防止具10も、第1の実施例と同様に、各種什器の転倒防止の効果を有すると共に、非常に構造が簡単であるために、安価に製造でき、かつ組み立ても容易となっている。
【符号の説明】
【0048】
10・・転倒防止具、12・・本体部、14・・一方面、15・・側面、16・・他方面、17・・位置決め部、18・・外部位置決め板部、19・・上側端面、22・・覆い部、24・・開口面、24a・・開口端面、25・・側面、25a・・折り曲げ部、26・・他方面、27・・位置決め部、28・・内部位置決め板部、28a・・補助板部、29・・下側端面、100・・家具、102・・上面、120・・壁面、122・・床面、124・・天井面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方面が什器上面に載置される本体部と、
一方面が開放し、他方面が天井面に相対する、前記本体部を覆うように配置される覆い部と、
前記本体部の一方面と前記覆い部の他方面との間を所定距離離間させる位置決め部と、
を具備することを特徴とする転倒防止具。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記覆い部の内部側面に取り付けられる内側位置決め板部であり、前記覆い部の一方面の側となる前記内側位置決め板部の下側端面が前記本体部の他方面に当接されることを特徴とする請求項1に記載の転倒防止具。
【請求項3】
前記内側位置決め板部は、補助板部を備えることを特徴とする請求項2に記載の転倒防止具。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記本体部の外部側面に取り付けられる外側位置決め板部であり、前記本体部の他方の面の側となる前記外側位置決め板部の上側端面が前記覆い部の開放端部に当接されることを特徴とする請求項1に記載の転倒防止具。
【請求項5】
前記本体部の一方面と、前記覆い部の他方面の少なくとも一方に滑り止め部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の転倒防止具。
【請求項6】
前記覆い部の側面外側に意匠を施したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の転倒防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−85936(P2013−85936A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242786(P2011−242786)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(501359412)株式会社リンテック21 (38)