説明

転写物作成方法、及び転写物セット作成方法

【課題】質感の変化を有する転写物を得る。
【解決手段】インクジェット法により、少なくとも一方の面に空隙層15を有する記録媒体11を用いる転写物作成方法であって、空隙層15に対して、光輝性顔料を含有した光輝性インク21を吐出して光輝性画像23を作成する光輝性画像作成工程を含み、光輝性画像作成工程は、記録媒体11に対して光輝性インク21を第1の吐出量で吐出する第1のモードと、記録媒体11に対して光輝性インク21を第1の吐出量とは異なる第2の吐出量で吐出する第2のモードと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写物作成方法、及び転写物セット作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、媒体上に作成された光沢を有する光輝性画像に対する需要が拡大している。そしてかかる光輝性画像の作成方法として、金属顔料を含有する光輝性インクを所定の領域に吐出した後、該光輝性インクを乾燥させて上記の金属顔料からなる画像を作成するインクジェット法がある(特許文献1及び特許文献2参照)。インクジェット法は、比較的低コストで任意な画像を作成可能な手法として注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−179960号公報
【特許文献2】特開2008−208330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインクジェット法により作成された画像はいわゆる質感(光沢感)に変化を付与することが困難であり、得られる画像が単調となり易いという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる転写物作成方法は、インクジェット法により、少なくとも一方の面に空隙層を有する記録媒体を用いる転写物作成方法であって、上記空隙層に対して、光輝性顔料を含有した光輝性インクを吐出して光輝性画像を作成する光輝性画像作成工程を含み、上記光輝性画像作成工程は、上記記録媒体に対して上記光輝性インクを第1の吐出量で吐出する第1の吐出モードと、上記記録媒体に対して上記光輝性インクを上記第1の吐出量とは異なる第2の吐出量で吐出する第2の吐出モードと、を含むことを特徴とする。
【0007】
このような転写物作成方法であれば、記録媒体上に、異なる吐出量で作成された2種類の光輝性画像を作成できる。したがって、質感の変化に富んだ被転写物を作成可能な転写物を得ることができる。
【0008】
[適用例2]上述の転写物作成方法であって、上記第1の吐出モードと上記第2の吐出モードとは記録密度が異なっており、上記第1の吐出モードと上記第2の吐出モードとは、記録密度差は10%以上あることを特徴とする転写物作成方法。
【0009】
記録密度差が10%以上であれば、作成される光輝性画像に充分な変化を生じさせることができる。したがって、より一層質感の変化に富んだ被転写物を作成可能な転写物を得ることができる。
【0010】
[適用例3]上述の転写物作成方法であって、上記第2の吐出量は、上記第1の吐出量の1.3倍以上であることを特徴とする転写物作成方法。
【0011】
吐出量の差が1.3倍以上であれば、作成される光輝性画像に充分な変化を生じさせることができる。したがって、より一層質感の変化に富んだ被転写物を作成可能な転写物を得ることができる。
【0012】
[適用例4]上述の転写物作成方法であって、上記記録媒体に離型性を有する離型層が作成されており、上記離型層に対して、インクジェット法により、カラー顔料を含有したカラーインクを吐出してカラー画像を作成するカラー画像作成工程を含むことを特徴とする転写物作成方法。
【0013】
このような転写物作成方法であれば、光輝性画像とカラー画像の双方が作成された転写物を作成できる。したがって、質感の変化に富み、かつ、カラー画像も有する被転写物を作成可能な転写物を得ることができる。
【0014】
[適用例5]上述の転写物作成方法であって、上記光輝性画像作成工程は、上記離型層が作成されていない部分に上記光輝性インクを吐出する工程であることを特徴とする転写物作成方法。
【0015】
このような転写物作成方法であれば、光輝性画像とカラー画像とを夫々最適な条件で作成できる。したがって、品質の向上した被転写物を作成可能な転写物を得ることができる。
【0016】
[適用例6]上述の転写物作成方法によって作成された転写物を用いて転写された被転写物。
【0017】
このような被転写物であれば、質感等が変化に富んだ光輝性画像を実現できる。
【0018】
[適用例7]本適用例にかかる転写物セット作成方法は、インクジェット法により、少なくとも一方の面に空隙層を有する記録媒体を用いる転写物セット作成方法であって、第1の記録媒体に設けられた、第1の平均開口径を有する第1の空隙層に対して、光輝性顔料を含有する光輝性インクを吐出して第1の光輝性画像を作成する第1の光輝性画像作成工程と、第2の記録媒体に設けられた、上記第1の平均開口径とは異なる第2の平均開口径を有する第2の空隙層に対して、上記光輝性インクを吐出して第2の光輝性画像を作成する第2の光輝性画像作成工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
光輝性画像は、同一の光輝性インクを用いた場合であっても、下地となる空隙層の平均開口径によって質感に違いが生じる。そのため上述の構成であれば、第1の領域に第1の光輝性画像を有する第1の転写物と、上記第1の光輝性画像とは質感が異なる第2の光輝性画像を上記第1の領域とは重ならない領域である第2の領域に有する第2の転写物と、を得ることができる。したがって、被転写物に質感が異なる2種類の光輝性画像を転写可能な転写物セットを得ることができる。
【0020】
[適用例8]本適用例にかかる転写物作成方法は、インクジェット法により、少なくとも一方の面に空隙層を有する記録媒体を用いる転写物作成方法であって、上記一方の面の第1の領域に上記空隙層を覆う離型性を有する離型層を作成する離型層作成工程と、上記第1の領域と、上記第1の領域以外の領域に対して、光輝性顔料を含有する光輝性インクを吐出して光輝性画像を作成する光輝性画像作成工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
光輝性画像の質感は、吐出量すなわち単位面積当たりの光輝性顔料の供給量が同一であっても、下地によって異なる。したがってこのような転写物作成方法であれば、質感が異なる2種類の光輝性画像を有する転写物を作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態にかかる転写物作成装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】インクジェットプリンターの概略構成を示す斜視図。
【図3】吐出モードの決定方法の説明に用いる画像を示す図。
【図4】記録媒体上に光輝性画像を作成する工程の概略を示す工程断面図。
【図5】第1の転写物の作成方法を示す工程断面図。
【図6】光輝性顔料の供給量を設定する方法を示す図。
【図7】第2の転写物の作成方法を示す工程断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態にかかる転写物作成装置、転写物、及び被転写物について、図面を参照しつつ述べる。なお本発明は、以下の図に示す構造、形状に限定されるものではない。また、以下の各図においては、各構成要素を図面で認識可能な程度の寸法とするため、該構成要素の縮尺を実際とは異ならせてある。
【0024】
(第1の実施形態)
<転写物作成装置>
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる転写物作成装置50の全体構成を示すブロック図である。なお、転写物については詳しくは後述するが、最終的な目的物である被転写物(被転写媒体)に転写すべき、金属顔料からなる画像(画像層)等が作成された記録媒体である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の転写物作成装置50は、制御装置70と該制御装置に接続されたインクジェットプリンター51等で構成されている。制御装置70は、インクジェットプリンター51等を制御するための各種の処理を実行するCPU72を中心に、バス71により相互に接続された次の各構成要素を備えている。ROM73は、CPU72で各種の処理を実行するのに必要なプログラムやデータを格納(記録)している。RAM74は、同じくCPU72で各種の処理を実行するのに必要なプログラムやデータが一時的に記録される装置である。
【0026】
入力インターフェイス75は、スキャナー76、あるいは外部記録装置であるUSBメモリー77等からの信号の入力を読み取る機能を果たしている。また、キーボード78を介して作業者からの入力をバス71に伝達する機能を果たしている。バス71は通信インターフェイス79を介して図示しないインターネットと接続されており、該インターネットから各種の情報を取得できる。MC(モニターコントローラー)80は、カラー表示可能なモニター81への信号出力を制御している。
【0027】
出力インターフェイス82は、CPU72で生成された画像データをインクジェットプリンター51へ出力する機能を果たしている。インクジェットプリンター51は、後述するように、かかる画像データに基づき液滴を記録媒体10(後述する図2等参照)上に吐出することで転写物を作成する。
【0028】
図2は、インクジェットプリンター51の概略構成を示す斜視図である。図2に示すように、インクジェットプリンター51は、フレーム52を有している。フレーム52には、プラテン53が設けられ、プラテン53上には、搬送機構としての媒体送りモーター54の駆動により記録媒体10が給送されるようになっている。また、フレーム52には、プラテン53の長手方向と平行に、棒状のガイド部材55が設けられている。ガイド部材55には、キャリッジ56がガイド部材55の軸線方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ56は、フレーム52内に設けられたタイミングベルト57を介して、キャリッジモーター58に連結されている。そして、キャリッジ56は、キャリッジモーター58の駆動により、ガイド部材55に沿って往復移動されるようになっている。
【0029】
キャリッジ56には、吐出ヘッド59が設けられるとともに、吐出ヘッド59に後述する光輝性インク等のインクを供給するためのインクカートリッジ60が着脱可能に配置されている。インクカートリッジ60内のインク(後述する光輝性インク等)は、吐出ヘッド59に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ60から吐出ヘッド59へと供給される。そして、吐出ヘッド59のノズル面に作成された複数のノズル孔(不図示)から、プラテン53上に給送された記録媒体10に対して、液滴として吐出される。ここで、上述のインクは顔料と分散媒等で構成される液体である。吐出された液滴から、分散媒の少なくとも一部が乾燥等により除去されることで、該顔料からなる画像が作成される。したがってかかる構成により、インクジェットプリンター51は、該記録媒体(の表面)に、上述の顔料からなる層を作成できる。
なお、本発明においての記録媒体は、表層に空隙層が形成された記録媒体である。空隙層とは、「水溶性又は親水性ポリマーの割合が3割未満であり、無機粒子で主に構成され、無機粒子間又は無機粒子に設けられた孔の空隙に液体が浸透するよう構成された層」の事を指す。無機粒子の代表例としては、シリカ、アルミナが挙げられる。
なお、インクの吐出方法としては、サーマルジェット(バブルジェット(登録商標))方式でもよい。また、従来公知の方法はいずれも使用できる。
【0030】
本実施形態にかかる転写物作成装置50は、吐出ヘッド59からのインクの吐出を、第1の吐出モードと第2の吐出モードとを含む少なくとも2以上のモードを切換えて実行可能であるという特徴を有している。かかる複数種類の吐出モードは、吐出量により定義されるモードである。此処で吐出量とは、上述の記録媒体10の単位面積当たりに吐出すなわち供給されるインクの量(質量)のことであり、単位はg(グラム)/平方センチメートルである。第1の吐出モードはインクを第1の吐出量で吐出するモードであり、第2の吐出モードはインクを第1の吐出量とは異なる第2の吐出量で吐出するモードである。
【0031】
後述するように、吐出量の設定は吐出ヘッド59から吐出される液滴のサイズと単位面積当たりの液滴の吐出数である記録密度との何れか、あるいは双方を変動させることで行うことができる。ただし、液滴のサイズを変動させた場合と記録密度を変動させた場合では光沢感に差が生じ得るため、上記の2つのパラメーターは双方とも変動可能であることが好ましい。そして、記録密度は、第1の吐出モードと第2の吐出モードとで最低でも10%以上変動可能であることが好ましい。本実施形態にかかる転写物作成装置50は、第1の吐出モードと第2の吐出モードとで、記録密度を15%以上変動させることが可能である。
【0032】
このように吐出モードで記録媒体に記録される事で、空隙層上に単位面積当たりの質量が異なった層が複数形成される。そして、被転写媒体に転写された光輝性層は、異なる種類の質感をもった複数の光輝性層を有する記録物が得られる。理由として、被転写媒体に転写された時に、空隙層の平均開口径に起因する凹凸を持った状態となる事が挙げられる。光輝性層は、一般的なカラーインクの層とは異なり、表層の表面状態が非常に重要になり、このような凹凸を有している光輝性層は、全く有していない層と比較して、人の目には光輝性の質感が異なっているように認識される。この質感は、一般的な鏡面光沢度とは異なる光輝性の指標である。つまり、単位面積当たりの質量が異なる2種類以上の層が形成されている場合、それぞれは転写された後に、空隙層の開口径に起因する凹凸の具合が異なった層となる。これによって、異なる質感を有する光輝性層が得られる。吐出量を制御する方法として、記録密度(吐出密度)を制御する方法と吐出される光輝性インク21の液滴20のサイズ(容積)を制御する方法との2種類の方法がある。
【0033】
転写物作成装置50は、かかる吐出量の差により1枚の記録媒体10内に2以上の異なる質感のパターンを作成できる。すなわち、異なる質感のパターンで構成される画像を作成できる。さらに必要に応じて、第1の吐出量と第2の吐出量の双方と異なる第3の吐出量で吐出する第3の吐出モード、及び、第1〜第3の吐出量のいずれとも異なる第4の吐出量で吐出する第4の吐出モード等で、上述のインクを吐出できる。
そして、転写物作成装置50は、上記の画像の作成を自動モードと手動モードの双方で実施できる。すなわち、上述の各吐出モードの決定を、自動モードと手動モードの双方で実施できる。以下、吐出モードの決定方法について説明する。
【0034】
図3は、上述の吐出モードの決定方法の説明に用いる画像99を示す図である。画像99は、数字の第1のパターン100と、樹木のイラストの第2のパターン200とで構成されている。第2のパターン200はさらに第1のサブパターン201〜第3のサブパターン203に分かれている。そして各パターンは、全て光輝性すなわち銀白色に近い画質を有しており、さらに光輝性の程度すなわち輝きの質感が夫々異なっている。転写物作成装置50は、かかる輝きの強度を上述の吐出量に差を設けることで再現することができる。
【0035】
(自動モード)
自動モードによる転写物の作成は以下のように行われる。まず作業者が、画像99の画像データを、制御装置70に読み込む。画像99が印刷物である場合、スキャナー76から読み込むことができる。画像99がデジタルデータである場合、通信インターフェイス79を介して図示しないインターネットから読み込むか、あるいはUSBメモリー77等の外部記録装置から読み込むことができる。CPU72はかかる画像データをROM73等に記憶されているプログラムにより解析して同一の画像の作成に要するインクの吐出量等を、上述のパターン100(サブパターンを含む)毎に算出する。すなわち、どの吐出モードでインクを吐出するかをパターン毎に決定する。そしてインクジェットプリンター51は、パターン毎に吐出モードを切換えてインクを吐出する。その結果、記録媒体10上に画像99と略同一の画像が作成される。かかる記録媒体10と該記録媒体上に作成された画像とで、転写物40(後述する図4参照)等が構成される。
【0036】
(手動モード)
手動モードによる転写物の作成は以下のように行われる。作業者が画像99の画像データを制御装置70に読み込む点までは、上述の自動モードと同一である。次に作業者は、読み込まれた画像データをモニター81へ出力させる。すなわち、モニター81に画像99を表示させる。そして該モニター上で、パターン毎に吐出モードを指定する。そしてインクジェットプリンター51を起動させる。そしてインクジェットプリンター51は、パターン毎に指定された吐出モードに切換えてインクを吐出する。その結果、記録媒体10上に、構成(パターンの輪郭)が画像99と同一で輝きの強度がパターン毎に作業者が任意に定めた強度である画像が作成される。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態にかかる転写物の作成方法について説明する。第2の実施形態は平均開口径が異なる2種類以上の記録媒体を利用する。まず、本実施形態及び後述する各実施形態に共通する転写物40の概要すなわち構成要素等について説明する。
【0038】
<転写物の概要>
図4は、転写物40の作成工程、すなわち記録媒体10上に光輝性画像22を作成する工程の概略を示す工程断面図である。以下、工程順に説明する。
図4(a)は、記録媒体10を示す図である。記録媒体10は、基材14と該基材の一方の面上に作成された空隙層15とからなる。すなわち、本実施形態及び後述する各実施形態において、記録媒体10は表面に空隙層15が作成された基材14である。
【0039】
基材14の材質としては、特に限定されないが、例えば、各種の紙、布、フィルム、シートなどが挙げることができる。基材14の厚み及び大きさについては、特に限定されない。なお、本実施形態及び後述する各実施形態において空隙層15は基材14の全面に作成されているが、局所的に作成することもできる。
【0040】
空隙層15は、シリカ、アルミナ等の微細な無機粒子を敷き詰めてなる層である。空隙層15の厚みは、5μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0041】
また、上述の空隙の大きさ(寸法)の平均値が、平均開口径である。そしてかかる平均開口径は、上述の無機粒子の平均寸法すなわち平均粒子径に左右される。すなわち無機粒子の平均粒子径が増大すると、平均開口径も増大する傾向を有する。空隙層15を作成する無機粒子の体積基準の平均粒子径は、特に限定されないが、5nm〜100nmであることが好ましい。より好ましくは、5nm〜60nmである。かかる平均粒子径であれば、空隙層15の表面の平坦度が高いため、本実施形態の転写物を用いて被転写物(転写先の媒体)上に作成される画像に、良好な光沢等を付与することができる。また、転写物セットを作成する場合に、記録媒体の平均開口径は10nm以上離れていることが好ましい。より好ましくは20nm以上、一層好ましくは30nm以上である。
【0042】
また、空隙層15の平均開口径は、特に限定されないが、5nm〜100nmが好ましく、より好ましくは5nm〜60nmである。かかる平均開口径であれば、後述する光輝性インク21等に含有される分散媒の少なくとも一部を浸透させることができる。一方で、かかる平均開口径であれば、光輝性インク21に含有される光輝性顔料をほとんど受容しない。したがって、後述する光輝性インク21が空隙層15上に吐出された場合、空隙層15の表面には光輝性顔料を主成分とする層である光輝性画像22が好適に作成される。
なお、基材14と空隙層15とからなる記録媒体10はコート紙、アート紙、キャストコート紙、写真用紙等の表面加工紙として市販されている。
【0043】
空隙層の平均開口径が異なった記録媒体を用意し、それぞれに単位面積当たりの質量が同一の光輝性層を形成した場合、転写後の光輝性層は表面の凹凸が異なり、異なった質感となる。一般に平均開口径が大きい記録媒体を利用した場合の方が、マット調に近い光輝性画像が得られる。つまり、本実施形態において、異なる平均開口径を有するメディアを複数用意し、それぞれに光輝性層を記録して、その光輝性層を同一の記録媒体に転写することによって、異なる質感の光輝性層を有する転写物が得られる。
【0044】
図4(b)以降は、具体的な光輝性画像22の作成工程を示す図である。以下、工程順に説明する。まず、図4(b)に示すように、吐出ヘッド59を記録媒体10の所定の領域上を走査させつつ、光輝性インク21を液滴20として吐出する。
【0045】
光輝性インク21は、少なくとも光輝性顔料、及び該顔料の分散媒を含んでいる。光輝性顔料としては、記録媒体10に付着したときに光輝性を呈しうる材料の粒子であり、一般的には金属の微粒子が用いられる。本実施形態及び後述する各実施形態においては、光輝性顔料として銀(Ag)の微粒子が用いられている。その他、例えば、アルミニウム、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、及び銅からなる群より選択される1種又は2種以上の合金の微粒子を用いることができる。また、金属以外の材料としては、パール光沢を有するパール顔料等を用いることができる。
【0046】
光輝性インク21の分散媒としては、例えば、水、有機溶剤、反応性化合物、及びそれらの混合物等を用いることができる。光輝性インク21中では、光輝性顔料は分散媒に分散されている。光輝性インク21に、光輝性顔料以外の物質、例えば、該光輝性顔料を分散させるための化合物が含有される場合、それらの物質が常温で液体であれば、該化合物も分散媒の一部と見なすことができる。光輝性インク21における光輝性顔料の含有量は、例えば、光輝性インク21の全体に対して、1質量%以上25質量%以下程度が好ましく、より好ましくは3質量%以上20質量%以下である。
【0047】
図4(c)は、記録媒体10の所定の領域に光輝性インク21からなる層が作成された状態を示している。光輝性インク21の液滴20を均一に吐出することでかかる層を作成できる。ここで、吐出された光輝性インク21の分散媒は、直ちに空隙層15に対する浸透を開始する。その結果、空隙層15内に、分散媒が浸透してなる浸透領域19が作成される。
【0048】
図4(d)は、光輝性インク21からなる層から分散媒が(殆んど)除去されて、上述の所定の領域に上述の光輝性顔料(本実施形態では銀の微粒子)からなる光輝性画像22が作成された状態を示す図である。図4(c)に示す浸透領域19内の分散媒は、空隙層15内に浸透することで、記録媒体10の表面からは除去される。そして、空隙層15内に浸透した分散媒の少なくとも一部は、時間の経過と共に蒸発する。また、光輝性インク21からなる層に残留する分散媒の少なくとも一部も、同様に時間の経過と共に蒸発する。したがって、上述の所定の領域には光輝性顔料を主成分とする層が作成される。かかる層が光輝性画像22である。なお分散媒は、自然に蒸発させて除去するのではなく、乾燥工程を実施することで除去してもよい。
【0049】
以上の工程で、転写物40が作成される。本実施形態及び後述する各実施形態は、かかる転写物40を作成する方法について記載されている。ただし、転写物40に作成された光輝性画像22を被転写物に転写する際には、光輝性画像22を覆うように接着層29を作成して、該接着層と共に転写する構成が一般的である。
【0050】
図4(e)は、光輝性画像22上にかかる接着層29を作成した状態を示す図である。接着層29は、空隙層15と光輝性画像22との間の接着力よりも強い接着力を、光輝性画像22と被転写媒体との間に発生させることが可能な層である。かかる機能により、接着層29は、転写物40が有する光輝性画像22を被転写媒体に転写させることが可能となる。接着層29の厚みは、特に限定されないが、例えば0.2μm以上5μm以下とすることができる。接着層29の材質としては、アクリル系、ウレタン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、などの接着剤に汎用されるモノマー、オリゴマー及び樹脂類などを挙げることができる。接着層29は、例えば、インクジェット法、ディップ法(刷毛、スキージ等による塗布を含む)、バーコート法、孔版印刷法(スクリーン印刷法)、凸版印刷法及び凹版印刷法等の方法で作成することができる。
【0051】
<転写物作成方法>
次に、本実施形態の転写物の作成方法について説明する。図5は、本実施形態にかかる第1の転写物41の作成方法を示す工程断面図である。以下、工程順に説明する。
まず、図5(a)に示すように、基材14と空隙層15とからなる第1の記録媒体11の第1の領域31の少なくとも一部の領域に、後述する第2の吐出モードとは異なる第1の吐出モードで光輝性インク21を液滴20として吐出する。なお、吐出は、図示するように、第1の領域31上に吐出ヘッド59を走査させつつ実施する。
【0052】
吐出量とは、上述したように第1の記録媒体11、第2の記録媒体12の単位面積当たりに吐出、すなわち供給される光輝性インク21等のインクの量である。吐出されるインクの濃度、すなわちインクに占める光輝性顔料の量は、実質的に変わらない。したがって、第1の記録媒体11と第2の記録媒体12の平均開口径が異なり、両者に光輝性層を形成することによって、異なる質感の光輝性層を転写出来る転写物セットとなる。
【0053】
なお、光輝性層の質感を微妙に調整するため、異なる平均開口径を有する記録媒体を利用する場合であっても、光輝性顔料の単位面積当たりの量を異ならせる事が好ましい場合がある。異ならせる方法を具体的に説明する。
図6は、光輝性顔料の供給量を設定する2種類の方法を示す図である。図6(a)は、光輝性インク21の液滴20のサイズを制御することにより単位面積当たりの光輝性顔料の供給量を制御する方法を示している。本図において、第1の記録媒体11の第1の領域31(詳しくは第1の領域31内の一部の領域)には第1の吐出モードで液滴20が吐出されており、第2の領域32(詳しくは第2の領域32内の一部の領域)には第2の吐出モードで液滴20が吐出されている。そして、第2の領域32に吐出される液滴20のサイズは、第1の領域31に吐出される液滴20のサイズに比べて増大している。したがって、双方の領域に吐出される液滴20の密度(単位面積当たりに吐出される液滴の数)は同一であるにもかかわらず、第2の領域32にはより多くの光輝性顔料が供給される。
【0054】
図6(b)は、光輝性インク21の記録密度を制御することにより、単位面積当たりの光輝性顔料の供給量を制御する方法を示している。本図において、第1の記録媒体11の第1の領域31には第1の吐出モードで液滴20が吐出されており、第2の領域32には第2の吐出モードで液滴20が吐出されている。そして、第2の領域32に吐出される液滴20の個数は第1の領域31に吐出される液滴20の個数に比べて増大している。したがって、双方の領域に吐出される個々の液滴20のサイズは同一であるにもかかわらず、第2の領域32にはより多くの光輝性顔料が供給される。
【0055】
図5に戻り、次に、図5(b)に示すように、第1の領域31に吐出された光輝性インク21から分散媒を除去して、光輝性顔料からなる第1の光輝性画像23を作成する。次に、図5(c)に示すように、第2の領域32の少なくとも一部の領域に、第2の吐出モードで光輝性インク21を吐出する。第2の吐出モードは第1の吐出モードの1.3倍以上の吐出量で光輝性インク21を吐出するモードである。そしてより好ましくは、1.5倍以上の吐出量で光輝性インク21を吐出するモードである。
上述したように、どちらかを第1の吐出モードの該記録密度等に比べて増加させることで、吐出量を増加させることができる。また、記録密度と液滴のサイズの双方を増加させても良い。記録密度と液滴のサイズの双方を1.25倍にすることで略1.56倍の吐出量を実現できる。
そして次に、図5(d)に示すように、第2の領域32に吐出された光輝性インク21から分散媒を除去して、光輝性顔料からなる第2の光輝性画像24を作成する。以上の工程により、第1の転写物41を得ることができる。
【0056】
上述したように、本実施形態の転写物作成方法は、第1の記録媒体11上の第1の領域31と第2の領域32とに夫々異なる吐出モードで光輝性インク21を吐出している。したがって本実施形態の転写物作成方法によれば、単位面積当たりの光輝性顔料の供給量が異なる2種類の光輝性画像(23,24)を有する第1の転写物41を得ることができる。
【0057】
単位面積当たりの光輝性顔料の供給量は、転写物上に作成された光輝性画像、及び、該画像を転写することにより作成される画像、すなわち被転写物に作成される画像の光沢感に大きく影響する。具体的には、単位面積当たりの供給量が増加するにつれて、光沢感が、自然で落ち着いた感を有する「マット調」から強い輝度を有する「光沢調」へと徐々に変化する。したがって、本実施形態の転写物の作成方法であれば、光沢感の変化に富んだ被転写物を作成可能な転写物を得ることができる。そして、上述の光沢感の変化(変化の度合い)は、単位面積当たりの光輝性顔料の供給量すなわち吐出量と正の相関を有している。本実施形態の転写物作成方法は、吐出量の差を1.5倍以上としている。したがって、充分に光沢感の変化に富んだ被転写物を作成可能な転写物を得ることができる。
なお、上述の説明では、先に実施する第1の吐出モードの吐出量は後に実施する第2の吐出モードの吐出量よりも少ない。しかし本発明の実施の形態はかかる順序に限定されるものではなく、吐出量の多い吐出モードを先に実施することもできる。
【0058】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態にかかる第2の転写物42の作成方法について説明する。図7は、本実施形態の転写物の作成方法を示す工程断面図である。転写物の概要については上述の第1の実施形態において説明したので、本実施形態については工程断面図のみを用いて説明する。以下、工程順に説明する。
【0059】
まず、図7(a)に示すように、基材14と該基材上に作成された空隙層15とからなる第2の記録媒体12の一方の面に作成された空隙層15上の第3の領域33に、離型層16を作成する。離型層16は、空隙層15に対する密着性が低い材料からなる層、すなわち剥離性が高い層である。離型層16は、シート状に整形された上述の材料層を貼付することによって作成できる。また、本実施形態のように局所的に作成する場合にはインクジェット法等で作成することもできる。離型層作成材料と分散媒からなるインクを第3の領域33に吐出した後、該分散媒を乾燥除去することで、局所的に離型層16を作成できる。
【0060】
次に、図7(b)に示すように、第3の領域33の少なくとも一部の領域にカラーインク27を液滴20として吐出する。かかる吐出は、吐出ヘッド59を第3の領域33上を走査させつつ実施する。カラーインク27はカラー顔料と分散媒とからなるインクである。分散媒としては、上述の光輝性インク21と同様に、水、有機溶剤、反応性化合物、及びそれらの混合物等を用いることができる。カラー顔料としては特に制限されず、無機顔料と有機顔料のいずれを用いることができる。そして、イエロー顔料とマゼンタ顔料とシアン顔料の3種類の顔料を用いることで広い範囲の(色彩の)カラー画像を作成できる。
【0061】
イエロー顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等を用いることができる。
【0062】
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245等を用いることができる。
【0063】
シアン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー4、60等を用いることができる。
【0064】
次に、図7(c)に示すように、カラーインク27から上述の分散媒を乾燥除去して、カラー画像28を作成する。次に図7(d)に示すように、第1の領域31の少なくとも一部の領域に第1の光輝性画像23を作成する。そして次に、図7(e)に示すように、第2の領域32の少なくとも一部の領域に第2の光輝性画像24を作成する。
【0065】
第1の光輝性画像23と第2の光輝性画像24の作成は、上述の第2の実施形態における光輝性画像22の作成方法と同一の方法で行う。すなわち、光輝性顔料と分散媒とを含む光輝性インク21を吐出ヘッド59から上述の領域に吐出した後、光輝性インク21から分散媒を乾燥除去して、光輝性顔料を主成分とする層である光輝性画像(23,24)を作成する。その際、第1の領域31には第1の吐出モードで光輝性インク21を吐出し、第2の領域32においては第1の吐出モードとは吐出量が異なる第2の吐出モードで光輝性インク21を吐出する。図示するように、離型層16が作成されている領域は第3の領域33のみであり、第1の領域31と第2の領域32には空隙層15が露出している。したがって、吐出された光輝性インク21に含有される分散媒は空隙層15に浸透し、空隙層15の表面には光輝性顔料を主成分とする光輝性画像(23,24)が好適に作成される。一方でカラーインク27は、離型層16の上に吐出された場合でも良好な画像となり、転写される時は、離型層の機能によって良好にカラーインク27の層が転写される。一般にカラーインク27は樹脂によって分散された顔料が多く、離型層16が無い空隙層15上に吐出がなされると、定着性が強く良好に転写がされない場合が多い。このような事情を考慮すると離型層16を設ける事が良好である。なお、第2の領域32が記録されていることは必須ではなく、第1の領域31と第3の領域33だけであっても良い。
【0066】
以上の工程により、光沢感の異なる2種類の光輝性画像(23,24)とカラー画像28の双方を有する第2の転写物42を得ることができる。そしてかかる第2の転写物42を別の記録媒体すなわち被転写物に転写することで、光沢感の変化に富む光輝性画像(23,24)とカラー画像28の双方を有する被転写物を得ることができる。なお、離型層16は、上述の転写時においてカラー顔料と共に被転写物の側へ移動する。すなわち、被転写物に転写される。
【0067】
第2の転写物42の特徴は、カラー画像28のみが離型層16上に作成されていることである。光輝性インク21に含有されている光輝性顔料は、吐出された後に分散媒が下地に浸透しないと平滑に配列されないという特徴がある。したがって、光沢感が向上した光輝性画像(23等)を得るためには、光輝性インク21を空隙層15が露出する領域に吐出する必要がある。また、光輝性顔料は下地に対する密着性が低いという特徴がある。したがって、光輝性画像(23等)が空隙層15上に直接作成されている場合であっても、別の記録媒体に好適に転写可能である。
【0068】
一方、カラーインク27に含有されているカラー顔料は、下地に対する密着性が比較的強いという特徴を持っている。したがって、カラーインク27を空隙層15が露出する領域に吐出して該空隙層上に直接カラー画像28を作成した場合、カラー画像28を別の記録媒体に好適に転写することは困難となる。本実施形態の転写物の作成方法は、インクに含有される顔料の特性に応じて下地を変更している。そのため、光輝性画像(23等)とカラー画像28の双方を好適に転写可能な転写物を作成できる。
【0069】
なお本実施形態は、一般的なカラー顔料を含有するカラーインク27を用いてカラー画像28を有する転写物を作成する場合に好適な実施形態である。自己分散型顔料、すなわち分散性のある官能基を有するカラー顔料を含有するカラーインク27を用いて転写物を作成する場合、離型層16を作成する必要はない。かかる自己分散型顔料は下地に対する密着性が低いため、光輝性顔料と同様に離型層16を用いなくとも好適に転写可能である。
【0070】
なお本実施形態、及び上述の第2の実施形態では、第1の吐出モードと第2の吐出モードを用いて2種類の光輝性画像(23,24)を作成する場合を好ましい態様として記載している。しかし、本発明の実施の形態は、より多くの吐出モードを用いる態様も可能である。すなわち、第1の吐出量と第2の吐出量の双方と異なる第3の吐出量で吐出する第3の吐出モード等を用いることで、光沢感の異なる3種類以上の光輝性画像を有する転写物、あるいはかかる3種類以上の光輝性画像とカラー画像28とを有する転写物を作成することができる。
【0071】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0072】
[1]光輝性顔料インクの調製
【0073】
(1)光輝性顔料インク
10N−NaOH水溶液を3mL添加してアルカリ性にした水50mLに、クエン酸3ナトリウム2水和物17g、タンニン酸0.36gを溶解した。得られた溶液に対して3.87mol/L硝酸銀水溶液3mLを添加し、2時間攪拌を行い、銀コロイド液を得た。得られた銀コロイド液に対し、導電率が30μS/cm以下になるまで透析することで脱塩を行った。透析後、3000rpm、10分の条件で遠心分離を行うことで、粗大金属コロイド粒子を除去した。なお、銀粒子の平均粒子径は「マイクロトラックUPA」(日機装株式会社製)を用いて測定した。測定条件は、屈折率を0.2−3.9i、溶媒(水)の屈折率を1.333、測定粒子形状を球形、とした。その結果、平均粒子径は10nmであった。
【0074】
上記方法にて、銀コロイド液(固形分)を10質量%、界面活性剤、オルフィンE1010を1質量%、プロピレングリコールを11質量%、1,2−ヘキサンジオール、5質量%、イオン交換水を残分、として光輝性顔料インクを調製した。
【0075】
実施例A
[2]転写物の製造方法
【0076】
PX−5500(セイコーエプソン社製)を用いて、転写シートとしての写真用紙<光沢>に、水系銀インクを表1に記載のdutyで付与し、画像を形成した。その後、乾燥処理を行った。なお、乾燥条件は、まず、プラテンヒーターを用いて転写シートの裏面から50℃で加熱し、さらに画像に40℃の温風を接触させることにより、付着したインクから液体成分を蒸発させた。その後、転写シートの画像が形成された面に向けて、インクジェットヘッドから接着層の材料を含むインクを表1に記載のdutyで吐出し付着させることにより、接着層を形成した。その後、乾燥装置を用いてさらに蒸発、乾燥を行い(50℃の温風を20秒間接触させる)、転写媒体を作製した。その後、接着層上に被転写媒体を配置し、接着層と被転写媒体とを接着させた後、転写媒体から画像を剥離した。なお、転写の際に、JOL−DIGITAL−4R230(日本オフィスラミネーター株式会社製)を用い、熱圧着ローラー温度を130℃、圧力を30kg/cm2、速度を20cm/秒と設定した。
【0077】
ここで、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100(式中、「実記録
ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数であり、「縦解像度」及び「横解像度」
はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
【0078】
【表1】

【0079】
転写性評価
紙メディア(スーパーファイン紙:セイコーエプソン社製)の記録媒体を用意し、各実施例及び各比較例の熱転写媒体を用いて、各記録媒体に画像の転写処理を行い、記録物を得、下記の基準に従い、画像転写性を評価した。
○ :転写面は平滑で剥離ムラが見られない。
△ :20%以下の剥離ムラが見られる。
× :20%超の剥離ムラが見られる。
【0080】
光沢感評価
目視にて光沢感の評価を行った。
【0081】
実施例B
[3]転写物の製造方法
被記録面の平均開口径の異なる記録媒体を準備した。各記録媒体は下記の樹脂被覆紙の一方の面(酸化チタン含有樹脂側)に、下記の塗工液を、乾燥後の厚みが38μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し乾燥させて形成した。
【0082】
樹脂被覆紙は、晒クラフトパルプ(広葉樹)LBKP(50部)と晒サルファイトパルプ(広葉樹)LBSP(50部)のパルプ配合からなり、厚み192μm、JIS−P8125で規定する剛性1.26である原紙の一方の面(インク受容層塗設側)に、低密度ポリエチレン(70部)と高密度ポリエチレン(20部)と酸化チタン(10部)とからなる樹脂組成物を、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、該原紙の他方の面(インク受容層非塗設側)に、高密度ポリエチレン(50部)と低密度ポリエチレン(50部)とからなる樹脂組成物を、乾燥後の厚みが34μmとなるように塗布して製造した。
【0083】
塗工液は、コロイダルシリカ(スノーテックス:日産化学工業株式会社製)を60質量部、バインダー(株式会社クラレ製、PVA217、ケン化度88モル%、平均重合度1700)を20質量部、定着剤(日東紡株式会社製、PAS−A−1)を4質量部、架橋剤として、チタンラクテート(松本製薬工業株式会社製、TC−400)を0.2質量部、及び水を200重量部からなる溶液を用いた。
【0084】
記録媒体1はスノーテックス20(平均1次粒子径10〜20nm)、記録媒体2はスノーテックスCM(平均1次粒子径20〜30nm)、記録媒体3はスノーテックス20L(平均1次粒子径40〜50nm)を用いた。また、記録媒体1の平均開口径は16nmであり、記録媒体2の平均開口径は20nmであり、記録媒体3の平均開口径は44nmであった。平均開口径は、次のように計測した。各記録媒体の被記録面に白金パラジウムを約2nm蒸着して導電処理を施した。その後各記録媒体を、SEM(日立製作所製:S4700)に導入して、各記録媒体の被記録面のSEM像を得た。当該SEM像には、20〜40個の細孔が観察されるように、倍率を調節した。得られたSEM像の細孔を、抽出して評価した。具体的には、20〜40個の細孔から、20個の細孔を無作為に選んで各細孔の円相当径を求め、細孔の大きさの上位5つと下位5つを除外した10個の細孔の円相当径を求め、10個の円相当径を算術平均することで事前開口型を得た。その後上述の作業を記録媒体の他の箇所で4回行いそれぞれの事前開口型を得て、それらを再度算術平均することで、平均開口径とした。
【0085】
PX−5500(セイコーエプソン社製)を用いて、転写シートとしての記録媒体1,2,3に、光輝性インクを50%dutyで付与させて画像を形成した。その後、乾燥処理を行った。なお、乾燥条件は、まず、プラテンヒーターを用いて転写シートの裏面から50℃で加熱し、さらに画像に40℃の温風を接触させることにより、付着したインクから液体成分を蒸発させた。その後、転写シートの画像が形成された面に向けて、インクジェットヘッドから接着層の材料を含むインクを50%dutyで付着させることにより、接着層を形成した。その後、乾燥装置を用いてさらに蒸発、乾燥を行い(50℃の温風を20秒間接触させる)、転写媒体を作製した。その後、接着層上に被転写媒体を配置し、接着層と被転写媒体とを接着させた後、転写媒体から画像を剥離した。なお、転写の際に、JOL−DIGITAL−4R230(日本オフィスラミネーター株式会社製)を用い、熱圧着ローラー温度を130℃、圧力を30kg/cm2、速度を20cm/秒と設定した。
【0086】
転写性評価、光沢感評価は上述の記載と同様である。
【0087】
【表2】

【0088】
実施例C
[4]転写物の製造方法
【0089】
PX−5500(セイコーエプソン社製)を用いて、転写シートとしての写真用紙<光沢>に、部分的に離型層を形成し、各インクを全て50%dutyで付与させて画像を形成した。その後、乾燥処理を行った。なお、乾燥条件は、まず、プラテンヒーターを用いて転写シートの裏面から50℃で加熱し、さらに画像に40℃の温風を接触させることにより、付着したインクから液体成分を蒸発させた。その後、転写シートの画像が形成された面に向けて、インクジェットヘッドから接着層の材料を含むインクを付着させることにより、接着層を形成した。その後、乾燥装置を用いてさらに蒸発、乾燥を行い(50℃の温風を20秒間接触させる)、転写媒体を作製した。その後、接着層上に被転写媒体を配置し、接着層と被転写媒体とを接着させた後、転写媒体から画像を剥離した。なお、転写の際に、JOL−DIGITAL−4R230(日本オフィスラミネーター株式会社製)を用い、熱圧着ローラー温度を130℃、圧力を30kg/cm2、速度を20cm/秒と設定した。なお、カラーインクの顔料は全てスチレン−アクリル酸共重合体によって濃度5質量%で分散されており、イエローはピグメントイエロー74、マゼンタはピグメントヴァイオレット19、シアンはピグメントブルー15:3を用いている。部分的に形成をした離型層は、ロール状の幅600mm、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム上に低密度重合型ポリエチレンであるワックス(商品名:ハイワックス110P、三井化学社製)を20nm厚に塗布することによって形成した。なお、光輝性インクの下に離型層を形成したか否かは表3に示した。
【0090】
【表3】

【0091】
転写性評価、光沢感評価は上述の記載と同様である。
【0092】
上述の表1,2,3の結果より、吐出量の違い、平均開口径の違い、離型層の有無によって、転写後に異なる質感の光輝性画像が得られることが分かった。
【符号の説明】
【0093】
10…記録媒体、11…第1の記録媒体、12…第2の記録媒体、14…基材、15…空隙層、16…離型層、19…浸透領域、21…光輝性インク、22…光輝性画像、23…第1の光輝性画像、24…第2の光輝性画像、27…カラーインク、28…カラー画像、29…接着層、31…第1の領域、32…第2の領域、33…第3の領域、40…転写物、41…第2の実施形態にかかる転写物、42…第3の実施形態にかかる転写物、50…転写物作成装置、51…インクジェットプリンター、52…フレーム、53…プラテン、54…搬送機構としての媒体送りモーター、55…ガイド部材、56…キャリッジ、57…タイミングベルト、58…キャリッジモーター、59…吐出ヘッド、60…インクカートリッジ、70…制御装置、71…バス、72…CPU、73…ROM、74…RAM、75…入力インターフェイス、76…スキャナー、77…USBメモリー、78…キーボード、79…通信インターフェイス、80…MC、81…モニター、82…出力インターフェイス、99…画像、100…第1のパターン、200…第2のパターン、201…第1のサブパターン、202…第2のサブパターン、203…第3のサブパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット法により、少なくとも一方の面に空隙層を有する記録媒体を用いる転写物作成方法であって、
前記空隙層に対して、光輝性顔料を含有した光輝性インクを吐出して光輝性画像を作成する光輝性画像作成工程を含み、
前記光輝性画像作成工程は、前記記録媒体に対して前記光輝性インクを第1の吐出量で吐出する第1の吐出モードと、前記記録媒体に対して前記光輝性インクを前記第1の吐出量とは異なる第2の吐出量で吐出する第2の吐出モードと、を含むことを特徴とする転写物作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の転写物作成方法であって、
前記第1の吐出モードと前記第2の吐出モードとは記録密度が異なっており、前記第1の吐出モードと前記第2の吐出モードとは、記録密度差は10%以上あることを特徴とする転写物作成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の転写物作成方法であって、
前記第2の吐出量は、前記第1の吐出量の1.3倍以上であることを特徴とする転写物作成方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の転写物作成方法であって、
前記記録媒体に離型性を有する離型層が作成されており、
前記離型層に対して、インクジェット法により、カラー顔料を含有したカラーインクを吐出してカラー画像を作成するカラー画像作成工程を含むことを特徴とする転写物作成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の転写物作成方法であって、
前記光輝性画像作成工程は、前記離型層が作成されていない部分に前記光輝性インクを吐出する工程であることを特徴とする転写物作成方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の転写物作成方法によって作成された転写物を用いて転写された被転写物。
【請求項7】
インクジェット法により、少なくとも一方の面に空隙層を有する記録媒体を用いる転写物セット作成方法であって、
第1の記録媒体に設けられた、第1の平均開口径を有する第1の空隙層に対して、光輝性顔料を含有する光輝性インクを吐出して第1の光輝性画像を作成する第1の光輝性画像作成工程と、
第2の記録媒体に設けられた、前記第1の平均開口径とは異なる第2の平均開口径を有する第2の空隙層に対して、前記光輝性インクを吐出して第2の光輝性画像を作成する第2の光輝性画像作成工程と、
を含むことを特徴とする転写物セット作成方法。
【請求項8】
インクジェット法により、少なくとも一方の面に空隙層を有する記録媒体を用いる転写物作成方法であって、
前記一方の面の第1の領域に前記空隙層を覆う離型性を有する離型層を作成する離型層作成工程と、
前記第1の領域と、前記第1の領域以外の領域に対して、光輝性顔料を含有する光輝性インクを吐出して光輝性画像を作成する光輝性画像作成工程と、
を備えることを特徴とする転写物作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−245684(P2012−245684A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118782(P2011−118782)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】