説明

転写部材

【課題】汎用のSBRを含むゴム組成物を用いて形成され、構造をできるだけ簡略化することが可能である上、オゾン耐性にも優れた、転写ローラ等の転写部材を提供する。
【解決手段】転写部材、例えば転写ローラ1のローラ本体2を、ゴム分として、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、およびエピクロルヒドリンゴムを少なくとも含むゴム組成物を用いて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばレーザープリンタ等の電子写真法を利用した画像形成装置においてトナーの転写に用いる転写部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置においては、概略下記の工程を経て紙(OHPフィルム等のプラスチックフィルムなどを含む。以下同様。)の表面に画像が形成される。
まず、光導電性を有する感光体を用意し、前記感光体の表面を一様に帯電させた状態で露光して、前記表面に、形成画像に対応する静電潜像を形成する(帯電工程→露光工程)。
【0003】
次いで、微小な着色粒子であるトナーをあらかじめ所定の電位に帯電させた状態で、前記感光体の表面に接触させる。そうすると前記トナーが、静電潜像の電位パターンに応じて感光体の表面に選択的に付着されて、前記静電潜像がトナー像に現像される(現像工程)。
次いで、前記トナー像を紙の表面に転写し(転写工程)、さらに定着させることにより(定着工程)、前記紙の表面に画像が形成される。
【0004】
また前記転写工程では、感光体の表面に形成したトナー像を、紙の表面に直接に転写させる場合だけでなく、像担持体の表面に一旦転写(一次転写工程)させたのち紙の表面に再転写させる(二次転写工程)場合もある。
前記トナー像を、前記転写工程において感光体の表面から紙の表面に転写させたり、一次転写工程において感光体の表面から像担持体の表面に転写させたり、あるいは二次転写工程において像担持体の表面から紙の表面に転写させたりするためには、半導電性を有するゴム組成物からなる円筒状のローラ本体を備えた転写ローラ等の転写部材が広く用いられる。
【0005】
例えば前記転写ローラを用いて、転写工程において、感光体の表面から紙の表面にトナー像を転写させる場合は、互いに所定の圧接力で圧接させた前記感光体と転写ローラとの間に所定の転写電圧を印加した状態で、前記両者間に紙を通紙させることにより、前記感光体の表面に形成されたトナー像が、前記紙の表面に転写される。
前記転写ローラとしては、例えば架橋性のゴムに、導電性カーボンブラック等の電子導電性を有する充填剤や、あるいはエピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性を有するポリマ等を配合し、混練等して調製したゴム組成物を円筒状に押出成形等したのち架橋させて形成されたローラ本体を備えたものが広く用いられている。
【0006】
また、前記ゴム組成物中に発泡剤を含有させておき、ゴム組成物の架橋前に、あるいは架橋と同時に前記発泡剤を発泡させることで、前記ローラ本体を多孔質構造とした転写ローラも広く用いられている。
またローラ本体は、前記ゴム組成物からなる単層構造に形成される他、前記ゴム組成物からなる層の外周または内周に他の層を積層した積層構造に形成される場合もある。
【0007】
例えば特許文献1には、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、またはシリコーンゴムに導電性カーボンブラックを配合したゴム組成物からなる内層の外周に、NBRとSBRの混合ゴムからなり、導電性カーボンブラック、または過塩素酸塩を配合したゴム組成物からなる外層を積層した積層構造を有するローラ本体を備えたローラを、転写ローラとして使用することが記載されている。
【0008】
また特許文献2には、EPDM、NBR、およびSBRの混合物に導電性カーボンブラックを配合したゴム組成物からなる内層の外周に、フッ素系材料等からなる外層を積層した積層構造を有するローラ本体を備えたローラを、二次転写工程用の転写ローラとして用いることが記載されている。
そして特許文献3には、NBR、SBR、およびブタジエンゴム(BR)からなる群より選ばれた少なくとも1種と、エピクロルヒドリンゴムとを配合したゴム組成物からなるローラ本体を備えた転写ローラが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−114189号公報
【特許文献2】特開2002−278320号公報
【特許文献3】特開2009−198768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近時、特に新興国向けの汎用のレーザープリンタ等に用いる転写ローラとしては、できるだけ汎用の材料を使用して、なるべく構造が簡単で、しかもコスト安価に製造できるものが求められる傾向にある。
汎用の材料を使用して、構造が簡単でコスト安価に製造できるようにすることは、新興国などへのレーザープリンタ等の普及と、それに伴うオフィスオートメーション化、ファクトリーオートメーション化等の推進、促進、新興国の技術力向上を図り、最終的にはいわゆる南北問題の緩和、解消のためにも重要である。
【0011】
前記要求に対応するために、材料面、および構造の点で種々の検討がされている。
例えば転写ローラに半導電性を付与するための成分である、前記導電性カーボンブラック等の電子導電性の充填剤と、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性のポリマとを比較すると、前者の電子導電性の充填剤では、ローラ本体に均一で安定した半導電性を付与するのが難しい。
【0012】
ローラ本体の半導電性を安定させるためには、前記特許文献1、2等に記載されているように、電子導電性の充填剤を含むローラ本体(内層)の外周を、任意の外層で被覆した積層構造とする必要がある。
しかしローラ本体を積層構造とした場合には、工程数が増加する上、両層の厚みの管理を厳密に行う必要がある等、転写ローラの製造工程が複雑化し、生産性が低下するとともに製造の歩留まりが低下して、前記転写ローラのコストアップに繋がるという問題がある。
【0013】
これに対し、後者のイオン導電性のポリマによれば、電子導電性の充填剤に比べて、ローラ本体に、より均一で安定した半導電性を付与することが可能である。したがって、ローラ本体を単層構造にして構造を簡略化するとともに、製造工程を簡略化して生産性、および製造の歩留まりを向上して、更なる低コスト化を図ることが可能である。
イオン導電性のポリマとともに前記単層構造のローラ本体を形成するゴムとして、従来はNBRを用いるのが一般的であった。しかし、前記汎用のレーザープリンタ等に用いる転写ローラを形成するゴムとしては、NBRよりもさらに汎用性が高くコスト安価なSBRを用いるのが望ましいと考えられる。
【0014】
また、NBRに比べてSBRは電気抵抗値が低いため、同じローラ抵抗値を有する転写ローラを形成するために必要なエピクロルヒドリンゴムの配合割合を少なくして、さらに低コストでしかも環境にやさしい転写ローラを形成できるという利点もある。
ところが発明者の検討によると、前記SBRとエピクロルヒドリンゴムとを配合したゴム組成物からなるローラ本体は、プリンタ等の内部で発生するオゾンに対する耐性(以下「オゾン耐性」と記載する場合がある。)が不十分である。
【0015】
前記ローラ本体は、画像形成に繰り返し使用すると急速にオゾン劣化するため、比較的短期間で転写ローラのローラ抵抗値が大きく変動したり、場合によってはオゾンクラックを生じたりしやすいという問題がある。
これらの問題を短期間で生じて転写ローラを頻繁に交換しなければならないのでは、汎用のSBRを使用したことによる前記の利点が失われてしまう。
【0016】
本発明の目的は、汎用のSBRを含むゴム組成物を用いて形成され、構造をできるだけ簡略化することが可能である上、オゾン耐性にも優れた、転写ローラ等の転写部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため、発明者は、SBRとエピクロルヒドリンゴムとの併用系に、オゾン耐性に優れた第3の成分を配合して、転写部材の全体でのオゾン耐性を向上することを検討した。
その結果、前記第3の成分としてEPDMを配合すると、前記EPDMはそれ自体がオゾン耐性に優れているだけでなく、SBRのオゾン劣化を抑制する働きもするため、転写部材のオゾン耐性を、予期していた以上に大幅に向上できることを見出した。
【0018】
すなわち本発明の転写部材は、ゴム分として、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、およびエピクロルヒドリンゴムを少なくとも含むゴム組成物からなることを特徴とするものである。
前記転写部材を発泡構造とすると、同じ容積を有する転写部材を形成するために要するゴム組成物の量を減少できるため軽量化が可能であるとともに、更なる低コスト化を図ることも可能である。
【0019】
また、例えば転写ローラの場合は、前記軽量化により回転に要するエネルギーを低減することもできる。しかもローラ本体の柔軟性を高めて、前記ローラ本体が圧接される感光体の表面を傷つけるのを防止したり、前記圧接時のニップ幅を広く取ってトナー像の転写効率を高めたりすることもできる。
したがって本発明の転写部材は、さらに発泡剤をも含むゴム組成物によって形成され、前記発泡剤の発泡による多孔質構造を有しているのが好ましい。
【0020】
なおEPDMは、SBRに比べて電気抵抗値が高い上、SBRとはSP値(溶解度パラメータ)が大きく異なっているため混練も容易でない。
そのためEPDMの配合割合は、転写部材のオゾン耐性を十分に確保できる範囲内で、できるだけ少ないのが好ましく、特にSBRとエピクロルヒドリンゴムの合計の配合割合未満であるのが好ましい。
【0021】
すなわち、本発明の転写部材を形成するゴム組成物は、SBR(S)、EPDM(E)、およびエピクロルヒドリンゴム(C)を、質量比で、式(1):
S+C>E (1)
を満足する範囲で含んでいるのが好ましい。
また、先に説明したように汎用性が高くコスト安価である上、電気抵抗値が低いという、SBRを用いることによる効果を最大限に活かすためには、前記ゴム組成物は、ゴム分として、SBR、EPDM、およびエピクロルヒドリンゴムのみを含んでいるのが好ましい。
【0022】
ただしゴム組成物に、例えばNBR、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリルゴム(ACM)等の極性ゴムを配合すると、例えば転写ローラのローラ抵抗値を微調整することができる。前記極性ゴムの配合割合は、SBRによる先に説明した効果を阻害しないことを考慮すると、前記SBRの配合割合未満であるのが好ましい。
すなわち、本発明の転写部材を形成するゴム組成物は、前記極性ゴム(P)を、SBR(S)に対して、質量比で、式(2):
S>P (2)
を満足する範囲で含んでいるのが好ましい。
【0023】
また前記極性ゴムは、前記のようにNBR、CR、BR、およびACMからなる群より選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
本発明の転写部材は、組み込む画像形成装置の形状、構造等に応じて、例えば平板状等の任意の形状に形成できる。最も一般的な転写ローラの場合は、その構造を極力簡略化するために、全体が前記ゴム組成物からなる単層構造の、円筒状のローラ本体を備えているのが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、汎用のSBRを含むゴム組成物を用いて形成され、構造をできるだけ簡略化することが可能である上、オゾン耐性にも優れた、転写ローラ等の転写部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の転写部材の、実施の形態の一例としての転写ローラの外観を示す斜視図である。
【図2】前記転写ローラのローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の転写部材の、実施の形態の一例としての転写ローラの外観を示す斜視図である。
図1を参照して、この例の転写ローラ1は、単層構造を有する円筒状のローラ本体2と、前記ローラ本体2の中心の通孔3に挿通されたシャフト4とを備えている。
前記シャフト4は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成されている。ローラ本体2とシャフト4とは、例えば導電性を有する接着剤等によって電気的に接合されるとともに機械的に固定されて一体に回転される。
【0027】
前記ローラ本体2は、ゴム分として、SBR、EPDM、およびエピクロルヒドリンゴムを少なくとも含むゴム組成物を、前記ローラ本体2の形状に押出成形等によって成形したのち架橋させて形成される。
(SBR)
前記のうちSBRとしては、スチレンと1,3−ブタジエンとを乳化重合法、溶液重合法等の種々の重合法によって共重合させて合成される種々のSBRがいずれも使用可能である。またSBRとしては伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。
【0028】
さらにSBRとしては、スチレン含量によって分類される高スチレンタイプ、中スチレンタイプ、および低スチレンタイプのSBRがいずれも使用可能である。スチレン含量や架橋度を変更することで、ローラ本体2の各種物性を調整することができる。
これらSBRの1種または2種以上を使用することができる。
SBRの配合割合は、ゴム分の総量の40質量%以上であるのが好ましく、90質量%以下であるのが好ましい。
【0029】
配合割合が前記範囲未満では、先に説明した、汎用性が高くコスト安価である上、電気抵抗値が低いという、SBRを用いることによる効果が十分に得られないおそれがある。
一方、前記範囲を超える場合には、相対的にEPDMの配合割合が少なくなって、ローラ本体2に良好なオゾン耐性を付与できないおそれがある。また相対的にエピクロルヒドリンゴムの配合割合が少なくなって、ローラ本体2に良好な半導電性を付与できないおそれもある。
【0030】
(エピクロルヒドリンゴム)
エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、およびエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等の1種または2種以上が挙げられる。
【0031】
特にエピクロルヒドリンゴムとしては、エチレンオキサイドを含む共重合体が好ましく、かかる共重合体におけるエチレンオキサイド含量は30〜95モル%、中でも55〜95モル%、特に60〜80モル%であるのが好ましい。
エチレンオキサイドは電気抵抗値を下げる働きがあるが、エチレンオキサイド含量が前記範囲未満であると、かかる電気抵抗値の低減効果が小さい。一方、エチレンオキサイド含量が前記範囲を超える場合には、エチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に電気抵抗値が上昇する傾向がある。また、架橋後のローラ本体2の硬度が上昇したり、架橋前のゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇したりするおそれもある。
【0032】
前記エピクロルヒドリンゴムとしては、特にエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)が好ましい。
前記ECOにおけるエチレンオキサイド含量は30〜80モル%、特に50〜80モル%であるのが好ましい。またエピクロルヒドリン含量は20〜70モル%、特に20〜50モル%であるのが好ましい。
【0033】
またエピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)を用いることもできる。
前記GECOにおけるエチレンオキサイド含量は30〜95モル%、特に60〜80モル%であるのが好ましい。またエピクロルヒドリン含量は4.5〜65モル%、特に15〜40モル%以上であるのが好ましい。さらにアリルグリシジルエーテル含量は0.5〜10モル%、特に2〜6モル%であるのが好ましい。
【0034】
なおGECOとしては、前記3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体のほかに、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られており、本発明ではいずれの共重合体も使用可能である。
エピクロルヒドリンゴムの配合割合は、ゴム分の総量の5質量%以上であるのが好ましく、40質量%以下であるのが好ましい。
【0035】
配合割合が前記範囲未満では、ローラ本体2に良好な半導電性を付与できないおそれがある。
一方、前記範囲を超える場合には、相対的にSBRの配合割合が少なくなって、前記SBRを用いることによる、先に説明した効果が十分に得られないおそれがある。また相対的にEPDMの配合割合が少なくなって、ローラ本体2に良好なオゾン耐性を付与できないおそれもある。
【0036】
(EPDM)
EPDMとしては、エチレンとプロピレンに少量の第3成分(ジエン分)を加えることで主鎖中に二重結合を導入した種々のEPDMが、いずれも使用可能である。前記EPDMとしては、前記第3成分の種類や量の違いによる様々な製品が提供されている。代表的な第3成分としては、例えばエチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、ジシクロペンタジエン(DCP)等が挙げられる。重合触媒としてはチーグラー触媒を使用するのが一般的である。
【0037】
ゴム組成物は、前記SBR(S)、EPDM(E)、およびエピクロルヒドリンゴム(C)を、質量比で、式(1):
S+C>E (1)
を満足する範囲で含んでいるのが好ましい。
式(1)を満足しない場合、すなわちEPDMの配合割合が、SBRとエピクロルヒドリンゴムの合計の配合割合以上である場合には、相対的にSBRの配合割合が少なくなって、前記SBRを用いることによる、先に説明した効果が十分に得られないおそれがある。また相対的にエピクロルヒドリンゴムの配合割合が少なくなって、ローラ本体2に良好な半導電性を付与できないおそれもある。
【0038】
EPDMの配合割合は、前記式(1)を満足する範囲内でも、特にゴム分の総量の5質量%以上であるのが好ましく、40質量%以下であるのが好ましい。
配合割合が前記範囲未満では、ローラ本体2に良好なオゾン耐性を付与できないおそれがある。
一方、前記範囲を超える場合には、相対的にSBRの配合割合が少なくなって、前記SBRを用いることによる、先に説明した効果が十分に得られないおそれがある。また相対的にエピクロルヒドリンゴムの配合割合が少なくなって、ローラ本体2に良好な半導電性を付与できないおそれもある。
【0039】
(極性ゴム)
極性ゴムを配合すると、先に説明したようにローラ本体2のローラ抵抗値を微調整することができる。前記極性ゴムとしては、例えばNBR、CR、BR、ACMの1種または2種以上が挙げられる。
特にNBRが好ましい。NBRとしては、アクリロニトリル含量によって分類される低ニトリルNBR、中ニトリルNBR、中高ニトリルNBR、高ニトリルNBR、および極高ニトリルNBRがいずれも使用可能である。
【0040】
ゴム組成物は、前記極性ゴム(P)を、SBR(S)に対して、質量比で、式(2):
S>P (2)
を満足する範囲で含んでいるのが好ましい。
式(2)を満足しない場合、すなわち極性ゴムの配合割合が、SBRの配合割合以上である場合には、相対的にSBRの配合割合が少なくなって、前記SBRを用いることによる、先に説明した効果が十分に得られないおそれがある。
【0041】
極性ゴムの配合割合は、前記式(1)を満足する範囲内で、目的とするローラ本体2のローラ抵抗値に応じて任意に設定できるが、特にゴム分の総量の5質量%以上であるのが好ましく、40質量%以下であるのが好ましい。
配合割合が前記範囲未満では、ローラ本体2のローラ抵抗値を微調整する効果が得られないおそれがある。
【0042】
また前記範囲を超える場合には、相対的にSBRの配合割合が少なくなって、前記SBRを用いることによる、先に説明した効果が十分に得られないおそれがある。また相対的にEPDMの配合割合が少なくなって、ローラ本体2に良好なオゾン耐性を付与できないおそれもある。さらに、相対的にエピクロルヒドリンゴムの配合割合が少なくなって、ローラ本体2に良好な半導電性を付与できないおそれもある。
【0043】
(発泡剤)
先に説明したようにゴム組成物に発泡剤を含有させておき、ゴム組成物の架橋前に、あるいは架橋と同時に前記発泡剤を発泡させることで、ローラ本体2を多孔質構造としてもよい。
前記発泡剤としては、加熱によりガスを発生してゴム組成物を発泡させることができる種々の発泡剤がいずれも使用可能である。
【0044】
かかる発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド(HNOCN=NCONH、ADCA)、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等の1種または2種以上が挙げられる。
発泡剤の配合割合は、ローラ本体2の発泡倍率等に応じて任意に設定できるが、ゴム分の総量100質量部あたり1質量部以上、中でも2質量部以上、特に4質量部以上であるのが好ましく、12質量部以下、中でも10質量部以下、特に8質量部以下であるのが好ましい。
【0045】
また発泡助剤を併用することもできる。発泡助剤としては、前記発泡剤の発泡開始温度を低下させ、熱分解を促進してゴム組成物の発泡を補助する機能を有し、しかもそれ自体はガスを発生しない種々の発泡助剤がいずれも使用可能である。
例えば発泡剤がADCAである場合、発泡助剤としては、前記ADCAの発泡開始温度を低下させることができる尿素(HNCONH)が、発泡助剤として好ましい。
【0046】
発泡助剤の配合割合は、使用する発泡剤の種類等に応じて任意に設定できるが、ゴム分の総量100質量部あたり1質量部以上、特に2質量部以上あるのが好ましく、12質量部以下、特に10質量部以下であるのが好ましい。
なおローラ本体2を多孔質構造とするためには、前記発泡剤の発泡以外の他の方法を採用することもできる。
【0047】
当該他の方法としては、例えば液状の低沸点炭化水素を熱可塑性高分子の殻(シェル)で包み込んだマイクロカプセルをゴム組成物中に分散させて、架橋時の熱によって熱膨張させる方法、あらかじめ熱膨張させたマイクロカプセルをゴム組成物中に分散させる方法、食塩等の粒子をゴム組成物中に分散させておき、架橋後に温水等に溶出させて除去する方法等が挙げられる。
【0048】
(架橋剤、促進剤、促進助剤)
ゴム組成物には、ゴム分を架橋させるための架橋剤、促進剤、促進助剤等が配合される。
前記のうち架橋剤としては、例えば硫黄系架橋剤、チオウレア系架橋剤、トリアジン誘導体系架橋剤、過酸化物系架橋剤、各種モノマー等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄や有機含硫黄化合物等が挙げられる。また有機含硫黄化合物等としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N−ジチオビスモルホリン等が挙げられる。
チオウレア系架橋剤としては、例えばテトラメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレア、(C2n+1NH)C=S〔式中、nは1〜10の整数を示す。〕で表されるチオウレア等が挙げられる。
【0050】
過酸化物系架橋剤としてはベンゾイルペルオキシド等が挙げられる。
架橋剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に3質量部以下であるのが好ましい。
また架橋剤としては、硫黄とチオウレア類とを併用するのが好ましい。
前記併用系において硫黄の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.2質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
【0051】
配合割合が前記範囲未満では、ゴム組成物の全体での架橋速度が遅くなり、架橋に要する時間が長くなって転写ローラ1の生産性が低下するおそれがある。また前記範囲を超える場合には架橋後のローラ本体2の圧縮永久ひずみが大きくなったり、過剰の硫黄がローラ本体の外周面にブルームしたりするおそれがある。
またチオウレア類の配合割合は、ゴム分の総量100gあたりのモル数で表して0.0009モル以上、特に0.0015モル以上であるのが好ましく、0.0800モル以下、特に0.0400モル以下であるのが好ましい。
【0052】
チオウレア類の配合割合を前記範囲内とすることにより、ブルームや感光体汚染を起こしにくくできる上、ゴムの分子運動をあまり妨げないため、転写ローラ1のローラ抵抗値をより低くすることができる。
なお、前記範囲内でチオウレア類の配合割合を増やして架橋密度を高めるほど、前記ローラ抵抗値を低下させることができる。
【0053】
すなわち、ゴム分の総量100gあたりのチオウレア類の配合割合が0.0009モル未満ではローラ本体2の圧縮永久ひずみを改善しにくく、またローラ抵抗値を十分に低下させることができない。―方、0.0800モルを超えるとブルームや感光体汚染を生じたり、破断伸び等の機械的物性が低下したりしやすい。
架橋剤の種類に応じて、さらに促進剤や促進助剤を配合してもよい。
【0054】
促進剤としては、例えば消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、下記の有機促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
また有機促進剤としては、例えばジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩等のグアニジン系促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系促進剤;N−シクロへキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系促進剤;テトラメテルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系促進剤;チオウレア系促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
【0055】
促進剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
促進助剤としては、亜鉛華等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸、その他従来公知の促進助剤の1種または2種以上が挙げられる。
促進助剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましい。
【0056】
(その他)
ゴム組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。前記添加剤としては、例えば受酸剤、可塑成分(可塑剤、加工助剤等)、劣化防止剤、充填剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、気泡防止剤、共架橋剤等が挙げられる。
【0057】
このうち受酸剤は、ゴム分の架橋時にエピクロルヒドリンゴムから発生する塩素系ガスの、ローラ本体2内への残留と、それによる架橋阻害や感光体の汚染等を防止するために機能する。
前記受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、分散性に優れていることからハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましく、特にハイドロタルサイト類が好ましい。
【0058】
また、前記ハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用するとより高い受酸効果を得ることができ、感光体の汚染をより一層確実に防止できる。
前記受酸剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に1質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
【0059】
配合割合が前記範囲未満では、受酸剤を含有させることによる前記効果が十分に得られないおそれがある。また前記範囲を超える場合には、架橋後のローラ本体2の硬さが上昇するおそれがある。
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、トリクレジルホスフェート等の各種可塑剤やワックス等が挙げられる。
【0060】
また加工助剤としてはステアリン酸等の脂肪酸などが挙げられる。
これら可塑成分の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以下であるのが好ましい。例えばローラ本体2の外周面5に、必要に応じて酸化膜を形成する際にブリードを生じたり、画像形成装置への装着時や運転時に感光体の汚染を生じたりするのを防止するためである。かかる目的に鑑みると、可塑成分としては極性ワックスを使用するのが特に好ましい。
【0061】
劣化防止剤としては、各種の老化防止剤や酸化防止剤等が挙げられる。
このうち酸化防止剤は、転写ローラ1のローラ抵抗値の環境依存性を低減するとともに、連続通電時のローラ抵抗値の上昇を抑制するはたらいをする。前記酸化防止剤としては、例えばジエチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)NEC−P〕、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラックNBC〕等が挙げられる。
【0062】
ローラ本体2の外周面5に酸化膜を形成する場合で、ゴム組成物に酸化防止剤を配合する場合は、前記酸化膜の形成が効率よく進むように、前記酸化防止剤の配合割合を適宜設定するのが好ましい。
充填剤としては、例えば酸化亜鉛、シリカ、カーボン、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0063】
充填剤を配合することにより、ローラ本体2の機械的強度等を向上できる。
また充填剤として導電性カーボンブラックを用いて、ローラ本体2に電子導電性を付与することもできる。
充填剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり100質量部以下、特に80質量部以下であるのが好ましい。
【0064】
スコーチ防止剤としては、例えばN−シクロへキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、N−ニトロソジフエニルアミン、2,4−ジフエニル−4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上が挙げられる。特にN−シクロへキシルチオフタルイミドが好ましい。
スコーチ防止剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
【0065】
共架橋剤とは、それ自体が架橋するとともにゴム分とも架橋反応して全体を構文しかする働きを有する成分を指す。
前記共架橋剤としては、例えばメタクリル酸エステルや、あるいはメタクリル酸またはアクリル酸の金属塩等に代表されるエチレン性不飽和単量体、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマ類、ジオキシム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0066】
このうちエチレン性不飽和単量体としては、例えば
(a) アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類、
(b) マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類、
(c) 前記(a)(b)の不飽和カルボン酸類のエステルまたは無水物、
(d) 前記(a)〜(c)の金属塩、
(e) 1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、
(f) スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、
(g) トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジンなどの複素環を有するビニル化合物、
(h) その他、(メタ)アクリロニトリルもしくはα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルステロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0067】
また前記(c)の不飽和カルボン酸類のエステルとしては、モノカルボン酸類のエステルが好ましい。
前記モノカルボン酸類のエステルとしては、例えば
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ぺンチル(メタ)アクリレート、i−ぺンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル;
べンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの芳香族環を有する(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、メタグリシジル(メタ)アクリレート、エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、テトラハイドロフルフリルメタクリレートなどの各種官能基を有する(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、イソブチレンエチレンジメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0068】
(ローラ抵抗値)
前記各成分を含むゴム組成物からなるローラ本体2を備えた転写ローラ1は、温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境下で測定される、印加電圧1000Vでのローラ抵抗値が1010Ω以下、特に10Ω以下であるのが好ましい。
図2は、転写ローラ1のローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
【0069】
図1、図2を参照して、本発明では前記ローラ抵抗値を、下記の方法で測定した値でもって表すこととする。
すなわち一定の回転速度で回転させることができるアルミニウムドラム6を用意し、前記アルミニウムドラム6の外周面7に、その上方から、ローラ抵抗値を測定する転写ローラ1の、ローラ本体2の外周面5を当接させる。
【0070】
また前記転写ローラ1のシャフト4とアルミニウムドラム6との間に直流電源8、および抵抗9を直列に接続して計測回路10を構成する。直流電源8は、(−)側をシャフト4、(+)側を抵抗9と接続する。抵抗9の抵抗値rは100Ωとする。
次いでシャフト4の両端部にそれぞれ500gの荷重Fをかけてローラ本体2をアルミニウムドラム6に圧接させた状態で、前記アルミニウムドラム6を回転(回転数:30rpm)させながら、前記両者間に、直流電源8から直流1000Vの印加電圧Eを印加した際に、抵抗9にかかる検出電圧Vを計測する。
【0071】
前記検出電圧Vと印加電圧E(=1000V)とから、トナー搬送ローラ1のローラ抵抗Rは、基本的に式(i′):
R=r×E/(V−r) (i′)
によって求められる。ただし式(i′)中の分母中の(−r)の項は微小とみなすことができるため、本発明では式(i):
R=r×E/V (i)
によって求めた値でもって転写ローラ1のローラ抵抗値とすることとする。
【0072】
(硬さその他)
ローラ本体2を多孔質構造とする場合、前記ローラ本体2は、(社)日本ゴム協会標準規格SRIS 0101「膨張ゴムの物理試験方法」に規定された測定方法により、温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境下で測定されるアスカーC型硬さが50以下、特に35±5程度であるのが好ましい。
【0073】
これは、アスカーC型硬さが前記範囲を超えるローラ本体は柔軟性が不足し、広いニップ幅を確保してトナーの転写効率を向上する効果や、感光体へのダメージを低減する効果が得られないためである。
またローラ本体2は、所定の圧縮永久ひずみや誘電正接等を有するように調整できる。前記圧縮永久ひずみ、アスカーC型硬さ、ローラ抵抗値、並びに誘電正接等を調整するためには、例えばゴム組成物を構成する各成分の種類と量を調整したりすればよい。
【実施例】
【0074】
〈実施例1〉
(ゴム組成物の調製)
SBR〔JSR(株)製のJSR1502〕75質量部、EPDM〔住友化学(株)製のエスプレン(登録商標)EPDM505A〕5質量部、およびECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN(登録商標)T3108〕20質量部と、下記表1に示す各成分とを、バンバリミキサを用いて混練してゴム組成物を調整した。
【0075】
【表1】

【0076】
表中の各成分は下記のとおり。
充填剤:カーボンブラックHAF
発泡剤:ADCA
発泡助剤:尿素
受酸剤:ハイドロタルサイト
加硫剤:粉末硫黄
促進剤DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)DM〕
促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラーTS〕
(転写ローラの製造)
前記ゴム組成物を押出成形機に供給して外径φ10mm、内径φ3.0mmの円筒状に押出成形した後、前記押出成形体を所定の長さにカットして外径φ2.2mmの架橋用の仮のシャフトに装着した。
【0077】
そして加硫缶内で120℃×10分間、次いで160℃×20分間加熱して、発泡剤の熱分解によって発生したガスによってゴム組成物を発泡させるとともにゴム分を架橋させてローラ本体を得た。前記ローラ本体の外径はφ35mmであった。
次いで前記ローラ本体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ6mmのシャフトに装着し直して、オーブン中で160℃×60分間加熱して前記熱硬化性接着剤を硬化させることにより、前記ローラ本体とシャフトとを電気的に接合するとともに機械的に固定した。
【0078】
次いでローラ本体の両端をカットしたのち、円筒研削盤を用いて外周面をトラバース研削することで、前記ローラ本体の外径をφ12.5mm(公差±0.1mm)に仕上げて転写ローラを製造した。
前記ローラ本体のアスカーC型硬さ(1kgf荷重付加時)は35±5の範囲内となるように調整した(以下同様)。
【0079】
〈実施例2〉
SBRの配合量を73質量部、EPDMの配合量を7質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、転写ローラを製造した。
〈実施例3〉
SBRの配合量を70質量部、EPDMの配合量を10質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、転写ローラを製造した。
【0080】
〈実施例4〉
SBRの配合量を45質量部、EPDMの配合量を35質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、転写ローラを製造した。
〈実施例5〉
さらにNBR〔JSR(株)製のJSR N250SL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量20%〕20質量部を加えるとともに、SBRの配合量を50質量部、EPDMの配合量を10質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、転写ローラを製造した。
【0081】
〈実施例6〉
ECOの配合量を15質量部、EPDMの配合量を10質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、転写ローラを製造した。
〈実施例7〉
SBRの配合量を80質量部、ECOの配合量を10質量部、EPDMの配合量を10質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、転写ローラを製造した。
【0082】
〈比較例1〉
NBR〔JSR(株)製のJSR N250SL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量20%〕80質量部、およびECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN T3108〕20質量部と、前記表1に示す各成分とを、バンバリミキサを用いて混練してゴム組成物を調整した。そして前記ゴム組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして転写ローラを製造した。
【0083】
〈比較例2〉
SBR〔JSR(株)製のJSR1502〕80質量部、およびECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN T3108〕20質量部と、前記表1に示す各成分とを、バンバリミキサを用いて混練してゴム組成物を調整した。そして前記ゴム組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして転写ローラを製造した。
【0084】
〈比較例3〉
SBR〔JSR(株)製のJSR1502〕80質量部、およびEPDM〔住友化学(株)製のエスプレン(登録商標)EPDM505A〕20質量部と、前記表1に示す各成分とを、バンバリミキサを用いて混練してゴム組成物を調整した。そして前記ゴム組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして転写ローラを製造した。
【0085】
〈ローラ抵抗値の測定〉
各実施例、比較例で製造した転写ローラの、印加電圧1000Vでのローラ抵抗値を、温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境下で、先に説明した測定方法によって測定した。前記ローラ抵抗値は、1010Ω以下であるとき良好、1010Ωを超えるとき不良と評価した。なお表2ではローラ抵抗値をlogR値で示している。
【0086】
〈オゾン耐性試験〉
各実施例、比較例で製造した転写ローラを解体し、筒状のローラ本体を平板状に開いて両端をチャックし、伸長率50%となるように引き伸ばした状態を維持しながら、下記の条件(日本工業規格JIS K6259相当)でオゾン養生した。
オゾン濃度:50pphm
養生時間:24時間
環境温度:40℃
そして養生後の状態を目視にて観察して、下記の基準でオゾン体制を評価した。
【0087】
○:変化なし。オゾン耐性良好。
△:顕微鏡レベルのクラックあり。オゾン耐性実用レベル。
×:目視レベルのクラックあり。オゾン耐性不良。
〈コスト評価〉
比較例1の転写ローラを製造するのに要したコストを100としたときの、各実施例、比較例の転写ローラの製造コストを、下記の基準で評価した。
【0088】
○:75未満
△:75以上、90未満
×:90以上
以上の結果を表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
表2の実施例1〜7、比較例1〜3の結果より、NBRに代えて汎用のSBRを使用するとともに、ECOおよびEPDMを併用することにより、半導電性ならびにオゾン耐性に優れた転写ローラを、よりコスト安価に製造できることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真法を利用した画像形成装置においてトナーの転写に用いる転写部材であって、ゴム分として、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、およびエピクロルヒドリンゴムを少なくとも含むゴム組成物からなることを特徴とする転写部材。
【請求項2】
さらに発泡剤をも含むゴム組成物によって形成され、前記発泡剤の発泡による多孔質構造を有している請求項1に記載の転写部材。
【請求項3】
前記ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴム(S)、エチレンプロピレンジエンゴム(E)、およびエピクロルヒドリンゴム(C)を、質量比で、式(1):
S+C>E (1)
を満足する範囲で含んでいる請求項1または2に記載の転写部材。
【請求項4】
前記ゴム組成物は、ゴム分として、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、およびエピクロルヒドリンゴムのみを含んでいる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の転写部材。
【請求項5】
前記ゴム組成物は、ゴム分として、さらに極性ゴム(P)を、スチレンブタジエンゴム(S)に対して、質量比で、式(2):
S>P (2)
を満足する範囲で含んでいる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の転写部材。
【請求項6】
前記極性ゴムは、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、およびアクリルゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項5に記載の転写部材。
【請求項7】
全体が前記ゴム組成物からなる円筒状のローラ本体を備えた転写ローラである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の転写部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−108376(P2012−108376A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258085(P2010−258085)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】