説明

転写金型の製造方法、それによって作製された転写金型、及びその転写金型によって作製された部品

【課題】電気鋳造により部品を形成するための、作業性が良く、耐久性に富んだ転写金型、及びそれによる部品を提供する。
【解決手段】切削手段を制御し、所望の側壁角度を有する部品パターンを金属基板10に直接形成するステップと、形成された部品パターンを除く場所、又は、形成された部品パターンを除く場所と部品パターンの側壁とを、SiO2等の絶縁層50で被覆するステップと、を含む。さらに電気鋳造により作製される部品の剥離を容易にするため、厚さ面に対し導電性を維持できる1Å〜1000Åの厚さの任意の金属酸化物(AlOx,TiOx等)、窒化物、又は有機物(レジスト)の剥離層をCVD法により化学的に又はスパッタ法により物理的に形成することにより、一層、剥離作業性を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写金型の製造方法、それによって作製された転写金型、及びその転写金型によって作製された部品に係り、より詳しくは、電気鋳造により部品を形成するための、作業性が良く、耐久性に富んだ転写金型の製造方法、それによる転写金型、及びそれによる部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鋳造法は、面積の制限を受けることが少なく、厚膜導体を形成できることから、腕時計の表示文字や針などの表示部品、小型のギア、バネ、パイプ、ダイヤグラム(圧力センサ)などの機械部品、半導体装置の配線、コイルなどの電子部品に、幅広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、入れ子を製造する際、先ず予め微細パターンが形成された切削マスタを形成し、続いて熱プレスにより切削マスタから転写マスタを形成し、続いて電気鋳造法を用いて転写マスタから入れ子を形成する、旨の記載がある。
【0004】
特許文献2には、シリコンウェハ表面に開口部を有するマスクパターンを形成する工程と、異方性エッチングをする工程と、共通電極膜を形成する工程と、共通電極膜から成長する電鋳膜を形成する工程と、シリコンウェハをエッチングする工程と、電鋳膜を転写マスクとして凸部を有する樹脂製の時計文字板を形成する工程により時計文字板を形成する、旨の記載がある。
【0005】
図8は、従来の転写金型で形成された部品構造図である。図8aにおいて、部品80を形成するため、金属基板70上に、フォトワークによりフォトレジスト30に部品形状をパターン形成する。このレジストパターンが形成された金属基板70を転写金型として、電気鋳造(以下電鋳と呼ぶ)により所定の金属(Ag、Cu、Ni等)が電着され、部品80が形成される。
【0006】
図8bにおいて、電鋳により転写形成された部品80は、接着剤85を介して部品基板90に移植される。このようにして、用途に応じた任意の形状の部品が、電鋳により形成され部品基板90に移植されて用いられていた。
【0007】
この場合、フォトレジスト30の側壁の角度βは、部品80の剥離を容易にして移植するため、45°未満の緩やかな角度に設定されている。ところで、半導体基板上に形成される配線、コイルなどの電子部品を作成する場合、フォトレジスト30の側壁に沿って、電鋳により埋め込まれる状態で形成されるため、配線パターンや誘導性コイルなどが長尺であった場合、互いの側壁の接触面積が増大し、移植する際の剥離における剥離抵抗が増大することになる。このようにパターン化されたフォトレジストを用いた転写金型を使用する場合、部品基板90に移植するには、この増大した剥離抵抗に対抗した剥離力が加えられるため、金属基板70に密着したフォトレジスト30のレジストパターンエッジが剥がれ易くなり、2〜3回の使用でレジスト剥離を生じ、転写金型が使用でき無くなるという問題を生じる。
【0008】
つぎに、電気鋳造による従来の腕時計の表示文字や針などの表示部品、小型のギア、バネ、パイプ、ダイヤグラム(圧力センサ)などの機械部品の製造について説明する。従来の各部品についても同様に、図8の工程で作製される。この場合も、ギア等の部品の種類によっては、金属基板70と部品80との接触面積が増大し、部品80を移植する際の剥離における剥離抵抗が増大し、移植作業が困難となる。また、バネなどの場合は、互いの側壁の接触が長尺となるため、フォトレジスト30の側壁との剥離抵抗が増大し、移植する際の剥離において、フォトレジスト30のレジストパターンエッジが剥がれ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−1535号公報
【特許文献2】特開2004−257861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、電気鋳造により部品を形成するための、作業性が良く、耐久性に富んだ転写金型の製造方法、その転写金型、及びそれによる部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の転写金型の製造方法は、電気鋳造による部品製造に使用する転写金型の製造方法であって、金属基板上に所望の部品パターンの反転パターンを形成し、反転パターンをマスクにして金属基板をエッチングし、所望の側壁角度を有する部品パターンを金属基板に食刻して形成するステップと、反転パターンを取り去り、その取り去った場所に絶縁層を形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の転写金型の製造方法は、電気鋳造による部品製造に使用する転写金型の製造方法であって、金属基板上に所望の部品パターンの反転パターンを形成し、反転パターンをマスクにして金属基板をエッチングし、所望の側壁角度を有する部品パターンを金属基板に食刻して形成するステップと、反転パターンを取り去り、その取り去った場所と形成された前記部品パターンの側壁に絶縁層を形成するステップ、を含むことを特徴とする。
【0013】
本願発明の転写金型の製造方法において、絶縁層の形成後に電気鋳造により作製される部品の剥離を容易にするための剥離層を被着形成するか、又は、熱処理により生成するステップ、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の転写金型は、上記転写金型の製造方法により作製されたこと特徴とする。
【0015】
本発明の転写金型の製造方法は、電気鋳造による部品製造における転写金型の製造方法であって、切削手段を制御し、所望の側壁角度を有する部品パターンを金属基板に直接形成するステップと、形成された部品パターンを除く場所、又は、形成された部品パターンを除く場所と部品パターンの側壁とを、絶縁層で被覆するステップ、を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の転写マスクの製造方法は、上記転写金型の製造方法において、絶縁層を被覆するステップに続いて、電気鋳造により作製される部品の剥離を容易にするための剥離層を被着形成するか、又は、熱処理により生成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の転写金型の製造方法は、上記転写金型の製造方法において、部品パターンを金属基板に直接形成するステップに続いて、電気鋳造により作製される部品の剥離を容易にするための剥離層を熱処理により生成するステップと、形成された部品パターンを除く場所に絶縁層を形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の転写金型は、上記転写金型の製造方法により作製されたことを特徴とする。
【0019】
本発明による部品は、上記転写金型により作製されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電気鋳造により部品を形成するための、作業性が良く、耐久性に富んだ転写金型とそれによる部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施例による転写金型の製造工程図。
【図2】本発明の第2の実施例による転写金型の製造工程図。
【図3】本発明の第3の実施例による転写金型の製造工程図。
【図4】本発明の第4の実施例による転写金型の製造工程図。
【図5】本発明の第5の実施例による転写金型の製造工程図。
【図6】本発明の第6の実施例による転写金型の製造工程図。
【図7】本発明による部品の製造工程図。
【図8】従来の転写金型で形成された部品構造図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0022】
本発明による転写金型の製造工程について、図を用いて説明する。図1は、第1の実施例による転写金型の製造工程である。図1aにおいて、金属基板10上に塗布されたフォトレジスト30に、所望の部品の反転パターンを有するフォトマスク40を介して、矢印方向から露光が行われる。図1bは、露光された部品の反転パターンが、現像されて形成されたレジストパターン30を示す。図1cにおいて、レジストパターン30をマスクとして、ケミカルエッチング等により化学的に、又は、ビームエッチング等により物理的に加工条件が制御され、任意の側壁角度αを有するように所望の部品のパターンが形成される。
【0023】
続いて、レジストパターン30を熱処理により硬化させ、絶縁層とするか、又は、レジストパターン30を取り去り、その取り去った場所にSiO等の絶縁層50を形成する絶縁層処理を行ない、パターン以外の部分が電気的に絶縁されて、転写金型が完成する。この転写金型は、金属基板10に所望の部品のパターンが刻印されて一体化されて形成された構造となっているため、パターンの剥離が生じることは無く、耐久性に富んだ転写金型となる。
【0024】
図2は、本発明の第2の実施例による転写金型の製造工程図である。図2a、図2bは、図1a、図1bと同様であるため説明を省略する。図2cにおいて、加工後、レジストパターン30を取り去り、その取り去った場所と、形成された所望のパターンの側壁とにSiO等の絶縁層50を形成する絶縁層処理を行なって、転写金型を完成させる。
【0025】
図3は、本発明の第3の実施例による転写金型の製造工程図である。図3aは、図1cと同様であるため説明を省略する。図3bにおいて、図3aの加工側の全面に、電気鋳造により作製される部品の剥離を容易にするため、厚さ面に対し導電性を維持できる1Å〜1000Åの厚さの金属酸化物(AlOx,TiOx等)、窒化物、又は有機物(レジスト)の剥離層60を形成する剥離層処理を行い転写金型が完成する。この転写金型は、金型と作製される部品との接触面が全て剥離層60で覆われているため、より一層、剥離作業性を向上させることが可能となる。
【0026】
図3cは、図2cと同様であるため説明を省略する。図3dにおいて、図3cの加工側の全面に、電気鋳造により作製される部品の剥離を容易にするため、厚さ面に対し導電性を維持できる1Å〜1000Åの厚さの任意の金属酸化物(AlOx,TiOx等)、窒化物、又は有機物(レジスト)の剥離層60をCVD法により化学的に又はスパッタ法により物理的に形成する剥離層処理を行い転写金型が完成する。この転写金型は、図3bの場合と同様に金型と作製される部品との接触面が全て剥離層で覆われているため、より一層、剥離作業性を向上させることが可能となる。
【0027】
図4は、本発明の第4の実施例による転写金型の製造工程図である。図4aは、図1cと同様であるため説明を省略する。図4bにおいて、図4aの絶縁層処理が終わると、続いて熱処理することにより、金属基板10の加工面に形成される金属の酸化層を剥離層60とする剥離層処理が行なわれ、転写金型が完成する。この転写金型は、金型と作製される部品との接触面が全て剥離層60で覆われているため、作業性を向上させることが可能となる。
【0028】
図4cは、図2cと同様であるため説明を省略する。図4dにおいて、図4cの絶縁層処理が終わると、続いて熱処理することにより、金属基板10の加工面に形成される金属の酸化層を剥離層60とする剥離層処理が行なわれ、転写金型が完成する。この転写金型は、金型の金属面が剥離層60で覆われているため、作業性を向上させることが可能となる。
【0029】
図5は、本発明の第5の実施例による転写金型の製造工程図である。図5aにおいて、電気的なビーム又は機械的な切削工具による切削手段の加工条件が制御され、矢印方向から、任意の側壁角度αを有する部品の所望のパターンが、金属基板10に直接形成される。図5bにおいて、形成されたパターンを除く場所に、図1cにおけると同様のSiO等の絶縁層50を形成する絶縁層処理が行なわれ、転写金型が完成する。さらに続いて、図3bにおける、剥離層処理を行い転写金型が完成しても良い。
【0030】
また、図5cにおいて、図2cにおけると同様に、加工後、レジストパターンを取り去り、その取り去った場所と、形成された所望のパターンの側壁とにSiO等の絶縁層50を形成する絶縁層処理を行ない、転写金型を完成させる。さらに続いて、図3dにおける、剥離層処理を行ない転写金型を完成させても良い。
【0031】
図6は、本発明の第6の実施例による転写金型の製造工程図である。図6aにおいて、電気的なビーム又は機械的な切削工具による切削手段の加工条件が制御され、矢印方向から、任意の側壁角度αを有する部品の所望のパターンが、金属基板10に直接刻印されて形成される。図6bにおいて、図4b、図4dと同様の熱処理をして、金属基板10に形成される金属の酸化膜を剥離層60とする剥離層処理が行なわれる。図6cにおいて、図5bと同様のSiO等の絶縁層50を形成する絶縁層処理が行なわれ、転写金型が完成する。
【0032】
次に、本発明の転写金型を用いた部品の製造方法について説明する。図7は、本発明による部品の製造工程図である。図7aにおいて、例えば図6cにおける転写金型に、電鋳により所望の金属(Ag、Cu、Ni等)を電着し、部品95を形成する。図7bにおいて、電鋳により転写形成された部品95は、図8bの場合と同様に、接着剤85を介して部品基板90に移植するか、または、グリーンシート98により移植し、グリーンシート98は熱処理されて硬化される。グリーンシート98による移植の場合は、硬化前は部品95が埋め込まれる程度に柔らかいため、接着剤85を必要としない。このようにして、任意の側壁角度αを有する形状の部品95が、電鋳により形成され基板97、又はグリーンシート98に、繰り返し移植されて、それぞれの用途に用いることができる。
【0033】
金属基板10は、SUS、Ni、Cuなどの金属板であっても良い。部品95の電鋳材料は、Ag、Cu、Ni、Au、Sn、Pb、Fe、Cr、Pt、Pdおよびこれらの合金であっても良い。また、剥離層60は、金属酸化物(FeOx、NiOx、AlOx、TiOx、CrOx、CuOx、NbOx、VOx、WO)と窒化物と有機レジストのいずれかであって、膜厚は、トンネル電流が流れる厚さ(例えば、1〜1000Å)であれば良い。
【0034】
以上説明したように本発明によれば、作業性が良く、耐久性に富んだ転写及びそれによる部品を提供することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 金属基板
30 フォトレジスト
40 フォトマスク
50 絶縁層
60 剥離層
80 部品
85 接着剤
90 部品基板
95 部品
98 グリーンシート
α 側壁の傾斜角
β 側壁の傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気鋳造による部品製造における転写金型の製造方法であって、
切削手段を制御し、所望の側壁角度を有する部品パターンを金属基板に直接形成するステップと、
形成された前記部品パターンを除く場所、又は、前記形成された前記部品パターンを除く場所と前記部品パターンの側壁とを、絶縁層で被覆するステップと、を含むことを特徴とする転写金型の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の転写金型の製造方法において、
前記絶縁層を被覆するステップに続いて、電気鋳造により作製される部品の剥離を容易にするための剥離層を被着形成するか、又は、熱処理により生成するステップと、を含むことを特徴とする転写金型の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の転写金型の製造方法において、
前記部品パターンを金属基板に直接形成するステップに続いて、電気鋳造により作製される部品の剥離を容易にするための剥離層を熱処理により生成するステップと、形成された前記部品パターンを除く場所に絶縁層を形成するステップと、を含むことを特徴とする転写金型の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の転写金型の製造方法により作製されたことを特徴とする転写金型。
【請求項5】
請求項4に記載の転写金型により作製されたことを特徴とする部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104130(P2013−104130A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166206(P2012−166206)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2012−518645(P2012−518645)の分割
【原出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【特許番号】特許第5073869号(P5073869)
【特許公報発行日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【出願人】(510078171)株式会社LEAP (4)