説明

転写金型の製造方法及びその転写金型

【課題】電気鋳造により部品を形成するための、作業性が良く、耐久性に富んだ転写金型を提供する。
【解決手段】金属基板に、レジスト補強溝15を形成するステップと、レジスト補強溝15上に、溝を覆いかつ溝の深さを超える高さを有し、その側壁が所望の角度αを有する部品形状の反転レジストパターン20を形成するステップと、反転レジストパターンを熱硬化させるステップと、を含み、レジスト補強溝により反転レジストパターンのエッジを補強することにより反転レジストパターンのエッジの剥がれを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写金型の製造方法及びその転写金型に係り、より詳しくは、電気鋳造法により部品を形成するための、作業性が良く、耐久性に富んだ転写金型の製造方法及びその転写金型に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鋳造法は、面積の制限を受けることが少なく、厚膜導体を形成できることから、腕時計の表示文字や針などの表示部品、小型のギア、バネ、パイプ、ダイヤグラム(圧力センサ)などの機械部品、半導体装置の配線、コイルなどの電子部品に、幅広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、入れ子を製造する際、先ず予め微細パターンが形成された切削マスタを形成し、続いて熱プレスにより切削マスタから転写マスタを形成し、続いて電気鋳造法を用いて転写マスタから入れ子を形成する、旨の記載がある。
【0004】
特許文献2には、シリコンウェハ表面に開口部を有するマスクパターンを形成する工程と、異方性エッチングをする工程と、共通電極膜を形成する工程と、共通電極膜から成長する電鋳膜を形成する工程と、シリコンウェハをエッチングする工程と、電鋳膜を転写マスクとして凸部を有する樹脂製の時計文字板を形成する工程により時計文字板を形成する、旨の記載がある。
【0005】
図4は、従来の電気鋳造法による工程で形成された部品構造図である。図4aにおいて、部品50を形成するため、金属基板10上に、フォトワークによりフォトレジスト20に部品形状がパターン形成されている。このレジストパターンが形成された金属基板10に、電気鋳造(以下電鋳と呼ぶ)により所定の金属(Ag、Cu、Ni等)が電着され、部品50が形成される。
【0006】
図4bにおいて、電鋳により転写形成された部品50は、接着剤60を介して部品基板70に移植される。このようにして、用途に応じた任意の形状の部品が、電鋳により形成され部品基板70に移植されて用いられていた。
【0007】
この場合、フォトレジスト20の側壁の角度βは、部品50の剥離を容易にして移植するため、45°以下の緩やかな側壁の傾斜角度βに設定されている。ところで、半導体基板上に形成される配線、コイルなどの電子部品を作成する場合、フォトレジスト20の側壁に沿って、電鋳により埋め込まれる状態で形成されるため、配線パターンや誘導性コイルなどが長尺であった場合、互いの側壁の接触面積が増大し、移植する際の剥離における剥離抵抗が増大することになる。部品基板70に移植するには、この増大した剥離抵抗に対抗した剥離力が加えられるため、金属基板10に密着したフォトレジスト20のレジストパターンエッジが剥がれ易くなり、2〜3回の使用でレジスト剥離を生じ、パターンが使用でき無くなるという問題を生じる。
【0008】
次に、電鋳による従来の腕時計の表示文字や針などの表示部品、小型のギア、バネ、パイプ、ダイヤグラム(圧力センサ)などの機械部品の製造について説明する。従来の各部品についても同様に、図4の工程で作製される。この場合も、ギア等の部品の種類によっては、金属基板10と部品50との接触面積が増大し、部品50を移植する際の剥離における剥離抵抗が増大し、移植作業が困難となる。また、バネなどの場合は、互いの側壁の接触が長尺となるため、フォトレジスト20の側壁との剥離抵抗が増大し、移植する際の剥離において、フォトレジスト20のレジストパターンエッジが剥がれ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−1535号公報
【特許文献2】特開2004−257861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、電鋳により部品を形成するための、作業性が良く、耐久性に富んだ転写金型の製造方法及びその転写金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の転写金型の第1実施例の製造方法は、金属基板上に、その側壁が所望の角度αを有する部品形状の反転レジストパターンを形成するステップと、反転レジストパターンを熱硬化させるステップと、電気鋳造により金属基板の反転レジストパターンを除く場所に金属を電着して反転レジストパターンのエッジを補強することにより、反転レジストパターンのエッジの剥がれを防止するレジスト補強部を形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
本願発明の転写金型の第2実施例の製造方法は、金属基板の上部表面に被着物との密着性を強化する粗面層を形成するステップと、金属基板上に、その側壁が所望の角度αを有する部品形状の反転レジストパターンをパターン形成するステップと、反転レジストパターンを熱硬化させるステップと、電気鋳造により金属基板の反転レジストパターンを除く場所に金属を電着して反転レジストパターンのエッジを補強することにより、反転レジストパターンのエッジの剥がれを防止するレジスト補強部を形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
本願発明の転写金型の第3実施例の製造方法は、金属基板に、レジスト補強溝を形成するステップと、レジスト補強溝上に、溝を覆いかつ溝の深さを超える高さを有し、その側壁が所望の角度αを有する部品形状の反転レジストパターンを形成するステップと、反転レジストパターンを熱硬化させるステップと、を含み、レジスト補強溝により反転レジストパターンのエッジを補強することにより反転レジストパターンのエッジの剥がれを防止することを特徴とする。
【0014】
本願発明の転写金型の第1又は第2実施例の製造方法において、部品が形成される場所を除くレジスト補強部上に絶縁層を形成するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0015】
本願発明の転写金型の第3実施例の製造方法において、部品が形成される場所と反転レジストパターン上を除く金属基板上に絶縁層を形成するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の転写金型は、上記記載の転写金型の製造方法により作製されたことを特徴とする。
【0017】
本発明の部品は、上記記載の転写金型を用いて電気鋳造により転写製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電気鋳造により部品を形成するための、作業性が良く、耐久性に富んだ転写金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施例による転写金型の構造図。
【図2】本発明の第2の実施例による転写金型の構造図。
【図3】本発明の第3の実施例による転写金型の構造図。
【図4】従来の電気鋳造法による工程で形成された部品構造図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0020】
本発明による転写金型の製造工程について、図を用いて説明する。図1は、第1の実施例による転写金型の構造図である。図1において、部品50を形成するため、金属基板10上に、フォトワークによりフォトレジスト20に部品形状の反転パターンがその側壁に所望の傾斜角度αを有してパターン形成される。次に、フォトレジスト20を熱硬化し、固体化した絶縁層とするための熱処理が行われる。この両側壁の傾斜角度αは、塗布されたフォトレジスト20の材料や、膜厚、フォトマスク(図示せず)を介して照射される露光条件により、任意に決定することが可能である。
【0021】
続いて、レジスト補強部30を形成するため、電鋳により金属が金属基板10に電着される。次に、部品が形成される場所を除いたレジスト補強部30上にSiO等の絶縁層35を形成する絶縁層処理が行なわれ部品パターン以外の部分が電気的に絶縁されて、転写金型が完成する。この転写金型は、部品形状を構成するフォトレジスト20の剥離を防止するためのレジスト補強部30が形成されることにより、フォトレジスト20のエッジの剥がれが防止され、作業性が良く、耐久性に富んだ転写金型を提供することができる。
【0022】
図2は、本発明の第2の実施例による転写金型の構造図である。図2において、フォトレジスト20による部品形状の反転パターンの形成前に金属基板10の上部表面に粗面層40を形成するための粗面化処理が行なわれる。この粗面層40は、金属基板10の表面を直接塩酸処理等により、導電性を有する程度に粗面化して形成しても良いし、また、フォトワークにより、金属基板10の表面が導電性を維持できる程度のストライプ状、格子状等の粗面化に適したフォトパターン層として形成しても良い。
【0023】
次に、部品50を形成するため、図1と同様に金属基板10上に、フォトワークによりフォトレジスト20に部品形状の反転パターンがパターン形成される。次いで、フォトレジスト20を熱硬化し、固体化した絶縁層とするための熱処理が行われる。続いて、レジスト補強部30を形成するため、電鋳により金属が金属基板10に電着される。次に、部品が形成される場所を除いたレジスト補強部30上にSiO等の絶縁層35を形成する絶縁層処理が行なわれ部品パターン以外の部分が電気的に絶縁されて、転写金型が完成する。この転写金型は、部品形状を構成するフォトレジスト20及びレジスト補強部30との密着性を強化する粗面層40を有し、且つ、フォトレジスト20の剥離を防止するためのレジスト補強部30が形成されているため、作業性が良く、耐久性に富んだ転写金型を提供することができる。
【0024】
図3は、本発明の第3の実施例による転写金型の製造工程図である。図3において、金属基板10に、レジスト補強溝15を形成するための補強溝形成処理が行われる。この補強溝形成処理は、フォトワークによりレジスト補強溝15の反転パターンをフォトレジストで形成し、この反転パターンをマスクとして、ケミカルエッチング等により化学的に、又は、ビームエッチング等により物理的に加工条件を制御して、レジスト補強溝15を形成しても良いし、電気的なビーム又は機械的な切削工具による切削手段の操作により、直接形成しても良い。
【0025】
次に、図1と同様に、レジスト補強溝15上に、フォトワークにより、側壁が所望の傾斜角度αを有した部品50形状の反転パターンを形成し、このパターン化されたフォトレジスト20を熱硬化し、転写金型が完成する。この転写金型は、フォトレジスト20の剥離を防止するためのレジスト補強溝15が形成されているため、フォトレジスト20のエッジの剥がれが防止され、作業性が良く、耐久性に富んだ転写金型を提供することができる。なお、第1、第2の実施例と同様に、部品が形成される場所とフォトレジスト20上を除く金属基板10の表面に絶縁層を形成しても良い。
【0026】
このように上記いずれの転写金型においても、作業性が良く、耐久性に富んだ転写金型を提供することができる。また剥離に対して強くなることから、側壁の傾斜角度αを、従来の45°より急峻にすることが可能となり、より高密度のパターン形成が可能となる。
【0027】
金属基板10は、SUS、Ni、Cuなどの金属板であっても良い。絶縁層35は、SiO等の無機質酸化膜の他に、有機系又は無機系のレジストであっても良い。部品50の電鋳材料は、Ag、Cu、Ni、Au、Sn、Pb、Fe、Cr、Pt、Pdおよびこれらの合金であっても良い。
【0028】
また、図1〜3において、電鋳により作製される部品50は、図4bと同様に接着剤60を介して部品基板70に移植されても良いし、グリーンシート(図示せず)により移植されても良い。この場合、グリーンシートは移植後、熱処理されて硬化されるが、硬化前は部品50が埋め込まれる程度に柔らかいため、接着剤60を必要としない。
【符号の説明】
【0029】
10 金属基板
15 レジスト補強溝
20 パターン化されたフォトレジスト
30 レジスト補強部
35 絶縁層
40 粗面層
50 部品
60 接着剤
70 部品基板
α 側壁の傾斜角度
β 側壁の傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板に、レジスト補強溝を形成するステップと、
前記レジスト補強溝上に、前記溝を覆いかつ前記溝の深さを超える高さを有し、その側壁が所望の角度αを有する部品形状の反転レジストパターンを形成するステップと、
前記反転レジストパターンを熱硬化させるステップと、を含み、前記レジスト補強溝により前記反転レジストパターンのエッジを補強することにより前記反転レジストパターンのエッジの剥がれを防止することを特徴とする転写金型の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の転写金型の製造方法において、
部品が形成される場所と前記反転レジストパターン上を除く前記金属基板上に絶縁層を形成するステップをさらに含むことを特徴とする転写金型の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の転写金型の製造方法により作製されたことを特徴とする転写金型。
【請求項4】
請求項3に記載の転写金型を用いて電気鋳造により転写製造された部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−108169(P2013−108169A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166204(P2012−166204)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2012−518646(P2012−518646)の分割
【原出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【特許番号】特許第5073868号(P5073868)
【特許公報発行日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【出願人】(510078171)株式会社LEAP (4)