転車台
【課題】低コストでかつ博物館等における大重量車両の展示用にも適した転車台を提供することにある。
【解決手段】梁14に加わる荷重を、中央部の旋回輪軸受22及び両端部の旋回駆動装置24で受け止めている。又、梁14の強度部材であるフレーム18を、センターフレーム18Cおよびサイドフレーム18A、18Bに三分割して、軸受20で互いに軸着し、梁14に加わる荷重を適切に分散している。よって、梁14の強度部材であるフレーム18の断面積を拡大することなく、梁14の最大積載重量を増大させることが可能となり、ピット12の掘り下げ深さを浅く抑えることができる。最も慣性モーメントが大きいサイドフレーム18A、18Bの外周側端部を、旋回駆動装置24で支持することにより、梁14を旋回させる際に、旋回駆動装置24に求められる駆動力を最小限に抑えることができる。
【解決手段】梁14に加わる荷重を、中央部の旋回輪軸受22及び両端部の旋回駆動装置24で受け止めている。又、梁14の強度部材であるフレーム18を、センターフレーム18Cおよびサイドフレーム18A、18Bに三分割して、軸受20で互いに軸着し、梁14に加わる荷重を適切に分散している。よって、梁14の強度部材であるフレーム18の断面積を拡大することなく、梁14の最大積載重量を増大させることが可能となり、ピット12の掘り下げ深さを浅く抑えることができる。最も慣性モーメントが大きいサイドフレーム18A、18Bの外周側端部を、旋回駆動装置24で支持することにより、梁14を旋回させる際に、旋回駆動装置24に求められる駆動力を最小限に抑えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用の転車台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かつて、蒸気機関車が鉄道の主役だった時代には、列車の折り返しの度に機関車の向きを変える必要があったことから、鉄道車両用の転車台は、主要な駅には必ずといっていいほど設置されていた。この転車台は、円筒形に掘り下げられたピットの直径上に梁が掛け渡され、該梁に敷設された線路と、前記ピットの縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の、任意の一つとが一致するように、前記梁がピット内を自在に旋回するものであり(例えば、特許文献1参照。)、その構造上、上路式転車台と下路式転車台とに分類することができる。
まず、上路式転車台は、梁を構成するフレームが全てピット内に収まるように構成され、ピットの上方には、梁の上に敷設された軌条のみ突出するものである。一方、下路式転車台は、梁を構成するフレームの強度を高めるため、フレームの上端が軌条よりも高い位置まで立ち上がるように、フレームの幅が上下方向に広げられ、側面視で軌条がフレームに隠されるように構成されたものである。
【0003】
【特許文献1】特公平2−15682号公報(第2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、上路式転車台は、フレームの幅を上下に広げて梁の強度を高める必要のない、比較的小型の転車台に適している。これに対し、下路式転車台は、フレームの幅を広げることにより、梁の強度を高めることが容易であることから、最大積載荷重の大きな大型の転車台に適している。
しかしながら、下路式転車台は、フレームが軌条よりも高い位置まで立ち上がることから、転車台上の鉄道車両がフレームに隠されてしまうといった欠点がある。従って、例えば博物館等における鉄道車両の展示用の転車台には不向きであり、実用一辺倒の転車台となってしまう。この点、上路式転車台は転車台上の鉄道車両がフレームに隠されないことから、かかる使用目的に適しているが、最大積載量を増大させるためには、ピットの深さを増大してフレームの幅を下方へと広げる必要があり、転車台の設置コストの問題から、大型の転車台への採用が困難である。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、梁の強度部材であるフレームの幅を上下方向に広げることなく、転車台の梁の最大積載重量を増大させることを可能とし、低コストでかつ博物館等における大重量車両の展示用にも適した転車台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の転車台は、梁に加わる荷重を中央部及び両端部で受け止め、荷重を適切に分散することにより、フレーム自体に高い強度を持たせるべく梁の強度部材であるフレームの幅を広げることなく、梁の最大積載重量を増大させるものである。従って、上路式転車台の形態を採りながら、ピットの掘り下げ深さを増大させることなく、比較的大型の転車台を構成することができる。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)円筒形に掘り下げられたピットの直径上に梁が掛け渡され、該梁に敷設された線路と、前記ピットの縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の、任意の一つとが一致するように、前記梁がピット内を自在に旋回する鉄道車両用の転車台であって、前記梁の強度部材として、全長に渡り上下方向の幅が一定のフレームが用いられ、かつ、前記フレームの中央部が、ピット中央に設けられた旋回輪軸受に支持され、前記フレームの外周側端部が、旋回駆動装置に支持されている転車台。
本項に記載の転車台は、梁に加わる荷重を中央部の旋回輪軸受及び両端部の旋回駆動装置で受け止めることで、フレーム自体に高い強度を持たせるべく、梁の強度部材であるフレームの上下方向の幅を広げることなく、梁の最大積載重量を増大させることが可能となる。よって、ピットの掘り下げ深さを浅く抑えることができる。又、ピット中央に設けられた旋回輪軸受を基準として、最も慣性モーメントが大きいサイドフレームの外周側端部を、旋回駆動装置で支持することにより、梁を旋回させる際に、旋回駆動装置に求められる駆動力を最小限に抑えることができる。
【0007】
(2)円筒形に掘り下げられたピットの直径上に梁が掛け渡され、該梁に敷設された線路と、前記ピットの縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の、任意の一つとが一致するように、前記梁がピット内を自在に旋回する鉄道車両用の転車台であって、前記梁の強度部材として、全長に渡り断面形状一定のフレームが用いられ、かつ、該フレームがセンターフレーム及びサイドフレームに三分割されて水平方向に延びる軸受によって互いに軸着され、前記センターフレーム及び前記サイドフレームの各々が、前記センターフレームを中心として旋回可能となるように、下方から支持されている転車台。
本項に記載の転車台は、梁の強度部材であるフレームを、センターフレームおよびサイドフレームに三分割して互いに軸着し、かつ、センターフレーム及びサイドフレームの各々を、センターフレームを中心として旋回可能となるように、下方から支持することにより、梁に加わる荷重を適切に分散している。よって、フレーム自体に高い強度を持たせるべく、梁の強度部材であるフレームの断面積を拡大することなく、梁の最大積載重量を増大させることが可能となる。よって、ピットの掘り下げ深さを浅く抑えることができる。
なお、センターフレーム及びサイドフレームを下方から支持する手段としては、ピットの底面に環状のレールを敷設して、このレール上を走行する台車によって各フレームを支持するものや、センターフレームの中央部を旋回輪軸受で支持するものが挙げられる。
【0008】
(3)円筒形に掘り下げられたピットの直径上に梁が掛け渡され、該梁に敷設された線路と、前記ピットの縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の、任意の一つとが一致するように、前記梁がピット内を自在に旋回する鉄道車両用の転車台であって、前記梁の強度部材として、全長に渡り断面形状一定のフレームが用いられ、かつ、該フレームがセンターフレーム及びサイドフレームに三分割されて水平方向に延びる軸受により互いに軸着され、前記センターフレームが、ピット中央に設けられた旋回輪軸受に支持され、前記サイドフレームの外周側端部が、旋回駆動装置に支持されている転車台(請求項1)。
本項に記載の転車台は、梁に加わる荷重を中央部の旋回輪軸受及び両端部の旋回駆動装置で受け止めると共に、梁の強度部材であるフレームを、センターフレームおよびサイドフレームに三分割して互いに軸着し、梁に加わる荷重を適切に分散している。よって、フレーム自体に高い強度を持たせるべく、梁の強度部材であるフレームの断面積を拡大することなく、梁の最大積載重量を増大させることが可能となる。よって、ピットの掘り下げ深さを浅く抑えることができる。又、ピット中央に設けられた旋回輪軸受を基準として、最も慣性モーメントが大きいサイドフレームの外周側端部を、旋回駆動装置で支持することにより、針を旋回させる際に、旋回駆動装置に求められる駆動力を最小限に抑えることができる。
【0009】
(4)前記ピットの底には、前記梁及び前記旋回駆動装置の収容に必要な深さを有する浅底部の中央に、前記旋回輪軸受を収める深底部が形成されている転車台(請求項2)。
本項に記載の転車台は、ピットの中央の深底部に、大型の旋回輪軸受を設置することが可能となり、旋回輪軸受に大きな荷重を担持させることができる。また、ピットの中央にのみ深底部が形成されて、ここに旋回輪軸受が収められることで、ピット全体の掘り下げ深さが増大することを防ぐことができる。
【0010】
(5)前記梁の幅方向中央部に軌条が敷設され、該軌条の側方に歩廊が設けられている転車台(請求項3)。
本項に記載の転車台は、人が歩廊を歩くことにより、梁を渡ることが可能となり、転車台上の鉄道車両にも容易に近づくことが可能となる。
【0011】
(6)前記旋回駆動装置は、ピットの周壁面に沿って敷設された環状レールと、該環状レール上を走行する電動走行輪と、前記旋回輪軸受の周囲を囲むようにして前記ピット内に設置された前記電動走行輪の給電トロリーとを備える転車台(請求項4)。
本項に記載の転車台は、ピット中央に設けられた旋回輪軸受と共に、ピットの周壁面に沿って敷設された環状レール、及び、該環状レール上を走行する電動走行輪によって、梁が旋回するものである。又、電動走行輪の給電トロリーを、旋回輪軸受の周囲を囲むようにして、ピット内に設置することで、ピット外部への給電トロリーの露出を防ぎ、かつ、給電トロリーの設置半径を小さく収めることができる。
【0012】
(7)前記サイドフレームの外周側端部には、前記梁に敷設された線路と、前記ピットの縁に沿って放射状に敷設された複数の線路とが整列状態にあるとき、前記ピットの縁に設けられた凹部と係合する突起子が、出没自在に設けられている運転台。
本項に記載の運転台は、ピットの縁に設けられた凹部と、サイドフレームの外周側端部から突出する突起子とが係合することにより、梁に敷設された線路とピットの縁に沿って放射状に敷設された線路との整列状態が確認される。一方、突起子をサイドフレームの外周側端部に没入させることで、梁の旋回が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明はこのように構成したので、梁の強度部材であるフレームの幅を上下方向に広げることなく、転車台の梁の最大積載重量を増大させることを可能とし、低コストでかつ博物館等における大重量車両の展示用にも適した転車台を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
図1、図2に示されるように、本発明の実施の形態に係る転車台10は、円筒形に掘り下げられたピット12の直径上に梁14が掛け渡され、梁14に敷設された線路の軌条16と、ピット12の縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の軌条17の内の、任意の一つとが一致するように、梁14がピット12内を自在に旋回する。
【0015】
さて、梁14の強度部材には、全長に渡り断面形状一定のフレーム18が用いられている。そして、2本のフレーム18が、複数のH型鋼からなる横フレーム19によって補強されている。又、フレーム18は、サイドフレーム18A、18B及びセンターフレーム18Cに三分割され、センターフレーム18Cと、サイドフレーム18A、18Bとが、水平方向に延びる軸受20(図8)によって互いに軸着されている。本発明の実施の形態では、図3〜図5に示されるように、フレーム18にはH型鋼が用いられ、軌条14のゲージ幅と一致するように(図5の符号18C参照。)、並行に2本用いられている。
【0016】
なお、センターフレーム18Cは、前後左右方向に対称形をなしている。又、サイドフレーム18A及び18Bは同一形状となっている。そして、サイドフレーム18A及び18Bとセンターフレーム18Cとの分割形状は、図4、図8に示されるように、サイドフレーム18A及び18Bが、センターフレーム18Cの上方に被さるようにして、相補的に突出した形状となっている。
又、サイドフレーム18A及び18Bとセンターフレーム18Cとを連結する軸受20は、二分割の軸受20aでピン20bを回転自在に挟持し、ピン20bの両端部と二分割の軸受20aとの間に座金20cを介して、ナット20dで固定する構造を有しており、橋梁と橋げたとの軸着用にも用いることが可能な、許容荷重の大きなものである。そして、二分割の軸受20aが、サイドフレーム18A、18Bと、センターフレーム18Cとの各々に対し固定されている。
【0017】
又、ピット12の底は、梁14及び旋回駆動装置24の収容に必要な深さを有する浅底部12aの中央に、旋回輪軸受22を収める深底部12bが形成されている。そしてセンターフレーム18Cは、ピット12の深底部12bに設けられた旋回輪軸受22に支持されている。旋回輪軸受22は、大型クレーン等の旋回輪に用いられる、大荷重用旋回輪を流用することが可能である。図示の例では、センターフレーム18Cは、旋回輪軸受22の直径よりも長い全長が与えられているが、2本のセンターフレーム18Cの設置幅は、旋回輪軸受22の直径よりも狭い。このため、旋回輪軸受22が、梁14の幅方向にはみ出すことを防ぐために、2本のセンターフレーム18Cの中央部には、幅方向外側へと補強材を継ぎ足すことにより、一辺の長さが旋回輪軸受22の直径を上回る、平面視正方形(図3)の軸受台21が形成されている。
【0018】
又、サイドフレーム18A、18Bの、軸受20によってセンターフレーム18Cと連結される基端側端部とは反対側の、外周側端部は、旋回駆動装置24に支持されている。旋回駆動装置24は、図9に示されるように、ピット12の周壁面に沿って敷設された環状レール26(図1、図2)と、環状レール26上を走行する電動走行輪28と、旋回輪軸受22の周囲を囲むようにしてピット12内に設置された、電動走行輪28への給電トロリー30とを備えるものである。
駆動走行輪28はモータ付き減速機28aを備えており、軸受28bを介してサイドフレーム18A、18Bに固定されている。又、図示の例では、駆動走行輪28は、モータ付き減速機28aを持たない従動輪29と対をなしており、電動走行輪28及び従動輪29の回転軸は、何れも、梁14の旋回中心(旋回輪軸受22の旋回中心)を向いている。図10(b)、(c)に示されるように、給電トロリー30は、深底部12bと浅底部12aとの段差部近傍に、トロリー取付架台30aを介して、複数系統のトロリー線30bが、旋回輪軸受22を囲むように円形に敷設され、集電子30cが、集電子取付金具30dを介して、サイドフレーム18A、18Bに固定されてなるものである。
【0019】
又、梁14の幅方向中央部に敷設された軌条14の側方には、図6、図7に示されるように、歩廊32が設けられている。歩廊32は、図3に示される、サイドフレーム18A、18B及びセンターフレーム18Cの夫々に固定された、H型鋼からなる歩廊サポート34上に、床板36を敷き詰めたものである。床板36は、パンチングメタル等、軽量化及び排水性に考慮した板材を用いることが望ましい。なお、図7の例では、歩廊32を構成する床板36は、軌条16の間にも設置されている。又、床板36は、搬入時の利便性を考慮して、全体で15枚に分割されている。更に、歩廊の側端部には、転落防止用のフェンス38(図2)と、ピット12へと降りるためのタラップ40(図1、図7)とが設けられている。なお、フェンス38は、梁14上に載置された鉄道車両を隠すことが無いように、透明アクリル板等、視認性を考慮したものとする。
【0020】
又、図11に示されるように、サイドフレーム12A、12Bの外周側端部には、梁124に敷設された線路の軌条16と、ピット12の縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の軌条17とが整列状態にあるとき、ピット12の縁に設けられた凹部42と係合する突起子44が、出没自在に設けられている。凹部42は、ピット12の縁に形成された窪みに、突起子44の受け金具46を設置したものであり、突起子44を受ける窪み46aの位置を微調整することができるように、受け金具46の位置を移動させることが可能となっている。一方、突起子44は、サイドフレーム12A、12Bに基端部が軸着された金属プレートであり、手動により、図中実線及び点線で示されるように回転させることで、サイドフレーム12A、12Bの外周側端部から、ピット12の縁に形成された凹部42に対して出没自在となっている。
【0021】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。まず、転車台10は、梁14に加わる荷重を中央部の旋回輪軸受22及び両端部の旋回駆動装置24で受け止めている。又、梁14の強度部材であるフレーム18を、センターフレーム18Cおよびサイドフレーム18A、18Bに三分割して、軸受20で互いに軸着し、梁14に加わる荷重を適切に分散している。よって、フレーム18自体に高い強度を持たせるべく、梁14の強度部材であるフレーム18の断面積(上下方向の幅)を拡大することなく、梁14の最大積載重量を増大させることが可能となる。よって、ピット12の掘り下げ深さを浅く抑えることができる。又、ピット12の中央に設けられた旋回輪軸受22を基準として、最も慣性モーメントが大きいサイドフレーム18A,18Bの外周側端部を、旋回駆動装置24で支持することにより、梁14を旋回させる際に、旋回駆動装置24に求められる駆動力を最小限に抑えることができる。
よって、本発明の実施の形態によれば、上路式転車台の形態を採りながら、ピットの掘り下げ深さを増大させることなく、100トンを超えるような電気機関車等の入線も可能な、大型の転車台10を低コストで得ることが可能となる。
【0022】
又、ピット12は、梁14及び旋回駆動装置24の収容に必要な深さを有する浅底部12aの中央に、旋回輪軸受22を収める深底部12bが形成されている。よって、ピット12の中央の深底部12bに、大型の旋回輪軸受22を設置することが可能となり、千巻厘軸受22に大きな荷重を担持させることができる。また、ピット12の中央にのみ深底部12bが形成されて、ここに旋回輪軸受22が収められることで、ピット12全体の掘り下げ深さが増大することを防ぐことができ、転車台の設置コストに重大な影響を及ぼすピット12のコストの高騰を防ぐことができる。
【0023】
又、梁14の幅方向中央部に軌条16が敷設され、軌条16の側方に歩廊32が設けられていることから、人が歩廊32を歩くことにより、梁14を渡ることが可能となり、転車台10上の鉄道車両にも、容易に近づくことが可能となる。よって、例えば博物館等における鉄道車両の展示用として最適の転車台となる。
【0024】
又、ピット12の中央に設けられた旋回輪軸受22と共に、ピット12の周壁面に沿って敷設された環状レール26、及び、環状レール26上を走行する電動走行輪28によって、梁14が旋回するものである。又、電動走行輪28の給電トロリー30を、旋回輪軸受22の周囲を囲むようにして、ピット12内に設置することで、ピット12の外部への給電トロリー30の露出を防ぐことができる。又、給電トロリー30の設置半径を小さく収め、設置コストの増大を防ぐことができる。
【0025】
更に、ピット12の縁に設けられた凹部42と、サイドフレーム18A、18Bの外周側端部から突出する突起子44とが係合することにより、梁14に敷設された線路の軌条16と、ピット12の縁に沿って放射状に敷設された線路の軌条17との整列状態が確認される。一方、突起子44をサイドフレーム18A、18Bの外周側端部に没入させることで、梁14の旋回が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る転車台を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は軌条と平行な方向から見た側面図である。
【図2】図1に示される転車台を、軌条と直交する方向から見た側面図である。
【図3】図1に示される転車台の、フレームの平面図である。
【図4】図1(b)に示される転車台側面図の、フレーム中央部の拡大図である。
【図5】図4に示されるフレーム中央部を、軌条と直交する方向から見た縦断面図である。
【図6】図1に示される転車台の歩廊を示す模式図であって、軌条と直交する方向から見た側面図である。
【図7】図1に示される転車台の歩廊を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は軌条と平行な方向から見た側面図である。
【図8】図1に示される転車台の、センターフレームとサイドフレームとを連結する軸受を示す模式図であり、(a)は側面図、(b)は部分断面図である。
【図9】図1に示される転車台の、旋回駆動装置を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は軌条と平行な方向から見た側面図、(c)は(a)の矢視A図である。
【図10】図1に示される転車台の、給電トロリーの模式図であり、(a)は平面図、(b)は軌条と平行な方向から見た断面図、(c)は(b)の要部拡大図である。
【図11】図1に示される転車台の、サイドフレームの外周側端部に設けられた、ピットの縁の凹部と係合する突起子を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は軌条と平行な方向から見た断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10:転車台、12:ピット、12a:浅底部、12b:深底部、14:梁、 16、17:軌条、 18:フレーム、 18A、18B:サイドフレーム、18C:センターフレーム、22:旋回輪軸受、24:旋回駆動装置、26:環状レール、28:電動走行輪、30:給電トロリー、32:歩廊
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用の転車台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かつて、蒸気機関車が鉄道の主役だった時代には、列車の折り返しの度に機関車の向きを変える必要があったことから、鉄道車両用の転車台は、主要な駅には必ずといっていいほど設置されていた。この転車台は、円筒形に掘り下げられたピットの直径上に梁が掛け渡され、該梁に敷設された線路と、前記ピットの縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の、任意の一つとが一致するように、前記梁がピット内を自在に旋回するものであり(例えば、特許文献1参照。)、その構造上、上路式転車台と下路式転車台とに分類することができる。
まず、上路式転車台は、梁を構成するフレームが全てピット内に収まるように構成され、ピットの上方には、梁の上に敷設された軌条のみ突出するものである。一方、下路式転車台は、梁を構成するフレームの強度を高めるため、フレームの上端が軌条よりも高い位置まで立ち上がるように、フレームの幅が上下方向に広げられ、側面視で軌条がフレームに隠されるように構成されたものである。
【0003】
【特許文献1】特公平2−15682号公報(第2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、上路式転車台は、フレームの幅を上下に広げて梁の強度を高める必要のない、比較的小型の転車台に適している。これに対し、下路式転車台は、フレームの幅を広げることにより、梁の強度を高めることが容易であることから、最大積載荷重の大きな大型の転車台に適している。
しかしながら、下路式転車台は、フレームが軌条よりも高い位置まで立ち上がることから、転車台上の鉄道車両がフレームに隠されてしまうといった欠点がある。従って、例えば博物館等における鉄道車両の展示用の転車台には不向きであり、実用一辺倒の転車台となってしまう。この点、上路式転車台は転車台上の鉄道車両がフレームに隠されないことから、かかる使用目的に適しているが、最大積載量を増大させるためには、ピットの深さを増大してフレームの幅を下方へと広げる必要があり、転車台の設置コストの問題から、大型の転車台への採用が困難である。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、梁の強度部材であるフレームの幅を上下方向に広げることなく、転車台の梁の最大積載重量を増大させることを可能とし、低コストでかつ博物館等における大重量車両の展示用にも適した転車台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の転車台は、梁に加わる荷重を中央部及び両端部で受け止め、荷重を適切に分散することにより、フレーム自体に高い強度を持たせるべく梁の強度部材であるフレームの幅を広げることなく、梁の最大積載重量を増大させるものである。従って、上路式転車台の形態を採りながら、ピットの掘り下げ深さを増大させることなく、比較的大型の転車台を構成することができる。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)円筒形に掘り下げられたピットの直径上に梁が掛け渡され、該梁に敷設された線路と、前記ピットの縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の、任意の一つとが一致するように、前記梁がピット内を自在に旋回する鉄道車両用の転車台であって、前記梁の強度部材として、全長に渡り上下方向の幅が一定のフレームが用いられ、かつ、前記フレームの中央部が、ピット中央に設けられた旋回輪軸受に支持され、前記フレームの外周側端部が、旋回駆動装置に支持されている転車台。
本項に記載の転車台は、梁に加わる荷重を中央部の旋回輪軸受及び両端部の旋回駆動装置で受け止めることで、フレーム自体に高い強度を持たせるべく、梁の強度部材であるフレームの上下方向の幅を広げることなく、梁の最大積載重量を増大させることが可能となる。よって、ピットの掘り下げ深さを浅く抑えることができる。又、ピット中央に設けられた旋回輪軸受を基準として、最も慣性モーメントが大きいサイドフレームの外周側端部を、旋回駆動装置で支持することにより、梁を旋回させる際に、旋回駆動装置に求められる駆動力を最小限に抑えることができる。
【0007】
(2)円筒形に掘り下げられたピットの直径上に梁が掛け渡され、該梁に敷設された線路と、前記ピットの縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の、任意の一つとが一致するように、前記梁がピット内を自在に旋回する鉄道車両用の転車台であって、前記梁の強度部材として、全長に渡り断面形状一定のフレームが用いられ、かつ、該フレームがセンターフレーム及びサイドフレームに三分割されて水平方向に延びる軸受によって互いに軸着され、前記センターフレーム及び前記サイドフレームの各々が、前記センターフレームを中心として旋回可能となるように、下方から支持されている転車台。
本項に記載の転車台は、梁の強度部材であるフレームを、センターフレームおよびサイドフレームに三分割して互いに軸着し、かつ、センターフレーム及びサイドフレームの各々を、センターフレームを中心として旋回可能となるように、下方から支持することにより、梁に加わる荷重を適切に分散している。よって、フレーム自体に高い強度を持たせるべく、梁の強度部材であるフレームの断面積を拡大することなく、梁の最大積載重量を増大させることが可能となる。よって、ピットの掘り下げ深さを浅く抑えることができる。
なお、センターフレーム及びサイドフレームを下方から支持する手段としては、ピットの底面に環状のレールを敷設して、このレール上を走行する台車によって各フレームを支持するものや、センターフレームの中央部を旋回輪軸受で支持するものが挙げられる。
【0008】
(3)円筒形に掘り下げられたピットの直径上に梁が掛け渡され、該梁に敷設された線路と、前記ピットの縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の、任意の一つとが一致するように、前記梁がピット内を自在に旋回する鉄道車両用の転車台であって、前記梁の強度部材として、全長に渡り断面形状一定のフレームが用いられ、かつ、該フレームがセンターフレーム及びサイドフレームに三分割されて水平方向に延びる軸受により互いに軸着され、前記センターフレームが、ピット中央に設けられた旋回輪軸受に支持され、前記サイドフレームの外周側端部が、旋回駆動装置に支持されている転車台(請求項1)。
本項に記載の転車台は、梁に加わる荷重を中央部の旋回輪軸受及び両端部の旋回駆動装置で受け止めると共に、梁の強度部材であるフレームを、センターフレームおよびサイドフレームに三分割して互いに軸着し、梁に加わる荷重を適切に分散している。よって、フレーム自体に高い強度を持たせるべく、梁の強度部材であるフレームの断面積を拡大することなく、梁の最大積載重量を増大させることが可能となる。よって、ピットの掘り下げ深さを浅く抑えることができる。又、ピット中央に設けられた旋回輪軸受を基準として、最も慣性モーメントが大きいサイドフレームの外周側端部を、旋回駆動装置で支持することにより、針を旋回させる際に、旋回駆動装置に求められる駆動力を最小限に抑えることができる。
【0009】
(4)前記ピットの底には、前記梁及び前記旋回駆動装置の収容に必要な深さを有する浅底部の中央に、前記旋回輪軸受を収める深底部が形成されている転車台(請求項2)。
本項に記載の転車台は、ピットの中央の深底部に、大型の旋回輪軸受を設置することが可能となり、旋回輪軸受に大きな荷重を担持させることができる。また、ピットの中央にのみ深底部が形成されて、ここに旋回輪軸受が収められることで、ピット全体の掘り下げ深さが増大することを防ぐことができる。
【0010】
(5)前記梁の幅方向中央部に軌条が敷設され、該軌条の側方に歩廊が設けられている転車台(請求項3)。
本項に記載の転車台は、人が歩廊を歩くことにより、梁を渡ることが可能となり、転車台上の鉄道車両にも容易に近づくことが可能となる。
【0011】
(6)前記旋回駆動装置は、ピットの周壁面に沿って敷設された環状レールと、該環状レール上を走行する電動走行輪と、前記旋回輪軸受の周囲を囲むようにして前記ピット内に設置された前記電動走行輪の給電トロリーとを備える転車台(請求項4)。
本項に記載の転車台は、ピット中央に設けられた旋回輪軸受と共に、ピットの周壁面に沿って敷設された環状レール、及び、該環状レール上を走行する電動走行輪によって、梁が旋回するものである。又、電動走行輪の給電トロリーを、旋回輪軸受の周囲を囲むようにして、ピット内に設置することで、ピット外部への給電トロリーの露出を防ぎ、かつ、給電トロリーの設置半径を小さく収めることができる。
【0012】
(7)前記サイドフレームの外周側端部には、前記梁に敷設された線路と、前記ピットの縁に沿って放射状に敷設された複数の線路とが整列状態にあるとき、前記ピットの縁に設けられた凹部と係合する突起子が、出没自在に設けられている運転台。
本項に記載の運転台は、ピットの縁に設けられた凹部と、サイドフレームの外周側端部から突出する突起子とが係合することにより、梁に敷設された線路とピットの縁に沿って放射状に敷設された線路との整列状態が確認される。一方、突起子をサイドフレームの外周側端部に没入させることで、梁の旋回が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明はこのように構成したので、梁の強度部材であるフレームの幅を上下方向に広げることなく、転車台の梁の最大積載重量を増大させることを可能とし、低コストでかつ博物館等における大重量車両の展示用にも適した転車台を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
図1、図2に示されるように、本発明の実施の形態に係る転車台10は、円筒形に掘り下げられたピット12の直径上に梁14が掛け渡され、梁14に敷設された線路の軌条16と、ピット12の縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の軌条17の内の、任意の一つとが一致するように、梁14がピット12内を自在に旋回する。
【0015】
さて、梁14の強度部材には、全長に渡り断面形状一定のフレーム18が用いられている。そして、2本のフレーム18が、複数のH型鋼からなる横フレーム19によって補強されている。又、フレーム18は、サイドフレーム18A、18B及びセンターフレーム18Cに三分割され、センターフレーム18Cと、サイドフレーム18A、18Bとが、水平方向に延びる軸受20(図8)によって互いに軸着されている。本発明の実施の形態では、図3〜図5に示されるように、フレーム18にはH型鋼が用いられ、軌条14のゲージ幅と一致するように(図5の符号18C参照。)、並行に2本用いられている。
【0016】
なお、センターフレーム18Cは、前後左右方向に対称形をなしている。又、サイドフレーム18A及び18Bは同一形状となっている。そして、サイドフレーム18A及び18Bとセンターフレーム18Cとの分割形状は、図4、図8に示されるように、サイドフレーム18A及び18Bが、センターフレーム18Cの上方に被さるようにして、相補的に突出した形状となっている。
又、サイドフレーム18A及び18Bとセンターフレーム18Cとを連結する軸受20は、二分割の軸受20aでピン20bを回転自在に挟持し、ピン20bの両端部と二分割の軸受20aとの間に座金20cを介して、ナット20dで固定する構造を有しており、橋梁と橋げたとの軸着用にも用いることが可能な、許容荷重の大きなものである。そして、二分割の軸受20aが、サイドフレーム18A、18Bと、センターフレーム18Cとの各々に対し固定されている。
【0017】
又、ピット12の底は、梁14及び旋回駆動装置24の収容に必要な深さを有する浅底部12aの中央に、旋回輪軸受22を収める深底部12bが形成されている。そしてセンターフレーム18Cは、ピット12の深底部12bに設けられた旋回輪軸受22に支持されている。旋回輪軸受22は、大型クレーン等の旋回輪に用いられる、大荷重用旋回輪を流用することが可能である。図示の例では、センターフレーム18Cは、旋回輪軸受22の直径よりも長い全長が与えられているが、2本のセンターフレーム18Cの設置幅は、旋回輪軸受22の直径よりも狭い。このため、旋回輪軸受22が、梁14の幅方向にはみ出すことを防ぐために、2本のセンターフレーム18Cの中央部には、幅方向外側へと補強材を継ぎ足すことにより、一辺の長さが旋回輪軸受22の直径を上回る、平面視正方形(図3)の軸受台21が形成されている。
【0018】
又、サイドフレーム18A、18Bの、軸受20によってセンターフレーム18Cと連結される基端側端部とは反対側の、外周側端部は、旋回駆動装置24に支持されている。旋回駆動装置24は、図9に示されるように、ピット12の周壁面に沿って敷設された環状レール26(図1、図2)と、環状レール26上を走行する電動走行輪28と、旋回輪軸受22の周囲を囲むようにしてピット12内に設置された、電動走行輪28への給電トロリー30とを備えるものである。
駆動走行輪28はモータ付き減速機28aを備えており、軸受28bを介してサイドフレーム18A、18Bに固定されている。又、図示の例では、駆動走行輪28は、モータ付き減速機28aを持たない従動輪29と対をなしており、電動走行輪28及び従動輪29の回転軸は、何れも、梁14の旋回中心(旋回輪軸受22の旋回中心)を向いている。図10(b)、(c)に示されるように、給電トロリー30は、深底部12bと浅底部12aとの段差部近傍に、トロリー取付架台30aを介して、複数系統のトロリー線30bが、旋回輪軸受22を囲むように円形に敷設され、集電子30cが、集電子取付金具30dを介して、サイドフレーム18A、18Bに固定されてなるものである。
【0019】
又、梁14の幅方向中央部に敷設された軌条14の側方には、図6、図7に示されるように、歩廊32が設けられている。歩廊32は、図3に示される、サイドフレーム18A、18B及びセンターフレーム18Cの夫々に固定された、H型鋼からなる歩廊サポート34上に、床板36を敷き詰めたものである。床板36は、パンチングメタル等、軽量化及び排水性に考慮した板材を用いることが望ましい。なお、図7の例では、歩廊32を構成する床板36は、軌条16の間にも設置されている。又、床板36は、搬入時の利便性を考慮して、全体で15枚に分割されている。更に、歩廊の側端部には、転落防止用のフェンス38(図2)と、ピット12へと降りるためのタラップ40(図1、図7)とが設けられている。なお、フェンス38は、梁14上に載置された鉄道車両を隠すことが無いように、透明アクリル板等、視認性を考慮したものとする。
【0020】
又、図11に示されるように、サイドフレーム12A、12Bの外周側端部には、梁124に敷設された線路の軌条16と、ピット12の縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の軌条17とが整列状態にあるとき、ピット12の縁に設けられた凹部42と係合する突起子44が、出没自在に設けられている。凹部42は、ピット12の縁に形成された窪みに、突起子44の受け金具46を設置したものであり、突起子44を受ける窪み46aの位置を微調整することができるように、受け金具46の位置を移動させることが可能となっている。一方、突起子44は、サイドフレーム12A、12Bに基端部が軸着された金属プレートであり、手動により、図中実線及び点線で示されるように回転させることで、サイドフレーム12A、12Bの外周側端部から、ピット12の縁に形成された凹部42に対して出没自在となっている。
【0021】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。まず、転車台10は、梁14に加わる荷重を中央部の旋回輪軸受22及び両端部の旋回駆動装置24で受け止めている。又、梁14の強度部材であるフレーム18を、センターフレーム18Cおよびサイドフレーム18A、18Bに三分割して、軸受20で互いに軸着し、梁14に加わる荷重を適切に分散している。よって、フレーム18自体に高い強度を持たせるべく、梁14の強度部材であるフレーム18の断面積(上下方向の幅)を拡大することなく、梁14の最大積載重量を増大させることが可能となる。よって、ピット12の掘り下げ深さを浅く抑えることができる。又、ピット12の中央に設けられた旋回輪軸受22を基準として、最も慣性モーメントが大きいサイドフレーム18A,18Bの外周側端部を、旋回駆動装置24で支持することにより、梁14を旋回させる際に、旋回駆動装置24に求められる駆動力を最小限に抑えることができる。
よって、本発明の実施の形態によれば、上路式転車台の形態を採りながら、ピットの掘り下げ深さを増大させることなく、100トンを超えるような電気機関車等の入線も可能な、大型の転車台10を低コストで得ることが可能となる。
【0022】
又、ピット12は、梁14及び旋回駆動装置24の収容に必要な深さを有する浅底部12aの中央に、旋回輪軸受22を収める深底部12bが形成されている。よって、ピット12の中央の深底部12bに、大型の旋回輪軸受22を設置することが可能となり、千巻厘軸受22に大きな荷重を担持させることができる。また、ピット12の中央にのみ深底部12bが形成されて、ここに旋回輪軸受22が収められることで、ピット12全体の掘り下げ深さが増大することを防ぐことができ、転車台の設置コストに重大な影響を及ぼすピット12のコストの高騰を防ぐことができる。
【0023】
又、梁14の幅方向中央部に軌条16が敷設され、軌条16の側方に歩廊32が設けられていることから、人が歩廊32を歩くことにより、梁14を渡ることが可能となり、転車台10上の鉄道車両にも、容易に近づくことが可能となる。よって、例えば博物館等における鉄道車両の展示用として最適の転車台となる。
【0024】
又、ピット12の中央に設けられた旋回輪軸受22と共に、ピット12の周壁面に沿って敷設された環状レール26、及び、環状レール26上を走行する電動走行輪28によって、梁14が旋回するものである。又、電動走行輪28の給電トロリー30を、旋回輪軸受22の周囲を囲むようにして、ピット12内に設置することで、ピット12の外部への給電トロリー30の露出を防ぐことができる。又、給電トロリー30の設置半径を小さく収め、設置コストの増大を防ぐことができる。
【0025】
更に、ピット12の縁に設けられた凹部42と、サイドフレーム18A、18Bの外周側端部から突出する突起子44とが係合することにより、梁14に敷設された線路の軌条16と、ピット12の縁に沿って放射状に敷設された線路の軌条17との整列状態が確認される。一方、突起子44をサイドフレーム18A、18Bの外周側端部に没入させることで、梁14の旋回が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る転車台を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は軌条と平行な方向から見た側面図である。
【図2】図1に示される転車台を、軌条と直交する方向から見た側面図である。
【図3】図1に示される転車台の、フレームの平面図である。
【図4】図1(b)に示される転車台側面図の、フレーム中央部の拡大図である。
【図5】図4に示されるフレーム中央部を、軌条と直交する方向から見た縦断面図である。
【図6】図1に示される転車台の歩廊を示す模式図であって、軌条と直交する方向から見た側面図である。
【図7】図1に示される転車台の歩廊を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は軌条と平行な方向から見た側面図である。
【図8】図1に示される転車台の、センターフレームとサイドフレームとを連結する軸受を示す模式図であり、(a)は側面図、(b)は部分断面図である。
【図9】図1に示される転車台の、旋回駆動装置を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は軌条と平行な方向から見た側面図、(c)は(a)の矢視A図である。
【図10】図1に示される転車台の、給電トロリーの模式図であり、(a)は平面図、(b)は軌条と平行な方向から見た断面図、(c)は(b)の要部拡大図である。
【図11】図1に示される転車台の、サイドフレームの外周側端部に設けられた、ピットの縁の凹部と係合する突起子を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は軌条と平行な方向から見た断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10:転車台、12:ピット、12a:浅底部、12b:深底部、14:梁、 16、17:軌条、 18:フレーム、 18A、18B:サイドフレーム、18C:センターフレーム、22:旋回輪軸受、24:旋回駆動装置、26:環状レール、28:電動走行輪、30:給電トロリー、32:歩廊
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形に掘り下げられたピットの直径上に梁が掛け渡され、該梁に敷設された線路と、前記ピットの縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の、任意の一つとが一致するように、前記梁がピット内を自在に旋回する鉄道車両用の転車台であって、
前記梁の強度部材として、全長に渡り断面形状一定のフレームが用いられ、かつ、該フレームがセンターフレーム及びサイドフレームに三分割されて水平方向に延びる軸受により互いに軸着され、前記センターフレームが、前記ピット中央に設けられた旋回輪軸受に支持され、前記サイドフレームの外周側端部が、旋回駆動装置に支持されることを特徴とする転車台。
【請求項2】
前記ピットの底には、前記梁及び前記旋回駆動装置の収容に必要な深さを有する浅底部の中央に、前記旋回輪軸受を収める深底部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の転車台。
【請求項3】
前記梁の幅方向中央部に軌条が敷設され、該軌条の側方に歩廊が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の転車台。
【請求項4】
前記旋回駆動装置は、ピットの周壁面に沿って敷設された環状レールと、該環状レール上を走行する電動走行輪と、前記旋回輪軸受の周囲を囲むようにして前記ピット内に設置された前記電動走行輪の給電トロリーとを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の転車台。
【請求項1】
円筒形に掘り下げられたピットの直径上に梁が掛け渡され、該梁に敷設された線路と、前記ピットの縁に沿って放射状に敷設された複数の線路の、任意の一つとが一致するように、前記梁がピット内を自在に旋回する鉄道車両用の転車台であって、
前記梁の強度部材として、全長に渡り断面形状一定のフレームが用いられ、かつ、該フレームがセンターフレーム及びサイドフレームに三分割されて水平方向に延びる軸受により互いに軸着され、前記センターフレームが、前記ピット中央に設けられた旋回輪軸受に支持され、前記サイドフレームの外周側端部が、旋回駆動装置に支持されることを特徴とする転車台。
【請求項2】
前記ピットの底には、前記梁及び前記旋回駆動装置の収容に必要な深さを有する浅底部の中央に、前記旋回輪軸受を収める深底部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の転車台。
【請求項3】
前記梁の幅方向中央部に軌条が敷設され、該軌条の側方に歩廊が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の転車台。
【請求項4】
前記旋回駆動装置は、ピットの周壁面に沿って敷設された環状レールと、該環状レール上を走行する電動走行輪と、前記旋回輪軸受の周囲を囲むようにして前記ピット内に設置された前記電動走行輪の給電トロリーとを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の転車台。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−100619(P2008−100619A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285087(P2006−285087)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
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