転造ダイスおよびこれを用いたボール状部付き軸部品の製造方法
【課題】ボールジョイントのようにボール状部を有する軸部品を短時間に低コストで精度良く成形できる転造ダイスを提供する。
【解決手段】相対向し且つ互いに対称な断面形状の長尺な成形面2a,2bを有する一対のダイス1a,1bからなり、係るダイス1a,1bにおける成形面2a,2bは、成形開始部分S1では、軸素材14の円柱形部分17の中間に食い込む断面ほぼ山形の凸条5およびこれに隣接する円弧面8を長手方向に沿って対称に有し、且つ成形途中部分S2では、凸条5,7およびこれに隣接して円柱形部分17をアール状に押圧する曲面9を対称に有すると共に、成形終了部分S3では、上記凸条7および円柱形部分17の先端寄りと中間部分とをそれぞれアール状に対向して押圧する断面ほぼ半円形の円弧溝11を対称に有している転造ダイス1。
【解決手段】相対向し且つ互いに対称な断面形状の長尺な成形面2a,2bを有する一対のダイス1a,1bからなり、係るダイス1a,1bにおける成形面2a,2bは、成形開始部分S1では、軸素材14の円柱形部分17の中間に食い込む断面ほぼ山形の凸条5およびこれに隣接する円弧面8を長手方向に沿って対称に有し、且つ成形途中部分S2では、凸条5,7およびこれに隣接して円柱形部分17をアール状に押圧する曲面9を対称に有すると共に、成形終了部分S3では、上記凸条7および円柱形部分17の先端寄りと中間部分とをそれぞれアール状に対向して押圧する断面ほぼ半円形の円弧溝11を対称に有している転造ダイス1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばボールジョイントのようなボール状部を有する軸部品を成形する転造ダイスおよびこれを用いたボール状部付き軸部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールジョイントのような一端にボール状部を有する軸部品は、一般に切削加工によって成形加工されている。即ち、図12に示すように、細径部51、断面六角形のフランジ52、および先端の円柱形部分53を有する軸素材50を用意し、図示しない数値制御(NC)旋盤のチャックに上記細径部51を拘束する。
係る状態で、図13に示すように、円柱形部分53におけるフランジ52寄りの周面に図示しないバイトの刃先を径方向から挿入し、且つ係るバイトの径方向における位置を順次変化させつつ、当該バイトを軸素材50の軸方向に沿って移動することにより、傾斜面54およびアール面55を切削により成形する。
【0003】
引き続いて、上記バイトを軸素材50の軸方向および径方向に沿って、円柱形部分53の先端面寄りに移動させることにより、図14に示すように、円柱形部分53の先端側に半球面56を切削により成形する。この結果、図示のように、一端にボール状部57を有するボールジョイント58を得ることができる。
尚、上記NC旋盤による切削加工では、図13の半球面56を先に成形した後、図12に示したアール面55および傾斜面54を成形しても、上記同様のボールジョイント58を得ることもできる。
【0004】
しかし、ボールジョイント58を前述した切削加工により成形する方法では、それなりの形状と寸法のボール状部57を形成できる反面、係るボール状部57の半球面56とアール面55との表面を、表面に超硬合金層が被覆された断面が円弧形のバニッシュ加工面を有する球面バニッシュ転造丸ダイスにより研磨し(例えば、特許文献1参照)、表面粗度を高めるなど、1個当たりのボールジョイント58の成形に長い加工時間とこれに伴う加工コストを要する。更に、排出される多数の切削屑の処理も煩雑になる、という問題があった。しかも、NC旋盤の制御部に多数の数値を含む複雑なプログラムを予めセットする必要もあった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−66246号公報(第1〜9、図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記背景技術における問題点を解決し、ボールジョイントのようなボール状部を有する軸部品を短時間に低コストで精度良く成形できる転造ダイスとこれを用いたボール状部付き軸部品の製造方法を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、発明者らの鋭意研究および調査の結果、一対のダイスを用いて軸素材をニアネットシェイプにして転造する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明による転造ダイス(請求項1)は、相対向し且つ互いに対称な断面形状の長尺な成形面を有する一対のダイスからなり、係る一対のダイスにおける成形面は、成形開始部分では、軸素材の円柱形部分の中間に食い込む凸条およびこれに隣接する円弧面を長手方向に沿って対称に有し、且つ成形途中部分では、上記凸条およびこれに隣接して上記円柱形部分をアール状に押圧する曲面を対称に有すると共に、成形終了部分では、上記凸条および素材の円柱形部分の先端寄りと中間部分とをそれぞれアール状に対向して押圧する断面ほぼ半円形の円弧溝を対称に有する、ことを特徴とする。
【0008】
これによれば、軸素材における円柱形部分を一対のダイス間に挟持して径方向に回転することにより、対向する一対の上記凸条が軸素材に徐々に食い込むと共に、これに隣接する円弧面と曲面と円弧溝とにより軸素材の表面付近に生じた余肉が軸方向と径方向とに沿って移動する。このため、ほぼ球形のボール状部を約1秒〜数秒程度の短い時間で精度良く転造成形することができ、且つ低コストで連続加工を行うことができる。
【0009】
尚、本明細書において、「ボール状部」とは、単一の球形はもちろん、軸方向に連設された複数の球形、あるいは断面楕円形の紡錘形となども含まれる。また、「軸部品」には、ボールジョイントの他、手工具などの握りハンドル、あるいは太径部分を一端または中間に有する棒なども含まれる。更に、前記一対の転造ダイスは、一方を固定側とし他方を移動側とする形態の他、双方を逆方向に移動するダイスからなる形態としても良く、これらを含めて「相対的に移動する」と称する。
また、上記ダイスの凸条は、その成形面における前記成形開始部分から成形途中部分において当該ダイスの幅方向の中央寄りに徐々に偏寄する形態とすることが望ましい。更に、前記成形途中部分から成形終了部分にかけては、上記凸条に連続する異なる凸条を配置しても良い。加えて、前記成形途中部分の曲面は、成形終了部分における円弧溝の一端部が当該成形途中部分に連続したものである。
尚、前記一対の転造ダイスを移動させる手段には、クランク機構、ピニオン・ラック機構などのような公知の往復スライド駆動手段が含まれる。
【0010】
また、本発明には、前記一対のダイスにおける成形面において、前記成形開始部分から成形途中部分にかけての前記凸条、円弧面、および曲面の表面には、梨地状の微細な凹凸が形成されている、転造ダイス(請求項2)も含まれる。
これによれば、軸素材における円柱形部分を、成形当初は高い摩擦によって荒く形状を粗成形すると共に、後半の成形ではボール形状に成形しつつ表面仕上加工を行うことで、緻密に仕上げ成形することができる。尚、上記微細な凹凸は、例えばショットブラストにより形成される。
【0011】
一方、本発明によるボール状部付き軸部品の製造方法(請求項3)は、前記転造ダイスを用いるボール状部付き軸部品の製造方法であって、軸素材におけるほぼ円柱形部分を前記一対のダイスにおける成形面間に挟持しつつ回転し、係る成形面の前記成形終了部分における互いに対称な断面ほぼ半円形の円弧溝内に上記円柱形部分が位置すると共に、軸方向で相対向して係る円柱形部分における表面の余肉を軸方向および径方向に沿って移動させることにより、一対のほぼ半球面からなるボール状部分を上記軸素材の少なくとも一端に成形する、ことを特徴とする。
これによれば、対向する一対の前記凸条により、軸素材のほぼ円柱形部分に対し、その中間に断面ほぼV字形の溝を成形し、且つ上記円柱形部分の先端寄りにほぼ半球状のアール面を成形した後、対向する一対ずつの前記円弧面、曲面、および、円弧溝により、先端側と上記溝付近から表面の余肉を軸方向および径方向に沿って移動させることができる。この結果、軸素材の少なくとも一端にほぼ球形のボール状部を約1秒〜数秒以内の短時間で精度良く転造することができる。尚、上記余肉の一部は、軸素材の径方向に沿っても移動する。
【0012】
付言すれば、本発明には、前記軸素材におけるほぼ円柱形部分の端面のコーナーを予めアール状またはテーパ形に面取り加工している、ボール状部付き軸部品の製造方法、を含み得る。これによる場合、軸素材の円柱形部分における先端寄りのコーナーにアール面またはテーパ面を一層容易に成形することが可能となる。尚、上記面取り加工は、必須ではなく、これを省略しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において本発明の実施に最良の形態を図面と共に説明する。
図1,図2は、本発明の転造ダイス1を構成する一対のダイス1a,1bを異なる方向から観た斜視図、図3は、これらの成形面2a,2bの斜視図である。尚、図1,図2のダイス1a,1bでは、理解を容易にするためスタート側の平坦面3をそれぞれ省略してある。
上記ダイス1a,1bは、例えばSKD11などの工具鋼からなるほぼ直方体を呈するものであり、研磨加工または精密加工により、互いに線対称の断面形状を有する長尺な成形面2a,2bを相対向して設けている。
また、ダイス1aは、図示しない転造装置におけるフレームに水平に固定された固定側である。更に、ダイス1bは、図1,図2中の実線の矢印で示すように、上記フレームにスライド可能に支持される移動側であると共に、図示しない駆動源およびテコ・クランク機構(移動手段)によって、成形面2a,2bの長手方向に沿って移動する移動側とされている。
但し、図2中の一点鎖線の矢印で示すように、ダイス1aもダイス1bと逆方向に移動する移動側として構成しても良い。即ち、ダイス1a,1bは、相対的に移動可能であれば良い。
【0014】
ダイス1a,1bの成形面2a,2bを、更に図3と図4を加えて説明する。
尚、図4中の(A)〜(E)は、同図中のA−A線乃至E−E線の矢視に沿った部分断面図、同図中の(a)〜(e)は、(A)〜(E)の部位における軸部品の断面を示す。
図1〜図4に示すように、ダイス1bの成形面2bは、ダイス1a寄りの端部に後述する軸素材14を受け入れるための平坦面3、これに隣接する成形開始部分S1、成形途中部分S2、および、成形終了部分S3を含む。
成形開始部分S1は、図3および図4中の(A),(B)で示すように、断面ほぼ山形(逆V字形)の凸条5、これに隣接する浅い円弧断面の円弧面8、および、これに隣接し且つ成形面2bの全長に沿って延びる垂直面12と傾斜面13からなる。上記凸条5は、成形途中部分S2に向かって徐々に高く且つ幅広となるため、当該凸条5の両側には、平坦面3に連なる細長い三角形の平坦面4,4が位置している。また、凸条5の稜線は、図3に示すように、平坦面3側から成形途中部分S2に向って、成形面2bの幅方向(長手方向と直角の方向)における中央寄りに徐々に偏寄するように設定されている。
【0015】
図3に示すように、円弧面8は、平坦面3寄りほど平坦面4に隣接する幅が狭くなる曲面であり、平坦面4は、成形途中部分S2に近付くにつれて狭くなる。
また、成形途中部分S2は、図1〜図3および図4中の(C)で示すように、上記凸条5の稜線の途中から斜め上側に延びる稜線6を挟んで傾斜が異なる凸条7の中央部、係る凸状7に隣接し且つ後述する円弧溝11の一部分が延びた小溝10、係る小溝10に隣接し且つ前記円弧面8に連続する幅狭の曲面9、垂直面12、および、傾斜面13からなる。
更に、成形終了部分S3は、図1〜図3および図4中の(D),(E)で示すように、上記凸条7、前記円弧面8から連続する断面ほぼ半円形の円弧溝11、垂直面12、および、傾斜面13からなる。
【0016】
尚、円弧面8、曲面9、および円弧溝11は、成形面2b(2a)の長手方向に沿って、それぞれ同じ曲線の断面が連続している。また、成形開始部分S1の全面、およびこれに隣接する成形途中部分S2の一部には、例えばショットブラストによる梨地状の微細な凹凸Gが形成されている。
更に、固定側である前記ダイス1aの成形面2aも、以上のような平坦面3、成形開始部分S1、成形途中部分S2、および成形終了部分S3を線対称の位置にそれぞれ設けられ、更に成形終了部分S3に隣接して、係る部分S3の端面の断面を所要長さで連続させた図示しない逃し部を付設している。
【0017】
ここで、転造ダイス1を用いた本発明におけるボール状部付き軸部品の製造方法について、図4〜図9により説明する。尚、図5〜図9は、相対移動するダイス1a,1bの平面図、それらの右側は各部位における軸部品の断面図である。
先ず、図4(a)と図5の右側に示す断面を有する軸素材14を予め用意する。この軸素材14は、例えばS42Cからなり細径部15、大径のフランジ16、および円柱形部分17を同軸心で一体に有すると共に、円柱形部分17の先端面のコーナーをアール状に予め面取り18している。この面取り18は、別途図示しない一対の平ダイスによる転造または冷間鍛造にて予め形成したものである。尚、上記面取り18の成形工程を省略しても良い。
【0018】
図5の左側に示すように、長手方向に沿って平行に配置されたダイス1a,1bの成形面2a,2bの接近する平坦面3,3間に、上記軸素材14をその軸心が垂直になるよう配置する。
次に、前述した移動手段により、図6の左側に示すように、ダイス1bをダイス1aに接近させ、軸素材14を成形面2a,2bにおいて互いに線対称の成形開始部分S1,S1間に挟み込みつつ、押圧し且つ回転させる。
その結果、図4(b)と図6の右側に示すように、軸素材14の円柱形部分17の中間に凸条5,5が対称に食い込み、断面ほぼV字形の凹み20とこれに伴うリング状の余肉22とが隣接して形成される。尚、軸素材14と成形面2a,2bとには、例えば切削油または水溶性切削油が適宜供給される。
【0019】
引き続いて、図7の左側に示すように、軸素材14を成形開始部分S1,S1間に挟みつつ回転させると、図4(c)と7図の右側に示すように、上記凹み20は幅広の凹み21になり、且つ余肉22も幅広(厚肉)化した余肉23となる。
係る状態で、軸素材14は、成形面2a,2bの成形途中部分S2,S2間を回転しつつ径方向に沿って送られる。
その結果、図4(c)および図7の右側に示すように、上記大径化しつつある余肉23は、小溝10と曲面9とに当接すると共に、先端の面取り18付近は、曲面9,9に押圧され、これと相似形のアール面19となる。この間において、成形開始部分S1から成形途中部分S2に及ぶ前記図1,2で示した梨地状の微細な凹凸Gによって、軸素材14は、十分な摩擦を受けて確実に所要の形状に粗成形される。
【0020】
引き続いて図8の左側に示すように、軸素材14を成形途中部分S2,S2間から成形終了部分S3,S3間に回転しつつ送る。
その結果、図4(D)に示すように、凸条7,7および円弧溝11,11によって、図4(d)および図8の右側に示すように、ほぼ半球状のアール面24,26に挟まれたボール状部25が形成される。
この際、前記余肉23は、円弧溝11に押されて、上記アール面24の表層に移行(軸方向に移動)する同時に、係る余肉23の一部は、軸素材の径方向にも移動している。そして、図8の左側に示すように、ボール状部25を有する軸素材14を、ダイス1a,1bの成形終了部分S3,S3間に回転させつつ送る。
【0021】
その結果、図4(E)に示す円弧溝11,11により、図4(e)と図9の右側に示すように、一端にテーパ部27を介してほぼ球形のボール状部28を有する軸部品29を転造成形することができる。上記ボール状部28は、その周面が軸方向に沿って連続した曲面からなり、先端側の中央付近に平坦または窪んだ端面を有するが、ボールジョイントのボールとして、十分活用することが可能である。
因みに、前記材質からなり、直径9mmで長さ11mmの円柱形部分17を一端に有する軸素材14を、一端に直径10mmのボール状部28を有する軸部品29に転造成形するに際し、転造ダイス1の前記ダイス1a,1bを用いることで、1個当たり約2〜3秒程度で連続成形することができた。
【0022】
従って、転造ダイス1の転造ダイス1a,1bを用いることにより、従来の切削加工による場合に比べて、ボール状部28付きの軸部品29を短時間で精度良く転造成形することができ、且つ低コストで連続加工を行うことが確認できた。
一方、転造ダイス1のダイス1a,1bを用いて、軸素材14を軸部品29に連続して転造成形した場合の耐用時間は、ボール状部25におけるアール面26の先端側に突出する頭部を成形した後に、係る頭部を剪断刃で切断・除去する比較例の転造ダイスに比べて、約2倍以上と長い寿命であった。
【0023】
図10は、異なる転造ダイス30とこれを用いた転造成形終了直前の軸部品35の断面を示す。一対のダイス30は、図10に示すように、その成形面の成形終了部分(S3)に、傾斜面31、アール凹面32、アール凸面33、およびほぼ半球形の半球面34を有する。細径部36とフランジ37を有する当初の軸素材における円柱形部分は、転造ダイス30の成形面に押圧されることより順次変形した後、図9に示すように、断面ほぼ繭形のボール状部39に転造成形される。
【0024】
また、図11は、更に異なる転造ダイス40とこれを用いた転造成形終了直前の軸部品44の断面を示す。一対のダイス40は、図11に示すように、その成形面の成形終了部分(S3)に、傾斜面47とこれに隣接する断面半楕円形の曲面42とを有する。細径部45とフランジ46を有する当初の軸素材における円柱形部分は、転造ダイス40の成形面に押圧されることで順次変形された後、図11に示すように断面ほぼ楕円形で紡錘形のボール状部48に転造成形される。
尚、転造ダイス30,40は、前記転造ダイス1におけるダイス1a,1bをベースにし、これを応用した成形面とすることで形成することができる。
【0025】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記ボール状部は、軸部品の一端に成形する他に、軸部品の両端または軸部品の中間の位置に成形することも可能である。
また、ボール状部は、前記図10,図11に示した形態の他に、楕円形の長軸を径方向沿って有する断面形状のものも含まれる。
更に、転造成形される軸部品におけるボール状部の隣接部は、軸部品の一部を構成するテーパ状部分に限らず、円柱形の直線部分であっても良い。
また、一対のダイスは、転造装置のフレームなどに水平に配置される前記形態に限らず、斜め方向または垂直方向に沿って配置することも可能である。
尚、本発明の対象となる軸部品は、棒鋼を前記軸素材としたものに限らず、ステンレス鋼やチタン合金などからなる軸素材を転造成形したものも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の転造ダイスに用いる一対のダイスを示す斜視図。
【図2】図1とは異なる角度による上記転造ダイスの斜視図。
【図3】上記転造ダイスの成形面を示す斜視図。
【図4】上記転造ダイスの正面図と、これを用いた軸部品の製造方法における各工程を示す概略図で、(A)〜(E)はA−A線乃至E−E線の矢視に沿った部分断面図、(a)〜(e)は上記部位における軸素材または軸部品を示す断面図。
【図5】当初の転造ダイスを示す平面図と係る部位における軸素材の断面図。
【図6】転造中の転造ダイスを示す平面図と係る部位における軸素材の断面図。
【図7】図6に続く転造ダイスを示す平面図と係る部位での軸素材の断面図。
【図8】図7に続く転造ダイスを示す平面図と係る部位での軸部品の断面図。
【図9】図8に続く転造ダイスを示す平面図と係る部位での軸部品の断面図。
【図10】異なる形態の転造ダイスとこれにより得られる軸部品の断面図。
【図11】更に異なる形態の転造ダイスとこれにより得られる軸部品の断面図。
【図12】従来の切削加工による軸部品の成形方法を示す概略図。
【図13】図11に続く従来の軸部品の成形方法を示す概略図。
【図14】図12に続く従来の軸部品の成形方法を示す概略図。
【符号の説明】
【0027】
1……………………………転造ダイス
1a,1b,30,40…ダイス
2a,2b…………………成形面
5,7………………………凸条
8……………………………円弧面
9……………………………曲面
11…………………………円弧溝
14…………………………軸素材
17,36,45…………円柱形部分
24,26…………………アール面
28,39,48…………ボール状部
29,35,44…………ボール状部付き軸部品
G……………………………微細な凹凸
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばボールジョイントのようなボール状部を有する軸部品を成形する転造ダイスおよびこれを用いたボール状部付き軸部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールジョイントのような一端にボール状部を有する軸部品は、一般に切削加工によって成形加工されている。即ち、図12に示すように、細径部51、断面六角形のフランジ52、および先端の円柱形部分53を有する軸素材50を用意し、図示しない数値制御(NC)旋盤のチャックに上記細径部51を拘束する。
係る状態で、図13に示すように、円柱形部分53におけるフランジ52寄りの周面に図示しないバイトの刃先を径方向から挿入し、且つ係るバイトの径方向における位置を順次変化させつつ、当該バイトを軸素材50の軸方向に沿って移動することにより、傾斜面54およびアール面55を切削により成形する。
【0003】
引き続いて、上記バイトを軸素材50の軸方向および径方向に沿って、円柱形部分53の先端面寄りに移動させることにより、図14に示すように、円柱形部分53の先端側に半球面56を切削により成形する。この結果、図示のように、一端にボール状部57を有するボールジョイント58を得ることができる。
尚、上記NC旋盤による切削加工では、図13の半球面56を先に成形した後、図12に示したアール面55および傾斜面54を成形しても、上記同様のボールジョイント58を得ることもできる。
【0004】
しかし、ボールジョイント58を前述した切削加工により成形する方法では、それなりの形状と寸法のボール状部57を形成できる反面、係るボール状部57の半球面56とアール面55との表面を、表面に超硬合金層が被覆された断面が円弧形のバニッシュ加工面を有する球面バニッシュ転造丸ダイスにより研磨し(例えば、特許文献1参照)、表面粗度を高めるなど、1個当たりのボールジョイント58の成形に長い加工時間とこれに伴う加工コストを要する。更に、排出される多数の切削屑の処理も煩雑になる、という問題があった。しかも、NC旋盤の制御部に多数の数値を含む複雑なプログラムを予めセットする必要もあった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−66246号公報(第1〜9、図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記背景技術における問題点を解決し、ボールジョイントのようなボール状部を有する軸部品を短時間に低コストで精度良く成形できる転造ダイスとこれを用いたボール状部付き軸部品の製造方法を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、発明者らの鋭意研究および調査の結果、一対のダイスを用いて軸素材をニアネットシェイプにして転造する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明による転造ダイス(請求項1)は、相対向し且つ互いに対称な断面形状の長尺な成形面を有する一対のダイスからなり、係る一対のダイスにおける成形面は、成形開始部分では、軸素材の円柱形部分の中間に食い込む凸条およびこれに隣接する円弧面を長手方向に沿って対称に有し、且つ成形途中部分では、上記凸条およびこれに隣接して上記円柱形部分をアール状に押圧する曲面を対称に有すると共に、成形終了部分では、上記凸条および素材の円柱形部分の先端寄りと中間部分とをそれぞれアール状に対向して押圧する断面ほぼ半円形の円弧溝を対称に有する、ことを特徴とする。
【0008】
これによれば、軸素材における円柱形部分を一対のダイス間に挟持して径方向に回転することにより、対向する一対の上記凸条が軸素材に徐々に食い込むと共に、これに隣接する円弧面と曲面と円弧溝とにより軸素材の表面付近に生じた余肉が軸方向と径方向とに沿って移動する。このため、ほぼ球形のボール状部を約1秒〜数秒程度の短い時間で精度良く転造成形することができ、且つ低コストで連続加工を行うことができる。
【0009】
尚、本明細書において、「ボール状部」とは、単一の球形はもちろん、軸方向に連設された複数の球形、あるいは断面楕円形の紡錘形となども含まれる。また、「軸部品」には、ボールジョイントの他、手工具などの握りハンドル、あるいは太径部分を一端または中間に有する棒なども含まれる。更に、前記一対の転造ダイスは、一方を固定側とし他方を移動側とする形態の他、双方を逆方向に移動するダイスからなる形態としても良く、これらを含めて「相対的に移動する」と称する。
また、上記ダイスの凸条は、その成形面における前記成形開始部分から成形途中部分において当該ダイスの幅方向の中央寄りに徐々に偏寄する形態とすることが望ましい。更に、前記成形途中部分から成形終了部分にかけては、上記凸条に連続する異なる凸条を配置しても良い。加えて、前記成形途中部分の曲面は、成形終了部分における円弧溝の一端部が当該成形途中部分に連続したものである。
尚、前記一対の転造ダイスを移動させる手段には、クランク機構、ピニオン・ラック機構などのような公知の往復スライド駆動手段が含まれる。
【0010】
また、本発明には、前記一対のダイスにおける成形面において、前記成形開始部分から成形途中部分にかけての前記凸条、円弧面、および曲面の表面には、梨地状の微細な凹凸が形成されている、転造ダイス(請求項2)も含まれる。
これによれば、軸素材における円柱形部分を、成形当初は高い摩擦によって荒く形状を粗成形すると共に、後半の成形ではボール形状に成形しつつ表面仕上加工を行うことで、緻密に仕上げ成形することができる。尚、上記微細な凹凸は、例えばショットブラストにより形成される。
【0011】
一方、本発明によるボール状部付き軸部品の製造方法(請求項3)は、前記転造ダイスを用いるボール状部付き軸部品の製造方法であって、軸素材におけるほぼ円柱形部分を前記一対のダイスにおける成形面間に挟持しつつ回転し、係る成形面の前記成形終了部分における互いに対称な断面ほぼ半円形の円弧溝内に上記円柱形部分が位置すると共に、軸方向で相対向して係る円柱形部分における表面の余肉を軸方向および径方向に沿って移動させることにより、一対のほぼ半球面からなるボール状部分を上記軸素材の少なくとも一端に成形する、ことを特徴とする。
これによれば、対向する一対の前記凸条により、軸素材のほぼ円柱形部分に対し、その中間に断面ほぼV字形の溝を成形し、且つ上記円柱形部分の先端寄りにほぼ半球状のアール面を成形した後、対向する一対ずつの前記円弧面、曲面、および、円弧溝により、先端側と上記溝付近から表面の余肉を軸方向および径方向に沿って移動させることができる。この結果、軸素材の少なくとも一端にほぼ球形のボール状部を約1秒〜数秒以内の短時間で精度良く転造することができる。尚、上記余肉の一部は、軸素材の径方向に沿っても移動する。
【0012】
付言すれば、本発明には、前記軸素材におけるほぼ円柱形部分の端面のコーナーを予めアール状またはテーパ形に面取り加工している、ボール状部付き軸部品の製造方法、を含み得る。これによる場合、軸素材の円柱形部分における先端寄りのコーナーにアール面またはテーパ面を一層容易に成形することが可能となる。尚、上記面取り加工は、必須ではなく、これを省略しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において本発明の実施に最良の形態を図面と共に説明する。
図1,図2は、本発明の転造ダイス1を構成する一対のダイス1a,1bを異なる方向から観た斜視図、図3は、これらの成形面2a,2bの斜視図である。尚、図1,図2のダイス1a,1bでは、理解を容易にするためスタート側の平坦面3をそれぞれ省略してある。
上記ダイス1a,1bは、例えばSKD11などの工具鋼からなるほぼ直方体を呈するものであり、研磨加工または精密加工により、互いに線対称の断面形状を有する長尺な成形面2a,2bを相対向して設けている。
また、ダイス1aは、図示しない転造装置におけるフレームに水平に固定された固定側である。更に、ダイス1bは、図1,図2中の実線の矢印で示すように、上記フレームにスライド可能に支持される移動側であると共に、図示しない駆動源およびテコ・クランク機構(移動手段)によって、成形面2a,2bの長手方向に沿って移動する移動側とされている。
但し、図2中の一点鎖線の矢印で示すように、ダイス1aもダイス1bと逆方向に移動する移動側として構成しても良い。即ち、ダイス1a,1bは、相対的に移動可能であれば良い。
【0014】
ダイス1a,1bの成形面2a,2bを、更に図3と図4を加えて説明する。
尚、図4中の(A)〜(E)は、同図中のA−A線乃至E−E線の矢視に沿った部分断面図、同図中の(a)〜(e)は、(A)〜(E)の部位における軸部品の断面を示す。
図1〜図4に示すように、ダイス1bの成形面2bは、ダイス1a寄りの端部に後述する軸素材14を受け入れるための平坦面3、これに隣接する成形開始部分S1、成形途中部分S2、および、成形終了部分S3を含む。
成形開始部分S1は、図3および図4中の(A),(B)で示すように、断面ほぼ山形(逆V字形)の凸条5、これに隣接する浅い円弧断面の円弧面8、および、これに隣接し且つ成形面2bの全長に沿って延びる垂直面12と傾斜面13からなる。上記凸条5は、成形途中部分S2に向かって徐々に高く且つ幅広となるため、当該凸条5の両側には、平坦面3に連なる細長い三角形の平坦面4,4が位置している。また、凸条5の稜線は、図3に示すように、平坦面3側から成形途中部分S2に向って、成形面2bの幅方向(長手方向と直角の方向)における中央寄りに徐々に偏寄するように設定されている。
【0015】
図3に示すように、円弧面8は、平坦面3寄りほど平坦面4に隣接する幅が狭くなる曲面であり、平坦面4は、成形途中部分S2に近付くにつれて狭くなる。
また、成形途中部分S2は、図1〜図3および図4中の(C)で示すように、上記凸条5の稜線の途中から斜め上側に延びる稜線6を挟んで傾斜が異なる凸条7の中央部、係る凸状7に隣接し且つ後述する円弧溝11の一部分が延びた小溝10、係る小溝10に隣接し且つ前記円弧面8に連続する幅狭の曲面9、垂直面12、および、傾斜面13からなる。
更に、成形終了部分S3は、図1〜図3および図4中の(D),(E)で示すように、上記凸条7、前記円弧面8から連続する断面ほぼ半円形の円弧溝11、垂直面12、および、傾斜面13からなる。
【0016】
尚、円弧面8、曲面9、および円弧溝11は、成形面2b(2a)の長手方向に沿って、それぞれ同じ曲線の断面が連続している。また、成形開始部分S1の全面、およびこれに隣接する成形途中部分S2の一部には、例えばショットブラストによる梨地状の微細な凹凸Gが形成されている。
更に、固定側である前記ダイス1aの成形面2aも、以上のような平坦面3、成形開始部分S1、成形途中部分S2、および成形終了部分S3を線対称の位置にそれぞれ設けられ、更に成形終了部分S3に隣接して、係る部分S3の端面の断面を所要長さで連続させた図示しない逃し部を付設している。
【0017】
ここで、転造ダイス1を用いた本発明におけるボール状部付き軸部品の製造方法について、図4〜図9により説明する。尚、図5〜図9は、相対移動するダイス1a,1bの平面図、それらの右側は各部位における軸部品の断面図である。
先ず、図4(a)と図5の右側に示す断面を有する軸素材14を予め用意する。この軸素材14は、例えばS42Cからなり細径部15、大径のフランジ16、および円柱形部分17を同軸心で一体に有すると共に、円柱形部分17の先端面のコーナーをアール状に予め面取り18している。この面取り18は、別途図示しない一対の平ダイスによる転造または冷間鍛造にて予め形成したものである。尚、上記面取り18の成形工程を省略しても良い。
【0018】
図5の左側に示すように、長手方向に沿って平行に配置されたダイス1a,1bの成形面2a,2bの接近する平坦面3,3間に、上記軸素材14をその軸心が垂直になるよう配置する。
次に、前述した移動手段により、図6の左側に示すように、ダイス1bをダイス1aに接近させ、軸素材14を成形面2a,2bにおいて互いに線対称の成形開始部分S1,S1間に挟み込みつつ、押圧し且つ回転させる。
その結果、図4(b)と図6の右側に示すように、軸素材14の円柱形部分17の中間に凸条5,5が対称に食い込み、断面ほぼV字形の凹み20とこれに伴うリング状の余肉22とが隣接して形成される。尚、軸素材14と成形面2a,2bとには、例えば切削油または水溶性切削油が適宜供給される。
【0019】
引き続いて、図7の左側に示すように、軸素材14を成形開始部分S1,S1間に挟みつつ回転させると、図4(c)と7図の右側に示すように、上記凹み20は幅広の凹み21になり、且つ余肉22も幅広(厚肉)化した余肉23となる。
係る状態で、軸素材14は、成形面2a,2bの成形途中部分S2,S2間を回転しつつ径方向に沿って送られる。
その結果、図4(c)および図7の右側に示すように、上記大径化しつつある余肉23は、小溝10と曲面9とに当接すると共に、先端の面取り18付近は、曲面9,9に押圧され、これと相似形のアール面19となる。この間において、成形開始部分S1から成形途中部分S2に及ぶ前記図1,2で示した梨地状の微細な凹凸Gによって、軸素材14は、十分な摩擦を受けて確実に所要の形状に粗成形される。
【0020】
引き続いて図8の左側に示すように、軸素材14を成形途中部分S2,S2間から成形終了部分S3,S3間に回転しつつ送る。
その結果、図4(D)に示すように、凸条7,7および円弧溝11,11によって、図4(d)および図8の右側に示すように、ほぼ半球状のアール面24,26に挟まれたボール状部25が形成される。
この際、前記余肉23は、円弧溝11に押されて、上記アール面24の表層に移行(軸方向に移動)する同時に、係る余肉23の一部は、軸素材の径方向にも移動している。そして、図8の左側に示すように、ボール状部25を有する軸素材14を、ダイス1a,1bの成形終了部分S3,S3間に回転させつつ送る。
【0021】
その結果、図4(E)に示す円弧溝11,11により、図4(e)と図9の右側に示すように、一端にテーパ部27を介してほぼ球形のボール状部28を有する軸部品29を転造成形することができる。上記ボール状部28は、その周面が軸方向に沿って連続した曲面からなり、先端側の中央付近に平坦または窪んだ端面を有するが、ボールジョイントのボールとして、十分活用することが可能である。
因みに、前記材質からなり、直径9mmで長さ11mmの円柱形部分17を一端に有する軸素材14を、一端に直径10mmのボール状部28を有する軸部品29に転造成形するに際し、転造ダイス1の前記ダイス1a,1bを用いることで、1個当たり約2〜3秒程度で連続成形することができた。
【0022】
従って、転造ダイス1の転造ダイス1a,1bを用いることにより、従来の切削加工による場合に比べて、ボール状部28付きの軸部品29を短時間で精度良く転造成形することができ、且つ低コストで連続加工を行うことが確認できた。
一方、転造ダイス1のダイス1a,1bを用いて、軸素材14を軸部品29に連続して転造成形した場合の耐用時間は、ボール状部25におけるアール面26の先端側に突出する頭部を成形した後に、係る頭部を剪断刃で切断・除去する比較例の転造ダイスに比べて、約2倍以上と長い寿命であった。
【0023】
図10は、異なる転造ダイス30とこれを用いた転造成形終了直前の軸部品35の断面を示す。一対のダイス30は、図10に示すように、その成形面の成形終了部分(S3)に、傾斜面31、アール凹面32、アール凸面33、およびほぼ半球形の半球面34を有する。細径部36とフランジ37を有する当初の軸素材における円柱形部分は、転造ダイス30の成形面に押圧されることより順次変形した後、図9に示すように、断面ほぼ繭形のボール状部39に転造成形される。
【0024】
また、図11は、更に異なる転造ダイス40とこれを用いた転造成形終了直前の軸部品44の断面を示す。一対のダイス40は、図11に示すように、その成形面の成形終了部分(S3)に、傾斜面47とこれに隣接する断面半楕円形の曲面42とを有する。細径部45とフランジ46を有する当初の軸素材における円柱形部分は、転造ダイス40の成形面に押圧されることで順次変形された後、図11に示すように断面ほぼ楕円形で紡錘形のボール状部48に転造成形される。
尚、転造ダイス30,40は、前記転造ダイス1におけるダイス1a,1bをベースにし、これを応用した成形面とすることで形成することができる。
【0025】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記ボール状部は、軸部品の一端に成形する他に、軸部品の両端または軸部品の中間の位置に成形することも可能である。
また、ボール状部は、前記図10,図11に示した形態の他に、楕円形の長軸を径方向沿って有する断面形状のものも含まれる。
更に、転造成形される軸部品におけるボール状部の隣接部は、軸部品の一部を構成するテーパ状部分に限らず、円柱形の直線部分であっても良い。
また、一対のダイスは、転造装置のフレームなどに水平に配置される前記形態に限らず、斜め方向または垂直方向に沿って配置することも可能である。
尚、本発明の対象となる軸部品は、棒鋼を前記軸素材としたものに限らず、ステンレス鋼やチタン合金などからなる軸素材を転造成形したものも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の転造ダイスに用いる一対のダイスを示す斜視図。
【図2】図1とは異なる角度による上記転造ダイスの斜視図。
【図3】上記転造ダイスの成形面を示す斜視図。
【図4】上記転造ダイスの正面図と、これを用いた軸部品の製造方法における各工程を示す概略図で、(A)〜(E)はA−A線乃至E−E線の矢視に沿った部分断面図、(a)〜(e)は上記部位における軸素材または軸部品を示す断面図。
【図5】当初の転造ダイスを示す平面図と係る部位における軸素材の断面図。
【図6】転造中の転造ダイスを示す平面図と係る部位における軸素材の断面図。
【図7】図6に続く転造ダイスを示す平面図と係る部位での軸素材の断面図。
【図8】図7に続く転造ダイスを示す平面図と係る部位での軸部品の断面図。
【図9】図8に続く転造ダイスを示す平面図と係る部位での軸部品の断面図。
【図10】異なる形態の転造ダイスとこれにより得られる軸部品の断面図。
【図11】更に異なる形態の転造ダイスとこれにより得られる軸部品の断面図。
【図12】従来の切削加工による軸部品の成形方法を示す概略図。
【図13】図11に続く従来の軸部品の成形方法を示す概略図。
【図14】図12に続く従来の軸部品の成形方法を示す概略図。
【符号の説明】
【0027】
1……………………………転造ダイス
1a,1b,30,40…ダイス
2a,2b…………………成形面
5,7………………………凸条
8……………………………円弧面
9……………………………曲面
11…………………………円弧溝
14…………………………軸素材
17,36,45…………円柱形部分
24,26…………………アール面
28,39,48…………ボール状部
29,35,44…………ボール状部付き軸部品
G……………………………微細な凹凸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向し且つ互いに対称な断面形状の長尺な成形面(2a,2b)を有する一対のダイス(1a,1b)からなり、
上記一対のダイス(1a,1b)における成形面(2a,2b)は、成形開始部分(S1)では、軸素材(14)の円柱形部分(17)の中間に食い込む凸条(5)およびこれに隣接する円弧面(8)を長手方向に沿って対称に有し、
且つ成形途中部分(S2)では、凸条(5,7)およびこれに隣接して上記円柱形部分(17)をアール状に押圧する曲面(9)を対称に有すると共に、
成形終了部分(S3)では、凸条(7)および素材(14)の円柱形部分(17)の先端寄りと中間部分とをそれぞれアール状に対向して押圧する断面ほぼ半円形の円弧溝(11)を対称に有する、
ことを特徴とする転造ダイス(1)。
【請求項2】
前記一対のダイス(1a,1b)における成形面(2a,2b)において、前記成形開始部分(S1)から成形途中部分(S2)にかけての前記凸条(5,7)、円弧面(8)、および曲面(9)の表面には、梨地状の微細な凹凸(G)が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の転造ダイス(1)。
【請求項3】
請求項1または請求項2の転造ダイス(1)を用いるボール状部付き軸部品(29)の製造方法であって、
軸素材(14)におけるほぼ円柱形部分(17)を前記一対のダイス(1a,1b)における成形面(2a,2b)間に挟持しつつ回転し、係る成形面(2a,2b)の前記成形終了部分(S3)における互いに対称な断面ほぼ半円形の円弧溝(11)内に上記円柱形部分(17)が位置すると共に、軸方向で相対向して係る円柱形部分(17)における表面の余肉(22,23)を軸方向および軸方向に沿って移動させることにより、一対のほぼ半球状のアール面(24,26)からなるボール状部分(28)を上記軸素材(14)の少なくとも一端に成形する、
ことを特徴とするボール状部付き軸部品(29)の製造方法。
【請求項1】
相対向し且つ互いに対称な断面形状の長尺な成形面(2a,2b)を有する一対のダイス(1a,1b)からなり、
上記一対のダイス(1a,1b)における成形面(2a,2b)は、成形開始部分(S1)では、軸素材(14)の円柱形部分(17)の中間に食い込む凸条(5)およびこれに隣接する円弧面(8)を長手方向に沿って対称に有し、
且つ成形途中部分(S2)では、凸条(5,7)およびこれに隣接して上記円柱形部分(17)をアール状に押圧する曲面(9)を対称に有すると共に、
成形終了部分(S3)では、凸条(7)および素材(14)の円柱形部分(17)の先端寄りと中間部分とをそれぞれアール状に対向して押圧する断面ほぼ半円形の円弧溝(11)を対称に有する、
ことを特徴とする転造ダイス(1)。
【請求項2】
前記一対のダイス(1a,1b)における成形面(2a,2b)において、前記成形開始部分(S1)から成形途中部分(S2)にかけての前記凸条(5,7)、円弧面(8)、および曲面(9)の表面には、梨地状の微細な凹凸(G)が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の転造ダイス(1)。
【請求項3】
請求項1または請求項2の転造ダイス(1)を用いるボール状部付き軸部品(29)の製造方法であって、
軸素材(14)におけるほぼ円柱形部分(17)を前記一対のダイス(1a,1b)における成形面(2a,2b)間に挟持しつつ回転し、係る成形面(2a,2b)の前記成形終了部分(S3)における互いに対称な断面ほぼ半円形の円弧溝(11)内に上記円柱形部分(17)が位置すると共に、軸方向で相対向して係る円柱形部分(17)における表面の余肉(22,23)を軸方向および軸方向に沿って移動させることにより、一対のほぼ半球状のアール面(24,26)からなるボール状部分(28)を上記軸素材(14)の少なくとも一端に成形する、
ことを特徴とするボール状部付き軸部品(29)の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−29978(P2007−29978A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215275(P2005−215275)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(592178897)株式会社三明製作所 (3)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(592178897)株式会社三明製作所 (3)
[ Back to top ]