転造加工用ワーク支持機構
【課題】小径パイプや薄肉パイプからなるパイプ状ワークを、脱落させたり折損させること無く低コストで生産可能な２ダイス転造加工用のワーク支持機構を提供する。
【解決手段】パイプ状ワークＷを支持し、対向する一対の丸ダイス８，９によって転造加工する２ダイス転造用の転造加工用ワーク支持機構において、前記パイプ状ワークＷを先端側に差し込んで支持する芯金１と、この芯金１の後端側を固定するホルダー２と、このホルダー２を回転自在に支持する回転支持手段３とが備えられてなる。
【解決手段】パイプ状ワークＷを支持し、対向する一対の丸ダイス８，９によって転造加工する２ダイス転造用の転造加工用ワーク支持機構において、前記パイプ状ワークＷを先端側に差し込んで支持する芯金１と、この芯金１の後端側を固定するホルダー２と、このホルダー２を回転自在に支持する回転支持手段３とが備えられてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、パイプ状ワークを支持し、対向する一対の丸ダイスによって転造加工する２ダイス転造加工用のワーク支持機構に関する。
【背景技術】
【０００２】
対向する一対の円筒状のダイスまたは円周上に等配置された３本の円筒状のダイス（以下、丸ダイスと称す）を同一回転方向に同一速度で回転させながら、前記ダイス間の軸心間距離を次第に狭めていき、これらダイス間に挟まれたワークの外表面に前記ダイス外表面に形成された形状を賦形する丸ダイス転造は、ワークの外形断面が円形の外表面を容易に塑性加工出来ることから、ギアやパイプ等の簡単な外形加工に広く用いられている。そして、この様にして得られた転造加工品は、切削加工とは異なり繊維状金属組織が切断されず、また塑性変形によって被加工面が加工硬化するため、強度の高い製品を得ることが出来る。
【０００３】
前記丸ダイス転造は、ダイスの数によって夫々３ダイス式、２ダイス式に大別される。前記３ダイス式は、ワークに負荷される圧力が分散されることから薄肉中空材の加工に適しているが、ダイスの軸心間距離を狭め過ぎると丸ダイスが相互に干渉するため、加工出来るワークの最小外径寸法に限界がある。一方、２ダイス式は、加工可能なワークの最小外径寸法にはこの様な制約はないが、ワークに負荷される圧力を対向する一対のダイスのみに分散させているため、分散される圧力のバランスが崩れると、ワークがワーク支持部から脱落したり、ワークが変形して転造加工が出来なくなる。
【０００４】
この様な従来例に係る２ダイス転造加工用のワーク支持機構について、以下添付図４，５を参照しながら説明する。図４は従来例に係る２ダイス式転造装置の一例を示す正面図、図５は揺動機構を備えた従来例に係るワーク支持機構を示す概念図である。この従来例に係る転造装置２１は、一対の丸ダイス２２ａ，２２ｂを回転させながら油圧機構２３ａ，２３ｂによってワーク２４の中心に向かって対称に押し込み、ワーク２４に転造圧力と回転力を加えて転造加工するものである。
【０００５】
基台２５上には一対のスライドレール２６ａ，２６ｂが設けられ、このスライドレール２６ａ，２６ｂ上には一対のダイス移動台２７ａ，２７ｂが、左右方向にスライド可能に取り付けられている。そして、前記ダイス移動台２７ａ，２７ｂに一対の丸ダイス２２ａ，２２ｂが回転可能に軸支されている。更に、前記基台２５上には一対の圧力プレート２８ａ，２８ｂが固定され、これらの圧力プレート２８ａ，２８ｂに油圧機構２３ａ，２３ｂが固定されている。油圧機構２３ａ，２３ｂのシリンダー軸２９ａ，２９ｂの先端は、一対のダイス移動台２７ａ，２７ｂに夫々固定されている。
【０００６】
また、丸ダイス２２ａ，２２ｂの中間位置にはワーク２４を把持するためのワーク支持機構３０が設けられている。このワーク支持機構３０は、図５に示した様に、基台２５上に離れて一対設けられたセンター台３１，３２と、各センター台３１，３２の上部前面に突設された押込センター３３とチャックセンター３４とを備え、一方のセンター台３１に内蔵されたクランプシリンダー装置（図示せず）の駆動によって押込センター３３が押し出され、チャックセンター３４との間でワーク２４を把持する。また、前記センター台３１，３２の下部には揺動機構３５，３６が設けられ、基台２５に対して揺動可能となっている。
【０００７】
この様な転造装置２１において、丸ダイス２２ａ，２２ｂを回転させながら油圧機構２３ａ，２３ｂを駆動し、一対のダイス移動台２７ａ，２７ｂを近接させ、丸ダイス２２ａ，２２ｂでワーク２４を両側から挟み込むことによって、ウォームやセレーション等を転造加工することが出来る（特許文献１参照）。
【特許文献１】特開２００２−５９２３６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
ところで、車両用のブレーキホースやエアコンホース用の接続金具には、直径５ｍｍ以下の小径のニップルが多用されており、この様なニップルには前記ホースの抜け止めとして複数本の円周溝が形成されている。従来、このニップルは小径パイプの外周を切削加工して製作していたが、多量な数量を低コストに生産する必要性から、転造加工の適用が期待されていた。
【０００９】
しかしながら、上記従来例に係るワーク支持機構は、中実な棒材や肉厚のパイプ等剛性を有するワークを高精度に転造加工可能であるが、上記の様な小径パイプや薄肉パイプをワークとする転造加工においては、前記丸ダイス２２ａ，２２ｂのワーク４への押込圧にアンバランスが生じると、前記パイプが変形してワーク支持機構３０から脱落したり折損するという問題があった。また、この様な従来例に係るワーク支持機構３０は、クランプシリンダー装置により駆動される押込センター３３とチャックセンター３４等を要し、安価なパイプ製品を量産する用途にはコスト高な設備となっていた。
【００１０】
本発明者らは、以上の様な状況に鑑み、上記ニップルの様な小径パイプや薄肉パイプからなるパイプ状ワークを、低コストで支障なく生産可能な２ダイス転造加工用のワーク支持機構につき鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。即ち、本発明の目的は、小径パイプや薄肉パイプからなるパイプ状ワークを、脱落させたり折損させること無く低コストで生産可能な２ダイス転造加工用のワーク支持機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
上記目的を達成するために、本発明の請求項１に係る転造加工用ワーク支持機構が採用した手段は、パイプ状ワークを支持し、対向する一対の丸ダイスによって転造加工する２ダイス転造用の転造加工用ワーク支持機構において、前記パイプ状ワークを先端側に差し込んで支持する芯金と、この芯金の後端側を固定するホルダーと、このホルダーを回転自在に支持する回転支持手段とが備えられてなることを特徴とするものである。
【００１２】
本発明の請求項２に係る転造加工用ワーク支持機構が採用した手段は、請求項１に記載の転造加工用ワーク支持機構において、前記芯金が、前記ホルダーの後方に引き抜き可能な引抜手段を備えられたことを特徴とするものである。
【００１３】
本発明の請求項３に係る転造加工用ワーク支持機構が採用した手段は、請求項１または２に記載の転造加工用ワーク支持機構において、前記パイプ状ワークと前記ホルダーの一部の下面が、前記芯金の軸方向に沿って設けられた支持刃によって支持されてなることを特徴とするものである。
【００１４】
本発明の請求項４に係る転造加工用ワーク支持機構が採用した手段は、請求項１乃至３の何れか一つの項に記載の転造加工用ワーク支持機構において、前記支持刃の刃面が、加工前の前記パイプ状ワークとホルダーの一部の外形形状に倣う形状に形成されたことを特徴とするものである。
【００１５】
本発明の請求項５に係る転造加工用ワーク支持機構が採用した手段は、請求項１乃至４の何れか一つの項に記載の転造加工用ワーク支持機構において、前記支持刃の刃面が、超硬合金をろう付して形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１６】
本発明の請求項１に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、パイプ状ワークを支持し、対向する一対の丸ダイスによって転造加工する２ダイス転造用の転造加工用ワーク支持機構において、前記パイプ状ワークを先端側に差し込んで支持する芯金と、この芯金の後端側を固定するホルダーと、このホルダーを回転自在に支持する回転支持手段とが備えられてなるので、簡便な構造を有するワーク支持機構によって、小径パイプや薄肉パイプからなるパイプ状ワークを、脱落させたり折損させること無く低コストで生産可能となる。
【００１７】
また、本発明の請求項２に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、前記芯金が、前記ホルダーの後方に引き抜き可能な引抜手段を備えられたので、パイプ状ワークが転造加工時の縮径により前記芯金に固着したとしても除去することが可能となる。
【００１８】
更に、本発明の請求項３に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、前記パイプ状ワークと前記ホルダーの一部の下面が、前記芯金の軸方向に沿って設けられた支持刃によって支持されてなるので、内径の小さいパイプを細い芯金で支持する場合でも、前記支持刃により芯金の強度不足を補足出来る。
【００１９】
また更に、本発明の請求項４に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、前記支持刃の刃面が、加工前の前記パイプ状ワークとホルダーの一部の外形形状に倣う形状に形成されたので、前記パイプ状ワークやホルダーに局所的な傷を付けること無く支持可能となる。
【００２０】
本発明の請求項５に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、前記支持刃の刃面が、超硬合金をろう付して形成されたので、前記支持刃が前記パイプ状ワークやホルダーに接触して摩耗するのを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２１】
本発明の実施の形態に係る転造加工用ワーク支持機構について、以下添付図１〜３を参照しながら説明する。図１は本発明の実施の形態に係る転造加工用ワーク支持機構を示す模式的断面図、図２は図１のＡ−Ａ矢視を示し、丸ダイスがパイプ状ワークに接触していない加工開始前の状態を示す平面図、図３は図１のＢ−Ｂ矢視を示し、丸ダイスがパイプ状ワークに接触し加工中の状態を示す側断面図である。
【００２２】
本発明の実施例に係る転造装置は、夫々の外周に４本の突起部８ａ，９ａが設けられた一対の丸ダイス８，９をパイプ状ワークＷに対向して押し込み、このパイプ状ワークＷの外周に４本の円周溝１０を転造加工するための２ダイス転造装置を例としている。そして、本発明の実施の形態に係る転造加工用ワーク支持機構は、この様なパイプ状のワークＷを、２ダイス転造装置により転造加工するためのワーク支持機構である。
【００２３】
この様な転造加工用ワーク支持機構は、パイプ状ワークＷの中空部を先端側を差し込んで支持する芯金１と、貫通孔２ａが設けられこの貫通孔２ａに前記芯金１の後端側を挿入して固定するホルダー２とを備えると共に、このホルダー２を転造装置の台座７回に対して回転自在に支持する回転支持手段としての玉軸受３とが備えられている。
【００２４】
前記芯金１は、鉄やステンレス鋼の丸棒から、パイプ状ワークＷの内径より多少小径の外径と、前記パイプ状ワークＷのほぼ全長を支持可能な長さとを有する寸法に切削加工して形成され、丸ダイス８，９の回転に伴って、前記パイプ状ワークＷが回転自在に支持される構成とされている。また、前記ホルダー２は、鉄やステンレス鋼から切削加工により形成され、軸心に設けられた貫通孔２ａは、前記芯金１と隙間嵌めを構成する程度の公差を有し、芯金１の軸心方向には移動自在であるが、芯金１と直交する方向には動かない様に構成される。
【００２５】
また、前記回転支持手段３は、パイプ状ワークＷが転造加工されるに伴なって丸ダイス８，９の押込圧により縮径して前記芯金１に固着した際、芯金１と共にホルダー２も同伴して回転可能とするものであり、その結果、パイプ状ワークＷの回転が停止して、丸ダイス８，９が回転停止した前記パイプ状ワークＷの局部を擦過し損傷させるのを防止出来る。この様な回転支持手段３としては、市販の玉軸受に限らず、ころ軸受やスラスト軸受、滑り軸受等他の軸受でも良い。
【００２６】
また、前記芯金１の後端側は、市販の蝶ボルト４の軸心に形成された差込孔４ａに差し込まれて止めネジ５により固定されると共に、前記蝶ボルト４は、前記ホルダー２の貫通孔２ａの後方にあってこの貫通孔２ａと同心状に形成された雌ネジ２ｂと螺合されている。そして、前記前記蝶ボルト４を回転させることにより、この蝶ボルト４に固定された芯金１が軸心方向に前進または後退可能な構成となっている。
【００２７】
即ち、前記ホルダー２に形成された雌ネジ２ｂと、芯金１を固定し前記蝶ボルト４とによって引抜手段を構成して、前記芯金１が前記ホルダー２の貫通孔２ａに沿って後方に引抜可能とされている。その結果、パイプ状ワークＷが転造加工されるに伴なって丸ダイス８，９の押込圧により縮径して前記芯金１に固着しても、前記引抜手段によって芯金１をパイプ状ワークＷから引抜可能となる。この様な引抜手段は、上記構成に限らず、油圧や空気圧を利用した流体シリンダを用いても良い。
【００２８】
更に、前記芯金１の軸方向に設けられた支持刃６を図１に示す矢印方向に押し当てて、前記パイプ状ワークＷの下面と前記ホルダー２の一部、例えば少なくとも先端部の下面が支持される構成が好ましい。この様な構成によって、内径の小さいパイプ状ワークＷを細い芯金１で支持して転造加工する場合でも、前記支持刃６により前記芯金１の強度不足を補足出来るからである。この様な支持刃６は、厚さが少なくとも前記パイプ状ワークの外径より小さい数ｍｍの鉄鋼板やステンレス鋼板から形成可能である。
【００２９】
そして、前記支持刃６の刃面６ａが、加工前の前記パイプ状ワークＷの外形形状とホルダー２の一部、例えば少なくとも先端部の外形形状に倣う形状に形成されたものが好ましい。前記支持刃６の刃面６ａをこの様な形状に形成することによって、前記支持刃６の刃面６ａが、前記パイプ状ワークＷの外周とホルダー２の一部の外周をほぼ均一に接触して支持するため、支持力による相互の接触摩擦を分散させ局所的な損傷も防止できる。
【００３０】
また更に、前記支持刃６の刃面６ａが、超硬合金１１をろう付して形成されたものが好ましい。支持刃６の刃面６ａに超硬合金１１を形成することにより、接触摩擦による支持刃６の損耗を防止出来るためである。
【００３１】
以上の通り、本発明に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、パイプ状ワークを先端側に差し込んで支持する芯金と、この芯金の後端側を固定するホルダーと、このホルダーを回転自在に支持する回転支持手段とが備えられてなるので、簡便な構造を有するワーク支持機構によって、小径パイプや薄肉パイプからなるパイプ状ワークを、脱落させたり折損させること無く低コストで生産可能となる。
【００３２】
また、本発明に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、前記芯金が、前記ホルダーの後方に引き抜き可能な引抜手段を備えられたので、パイプ状ワークが転造加工時の縮径により前記芯金に固着したとしても除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００３３】
【図１】本発明の実施の形態に係る転造加工用ワーク支持機構を示す模式的断面図である。
【図２】図１のＡ−Ａ矢視を示し、丸ダイスがパイプ状ワークに接触していない加工開始前の状態を示す平面図である。
【図３】図１のＢ−Ｂ矢視を示し、丸ダイスがパイプ状ワークに接触している加工中の状態を示す側断面図である。
【図４】従来例に係る２ダイス式転造装置の一例を示す正面図である。
【図５】揺動機構を備えた従来例に係るワーク支持機構を示す概念図である。
【符号の説明】
【００３４】
Ｗ：パイプ状ワーク，
１：芯金，
２：ホルダー， ２ａ：貫通孔， ２ｂ：雌ネジ，
３：回転支持手段（玉軸受），
４：蝶ボルト， ４ａ：差込孔，
５：止めネジ，
６：支持刃， ６ａ：刃面，
７：台座，
８：，９：丸ダイス， ８ａ，９ａ：突起部，
１０：円周溝， １１：超硬合金
【技術分野】
【０００１】
本発明は、パイプ状ワークを支持し、対向する一対の丸ダイスによって転造加工する２ダイス転造加工用のワーク支持機構に関する。
【背景技術】
【０００２】
対向する一対の円筒状のダイスまたは円周上に等配置された３本の円筒状のダイス（以下、丸ダイスと称す）を同一回転方向に同一速度で回転させながら、前記ダイス間の軸心間距離を次第に狭めていき、これらダイス間に挟まれたワークの外表面に前記ダイス外表面に形成された形状を賦形する丸ダイス転造は、ワークの外形断面が円形の外表面を容易に塑性加工出来ることから、ギアやパイプ等の簡単な外形加工に広く用いられている。そして、この様にして得られた転造加工品は、切削加工とは異なり繊維状金属組織が切断されず、また塑性変形によって被加工面が加工硬化するため、強度の高い製品を得ることが出来る。
【０００３】
前記丸ダイス転造は、ダイスの数によって夫々３ダイス式、２ダイス式に大別される。前記３ダイス式は、ワークに負荷される圧力が分散されることから薄肉中空材の加工に適しているが、ダイスの軸心間距離を狭め過ぎると丸ダイスが相互に干渉するため、加工出来るワークの最小外径寸法に限界がある。一方、２ダイス式は、加工可能なワークの最小外径寸法にはこの様な制約はないが、ワークに負荷される圧力を対向する一対のダイスのみに分散させているため、分散される圧力のバランスが崩れると、ワークがワーク支持部から脱落したり、ワークが変形して転造加工が出来なくなる。
【０００４】
この様な従来例に係る２ダイス転造加工用のワーク支持機構について、以下添付図４，５を参照しながら説明する。図４は従来例に係る２ダイス式転造装置の一例を示す正面図、図５は揺動機構を備えた従来例に係るワーク支持機構を示す概念図である。この従来例に係る転造装置２１は、一対の丸ダイス２２ａ，２２ｂを回転させながら油圧機構２３ａ，２３ｂによってワーク２４の中心に向かって対称に押し込み、ワーク２４に転造圧力と回転力を加えて転造加工するものである。
【０００５】
基台２５上には一対のスライドレール２６ａ，２６ｂが設けられ、このスライドレール２６ａ，２６ｂ上には一対のダイス移動台２７ａ，２７ｂが、左右方向にスライド可能に取り付けられている。そして、前記ダイス移動台２７ａ，２７ｂに一対の丸ダイス２２ａ，２２ｂが回転可能に軸支されている。更に、前記基台２５上には一対の圧力プレート２８ａ，２８ｂが固定され、これらの圧力プレート２８ａ，２８ｂに油圧機構２３ａ，２３ｂが固定されている。油圧機構２３ａ，２３ｂのシリンダー軸２９ａ，２９ｂの先端は、一対のダイス移動台２７ａ，２７ｂに夫々固定されている。
【０００６】
また、丸ダイス２２ａ，２２ｂの中間位置にはワーク２４を把持するためのワーク支持機構３０が設けられている。このワーク支持機構３０は、図５に示した様に、基台２５上に離れて一対設けられたセンター台３１，３２と、各センター台３１，３２の上部前面に突設された押込センター３３とチャックセンター３４とを備え、一方のセンター台３１に内蔵されたクランプシリンダー装置（図示せず）の駆動によって押込センター３３が押し出され、チャックセンター３４との間でワーク２４を把持する。また、前記センター台３１，３２の下部には揺動機構３５，３６が設けられ、基台２５に対して揺動可能となっている。
【０００７】
この様な転造装置２１において、丸ダイス２２ａ，２２ｂを回転させながら油圧機構２３ａ，２３ｂを駆動し、一対のダイス移動台２７ａ，２７ｂを近接させ、丸ダイス２２ａ，２２ｂでワーク２４を両側から挟み込むことによって、ウォームやセレーション等を転造加工することが出来る（特許文献１参照）。
【特許文献１】特開２００２−５９２３６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
ところで、車両用のブレーキホースやエアコンホース用の接続金具には、直径５ｍｍ以下の小径のニップルが多用されており、この様なニップルには前記ホースの抜け止めとして複数本の円周溝が形成されている。従来、このニップルは小径パイプの外周を切削加工して製作していたが、多量な数量を低コストに生産する必要性から、転造加工の適用が期待されていた。
【０００９】
しかしながら、上記従来例に係るワーク支持機構は、中実な棒材や肉厚のパイプ等剛性を有するワークを高精度に転造加工可能であるが、上記の様な小径パイプや薄肉パイプをワークとする転造加工においては、前記丸ダイス２２ａ，２２ｂのワーク４への押込圧にアンバランスが生じると、前記パイプが変形してワーク支持機構３０から脱落したり折損するという問題があった。また、この様な従来例に係るワーク支持機構３０は、クランプシリンダー装置により駆動される押込センター３３とチャックセンター３４等を要し、安価なパイプ製品を量産する用途にはコスト高な設備となっていた。
【００１０】
本発明者らは、以上の様な状況に鑑み、上記ニップルの様な小径パイプや薄肉パイプからなるパイプ状ワークを、低コストで支障なく生産可能な２ダイス転造加工用のワーク支持機構につき鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。即ち、本発明の目的は、小径パイプや薄肉パイプからなるパイプ状ワークを、脱落させたり折損させること無く低コストで生産可能な２ダイス転造加工用のワーク支持機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
上記目的を達成するために、本発明の請求項１に係る転造加工用ワーク支持機構が採用した手段は、パイプ状ワークを支持し、対向する一対の丸ダイスによって転造加工する２ダイス転造用の転造加工用ワーク支持機構において、前記パイプ状ワークを先端側に差し込んで支持する芯金と、この芯金の後端側を固定するホルダーと、このホルダーを回転自在に支持する回転支持手段とが備えられてなることを特徴とするものである。
【００１２】
本発明の請求項２に係る転造加工用ワーク支持機構が採用した手段は、請求項１に記載の転造加工用ワーク支持機構において、前記芯金が、前記ホルダーの後方に引き抜き可能な引抜手段を備えられたことを特徴とするものである。
【００１３】
本発明の請求項３に係る転造加工用ワーク支持機構が採用した手段は、請求項１または２に記載の転造加工用ワーク支持機構において、前記パイプ状ワークと前記ホルダーの一部の下面が、前記芯金の軸方向に沿って設けられた支持刃によって支持されてなることを特徴とするものである。
【００１４】
本発明の請求項４に係る転造加工用ワーク支持機構が採用した手段は、請求項１乃至３の何れか一つの項に記載の転造加工用ワーク支持機構において、前記支持刃の刃面が、加工前の前記パイプ状ワークとホルダーの一部の外形形状に倣う形状に形成されたことを特徴とするものである。
【００１５】
本発明の請求項５に係る転造加工用ワーク支持機構が採用した手段は、請求項１乃至４の何れか一つの項に記載の転造加工用ワーク支持機構において、前記支持刃の刃面が、超硬合金をろう付して形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１６】
本発明の請求項１に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、パイプ状ワークを支持し、対向する一対の丸ダイスによって転造加工する２ダイス転造用の転造加工用ワーク支持機構において、前記パイプ状ワークを先端側に差し込んで支持する芯金と、この芯金の後端側を固定するホルダーと、このホルダーを回転自在に支持する回転支持手段とが備えられてなるので、簡便な構造を有するワーク支持機構によって、小径パイプや薄肉パイプからなるパイプ状ワークを、脱落させたり折損させること無く低コストで生産可能となる。
【００１７】
また、本発明の請求項２に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、前記芯金が、前記ホルダーの後方に引き抜き可能な引抜手段を備えられたので、パイプ状ワークが転造加工時の縮径により前記芯金に固着したとしても除去することが可能となる。
【００１８】
更に、本発明の請求項３に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、前記パイプ状ワークと前記ホルダーの一部の下面が、前記芯金の軸方向に沿って設けられた支持刃によって支持されてなるので、内径の小さいパイプを細い芯金で支持する場合でも、前記支持刃により芯金の強度不足を補足出来る。
【００１９】
また更に、本発明の請求項４に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、前記支持刃の刃面が、加工前の前記パイプ状ワークとホルダーの一部の外形形状に倣う形状に形成されたので、前記パイプ状ワークやホルダーに局所的な傷を付けること無く支持可能となる。
【００２０】
本発明の請求項５に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、前記支持刃の刃面が、超硬合金をろう付して形成されたので、前記支持刃が前記パイプ状ワークやホルダーに接触して摩耗するのを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２１】
本発明の実施の形態に係る転造加工用ワーク支持機構について、以下添付図１〜３を参照しながら説明する。図１は本発明の実施の形態に係る転造加工用ワーク支持機構を示す模式的断面図、図２は図１のＡ−Ａ矢視を示し、丸ダイスがパイプ状ワークに接触していない加工開始前の状態を示す平面図、図３は図１のＢ−Ｂ矢視を示し、丸ダイスがパイプ状ワークに接触し加工中の状態を示す側断面図である。
【００２２】
本発明の実施例に係る転造装置は、夫々の外周に４本の突起部８ａ，９ａが設けられた一対の丸ダイス８，９をパイプ状ワークＷに対向して押し込み、このパイプ状ワークＷの外周に４本の円周溝１０を転造加工するための２ダイス転造装置を例としている。そして、本発明の実施の形態に係る転造加工用ワーク支持機構は、この様なパイプ状のワークＷを、２ダイス転造装置により転造加工するためのワーク支持機構である。
【００２３】
この様な転造加工用ワーク支持機構は、パイプ状ワークＷの中空部を先端側を差し込んで支持する芯金１と、貫通孔２ａが設けられこの貫通孔２ａに前記芯金１の後端側を挿入して固定するホルダー２とを備えると共に、このホルダー２を転造装置の台座７回に対して回転自在に支持する回転支持手段としての玉軸受３とが備えられている。
【００２４】
前記芯金１は、鉄やステンレス鋼の丸棒から、パイプ状ワークＷの内径より多少小径の外径と、前記パイプ状ワークＷのほぼ全長を支持可能な長さとを有する寸法に切削加工して形成され、丸ダイス８，９の回転に伴って、前記パイプ状ワークＷが回転自在に支持される構成とされている。また、前記ホルダー２は、鉄やステンレス鋼から切削加工により形成され、軸心に設けられた貫通孔２ａは、前記芯金１と隙間嵌めを構成する程度の公差を有し、芯金１の軸心方向には移動自在であるが、芯金１と直交する方向には動かない様に構成される。
【００２５】
また、前記回転支持手段３は、パイプ状ワークＷが転造加工されるに伴なって丸ダイス８，９の押込圧により縮径して前記芯金１に固着した際、芯金１と共にホルダー２も同伴して回転可能とするものであり、その結果、パイプ状ワークＷの回転が停止して、丸ダイス８，９が回転停止した前記パイプ状ワークＷの局部を擦過し損傷させるのを防止出来る。この様な回転支持手段３としては、市販の玉軸受に限らず、ころ軸受やスラスト軸受、滑り軸受等他の軸受でも良い。
【００２６】
また、前記芯金１の後端側は、市販の蝶ボルト４の軸心に形成された差込孔４ａに差し込まれて止めネジ５により固定されると共に、前記蝶ボルト４は、前記ホルダー２の貫通孔２ａの後方にあってこの貫通孔２ａと同心状に形成された雌ネジ２ｂと螺合されている。そして、前記前記蝶ボルト４を回転させることにより、この蝶ボルト４に固定された芯金１が軸心方向に前進または後退可能な構成となっている。
【００２７】
即ち、前記ホルダー２に形成された雌ネジ２ｂと、芯金１を固定し前記蝶ボルト４とによって引抜手段を構成して、前記芯金１が前記ホルダー２の貫通孔２ａに沿って後方に引抜可能とされている。その結果、パイプ状ワークＷが転造加工されるに伴なって丸ダイス８，９の押込圧により縮径して前記芯金１に固着しても、前記引抜手段によって芯金１をパイプ状ワークＷから引抜可能となる。この様な引抜手段は、上記構成に限らず、油圧や空気圧を利用した流体シリンダを用いても良い。
【００２８】
更に、前記芯金１の軸方向に設けられた支持刃６を図１に示す矢印方向に押し当てて、前記パイプ状ワークＷの下面と前記ホルダー２の一部、例えば少なくとも先端部の下面が支持される構成が好ましい。この様な構成によって、内径の小さいパイプ状ワークＷを細い芯金１で支持して転造加工する場合でも、前記支持刃６により前記芯金１の強度不足を補足出来るからである。この様な支持刃６は、厚さが少なくとも前記パイプ状ワークの外径より小さい数ｍｍの鉄鋼板やステンレス鋼板から形成可能である。
【００２９】
そして、前記支持刃６の刃面６ａが、加工前の前記パイプ状ワークＷの外形形状とホルダー２の一部、例えば少なくとも先端部の外形形状に倣う形状に形成されたものが好ましい。前記支持刃６の刃面６ａをこの様な形状に形成することによって、前記支持刃６の刃面６ａが、前記パイプ状ワークＷの外周とホルダー２の一部の外周をほぼ均一に接触して支持するため、支持力による相互の接触摩擦を分散させ局所的な損傷も防止できる。
【００３０】
また更に、前記支持刃６の刃面６ａが、超硬合金１１をろう付して形成されたものが好ましい。支持刃６の刃面６ａに超硬合金１１を形成することにより、接触摩擦による支持刃６の損耗を防止出来るためである。
【００３１】
以上の通り、本発明に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、パイプ状ワークを先端側に差し込んで支持する芯金と、この芯金の後端側を固定するホルダーと、このホルダーを回転自在に支持する回転支持手段とが備えられてなるので、簡便な構造を有するワーク支持機構によって、小径パイプや薄肉パイプからなるパイプ状ワークを、脱落させたり折損させること無く低コストで生産可能となる。
【００３２】
また、本発明に係る転造加工用ワーク支持機構によれば、前記芯金が、前記ホルダーの後方に引き抜き可能な引抜手段を備えられたので、パイプ状ワークが転造加工時の縮径により前記芯金に固着したとしても除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００３３】
【図１】本発明の実施の形態に係る転造加工用ワーク支持機構を示す模式的断面図である。
【図２】図１のＡ−Ａ矢視を示し、丸ダイスがパイプ状ワークに接触していない加工開始前の状態を示す平面図である。
【図３】図１のＢ−Ｂ矢視を示し、丸ダイスがパイプ状ワークに接触している加工中の状態を示す側断面図である。
【図４】従来例に係る２ダイス式転造装置の一例を示す正面図である。
【図５】揺動機構を備えた従来例に係るワーク支持機構を示す概念図である。
【符号の説明】
【００３４】
Ｗ：パイプ状ワーク，
１：芯金，
２：ホルダー， ２ａ：貫通孔， ２ｂ：雌ネジ，
３：回転支持手段（玉軸受），
４：蝶ボルト， ４ａ：差込孔，
５：止めネジ，
６：支持刃， ６ａ：刃面，
７：台座，
８：，９：丸ダイス， ８ａ，９ａ：突起部，
１０：円周溝， １１：超硬合金
【特許請求の範囲】
【請求項１】
パイプ状ワークを支持し、対向する一対の丸ダイスによって転造加工する２ダイス転造用の転造加工用ワーク支持機構において、前記パイプ状ワークを先端側に差し込んで支持する芯金と、この芯金の後端側を固定するホルダーと、このホルダーを回転自在に支持する回転支持手段とが備えられてなることを特徴とする転造加工用ワーク支持機構。
【請求項２】
前記芯金が、前記ホルダーの後方に引き抜き可能な引抜手段を備えられたことを特徴とする請求項１に記載の転造加工用ワーク支持機構。
【請求項３】
前記パイプ状ワークと前記ホルダーの一部の下面が、前記芯金の軸方向に沿って設けられた支持刃によって支持されてなることを特徴とする請求項１または２に記載の転造加工用ワーク支持機構。
【請求項４】
前記支持刃の刃面が、加工前の前記パイプ状ワークとホルダーの一部の外形形状に倣う形状に形成されたことを特徴とする請求項１乃至３の何れか一つの項に記載の転造加工用ワーク支持機構。
【請求項５】
前記支持刃の刃面が、超硬合金をろう付して形成されたことを特徴とする請求項１乃至４の何れか一つの項に記載の転造加工用ワーク支持機構。
【請求項１】
パイプ状ワークを支持し、対向する一対の丸ダイスによって転造加工する２ダイス転造用の転造加工用ワーク支持機構において、前記パイプ状ワークを先端側に差し込んで支持する芯金と、この芯金の後端側を固定するホルダーと、このホルダーを回転自在に支持する回転支持手段とが備えられてなることを特徴とする転造加工用ワーク支持機構。
【請求項２】
前記芯金が、前記ホルダーの後方に引き抜き可能な引抜手段を備えられたことを特徴とする請求項１に記載の転造加工用ワーク支持機構。
【請求項３】
前記パイプ状ワークと前記ホルダーの一部の下面が、前記芯金の軸方向に沿って設けられた支持刃によって支持されてなることを特徴とする請求項１または２に記載の転造加工用ワーク支持機構。
【請求項４】
前記支持刃の刃面が、加工前の前記パイプ状ワークとホルダーの一部の外形形状に倣う形状に形成されたことを特徴とする請求項１乃至３の何れか一つの項に記載の転造加工用ワーク支持機構。
【請求項５】
前記支持刃の刃面が、超硬合金をろう付して形成されたことを特徴とする請求項１乃至４の何れか一つの項に記載の転造加工用ワーク支持機構。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２００９−２２９９７（Ｐ２００９−２２９９７Ａ）
【公開日】平成２１年２月５日（２００９．２．５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−１９１０９４（Ｐ２００７−１９１０９４）
【出願日】平成１９年７月２３日（２００７．７．２３）
【出願人】（０００２３３６１９）株式会社ニチリン (69)
【公開日】平成２１年２月５日（２００９．２．５）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年７月２３日（２００７．７．２３）
【出願人】（０００２３３６１９）株式会社ニチリン (69)
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