説明

軸上に延びるゲッターストリップを備えたガス放電ランプ及びその製造方法

【課題】酸化劣化を起こさずにゲッターをガス放電ランプに挿入する方法を提供する。
【解決手段】ガス放電ランプ、それを使う光イオン化センサ及びその製造方法。ランプは、ハウジング、その長手方向第一端部を通す紫外線透過窓、ハウジング内において長手方向に延びるゲッターストリップを有し、ハウジング内に処理ガスが密閉される。製造方法は、(i)ガラス管を得る段階(ii)長手方向端部の中間のガラス管を収縮し、孔を第一及び第二チャンバーに分割し、収縮部による通路を介してチャンバーが流体連通する段階(iii)第一チャンバーの開放端部を覆って紫外線透過窓をガラス管に取付る段階(iv)ゲッターストリップを収縮部の通路を介して第一チャンバーに挿入する段階(v)第一チャンバーを希ガスでパージする段階(vi)収縮部でガラス管を熱し、第二チャンバーから第一チャンバーを分離して第一チャンバーの収縮端部を密閉する段階を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年6月16日に出願された米国仮出願番号第61/497,762号の利益を主張している。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ガス放電ランプは、幅広いアプリケーションにおいて、規定のバンド幅内にある放射を放つために使用される。ランプの反対側に位置付けされた一対の励起電極を使用して、ランプ内に保持されている処理ガスを容量的に励起させることによって、ランプから放射が放たれる。そのような放電ランプの一つが米国特許第6,646,444号に記載されており、その開示が参照により本願に組み入れられる。もう一つの方法として、処理ガスは誘導的に励起させることも可能である。米国特許第6,646,444号に開示されているように、一つの好適な処理ガスは、クリプトンである。
【0003】
ガス放電ランプの性能を適切に維持するためには、処理ガスは比較的純粋である必要がある。ランプ内の処理ガスの汚染、例えば、製造中におけるランプ内に残っている残留ガスによる汚染、又は吸収されたガスのランプへの漸次の放出による汚染などによって、操作性及び性能が劣化する。
【0004】
通常、ランプ内の汚染ガスを減少させるため又は除去するために、ガス放電ランプ内にゲッターが組み入れられる。ゲッターは、汚染ガスを化学的に結合又は吸収することによって機能し、それによって、ゲッターが、処理ガスの励起と干渉することを防止するとともに処理ガスからの放射と干渉することを防止する。
【0005】
ゲッターは、典型的にはチタニウムのような金属の箔であるが、大気中で見出されるような高酸素濃度に曝された中で熱せられると、酸化劣化が極めて起こりやすくなる。残念ながら、ガス放電ランプを組み立てる典型的な方法では、ランプが大気中に曝された状態のままで、ランプに組み込まれたゲッターは300℃から500℃を上回る温度に曝され、その結果、ゲッターの劣化、及びランプの性能と耐用年数の両方の劣化をもたらす。
【0006】
したがって、酸化劣化を起こさずにゲッターをガス放電ランプに組み入れる、容易で安価な信頼性のある方法に対する実際上の必要性が存在している。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第一の局面は、紫外線ランプのようなガス放電ランプである。ランプは、(a)長手方向の軸を規定するハウジング、好ましくはガラスであって、そのハウジング内に密閉されたガス、好ましくはクリプトンを有するハウジング、(b)そのハウジングの長手方向の第一の端部を通り抜ける紫外線透過窓、及び(c)ハウジング内において長手方向に延びるゲッターストリップ、好ましくはチタニウム、とを有する。
【0008】
ガス放電ランプは、ハウジング上又は内に、長手方向の軸の周りに直径方向に位置付けされた一対の金属製の励起電極を有する。
【0009】
本発明の第二の局面は、本発明の第一の局面に従った紫外線ガス放電ランプを有する光イオン化センサである。
【0010】
本発明の第三の局面は、ガス放電ランプを組み立てる方法である。その方法は、(i)長手方向の第一及び第二の開放端部並びに長手方向に延びる孔を有するガラス管を得る段階と、(ii)ガラス管の長手方向の第一及び第二の開放端部の中間にあるガラス管を収縮して、孔を、ガラス管の長手方向の第一の開放端部に隣接した第一チャンバーと、ガラス管の長手方向の第二の開放端部に隣接した第二チャンバーとに分割し、その収縮部による通路を介して、それらのチャンバーが互いに流体連通する段階と、(iii)ガラス管の長手方向の第一の開放端部を覆うように、紫外線透過窓をガラス管に取り付ける段階と、(iv)ゲッターストリップを、ガラス管の長手方向の第二の開放端部から第一チャンバーに挿入する段階と、(v)第一チャンバーを希ガスでパージする段階と、(vi)収縮部でガラス管を熱し、第二チャンバーから第一チャンバーを分離して、第一チャンバーの収縮端部を密閉する段階と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示された本発明を大きく拡大した部分であり、処理ガスを分子レベルで示している。
【図3a】図1に示された本発明の組み立てにおいて使用されるガラス管の断面側面図である。
【図3b】図3aに示されたガラス管の収縮後の断面側面図である。
【図3c】図3bに示された収縮されたガラス管の、紫外線透過窓を取り付けた後の断面側面図である。
【図3d】窓が取り付けられ、収縮されたガラス管の、図3cに示された一部断面側面図であって、ゲッターストリップをガラス管の中に落とし、ガラス管をガスパージステーションに取り付けた後の図である。
【図3e】ゲッターを含み、かつ窓が取り付けられたガラス管と、収縮したガラス管の側面図であり、ガラス管を熱で分離した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
特許請求の範囲を含めて、本願で用いられる場合、用語「アスペクト比」は、幅又は厚さの内大きい方に対する長さの比を意味する。
【0013】
特許請求の範囲を含めて、本願で用いられる場合、用語「高アスペクト比」は、5対1よりも大きいアスペクト比を意味する。
【0014】
組み立て
図1を参照する。本発明は、光イオン化センサ(図示なし)用に適した紫外線放電ランプ10のような、ガス放電ランプ10を対象にするものであり、ハウジング20と、ハウジング内に密閉された処理ガス60と、ハウジング20の長手方向の第一の端部21に取り付けられた紫外線透過窓30と、ハウジング20上又は内であって長手方向の軸Aの周りに直径方向に位置決めされた一対の励起電極51及び52(電極50と総称する)と、ハウジング20内において長手方向に延びるゲッターストリップ40とを有している。
【0015】
ハウジング20は、ガラスで構成されることが好ましい。好適な紫外線透過窓30は、フッ化マグネシウムの結晶から構成されたキャップである。ゲッター40は、チタニウムのような酸化可能な金属又は焼結ゲッター合金から構成されるのが好ましい。電極50は、ハウジング20の外側の表面に取り付けられるのが好ましい。処理ガス60は、希ガスが好ましく、クリプトンが最も好ましい。
【0016】
ゲッター40は、長手方向に延びたストリップであり、長手方向の長さ対幅が高アスペクト比であることが好ましい。高アスペクト比のゲッターストリップ40を使用することによって、紫外線透過窓30がハウジング20に取り付けられた後、ハウジング20の収縮された長手方向の第二の端部22を通して、ゲッターストリップ40をハウジング20のチャンバー29に挿入することができる。ゲッターストリップ40は、ゲッターストリップ40の長い方の寸法(即ち、長手方向の長さ)がハウジング20内において長手方向に延びるように形状が決められ、ハウジング20内に配置される。ゲッターストリップ40の長手方向の第一の端部41が、ハウジング20の長手方向の第一の端部21にある紫外線透過窓30に接触するとき、ゲッターストリップ40の長手方向の第二の端部42がハウジング20の収縮された長手方向の第二の端部22まで延びるように、ゲッターストリップ40が寸法化されるのが好ましい。ゲッターストリップ40の長手方向の第二の端部42は、ゲッターストリップ40の位置をチャンバー29内に固定するために、ハウジング20内に埋め込まれるのが好ましい。
【0017】
製造
ランプ10は、ゲッターストリップ40の酸化劣化を防ぐ方法によって組み立てられる。図3aから図3eを参照する。その方法は、(a)長手方向の第一の開放端部121及び長手方向の第二の開放端部122並びに長手方向に延びる孔129を有するガラス管120を得る段階(図3a)と、(b)ガラス管120の長手方向の第一の開放端部121及び長手方向の第二の開放端部122の中間にあるガラス管120を収縮して、孔129を、ガラス管120の長手方向の第一の開放端部121に隣接した第一チャンバー129aと、ガラス管120の長手方向の第二の開放端部122に隣接した第二チャンバー129bとに分割し、その収縮部123による通路129cを介して、それらのチャンバーが互いに流体連通する段階(図3b)と、(c)ガラス管120の長手方向の第一の開放端部121を覆うように、紫外線透過窓30をガラス管120に取り付ける(例えば、熔接)段階と、(d)ゲッターストリップ40を、ガラス管120の長手方向の第二の開放端部122を通し、そして収縮部の通路129cを通して第一チャンバーに挿入する段階(図3c)と、(e)第一チャンバー129aを希ガスのような処理ガス60でパージする段階(図3d)と、(f)収縮部123においてガラス管120を熱し、第二チャンバー129bから第一チャンバー129aを分離して、第一チャンバー129aの収縮端部22を密閉する段階(図3e)と、(g)第一チャンバー129aを規定するガラス管120の部分に励起電極50を形成する段階と、を有している。
【0018】
第一チャンバー129aのガス状内容物を抜き(例えば、真空に引く)、その後、抜かれた第一チャンバー129aを処理ガス60で満たすことによって、第一チャンバー129aを処理ガス60でパージすることが望ましい。
【0019】
第一チャンバー129aをパージした後、ガラス管120を分割することによってゲッターストリップ40の酸化劣化が回避できるが、それは、ガラス管120が熱せられている間、ゲッターストリップ40が大気中の酸素に曝されないからである。
【0020】
ゲッターストリップ40は、第一チャンバー129aを第二チャンバー129bから分離するために、ガラス管120の収縮部123を熱している間、ゲッターストリップ40の長手方向の第二の端部42を、第一チャンバー129aの収縮端部内に埋め込むことによって、第一チャンバー129a内に固定されるのが好ましい。
【符号の説明】
【0021】
用語
10 ガス放電ランプ
20 ランプハウジング
21 ランプハウジングの長手方向の第一の端部
22 ランプハウジングの長手方向の第二の端部
29 ランプハウジングのチャンバー
30 紫外線透過窓
40 ゲッターストリップ
41 ゲッターの長手方向の第一の端部
42 ゲッターの長手方向の第二の端部
50 励起電極
51 第一の励起電極
52 第二の励起電極
60 処理ガス
120 ガラス管
121 ガラス管の長手方向の第一の端部
122 ガラス管の長手方向の第二の端部
123 ガラス管の収縮部
129 ガラス管の孔
129a 孔の第一チャンバー部
129b 孔の第二チャンバー部
129c 収縮部の通路
A 長手方向の軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス放電ランプであって、
(a)長手方向の軸を規定するハウジングであって、そのハウジング内に密閉されたガスを含んだハウジングと、
(b)前記ハウジングの長手方向の第一の端部を通す紫外線透過窓と、
(c)前記ハウジング内において長手方向に延びるゲッターストリップと、
を有するガス放電ランプ。
【請求項2】
前記ハウジング上に、又は前記ハウジング内に、前記長手方向の軸の周りに直径方向に位置決めされた一対の金属製の励起電極をさらに有する請求項1に記載のガス放電ランプ。
【請求項3】
前記ランプは紫外線ランプである請求項1又は2に記載のガス放電ランプ。
【請求項4】
前記ゲッターストリップがチタニウムから成る請求項1から3のいずれかに記載のガス放電ランプ。
【請求項5】
前記ゲッターストリップの長手方向の第二の端部が、前記ハウジング内であって前記ハウジングの長手方向の第二の端部に隣接して埋め込まれる請求項1から4のいずれかに記載のガス放電ランプ。
【請求項6】
前記ゲッターストリップは、長手方向に延びる高アスペクト比を有する請求項1から5のいずれかに記載のガス放電ランプ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の紫外線ガス放電ランプを有する光イオン化センサ。
【請求項8】
ガス放電ランプを組み立てる方法であって、
(a)長手方向の第一及び第二の開放端部と長手方向に延びる孔とを有するガラス管を得る段階と、
(b)前記ガラス管の長手方向の前記第一及び第二の開放端部の中間にある前記ガラス管を収縮して、前記孔を、前記ガラス管の長手方向の前記第一の開放端部に隣接した第一チャンバーと、前記ガラス管の長手方向の前記第二の開放端部に隣接した第二チャンバーとに分割し、前記収縮による通路を介して前記第一及び第二チャンバーが互いに流体連通する段階と、
(c)前記ガラス管の長手方向の前記第一の開放端部を覆うように、紫外線透過窓を前記ガラス管に取り付ける段階と、
(d)ゲッターストリップを、前記ガラス管の長手方向の前記第二の開放端部から前記第一チャンバーに挿入する段階と、
(e)前記第一チャンバーを希ガスでパージする段階と、
(f)前記収縮部において前記ガラス管を熱し、前記第二チャンバーから前記第一チャンバーを分離して、前記第一チャンバーの収縮端部を密閉する段階と、
を有する方法。
【請求項9】
前記第一チャンバーのガス状内容物を抜き、その後、抜かれた第一チャンバーを処理ガスで満たすことによって、前記第一チャンバーをパージする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ランプが紫外線ランプである請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲッターストリップがチタニウムから成る請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記段階(f)の間において、前記ゲッターストリップの長手方向の第二の端部を前記ハウジング内に埋め込むことによって、前記ゲッターストリップの長手方向の第二の端部を、前記ハウジングの長手方向の第二の端部に隣接した前記ハウジングに固定して取り付ける段階をさらに有する請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ゲッターストリップは、長手方向に延びる高アスペクト比を有する請求項8から12のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【公開番号】特開2013−4527(P2013−4527A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−149890(P2012−149890)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【出願人】(592014182)モコン・インコーポレーテッド (16)
【Fターム(参考)】