説明

軸体移送装置

【課題】ロール状物の中空巻芯に軸体を挿入する毎に、中空巻芯に対して軸体を位置決めできる軸体移送装置を提供する。
【解決手段】軸体移送装置6は、把持手段8と、進退手段9と、昇降手段10と、中空巻芯3の他方の開口部2に対面する位置に設置された当接部材11と、把持手段8と進退部材12との間に介在し把持手段8に把持された軸体5の端部51が当接部材11により押し返されることを許容する緩衝手段とを備える。中空巻芯3に挿入された軸体5の端部51は、当接部材11によって位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状物の中空巻芯に軸体を抜き差しする軸体移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム等を中空巻芯の周りに巻き付けられて成るロール状物を、無人搬送車で搬送するとき、特許文献1に示されるように、中空巻芯の両端を無人搬送車に立ち上げたステーで保持する。ロール状物を倉庫に格納する場合、中空巻芯に軸体を挿入し、軸体の両端部をハンガー等に掛ける。また、ロール状物を倉庫から出庫する場合、中空巻芯に挿入された軸体は回収される。この軸体は、新たにロール状物を倉庫に格納するときに、再び上記のように使用される。
【0003】
軸体の挿入及び回収は次のように行われる。即ち、図6(a),(b)に示すように、従来例の軸体移送装置60は、軸体5を着脱自在に把持する把持手段8と、把持手段8を中空巻芯3の一方の開口部1に向けて進退させる進退手段9と、把持手段8を昇降させる昇降手段10とを備える。進退手段9が把持手段8を進退させる方向は、軸体5の軸方向に一致し、把持手段8が一方の開口部1に前進する向きを矢印F方向とし、把持手段8が一方の開口部1から後退する向きを矢印R方向とする。昇降手段10は、昇降案内レール100に滑動自在に係合する滑子101に把持手段8を接続し、直立する送りねじの回転に従わせて、この送りねじに螺合したボールナットと共に滑子101を昇降させるものである。これら自明の機械要素についての図示は省略する。
【0004】
中空巻芯3に軸体5を挿入するときは、ロール状物24を載せた無人搬送車4を所定のステーションに停車させる一方、進退手段9が把持手段8を仮想線で表した位置まで後退させ、昇降手段10が把持手段8を下降させる。架台7に載せられた軸体5の端部52を把持手段8が把持した後、昇降手段10は、中空巻芯3の高さに軸体5の高さが一致するまで把持手段8を上昇させる。続いて、進退手段9が、把持手段8を前進させることにより、軸体5は図示の通り中空巻芯3に挿入される。軸体5を回収するときは、中空巻芯3に挿入された軸体5を把持手段8で把持し、進退手段9が把持手段8を軸体5と共に仮想線で表した位置まで後退させる。そして、昇降手段10が把持手段8を下降させ、軸体5が架台7に接近したところで、把持手段8が軸体5を解放する。
【特許文献1】特開2006−56686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無人搬送車4が倉庫から出庫されたロール状物24をステーションまで搬送する行程で、無人搬送車4の走行に伴なう振動により、中空巻芯3に対して軸体5がその軸方向に滑ることがある。軸体5が回収される時点で、軸体5の滑りが起こった分、軸体5とこれを把持する把持手段8との相対的な位置に狂いが生じる。この状態で、新たに無人搬送車4をステーションに停車させ、これに載せられたロール状物24の中空巻芯3に軸体5を挿入すると、軸体5の位置が開口部1又は開口部2に偏ることになる。このため、ロール状物24をスタッカークレーン等に移載するときに、軸体5が同クレーンのフォーク25から脱落する惧れがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ロール状物の中空巻芯に軸体を挿入する毎に、中空巻芯に対して軸体を位置決めできる軸体移送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る軸体移送装置は、両端に開口部をそれぞれ開放したロール状物の中空巻芯に、軸体をその端部が前記中空巻芯の両端のうち一方の開口部に向けられた姿勢にして抜き差しするものであって、前記軸体を着脱自在に把持する把持手段と、前記中空巻芯の両端のうち他方の開口部に対向し、前記軸体の端部を位置決めする当接部材と、前記把持手段を前記当接部材に進退させる駆動力を発生する進退手段と、前記把持手段と前記進退手段との間に介在し、前記把持手段に把持された軸体の端部が前記駆動力に抗して前記当接部材に押し返されるのを許容する緩衝手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
更に、前記進退手段は、前記軸体の端部が前記当接部材に押し返されることに基づき、前記駆動力を断つことを特徴とする。
【0009】
更に、前記緩衝手段が、前記把持手段に接続され前記当接部材に対して進退自在に案内される進退部材と、前記進退部材と前記把持手段との間に介在し前記把持手段を前記当接部材へ向けて付勢する弾性体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る軸体移送装置によれば、中空巻芯の一方の開口部に端部を向けた姿勢の軸体を把持手段で把持し、進退手段の発生する駆動力により、中空巻芯の他方の開口部に対向する当接部材に向けて、軸体を把持手段と共に前進又は後退させることができる。軸体が当接部材へ前進する過程で、軸体の端部は、中空巻芯の一方の開口部に進入し、更に他方の開口部を通り抜けて当接部材に突当たる。これにより、軸体の端部が当接部材に位置決めされるので、例えばロール状物を載せた無人搬送車を、予め当接部材に対して所定の距離を隔てる位置に停車させておけば、ロール状物の中空巻芯に対して軸体を位置決めすることができる。
【0011】
従って、当該軸体移送装置によれば、軸体と把持手段との相対的な位置に既述の狂いが生じていても、軸体の両端部が中空巻芯の両側の開口部からそれぞれ突出する長さが互いに等しくなるように、ロール状物の中空巻芯に軸体を位置決めすることができる。このため、ロール状物をスタッカークレーン等に移載するときに、同クレーンのフォークを軸体の両端部に確実に掛けることができる。
【0012】
また、軸体の端部が当接部材に突当たるとき、把持手段に把持された軸体が当接部材の反力を受けることになる。緩衝手段は、上記の反力により軸体が把持手段と共に進退手段の駆動力に抗して押し返されるのを許容し、軸体を把持手段と共に当接部材から後退する方向へ逃せるので、把持手段と当接部材とが相互に受ける衝撃を緩和することができる。
【0013】
更に、本発明に係る軸体移送装置によれば、軸体の端部が当接部材に押し返されることに基づき進退手段の駆動力が断たれた時点で、軸体の端部が当接部材に位置決めされた状態を保持することができる。また、軸体の端部が押し返される分、軸体の端部が当接部材に突当たるのと同時に把持手段を停止させるのに比べて、時間的余裕を得られるので、進退手段の制御が容易である。
【0014】
しかも、緩衝手段として、把持手段とこれを支持する進退部材との間に介在した弾性体により把持手段を当接部材へ向けて付勢し、また上記の反力により押し返された把持手段の位置を、進退部材に対して復帰させることができる。このため、把持手段の移動を駆動源に依らず行えるので、当該軸体移送装置は、その部品点数が少なく構造が簡単であり製造コストが安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、両端に開口部1,2をそれぞれ開放した中空巻芯3が載せられた無人搬送車4と、中空巻芯3に軸体5を抜き差しする軸体移送装置6と、軸体5がその端部51を中空巻芯3の一方の開口部1に向けた姿勢で載せられる架台7とを示している。軸体移送装置6は、把持手段8と、進退手段9と、昇降手段10と、中空巻芯3の他方の開口部2に対面する位置に設置された当接部材11と、後述の緩衝手段とを備える。
【0016】
従来例と共通する要素には、以下でも同じ呼称又は同じ符号を用いるものとし、その詳細な説明又は図示を省略する。また、特に断らない限り図面は図2乃至図4を参照する。把持手段8は、エアシリンダ81のピストンロッド82にリンク83を介して一対の爪84を接続し、ピストンロッド82の伸縮に従わせて一対の爪84を互いに開閉する方向に回動させるものである。図中に1本のピン85が表れているが、一対の爪84は、筐体86に支持された2本のピンをそれぞれの支点として、上記のように回動する。
【0017】
進退手段9は、昇降手段10の滑子に接続されたフレーム91に、互いに軸体5の軸方向に隔たる2つのスプロケット92を設け、これらのスプロケット92に巻掛したエンドレスチェーン93に、アタッチメント金具94を介して進退部材12を連結したものである。フレーム91には、軸方向に延びる進退案内レール13が固定されている。当接部材11は、支柱111の上端に固定された板状のストッパーである。
【0018】
進退部材12は、進退案内レール13に係合した滑子14に取付けられている。図中の何れか1つのスプロケット92は、図に表れていない回転機によって回転され、エンドレスチェーン93が矢印F方向又は矢印R方向へ走行することにより、進退部材12と共に把持手段8を進退させる駆動力が発生する。進退手段9の回転機は、コンピューター等を主体とする制御装置に制御されるものであれば良い。
【0019】
把持手段8と進退部材12との間には、緩衝手段15が介在している。緩衝手段15は、進退部材12に軸方向に延びるスライドレール16を固定し、スライドレール16に滑動自在に係合した滑子17に、把持手段8に連結した可動部材18を取付け、弾性体19によって可動部材18共に把持手段8を矢印F方向へ付勢したものである。弾性体19は、一端を進退部材12に設けたばね座20に受止められ、他端を可動部材18に設けたばね座21に受止められた圧縮コイルばねである。
【0020】
ばね座20には近接センサ22が固定され、可動部材18には、近接センサ22に対向する被検出片23が固定されている。進退部材12、滑子14、スライドレール16、ばね座20、及び近接センサ22は一体に結合されており、これらのドットを付した要素に対して、把持手段8、滑子17、可動部材18、及び被検出片23は、緩衝手段15の弾性体19によって矢印F方向へ付勢されている。把持手段8が矢印R方向の外力を受けると、滑子17及び可動部材18と共に把持手段8は、弾性体19を圧縮しながらドットを付した要素に対して矢印R方向へ後退できる。また、把持手段8が後退するのと同時に、近接センサ22の正面から被検出片23が逸れる。これにより近接センサ22のON/OFFが切換わることを、上記の制御装置が停止信号として認識し、進退手段9の回転機を停止させ、進退手段9の駆動力を断つことができる。
【0021】
軸体移送装置6の動作について以下に説明する。軸体移送装置6は制御装置に制御されるものとする。また、符号S1〜S6は、図5のフローチャートに対応する。
【0022】
中空巻芯3に軸体5を挿入するときは、先ず図1に示すように、無人搬送車4を当接部材11に対して所定の距離を隔てる位置に停車させる。この時点で、ロール状物24の中空巻芯3に軸体5は挿入されていない。また、把持手段8は一対の爪84を開いている。そして、進退手段9が、架台7に載せられた軸体5の端部52の真上まで把持手段8を後退させ、昇降手段10が把持手段8を下降させる(S1)。軸体5の端部52が一対の爪84の間に進入する高さまで、把持手段8が下降したところで、昇降手段10が停止し、把持手段8が一対の爪84を閉じて軸体5を把持する(S2)。昇降手段10が、把持手段8を上昇させ(S3)、軸体5の高さを中空巻芯3の高さに一致させる。
【0023】
続いて、進退手段9が、把持手段8を前進させる(S4)。これにより、軸体5の端部51は、中空巻芯3の一方の開口部1に進入し、更に他方の開口部2を通り抜けて当接部材11に突当たる。このため、把持手段8が軸体5を把持した時点(S2)で軸体5と把持手段8との相対的な位置に狂いが生じていたとしても、軸体5の両端部51,52がそれぞれ中空巻芯3の両側の開口部1,2から突出する長さが互いに等しくなるように、中空巻芯3に対して軸体5を位置決めすることができる。
【0024】
上記のように軸体5が当接部材11に突当たるとき、把持手段8に把持された軸体5が当接部材11の反力を受けることになる。この反力により、軸体5が進退手段9の駆動力に抗して押し返され、把持手段8が矢印R方向へ逃げるので、把持手段8と当接部材11とが相互に受ける衝撃を緩和することができる。
【0025】
また、上記のように把持手段8が押し返された時点で、近接センサ22の正面から被検出片23が逸れることにより、近接センサ22の停止信号に基づき進退手段9の回転機が停止する。同時に、把持手段8が一対の爪84を開き(S5)、軸体5が把持手段8から解放される。この状態で、弾性体19の弾性力により把持手段8の位置が進退部材12に対して復帰し、被検出片23が近接センサ22の正面に戻る。最後に、進退手段9が把持手段8を後退させる(S6)。軸体5を回収するときの動作は従来例と同様である。
【0026】
また、軸体5の端部51が上記のように押し返される分、軸体5の端部51が当接部材11に突当たるのと同時に把持手段8を停止させるのに比べて、制御装置が進退手段9の回転機を緩慢に停止させても良いので、進退手段9の制御を容易に行うことができる。しかも、緩衝手段15を構成する部品点数が少なく構造が簡単であるので、軸体移送装置6の製造コストを低く抑えることができる。
【0027】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様で実施できる。例えば、架台7が軸体5を中空巻芯3と同じ高さに支持できる場合は、昇降手段10を省略しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、自動倉庫等にロール状物を格納するのに使用する軸体に限らず、あらゆる軸体を所望の位置に正確に移送するのに有益な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る軸体移送装置の使用例を示す正面面。
【図2】本発明の実施形態に係る軸体移送装置の要部の正面図。
【図3】図2のA−A線断面。
【図4】図3のB−B線断面。
【図5】本発明の実施形態に係る軸体移送装置の動作を説明するフローチャート。
【図6】(a)は従来例の軸体移送装置の正面図、(b)はその側面図。
【符号の説明】
【0030】
1,2:開口部
3:中空巻芯
5:軸体
6:軸体移送装置
8:把持手段
9:進退手段
11:当接部材
15:緩衝手段
19:弾性体
24:ロール状物
51,52:端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に開口部をそれぞれ開放したロール状物の中空巻芯に、軸体をその端部が前記中空巻芯の両端のうち一方の開口部に向けられた姿勢にして抜き差しする軸体移送装置であって、
前記軸体を着脱自在に把持する把持手段と、
前記中空巻芯の両端のうち他方の開口部に対向し、前記軸体の端部を位置決めする当接部材と、
前記把持手段を前記当接部材に進退させる駆動力を発生する進退手段と、
前記把持手段と前記進退手段との間に介在し、前記把持手段に把持された軸体の端部が前記駆動力に抗して前記当接部材に押し返されるのを許容する緩衝手段と、
を備えることを特徴とする軸体移送装置。
【請求項2】
前記進退手段は、前記軸体の端部が前記当接部材に押し返されることに基づき、前記駆動力を断つことを特徴とする請求項1に記載の軸体移送装置。
【請求項3】
前記緩衝手段が、前記把持手段に接続され前記当接部材に対して進退自在に案内される進退部材と、前記進退部材と前記把持手段との間に介在し前記把持手段を前記当接部材へ向けて付勢する弾性体とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸体移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−137733(P2009−137733A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317868(P2007−317868)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】