説明

軸力管理ナットアッセンブリ

【課題】かしめによらずに、ナットアッセンブリの全構成部品をアッセンブリ化することができる軸力管理ナットアッセンブリの提供。
【解決手段】座部材11と、締め付けナット12と、リングアッセンブリ13と、座部材11と締め付けナット12を、軸方向に分離しないように連結する連結部材18と、を備えた軸力管理ナットアッセンブリ10。連結部材18が、筒状部材であり、軸方向一端部に座部材11と軸方向に係合する第1の係合部18aと、軸方向他端部に締め付けナット12と軸方向に係合する第2の係合部18bを有する。連結部材18は、プラスチックからなり、弾性変形可能である。連結部材18が、第1のスリット18cと、第2のスリット18dとを、有する。連結部材18により、かしめによらずに、ナットアッセンブリの全構成部品をアッセンブリ化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト軸力をトルクではなく軸力で管理することができるナットアッセンブリ(以下、軸力管理ナットアッセンブリという)に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バスなどを含む車両において、図9、図10に示すように、ホイール(たとえば、ディスクホイール)1は、車両のハブ2にハブボルト3、ハブナット9にて固定される。
【0003】
特開2002−181019号公報は、ハブナットを座部材と締め付けナットとに分割し、座部材と締め付けナットとの間に座金とリング状の弾性体を配置し、締め付けナットを締め付けていった時のリング状弾性体の変形を視認して締め付け力を管理するようにしたナットアッセンブリを開示している。そこでは、部品の一部をアッセンブリ化して取扱を容易にするために、座金と締め付けナットの一方に奥が広がった凹溝を形成し他方に凸部を形成し、凸部を凹溝に突入させた後凸部をかしめて凸部が凹溝から抜け出ないようにして座金と締め付けナットとをアッセンブリ化してある。
【0004】
特開2002−181019号公報のナットアッセンブリでは、ハブナットが座部材と締め付けナットを有し、締め付けナットが座部材に対して相対回転できるようになっているので、座部材を製品(たとえば、ホイール、ただし、製品はホイールに限るものではない)に対して非回転で、ハブボルトに軸力を発生させることができる。その結果、座部材と製品との間の摩擦に影響されない精度の高い締め付け管理を行うことができる。
【0005】
また、締め付けナットを締め付けていった時の弾性体の変形で締め付け力がわかるようにし、締め付け力を視覚で管理可能にしている。
【0006】
また、凸部を凹溝に突入させた後凸部をかしめることにより凸部が凹溝から抜け出ないようにして、座金と締め付けナットを軸方向に分離しないようにアッセンブリ化してあるので、一部の部品のみのアッセンブリ化ではあるが、取扱が容易になるとともに、部品の紛失や、部品の組み付け忘れなどのおそれが少なくなっている。
【特許文献1】特開2002−181019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の軸力管理ナットアッセンブリには、つぎの問題がある。
【0008】
座金と締め付けナットに、金属製の凸部をかしめるのに必要な大きな軸圧縮力をかける必要があり、そのための装置および設備と、工数が必要になる。また、弾性体と、その両側の部材である座金および座部材との間は、かしめによる連結構造を設けることができないので、弾性体と座金および座部材とは軸方向に外れてばらばらになり、一部の部品しかアッセンブリ化することができないため、取扱の容易化、部品紛失のおそれの減少には、限度があった。
【0009】
本発明の目的は、大きな軸力を必要とする金属製部材部分のかしめによらずにナットアッセンブリの構成部品をアッセンブリ化することができ、かつ、ナットアッセンブリの全構成部品を軸方向にばらばらにならないようにアッセンブリ化することができる軸力管理ナットアッセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 座部材と、
座部材に対して相対回転される締め付けナットと、
座部材と締め付けナットとの間に介装される、1以上のリングを有するリングアッセンブリと、
前記座部材と前記締め付けナットを、前記座部材と前記締め付けナットの相対回転を許容しつつ、互いに軸方向に分離しないように連結する連結部材と、
を備え、
前記リングアッセンブリが、ボルト軸力が適正軸力になる前は回転自在でありボルト軸力が適正軸力以上で回転が拘束されるかまたは回転に抵抗を伴う第1の軸力管理リングを含み、
前記連結部材が、筒状部材であり、軸方向一端部に前記座部材と軸方向に係合する第1の係合部と、軸方向他端部に前記締め付けナットと軸方向に係合する第2の係合部を有する、軸力管理ナットアッセンブリ。
(2) 前記座部材は内周に周方向に全周にわたって延びる第1の溝部を有し、前記連結部材の前記第1の係合部は半径方向外方に突出し前記第1の溝部に突入しており、前記締め付けナットは内周に周方向に全周にわたって延びる第2の溝部を有し、前記連結部材の前記第2の係合部は半径方向外方に突出し前記第2の溝部に突入している、(1)記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
(3) 前記連結部材がプラスチックからなり弾性変形可能である(1)または(2)記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
(4) 前記連結部材が、連結部材の軸方向一端部から連結部材の軸方向他端部に向かって連結部材の軸方向途中位置まで軸方向に延びる第1のスリットと、連結部材の軸方向他端部から連結部材の軸方向一端部に向かって連結部材の軸方向途中位置まで軸方向に延びる第2のスリットとを、有する(3)記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
(5) 前記第1の係合部の軸方向外側角部は面取りされており、前記リングアッセンブリの前記締め付けナットに近い側の内周角部は面取りされている(1)−(4)の何れかに記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
(6) 前記第2の係合部の軸方向外側角部は面取りされている(1)−(5)の何れかに記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
(7) 前記リングアッセンブリが、ボルト軸力が適正軸力より大の過剰軸力になったことを検知する過剰軸力検知構造を有し、該過剰軸力検知構造が、ボルト軸力が適正軸力より大の過剰軸力になる前は回転自在でありボルト軸力が過剰軸力以上で回転が拘束される第2の軸力管理リングを含んでいる(1)記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
(8) 前記リングアッセンブリが、弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングと前記第2の軸力管理リングを含み、弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの間にはボルト軸力が適正軸力以上でゼロとなる第1の隙間があり、前記第1の軸力管理リングと前記第2の軸力管理リングとの間にはボルト軸力が過剰軸力以上でゼロとなる第2の隙間がある(7)記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
(9) 前記第2の軸力管理リングには、前記第1の軸力管理リングに対向する面に周方向全周にわたって延びる防水リング溝が形成されており、該防水リング溝に弾性材の防水リングが嵌められている(7)記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
(10) 前記防水リングは、非円形の断面を有し、防水リング溝の外側側面と隙間無く密着する外周面を有する(9)記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
(11) 前記第1の軸力管理リングは、ボルト軸力が適正軸力になる前は回転自在であり、ボルト軸力が適正軸力以上でかつ適正軸力より大の過剰軸力になる前は回転に抵抗を伴い、ボルト軸力が前記過剰軸力になった後は回転が拘束される(1)記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
(12) 前記第1の軸力管理リングは2つ割りの樹脂性部品からなる(11)記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
(13) 前記リングアッセンブリが、弾性変形リングと、前記第1の軸力管理リングを含み、前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの間には第1の隙間があり、ボルト軸力が適正軸力になる前は前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの間に前記第1の隙間が存在して前記第1の軸力管理リングは回転自在であり、ボルト軸力が適正軸力になった時に前記第1の隙間がゼロとなり前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの摩擦力によって前記第1の軸力管理リングの回転に抵抗が生じ、ボルト軸力が過剰軸力になった時に前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの摩擦力が大となって前記第1の軸力管理リングの回転が拘束される(11)記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
(14) 前記リングアッセンブリが、弾性変形リングと、前記第1の軸力管理リングと、前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの間に配置された防水リングを含み、前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの間には第1の隙間があり、ボルト軸力が適正軸力になる前は前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの間に前記第1の隙間が存在して前記第1の軸力管理リングは回転自在であり、ボルト軸力が適正軸力になった時に前記第1の隙間がゼロとなり前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの摩擦力と前記弾性変形リングと前記防水リングとの摩擦力によって前記第1の軸力管理リングの回転に抵抗が生じ、ボルト軸力が過剰軸力になった時に前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの摩擦力および前記弾性変形リングと前記防水リングとの摩擦力が大となって前記第1の軸力管理リングの回転が拘束される(11)記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、座部材と前記締め付けナットを、座部材と締め付けナットの相対回転を許容しつつ、互いに軸方向に分離しないように連結する連結部材を有し、連結部材が、軸方向一端部に座部材と軸方向に係合する第1の係合部と、軸方向他端部に締め付けナットと軸方向に係合する第2の係合部を有する、筒状部材からなるので、筒状部材の第1の係合部と座部材との係合および第2の係合部と締め付けナットとの係合により、大きな軸力を必要とする金属製部材部分のかしめによらずに、ナットアッセンブリの構成部品を軸方向にばらばらにならないようにアッセンブリ化することができる。
また、1以上のリングを有するリングアッセンブリが座部材と締め付けナットとの間に介装され、連結部材が座部材と締め付けナットとを連結しているので、連結部材はナットアッセンブリの全構成部品(座部材、1以上のリングを有するリングアッセンブリ、締め付けナット)を軸方向にばらばらにならないようにアッセンブリ化する。これによって、ナット締め時における、部品の組み付け忘れや誤組み付けを防止することができる。
また、締め付けナットを座部材に対して相対回転できるようにしたので、座部材を製品(たとえば、ホイール、ただし、ホイールに限るものではない)に対して非回転のまま、締め付けナットを回転させてハブボルトに軸力を発生させることができる。その結果、座部材と製品との間の摩擦に影響されない精度の高い締め付け管理を行うことができる。
また、第1の軸力管理リングが回転しなくなる時のボルト軸力を適正ボルト軸力に設定したので、締め付けナットにトルクをかけてボルトに軸力をかけていく時に第1の軸力管理リングが回転可能か否かを(手でさわるなどして)確認し回転不可能となった時に締め付けナットの締め込みを停止すればよい。第1の軸力管理リングが回転可能か否かの確認は、ゴム部材の膨出量の目視による測定(特開2002−181019号公報の測定)に比べて容易で、かつ、高精度である。
【0012】
上記(2)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、座部材は内周に周方向に全周にわたって延び第1の溝部を有し、連結部材の第1の係合部は半径方向外方に突出し第1の溝部に突入しており、締め付けナットは内周に周方向に全周にわたって延び第2の溝部を有し、連結部材の第2の係合部は半径方向外方に突出し第2の溝部に突入しているので、筒状部材の第1の係合部と座部材との係合および第2の係合部と締め付けナットとの係合に、かしめが必要でない。すなわち、連結部材の第1、第2の係合部の形成に、かしめが必要でない。
【0013】
上記(3)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、連結部材がプラスチックからなり弾性変形可能であるので、第1の係合部が第1の溝部に突入するのに連結部材の弾性を利用することができ、第2の係合部が第2の溝部に突入するのに連結部材の弾性を利用することができる。連結部材によるナットアッセンブリの全構成部品の連結に大きな力が必要でなく、特別な設備、工程が必要でない。
【0014】
上記(4)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、連結部材が、連結部材の軸方向一端部から連結部材の軸方向他端部に向かって連結部材の軸方向途中位置まで軸方向に延びる第1のスリットと、連結部材の軸方向他端部から連結部材の軸方向一端部に向かって連結部材の軸方向途中位置まで軸方向に延びる第2のスリットとを、有するので、軸力管理ナットアッセンブリの構成部品を連結部材により連結するときに連結部材を弾性変形させやすくなり、軸力管理ナットアッセンブリの組み立て、アッセンブリ化が容易である。
【0015】
上記(5)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、第1の係合部の軸方向外側角部は面取りされており、リングアッセンブリの締め付けナットに近い側の内周角部は面取りされているので、リングアッセンブリを座部材に載せた後、連結部材の第1の係合部をリングアッセンブリを通過させて座部材の第1の溝部の部位まで挿入する時に、第1の係合部の軸方向外側角部が、リングアッセンブリの締め付けナットに近い側の内周角部によって、面取り部位で容易に押されて内周側に弾性変形し、第1の溝部の部位まで来た時に弾性で戻ることにより、第1の係合部を第1の溝部に容易に突入させることができる。
【0016】
上記(6)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、第2の係合部の軸方向外側角部は面取りされているので、リングアッセンブリを座部材に載せ、連結部材を座部材に組み付けた後に、締め付けナットの第2の溝部を連結部材の第2の係合部を通過させて締め付けナットをリングアッセンブリ上に組み付けていく時に、第2の係合部の外周角部の面取り部が締め付けナットの内周角部によって押されて内周側に弾性変形し、第2の溝部が第2の係合部の位置まで来た時に、第2の係合部が弾性で戻ることにより、第2の係合部を第2の溝部に容易に突入させることができる。
【0017】
上記(7)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、リングアッセンブリが、ボルト軸力が適正軸力より大の過剰軸力になったことを検知する過剰軸力検知構造を有するので、第2の軸力管理リングの回転が拘束されたか否かを検知することによりボルト軸力が過剰となったことを検知することができる。
また、ボルト軸力が過剰締め付け軸力になったことを検知した時に締め付けナットを締め付け回転方向と逆方向に若干量戻すことによりボルトに過剰軸力がかかることを防止できる。
【0018】
上記(8)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、リングアッセンブリが、弾性変形リングと第1の軸力管理リングと第2の軸力管理リングを含み、弾性変形リングと第1の軸力管理リングとの間にはボルト軸力が適正軸力以上でゼロとなる第1の隙間があり、第1の軸力管理リングと第2の軸力管理リングとの間にはボルト軸力が過剰軸力以上でゼロとなる第2の隙間があるので、第1の軸力管理リングの回転が拘束されているが第2の軸力管理リングの回転は拘束されていない状態がボルトの適正軸力範囲となり、第1の軸力管理リングと第2の軸力管理リングが回転するか否かを検知することにより、ボルトが適正軸力範囲にあるか否かを容易に確認することができる。
【0019】
上記(9)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、第2の軸力管理リングには、第1の軸力管理リングに対向する面に周方向全周にわたって延びる防水リング溝が形成されており、該防水リング溝に弾性材の防水リングが嵌められているので、第2の軸力管理リングには、第1の軸力管理リングとの間の隙間(第2の隙間)を通して水が第1、第2の軸力管理リング内に侵入することを防止することができる。水侵入による錆付きなどによって第1、第2の軸力管理リングが回転しない場合を、軸力が所定値になって軸力管理リングが回転しなくなったものと誤認定することを防止できる。
【0020】
上記(10)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、防水リングは、非円形の断面を有し、防水リング溝の外側側面と隙間無く密着する外周面を有するので、防水リングと防水リング溝の外側側面との間に泥水が侵入してそこで固まることを防止することができる。防水リングと防水リング溝の外側側面との間に泥水が侵入し固まることによって第2の軸力管理リングが回転しない場合を、軸力が所定値になって第2の軸力管理リングが回転しなくなったものと誤認定することを防止できる。
【0021】
上記(11)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、第1の軸力管理リングは、ボルト軸力が適正軸力になる前は回転自在であり、ボルト軸力が適正軸力以上でかつ適正軸力より大の過剰軸力になる前は回転に抵抗を伴い、ボルト軸力が前記過剰軸力になった後は回転が拘束されるので、第1の軸力管理リングの回転が拘束されたか否かを検知することによりボルト軸力が過剰となったことを検知することができる。
また、ボルト軸力が過剰締め付け軸力になったことを検知した時に締め付けナットを締め付け回転方向と逆方向に若干量戻すことによりボルトに過剰軸力がかかることを防止できる。
【0022】
上記(12)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、第1の軸力管理リングは2つ割りの樹脂性部品からなるので、軸力管理ナットアッセンブリ組み付け後においても、第1の軸力管理リングの組み付け、取り外しおよび交換は可能である。第1の軸力管理リングが樹脂性部品の場合、経年劣化のおそれがあるので、第1の軸力管理リングが取り外しおよび交換可能であることが必要である。
【0023】
上記(13)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、リングアッセンブリが、弾性変形リングと、第1の軸力管理リングを含み、弾性変形リングと第1の軸力管理リングとの間には第1の隙間があり、ボルト軸力が適正軸力になる前は弾性変形リングと第1の軸力管理リングとの間に第1の隙間が存在して第1の軸力管理リングは回転自在であり、ボルト軸力が適正軸力になった時に第1の隙間がゼロとなり弾性変形リングと第1の軸力管理リングとの摩擦力によって第1の軸力管理リングの回転に抵抗が生じ、ボルト軸力が過剰軸力になった時に弾性変形リングと第1の軸力管理リングとの摩擦力が大となって第1の軸力管理リングの回転が拘束されるので、第1の軸力管理リングが回転するが第1の軸力管理リングの回転に抵抗が生じている状態がボルトの適正軸力範囲となり、その状態を検知することによりボルトが適正軸力範囲にあるか否かを容易に確認することができる。
【0024】
上記(14)の軸力管理ナットアッセンブリによれば、リングアッセンブリが、弾性変形リングと、第1の軸力管理リングと、弾性変形リングと第1の軸力管理リングとの間に配置された防水リングを含み、弾性変形リングと第1の軸力管理リングとの間には第1の隙間があり、ボルト軸力が適正軸力になる前は弾性変形リングと第1の軸力管理リングとの間に第1の隙間が存在して第1の軸力管理リングは回転自在であり、ボルト軸力が適正軸力になった時に第1の隙間がゼロとなり弾性変形リングと第1の軸力管理リングとの摩擦力と弾性変形リングと防水リングとの摩擦力によって第1の軸力管理リングの回転に抵抗が生じ、ボルト軸力が過剰軸力になった時に弾性変形リングと第1の軸力管理リングとの摩擦力および弾性変形リングと防水リングとの摩擦力が大となって第1の軸力管理リングの回転が拘束されるので、第1の軸力管理リングが回転するが第1の軸力管理リングの回転に抵抗が生じている状態がボルトの適正軸力範囲となり、その状態を検知することによりボルトが適正軸力範囲にあるか否かを容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の軸力管理ナットアッセンブリを、図1−図8を参照して、説明する。
図中、図1は本発明の実施例1を示し、図5−図8は本発明の実施例2を示す。図2−図4は本発明の実施例1、実施例2に適用される。
本発明の実施例1、2にわたって共通する、または類似する部分には本発明の実施例1、2にわたって同じ符号を付してある。
【0026】
まず、本発明の実施例1、2にわたって共通する、または類似する部分を図1−図4を参照して説明する。
図1は、本発明の軸力管理ナットアッセンブリ10が、従来のハブナット9(図9、図10)に代えて、トラック、バスを含む車両の、ホイール1をハブ2に取付けるための、ハブボルト3に螺合された場合を示す。ただし、適用対象は車両のホイールをハブに取付けるためのハブナットに限るものではない。ホイール1はディスクホイールでブレーキドラム5と共にハブ2に取り付けられる。
【0027】
本発明の軸力管理ナットアッセンブリ10は、座部材11と、座部材11に対して相対回転される締め付けナット12と、座部材11と締め付けナット12との間に介装される1以上のリング14、15、(16、17)を有するリングアッセンブリ13と、座部材11と締め付けナット12を、座部材11と締め付けナット12の相対回転を許容しつつ、互いに軸方向に分離しないように連結する連結部材18と、を備えている。図1では、球面座(図9に示したJIS取付けの座)をもつ座部材11を示しているが、座部材11は平面座(図10に示したISO取付けの座)をもつ座部材11であってもよい。ボルト3、座部材11、締め付けナット12は金属製である。
【0028】
リングアッセンブリ13は、弾性変形リング14(変形可能なリングで、変形に少なくとも弾性変形(弾塑性変形でも可)を伴う)を含んでいる。弾性変形リング14は締め付けナット12の回転締め付け時にほとんど回転しない非回転部材である。弾性変形リング14は、断面がボルト軸芯に直交する方向に延びる、金属製板状部材であり、皿バネにくらべて大きな荷重を伝達することができる。図1では、締め付けナット12が外周部に、軸方向に弾性変形リング14側に突出し弾性変形リング14を押圧する凸部12aを一体に有しているが、一体構造の代わりに、この凸部12aを締め付けナット12と別体で形成して、締め付けナット12が締め付けナット12とは別体の凸部を介して弾性変形リング14を押圧する構造としてもよい。
【0029】
リングアッセンブリ13は、ボルト軸力が適正軸力になる前は回転自在であり、ボルト軸力が適正軸力以上で回転が拘束されるかまたは回転に抵抗が生じる(回転はするが回転に抵抗を伴う)第1の軸力管理リング15を含む。ボルトにボルト軸力がかかる前の状態において、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間には隙間G1 (第1の隙間)が存在する。第1の軸力管理リング15は、金属製であるか、プラスチック製である。ただし、硬質ウレタンでもよい。
【0030】
連結部材18は、ほぼ筒状の部材であり、ハブボルト3の外周と、弾性変形リング14および座部材11の上端部および締め付けナット12の下端部の内周との間の環状のスペースに、配置される。連結部材18は、軸方向一端部に座部材11と軸方向に係合する第1の係合部18aと、軸方向他端部に締め付けナット12と軸方向に係合する第2の係合部18bを有する。第1の係合部18aと第2の係合部18bは、連結部材18の筒状部外周面よりも半径方向外側に向かって延びている。
【0031】
座部材11は内周に周方向に全周にわたって延びる第1の溝部21を有し、連結部材18の、半径方向外方に突出する第1の係合部18aは、第1の溝部21に突入し、軸方向に係合している。締め付けナット12は内周に周方向に全周にわたって延びる第2の溝部22を有し、連結部材18の、半径方向外方に突出する第2の係合部18bは第2の溝部22に突入し、軸方向に係合している。これによって、座部材11と連結部材18とは、連結部材18によって軸方向に連結され、ばらばらにならない。座部材11と連結部材18との間にはリングアッセンブリ13が設けられているので、座部材11と連結部材18とリングアッセンブリ13は軸方向にばらばらにならず(個々に分離せず)、アッセンブリ化されている。
【0032】
連結部材18は、望ましくは、プラスチック(合成樹脂、ウレタン等)からなり、弾性変形可能である。ただし、連結部材18は、プラスチック以外の材料、たとえば金属から構成されてもよい。連結部材18の、第1の係合部18a、第2の係合部18bを、座部材11と連結部材18とリングアッセンブリ13の内周側を軸方向に通して、座部材11と連結部材18に組み付ける時に、第1の係合部18a、第2の係合部18bを内周側に弾性変形させて撓ませ、第1の係合部18a、第2の係合部18bが第1の溝部21、第2の溝部22の部位に来たときに復元させて第1の係合部18a、第2の係合部18bを第1の溝部21、第2の溝部22に突入させる。
【0033】
図3、図4に示すように、連結部材18は、連結部材18の軸方向一端部から連結部材18の軸方向他端部に向かって連結部材18の軸方向途中位置まで軸方向に延びる第1のスリット18cと、連結部材18の軸方向他端部から連結部材18の軸方向一端部に向かって連結部材18の軸方向途中位置まで軸方向に延びる第2のスリット18dとを、有する。これによって、連結部材18の第1の係合部18a、第2の係合部18bが内周側に撓みやすくなっている。
【0034】
第1の係合部18aの軸方向外側角部は面取りされており(面取り部を符号18eで示す)、リングアッセンブリ13の弾性変形リング14の締め付けナット12に近い側の内周角部は面取りされている(面取り部を符号14aで示す)。
同様に、第2の係合部18bの軸方向外側角部は面取りされている(面取り部を符号18fで示す)。
【0035】
つぎに、上記の本発明の実施例1と実施例2にわたって共通する、または類似する部分による、作用、効果を説明する。
まず、ナットアッセンブリ10は、座部材11と締め付けナット12を、座部材11と締め付けナット12の相対回転を許容しつつ、互いに軸方向に分離しないように連結する連結部材18を有し、この連結部材18が、軸方向一端部に座部材11と軸方向に係合する第1の係合部18aと、軸方向他端部に締め付けナット12と軸方向に係合する第2の係合部18bを有する、筒状部材からなるので、筒状部材の第1の係合部18aと座部材11との係合、および第2の係合部18bと締め付けナット12との係合により、ナットアッセンブリ10の構成部品を軸方向にばらばらにならないようにアッセンブリ化することができる。係合部18a、係合部18bは、連結部材18の成形時に連結部材18に予め形成しておくので、大きな軸力を必要とする金属製部材部分のかしめによらずに、形成でき、かしめのための設備、装置を必要とせず、かしめ工数も必要でない。
【0036】
また、1以上のリング14、15、16、17を有するリングアッセンブリ13が座部材11と締め付けナット12との間に介装され、連結部材18が座部材11と締め付けナット12とを連結しているので、連結部材18はナットアッセンブリ10の全構成部品(座部材11、1以上のリング14、15、16、17を有するリングアッセンブリ13、締め付けナット12)を軸方向にばらばらにならないようにアッセンブリ化する。これによって、ナット締め時における、部品の組み付け忘れや誤組み付けを防止することができる。
【0037】
また、締め付けナット12を座部材11に対して相対回転できるようにしたので、座部材11を製品1(たとえば、トラック、バス用ホイール、ただし、ホイールに限るものではない)に対して非回転のまま、締め付けナット12を回転させてハブボルト3に軸力を発生させることができる。その結果、座部材11と製品1との間の摩擦に影響されない精度の高い締め付け管理を行うことができる。
【0038】
また、第1の軸力管理リング15が回転しなくなる時のボルト軸力を適正ボルト軸力に設定したので、締め付けナット12にトルクをかけてボルト3に軸力をかけていく時に第1の軸力管理リング15が回転可能か否かを(手でさわるなどして)確認し、回転不可能となった時か若干増し締めして締め付けナット12の締め込みを停止すればよい。第1の軸力管理リング15が回転可能か否かの確認は、ゴム部材の膨出量の目視による測定(特開2002−181019号公報の測定)に比べて容易で、かつ、高精度である。第1の軸力管理リング15の外周に半径方向外側に突出する突出部15cを形成しておくことにより、第1の軸力管理リング15を容易に回転操作することができ、第1の軸力管理リング15が回転可能か否かの確認が容易となる。
【0039】
座部材11が内周に周方向に全周にわたって延び第1の溝部21を有し、連結部材18の第1の係合部18aが半径方向外方に突出して第1の溝部21に突入しており、締め付けナット12が内周に周方向に全周にわたって延び第2の溝部22を有し、連結部材18の第2の係合部18bが半径方向外方に突出して第2の溝部22に突入しているので、第1の係合部18aと座部材11との係合および第2の係合部18bと締め付けナット12との係合に、組み付け後のかしめが必要でない。すなわち、連結部材18の第1、第2の係合部18a、18bの形成には、組み立て後のかしめが必要でなく、連結部材18の成形時に予め成形で形成すればよい。
【0040】
また、連結部材18がプラスチック(合成樹脂、ウレタン、等)からなり弾性変形可能である場合は、第1の係合部18aが第1の溝部21に突入するのに連結部材18の弾性を利用することができ、第2の係合部18bが第2の溝部22に突入するのに連結部材18の弾性を利用することができる。したがって、連結部材18によるナットアッセンブリ10の全構成部品11、12、13(14、15、16、17)の連結に大きな力が必要でなく、特別な設備、工程が必要でない。
【0041】
また、連結部材18が、連結部材18の軸方向一端部から連結部材18の軸方向他端部に向かって連結部材18の軸方向途中位置まで軸方向に延びる第1のスリット18cと、連結部材18の軸方向他端部から連結部材18の軸方向一端部に向かって連結部材18の軸方向途中位置まで軸方向に延びる第2のスリット18dとを、有する場合は、軸力管理ナットアッセンブリ10の全構成部品11、12、13(14、15、16、17)を連結部材18により連結するときに連結部材18を弾性変形させやすくなり、軸力管理ナットアッセンブリ10の組み立て、アッセンブリ化が容易である。
【0042】
また、第1の係合部18aの軸方向外側角部に面取り部18eが形成されており、リングアッセンブリ13の締め付けナット12に近い側の内周角部に面取り部14aが形成されている場合は、リングアッセンブリ13を座部材11に載せた後、連結部材18の第1の係合部18aをリングアッセンブリ13を通過させて座部材11の第1の溝部21の位置まで挿入する時に、第1の係合部18aの軸方向外側角部が、リングアッセンブリ13の締め付けナット12に近い側の内周角部によって、面取り部14aで容易に押されて内周側に弾性変形し、第1の溝部21の部位まで来た時に弾性で元の位置に戻ることにより、第1の係合部18aを第1の溝部21に容易に突入させることができる。
【0043】
第2の係合部18bの軸方向外側角部連結部材18が面取りされている場合は、リングアッセンブリ13を座部材11に載せ、連結部材18を座部材11に組み付けた後に、締め付けナット12の第2の溝部22を連結部材18の第2の係合部18bを通過させて、締め付けナット12をリングアッセンブリ13上に組み付けていく時に、第2の係合部18bの外周角部の面取り部18fが締め付けナット12の内周角部によって押されて内周側に弾性変形し、第2の溝部22が第2の係合部18bの位置まで来た時に、第2の係合部18bが弾性で元の位置に戻ることにより、第2の係合部18bを第2の溝部22に容易に突入させることができる。したがって、連結部材18を押し込んでいくだけで連結部材18を座部材11に組み付けることができ、その後、締め付けナット12を押し込んでいくだけで締め付けナット12を連結部材18に組み付けることができる。このため、軸力管理ナットアッセンブリ10のアッセンブリ化は容易である。
【0044】
つぎに、本発明の各実施例に特有な構成、作用、効果を説明する。
〔実施例1〕−−−図1−図4
本発明の実施例1においては、図1−図4に示すように、リングアッセンブリ13は、さらに、ボルト軸力が適正軸力より大の過剰軸力になるまでは回転自在でありボルト軸力が過剰軸力以上で回転が拘束される第2の軸力管理リング16を含んでいる。ボルトにボルト軸力がかかる前の状態において、第1の軸力管理リング15と第2の軸力管理リング16との間には隙間G2 (第2の隙間)が存在する。ボルトにボルト軸力がかかる前の状態において、第2の軸力管理リング16は第1の軸力管理リング15に、隙間G2 (第2の隙間)をもって、隣接する。第2の軸力管理リング16は、望ましくは、金属製である。ただし、第2の軸力管理リング16はプラスチック、硬質ウレタンでもよい。
【0045】
第1の軸力管理リング15は、座部材11の上端部に形成された第1の段差部19にボルト3に適正ボルト軸力がかかる前の段階で、回転自在に装着される。第2の軸力管理リング16は、座部材11の第1の段差部19のすぐ下の部分に形成された第2の段差部20にボルト3に過剰軸力がかかる前の段階で、回転自在に装着される。
【0046】
ボルト軸力がかかって弾性変形リング14が第1の軸力管理リング15側に弾性変形していくと、ボルト軸力が適正ボルト軸力に到達した時に、第1の隙間G1 がゼロになって弾性変形リング14が第1の軸力管理リング15に圧接され、第1の軸力管理リング15の回転が拘束される。さらにボルト軸力が増大されていくと、第1の軸力管理リング15が第2の軸力管理リング16側に弾性変形し、所定の過剰ボルト軸力に到達した時に第1の軸力管理リング15が第2の軸力管理リング16に圧接されて第2の軸力管理リング16の回転が拘束される。第1の軸力管理リング15の回転が拘束されたか否かを検知することによりボルト軸力が適正となったことを検知することができ、第2の軸力管理リング16の回転が拘束された否かを検知することによりボルト軸力が過剰となったことを検知することができる。
【0047】
第2の軸力管理リング16には、第1の軸力管理リング15に対向する面に周方向全周にわたって延びる防水リング溝(防水リング凹部、または、防水リング切り欠きといってもよい)23が形成されており、防水リング溝23に弾性材(たとえば、ゴム、ウレタン等)の防水リング17が嵌められている。防水リング溝23は、図1に示すように、第2の軸力管理リング16を断面L字状に形成し、第2の軸力管理リング16を断面L字状の内周面および底面と座部材11の外周面とで、形成してもよい。
【0048】
本発明の実施例1では、防水リング17は、非円形の断面を有し、防水リング溝23の外側側面24と隙間無く密着する外周面17aを有することが望ましい。これによって、防水リング17の外周面17aと防水リング溝23の外側側面24との間に泥や水が溜まることが防止される。防水リング17は、外周面17aを有する縦壁17bと、縦壁17bの上下方向途中から分岐して内周側に延び縦壁17bを倒れないように支持する支持壁17cを有する。
【0049】
第1の軸力管理リング15の厚さの寸法精度を厳しくすることなく、第1の軸力管理リング15と弾性変形リング14との間の隙間(第1の隙間)G1 の隙間の寸法を高精度で出すために、第1の軸力管理リング15の弾性変形リング14に対向する面に凸部15aを形成し、反対側の面からプレスして凹ませ(凹部15b)高さの寸法精度が高い凸部15aを成形により形成することが望ましい。
第1の軸力管理リング15を手で容易に回転させることができるように、第1の軸力管理リング15の外周に半径方向外側に突出する突出部15cを形成しておくことが望ましい。
【0050】
つぎに、本発明の実施例1の作用、効果を説明する。
リングアッセンブリ13が、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15と第2の軸力管理リング16を含む。弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間にはボルト軸力が適正軸力以上でゼロとなる第1の隙間G1 があり、第1の軸力管理リング15と第2の軸力管理リング16との間にはボルト軸力が過剰軸力以上でゼロとなる第2の隙間G2 があるので、第1の軸力管理リング15の回転が拘束されているが第2の軸力管理リング16の回転は拘束されていない状態がボルトの適正軸力範囲となる。そのため、第1の軸力管理リング15と第2の軸力管理リング16が回転するか否かを検知することにより、ボルト3が適正軸力範囲にあるか否かを容易に確認することができる。
【0051】
また、リングアッセンブリ13が、ボルト軸力が適正軸力より大の過剰軸力になったことを検知する第2の軸力管理リング16を有するので、第2の軸力管理リング16の回転が拘束されたか否かを検知することにより、ボルト軸力が過剰となったことを検知することができる。また、ボルト軸力が過剰締め付け軸力になったことを検知した時に締め付けナット12を締め付け回転方向と逆方向に若干量戻すことによりボルト3に過剰軸力がかかることを防止できる。
【0052】
第2の軸力管理リング16には、第1の軸力管理リング15に対向する面に周方向全周にわたって延びる防水リング溝23が形成されており、防水リング溝23に弾性材の防水リング17が嵌められているので、第2の軸力管理リング16には、第1の軸力管理リング15との間の隙間(第2の隙間G2 )を通して水が第1、第2の軸力管理リング15、16内に侵入することを防止することができる。その結果、水侵入による錆付きなどによって第1、第2の軸力管理リング15、16が回転しない場合を、ボルト軸力が所定値になって第1、第2の軸力管理リング15、16が回転しなくなったものと誤認定することを防止できる。
【0053】
また、防水リング17は、非円形の断面を有し、防水リング溝23の外側側面24と隙間無く密着する外周面17aを有するので、防水リング17と防水リング溝23の外側側面24との間に泥水が侵入してそこで固まることを防止することができる。防水リング17と防水リング溝23の外側側面24との間に泥水が侵入し固まることによって第2の軸力管理リング16が回転しない場合を、ボルト軸力が所定値になって第2の軸力管理リング16が回転しなくなったものと誤認定することを防止できる。
【0054】
〔実施例2〕−−−図5−図8および図2−図4
本発明の実施例2においては、図2−図8に示すように、リングアッセンブリ13は、弾性変形リング14と、第1の軸力管理リング15を含む。実施例2のリングアッセンブリ13は、実施例1の第2の軸力管理リング16を含まない。第1の軸力管理リング15は、座部材11に形成された第1の段差部19に装着される。
【0055】
図6に示すように、第1の軸力管理リング15は2つ割りの樹脂性部品から構成されてもよい。この場合、第1の軸力管理リング15の2つ割り部品の一方の周方向端面に周方向に突出する周方向凸部15dを、第1の軸力管理リング15の2つ割り部品の他方の周方向端面に周方向に突出する周方向凹部15eを形成しておいて、第1の軸力管理リング15の軸力管理ナットアッセンブリ10への組み付け時に、周方向凸部15dを周方向凹部15eに嵌入させて、2つ割り部品を単一の環状部品に組み立てることにより、容易に第1の軸力管理リング15を単一の環状部品に組み立てることができる。
【0056】
第1の軸力管理リング15は、ボルト軸力が適正軸力になる前は回転自在であり、ボルト軸力が適正軸力以上でかつ適正軸力より大の過剰軸力になる前は回転に抵抗を伴い、ボルト軸力が過剰軸力になった後は回転が拘束される。
【0057】
図5に示すように、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間には第1の隙間G1 がある。ボルト軸力が適正軸力になる前は弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間に第1の隙間G1 が存在して第1の軸力管理リング15は回転自在である。ボルト軸力が適正軸力になった時に第1の隙間G1 がゼロとなり、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との摩擦力によって第1の軸力管理リング15の回転に抵抗が生じ、第1の軸力管理リング15は回転可能ではあるが、第1の軸力管理リング15の回転は重くなる。ボルト軸力が過剰軸力になった時に、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との摩擦力が大となって、第1の軸力管理リング15の回転が拘束される。
【0058】
本発明の実施例2では、図7、図8に示すように、リングアッセンブリ13は、さらに、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間に配置された防水リング17を含んでもよい。ただし、防水リング17を含まなくてもよい。防水リング17を含む場合は、第1の軸力管理リング15の弾性変形リング14に対向する面のうち凸部15aより半径方向内側の部位に防水リング溝23が形成されて、この防水リング溝23に防水リング17がはめ込まれる。防水リング17は、たとえば中空のゴムOリングからなり、弾性変形リング14が第1の隙間G1 が無くなる程に弾性変形して、防水リング17が断面の中空部がなくなる程に圧縮されると、急激に圧縮反力を増し、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間の防水リング17を介しての摩擦力を増す。
防水リング17を含む場合は、第1の軸力管理リング15の回転はつぎのようになる。弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間には第1の隙間G1 がある。ボルト軸力が適正軸力になる前は、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間に第1の隙間G1 が存在して、第1の軸力管理リング15は回転自在である。ボルト軸力が適正軸力になった時に第1の隙間G1 がゼロとなり、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との摩擦力と、弾性変形リング14と防水リング17(図7に示すように断面がつぶれていない状態にある防水リング17)との摩擦力によって、第1の軸力管理リング15の回転に抵抗が生じる。ボルト軸力が過剰軸力になった時に、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との摩擦力、および弾性変形リング14と防水リング17(図8に示すように断面がつぶれた状態にあり、それによって摩擦力を急激に増大させる防水リング17)との摩擦力が大となって、第1の軸力管理リング15の回転が拘束される。
【0059】
つぎに、本発明の実施例2の作用、効果を説明する。
本発明の実施例2の軸力管理ナットアッセンブリ10では、第1の軸力管理リング15は、ボルト軸力が適正軸力になる前は回転自在であり、ボルト軸力が適正軸力以上でかつ適正軸力より大の過剰軸力になる前は回転に抵抗を伴い、ボルト軸力が過剰軸力になった後は回転が拘束されるので、第1の軸力管理リング15の回転が重くなったことを検知することによりボルト軸力が適正範囲にあることを知ることができる。
また、第1の軸力管理リング15の回転が拘束されたか否かを検知することによりボルト軸力が過剰となったことを検知することができる。この場合、ボルト軸力が過剰締め付け軸力になったことを検知した時に締め付けナット12を締め付け回転方向と逆方向に若干量戻すことによりボルトに過剰軸力がかかることを防止できる。
【0060】
また、第1の軸力管理リング15が2つ割りの樹脂性部品からなる場合は、軸力管理ナットアッセンブリ10の組み付け後においても、第1の軸力管理リング15の組み付け、取り外しおよび交換は可能である。第1の軸力管理リング15が樹脂性部品の場合、経年劣化のおそれがあるので、第1の軸力管理リング15が取り外しおよび交換可能であることが必要である。
【0061】
また、図5に示すように、リングアッセンブリ13が、弾性変形リング14と、第1の軸力管理リング15を含むが、防水リング17を含まない場合は、第1の軸力管理リング15の回転と、回転の抵抗と、回転の拘束はつぎのようになる。
すなわち、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間には第1の隙間G1 があり、ボルト軸力が適正軸力になる前は、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間に第1の隙間G1 が存在して第1の軸力管理リング15は回転自在である。ボルト軸力が適正軸力になった時に、第1の隙間G1 がゼロとなり、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との摩擦力によって第1の軸力管理リング15の回転に抵抗が生じる。ボルト軸力が過剰軸力になった時に、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との摩擦力が大となって第1の軸力管理リング15の回転が拘束(停止)される。したがって、第1の軸力管理リング15が回転するが第1の軸力管理リング15の回転に抵抗が生じている状態がボルトの適正軸力範囲となり、たとえば第1の軸力管理リング15を手で回転させてその状態を回転の感触によって検知することにより、ボルトが適正軸力範囲にあるか否かを容易に確認することができる。
【0062】
また、図7、図8に示すように、リングアッセンブリ13が、弾性変形リング14と、第1の軸力管理リング15と、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間に配置された防水リング17を含む場合は、第1の軸力管理リング15の回転と、回転の抵抗と、回転の拘束はつぎのようになる。
すなわち、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間には第1の隙間G1 があり、ボルト軸力が適正軸力になる前は、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間に第1の隙間G1 が存在して、第1の軸力管理リング15は回転自在である。ボルト軸力が適正軸力になった時に、第1の隙間G1 がゼロとなり、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との摩擦力と、弾性変形リング14と防水リング17との摩擦力によって、第1の軸力管理リング15の回転に抵抗が生じる。ボルト軸力が過剰軸力になった時に、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との摩擦力、および弾性変形リング14と防水リング17との摩擦力が大となって、第1の軸力管理リング15の回転が拘束される。したがって、第1の軸力管理リング15が回転するが第1の軸力管理リング15の回転に抵抗が生じている状態が、ボルトの適正軸力範囲となり、その状態を検知することによりボルトが適正軸力範囲にあるか否かを容易に確認することができる。
また、防水リング17を設けた場合は、弾性変形リング14と第1の軸力管理リング15との間に汚泥が進入することが抑制され、第1の軸力管理リング15の回転が汚泥によって左右されにくくなるので、第1の軸力管理リング15の回転性を検知することが、より高精度となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例1の軸力管理ナットアッセンブリとその近傍の構造の断面図である。
【図2】本発明の実施例1、2の軸力管理ナットアッセンブリの平面図である。
【図3】本発明の実施例1、2の軸力管理ナットアッセンブリの連結部材の平面図である。
【図4】図3の連結部材の断面図である。
【図5】本発明の実施例2の軸力管理ナットアッセンブリとその近傍の構造の断面図である。
【図6】本発明の実施例2の軸力管理ナットアッセンブリの第1の軸力管理リングを取り出して示した第1の軸力管理リングの平面図である。
【図7】本発明の実施例2の、防水リングを含む場合の軸力管理ナットアッセンブリの、防水リングがつぶれていない状態の、防水リングとその近傍の構造の断面図である。
【図8】図7において、防水リングがつぶれた状態の、防水リングとその近傍の構造の断面図である。
【図9】従来の単輪用ハブナット(球面座)の断面図である。
【図10】従来の単輪用ハブナット(平面座)の断面図である。ただし、平面座の座部材は本発明の軸力管理ナットアッセンブリにも適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 ホイール
2 ハブ
3 ハブボルト
4 ナット座
5 ブレーキドラム
9 (従来の)ハブナット
10 軸力管理ナットアッセンブリ
11 座部材
12 締め付けナット
12a 凸部
13 リングアッセンブリ
14 弾性変形リング
15 第1の軸力管理リング
15a 凸部
15b 凹部
15c 突出部
15d 周方向凸部
15e 周方向凹部
17 防水リング
17a 外周面
17b 縦壁
17c 支持壁
18 連結部材
18a 第1の係合部
18b 第2の係合部
18c 第1のスリット
18d 第2のスリット
18e 第1の面取り部
18f 第2の面取り部
19 第1の段差部
20 第2の段差部
21 第1の溝部
22 第2の溝部
23 防水リング溝
24 外側側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部材と、
座部材に対して相対回転される締め付けナットと、
座部材と締め付けナットとの間に介装される、1以上のリングを有するリングアッセンブリと、
前記座部材と前記締め付けナットを、前記座部材と前記締め付けナットの相対回転を許容しつつ、互いに軸方向に分離しないように連結する連結部材と、
を備え、
前記リングアッセンブリが、ボルト軸力が適正軸力になる前は回転自在でありボルト軸力が適正軸力以上で回転が拘束されるかまたは回転に抵抗を伴う第1の軸力管理リングを含み、
前記連結部材が、筒状部材であり、軸方向一端部に前記座部材と軸方向に係合する第1の係合部と、軸方向他端部に前記締め付けナットと軸方向に係合する第2の係合部を有する、軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項2】
前記座部材は内周に周方向に全周にわたって延びる第1の溝部を有し、前記連結部材の前記第1の係合部は半径方向外方に突出し前記第1の溝部に突入しており、前記締め付けナットは内周に周方向に全周にわたって延びる第2の溝部を有し、前記連結部材の前記第2の係合部は半径方向外方に突出し前記第2の溝部に突入している、請求項1記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項3】
前記連結部材がプラスチックからなり弾性変形可能である請求項1または請求項2記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項4】
前記連結部材が、連結部材の軸方向一端部から連結部材の軸方向他端部に向かって連結部材の軸方向途中位置まで軸方向に延びる第1のスリットと、連結部材の軸方向他端部から連結部材の軸方向一端部に向かって連結部材の軸方向途中位置まで軸方向に延びる第2のスリットとを、有する請求項3記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項5】
前記第1の係合部の軸方向外側角部は面取りされており、前記リングアッセンブリの前記締め付けナットに近い側の内周角部は面取りされている請求項1−請求項4の何れか一項記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項6】
前記第2の係合部の軸方向外側角部は面取りされている請求項1−請求項5の何れか一項記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項7】
前記リングアッセンブリが、ボルト軸力が適正軸力より大の過剰軸力になる前は回転自在でありボルト軸力が過剰軸力以上で回転が拘束される第2の軸力管理リングを含んでいる請求項1記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項8】
前記リングアッセンブリが、弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングと前記第2の軸力管理リングを含み、弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの間にはボルト軸力が適正軸力以上でゼロとなる第1の隙間があり、前記第1の軸力管理リングと前記第2の軸力管理リングとの間にはボルト軸力が過剰軸力以上でゼロとなる第2の隙間がある請求項7記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項9】
前記第2の軸力管理リングには、前記第1の軸力管理リングに対向する面に周方向全周にわたって延びる防水リング溝が形成されており、該防水リング溝に弾性材の防水リングが嵌められている請求項7記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項10】
前記防水リングは、非円形の断面を有し、防水リング溝の外側側面と隙間無く密着する外周面を有する請求項9記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項11】
前記第1の軸力管理リングは、ボルト軸力が適正軸力になる前は回転自在であり、ボルト軸力が適正軸力以上でかつ適正軸力より大の過剰軸力になる前は回転に抵抗を伴い、ボルト軸力が前記過剰軸力になった後は回転が拘束される請求項1記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項12】
前記第1の軸力管理リングは2つ割りの樹脂性部品からなる請求項11記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項13】
前記リングアッセンブリが、弾性変形リングと、前記第1の軸力管理リングを含み、前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの間には第1の隙間があり、ボルト軸力が適正軸力になる前は前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの間に前記第1の隙間が存在して前記第1の軸力管理リングは回転自在であり、ボルト軸力が適正軸力になった時に前記第1の隙間がゼロとなり前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの摩擦力によって前記第1の軸力管理リングの回転に抵抗が生じ、ボルト軸力が過剰軸力になった時に前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの摩擦力が大となって前記第1の軸力管理リングの回転が拘束される請求項11記載の軸力管理ナットアッセンブリ。
【請求項14】
前記リングアッセンブリが、弾性変形リングと、前記第1の軸力管理リングと、前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの間に配置された防水リングを含み、前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの間には第1の隙間があり、ボルト軸力が適正軸力になる前は前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの間に前記第1の隙間が存在して前記第1の軸力管理リングは回転自在であり、ボルト軸力が適正軸力になった時に前記第1の隙間がゼロとなり前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの摩擦力と前記弾性変形リングと前記防水リングとの摩擦力によって前記第1の軸力管理リングの回転に抵抗が生じ、ボルト軸力が過剰軸力になった時に前記弾性変形リングと前記第1の軸力管理リングとの摩擦力および前記弾性変形リングと前記防水リングとの摩擦力が大となって前記第1の軸力管理リングの回転が拘束される請求項11記載の軸力管理ナットアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−8344(P2008−8344A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177503(P2006−177503)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)