説明

軸継手のセンタリング方法および軸継手のセンタリング装置

【課題】原動機の回転軸と動作機器の回転軸と連結する軸継手の2軸の芯出し(センタリング)を感だけに頼らずに行うことを可能とする。
【解決手段】原動機の回転軸(14)先端に設けられた主フランジ(22)および動作機器の回転軸(18)先端に設けられた従フランジ(24)からなる軸継手(26)を仮止めにより連結した状態で一体的に回転させた際に、主フランジの対向面の一点とこの点に対向する従フランジの対向面の一点との軸方向の相対距離および径方向の相対距離の変化を計測することで、原動機の回転軸の軸芯(14a)と動作機器の回転軸の軸芯(18a)との芯ずれを算出し、その値を基に動作機器または原動機の水平方向および垂直方向の向きおよび位置を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、エンジンなどの原動機の回転軸と、原動機の回転動力を利用して稼動するポンプや発電機などの動作機器の回転軸とを、それぞれの回転軸の先端に設けたフランジを対向させた状態で接続することで連結する軸継手において、2軸の芯出し(センタリング)を経験や感だけに頼らずに行うための軸継手のセンタリング方法および軸継手のセンタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータなどの原動機の回転軸とポンプなどの動作機器の回転軸を軸継手(カップリング)を用いて連結する場合、それぞれの回転軸の芯出し(センタリング)を行うことは非常に重要である。これはもし芯出しが完全に行われておらずその回転軸の軸芯にずれがあると、エネルギーロスが生じるだけでなく、振動の発生によって原動機や動作機器に不具合や破損を招きその耐用年数を極端に縮めることとなるためである。なお芯出しの僅かなずれを吸収するために、軸継手を構成するフランジ同士を固定するための複数のボルト穴にゴム管を配置したり、フランジ間にゴムを挟止することも多いが、その場合であっても芯出しを完全に行うことは重要である。これは芯出しにずれがあると、フランジ間に挟止等されたゴムに圧縮力や引張力がモータの回転中繰り返し作用し、ゴムの早期劣化を招くためである。
【0003】
従来より軸継手の芯出しは、軸継手に例えば特許文献1に記載されているような治具とこれに取り付けたダイヤルゲージとを用いて軸芯のずれを数点において計測し、その計測値を基に、モータの脚をなす固定座を水平方向にずらすとともに固定座の下に適当な厚みのライナー(金属薄板)を挟み込むことで行われていた。
【特許文献1】特開2002−122406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで芯出し作業におけるモータの高さおよびポンプ回転軸軸芯からの垂直方向の傾斜角の調整は、適当な厚みのライナーを選択し、選択したライナーをモータの固定座の下に挟み込んだ後に、その結果を再びダイヤルゲージで計測するという作業を、軸芯のずれが許容値以内になるまで繰り返すことによりよって行われていた。そのためこのライナー調整は経験や感に頼るところが多く、また調整作業に時間を要するといった問題があった。
【0005】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、 原動機の回転軸と動作機器の回転軸とを軸継手を用いて連結する際に、2軸の芯出し(センタリング)を経験や感だけに頼らずに行うための軸継手のセンタリング方法および軸継手のセンタリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、モータ、エンジンなどの原動機(12)の回転軸(14)と該原動機の回転動力を利用して稼動する動作機器(16)の回転軸(18)とを、原動機の回転軸先端に設けられた主フランジ(22)と動作機器の回転軸先端に設けられた従フランジ(24)とを対向させて固定する構造の軸継手(26)を用いて連結する際の軸継手のセンタリング方法であって、前記主フランジおよび前記従フランジを仮止めにより連結した状態で一体的に回転させた際に、主フランジの対向面(23)の一点とこの点に対向する従フランジの対向面の一点との軸方向の相対距離および径方向の相対距離の変化を計測することで、原動機の回転軸の軸芯(14a)と動作機器の回転軸の軸芯(18a)との芯ずれを算出し、その値を基に動作機器または原動機の水平方向および垂直方向の向きおよび位置を調節する、ことを特徴とする。
【0007】
また請求項2および3に記載の発明は、モータ、エンジンなどの原動機(12)の回転軸(14)と該原動機の回転動力を利用して稼動する動作機器(16)の回転軸(18)とを、原動機の回転軸先端に設けられた主フランジ(22)と動作機器の回転軸先端に設けられた従フランジ(24)とを対向させて固定する構造の軸継手(26)を用いて連結する際の芯出しに使用するための軸継手のセンタリング装置であって、前記主フランジ(又は従フランジ)の外周縁との径方向距離を計測する垂直測距センサ(32)と、前記主フランジ(又は従フランジ)の外周縁との軸方向距離を計測する水平測距センサ(34)と、前記従フランジ(又は主フランジ)の外周縁に固定され、前記垂直測距センサおよび前記水平測距センサを保持するセンサ取付治具(36)と、前記垂直測距センサおよび前記水平測距センサによって計測した径方向距離および軸方向距離を表示する表示装置(38)と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
ここで請求項4に記載したように、前記主フランジ(22)および前記従フランジ(24)の外周縁の端部は対向面(23)と反対側に直角に屈曲してリング状の鍔部(27)を形成しており、前記センサ取付治具(36)は、前記鍔部を径方向に把持するクランプ部(42)と、該クランプ部から伸長し前記垂直測距センサ(32)および前記水平測距センサ(34)を主フランジと非接触に近接して保持するL字型のセンサ取付部(44)と、からなる、ものが用いられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の軸継手のセンタリング方法および軸継手のセンタリング装置では、原動機の回転軸先端の主フランジと動作機器の回転軸先端の従フランジとを仮止めして回転させた場合の所定位置におけるフランジ間の軸方向および径方向の距離の変化を計測することで、動作機器の軸芯に対して原動機の軸芯が垂直面内(および水平面内)でどのようにずれ、また垂直面内(および水平面内)でどのように傾いているのかを知ることができる。特にライナーを原動機の固定座の下に挟み込んで調節を行う必要があり、その調整作業に多くの時間を要していた原動機の軸芯の垂直面内での位置ずれおよび傾きの調整を、どのような厚みのライナーを選択し固定座のどの位置に入れればよいのかを容易に知ることができるため、経験や感に頼らずに迅速に芯出し作業を完了することができる。
【0010】
なお一般に主フランジおよび従フランジは同一の形状を有し、また円盤状のフランジの外周縁の端部はその対向面と反対側に垂直に屈曲することでリング状の鍔部が形成され、すなわちフランジの対向面の裏側(フランジの回転軸側)は凹状に窪んでいるため、この鍔部を利用して垂直測距センサおよび水平測距センサを支持するためのセンサ取付治具をクランプによって取り付けることで、その着脱を容易にしつつ所定位置におけるフランジ間の軸方向および径方向の距離の変化を計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、モータ、エンジンなどの原動機の回転軸とポンプや発電機などの動作機器の回転軸とを、それぞれの回転軸の先端に設けたフランジを対向させて接続することで連結する軸継手において、2軸の芯出し(センタリング)を感だけに頼らずに行うための軸継手のセンタリング方法および軸継手のセンタリング装置である。以下軸継手(カップリング)の構造を簡単に説明した後に、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1および図2は本発明のセンタリング装置が適用される軸継手の一例を示した図であり、図1は軸継手の斜視図、図2はその縦断面図(図2(a))および平面図(図2(b))である。
なおここに説明する軸継手は後述する硬質ゴムにより振動や軸芯の僅かなずれを吸収するいわゆるフランジ形たわみ軸継手であるが、硬質ゴムを用いることなく両フランジを堅固に固定するいわゆるフランジ形固定軸継手にも本発明を適用することができる。
【0013】
これらの図に示したように、この軸継手26は同一形状をした2つのフランジ22,24を対向させた状態で複数(計6本)のボルト・ナット51で固定する構造を有している。
両フランジ22,24は、例えばその外径が210mmで厚みが36mmで6つのボルト穴53が等間隔に形成された円盤部の中心部に、外径が100mmで高さが35mmの突起部55が形成されており、円盤部の一面側はその外周縁と突起部55との間が一部を除き窪んだ凹部となっている。すなわちこの円盤部には、平滑な面である対向面23とその裏面で突起部55が形成された回転軸面25とがあり、その円盤部の外周縁の端部は対向面23と反対側に垂直に屈曲することでリング状の鍔部27を形成している。なお対向面23の法線方向は突起部55の軸線方向と一致していることは当然である。
この円盤部に形成された6つのボルト穴53のうち3つのボルト穴はその内径が40mm程度であり、このボルト穴には中心に金属円管が挿入固定された円柱形状の硬質ゴム59が挿入される。なおボルトは実質的にはこの金属円管内に通され、また、この硬質ゴム59が挿入される各ボルト穴53の外周側部分の円盤部は数ミリ程度の肉厚で環状に立設している。この他の3つのボルト穴53はその内径が15mm程度であり、回転軸面25に形成された凹部の底部にボルトの頭が来るようになっている。すなわち対向させた両フランジを固定する6本のボルト・ナット51は、凹部の底部にボルトの頭が、硬質ゴム59上にナットがくるように、その挿入方向が互い違いで取り付けられる。
ここでボルトの頭部分には挿入したボルトの空転を防ぐために非円環形の回り止めワッシャ61が止着されている。
また突起部55には、硬質ゴム59を挿入するためのボルト穴53に沿う形で弧状の切り欠きが形成されている。この突起部55が破線で示した原動機の回転軸14および破線で示した動作機器の回転軸18の先端に形成された凹穴(図示せず)に嵌入されることで、軸継手26を構成する各22,24フランジが回転軸14,18の先端に取り付けられる。なお原動機の回転軸14の軸芯とその先端に取り付けられたフランジの回転軸の軸芯とは完全に一致し、また、動作機器の回転軸18の軸芯とその先端に取り付けられたフランジの回転軸の軸芯とは完全に一致するようになっている。
【0014】
以下、上述した軸継手26を用いて2軸を連結する場合に、2軸の芯出し(センタリング)を経験や感だけに頼らずに行うために使用する本発明の軸継手のセンタリング装置の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。以降、原動機の回転軸14先端に取り付けられたフランジを主フランジ22と、動作機器の回転軸18先端に取り付けられたフランジを従フランジ24というものとする。
【実施例1】
【0015】
図3は本実施例の軸継手のセンタリング装置10の全体構成を示した概念図である。この装置は概して、主フランジ22の外周縁との径方向距離を計測するための垂直測距センサ32と、主フランジ22の外周縁との軸方向距離を計測するための水平測距センサ34と、垂直測距センサ32および水平測距センサ34によって計測した径方向距離および軸方向距離を表示する表示装置38(変換器)と、計測した径方向距離および軸方向距離の値の変化から、原動機12に固定されて脚をなす固定座63の高さや傾き、水平方向の向きをどのように調整すれば軸継手26のセンタリングが達成されるかを算出してこれを表示する演算表示装置65と、従フランジ24の外周縁の鍔部27に固定され垂直測距センサ32および水平測距センサ34を保持するセンサ取付治具36とから構成されている。
【0016】
垂直測距センサ32と水平測距センサ34は一般に市販されている精密測距のための高周波磁界を利用した渦電流式センサであり、その外形は直径1cm程度の円柱形状をしており、センサに対向する面との距離を非接触に計測する。このセンサは数ミリ〜数センチ程度の距離を計測するためのもので、その計測誤差はミクロン単位である。
【0017】
表示装置38は各センサ32,34で計測した距離をセンサ信号として受信し、これを処理してその表示画面に数値として表示する変換器である。
【0018】
演算表示装置65は表示装置38に接続されたノートパソコンや専用の処理装置であり、表示装置38から伝達されたデジタル信号を解析し計算を実行することで、原動機12に固定された固定座63の高さや傾き、水平方向の向きの調整量を求め、これを表示画面に表示する。なお表示装置38と演算表示装置65とを一体化してやることも勿論可能である。
【0019】
センサ取付治具36は、センサ取付治具のみを示した斜視図である図4および軸継手26に取り付けた状態を示した斜視図である図5からも分かるように、コの字型のクランプ部42とクランプ部の一端から伸長するL字型のセンサ取付部44等から構成されている。
クランプ部42には、対向する面の一方に治具取付ボルト67を螺合するためのネジ溝が彫られたネジ穴が形成されている。
クランプ部42のネジ穴が形成された側の一端面から軸方向に伸長し回転軸側に屈曲するL字型のセンサ取付部44には、直交する各面に円柱形状のセンサ(垂直測距センサ32および水平測距センサ34)を嵌入固定するための貫通孔69が形成されている。
センサ取付治具36の固定は、従フランジ24の鍔部27にクランプ部42を挿し込み、治具取付ボルト67によって鍔部27を挟止することで行われる。従フランジ24にセンサ取付治具36を固定すると、センサ取付部44は主フランジ22の外周縁と非接触にかつこれを囲うように配置されることとなる。
【0020】
次に以上に説明した軸継手のセンタリング装置10を用いた軸継手のセンタリング方法について説明する。なお原動機12はそのケーシングに金属脚である固定座63が一体型鋳造や溶接構造で設けられており、この固定座を脚として重厚な台座71上に載置されている。一方動作機器16は、予め重厚な台座71上に載置・固定されている。
【0021】
ます準備段階として、段階はセンサ取付治具36を従フランジ24に取り付ける前に、従フランジ24の対向面23と主フランジ22の対向面23を対向させ、おおよその目安で回転軸14,18の軸芯14a,18aのセンタリングを行う。
原動機12の回転軸14の先端部に取り付けられた主フランジ22の対向面23が、動作機器16の回転軸18の先端部に取り付けられた従フランジ24の対向面23とおおよそ平行に対向するように原動機12の高さや傾き、水平方向の向きを調整した後、6つのボルト穴53のうちの1つにボルトを通して緩くナットを締め、仮止めによって両フランジ22,24を連結する。
【0022】
次に、従フランジ24の鍔部27にセンサ取付治具36のクランプ部42を挿し込み、治具取付ボルト67を締め付けることによって鍔部27を挟止し、従フランジ24にセンサ取付治具36を固定する。なお従フランジ24へのセンサ取付治具36の固定は、その伸長方向が従フランジ24の軸芯18a方向と完全に一致している必要はなく、多少の誤差があってもよい。これは従フランジ24と主フランジ22とは次に説明するように一体的に軸回転するためである。
【0023】
続いて、主フランジ22と従フランジ24とを一体的に軸回転させ、回転によっても対向させた両フランジ22,24に左右のずれがなくなるように台座71上の固定座63の水平面内での位置および方向を微調整する。この微調整は例えば固定座63の側面を木槌によって軽く叩くことで行われる。
【0024】
主フランジ22と従フランジ24とを一体的に軸回転させても両フランジ22,24の左右のずれがなくなるように、台座71上の固定座63の位置および方向を微調整した後には、センサ取付治具36のセンサ取付部44の貫通孔69に、垂直測距センサ32および水平測距センサ34を嵌入固定する。そして主フランジ22と従フランジ24とを一体的に軸回転させ、垂直測距センサ32で垂直面内でのフランジ外周縁(正確には主フランジ22の鍔部27の外周面)との距離を、水平測距センサ34で水平面内でのフランジ外周縁(正確には主フランジ22の鍔部27の回転軸側の面)との距離を計測する。この計測値は表示装置38の表示画面に数値で表示される。また各センサ32,34で計測した距離の変化は演算表示装置65の表示画面にサインカーブ(正弦曲線)やその複合曲線で表示され、演算表示装置65はそのデータを解析処理することで、原動機12に固定された固定座63の高さや傾き、水平方向の向きの調整量を求め、これを表示画面に表示する。
【0025】
例えば、図3に示した斜視図でa点、b点、c点、d点の全てが低い、換言すれば図6に拡大して示したように原動機12の回転軸14の軸芯14aが動作機器16の回転軸18の軸芯18aと同一垂直面内の低い位置にあるとき、両フランジ22,24を一体的に軸回転させた際の垂直測距センサ32の計測値は、センサ取付治具36が上死点にあるときが最も大きく下死点にあるときが最も小さくなるように変化する一方、水平測距センサ34の計測値にはほとんど変化がないこととなる。センサで計測した各距離の変化にこのような関係がある場合には、図6に記載した関係式から求めた厚みのライナーを固定座63のa〜d点の各点下に挟み入れることで軸芯14a,18aのセンタリングを行う。
【0026】
また例えば、図3に示した斜視図でa点およびb点が低い、換言すれば図7に拡大して示したように原動機12の回転軸14の軸芯14aが動作機器16の回転軸18の軸芯18aに対して同一垂直面内で(−θだけ)傾いているとき、両フランジ22,24を一体的に軸回転させた際の垂直測距センサ32の計測値にはほとんど変化がない一方、水平測距センサ34の計測値は、センサ取付治具36が上死点にあるときが最も大きく下死点にあるときが最も小さくなるように変化することとなる。両センサ32,34で計測した各距離の変化にこのような関係がある場合には、図7に記載した関係式から求めた厚みのライナーを固定座63のa点およびb点の下に挟み入れることで軸芯14a,18aのセンタリングを行う。
【0027】
さらに例えば、図3に示した斜視図でc点およびd点が低い、換言すれば図8に拡大して示したように原動機12の回転軸14の軸芯14aが動作機器16の回転軸18の軸芯18aに対して同一垂直面内で(+θだけ)傾いているとき、両フランジ22,24を一体的に軸回転させた際の垂直測距センサ32の計測値にはほとんど変化がない一方、水平測距センサ34の計測値は、センサ取付治具36が上死点にあるときが最も小さく下死点にあるときが最も大きくなるように変化することとなる。両センサ32,34で計測した各距離の変化にこのような関係がある場合には、図8に記載した関係式から求めた厚みのライナーを固定座63のc点およびd点の下に挟み入れることで軸芯14a,18aのセンタリングを行う。この場合、正確に言えば原動機12の回転軸18先端の主フランジ22の中心点は、動作機器16の回転軸18の軸芯18aからずれすることとなるが、そのずれは極僅かであるため図のように近似して考えることができる。
【0028】
なお実際のセンタリング作業においては、原動機12の回転軸14の軸芯14aが動作機器16の回転軸18の軸芯18aに対して同一垂直面内で低い位置にあり、かつ、傾いていることが考えられるが、上述した調節手法を応用しその組み合わせによって、固定座63の各点の下に挟み入れるべき厚みのライナーを選択することができる。
【0029】
また上記の方法では対向させた両フランジ22,24の左右のずれ、すなわち水平面内での両フランジのずれの微調整は各センサ32,34を用いることなく行っているが、同様の要領で各センサによって計測した計測値を基にその微調整を行うようにしてもよい。
【0030】
以上に説明したように本発明の軸継手のセンタリング方法および軸継手のセンタリング装置によれば、軸継手の2軸の芯出し(センタリング)を経験や感だけに頼ることなく行うことが可能となる。本発明では2軸のずれや傾きの量を簡易に求めることができるので、特に作業が難しくまた多くの労力を要していた垂直面内での2軸のずれや傾きの調整、すなわち固定座のどの部分にどれくらいの厚みのライナーを挟み入れる必要があるのかの判断を容易に行うことが可能となる。
【0031】
なお、本発明の構成は上述したものに限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができるのは勿論である。例えばセンサ取付治具をフランジの鍔部に固定するのではなく、フランジ自体や回転軸に固定するようにしてやることできる。またセンサ取付治具の固定を主フランジの鍔部に行い、両センサにより従フランジの外周縁との径方向距離および軸方向距離を計測するようにしてやることも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のセンタリング装置が適用される軸継手をの一例を示した斜視図である。
【図2】図1の軸継手のX−X断面図および平面図である。
【図3】本実施例の軸継手のセンタリング装置の全体構成を示した概念図である。
【図4】本実施例のセンサ取付治具の斜視図である。
【図5】本実施例のセンサ取付治具を軸継手に取り付けた状態を示した側面図である。
【図6】センサ取付治具を取り付けた軸継手を拡大して示した側面図である。
【図7】センサ取付治具を取り付けた軸継手を拡大して示した側面図である。
【図8】センサ取付治具を取り付けた軸継手を拡大して示した側面図である。
【符号の説明】
【0033】
12 原動機
14,18 回転軸
14a,18a 軸芯
16 動作機器
22 主フランジ
23 対向面
24 従フランジ
25 回転軸面
26 軸継手
27 鍔部
32 垂直測距センサ
34 水平測距センサ
36 センサ取付治具
38 表示装置
42 クランプ部
44 センサ取付部
51 ボルト・ナット
53 ボルト穴
55 突起部
59 硬質ゴム
61 回り止めワッシャ
63 固定座
65 演算表示装置
67 治具取付ボルト
69 貫通孔
71 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ、エンジンなどの原動機(12)の回転軸(14)と該原動機の回転動力を利用して稼動する動作機器(16)の回転軸(18)とを、原動機の回転軸先端に設けられた主フランジ(22)と動作機器の回転軸先端に設けられた従フランジ(24)とを対向させて固定する構造の軸継手(26)を用いて連結する際の軸継手のセンタリング方法であって、
前記主フランジおよび前記従フランジを仮止めにより連結した状態で一体的に回転させた際に、主フランジの対向面(23)の一点とこの点に対向する従フランジの対向面の一点との軸方向の相対距離および径方向の相対距離の変化を計測することで、原動機の回転軸の軸芯(14a)と動作機器の回転軸の軸芯(18a)との芯ずれを算出し、その値を基に動作機器または原動機の水平方向および垂直方向の向きおよび位置を調節する、ことを特徴とする軸継手のセンタリング方法。
【請求項2】
モータ、エンジンなどの原動機(12)の回転軸(14)と該原動機の回転動力を利用して稼動する動作機器(16)の回転軸(18)とを、原動機の回転軸先端に設けられた主フランジ(22)と動作機器の回転軸先端に設けられた従フランジ(24)とを対向させて固定する構造の軸継手(26)を用いて連結する際の芯出しに使用するための軸継手のセンタリング装置であって、
前記主フランジの外周縁との径方向距離を計測する垂直測距センサ(32)と、
前記主フランジの外周縁との軸方向距離を計測する水平測距センサ(34)と、
前記従フランジの外周縁に固定され、前記垂直測距センサおよび前記水平測距センサを保持するセンサ取付治具(36)と、
前記垂直測距センサおよび前記水平測距センサによって計測した径方向距離および軸方向距離を表示する表示装置(38)と、を備える、ことを特徴とする軸継手のセンタリング装置。
【請求項3】
モータ、エンジンなどの原動機(12)の回転軸(14)と該原動機の回転動力を利用して稼動する動作機器(16)の回転軸(18)とを、原動機の回転軸先端に設けられた主フランジ(22)と動作機器の回転軸先端に設けられた従フランジ(24)とを対向させて固定する構造の軸継手(26)を用いて連結する際の芯出しに使用するための軸継手のセンタリング装置であって、
前記従フランジの外周縁との径方向距離を計測する垂直測距センサ(32)と、
前記従フランジの外周縁との軸方向距離を計測する水平測距センサ(34)と、
前記主フランジの外周縁に固定され、前記垂直測距センサおよび前記水平測距センサを保持するセンサ取付治具(36)と、
前記垂直測距センサおよび前記水平測距センサによって計測した径方向距離および軸方向距離を表示する表示装置(38)と、を備える、ことを特徴とする軸継手のセンタリング装置。
【請求項4】
前記主フランジ(22)および前記従フランジ(24)の外周縁の端部は対向面(23)と反対側に直角に屈曲してリング状の鍔部(27)を形成しており、
前記センサ取付治具(36)は、前記鍔部を径方向に把持するクランプ部(42)と、該クランプ部から伸長し前記垂直測距センサ(32)および前記水平測距センサ(34)を主フランジと非接触に近接して保持するL字型のセンサ取付部(44)と、からなる、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の軸継手のセンタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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