説明

軸継手

【課題】2つの回転軸間で心ズレを起こさないように締結させる軸継手を提供する。
【解決手段】 軸継手1は、軸挿通孔21を形成する筒部22を有する一対の軸保持部2と、各筒部22に外嵌させる一対の締付けリング3とを備える。一対の軸保持部2の各軸挿通孔21は同軸上に配置されている。一対の締付けリング3は筒部22を挿通する中心孔31を有し外周面からこの中心孔31に達して軸方向に沿った割スリット32を形成すると共に割スリット32を貫通して形成したボルト装着孔34,35にクランプボルト33を装着し、且つ中心孔31が筒部22の外径と嵌め合い公差範囲で相似形状に形成されている。各筒部22の軸挿通孔21に回転軸J1、J2を挿通させ、この筒部22に外嵌させた締付けリング3のクランプボルト33を締付けて締付けリング3を縮径させて筒部22を回転軸J1、J2に対して締付けるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの回転軸を同軸上に連結するための軸継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の軸継手として、例えば、図9(a)(b)に示すものが知られている。この軸継手100は、可撓性を有する中間体104を挟んで両側にそれぞれ締付けリング103が設けられている。各締付けリング103は、回転軸J1、J2を挿通させる中心孔131を有し、外周面からこの中心孔131に達し軸方向に切り込んだ割スリット132を有する。また、この割スリット132を貫通するボルト装着孔134,145にクランプボルト133が装着されている。そして、締付けリング103の中心孔131に回転軸J1、J2を挿通させ、クランプボルト133を締付け割スリット132の間隔を狭めて中心孔131を縮径させることにより回転軸J1、J2が固定される。
【特許文献1】特開平10−47365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の軸継手100では、クランプボルト133を締付けると、締付けリング103の中心孔131が変形されて均等に縮径されないため(図9(a)参照)、回転軸J1、J2が中心孔131に対して同心状態に固定され難い。その結果、2つの回転軸J1、J2間で心ズレを起こす(図9(b)参照)という問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、2つの回転軸間で心ズレを起こさないように締結させる軸継手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る軸継手は、
2つの回転軸を連結するための軸継手であって、
軸挿通孔を形成する筒部を有する軸保持部と、
筒部に外嵌させる締付けリングとを有し、
上記締付けリングは、上記筒部を挿通する中心孔を有し、外周面からこの中心孔に達して軸方向に沿った割スリットを形成すると共に、割スリットを貫通して形成したボルト装着孔にクランプボルトを装着し、且つ上記中心孔が上記筒部の外径と嵌め合い公差範囲で相似形状に形成されており、
上記筒部の軸挿通孔に回転軸を挿通させ、この筒部に外嵌させた締付けリングのクランプボルトを締付けて締付けリングを縮径させて筒部を回転軸に対して締付けるように構成したものである。
【0005】
これにより、締付けリングの中心孔が軸保持部の筒部の外径と嵌め合い公差範囲で相似形状に形成されているので、筒部をこれに外嵌させた締付けリングで締付けることにより、筒部が外周全域から押圧されて、筒部の軸挿通孔が均等に縮径される。このことから、回転軸が軸挿通孔に対して同心性よく固定される。従って、2つの回転軸は、心ズレすることなく同心性よく連結される。
【0006】
上記軸保持部は、筒部から外側に張り出したフランジを有し、
上記締付けリングは、軸方向端面の外縁部に軸方向に突出した凸部を設け、
上記凸部が上記フランジに当接するように締付けリングを軸保持部の筒部に配置するように構成してもよい。
これにより、締付けリングの凸部が軸保持部のフランジに当接されることにより、締付けリングは、軸保持部の筒部に回転力が作用してもこの回転力に対して抗力を発揮することができる。従って、筒部が回転軸からネジリ力(回転力)を受けると、この筒部に外嵌した締付けリングによってもこのネジリ力に対する抗力が発揮される。その結果、軸保持部における筒部のネジリ剛性が向上される。
【0007】
上記軸保持部は、筒部から外側に張り出したフランジを有し、このフランジには段部が形成され、
上記締付けリングは、軸方向端面の外縁部に軸方向に張り出した鍔部を設け、
上記締付けリングの鍔部が上記フランジの段部に外嵌するように締付けリングを軸保持部の筒部に配置するように構成してもよい。
この場合、上記鍔部と上記フランジの段部とは、テーパ状に形成されてテーパ嵌合するように構成してもよい。
これにより、締付けリングの鍔部が軸保持部のフランジの段部に外嵌されることにより、締付けリングは、軸保持部の筒部に回転力が作用してもこの回転力に対して抗力を発揮することができる。従って、筒部が回転軸からネジリ力(回転力)を受けると、この筒部に外嵌した締付けリングによってもこのネジリ力に対する抗力が発揮される。その結果、軸保持部における筒部のネジリ剛性が向上される。
【0008】
上記締付けリングには、軸方向に固着ボルトを挿通するボルト挿通孔が設けられ、
上記軸保持部のフランジには、上記ボルト挿通孔との対向位置にネジ孔が設けられ、
上記ボルト挿通孔と上記ネジ孔を通して固着ボルトを締付けて締付けリングを軸保持部のフランジに固定するように構成してもよい。
これにより、締付けリングが固着ボルトにより軸保持部のフランジに固定されるので、この締付けリングによって、上述した、回転軸から筒部に作用するネジリ力に対して一層大きな抗力が発揮される。よって、この場合、軸保持部における筒部のネジリ剛性が一層向上される。
【0009】
上記鍔部の外側に第2の締付けリングを外嵌するように構成してもよい。
これにより、締付けリングが第2の締付けリングにより軸保持部のフランジに固定されるので、この締付けリングによって、上述した、回転軸から筒部に作用するネジリ力に対して一層大きな抗力が発揮される。よって、この場合、軸保持部における筒部のネジリ剛性が一層向上される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、軸保持筒部の筒部の軸挿通孔が均等に縮径され、2つの回転軸を心ズレすることなく同心性よく連結することができる。その結果、回転伝達時に心ズレに伴う振動や騒音等の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、実施の形態による軸継手1は、円柱状の2つの回転軸(駆動軸、従動軸)J1,J2を連結するため、一対の軸保持部2と、一対の締付けリング3とを備える。
【0012】
各軸保持部2は、円形の軸挿通孔21を形成する円筒状の筒部22と、この筒部22から外側に張り出した円盤状のフランジ23とを一体形成したものである。そして、各軸保持部2は、両フランジ23間に中心孔31を設けた円形の板バネを複数枚積層した中間体4を介在し、一方のフランジ23の周面に設けた円孔24にボルト43を通して座金、中間体4、座金41,42を挿通して他方のフランジ23の周面に設けたネジ孔25に螺合させて連結されている。円孔24は、フランジ23の周面の180度位置にそれぞれ設けられ、ネジ孔25は、円孔24より90度ずれたフランジ23の周面の180度位置にそれぞれ設けられている。従って、一方の軸保持部2は、そのフランジ23の180度位置でボルト43により中間体4に取り付けられ、他方の軸保持部2は、そのフランジ23において一方のフランジ23の取付位置より90度ずれた180度位置でボルト43により中間体4に取り付けられている。そして、一対の軸保持部2の各軸挿通孔21は、同軸上に配置されている。これら軸挿通孔21は、そこに挿通される回転軸J1,J2の外径と嵌め合い公差範囲で相似形状に形成されている。すなわち、各軸挿通孔21は、円柱状の回転軸J1,J2の外径に沿って高真円度に形成されている。
【0013】
各締付けリング3は、軸保持部2の筒部22に外嵌させる中心孔31を有し、また、外周面からこの中心孔31に達し軸方向に切り込んだ割スリット32を形成し、概略Cリング状に形成されている。この中心孔31は、そこ挿通される軸保持部2の筒部22の外径と嵌め合い公差範囲で相似形状に形成されている。また、各締付けリング3は、割スリット32を貫通するボルト装着孔が形成されており、このボルト装着孔にはクランプボルト33が装着されている。ボルト装着孔は、割スリット32に対する一方の周壁にクランプボルト33を挿通する挿通孔34と、他方の周壁にクランプボルト33を螺合するネジ孔35とにより構成される。締付けリング3は、クランプボルト33を締付けることにより割スリット32の間隔が狭められて中心孔31が縮径され、また、クランプボルト33を緩めることにより割スリット32の間隔が広げられて中心孔31が拡径される。
【0014】
以上の構成を備える軸継手1によれば、上記各筒部22の軸挿通孔21にそれぞれ回転軸J1,J2を挿通させ、この筒部22に外嵌させた締付けリング3のクランプボルト33を締付けて締付けリング3を縮径させて筒部22を締付けると回転軸J1,J2がこの筒部22に強固に固定される。このとき、締付けリング3の中心孔31が軸保持部2の筒部22の外径と嵌め合い公差範囲で相似形状に形成されているので、筒部22をこれに外嵌させた締付けリング3で締付けると、筒部22が外周全域から押圧されて、筒部22の軸挿通孔21が均等に縮径される。このことから、回転軸J1,J2が軸挿通孔21に対して同心性よく固定される。そして、上記一対の軸保持部2の各軸挿通孔21は、同軸上に配置されているから、一対の軸保持部2の各筒部22に固定された2つの回転軸J1,J2は、心ズレすることなく同心性よく連結される。
【0015】
このように、上記軸継手1によれば、軸保持筒部22の筒部22の軸挿通孔21が均等に縮径され、2つの回転軸J1,J2を心ズレすることなく同心性よく連結することができる。その結果、回転伝達時に心ズレに伴う振動や騒音等の発生を抑制することができる。
【0016】
一方、各回転軸J1,J2の締結解除を行うときは、各締付けリング3のクランプボルト33を緩めると、筒部22による縮径が解除され、各回転軸J1,J2の締結解除が行われる。これにより、回転軸J1,J2からこの軸継手1を取り外すことができる。従って、この形式の軸継手1は、クランプボルト33を回転軸J1,J2の軸線の直交方向から工具を差し込んで緩めることにより、回転軸J1,J2から簡単に取り外すことができる。
【0017】
ところで、例えば、締付けリングを軸方向に移動させて筒部を縮径させる構成の軸継手であれば、その取り外しの際、長い解除用抜きボルトを軸継手の軸方向側の端面から差し込む必要がある。そのため、軸継手の軸方向側の端面側に十分な隙間がないと、解除用抜きボルトを挿入することができなくなるため、結果として、装置の全長が長くなる点で不利である。
【0018】
これに対して、上記実施の形態による軸継手1の場合は、締付けリング3に装着したクランプボルト33は、回転軸J1,J2の軸線の直交方向を向いているので、回転軸J1,J2から取り外す際は、上述のように、回転軸J1,J2の軸線の直交方向から工具を差し込んでクランプボルト33を緩めることにより回転軸J1,J2から取り外すことができる。従って、実施の形態による軸継手1では、解除用抜きボルトの差し込みスペースを確保するために軸継手1の軸方向側の端面側に十分な隙間を空ける必要もないから、その分の隙間を詰めることにより装置の全長を短くコンパクトに収めることができる利点を有する。
【0019】
(変形例1)
図2に示した変形例1は、上記実施の形態による軸継手1において、上記締付けリング3における軸方向端面の外縁部に軸方向に突出した凸部5を設け、この凸部5を軸保持部2のフランジ23の周面に当接するように締付けリング3を軸保持部2の筒部22に配置するように構成した軸継手1である。なお、上記凸部5は、締付けリング3の外縁部に沿って全周に設けてもよいし、部分的に設けてもよい。
【0020】
この軸継手1によれば、締付けリング3の凸部5が軸保持部2のフランジ23に当接されることにより、締付けリング3は、軸保持部2の筒部22に回転力が作用してもこの回転力に対して抗力を発揮することができる。従って、筒部22が回転軸J1,J2からネジリ力(回転力)を受けると、この筒部22に外嵌した締付けリング3によってもこのネジリ力に対する抗力が発揮される。その結果、軸保持部2における筒部22のネジリ剛性が向上される。
【0021】
(変形例2)
図3に示した変形例2は、上記変形例1の軸継手1(図2)において、上記締付けリング3には、軸方向に固着ボルト6を挿通するボルト挿通孔36が設けられ、上記軸保持部2のフランジ23には、上記ボルト挿通孔36との対向位置にネジ孔26が設けられ、上記ボルト挿通孔36と上記ネジ孔26を通して固着ボルト6を締付けて締付けリング3を軸保持部2のフランジ23に固定するように構成した軸継手1である。
【0022】
これにより、締付けリング3は、固着ボルト6を介して軸保持部2のフランジ23に固定に固定される。従って、上記変形例1の説明で述べたところの回転軸J1,J2から筒部22に作用するネジリ力に対して、この締付けリング3より一層大きな抗力が発揮される。よって、この場合、軸保持部2における筒部22のネジリ剛性が一層向上される。
また、このものでは、固着ボルト6の締め加減を調整することにより外周の心ブレをある程度調整することができる。
【0023】
(変形例3)
図4に示した変形例3は、上記実施の形態による軸継手1において、上記軸保持部2のフランジ23には段部37が形成され、上記締付けリング3は、軸方向端面の外縁部に軸方向に張り出した鍔部50を設け、上記締付けリング3の鍔部50が上記フランジ23の段部37に外嵌するように締付けリング3を軸保持部2の筒部22に配置するように構成し、且つ、上記鍔部50の外側に第2の締付けリング7を外嵌するように構成した軸継手1である。第2の締付けリング7の構成は、そのサイズが異なる以外、上記締付けリング3と同様である。なお、上記鍔部50は、締付けリング3の外縁部に沿って全周に設けてもよいし、部分的に設けてもよい。
【0024】
これにより、締付けリング3の鍔部50が軸保持部2のフランジ23の段部37に外嵌されることにより、締付けリング3は、軸保持部2の筒部22に回転力が作用してもこの回転力に対して抗力を発揮することができる。しかも、締付けリング3は、第2の締付けリング7を介して軸保持部2のフランジ23に固定されるので、上記抗力が一層確実に発揮される。従って、筒部22が回転軸J1,J2からネジリ力(回転力)を受けると、この筒部22に外嵌した締付けリング3によってもこのネジリ力に対して大きな抗力が発揮される。その結果、軸保持部2における筒部22のネジリ剛性が格段に向上される。
【0025】
なお、この変形例3においては、上記第2の締付けリング7を装着しない構成とすることもでき、この場合でも、筒部22が回転軸J1,J2から受けるネジリ力に対して締付けリング3が一定の抗力を発揮し、軸保持部2における筒部22のネジリ剛性を向上することができる。
【0026】
(変形例4)
図5に示した変形例4は、上記実施の形態による軸継手1において、上記軸保持部2のフランジ23には段部37が形成され、上記締付けリング3は、軸方向端面の外縁部に軸方向に張り出した鍔部50を設け、上記締付けリング3の鍔部50が上記フランジ23の段部37に外嵌するように締付けリング3を軸保持部2の筒部22に配置するように構成し、且つ、上記鍔部50と上記フランジ23の段部37とは、テーパ面50A,37Aに形成されてテーパ嵌合するように構成し、さらに、上記締付けリング3には、軸方向に固着ボルト6を挿通するボルト挿通孔36が設けられ、上記軸保持部2のフランジ23には、上記ボルト挿通孔36との対向位置にネジ孔26が設けられ、上記ボルト挿通孔36と上記ネジ孔26を通して固着ボルト6を締付けて締付けリング3を軸保持部2のフランジ23に固定するように構成した軸継手1である。
【0027】
これにより、締付けリング3の鍔部50が軸保持部2のフランジ23の段部37にテーパ嵌合されることにより、締付けリング3は、軸保持部2の筒部22に回転力が作用してもこの回転力に対して抗力を発揮することができる。しかも、締付けリング3は、固着ボルト6を介して軸保持部2のフランジ23に固定に固定されることにより、上記抗力が一層確実に発揮される。従って、筒部22が回転軸J1,J2からネジリ力(回転力)を受けると、この筒部22に外嵌した締付けリング3によってもこのネジリ力に対して大きな抗力が発揮される。その結果、軸保持部2における筒部22のネジリ剛性が格段に向上される。
【0028】
なお、この変形例4においては、上記固着ボルト6を装着しない構成とすることもでき、この場合でも、筒部22が回転軸J1,J2から受けるネジリ力に対して締付けリング3が一定の抗力を発揮し、軸保持部2における筒部22のネジリ剛性を向上することができる。
【0029】
(変形例5)
図6に示す変形例5は、上記実施の形態による軸継手1において、軸保持部2における筒部22の外周面と締付けリング3の内周面とをテーパ面22A,31Aに形成するように構成した軸継手1である。なお、上記筒部22と上記締付けリング3におけるテーパの角度は、締付けリング3をクランプボルト33により締付けたときに締付けリング3が筒部22の先端側へ抜ける方向の力が発生し難い程度の角度とし、例えば、7度以下に設定されることが望ましい。
【0030】
これにより、筒部22は、厚肉となったフランジ23寄りの位置でネジリ剛性を向上することができる。また、筒部22の先端側の薄肉となった位置では、締付けリング3が厚肉となっているので、この締付けリング3の厚肉部によって筒部22先端のネジリ剛性を補強することができる。
なお、上記筒部22の外周面および上記締付けリング3の内周面は、例えば、先端側をストレート(回転軸J1、J2と略平行)に形成し、フランジ23寄りの基端側を上記テーパ面22A,31Aとしてもよい。
【0031】
(変形例6)
図7に示した変形例6は、上記実施の形態による軸継手1において、上記軸保持部2における筒部22の先端付近に外側に突出する突起27を設けるように構成した軸継手1である。なお、上記突起27は、筒部22の全周に設けてもよいし、部分的に設けてもよい。
【0032】
これにより、上記突起27が締付けリング3の抜け落ち防止手段として機能する。従って、例えば、回転軸J1,J2の軸線方向が上下方向を向いて配置されるような場合、上記突起27によって締付けリング3が筒部22から抜け落ちることが阻止されるので、回転軸J1,J2の締結や締結解除の作業を行い易くすることができる。
【0033】
(変形例7)
締付けリング3として、図8(a)(b)に示すように、割スリット32の位置と等間隔に中心孔31から外周面に向けた内向きスリット81(又は82)や、図8(c)に示すように、割スリット32の位置と等間隔に外周面から中心孔31に向けた外向きスリット83を設けることができる。
【0034】
これにより、クランプボルト33を締付けた際、締付けリング3の中心孔31をできる限り均等に縮径させることができる。従って、この締付けリング3を外嵌した軸保持部2の筒部22を外側からできる限り均等に締付けることができ、筒部22の軸挿通孔21を一層均等に縮径させることができる。その結果、2つの回転軸J1,J2の心ズレを一層確実になくし、これら2つの回転軸J1,J2を高精度に同心性を確保して連結することができる。
【0035】
(その他)
上記筒部22において、軸方向に開削したスリットを筒部22の周方向に等間隔に複数形成するようにしてもよい。これにより、筒部22の縮径を円滑に行うことができる。なお、筒部22に設けるこのスリットは、複数且つ筒部22の周方向に等間隔に配置することで、筒部22の均等な縮径を妨げるものではない。なお、上記筒部22には、この段落で説明した上記スリットに代えて、貫通孔又は軸方向に延びた長孔を設けるようにしてもよい。 また、上記軸保持部2は、筒部22とフランジ23とが一体形成されているが、これら筒部22とフランジ23とが別体に形成されて組み付けられたもの(例えば、別体とした筒部22の外周面及びフランジ23の内周面にセレーション溝を設けて組み合わせるなど)でもよい。
また、上記締付けリング3は、割スリット32を一箇所だけ設けて概略Cリング状に形成するが、割スリット23を180度位置に二箇所設けて半円状に二分割したものとしてもよい。
【0036】
また、上記軸継手1は、一対の軸保持部2を板バネによる中間体4に連結したフレキシブルタイプとするが、これに限らず、例えば、筒状の中間部材の両側に上記一対の軸保持部2を一体形成したリジットタイプの軸継手を構成するものでもよい。
また、一方の筒部22には締付けリング3外嵌させて回転軸J1を固定するが、他方の筒部22は他の手段(例えば、軸挿通孔21の内径をテーパ形状としテーパ嵌合による軸固定など)により回転軸j2を固定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施の形態による軸継手の構成を示す図であり、同図(a)は正面図であり、同図(b)は一部切欠いた側面図である。
【図2】変形例1として、軸継手の構成を示す一部切欠いた側面図である。
【図3】変形例2として、軸継手の構成を示す一部切欠いた側面図である。
【図4】変形例3として、軸継手の構成を示す一部切欠いた側面図である。
【図5】変形例4として、軸継手の構成を示す一部切欠いた側面図である。
【図6】変形例5として、軸継手の構成を示す一部切欠いた側面図である。
【図7】変形例6として、軸継手の構成を示す一部切欠いた側面図である。
【図8】変形例7として、締付けリングの構成例を示す平面図である。
【図9】従来の軸継手の構成を示す図であり、同図(a)は正面図であり、同図(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 軸継手
2 軸保持部
3 締付けリング
4 中間体
5 凸部
6 固着ボルト
7 第2の締付けリング
21 軸挿通孔
22 筒部
23 フランジ
32 割スリット
33 クランプボルト
34 ボルト挿通孔(ボルト装着孔)
35 ネジ孔(ボルト装着孔)
37 段部
50 鍔部
J1,J2 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの回転軸を連結するための軸継手であって、
軸挿通孔を形成する筒部を有する軸保持部と、
筒部に外嵌させる締付けリングとを有し、
上記締付けリングは、上記筒部を挿通する中心孔を有し、外周面からこの中心孔に達して軸方向に沿った割スリットを形成すると共に、割スリットを貫通して形成したボルト装着孔にクランプボルトを装着し、且つ上記中心孔が上記筒部の外径と嵌め合い公差範囲で相似形状に形成されており、
上記筒部の軸挿通孔に回転軸を挿通させ、この筒部に外嵌させた締付けリングのクランプボルトを締付けて締付けリングを縮径させて筒部を回転軸に対して締付けるように構成した軸継手。
【請求項2】
請求項1に記載の軸継手において、
上記軸保持部は、筒部から外側に張り出したフランジを有し、
上記締付けリングは、軸方向端面の外縁部に軸方向に突出した凸部を設け、
上記凸部が上記フランジに当接するように締付けリングを軸保持部の筒部に配置するように構成した軸継手。
【請求項3】
請求項1に記載の軸継手において、
上記軸保持部は、筒部から外側に張り出したフランジを有し、このフランジには段部が形成され、
上記締付けリングは、軸方向端面の外縁部に軸方向に張り出した鍔部を設け、
上記締付けリングの鍔部が上記フランジの段部に外嵌するように締付けリングを軸保持部の筒部に配置するように構成した軸継手。
【請求項4】
請求項3に記載の軸継手において、
上記鍔部と上記フランジの段部とは、テーパ状に形成されてテーパ嵌合するように構成した軸継手。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の軸継手において、
上記締付けリングには、軸方向に固着ボルトを挿通するボルト挿通孔が設けられ、
上記軸保持部のフランジには、上記ボルト挿通孔との対向位置にネジ孔が設けられ、
上記ボルト挿通孔と上記ネジ孔を通して固着ボルトを締付けて締付けリングを軸保持部のフランジに固定するように構成した軸継手。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の軸継手において、
上記鍔部の外側に第2の締付けリングを外嵌するように構成した軸継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−275903(P2009−275903A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130661(P2008−130661)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000100838)アイセル株式会社 (62)