説明

軽量リサイクルタイルカーペット及びその製造方法

【課題】軽量化され、寸法安定性や反り性能にも優れ、地球環境保護に十分に貢献できる軽量リサイクルタイルカーペットを提供する。
【解決手段】表面パイル層2と、樹脂組成物からなる複数層のバッキング層3と補強層4が積層されたタイルカーペット1において、バッキング層の少なくとも1層以上が、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られるリサイクル樹脂組成物を連続走行する離型性ベルト上にパウダー散布し、加熱した後に加圧し、比重が1.5以下で成型された長尺のシート状物であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル樹脂を含有したタイルカーペット廃材をバッキング層の構成材料に用いた軽量リサイクルタイルカーペット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーペットの製造の際には裁断端材が多く発生し、また一般家庭やオフィス等から廃棄処分に供されるカーペットの量も膨大なものになる。従来このようなカーペット廃材は、焼却処理されることが多かった。しかるに、塩化ビニル樹脂からなるバッキング材で裏打ちされたタイルカーペットを焼却処理すると、有害物質が発生しやすいという問題があった。また、近年、地球環境保護の観点から、カーペット廃材を回収してリサイクル利用することが強く要請されている。このような社会的要請に応えるべく、塩化ビニル樹脂を含むカーペット廃材をリサイクル利用した新たなカーペットが開発されている。
【0003】
一方、従来のタイルカーペットは、床へのフィット性から重量のある構成となり、その重量が4.5〜6kg/m2もあることから、軽量化をはかり、運搬や施工の取扱い性を改善することが求められていた。
【0004】
例えば、塩化ビニル樹脂が裏打ちされた廃タイルカーペットの回収品を粉砕した後、ダスト分離装置による風力分離を行うことによって、表面パイル層からなる繊維成分を分離除去した塩化ビニル樹脂粉砕物を回収し、次いで回収した粉砕物を微粉砕、篩選別後、塩化ビニル系樹脂ペーストゾルに0.5〜20重量%の比率で混合し、所定の面上に塗布した後、この面に、基布にパイルをタフトした基材を積層してリサイクルタイルカーペットを製造する技術が公知である(特許文献1参照)。
【0005】
また、塩化ビニル樹脂を裏打ちした廃タイルカーペットの裏打ち層を削り取り、その切削粉末を塩化ビニル系樹脂ペーストゾルに0.5〜20重量%の比率で混合後、塗布ベルトにコーターで塗布した後、基布にパイルをタフトした基材を積層してリサイクルタイルカーペットを得る技術も知られている(特許文献2参照)。
【0006】
上記のような技術を用いれば、塩化ビニル樹脂を含有したカーペット廃材を裏打ち層の構成素材の一部に用いたリサイクルカーペットの提供が可能となるが、ペーストゾルコート方式を用いて、比重の大きい増量剤を多く含む塩化ビニル系樹脂ペーストゾルを使用しているために、タイルカーペットの重量は重い物であった。
【0007】
一方、タイルカーペットの軽量化技術として、特許文献3では、表皮層とバッキング樹脂をポリオレフィン系にし、バッキング樹脂を溶融して表皮層と一体化したタイルカーペットを記載し、ポリオレフィン系樹脂の比重が塩化ビニル樹脂に較べて低いことから、31%も軽量化したタイルカーペットを提案している。また、特許文献4では、不織布からなるバッキング層全体にバッキング樹脂を含浸せしめ、不織布に剛性をもたせて、従来の塩化ビニル樹脂層にかえて表皮層に積層し接着一体化することにより、軽量化を大幅に進めたタイルカーペットを提案している。
【0008】
しかしながら、上記技術では、単に軽量化しただけで、ポリオレフィン系樹脂や不織布からなるバッキング層では、寸法安定性に劣り、製品に歪みが発生するという問題もあり、また、タイルカーペットがお椀型に湾曲し、即ち反り性能が不十分で、床にフィットせず快適な歩行性は得られなかった。また、当然の事ながら、地球環境保護に十分に貢献できる物ではなかった。
【特許文献1】特開2004−113384号公報
【特許文献2】特開2004−141434号公報
【特許文献3】特開平7−292947号公報
【特許文献4】特開2010−12154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂組成物を連続走行する離型性ベルト上にパウダー散布し、加熱した後に加圧し、比重が1.5以下で成型された長尺のシート状物でタイルカーペットのバッキング層とし、軽量化された、寸法安定性や反り性能にも優れたリサイクルタイルカーペットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂組成物を連続走行する離型性ベルト上にパウダー散布し、加熱した後に加圧し、比重が1.5以下で成型された長尺のシート状物でタイルカーペットのバッキング層とすることにより、軽量化され、寸法安定性や反り性能にも優れ、地球環境保護に十分に貢献できる軽量リサイクルタイルカーペットとすることができることを見出し本発明に到達した。前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]表面パイル層と、樹脂組成物からなる複数層のバッキング層と補強層が積層されたタイルカーペットにおいて、前記バッキング層の少なくとも1層以上が、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られるリサイクル樹脂組成物を連続走行する離型性ベルト上にパウダー散布し、加熱した後に加圧し、比重が1.5以下で成型された長尺のシート状物であることを特徴とする軽量リサイクルタイルカーペット。
【0012】
[2]前記リサイクル樹脂組成物において、その成分中に塩化ビニル樹脂の含有量が15重量%以上であり、前記リサイクル樹脂組成物の80%以上の組成物が粒径500μm以上であることを特徴とする前項1に記載の軽量リサイクルタイルカーペット。
【0013】
[3]表面パイル層と、樹脂組成物からなる複数層のバッキング層が積層されたタイルカーペットにおいて、前記バッキング層の少なくとも1層以上が、リサイクル樹脂組成物を連続走行する離型性ベルト上にパウダー散布し、加熱した後に加圧し、比重が1.5以下で成型された長尺のシート状物であることを特徴とする軽量リサイクルタイルカーペットの製造方法。
【0014】
[4]前記パウダー散布したリサイクル樹脂組成物を150〜180℃で加熱し、その後に0.05〜0.30MPaで加圧したことを特徴とする前項3に記載の軽量リサイクルタイルカーペットの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
[1]の発明では、タイルカーペットを構成するバッキング層の少なくとも1層以上が、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られるリサイクル樹脂組成物であることから、地球環境保護に十分に貢献できるタイルカーペットとなる。また、前記リサイクル樹脂組成物を連続走行する離型性ベルト上にパウダー散布し、加熱した後に加圧し、長尺のシート状物のバッキング層とすることから、寸法安定性や反り性能にも優れるタイルカーペットとすることができる。また、加熱及び加圧条件により前記バッキング層となる長尺のシート状物の比重を調整する事が容易となる。さらにバッキング層が比重1.5以下で成型された長尺のシート状物であることから、運搬や施工の取扱い性が改善された軽量のリサイクルタイルカーペットとなる。
【0016】
[2]の発明では、リサイクル樹脂組成物において、その成分中に塩化ビニル樹脂の含有量が15重量%以上であることから、タイルカーペットを構成するバッキング層に適応するシート化が可能となり、床へフィットする適度な重量のあるタイルカーペットとなる。また、リサイクル樹脂組成物の80%以上の粒径が500μm以上であることから、パウダー散布加工機において、連続走行する離型性ベルト上に均一に散布することが可能となり、加熱することにより容易に品質の安定したタイルカーペットの裏打ち層となる塩化ビニル樹脂からなるシートとすることができる。
【0017】
[3]の発明では、バッキング層の少なくとも1層以上が、リサイクル樹脂組成物を連続走行する離型性ベルト上にパウダー散布し、加熱した後に加圧された長尺のシート状物であることから、他のバージン樹脂成分を混入する必要もなく、リサイクル比率の高いタイルカーペットとすることができる。またパウダー散布加工を用いることにより、ペーストゾルにする事無く、150〜180℃で加工ができるので、リサイクル塩化ビニル樹脂の粘度が上昇し、加工性が低下するという問題も無く、製品に歪が発生するという問題も無い。したがって生産効率の良い、製品品質の安定したリサイクルタイルカーペットとなる。また、比重が1.5以下で成型された長尺のシート状物であることから、製造時の運搬等の取り扱いが容易となる。
【0018】
[4]の発明では、パウダー散布したリサイクル樹脂組成物を150〜180℃で加熱することにより、塩化ビニル樹脂成分等が分解する事無く、耐久性のある寸法安定性を有するリサイクルタイルカーペットが得られる。またその後に0.05〜0.30MPaで加圧することにより、適度な比重のバッキング層となり、床へのフィット性にも優れ、軽量化されたタイルカーペットとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明の軽量リサイクルタイルカーペット(1)は、図1に示すように、表面パイル層(2)と、樹脂組成物からなる複数層のバッキング層(3)が積層一体化されてなるものである。さらに、寸法安定性の補強のために、ガラス繊維またはポリエステル繊維の不織布または織布からなる補強層(4)を前記複数層のバッキング層(3)の層間、或いは層上に挿入されてなるものである。
【0020】
また、図2に示すように、表面パイル層(2)の下面にパイル抜け止め用の低粘度のポリ塩化ビニル樹脂や、ホットメルト系のEVAや、カルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合体等の目止め層(5)を設けても良い。該目止め層(5)を構成する樹脂としては、特に含浸性、接着性の面から低粘度のポリ塩化ビニル樹脂が好ましい。
【0021】
本発明における前記表面パイル層(2)としては、特に限定されるものではないが、例えばカーペット基材(7)の表面にパイル(6)が植設されたもの、タフテッドカーペット、織カーペット、編カーペット、電着カーペット等を例示できる。
【0022】
前記カーペット基材(7)としては、特に限定されるものではなくどのようなものでも使用できる。例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、あるいは麻、綿、羊毛等の天然繊維等の繊維からなる糸を製編織した布地の他、各種の繊維や糸を、ニードリング等により機械的に接結、あるいは接着剤等により化学的に接結した不織布等を使用できる。
【0023】
前記パイル(6)の素材としては、特に限定されるものではなく、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維等の繊維からなるもの等を好適に使用でき、その他、麻、綿、羊毛等の天然繊維からなるもの等を使用できる。更にパイル層の形成手段も特に限定されるものではなく、例えばモケット等のように経パイル織、緯パイル織等の製織によりパイル層を形成する手段、タフティングマシン等によりパイル糸を植毛してパイル層を形成する手段、編機によりパイル層を形成する手段、接着剤を用いてパイル糸を接着してパイル層を形成する手段等を例示することができる。パイル形態も特に限定されず、カットパイル、ループパイル等いずれの形態であっても良い。
【0024】
本発明における樹脂組成物からなる複数層のバッキング層(3)はタイルカーペットの形状を形成するもので、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られるリサイクル樹脂組成物からなる。塩化ビニル樹脂が含有してなるカーペット廃材としては、特に限定されるものではないが、例えばカーペット製造時の裁断端材、一般家庭やオフィス等から出た廃棄処分に供されるカーペットなどが挙げられ、
中でも塩化ビニル樹脂が裏打ちされたタイルカーペットが好適に用いられる。
【0025】
塩化ビニル樹脂が裏打ちされたカーペット廃材から削り取られ、粉砕された微粉砕物を得るための削り取り方法、粉砕手法は、特に限定されるものではないが、例えば塩化ビニル樹脂からなる裏打ち層をカーペット廃材から剥離し、この剥離した廃材を粉砕機を用いて粉砕し、得られた粉砕物を風力振動分級等で樹脂分と繊維分に分離し、この分離された樹脂分をさらに微粉化する手法などが挙げられる。
【0026】
前記リサイクル樹脂組成物としては、一部にパイル、不織布等の繊維を含有したものであっても良い。但し、前記リサイクル樹脂組成物の成分中に、塩化ビニル樹脂の含有量が15重量%以上である必要がある。塩化ビニル樹脂の含有量が15重量%以上であれば、通常のタイルカーペット同等の強度を有するバッキング層の形成が可能となる。15重量%を下回れば、樹脂成分が不足し加熱溶融しても、十分な強度を有するバッキング層の形成が困難となる。
【0027】
また、本発明においてはリサイクル樹脂組成物の80%以上の組成物が粒径500μm以上のリサイクル樹脂組成物を用いる。500μm以上であれば、散布、溶融、シート化の加工が容易となり、安定したバッキング層が得られる。なかでも粒径が800〜1,200μmの粉砕物を用いるのが好ましく、この場合には歪みが無く、比重の小さい、強度的に安定した塩ビ再生タイルカーペットのバッキング層となる。粒径が500μmを下回ると、比重が1.5を超え、重量のあるタイルカーペットとなってしまう。
【0028】
なお、前記「粒径」とは、粉砕物が異形である場合には、粉砕物の長径を意味するものである。粒径測定方法としては、日機装(株)MICROTRAC粒度分析計を用い、湿式測定法で測定した。これは、粉体を水に分散し、流れる粉体群にレーザー光を照射し、その前方散乱光により粒度分析を行うものである。
【0029】
従来のタイルカーペットでは、バッキング層(3)としてバージンの塩化ビニル樹脂組成物が用いられ、さらに、寸法安定性や経済性のために無機物が増量剤として混入されているので、バッキング層(3)の比重は1.7以上となり、所定の厚みである2.0〜3.0mmのタイルカーペットとすると、バッキング層(3)の重量が3,400〜5,100g/m2となり、運搬や施工の取扱い性に不具合が生じていた。また、従来のリサイクル材料をバッキング層としたタイルカーペットでも、当然のことながら、比重の大きいリサイクル材料を使うために、重量のあるタイルカーペットとなっていた。
【0030】
本発明において、前記バッキング層(3)の少なくとも1層以上が、比重が1.5以下で成型された長尺のシート状物を用いる必要がある。比重が1.5以下で成型された長尺のシート状物からなる前記バッキング層で構成されたタイルカーペットであれば、バッキング層(3)の重量が4,500g/m2以下となり、運搬や施工の取扱い性が改善され、床へのフィット性も良好な軽量リサイクルタイルカーペット(1)となる。比重が1.5を超えれば運搬や施工の取扱いに問題が生じるタイルカーペットとなる。
【0031】
本発明における補強層(4)は軽量リサイクルタイルカーペット(1)の形状、反り性能、及び寸法安定性を向上させるものであって、ガラス繊維又はポリエステル繊維の不織布及び織布を用いることができる。前記補強層(4)は前記バッキング層(3)の層間、或いは層上に積層する事により、カーペットの形状安定性を向上させるものである。即ち、ガラス繊維又はポリエステル繊維の不織布及び織布は、高い強度及び耐熱性により、経時変化が少なく、樹脂層との接触面積が大であるので、有効にカーペットの形状を安定化することが可能である。この点から最も好適なものとしてガラス繊維からなる不織布が挙げられる。前記ガラス繊維からなる不織布の目付量は、好ましくは15〜60g/m2の範囲である。この範囲より低い目付量では、寸法安定性の効果が不足し、またこの範囲を超える高い目付量では、いずれも樹脂層と不織布間の層間剥離が生じ易く好ましくない。
【0032】
前記補強層(4)の挿入位置は前記バッキング層(3)の層間、或いは層上に積層する事が必要である。即ち、上面に位置するバッキング層と下面に位置するバッキング層との厚みの比が、1:9〜1:1であるように配置されるように挿入することが好ましい。この位置であれば、バッキング層の厚さ方向の中間位置より上方に前記補強層(4)が挿入されることになり、伸縮しやすい表面パイル層(2)の動きを抑制し、反り性能、及び寸法安定性に優れた軽量リサイクルタイルカーペット(1)となる。例えば、歩行頻度の激しいハードユースな場所に施工する場合は、高い反り性能、及び寸法安定性に優れる層上に積層することが好ましく、一般的なオフィス等では快適な歩行性から層間が好ましい。
【0033】
本発明の軽量リサイクルタイルカーペット(1)を製造する方法として、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られる前記リサイクル樹脂組成物を準備し、公知の加工技術のパウダー散布加工、コーティング加工、カレンダー加工等を用いてバッキング層(3)を形成する事ができるが、リサイクル樹脂をできるだけ多く使用するにはパウダー散布加工が好ましい。
【0034】
本発明における軽量リサイクルタイルカーペット(1)のパウダー散布加工機を用いて製造する方法について図3を基に説明する。例えば前記バッキング層(3)を2層とし、該2層のバッキング層(3)の間に補強層(4)を挿入する構成ならば、前記リサイクル樹脂組成物を、第一バッキング層、及び第二バッキング層を形成するための各スキャッターに投入する。この投入前に、必要に応じて可塑剤、滑剤、充填剤、顔料等をブレンドしておくことも可能である。
【0035】
次に、連続走行する無端離型性ベルト(8)上に、上方に配置された第一バッキング層用スキャッター(9)から前記リサイクル樹脂組成物を散布する。この第一バッキング層用スキャッター(9)及び第二バッキング層用スキャッター(9)は、その下側の散布口において、表面にゴルフボールのようなディンプル(窪み)が多数形成されたローラーが配置されており、該ローラーを回転させることによりディンプルに入り込んだ前記リサイクル樹脂組成物を順次下方に散布する装置であり、この各スキャッター(9)を用いることで、貯留された前記リサイクル樹脂組成物を所望の一定量で散布することができる。
【0036】
本発明において、前記第一バッキング層、及び前記第二バッキング層の各層における前記リサイクル樹脂組成物の散布量は1,000〜3,000g/m2であることが好ましい。散布量が1,000〜3,000g/m2であれば、タイルカーペットのバッキング層(3)として適度な厚みである2.0〜3.0mmが確保できる。また加工に際して、大きなエネルギーを必要とせず、上方からの加熱装置(10)の熱により、溶融させ、冷却加圧させれば軽量リサイクルタイルカーペット(1)の、強度があり、寸法安定性のあるバッキング層(3)となる。この範囲を下回れば強度がある層としての形成が困難で、上回れば溶融が困難となり層としての形成が困難となる。
【0037】
次いで、加熱装置(10)を用いて、無端離型性ベルト(8)上に散布された前記リサイクル樹脂組成物を加熱溶融させ、第1バッキング層を形成しながら、この上に補強層(4)を重ね合わせつつ加圧ロールで加圧することによって、補強層(4)と第一バッキング層が積層一体化される。
【0038】
前記リサイクル樹脂組成物を加熱溶融する加工温度は150〜180℃が好ましい。該範囲であれば、塩化ビニル樹脂成分等が分解する事無く、耐久性のある寸法安定性を有するリサイクルタイルカーペット(1)が得られる。180℃を超えれば、塩化ビニル樹脂成分等が分解し、耐久性のある寸法安定性が得られない恐れがある。
【0039】
また、加圧ロールで加圧する条件としては、0.05〜0.30MPaで加圧する必要がある。該範囲で加圧すれば、無端離型性ベルト(8)上に散布された前記リサイクル樹脂組成物で構成されたバッキング層(3)に空気層を残す結果となり、軽量で嵩高のバッキング層となる。したがって加圧ロール(11)で加圧する条件によって、所望する比重の長尺のシート状物を形成することが可能となり、即ち比重が1.5以下で成型された長尺のシート状物からなるバッキング層(3)を形成することができる。加圧する条件が0.05MPaを下回れば、加圧不足で強度の安定したバッキング層(3)が得られず、0.30MPaを上回れば、空気層を潰す結果となり、軽量化されたバッキング層(3)を形成できない。
【0040】
なお、前記加圧ロール(11)としては冷却加圧ロールを用いるのが好ましい。このような冷却加圧ロールで加圧するものとすれば、積層直後に強制冷却することができるので、溶融した前記リサイクル樹脂組成物の固化を早め得て加工速度(生産性)を向上できる。
【0041】
次に、積層された補強層(4)の上に、上方に配置された第二バッキング層用スキャッター(9)から前記リサイクル樹脂組成物を散布し、さらに、加熱装置(10)を用いて、散布された前記リサイクル樹脂組成物を加熱溶融させ、第二バッキング層を形成しながら、この上に表面パイル層(2)を重ね合わせつつ加圧ロール(11)で加圧する。その結果、表面パイル層(2)と、補強層(4)が第二バッキング層を介して積層一体化される。この場合も、冷却加圧ロールを用いるのが好ましく、高温状態での加圧による、熱可塑性繊維等からなるカーペット基材の収縮や表面パイル層(2)のパイル倒れを効果的に防止できる利点がある。
【0042】
前記リサイクル樹脂組成物を加熱溶融する加工温度、及び加圧ロール(11)で加圧する条件としては、第一バッキング層を形成する条件と同等の条件により、第二バッキング層を形成することができる。
【0043】
尚、各バッキング層用スキャッター(9)から散布する前記リサイクル樹脂組成物の粒径、塩化ビニル樹脂の含有量、及び散布量を、カーペットが使用される環境、加工条件等により、それぞれ異なる仕様のものを使うことができる。
【0044】
冷却後、最後に所定形状、例えば500mm角の正方形に裁断すれば、タイルカーペットとしての最適な2.0〜3.0mmの厚みのシートを有する軽量リサイクルタイルカーペット(1)が得られる。
【0045】
なお、この発明の軽量リサイクルタイルカーペット(1)は、上記製造方法で製造されるものに特に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0047】
<使用材料>表面パイル層:目付90g/m2 のポリエステル繊維の不織布(カーペット基材)に、ナイロン繊維からなるパイル糸がループパイルにタフティングしたもの(パイル目付610g/m2 )の裏面に、パイル抜け止め用の低粘度のポリ塩化ビニル樹脂の目止め層(塗布量500g/m2)を施したもの。補強層:目付量が35g/m2のガラス繊維からなる不織布リサイクル樹脂組成物A:カーペット廃材から削り取られ、粉砕された微粉砕物(塩化ビニル樹脂の含有量15重量%、80%以上の微粉砕物の粒径1,000μm)リサイクル樹脂組成物B:カーペット廃材から削り取られ、粉砕された微粉砕物(塩化ビニル樹脂の含有量25重量%、80%以上の微粉砕物の粒径1,000μm)リサイクル樹脂組成物C:カーペット廃材から削り取られ、粉砕された微粉砕物(塩化ビニル樹脂の含有量15重量%、80%以上の微粉砕物の粒径600μm)リサイクル樹脂組成物D:カーペット廃材から削り取られ、粉砕された微粉砕物(塩化ビニル樹脂の含有量15重量%、80%以上の微粉砕物の粒径2,000μm)樹脂組成物E:バージンの塩化ビニル樹脂組成物(塩化ビニル樹脂の含有量15重量%) リサイクル樹脂組成物F:カーペット廃材から削り取られ、粉砕された微粉砕物(塩化ビニル樹脂の含有量10重量&、80%以上の微粉砕物の粒径1,000μm)リサイクル樹脂組成物G:カーペット廃材から削り取られ、粉砕された微粉砕物(塩化ビニル樹脂の含有量15重量%、80%以上の微粉砕物の粒径300μm)
【0048】
<実施例1>パウダー散布加工機において、一次バッキング層として、リサイクル樹脂組成物Aを無端離型性ベルトの上方に位置するスキャッターに投入し、無端離型性ベルトの上に散布量2,200g/m2で散布し、次いで加熱装置により170℃で前記リサイクル樹脂組成物Aを加熱溶融せしめた後、水冷式の冷却加圧ロールを用いて0.15MPaで加圧した。次にその上に補強層を重ね合わせ、さらに、二次バッキング層として、リサイクル樹脂組成物Aを散布量700g/m2で散布し、水冷式の冷却加圧ロールを用いて0.15MPaで加圧した。さらに、表面パイル層を積層し、ついでロール圧着して、厚み2.0mmのバッキング層を形成し、最後に500mm角の正方形に裁断し、軽量リサイクルタイルカーペットを製造した。
【0049】
<実施例2>一次バッキング層、二次バッキング層を構成する樹脂として、塩化ビニル樹脂の含有量が25重量%のリサイクル樹脂組成物Bを用い、一次バッキング層の散布量2,320 g/m2、二次バッキング層の散布量600 g/m2とし、厚み2.0mmのバッキング層を形成したこと以外は実施例1と全く同様にして軽量リサイクルタイルカーペットを得た。
【0050】
<実施例3>一次バッキング層、二次バッキング層を構成する樹脂として、80%以上の微粉砕物の粒径が600μmのリサイクル樹脂組成物Cを用い、一次バッキング層の散布量2,460 g/m2、二次バッキング層の散布量500 g/m2とし、厚み2.0mmのバッキング層を形成したこと以外は実施例1と全く同様にして軽量リサイクルタイルカーペットを得た。
【0051】
<実施例4>一次バッキング層、二次バッキング層を構成する樹脂として、80%以上の微粉砕物の粒径が2,000μmのリサイクル樹脂組成物Dを用い、一次バッキング層の散布量2,380 g/m2、二次バッキング層の散布量500 g/m2とし、厚み2.0mmのバッキング層を形成したこと以外は実施例1と全く同様にして軽量リサイクルタイルカーペットを得た。
【0052】
<実施例5>一次バッキング層、二次バッキング層、共に加熱装置により155℃で前記リサイクル樹脂組成物Aを加熱溶融せしめたこと
以外は実施例1と全く同様にして軽量リサイクルタイルカーペットを得た。
【0053】
<実施例6>一次バッキング層、二次バッキング層を構成する樹脂として、塩化ビニル樹脂の含有量が15重量%のリサイクル樹脂組成物Aを用い、一次バッキング層の散布量2,100 g/m2、二次バッキング層の散布量700 g/m2とし、一次バッキング層、二次バッキング層、共に冷却加圧ロールを用いて0.10MPaで加圧したこと以外は実施例1と全く同様にして軽量リサイクルタイルカーペットを得た。
【0054】
<実施例7>一次バッキング層、二次バッキング層を構成する樹脂として、塩化ビニル樹脂の含有量が15重量%のリサイクル樹脂組成物Aを用い、一次バッキング層の散布量2,300 g/m2、二次バッキング層の散布量700 g/m2とし、一次バッキング層、二次バッキング層、共に冷却加圧ロールを用いて0.20MPaで加圧したこと以外は実施例1と全く同様にして軽量リサイクルタイルカーペットを得た。
【0055】
<比較例1>一次バッキング層、二次バッキング層を構成する樹脂として、バージンの塩化ビニル樹脂組成物からなる樹脂組成物Eを用い、一次バッキング層の散布量2,000 g/m2、二次バッキング層の散布量1,500 g/m2とし、厚み2.0mmのバッキング層を形成したこと以外は実施例1と全く同様にして軽量リサイクルタイルカーペットを得た。
【0056】
<比較例2>一次バッキング層、二次バッキング層を構成する樹脂として、塩化ビニル樹脂の含有量が10重量%のリサイクル樹脂組成物Fを用い、一次バッキング層の散布量2,400 g/m2、二次バッキング層の散布量600 g/m2としたこと以外は実施例1と全く同様にして加工したが、シート状物が形成できなかった。
【0057】
<比較例3>一次バッキング層、二次バッキング層を構成する樹脂として、塩化ビニル樹脂の含有量が25重量%、80%以上の微粉砕物の粒径4,000μmのリサイクル樹脂組成物Gを用い、一次バッキング層の散布量2,500 g/m2、二次バッキング層の散布量600 g/m2としたこと以外は実施例1と全く同様にして加工したが、シート状物が形成できなかった。
【0058】
<比較例4>一次バッキング層、二次バッキング層、共に加熱装置により200℃で前記リサイクル樹脂組成物Aを加熱溶融せしめ、一次バッキング層の散布量2,300 g/m2、二次バッキング層の散布量700 g/m2としたこと以外は実施例1と全く同様にして軽量リサイクルタイルカーペットを得た。
【0059】
<比較例5>一次バッキング層の散布量2,300 g/m2、二次バッキング層の散布量700 g/m2とし、一次バッキング層、二次バッキング層、共に冷却加圧ロールを用いて0.40MPaで加圧したこと以外は実施例1と全く同様にして軽量リサイクルタイルカーペットを得た。
【0060】
上記のようにして得られた各タイルカーペットに対して重量、バッキング層の比重、カーペット全体における廃材のリサイクル比率、及び下記評価法に基づいて寸法安定性試験、反り性能を調べた。その結果を表1及び表2に示す。
【0061】
(寸法安定性試験)(A)JIS L4406に準じて、タイルカーペットを60℃で2時間放置後、水道水に2時間浸漬し、その後、60℃で24時間放置した後、20℃65RH%下で、タイルカーペットのたて方向及びタイルカーペットのよこ方向のそれぞれについて測定した。測定は、3サンプル行い、その平均値を求めた。(B)500mm角のタイルカーペット1枚の表面上に荷重90kgを加えたチェアーキャスターを2,000回転させた後、縦横寸法を測定し、転動前の寸法と対比した値を縦横の平均値で示した。(A)(B)共にその値が±0.15%未満であれば実際の使用に耐えうるタイルカーペットとなる。
【0062】
(反り性能)JIS L1904に準じて、各タイルカーペットを標準状態「20±2℃、(65±2)RH%」で24時間以上放置した後、水平な試験台の上に置き、タイルカーペットの四隅と試験台の隙間の長さを測定し平均値で示した。その値が0.5mm未満であれば実際の使用に耐えうるタイルカーペットとなる。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
表1から明らかなように、実施例1〜7のタイルカーペットは、いずれも地球環境保護に貢献し、軽量で、寸法安定性、反り性能に優れた十分に使用に耐えうるタイルカーペットを得た。
【0066】
これに対し、比較例1のタイルカーペットはカーペット廃材を用いておらず、地球環境保護に貢献するものではなかった。また、比較例2、3のタイルカーペットは加工性が不良でシート状物が形成できなかった。さらに、比較例4、5のタイルカーペットは寸法安定性、反り性能が不十分であった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明における一実施形態に係る軽量リサイクルタイルカーペットの概略断面図である。
【図2】本発明におけるもうひとつの一実施形態に係る軽量リサイクルタイルカーペットの概略断面図である。
【図3】本発明における一実施形態に係る軽量リサイクルタイルカーペットの加工工程概略図である。
【符号の説明】
【0068】
1・・・軽量リサイクルタイルカーペット 2・・・表面パイル層 3・・・バッキング層 4・・・補強層 5・・・目止め層6・・・パイル糸7・・・カーペット基材8・・・無端離型性ベルト9・・・スキャッター10・・加熱装置11・・加圧ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面パイル層と、樹脂組成物からなる複数層のバッキング層と補強層が積層されたタイルカーペットにおいて、前記バッキング層の少なくとも1層以上が、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られるリサイクル樹脂組成物を連続走行する離型性ベルト上にパウダー散布し、加熱した後に加圧し、比重が1.5以下で成型された長尺のシート状物であることを特徴とする軽量リサイクルタイルカーペット。
【請求項2】
前記リサイクル樹脂組成物において、その成分中に塩化ビニル樹脂の含有量が15重量%以上であり、前記リサイクル樹脂組成物の80%以上の組成物が粒径500μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の軽量リサイクルタイルカーペット。
【請求項3】
表面パイル層と、樹脂組成物からなる複数層のバッキング層が積層されたタイルカーペットにおいて、前記バッキング層の少なくとも1層以上が、リサイクル樹脂組成物を連続走行する離型性ベルト上にパウダー散布し、加熱した後に加圧し、比重が1.5以下で成型された長尺のシート状物であることを特徴とする軽量リサイクルタイルカーペットの製造方法。
【請求項4】
前記パウダー散布したリサイクル樹脂組成物を150〜180℃で加熱し、その後に0.05〜0.30MPaで加圧したことを特徴とする請求項3に記載の軽量リサイクルタイルカーペットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−245184(P2012−245184A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119836(P2011−119836)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】