説明

軽量装甲および製造方法

【課題】複数の衝撃に対する抵抗ならびに低減された重量を有する装甲を提供する。
【解決手段】装甲物20は、弾道発射体の貫通を防ぐよう働く摩擦材料50を含む。装甲は、さらに、複数の弾道発射体の単一衝撃点における貫通を防ぐようにも働く。装甲は、裏張り、もしくは外装を含んでもよく、または中間層を裏張りと外装との間において任意の組合せで含んでもよい。装甲されるべき物60に直接適用されるかまたは取付けられて、その物のすべてまたは任意の部分を被覆する。裏張りおよび外装は摩擦材料または非摩擦材料を含んでもよい。摩擦材料は、樹脂結合剤、繊維質支持構造、摩擦改質剤システム、および磨耗システムの組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
この特許出願は2006年9月29日に提出された米国仮特許出願連続番号第60/848/498号に対して優先権を主張するものであり、その全体をここに引用により援用する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
この発明は一般に装甲に関する。より特定的には、この発明は摩擦材料を装甲として用いることに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
弾道装甲は、すべての態様の物をすべての態様の弾道発射体のからの衝撃による損傷から保護するため、構造上および非構造上適用例を含む、多くの形式および多くの適用例において用いられる。そのような適用例には、建物および他の構造物、すべての態様の戦闘用および非戦闘用車両、人員用および他の適用例が含まれる。たとえば、歴史的に見て、戦闘用および非戦闘用構造物ならびに車両はたとえば鉄または高合金鋼から形成される重金属装甲によって防護されていた。より強力で高性能の撤甲発射体が開発されたため、これらの従来の材料からなる装甲は貫通に対してより阻止力を持つようにしなければならなかった。これは、一般的には、装甲の厚みをより大きくし、装甲を衝撃および貫通に対してより阻止力があるようにすることによって達成されたが、これは、一般には、装甲をより重くするという不利な点を有した。既存の装甲の種類の例は、さまざまな軍用規格、たとえば、鍛錬加工された、冷間圧延された鉄および鋼、ならびにさまざまな厚みの他の種類の装甲に対して存在するようなものに見られるだろう。
【0004】
高性能の撤甲弾道発射体の開発、および低減された重量を必要とする適用例、たとえばさまざまな種類の航空機などにおいて用いられ得る装甲に対するニーズに応えて、より強く、しかしながらより軽量な種類の装甲材料が開発され用いられてきた。たとえば、Ti−6A1−4V(公称で6重量%アルミニウム、4重量%バナジウム(残りは本質的にチタニウム)は、十分な貫通抵抗と、鉄に基づく装甲よりも低い密度とを組合せ、したがって、装甲材料として広く用いられてきた。この合金は、相対的に軽量であり、発射体のエネルギの吸収を、エネルギをその質量にわたって拡散することにより行ない、したがって、発射体の先端を鈍らせ、貫通を阻止する。一例として、米国軍用規格MIL−DTL−46077F NOT 1には、チタニウム合金装甲に対する軍用要件が述べられている。チタニウムに基づく装甲の組成および冶金学的属性および形態学のさまざまな改善ならびに修正が提案されてきた。
【0005】
比較的最近において、チタニウムに基づく装甲を含む、従来の装甲および軽量装甲は、装甲材料を溶融するような非常に小さい領域内にエネルギを集中させるよう設計された高度な撤甲射撃によって阻まれている。これに対応して、高温のセラミックに基づく装甲が開発された。セラミックが装甲の形成に用いられるのは、それらが、典型的には、高い溶融点ならびに十分な高温強度および靭性を有し、それと並んで、比較的軽量でありかつ非常に硬い材料であるからである。一例として、米国軍用規格MIL−P−46199P NOT1にはアルミナ板装甲に対する要件が規定されている。しかしながら、セラミック装甲の制限の1つは、それらは、発射体のエネルギを部分的にクラッキングによって放散するということである。したがって、セラミック装甲は反復打撃能力に欠け、つまり、それらは、同じ箇所を複数回撃たれた場合、貫通を阻止できず、複数の射撃を受けた場合、それらは分解する。この問題に対処すべくさまざまな試みがなされてきており、その1つは、金属層または基材、たとえばセラミックに基づくコアを取囲むTi−6A1−4V層などを有する金属−セラミック積層体または複合装甲の使用である。しかしながら、そのような材料がいくらか改善された属性および性能を与え得る一方で、セラミック部分は、結局は、複数の発射体の衝撃に応じて割れ、したがって、装甲の効果を大きく減ずるかまたはなくす。さらに、セラミックおよび金属−セラミック装甲のコストは、一般に、他の種類の装甲のコストよりも非常に高い。
【0006】
他の種類の装甲は、典型的には、反応装甲として公知である。ここにおいて、この装甲は、弾道発射体によって衝撃を受けた際に融除またはさらには爆発によって反応し、典型的には発射体の飛行およびその衝撃ゾーンを変えるような融除性または爆発性材料を含み、それによって、それが関連づけられる物に対する防護を与える。爆発性反応装甲においては、反応装甲爆発の外方向への力が侵入してくる発射体の力を打消し、それによって、装甲の貫通を阻止する。反応装甲設計は、たとえば、発射体のエネルギを吸収し、発射体を鈍らせ、発射体の軌道を変更し、および/または発射体を破壊するような可動部材を含んでもよい。反応装甲は、しかしながら、セラミック装甲のように、同じ箇所における複数回の衝撃に対して十分な防護を与えないという点で、いくらか不十分である。一旦反応装甲が起動されると、装甲の同じ箇所を打撃する第2の射撃によって、その装甲は貫通されるかまたはそうでなければ防護されている物が損傷を受ける可能性がはるかにより大きい。
【0007】
さまざまなポリマーおよびポリマー組成物が弾道装甲としての使用に対して提案されており、たとえば、米国特許7,037,865に記載される複合材料などは、中空の微小球体などのような、さまざまな密に充填された小さな粒子を充填される樹脂などのような基材材料を使用し、さらに、繊維をそれら粒子またはその基材に対する部分的な置換物として含み、または側面材料をその基材/粒子組成物に対して含んでもよい。
【0008】
織布および不織布を含む数多くの種類の布、ならびにさまざまな組合せにおいて層状にされた布、もしくはさまざまな樹脂および他の材料を含浸された布、またはその両方の布も、さまざまな形態の衣服および頭部保護物を含む、人身防護用適用例、つまり防弾衣に対する弾道装甲として用いられている。これらの装甲は、ポリマー繊維、たとえばさまざまなアラミド、超高分子量ポリエチレン、ポリベンゾオキサゾールおよび他の繊維から形成される。そのような「軟装甲」衣服および他の物は、従来の「硬装甲」プレート挿入物の挿入のための空間を組込んで弾道発射体に対するそれらの阻止力および防護を改善するようにも設計されてきた。軟装甲はしばしば人身防護用に用いられることが多いため、そのような装甲の重量は非常に重要であり、重量を最小にしながら耐弾性および防護を最大にすることが望ましい。硬装甲挿入物はそのような軟装甲の重量の大きな部分を構成し得るため、従来の種類の装甲に比較して低減された密度およびその結果重量を有し、等価なまたは改善された耐弾性および防護性能を提供する挿入物としての使用に対し好適な硬装甲を特定することが非常に望ましい。防弾衣は、さまざまな小さい口径の発射体による貫通を阻止するその能力に基づいて、国立司法研究所により、NIJ基準0101.4の下、4つの下位分類(I−IV)に分類される。さまざまな米国軍用規格が、「軟」防弾衣および「硬」防弾衣挿入物に対しても展開されており、これらの材料に対する運用上および性能要件を定義している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の多くの既存の形式の装甲にも関わらず、新しい軽量装甲材料が、さまざまな装甲適用例に対して、特に、既存の種類の装甲と比較して複数射撃能力(複数の衝撃に対する抵抗)ならびに低減された密度およびその結果重量を有し、等価なまたは改善された耐弾道発射体性および防護性能を提供するようなものに対して、要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
1つの局面において、この発明は装甲物を含み、それは、弾道発射体の貫通を防ぐよう機能する摩擦材料を含む。この摩擦材料は、反復打撃性能を提供し、装甲の表面における1点の衝撃における複数の弾道発射体の貫通を防ぐよう機能する。
【0011】
別の局面において、この発明の装甲は、裏張りもしくは外装の1つ、またはその両方を含んでもよい。裏張りは、複数層の積重ねまたは積層を構成する摩擦材料から形成されてもよく、または金属のような非摩擦材料から形成されてもよい。
【0012】
この発明のさらに別の局面において、この発明の装甲は取付のための手段によって裏張りに取付けられてもよい。取付のための手段は、取付機構、たとえばさまざまな種類の留め具、または取付材料、たとえばさまざまな樹脂材料、糊、接着剤および同様の材料などを含んでもよい。
【0013】
この発明のさらに別の局面においては、摩擦材料は、樹脂結合剤、繊維質支持構造、摩擦改質剤システムおよび充填材材料の磨耗システムの組成物を含む。
【0014】
この発明のさらに別の局面において、樹脂結合剤は高架橋ポリマーを含む。この高架橋ポリマーは、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、もしくはそれらのコポリマーまたは他の化学的もしくは物理的組合せを含んでもよい。
【0015】
この発明のさらに別の局面においては、樹脂結合剤は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、縮合された多核芳香性樹脂、シアナートエステル樹脂、メラミン樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、レソシノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フラン樹脂およびポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂を含む。
【0016】
この発明のさらに別の局面においては、繊維質構造は、金属繊維、ガラス繊維、鉱物繊維、炭素繊維、ポリマー繊維およびセラミック繊維からなる群から選択される少なくとも1つの繊維を含む。
【0017】
この発明のさらに別の局面においては、摩擦改質剤システムは、グラファイト、金属硫化物、カシューシェル、ゴム、金属、金属酸化物、金属炭化物、および金属ケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの摩擦改質剤を含む。
【0018】
この発明のさらに別の局面においては、磨耗システムは、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、雲母、アルカリ金属チタン酸塩、バーミキュライト、三酸化モリブデン、カシュー粉末、ゴム粉末およびクレーからなる群から選択される少なくとも1つの充填材を含む。
【0019】
この発明のさらに別の局面においては、この発明の装甲は、プレポリマー混合物を形成するよう混合するステップと、プレポリマー混合物を成形して装甲物を形成するステップと、プレポリマー混合物を重合して装甲物を重合するステップとを含む方法によって形成される。
【0020】
この発明のさらに別の局面においては、この方法は、プレポリマー混合物を成形して装甲物を形成するステップの前に、裏張りまたは装甲されるべき物を導入して、装甲が、装甲されるべき物の上に形成されるように、装甲物を形成するステップをさらに含んでもよい。
【0021】
この発明のさらに別の局面においては、この方法は、重合された装甲物を、装甲されるべき物に取付けて、装甲された物を形成するさらなるステップを含んでもよい。取付は、取付装置、たとえば機械的留め具など、または取付材料、たとえば熱硬化性樹脂、糊、接着剤もしくは同様の材料などを用いて行なわれてもよい。
【0022】
この発明のさらに別の局面においては、この方法は、プレポリマー混合物を成形して装甲物を形成するステップの前、およびプレポリマー混合物を形成する混合ステップの後において、装甲予成形品を形成するステップをさらに含んでもよい。
【0023】
この発明のこれらならびに他の特徴および利点は好ましい実施例の詳細な記載から当業者にはより明らかになることとなる。
【0024】
詳細な説明に伴う図面を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の装甲物の部分断面図である。
【図2】装甲物および防護される物の部分断面概略図である。
【図3】装甲された物の部分的断面図である。
【図4A】この発明の装甲された物のさまざまな例示的配置および構成の部分断面図である。
【図4B】この発明の装甲された物のさまざまな例示的配置および構成の部分断面図である。
【図4C】この発明の装甲された物のさまざまな例示的配置および構成の部分断面図である。
【図4D】この発明の装甲された物のさまざまな例示的配置および構成の部分断面図である。
【図5】この発明の装甲された物の概略図である。
【図6A】さまざまなジョイント構成を用いて装甲物を接合することによって形成される装甲された物の断面図である。
【図6B】さまざまなジョイント構成を用いて装甲物を接合することによって形成される装甲された物の断面図である。
【図6C】さまざまなジョイント構成を用いて装甲物を接合することによって形成される装甲された物の断面図である。
【図6D】さまざまなジョイント構成を用いて装甲物を接合することによって形成される装甲された物の断面図である。
【図7】複数層装甲物を含む装甲された物を示す断面図である。
【図8A】装甲予成形品を形成する方法によって形成される形成された装甲物の概略図である。
【図8B】装甲予成形品を形成する方法によって形成される形成された装甲物の概略図である。
【図8C】装甲予成形品を形成する方法によって形成される形成された装甲物の概略図である。
【図9】さまざまな装甲物が関連付けられた建物の概略図である。
【図10A】さまざまな装甲物が関連付けられたいくつかの種類の車両の概略図である。
【図10B】さまざまな装甲物が関連付けられたいくつかの種類の車両の概略図である。
【図10C】さまざまな装甲物が関連付けられたいくつかの種類の車両の概略図である。
【図11】装甲および装甲された物を形成する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好ましい実施例の詳細な説明
図1を参照して、この発明は装甲20の相対的軽量物10を含む。この相対的軽量物10は、矢印によって記号的に表現され示される、比較的軽量物10の表面40に向かって火器、銃砲、発射機から射撃されるかまたは他の態様で発射されてもよい、さまざまな形態の弾道発射体30の衝撃に関連付けられる衝撃関連のまたは他の損傷からの貫通に対する阻止力およびしたがってそれに対する防護を与える。装甲20は摩擦材料50を含み、それは、典型的には、さまざまな特性の中でとりわけ、制御された摺動摩擦および磨耗特性を与えるようにされる、強力で、軽量で、高温、環境的に安定し耐久性がある材料を必要とする、それぞれブレーキライニングおよびクラッチライニングなどのさまざまな制動、クラッチ動作および同様の適用例に対して頻繁に用いられる種類のさまざまな摩擦材料を含む。
【0027】
制動およびクラッチ動作適用例において用いられる摩擦材料は装甲20に対して用いられてもよい一方で、それらはいくつかの重要な面においてこれらの材料から区別される。第1に、装甲20は、ある種の重量トラック、機関車および他の大型車両適用例を除き、制動およびクラッチ動作適用例において用いられる摩擦材料よりも大きな厚みである厚み(t)を一般的には有することになる。第2に、装甲20は、典型的には、上記のような大型車両に用いられるものをおそらくは除いて、典型的なブレーキパッド、ドラムライナまたはクラッチ摩擦パッドの表面積よりも大きな発射体衝撃を受ける表面積(A)を有する構成において用いられることになる。第3に、装甲20の周縁(P)に関連付けられる形状係数などのような形状構成は、一般には、制動およびクラッチ動作適用例に関連付けられるものとは異なることになる。たとえば、制動およびクラッチ動作適用例は、典型的には、円筒形、半円筒形または円弧の構成を利用する一方で、装甲20は、一般的には、近接の係合する線形縁部と容易に整列させることができる線形縁部を伴う構成を用いることになり、湾曲した縁部が用いられるところでは、装甲20の近接部は係合する湾曲表面を有するようにされ、その湾曲表面は、装甲20の隣り合う部分と係合してそれらの間にジョイントを形成しそこにおいてはこれらの部分はお互いと接触するかまたは近接することによりそのジョイントの長さに沿って貫通に対する阻止力を与えるようにされる。第4に、ディスクブレーキパッド、ドラムブレーキライナ、またはクラッチプレートの縁部は典型的には摩擦表面に対して直交するが、装甲20の縁部(E)は、一般的には、さまざまなテーパ、ラップジョイント、さねはぎ、中間部材(つまりビスケット型ジョイント)を受入れるようにされる溝、またはジョイントに沿って装甲20の隣り合う部分との重なりを可能にしてジョイントに沿って連続的な装甲防護を与える他の構成の組入れなどによって、(大きな面積の装甲範囲を可能にするよう)装甲20の他の部分との係合のために適合されることになる。第5に、ディスクブレーキパッド、ドラムブレーキライナ、またはクラッチプレートの摩擦表面は平坦な平面であるが、一方、装甲20の露出面(つまり発射体からの考えられ得る衝撃を受ける表面)は、平坦な平面と並んで、防護されるべき物の表面に一致するようにされる表面、たとえば、装甲20の表面が平坦な平面でないように規則的もしくは変則的な逃げパターンまたは他の特徴を有する、すべての態様の、湾曲した表面、段状表面、波型表面などとの双方を含む任意の好適な形状を有するかもしれない。第6に、装甲20は、防護されるべき物に面しかつ発射体からの衝撃を受ける表面に面さない表面に組込まれ、装甲20を通って露出面に達しない、装甲20および防護されるべき物を取付けるためのねじ、ねじ切りボルト、カム型留め具などのような留め具を受けるようにされる、めくら孔または他の特徴物を組込んでもよい。第7に、摩擦材料50から形成される装甲20の物10は、さまざまな制動、クラッチ動作または他の摩擦制御物の特性であるように、公知のサイズ、形状、重量および表面仕上げを有する予め定められた摩擦対抗面との単一の使用または反復的な係合および係合解除に対して機能するというよりも、弾道発射体30もしくは複数の弾道発射体30または同様の弾道発射体、またはより考えられるのは、一般的に、摩擦材料の表面に対して無作為または可変の衝突角度を有することになるさまざまな形状、サイズ、重量および材料からなる弾道発射体の種類からの貫通を阻止するかまたはそれを防ぐよう機能するという事実によって、同様に摩擦材料を用いる制動およびクラッチ動作構成部品からも区別される。最後に、制動、クラッチ動作または同様の摩擦制御物および適用例における摩擦対抗面はこの発明の発射体30を構成しはせず、なぜならば、それらは、摩擦材料の厚みを貫通するようには設計されず、むしろ、摩擦材料の表面と摩擦的に係合するよう設計され、たとえそれらが表面を貫通するよう設計されたとしても、弾道発射体のように対抗面には接近しないであろうからである。
【0028】
これらの局面は、単独または組合わされた状態において、装甲20を、ディスクブレーキバッド、ドラムブレーキライナおよびクラッチパッドを含む摩擦材料50の他の適用例から区別する。
【0029】
図2を参照して、装甲20は、独立型として、非一体型、自立型、または間隔をおかれた防護的障壁を含み、そのように用いられてもよく、それは、防護される物60からある距離をおいて配置されるが、装甲はその防護される物60に対して除去可能または永久的に連結または固定されない。1つの例は、装甲20を、建物、車両、人または他の防護されるものを弾道発射体または他の武器から守る、フェンス、スクリーン、囲いまたは他の障壁として用いることを含むであろう。この例では、装甲20は固定されたまたは可変の位置を有してもよいが、防護される物60に対して取付けられたりまたは他の態様で連結されたりはしない。他の例では(図示せず)装甲20は楯の形式で用いられ得、その場合においては、防護される物60からの位置または距離は固定されず、一般に可変であり、装甲20は、防護される物60に対して除去可能または永久的に固定はされず、おそらくは、防護が所望されるときにほんの一時的に把持されるかまたは保持されるかまたは置かれるかであろう。
【0030】
図3を参照して、装甲20は、装甲または防護されるべき物60′に対して除去可能または永久的に取付けられるか、固定されるか、連結されるか、または他の態様で接続され、したがって、装甲された物70を形成してもよい。装甲または防護されるべき物60′の性質によって、装甲20は、それが発射体30に対して防衛の第一線であるよう意図されるかまたは最終線であるよう意図されるかによって、物60′の、到来する発射体30の脅威に晒される側に置かれてもよく、または到来する発射体80からの脅威から離れた反対側90に置かれてもよい。これは、側80を装甲20で被覆し、装甲されるべき物60′を裏張りとして作用する状態で用いること(図4A)、または側90を装甲20で被覆し、装甲されるべき物60′を外装として作用する状態で用いること(図4B)、または挿入物を1つ以上の中間層100として伴い、装甲されるべき物60′が外装および裏張りとして作用し、どちらの方向から到来する発射体30に対しても防護を提供してもよく(図4C)、または装甲20は側80および側90の両方に置かれて、どちらの方向から到来する発射体30に対しても防護を提供してもよく(図4D)、または上記を全体的または部分的に任意に組合せたものを含んでもよい。装甲20は、装甲された物70を完全に被覆するか、裏張りするか、封入するかもしくは注入するかまたは他の態様でそれと一体化されてもよく、または装甲された物70のほんの一部72(図3参照)、または代替的に、装甲された物70の複数の部分72の任意の組合せを被覆するかまたはそれ(ら)に取付けられるかまたは注入するかまたは他の態様で一体化されてもよい(図3)。まとめると、物70の任意の外面、内面および中間面を含む任意の面を、全体的または部分的に、任意の組合せにおいて、装甲20の適切な組込みによって装甲してもよい。
【0031】
物10は、弾道発射体30の衝撃に関して装甲20の要素としての使用に対して適合されるかまたは他の態様でそれとして機能する任意の物10である。弾道発射体30は、任意の種類の発射体または他の武装もしくは装置であってもよく、銃または発射機から発射されるさまざまな口径またはサイズの発射体、および爆弾、弾薬または他の爆発性装置の爆発から直接的または間接的にもたらされるすべての態様の発射体を含む。物10はすべての態様の構成要素を含んでもよく、それらは、装甲20としてのそれらの唯一の機能提供として弾道発射体30からの防護を提供しなければならない、ある構造または機構の一体的要素であってそれらの機能に関わる一体的要素である構成要素、または非構造的であるかもしくは他の機構の要素ではなく、それらの機能に関係しない要素である構成要素を含む。たとえば、物10は、弾道防護を与える一方で同時にある構造において支持または設計機能を供する壁または天井パネルのような装甲された構造上パネルを含んでもよく、または単に弾道防護を提供し他の構造上もしくは設計目的または機能は有さないパネルとして機能してもよい。非限定的な例として、物10は、さまざまな種類の建造物の壁205、屋根210、天井215、扉220、枠225、シャッタ230、窓235、ダクト240および他の部分に対するパネルを含むさまざまな種類の構造物200およびその構成要素において用いられるすべての態様、形状およびサイズの構造上パネル(図9)、ならびに橋、トンネル、フェンス、柱、標識、装飾的部材などのさまざまな構成要素および他の要素(図示せず)を含んでもよい。さらなる非限定的な例として、物10は:自動車、トラック、バス、重機および他の陸上用車両または設備;ボート、船、潜水艦、荷船、ホバークラフトおよび他の水上/水中用船舶;航空機、ヘリコプター、グライダー、遠隔操作飛行体(ROV)、ミサイル、宇宙船および他の空中もしくは宇宙飛行体または他の種類の飛行体;タンク、装甲された人員運搬車、自己推進型砲、自己推進型ロケットおよびミサイル発射車両、タンク、固定型もしくは可動型砲、ロケットランチャー、砲架、砲台または他の形式の軍用設備または装備を含む、車両、船舶、飛行体または戦用装備のための装甲またはそれらの装甲された構成要素として用いられるすべての態様の物に対する装甲20を含んでもよい。物10は、ベスト、シャツ、コート、パンツ、脛当て、前腕当て、肘当て、首当て、靴下、靴、ブーツなどの履物類、頭部用品、ヘルメット、顔面シールドおよび他の衣類または装備などの、すべての態様の防弾もしくは弾丸阻止衣類または装備、ならびに携帯式もしくは遠隔配置される障壁またはバリケードを含む、人身防護物もしくは人身防護物のための挿入物または取付物の形式で、装甲20を含んでもよい。これらは、この発明の範囲内で可能な装甲20のさまざまな物10の適用例のいくつかの単なる例示である。
【0032】
装甲20の物10は、一般的には、上記の品目の一部に適用またはそれとして組込まれてそれに対する防護を与えることになり、これらの品目の全体を構成しないことになることが多々あるが、装甲の特定の適用および要件によってはそのようにしてもよい。以下に記載される製造方法から理解されるように、装甲20は、単一の部品としてか、またはいくつかの部品を利用しそれらを統合して必要な形状を形成することによって、事実上任意のサイズおよび形状に形成されてもよく、または事実上任意の必要とされるサイズまたは形状に適合されてもよい。複数の部品が用いられる場合、それらは個々に他の物60′に適用されて装甲20および装甲された物70を形成してもよく、または、ここに記載されるように、まず互いに接合されることにより装甲20を形成し、次いで物60を防護するように、または物60′とともに用いられて、装甲された物70を形成してもよい。装甲20はさまざまな成形方法によって形成されてもよいため、平坦、湾曲、変則的もしくは他の表面輪郭または厚みプロファイルの事実上任意の組合せが形成されてもよい。同様に、事実上任意のサイズおよび厚みが可能である。これは、金型および成形設備を適切に尺度決めすることにより達成されてもよい。物10は、必要とされる装甲20の形状、サイズおよび適用環境によって、事実上任意の形式をとってもよい。これは、板、シート、カバー、上部被覆物、下部被覆物、アップリケ、積層物などを含んでもよい。たとえば、建築物適用例に対しては、物10は、標準サイズの建築材料、たとえば米国で用いられる0.125、0.375、0.500、0,675および0.750、1.0インチまたは同様のメーター法等価物などのような標準的な英語表記の厚みを含む、2′×4′、4′×8′および4′×12′シートもしくはさまざまな厚みの同様のメーター法によるサイズ決めされた等価物など、または上記のもしくは他の標準的厚み(たとえば0.375″装甲を0.375″合板に積層して0.75″の積層体を形成する)を全体の厚みとして維持するように乾式壁、合板、配向性ストランドボード、鋼または他の金属シートおよび同様の建築材料と接合されるよう相補的な厚みを有するシートに形成されてもよく、または任意の所望される特注の厚みに形成されてもよいと考えられる。別の同様の例として、装甲20の物10は、さまざまな幅および長さの1″および2″の厚みの「ボード」など、またはさまざまな壁部厚み、外径および長さの導管またはパイプを含む円筒形状の、他の標準的な建築材の形式に形成されてもよく、または建造物に用いられるすべての態様の周知の囲い、ハウジング、パネルおよび他の物の形状に形成されてもよい。さらに別の例としては、装甲20の物10は、タイル(たとえば床、壁部および天井タイル)、レンガ、ブロックまたは他の基礎建築要素の形式を有してもよい。レンガ、ブロックおよびタイルの場合には、標準的な英語表記およびメートル法のサイズを含む任意のサイズを利用してもよい。このように、これらの要素を基材または格子パターンにおいて準備することによってより大きな領域をカバーすることができる。さらに、複数層の装甲20を用いて物10の全体的な厚みを増大させてもよい。図5に示される例では、建物の形式での物10は、その外部表面に、装甲20の上張りを、屋根に適用されるシート110、および格子パターンで外部壁に適用されるタイル120の形式で適用されている。図6A−図6Dに示されるように、装甲20は、タイルまたはシートなどとして、または格子もしくは同様のパターンで適用され、複数の部品がそれらの縁部に沿って当接するように接触して置かれるとき、タイル、シートなどの縁部は、直線経路、特に、装甲20の表面に直交する経路を、弾道発射体30の可能性のある衝突に関してその厚みを通して有することを避けるように、近接する部品が互いに重なるように、端部形状を有することが好ましいと考えられる。ジョイントにおいて材料の厚みを通るそのような直線経路の形成を避けるすべての態様の、面取りされた、テーパされたほぞ孔およびほぞ、さねはぎ、ラップジョイントならびに他の構成を利用してもよい。しかしながら、突合せ継手の使用もこの発明の範囲内であり、または空間を置かれた構成でさえもある。
【0033】
タイルまたはシートなどは、基板140への取付のための手段、たとえば、基板への化学的または物理的取付を促進するような接着剤、またはここに記載される他の取付装置、たとえばさまざまな種類の留め具などを用いて基板に取付けられてもよい。装甲20が物に直接成形されて、装甲された物10を形成する場合、取付の手段140は摩擦材料50の基材として用いられる樹脂材料であってもよく、それは、樹脂基材の硬化および重合に関連して物10を含む数多くの異なる種類の材料に直接接合され得る。
【0034】
同様に、接着剤、モルタルまたは他の充填材などのような、装甲20の隣り合う部分の取付のための手段150を当接する縁部に沿って挿入して、それらの間のジョイントをさらに強化および封止し、装甲20の全体的な強度を改善してもよい。装甲20を物の上に直接成形して、装甲された物10を形成する場合、取付の手段150は摩擦材料50の基材として用いられる樹脂材料であってもよく、それは樹脂基材の硬化および重合に関連してそれ自体に直接接合され得る。さらに、当接する縁部は、ジョイントを強化し、装甲20の隣り合う部品の厚みを通る直線経路を取除く目的のため、隣り合う溝22を組込んで、隣り合う溝22内に延びるよう機能する細片または他の部材の形式を有してもよい接合部材24を受けるように機能させてもよい。接合部材24に加えて、溝22は接着剤150のような取付のための手段を受入れることができるようにされてもよく、接着剤150の存在を容易にするよう接合部材24に対してサイズ決めされてもよい。溝は、当接するジョイントの全長にわたって延在してもよく、またはその一部のみに沿って延在してもよい。同様に、接合部材24は、ジョイントの長さに沿って連続的に延在してもよく、またはその一部のみに沿って延在してもよい。接合部材24はこの接合の形式を用いることを可能にするよう「ビスケット」の形式に適合されてもよい。接合部材24は、装甲20と同じ材料から形成されてもよく、または任意の他の好適な材料、たとえば木材、プラスチックまたは鋼などから形成されてもよい。好ましくは、接合部材24は発射体30からの貫通に対する阻止も与えるであろう。
【0035】
上記の例は、建造物および建造適用例に対する装甲20の物10に向けられる。同様に、上に記載され図10A−Cにおいて示されるさまざまな車両300に関する適用例においては、装甲20の物10は、側部310、クォーター320、トランク330、フード340、屋根350および底部360パネルを含むさまざまな本体パネル、ならびに枠部材、ハウジング、カバー、トリム、内部天井、側部および扉パネル、トランクライナ、防火壁などに形成されるか、またはそれらと置換えられるように形成されるか、またはそれらとして用いられるように形成されるか、またはそれらと関連して用いられるように形成されてもよい。同様に、船舶に対しては、装甲20は、船殻構造、隔壁、下部構造部材、上部構造部材、タレット、障壁またはシールド、火砲陣地、ハウジング、カバー、ハッチなどに形成されてもよく、またはそれらと置換えられるよう形成されてもよく、またはそれらとして用いられるよう形成されてもよく、またはそれらに関連して用いられるよう形成されてもよい。さらに同様に、航空機および宇宙船に対しては、装甲20は、さまざまな隔壁、胴体パネル、エンジンハウジング、銃ハウジング、シュラウド、内部パネル、ハウジング、カバー、ハッチなどに形成されるか、またはそれらと置換わるように形成されるか、またはそれらとして用いられるかもしくはそれらに関連して用いられるよう形成されてもよい。
【0036】
図8A−Cを参照して、熱硬化性樹脂を含む樹脂結合剤の使用では、装甲20は、装甲20の物10を形成するよう上昇された温度および圧力で成形され、形成されるか、または他の態様で形状化され硬化されてもよい装甲予成形品25の、たとえばBステージに硬化するような、すべての態様の先駆物質およびプレプレグ材料を含む、部分的硬化を許すさまざまな組成から調剤されてもよいと考えられる。そのような装甲予成形品25もこの発明を含む。装甲予成形品25は任意の好適な形状を有してもよいと考えられるが、装甲予成形品25を1つ以上の基礎的な先駆物質形状、たとえば、そのどれもが任意の数の最終的な形状および形態、たとえばここに記載されるようなものに形成されてもよい、平坦なシートまたは板、真円円筒形、円板などのような形状にて提供することが望ましいかもしれない。これは、限られた数の開始ブランクの在庫を用いてより多数の最終的な形状または製品を形成するという利点の可能性を有する。
【0037】
摩擦材料50は、ディスクブレーキパッドおよびドラムブレーキライナ摩擦材料として通常用いられる材料を含むが、クラッチ摩擦材料として一般に用いられる同様の構成要素および組成であって、ブレーキまたはクラッチ摩擦材料としては一般には用いられないか、またはこれらの適用例における商業上の使用に対しては十分には適さない摩擦属性を有するものの、これらの構成要素を組込むすべての態様の材料組成を含むとも考えられる構成要素および組成を有する材料を含むとも考えられる。摩擦材料は、一般に、以下の特性、つまりさまざまな環境下における高い静的および動的滑り摩擦係数、−40〜1200℃の動作温度という広い範囲にわたる安定したかつ予測可能な動的摩擦係数、および対抗面(対向する表面)磨耗、破断を阻止するよう十分なせん断力、水分、塩分、砂、砂利および泥に対する腐食抵抗を含む(一般的には最小値まで)制御された磨耗特性を有する。摩擦材料は、さらに、一般的には、断熱性があり、減衰特性を持ち、軽量である。
【0038】
装甲20は摩擦材料50を含み、樹脂結合剤52の基材、繊維質支持構造54、摩擦改質システム56、および充填材の磨耗システム58を含むとして記載されてもよい。摩擦材料50はこれらの構成要素の組成物であり、樹脂結合剤52はポリマー基材を形成して、繊維質支持構造54、摩擦改質システム56および磨耗システム58を結合する。これらの構成要素は、一般には、化学的混合物および複合材料として分類されてもよいが、それら構成要素のうちの1つ以上が他の構成要素の1つ以上において部分的または完全な溶解度を有する組成を含むと理解もされる。
【0039】
樹脂結合剤52は、摩擦材料50の他の構成要素を結合することができる基材を形成するよう重合する任意の好適な樹脂を含むと考えられる。樹脂結合剤52は、熱硬化性ポリマー樹脂を、摩擦材料50の約5〜約30重量%の量で含むことが好ましい。熱硬化性ポリマー樹脂は、高い架橋ポリマー構造を特徴的に有する。高い架橋構造を伴う他のポリマーも、熱硬化性および熱可塑性材料のさまざまなコポリマー、ならびに高い架橋度を呈し、熱硬化性材料に対しここに記されるものと同様の機械的および物理的属性を有する熱可塑性材料を含んで、樹脂結合剤52としての使用に対して好適であってもよいと考えられる。樹脂結合剤52は、フェノール樹脂、たとえばフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を含む。しかしながら、数多くの他の樹脂、たとえば、さまざまなエポキシにより変性されたフェノール樹脂、シリコーンにより変性されたフェノール樹脂、縮合された多核芳香性樹脂、シアナートエステル樹脂、メラミン樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、レソロシノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアルカイッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フラン樹脂およびポリイミド樹脂などが、樹脂結合剤52としての使用に対して十分に適していると考えられる。耐熱樹脂は樹脂結合剤52として特に有利であると考えられ、なぜならば、それらは、焼夷弾特性を有するある弾道発射体に対する防護を提供するのに望ましいであろう装甲20に対する耐熱性の相乗的な利点を与えるからである。一例として、ブレーキライニングに対して用いられる摩擦材料50において用いられる熱硬化性樹脂結合52の多くは1100°Fの大きさの上昇された着火温度を有し、直火の炎または他の継続的な熱源を受けなければ一般的には空気中にて自己消失することになる。
【0040】
繊維質支持構造54は任意の好適な繊維質支持構造54を含んでもよい。繊維質支持構造は、連続的、断続的、細断された、および他の繊維質支持構造、または上記の組合せを含んでもよく、さまざまな織られたまたは不織の繊維要素、たとえばさまざまな布地、フェルト、マット、ハニカム状布地、および繊維構造などを含んでもよい。繊維質構造の重要な特性は、繊維の向き、アスペクト比、繊維−結合剤接着、繊維強度および繊維形態である。一般に、繊維質支持構造54は、ここに記載されるような混合ステップの結果もたらされる樹脂混合物に無作為の繊維配向を伴う複数の断続的な繊維を含むことになることが好ましいと考えられる。任意の好適な繊維材料または繊維材料の組合せを用いてもよく、それは、さまざまな等級の鋼(たとえばハイカーボン、ローカーボンおよびステンレス鋼など)および他の金属、ガラス、セラミック、鉱物、綿、炭素繊維または他の繊維、天然および人工または合成繊維の双方のものを含むが、それらに限定されはしない。さまざまな鋼繊維の他、金属繊維は、鉄および鉄合金、銅および銅合金ならびに支持構造を与える能力がある任意の他の金属を含んでもよい。ガラス繊維は、ホウ素含有Eガラスおよびホウ素非含有Eガラスの双方、ならびにすべての態様の他の商業的等級のガラス繊維を含む、すべての態様のシリケートおよび非シリケートガラス繊維を含んでもよい。セラミック繊維は、さまざまな金属酸化物、炭化物、窒化物、ケイ酸塩、およびチタン酸塩、たとえば酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウムなどを含んでもよい。炭素繊維は炭素およびさまざまな炭素化合物からなるものを含んでもよく、それらは、さまざまな炭素ポリマー、たとえば、さまざまなアラミド、超高密度ポリエチレン、ポリベンゾオキサゾール、ポリアクリロニトリル(PAN)、セルロースおよび他の炭素含有ポリマー繊維を含んでもよい。鉱物繊維は、玄武岩、海泡石、鉱さい綿、アスベスト、および他の鉱物繊維を含んでもよい。繊維質支持構造54の繊維は、一般的には、用いられる繊維質材料によっては、約1mmまたはそれより小さい直径を有するが、より大きな径の繊維が用いられてもよい。断続的な繊維は、一般的には、やはり用いられる繊維質材料によっては、約0.5インチまたはそれより小さい長さを有するが、一般的には、幅よりも3倍以上長い。ガラス繊維は、一般的には、約10〜100ミクロンの直径および0.125〜0.5インチの長さを有する。アラミド繊維は、一般的には、約10〜30ミクロンの直径および約1mmまたはそれ未満の長さを有するが、適用例によってはそれよりかなり長くてもよい。鉱物繊維は、一般的には、3〜50ミクロンの直径を有し、一般的には、幅よりも3倍以上長い。一般的に、繊維質支持構造54は、用いられる繊維の種類および他の要因によって、摩擦材料50の10〜50重量%を含む。
【0041】
摩擦改質システム56は、1つの摩擦改質構成要素または複数の摩擦改質構成要素を含んでもよい。摩擦改質システム56は必要に応じて装甲20を含む摩擦材料の摩擦レベルを調整するよう用いられる。より特には、摩擦改質システム56は摩擦材料50の摩擦係数を調整するよう用いられる。摩擦改質システム56は任意の摩擦改質構成要素または摩擦構成要素の任意の組合せを含んでもよい。一般的に、これらの構成要素は2つの分類、つまり潤滑性材料と磨耗性材料とに分けられる。広く用いられる潤滑性材料は、摩擦改質構成要素としては、さまざまな形態のグラファイト、たとえばグラファイト粉末および薄片、さまざまな金属硫化物、たとえば錫、銅、鉛、モリブデンおよびアンチモンの硫化物など、ならびにカシューシェル摩擦粒子およびゴムの小片または粒子を、個々にまたは組合せにおいて含む。広く用いられる磨耗性材料は、摩擦改質構成要素としては、金属粉末、たとえば銅、銅−亜鉛、銅−錫、鉄、およびアルミニウム粉末などを含む。それらは、金属酸化物、炭化物、ケイ酸塩粒子、たとえば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化クロミウム、酸化ケイ素、ケイ酸ジルコニウムおよびアルミノケイ酸塩粒子も、個々にまたは組合せにおいて含む。摩擦改質システム56は、摩擦改質構成要素として作用する天然材料または人工材料の両方を含む多くの他の鉱物、有機およびセラミック材料を含んでもよい。摩擦改質システム56は、好ましくは、摩擦材料50の0.5〜40重量%を含む。摩擦改質構成要素は、一般には、約5ミクロン〜8メッシュ(約2.36mm)の範囲の最大粒子サイズ(または球形粒子に対しては直径)を有するが、より大きなサイズおよびより小さなサイズを有する粒子を用いられてもよいと考えられる。例として、酸化アルミニウム粒子は典型的には約5ミクロンのサイズを有し、カシュー摩擦粒子は約20メッシュ(約0.85mm)のサイズを有し、炭素粒子は約8〜325メッシュ(0.045〜2.36mm)のサイズを有し、シリカ粒子は約200〜325メッシュ(0.045〜0.075mm)のサイズを有する。
【0042】
摩擦構成要素としての摩擦材料50においては、磨耗システム58は充填材として多くの機能を有してもよく、それは、樹脂基材を充填して摩擦材料50の改善された高温および磨耗属性を与えること、ならびに着色料、および摩擦材料50のさまざまな他の物理的もしくは化学的属性またはそれらの両方を制御する他の材料を与えることを含んでもよい。磨耗システム58は、他の摩擦構成要素とともに、摩擦材料50およびしたがって装甲20のさまざまな他の化学的および物理的属性ならびに特性をさらに修正しおよび制御するよう用いられる充填材材料を含む。これらは、熱抵抗、磨耗制御、密度、色ならびに他のさまざまな物理的および化学的属性を含んでもよい。磨耗システム58充填材は、さまざまな要因のうち、特に、選択される樹脂結合剤52、繊維質支持構造54および摩擦改質システム56に依存することになる。これらの充填材は、さまざまな金属ケイ酸塩を含む、有機および無機充填材構成要素を含んでもよい。例としては、その人工または鉱物学的形態において、硫酸バリウム(たとえばバライト)、炭酸カルシウム(たとえば方解石、チョーク)、ケイ酸マグネシウム(たとえばタルク)、炭酸マグネシウム(たとえば苦灰石またはマグネサイト)、雲母、アルカリ金属チタン酸塩、バーミキュライト、三酸化モリブデン、カシュー粉末、ゴム粉末、カオリンおよびさまざまなクレーを含む。カシュー粒子およびゴム粒子は摩擦改質システムの一部としても用いられてよいことが注目される。これらの材料は、個々に、または他の同様の材料との組合せにおいて、典型的には摩擦材料50の10〜40重量%で用いられる。磨耗システム58構成要素は、一般には、約100メッシュ(約0.149mm)未満かまたはそれに等しい最大粒子サイズ(または概ね球形の粒子に対しては直径)を有するが、それより大きなサイズを有する粒子を用いてもよいと考えられる。
【0043】
前述の記載は、ともに用いられてもよい具体的な材料の数多くの例を含む摩擦材料50の構成要素を、それら構成要素に対する定量的な範囲とともに一般的に記載している。しかしながら、すべてではないとしても、たいていの摩擦材料50は、ここにその全体を引用により援用する以下の米国特許3,856,120;3,998,573;4,119,591;4,145,223;4,178,278;4,182,437;4,193,956;4,218,361;4,219,452;4,226,758;4,313,869;4,352,750;4,388,423;4,432,922;4,461,643;4,476,256;4,487,729;4,537,823;4,605,595;4,617,165;4,656,203;4,772,950;4,775,705;4,792,361;4,994,506;5,083,650;5,132,065;5,145,888;5,190,991;5,279,777;5,325,941;5,339,931;5,344,854;5,383,963;5,515,950;5,516,816;5,520,866;5,535,860;5,576,358;5,676,577;5,817,411;5,861,203;5,889,080;5,889,082;5,891,933;5,919,837;5,971,113;6,013,146;6,022,502;6,051,646;6,080,230;6,107,386;6,110,991;6,140,388;6,167,992;6,190,761;6,220,405;6,228,815;6,260,674;6,265,356;6,284,815;6,298,957;6,316,083;6,474,453;6,475,614;6,502,674;6,579,920;6,612,415;6,630,416;6,632,857;6,670,408;6,863,968に述べられる摩擦材料の組成を含む、装甲20の物10を形成することに対して有用と考えられる。
【0044】
摩擦材料50の物理的属性は、該材料を形成するよう用いられる方法のある機能であることとなる。摩擦材料50を特徴付けるよう一般的に用いられる属性は、比重または密度(SAE J380)、抗折力(ASTM D790、弾性係数、引張り強さ(ASTM D638)、Gogan硬度(ASTM J379)、摩擦係数(SAE J661)および磨耗特性(SAE J661)を含む。摩擦材料50の密度は一般的には約1.85〜2.5g/cm3の範囲にあり、典型的には、摩擦構成要素の理論上密度の約90%またはそれ以上である。摩擦材料の抗折力は一般的には約2500〜12,000psiの範囲にある。測定されるとおりの引張り強さは一般的には約300〜1000psiの範囲にあり、弾性係数は約0.8〜1.4×106psiの範囲にある。GoganCスケール硬度は一般には約5〜50Gogan Cの範囲にある。摩擦係数は一般には約0.20〜0.70であり、摩擦試験後の材料の典型的な磨耗測定値は約5〜20%の範囲にある。
【0045】
装甲20は、貫通を効果的に阻止し、以下により詳細に記載される多くの小口径(つまり一般的には14.5mm直径またはそれより小さい直径の)弾道発射体に関連付けられる衝撃関連の損傷に対する防護を与えると知られている。しかしながら、その厚みを増大させることに特に関して適切に構成されると、装甲20は、さらに、任意の数の他の軍用装備品に対する効果を有するとも考えられる。それらの軍用装備品は、数多くの他の種類の弾道発射体、たとえばより大きな口径の発射体を含み、それらは、高爆発性焼夷材料、破片装置などを組込むもの、および強化された撤甲特性を有するよう設計されたもの(つまりさまざまな装弾筒発射体、重金属貫通発射体など)を含むが、それらに限定はされない。装甲20は、さらに、民間組織、軍事組織、準軍事組織、テロリスト組織および他の組織によって開発またはその場で作られたものを含む、すべての態様の弾薬、爆発性装置および他の武器に関し効果を有するとも考えられる。
【0046】
任意の好適な方法を用いて、装甲20の形成および装甲された物10の形成を、たとえば装甲20を物に取付けることなどによって行なってもよい。図11を参照して、装甲20は、最初の構成要素を実質的に均質なプレポリマー混合物に混合し、次いで、そのプレポリマー混合物の高密度な完成品への変換を、たとえば、重合反応を完了させることにより、たとえば以下に記載されるように熱および圧力を用いて熱硬化性樹脂を重合することにより行なう方法によって形成されてもよい。
【0047】
摩擦材料構成要素502は、大きくは特定の摩擦材料および特定の構成要素によって、任意の好適な混合プロセスを用いてプレポリマー混合物504を形成するよう混合されてもよい。摩擦材料構成要素は任意の所望の組合せにおいて前もって混合されてもよい。それらは混合の開始前に任意の組合せにおいて加え合わされ次いで混合されてもよく、または、用いられる特定の摩擦材料組成および構成要素の要件によって、ミキサに連続的に任意の組合せにおいて加えられてもよい。混合510は、プロセス反応に関連付けられる構成要素および要件、均質性要件ならびに他の要因によって、任意の好適な混合装置を用いて行なわれてもよい。
【0048】
例示的なミキサは、シャフト、スクリュー、ブレード、リボン、インペラもしくはプロペラまたは上記のものの組合せを用いて産業用材料を混合するものを含んでもよい。産業用ミキサは混合物を一方向に流れさせ、物理的および化学的プロセスを増強し得る。混合はバッチモードまたは連続送りモードで行なわれてもよい。バッチ混合は最も単純な動作モードである。産業用ミキサは摩擦構成要素を充填され、製品混合が進められる。混合が完了すると、混合容器の内容物は下流の処理のため空けられる。産業用ミキサは、次いで、次のバッチを混合するため、清掃され再充填される。連続送りの産業用ミキサでは、混合すべき媒体は、混合された流体が取除かれる中、連続的に加えられる。連続的ミキサは大量生産適用例に対して特に好適であり、なぜならば、それらは長期間の間遮断されることなく連続的に操業し得るからである。しかしながら、円錐形ミキサ、流動床ミキサ、インペラミキサ、パドルミキサ、プラネタリミキサ、プロペラミキサ、リボンミキサ、スクリューミキサ、スタティックミキサ、タービンミキサ、垂直タービンミキサ、超音波ミキサ、および振動ミキサを含む、任意の好適な種類の産業用ミキサを用いてもよい。スクリューミキサは、円錐ホッパの周縁の周りを移動する、回転するスクリューを用いる。流動床ホモジェナイザは完成した製品床を流動化する耐久性容器である。インペラミキサおよびプロペラミキサは水平円板に取付けられる垂直ブレードを用いる。パドルミキサは、固定された腕部およびパドル形状の足部を伴う、水平の回転するシャフトを有する。プラネタリミキサは個々のシャフトの周りを回転する2つの混合ブレードを有する。リボンミキサはリボン形状の対向輸送機構を有する。スタティックミキサまたは静止型ミキサは、パイプに取付けられるフィン、障害物またはチャネルからなる。タービンミキサは、上から吊るされたシャフトに取付けられる1つまたはそれより多い複数ブレードのインペラを伴って、封入されたギアドライブを介し低減された速度で動作する、幅広い範囲の汎用混合設備を含む。ミキサは、撹拌機、ホモジェナイザ、ニーダ、混和機、タンブラおよびドラムを用いてもよい。それらは、ロータ−ステータ、1つのロータ、またはツインロータを用いる機械を含んでもよい。ホモジェナイザは液相内において不溶相の安定した一様な分散を形成する機械的装置である。数多くの異なる種類のタンブラおよびドラムがある。例としては、二重円錐タンブラ、ツインシェルタンブラ、および水平ドラムが含まれる。ロータ−ステータは、インペラが定置型ハウジングに近接した、単一シャフトの産業用ミキサである。それらは、ゴムまたは薄片樹脂などのような粗い粒子を刻むことにおいて特に効果的である。単一ロータ装置およびツインロータ装置は、パドルまたはスクリューを伴って、それぞれ1つまたは2つのシャフトからなる。これらの産業用ミキサに対する好適なシャフト速度は中程度の低速度から相対的に高速度の範囲にわたる。
【0049】
摩擦材料構成要素が混合されると、プレポリマー混合物を任意の好適なプロセスを用いて成形して成形520を行ない、任意の好適なプロセスを用いて重合して摩擦材料構成要素502を重合530して、たとえばここに記載されるもののような、要件摩擦材料特性を有する装甲20の物を製造する。しかしながら、要件摩擦材料特性は、さらに、他の化学的、物理的および機械的特性の任意の組合せを含んでもよい。化学的特性は、重合反応、化学抵抗特性などの度合および性質を含んでもよい。物理的特性は、形態学的特性、たとえば重合された基材内における構成要素の均質性、位置または分離などを含んでもよい。機械的特性は、周知のおよび標準的な機械的試験方法論を用いて測定されてもよい、機械的強度、弾道衝撃抵抗を含む衝撃抵抗、または他の標準的な機械的特性を含んでもよい。成形520および重合530は別個に行なわれてもよく、または代替的に、成形/重合ステップ535として同時に行なわれてもよい。
【0050】
プレポリマー混合物504を成形520して装甲20の物10および摩擦材料50を形成する1つの例示的方法は、押出、カレンダ圧延またはそれらの組合せを用いる。液体樹脂を用いるプレポリマー混合物502を、適切な形状を有するノズル内において圧力をかけて配置するか、または代替的に、材料を2つの対向する回転するカレンダロールの間を通過させることによって配置し、圧力下で力をかけて、その圧力が材料をその特定の装置を介してそれぞれ押出すかまたはカレンダ処理することにより、ノズルまたはカレンダロールの形状に従うようにする。重合530は、押出/カレンダ処理(535)中、もしくは別途その後で(530)、またはそれら双方中において熱を与えることにより達成されてもよい。
【0051】
摩擦材料50を形成530しプレポリマー混合物を重合するための別の例示的な方法500は冷間成形を用いる。これらの材料において、プレポリマー混合物502は固形樹脂結合剤を用いる。プレポリマー混合物502は圧断されるかまたは他の態様では高い圧力下である特定の形状にプレスされ、次いで、低圧力または圧力無しで、化学重合反応を完成させ樹脂を硬化させるのに十分な温度で硬化される。典型的には、硬化のために用いられる温度はプレポリマー混合物502の重合を確実にするのに必要とされる温度を超えてもよい。この方法は、ある局面においては、ある金属物をプレスし焼結する粉末金属処理に対して用いられる方法と類似している。
【0052】
プレポリマー摩擦材料502混合物を成形520し重合530するステップのさらに別の例は熱間成形を用いる。これらの材料において、プレポリマー摩擦材料混合物は、固形樹脂結合剤もしくは液体樹脂結合剤か、またはそれら両方の組合せを用いてもよい。プレポリマー摩擦材料混合物は、加熱された金型内に置かれ、中程度の圧力のもと、「硬化」または化学重合反応が完全または部分的重合のいずれかの所望される完了の度合に達するまでプレス硬化される。材料がほんの部分的に硬化される場合には、それは、物10の形状を保持するよう十分に硬化され、次いで、その材料は、上昇された温度で、圧力をかけられるかまたは圧力をかけられることなく、重合540をさらに完了させるステップにおいて処理されてもよい。
【0053】
プレポリマー摩擦材料混合物502を成形520し重合530するステップのさらに別の例は、プレポリマー摩擦材料の装甲予成形品25の形成を、たとえば、ここに記載されるプレポリマー摩擦材料を形成515し、部分的にそれをBステージまで硬化するかまたは部分的に硬化された装甲予成形品25に硬化し、その後に、ここに記載されるように成形520および重合530のステップを行なって装甲20の物10を形成することなどによって行なうことを用いる。
【0054】
摩擦材料を成形520するステップの前またはそのステップに関連して、プレポリマー摩擦材料混合物502を受けるようにされるかまたはそのように機能する表面を有する装甲されるべき物60′を導入するステップ550を用いることが望ましいかもしれない。その表面は、装甲されるべき物60′の表面から汚染物質を除去するようさまざまな清掃ステップを用いることにより、またはさまざまなプライマもしくは他の接着促進材料を該表面に適用することによって、プレポリマー摩擦材料混合物502を受けるようにされるかまたはそのように機能するようにされてもよい。この装甲されるべき物60′の導入は、プレポリマー摩擦材料502が装甲されるべき物60′の表面上に直接形成されるかまたは重合されるように行なわれる。これは、物60′の表面を部分的または全体的に被覆することを含んでもよい。たとえば、図3を参照して、摩擦材料50は、装甲20として、装甲されるべき物60′を包み込んでもよい。代替的に、摩擦材料は、装甲として、たとえば、すべての態様の平坦な、湾曲したまたは形状化されたパネルを含むパネルを含む物60′の裏張り層または外装層として摩擦材料を加える場合におけるように、装甲されるべき物60′の表面のわずか一部72を被覆してもよい。
【0055】
摩擦材料50を成形するステップ520の実施例のすべてにおいて、成形520は摩擦材料50を中間もしくは最終形状または構成に形状化することを含んでもよい。構成には、さまざまな特徴を所与の形状に追加すること、たとえば、装甲20の性能特性を変えるか、または装甲20を装甲されるべき物60′もしくは装甲20の他の要素に(たとえばさまざまな種類の機械的留め具、機械的連動要素、接着剤、それらの組合せ、または他の態様を用いて)取付けることを助けるか、可能にするか、またはそうでない場合には容易にするよう用いられてもよいさまざまな種類の開口部、孔、タブ、スロット、突起、段状部などまたはそれらの組合せを組入れることなどを含んでもよい。中間構成または形状への成形は、正味の形状または構成に近いように形成することを含んでもよく、または、追加の処理、たとえば鋸引き、機械加工、穿孔、リーミング、研削などを用いて最終形状、構成またはその両方を形成することを含んでもよい。成形520は、正味のもしくは最終の形状、構成またはその両方への形成を含んでもよい。
【0056】
上記のように、摩擦材料を中間形状または構成に形成する場合、該方法は、さらに、形成された摩擦材料を機械的に処理して最終的形状または構成にするあるステップまたは複数のステップを含んでもよい。注目されるように、これは、さらなる処理、たとえば、鋸引き、機械加工、穿孔、リーミング、研削および他の形式の機械的処理などを用いて最終形状、構成またはその両方を形成することを含んでもよい。
【0057】
図7および図11を参照して、方法500は、さらに、摩擦材料からなる複数の層を互いに積層545して装甲20の積層物10を製造するさらなるステップを含んでもよい。これは、単に、個々の層よりも大きな厚み、つまり合板厚みを有する摩擦材料からなるシート、板または他の形を形成するよう行なわれてもよい。摩擦材料を形成するよう用いられる重合反応は温度に依存するので、ある適用例においては、摩擦材料をより薄いシート状に形成して、摩擦材料を硬化するのに用いられる設備においてより高速の硬化およびサイクル時間を促進し、次いで、複数のシートを積層して所望の全体的な厚みを有する摩擦材料を形成することが望ましいかもしれない。これは、製造設備において利用され、上昇された温度または圧力を積層中に適用することを伴うかもしれないような、さまざまな自動化された積層プロセスを含む、すべての態様のバッチまたは連続的積層プロセス、および、上昇された温度または圧力を適用することなく手動でなされるものを含むすべての態様の手動積層プロセスを含んでもよい。代替的に、積層は、複数のシートの装甲予成形品525を組合せて装甲20を形成することによるなど、装甲予成形品515を形成することに関して用いられるステップとして用いられてもよい。積層は、近接する層160を接合するためのさまざまな手段、たとえばそれら層の間に接着材料を用いることなどを追加することを用いてもよい。所望の適用例に適合する任意の好適な接着材料を用いてよく、それは、摩擦材料をそれら自体にまたは裏張り板もしくは他の部材に接着するよう現在用いられるさまざまな接着剤、たとえば液体フェノール樹脂に基づく接着剤、たとえばプラスチロック(Plastilok)ブランドの接着剤を含んでもよい。さらに、接着材料は摩擦材料を形成するよう用いられる樹脂材料を含んでもよいと考えられ、そして、ある場合では、それは、積層に対して効果的な接着剤を形成するよう温度および圧力を適用することにより接着、硬化または重合されるべき表面に適用されてもよいと考えられる。さらに、積層が効果的であるかもしれないのは、摩擦材料50が異方性特性を呈する場合(たとえば形成ステップがプレポリマー摩擦材料の繊維または他の構成要素を重合中においてある特定の好ましい方向または配向に配向付ける傾向がある場合)、たとえばその形態学的または機械的属性に関する異方性を呈して、そのような特性を所望される適用例に対して考慮に入れるよう積層を形成することによってこれらの特性を増幅または減衰する場合であろうとも考えられる。たとえば、異方性の効果を増幅することが所望される場合、さまざまな層がある特定の方向または配向において整列された異方性特性を有するように積層体の層を積上げることが望ましいかもしれない。異方性を減衰することが所望される場合には、異方性が意図的に整列しないように層を積上げることが望ましいかもしれず、それは、低減された異方性特性または挙動を伴う全体的な摩擦材料を製造する傾向となる。
【0058】
該方法は、さらに、摩擦材料50からなるある層または複数の層を、装甲20として、重合された摩擦材料を受けるようにされるかまたはそうするように機能する装甲された物60′の表面に取付けるさらなるステップ560を含んでもよい。このステップは、摩擦材料を、物60′の表面のある部分72に対して、または物の全表面にわたって、取付けることを含んでもよい(図7参照)。たとえば、摩擦材料50は、装甲20として、装甲されるべき物を完全に包み込むように取付けられてもよい。代替的に、摩擦材料50は、装甲20として、たとえば平坦なまたは形状化されたシートを含む物に裏張り層または外装層として摩擦材料50を取付けるような場合には、装甲されるべき物の表面のある部分72のみを被覆するよう取付けられてもよい。取付ステップ560は任意の好適な取付手段および方法を用いて行なわれてもよいと考えられる。取付手段は、任意の数の化学的留め材料、たとえば接着剤、糊、ペースト、モルタル、セメント、化学的溶着など;機械的留め具、たとえばさまざまなねじ切りされた留め具(つまりすべての態様のねじ、ねじ切りされたボルトおよび/またはナット)、リベット、杭、カム式留め具、クランプ、クリップ、裏張り板、ラチェット式またはジップタイ;および摩擦材料を、装甲されるべき物60′に、または他の装甲された物10に、または摩擦材料を装甲されるべき物に連動するようにされる別途の物に連動させるための連動特徴物、たとえばさまざまな種類のスロット、孔/接合ピン組合せ、ポケット、雄/雌連動部材などを含んでもよい。
【0059】
摩擦材料50の、装甲20の物10としての好適性を示すため、装甲20の試験片を、ここに記載される方法に従う代表的な摩擦材料配合物を用いて形成し、次いで、それらに対して、さまざまな弾道発射体を用いる弾道衝撃試験を行った。その結果を以下にいくつかの代表的な例として報告する。
【実施例1】
【0060】
構成要素として、樹脂結合剤と、支持構造として繊維質材料と、摩擦改質剤または改質システムと、磨耗システムとして充填材とを含んだ第1の摩擦材料配合物を用いて、多数の摩擦装甲20の試験片を形成した。樹脂結合剤は粉末化されたフェノール樹脂であった。繊維質材料はガラス繊維の混合物であった。摩擦改質システムは、ゴム粒子、カシュー摩擦粒子、グラファイト、および石油コークスを含んだ。充填材は、磨耗システムとして、バライト、少量の鋼繊維、カーボンブラックおよび黄銅の小片を含んだ。試験片の形成は、合計60Ibs.の摩擦材料構成要素を14分間リトルフォード(Littleford)ミキサにおいて混合することによりプレポリマー摩擦材料を形成するよう行われた。プレポリマー摩擦材料を12分間の間隔に対して330°Fで熱間成形することにより処理した。仕上がり試験片は0.75×6×6インチであった。最終的な硬化および重合が、試験片を電子オーブンにおいて8時間の間300°Fで加熱することにより達成された。試験片は20〜28GCのGogan Cスケール硬度を有した。各試験片は、所与の口径の発射体構成(つまり弾丸直径、材料、構築および重量)および21フィートの距離からの試験片内への速度の14発の弾薬を発射することによる多数の弾道発射試験を受けた。多数の異なる口径および重量を有する発射体30を試験した。各試験中、試験片は、0.75インチの合板からなる目標台の上に位置決めされ、接着剤で試験台の面に固定されることにより、試験片は、射撃を行なうよう用いられる銃に面するようにされていた。試験の結果は合格/不合格に基づいて評価され、試験の合格に対する基準は、1)試験片の厚みを通過する発射体の貫通がないこと、および2)試験片はその全体的な構造上の全一性を無傷で維持すること、であった。構造上の全一性によって、表面の割れ、スパリングおよび融除は許容され、「合格」をなすが、試験片の厚みを通って試験片の断片を実際にまたは実質的に切断するのに十分である割れは「不合格」をなす、と意味される。結果を以下の表1に報告する。
【0061】
【表1】

【0062】
上記から理解されるように、第1の摩擦配合物のサンプルのすべてが試験に合格した。この例は、ここに述べられるある範囲の一般的な小口径の弾薬に対しての摩擦材料50組成の装甲20としての効果を示している。それは、さらに、一点の衝撃または小面積の衝撃で入射する複数の弾道発射体30による貫通を阻止する装甲20の能力を示している。
【実施例2】
【0063】
構成要素として、これも、樹脂結合剤と、支持構造として繊維質材料と、摩擦改質剤または改質システムと、磨耗システムとして充填材とを含んだ第2の摩擦材料配合物を用いて、多数の摩擦材料装甲の試験片を形成した。樹脂結合剤は粉末化されたフェノール樹脂であった。繊維質材料はガラス繊維材料であった。摩擦改質システムは、ゴム粒子およびカシュー摩擦粒子を含んだ。充填材つまり磨耗システムは、炭酸カルシウム、バライト、およびカーボンブラックを含んだ。試験片の形成は、合計65Ibs.の摩擦材料構成要素を14分間リトルフォードミキサにおいて混合することによりプレポリマー摩擦材料を形成するよう行われた。プレポリマー摩擦材料を15分間の間隔に対して330°Fで熱間成形するステップにより処理した。仕上がり試験片は0.75×6×6インチであった。試験片は25〜30GCのGogan Cスケール硬度を有した。各試験片は、所与の口径および発射体構成(つまり弾丸直径、材料、構築および重量)ならびに21フィートの距離からの試験片内への速度の14発の弾薬を発射することによる多数の弾道発射試験を受けた。多数の異なる口径および重量を有する発射体を試験した。各試験中、試験片は、0.75インチの合板からなる目標台の上に位置決めされ、接着剤で試験台の面に固定されることにより、試験片は、射撃を行なうよう用いられる銃に面するようにされていた。試験の結果は合格/不合格に基づいて評価され、基準は上記のとおりであった。結果を以下の表2に報告する。
【0064】
【表2】

【0065】
上記から理解されるように、第2の摩擦配合物のサンプルのすべてが試験に合格した。この例は、ある範囲の一般的な小口径に対しての別の摩擦材料50組成の装甲20としての効果を示し、摩擦材料はここに述べられる態様において、およびここに述べられる程度まで、装甲20としての使用に対して概して効果的であることを示している。
【0066】
加えて、装甲20の物10は、装甲20の厚みおよび他の局面の適切なスケーリングを伴う状態において、より大きな口径の射撃弾、たとえば25mmおよびそれより大きい射撃弾、ロケット推進される手榴弾、ある対装甲射撃弾などに対して効果的であろうとも考えられる。
【0067】
摩擦材料50が装甲20として働くよう弾道発射体からの貫通を阻止する特定の機構は十分に知られてはいないが、摩擦材料50の、制御された摩擦特性は、そのような阻止を与えることにおいて重要な役割を果たすと考えられる。
【0068】
上述の発明を関連性のある法的基準に従って記載してきたが、本記載は例示的なものであって、本質的には限定的なものではない。開示された実施例に対する変形物および修正物が当業者には明らかとなり得、それらはこの発明の範囲内に入る。したがって、この発明に与えられる法的保護の範囲は以下の特許請求の範囲を考察することによってのみ判断され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装甲を形成する方法であって、
プレポリマー混合物を形成するよう混合するステップと;
前記プレポリマー混合物を成形して装甲物を形成するステップと;
前記プレポリマー混合物を重合して前記装甲物を重合するステップとを含み、前記装甲物は摩擦材料を含む、装甲を形成する方法。
【請求項2】
前記プレポリマー混合物を成形して装甲物を形成するステップの前に、装甲されるべき物を導入するステップをさらに含み、前記装甲は前記装甲されるべき物の上に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重合された装甲物を、装甲されるべき物に取付けて、装甲された物を形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プレポリマー混合物を成形して装甲物を形成するステップは、前記装甲に特徴を形状化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数の前記装甲物を積層して、積層された装甲物を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−68411(P2013−68411A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−258439(P2012−258439)
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【分割の表示】特願2009−530619(P2009−530619)の分割
【原出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】