説明

農作物の切断装置

【課題】左右のブラケット幅を自由に変えることのできる切断装置を提供することを課題とする。
【解決手段】切断装置10は、走行車体又は走行車体に牽引さえる作業部に車幅方向に水平に渡されているクロスメンバー11と、このクロスメンバー11に水平移動可能に取付けられた左筒体12と、この左筒体12から一体的に下方へ延びている左ブラケット13と、クロスメンバー11に水平移動可能に取付けられた右筒体14、この右筒体14から一体的に下方へ延びている右ブラケット15と、これらの左右のブラケット13、15の下部に水平に渡されたナイフ16からなる。
【効果】左筒体12と右筒体14とが接近するように、左ブラケット13と右ブラケット15を車幅方向へ移動する。想像線で示す位置に到達したら、ロックボルト23、24を締め、固定ボルト17、17を締める。ナイフ16を切断しないで、左右のブラケット13、15の間隔を変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中において玉葱などの農作物の根を切断する切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物には、種まき(又は苗植え)から収穫までに多様の世話を施す必要がある。この世話は、農作業では管理と呼ばれる。この管理に、地中において玉葱などの農作物の根を切断する作業が含まれる。
玉葱の根切り作業を、効率よく行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実公平4−4495号公報(第1図)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図6は従来の玉葱の根切り作業機の側面図であり、玉葱の根切り作業機100は、後輪101及び前輪102を備えた乗用四輪型の走行車体103の前部に、昇降リンク104を介してブラケット105を設け、このブラケット105に玉葱の葉や茎を掻き分ける葉分け器106及び前部補助輪107を備えている。さらには、ブラケット105からサブブラケット108を下へ延ばし、このサブブラケット108にナイフ110が設けられている。
【0004】
図7は従来のナイフの斜視図であり、ナイフ110は、水平帯板部111と、この水平帯板部111の両端から各々上へ延ばした縦帯板部112、113とからなる。
図8は図7の8−8線断面図であり、水平帯板部111には第1の刃114と第2の刃115が設けられている。これらの刃114、115には、焼入れを施す。116、116は焼入れ層である。焼入れ層116、116があるため、硬度が高まる。第1の刃114又は第2の刃115は、石などの硬いものに当たっても刃が欠ける心配はない。
【0005】
図9は従来のナイフの使用形態を説明する図であり、(a)、(b)に、ナイフ110B、110Cで複数の玉葱121の根を切断する様子が示される。
(a)に示すように、玉葱121が、畝間L1で植えられている。L1は例えば、300mmである。縦帯板部112、113は玉葱121と玉葱121との中間に配置する必要がある。そのため、ナイフ110Bの幅は、L1の3倍に相当する900mmに設定される。
【0006】
一方、苗植機の都合で、(b)に示すように、玉葱121の畝間が狭いL2となることがある。L2は例えば、270mmである。この場合は、ナイフ110Cの幅は、L2の3倍に相当する810mmに設定される。
【0007】
ナイフ110は焼きが入っているため、切断し、溶接して幅を900mmから810mmに変更することはできない。溶接熱により焼きが戻ってしまうからである。
したがって、従来は、幅が異なる2種類以上のナイフ110B、110Cを常備しておく必要があった。これでは、ナイフの調達費用が嵩むと共に倉庫での保管スペースが増大するため、対策が求められている。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、幅を自由に変えることのできる切断装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、地中において玉葱などの農作物の根を切断する切断装置であって、この切断装置は、走行車体又はこの走行車体に牽引される作業部に、車幅方向へ移動可能に設けられている左ブラケット及び右ブラケットと、これらのブラケットの下部に開けられた刃通し穴と、これらの刃通し穴を貫通する形態で前記左右のブラケットに支持されるナイフと、このナイフを前記左右のブラケットに固定する固定具とからなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、ナイフは、刃が全長に設けられた両刃ナイフであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、両刃ナイフの後方側の刃と、刃通し穴との間に、硬質樹脂、硬質ゴム又は軽金属からなるピースを介在させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、ナイフに対して左右のブラケットが車幅方向に移動できる。ナイフは1種類でよい。畝間に合わせて左右のブラケットの位置を変更するだけでよい。
ナイフの調達費用が抑えられると共に倉庫での保管スペースを最小にすることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、ナイフは、刃が全長に設けられた両刃ナイフである。両刃であるから、一方の刃が痛んだら、他方の刃を使えばよく、使用可能期間に2倍になる。
【0014】
請求項3に係る発明は、刃と刃通し穴との間に、硬質樹脂、硬質ゴム又は軽金属からなるピースを介在させた。刃が直接的に刃通し穴に当たると、刃が欠けたり、刃のテーパ作用で、刃通し穴が大きくなる虞がある。ピースを介在させ、このピースにクッション性を持たせれば、刃が欠ける心配はなく、刃通し穴が大きくなることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る切断装置の正面図であり、切断装置10は、走行車体又は走行車体に牽引さえる作業部に車幅方向に水平に渡されているクロスメンバー11と、このクロスメンバー11に水平移動可能に取付けられた左筒体12と、この左筒体12から一体的に下方へ延びている左ブラケット13と、クロスメンバー11に水平移動可能に取付けられた右筒体14、この右筒体14から一体的に下方へ延びている右ブラケット15と、これらの左右のブラケット13、15の下部に水平に渡されたナイフ16からなる。
【0016】
図2はブラケットの下部の断面図であり、左右のブラケット13、15の下部に、ナイフ16を固定する固定具としての固定ボルト17が設けられている。固定具はクランパでもよく、ボルトに限定はしない。
【0017】
図3は切断装置の分解斜視図であり、左のブラケット13の下部には、台形形状の刃通し穴18が開けられ、右のブラケット15下部には、台形形状の刃通し穴19が開けられ、これらの刃通し穴18、19に台形断面を呈するナイフ16が挿入される。
ナイフ16は、帯鋼の両エッジに刃21、22を形成した両刃ナイフであり、刃21、22は全長に亘って設けられた総刃ナイフであり、焼きが入れられている。したがって、ナイフ16を切断することはできない。
【0018】
以上の構成からなる切断装置の作用を次に述べる。
図1において、幅が3×L1(例えば900mm)であったものを3×L2(例えば810mm)に変更するには、先ず、左筒体12に付属したロックボルト23を緩め、左ブラケット13に付属した固定ボルト17を緩め、右筒体14に付属したロックボルト24を緩め、右ブラケット15に付属した固定ボルト17を緩める。
【0019】
次に、左筒体12と右筒体14とが接近するように、左ブラケット13と右ブラケット15を車幅方向へ移動する。想像線で示す位置に到達したら、ロックボルト23、24を締め、固定ボルト17、17を締める。このように、ナイフ16を切断しないで、左右のブラケット13、15の間隔を変更することができる。
【0020】
ナイフ16に対して左右のブラケット13、15が車幅方向に移動できる。ナイフ16は1種類でよい。畝間に合わせて左右のブラケット13、15の位置を変更するだけでよい。ナイフ16の調達費用が抑えられると共に倉庫での保管スペースを最小にすることができる。
また、ナイフ16は片刃、両刃のいずれであってもよい。しかし、両刃であれば、一方の刃21又は22が痛んだら、他方の刃22又は21を使えばよく、使用可能期間に2倍になる。
【0021】
次に本発明の別実施例を説明する。
図4はブラケットの変更例を示す斜視図であり、刃通し穴25は、半台形部26と角穴部27とで構成する。角穴部27は後側とする。角穴部27には、硬質樹脂、硬質ゴム又は軽金属からなるピース28を嵌める。このピース28には、刃21、22に対応した形状の半台形部29が設けられている。
【0022】
左のブラケット13の下部に設けられている刃通し穴25の構造を説明した。図面は省略するが、右のブラケットに設ける刃通し穴も同じ構造である。
【0023】
図5は図4の作用説明図であり、角穴部27にピース28をセットして、抑えボルト31で固定する。そして、ナイフ16を図面表裏方向に移動させることで、刃通し穴25に挿入し、固定ボルト17で固定する。
農作業中には、ナイフ16に矢印(1)の力が加わる。ピース28は矢印(1)の力を受けるが、硬質樹脂、硬質ゴム又は軽金属で構成されており、力を矢印(2)のように分散して左ブラケット13に伝える。
【0024】
図3において、後方の刃22が直接的に刃通し穴25に当たると、刃22が欠けたり、刃25のテーパ作用で、刃通し穴25が大きくなる虞がある。この点、図5のように、ピース28を介在させ、このピース28にクッション性を持たせれば、刃22が欠ける心配はなく、刃通し穴25が大きくなることもない。
【0025】
尚、本発明の切断装置は、玉葱の根の切断作業に好適であるが、ビートなど他の農作物の根の切断作業に供することもできる。また、玉葱の根の切断作業に好適であるが、ビートなど他の農作物の根の切断作業に供することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の切断装置は、玉葱の根の切断作業に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る切断装置の正面図である。
【図2】ブラケットの下部の断面図である。
【図3】切断装置の分解斜視図である。
【図4】ブラケットの変更例を示す斜視図である。
【図5】図4の作用説明図である。
【図6】従来の玉葱の根切り作業機の側面図である。
【図7】従来のナイフの斜視図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】従来のナイフの使用形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0028】
10…切断装置、11…走行車体又はこの走行車体に牽引される作業部に渡されたクロスメンバー、13…左ブラケット、15…右ブラケット、16…ナイフ、17…固定具(固定ボルト)、18、19、25…刃通し穴、21、22…刃、28…ピース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中において玉葱などの農作物の根を切断する切断装置であって、この切断装置は、走行車体又はこの走行車体に牽引される作業部に、車幅方向へ移動可能に設けられている左ブラケット及び右ブラケットと、これらのブラケットの下部に開けられた刃通し穴と、これらの刃通し穴を貫通する形態で前記左右のブラケットに支持されるナイフと、このナイフを前記左右のブラケットに固定する固定具とからなることを特徴とする農作物の切断装置。
【請求項2】
前記ナイフは、刃が全長に設けられた両刃ナイフであることを特徴とする請求項1記載の農作物の切断装置。
【請求項3】
前記両刃ナイフの後方側の刃と、前記刃通し穴との間に、硬質樹脂、硬質ゴム又は軽金属からなるピースを介在させたことを特徴とする請求項2記載の農作物の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−253178(P2008−253178A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97730(P2007−97730)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(391004470)北海道ホンダ販売株式会社 (4)
【Fターム(参考)】