説明

農作物掘取機

【課題】 畦土の状態に応じて接地ローラーを脱着することで、省燃費で能率的に作業できるようにした農作物掘取機を提供する。
【解決手段】 牽引車で牽引されて畑を前進する機体11の前下部に畦土Gの農作物を掘起する掘取スキ14を設け、掘取スキ14後方の機体11の位置に掘起した農作物Pを掘り上げて土Gaをふるい落としながら後上方へ搬送する傾斜コンベヤ15を設け、傾斜コンベヤ15の下方の機体11の後部位置に掘起後の畦土Gを回転駆動により整地する広幅の接地ローラー20を設け、傾斜コンベヤ15で搬送した農作物Pを後上方から整地後の畦土G上へ落下させて収穫可能な状態にする農作物掘取機10において、前記接地ローラー20を脱着可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘起して掘り上げた農作物を接地ローラーで整地した畦土上へ落下させて収穫可能な状態にする農作物掘取機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牽引車で牽引されながら畑を前進する機体の前下部に畦土の農作物を掘起する掘取スキを設け、掘取スキ後方の機体位置に掘起した農作物を掘り上げて土をふるい落としながら後上方へ搬送する傾斜コンベヤを設け、傾斜コンベヤ下方の機体後部位置に掘起後の畦土を回転駆動により整地する広幅の接地ローラーを設け、傾斜コンベヤで搬送した農作物を後上方から整地後の畦土上へ落下させて収穫可能な状態にする農作物掘取機が特許文献1〜3で提案されている。
【0003】
ところで、前記技術では畦土が乾燥している場合は優れた作業性を発揮できるが、降雨で畦土が湿っている場合はふるい落とされた土が摩擦抵抗の増加により接地ローラーの前方で徐々に滞留して整地され難くなり、牽引車への負荷が増加して燃料消費率が悪化するという問題があった。また、土が大量に滞留して機体の前進が困難となった場合はその都度作業を中断して滞留した土を除去しなければならず、面倒な作業で能率が悪いという問題があった。
【特許文献1】実公平1−6670号公報
【特許文献2】実公平2−26257号公報
【特許文献3】実用新案登録第2590486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、畦土の状態に応じて接地ローラーを脱着することで、省燃費で能率的に作業できるようにした農作物掘取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1)牽引車で牽引又は自走により畑を前進する機体の前下部に畦土の農作物を掘起する掘取スキを設け、掘取スキ後方の機体位置に掘起した農作物を掘り上げて土をふるい落としながら後上方へ搬送する傾斜コンベヤを設け、傾斜コンベヤ下方の機体後部位置に掘起後の畦土を回転駆動により整地する広幅の接地ローラーを設け、傾斜コンベヤで搬送した農作物を後上方から整地後の畦土上へ落下させて収穫可能な状態にする農作物掘取機において、前記接地ローラーを脱着可能にしたことを特徴とする、農作物掘取機
2)接地ローラーの脱着構造が、接地ローラーの一方の軸端に軸受部を途中位置に備えた操作レバーを接地ローラーが回転できるように基端部で一体的に取り付け、操作レバーの軸受部に挿入して操作レバーを回転可能に支持する支持軸を機体に突設し、接地ローラーの他方の軸端を挿入して駆動力を伝達する駆動軸支部を機体に揺動自在に設け、操作レバーを所定角度で掛止する複数の掛止溝を備えたストッパーを機体に設け、操作レバーで接地ローラーを揺動させて畦土からの高さを変更できるようにするとともに操作レバーと接地ローラーを一体で脱着できるようにしたものである、前記1)記載の農作物掘取機
3)機体の支持軸が駆動軸支部の揺動と連動するシャフトの軸端であって、同軸端に係合キーを形成し、同係合キーに嵌合して機体の一部と係止する固定具を備え、接地ローラーの取り外し時に駆動軸支部の揺動を固定できるようにした、前記2)記載の農作物掘取機
4)接地ローラーの取り外し後の駆動軸支部に脱着自在に取り付ける保護キャップを備えた、前記2)又は3)記載の農作物掘取機
にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、畦土が乾燥している場合は接地ローラーで整地しながら作業し、畦土が湿っている場合は接地ローラーを取り外して作業する。従って、畦土がどのような状態でも接地ローラーの脱着により牽引車の燃料消費率を悪化させり作業を中断したりすることなく、省燃費で能率的に作業できるようになる。特に請求項2記載の構成によれば、接地ローラーの脱着が極めて容易であり、脱着に時間を要することなく更に能率的に作業できるようになる。さらに、幅や外径の異なる接地ローラーを複数用意して畦土の大きさや状態に応じて柔軟に使い分けることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、接地ローラーの取り外し後は駆動軸支部が下降して畦土と接触するから、駆動軸支部の揺動と連動するシャフトの軸端に係合キーを形成し、軸端の係合キーに嵌合して機体の一部と係止する固定具を具備し、接地ローラーの取り外し時に駆動軸支部を上方に揺動させた状態で固定するのが望ましい。接地ローラーの取り外し後の駆動軸支部には脱着自在の保護キャップを取り付けて土の付着を防止する。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0008】
図1〜6に示す実施例は、農作物を掘起して掘り上げる農作物掘取機の例である。図1は実施例の農作物掘取機の左側面図、図2は実施例の農作物掘取機の右側面図、図3は実施例の接地ローラーの斜視図、図4は実施例の農作物の掘り取りを示す説明図、図5,6は実施例の接地ローラーの脱着を示す説明図である。
【0009】
図中、10は農作物掘取機、11は機体、12は駆動チェーン、13は接地板、14は掘取スキ、15は傾斜コンベヤ、16は土ふるい、17はストッパー、18は駆動軸支部、18aはキー溝、19はシャフト、19aは係合キー、19bはピン、19cはバネ、20は接地ローラー、21は軸端、21aは係合キー、22は操作レバー、22aは軸受部、30は固定具、30aはキー溝、30bはピン穴、31は保護キャップ、40,41はネジ、42はボルト、Gは畦土、Gaは土、Pは農作物である。
【0010】
本実施例の農作物掘取機10は、機体11の前下部に畦土Gの農作物Pを掘起する掘取スキ14を取り付け、掘取スキ14の後方位置に掘起した農作物Pを掘り上げて土Gaを隙間からふるい落としながら後上方へ搬送する傾斜コンベヤ15を取り付け、傾斜コンベヤ15の下方後部位置に掘起後の畦土Gを回転駆動により整地する広幅の接地ローラー20を脱着自在に取り付けている。傾斜コンベヤ15と接地ローラー20は牽引車の動力を駆動チェーン12で伝達して作動させるようにしている。
【0011】
接地ローラー20の一方の軸端21には途中位置に軸受部22aを備えた操作レバー22を接地ローラー20が回転できるように基端部で一体的に取り付け、接地ローラー20の他方の軸端21を挿入して駆動力を伝達する駆動軸支部18を機体11に揺動自在に設け、操作レバー22の軸受部22aに挿入して操作レバー22を回転可能に支持するシャフト19を駆動軸支部18の揺動基点と連結し、シャフト19の突出した軸端に係合キー19aを形成し、操作レバー22を所定角度で掛止する複数の掛止溝を備えたストッパー17を機体11の側面に設けている。
【0012】
本実施例では、牽引車(図示せず)の駆動力で傾斜コンベヤ15と接地ローラー20を駆動し、機体11が牽引車で牽引されながら接地板13で畑を滑走する。畦土Gは掘取スキ14で掘起して農作物Pが掘り上げられ、付着している土Gaが振動により剥がれて傾斜コンベヤ15の隙間からふるい落とされながら後上方へ搬送される。並行して、掘起した畦土Gとふるい落とされた土Gaは接地ローラー20で平坦に整地され、後上方へ搬送された農作物Pが整地された畦土G上に落下する。落下した農作物Pはその後に作業者が拾い上げて収穫される。
【0013】
ここで、畦土Gが降雨で湿っている場合あるいは作業中に降雨で湿った場合は、摩擦抵抗の増加により畦土Gが整地されずに接地ローラー20の前方で土Gaが徐々に滞留し、このままでは牽引車への負荷が増加して燃料消費率が悪化したり、作業を中断して土Gaを除去する手間が生じる。このような場合は、ボルト42を緩めて接地ローラー20と操作レバー22を一体で取り外し、駆動軸支部18とシャフト19に固定具30と保護キャップ31をネジ40で装着する。固定具30は土ふるい16を支持するバネ19cを引掛けるためのピン19bにピン穴30bを挿入するとともに、キー溝30aをシャフト19の軸端の係合キー19aに係合する。
【0014】
このようにすることで、畦土Gは接地ローラー20がないから整地されないが、牽引車への負荷が増加せず、土Gaの除去のために作業を中断する必要もない。また、駆動軸支部18は固定具30で機体11に固定されているから下降せず、畦土Gと接触して引きずられことなく円滑に前進できる。作業中に畦土Gが乾燥してくると、固定具30と保護キャップ31を取り外して接地ローラー20と操作レバー22をボルト42で短時間で取り付け、整地しながら作業する。
【0015】
このように、本実施例によれば畦土Gが乾燥している場合は接地ローラー20で整地しながら作業し、畦土Gが湿っている場合は接地ローラー20を取り外して作業することで、畦土Gがどのような状態でも接地ローラー20を短時間に容易に脱着することにより牽引車の燃料消費率を悪化させたり作業を中断したりすることなく、省燃費で能率的に作業できるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の農作物掘取機は、馬鈴薯,里芋,さつまいも,タマネギ,にんにく等の収穫作業に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例の農作物掘取機の左側面図である。
【図2】実施例の農作物掘取機の右側面図である。
【図3】実施例の接地ローラーの斜視図である。
【図4】実施例の農作物の掘り取りを示す説明図である。
【図5】実施例の接地ローラーの脱着を示す説明図である。
【図6】実施例の接地ローラーの脱着を示す説明図である。
【符号の説明】
【0018】
10 農作物掘取機
11 機体
12 駆動チェーン
13 接地板
14 掘取スキ
15 傾斜コンベヤ
16 土ふるい
17 ストッパー
18 駆動軸支部
18a キー溝
19 シャフト
19a 係合キー
19b ピン
19c バネ
20 接地ローラー
21 軸端
21a 係合キー
22 操作レバー
22a 軸受部
30 固定具
30a キー溝
30b ピン穴
31 保護キャップ
40,41 ネジ
42 ボルト
G 畦土
Ga 土
P 農作物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車で牽引又は自走により畑を前進する機体の前下部に畦土の農作物を掘起する掘取スキを設け、掘取スキ後方の機体位置に掘起した農作物を掘り上げて土をふるい落としながら後上方へ搬送する傾斜コンベヤを設け、傾斜コンベヤ下方の機体後部位置に掘起後の畦土を回転駆動により整地する広幅の接地ローラーを設け、傾斜コンベヤで搬送した農作物を後上方から整地後の畦土上へ落下させて収穫可能な状態にする農作物掘取機において、前記接地ローラーを脱着可能にしたことを特徴とする、農作物掘取機。
【請求項2】
接地ローラーの脱着構造が、接地ローラーの一方の軸端に軸受部を途中位置に備えた操作レバーを接地ローラーが回転できるように基端部で一体的に取り付け、操作レバーの軸受部に挿入して操作レバーを回転可能に支持する支持軸を機体に突設し、接地ローラーの他方の軸端を挿入して駆動力を伝達する駆動軸支部を機体に揺動自在に設け、操作レバーを所定角度で掛止する複数の掛止溝を備えたストッパーを機体に設け、操作レバーで接地ローラーを揺動させて畦土からの高さを変更できるようにするとともに操作レバーと接地ローラーを一体で脱着できるようにしたものである、請求項1記載の農作物掘取機。
【請求項3】
機体の支持軸が駆動軸支部の揺動と連動するシャフトの軸端であって、同軸端に係合キーを形成し、同係合キーに嵌合して機体の一部と係止する固定具を備え、接地ローラーの取り外し時に駆動軸支部の揺動を固定できるようにした、請求項2記載の農作物掘取機。
【請求項4】
接地ローラーの取り外し後の駆動軸支部に脱着自在に取り付ける保護キャップを備えた、請求項2又は3記載の農作物掘取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−209225(P2007−209225A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30487(P2006−30487)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000217240)田中工機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】