説明

農園芸用シート止着具

【課題】指または先端に鉤部を有する工具を使用することにより簡単に取り外せ、引いては、作業能率が向上できる農園芸用シート止着具を提供する。
【解決手段】先端が尖形に形成され土壌M中に押し込まれる埋込杆部1と、該埋込杆部1の基端に一体に設けられ該埋込杆部1の中心軸線方向から見て該埋込杆部1よりも幅広なシート押頭部2と、前記埋込杆部1の外周面に一体に突設されシート押頭部2側へ傾斜する抜止部4と、を有し、シート押頭部2には、前記埋込杆部1を含む面に沿って開口しかつ指または先端に鉤部10aを有する工具9を用いて土壌M中から引き抜く際に該指または該鉤部10aを挿通する引抜用孔7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畑やビニールハウス内で農作物を栽培する畝の表面に被せて該表面を覆う農園芸用シートを前記畝の表面に固定しておく農園芸用シート止着具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、畑やビニールハウス内で農作物を栽培する場合、土壌によって栽培用の畝を多く造ると共に該各畝の表面に合成樹脂製の農園芸用シートを被せるようにしている。該農園芸用シートは、畝を覆って保温性を高め、かつ、鳥や害虫から農作物を保護するために使用されるものである。そして、特に畑の場合、農園芸用シートが風に煽られるなどして理由も無く捲れたり移動しないように、該農園芸用シートの所定個所にその表側から農園芸用シート止着具を該農園芸用シートを破って貫き土壌の中にまで達するように打ち込んでいる。該農園芸用シート止着具は、例えば次のような構成からなっている。
【0003】
すなわち、前記農園芸用シート止着具は、合成樹脂材からなり先端が尖形に形成され土壌中に打ち込まれる埋込杆部と、該埋込杆部の基端に直交するように一体に設けられる幅広のシート押頭部と、からなっている。また、前記押込杆部の対向する両側面とシート押頭部の裏面とには、土壌中に打ち込んだとき該農園芸用シート止着具が理由も無く抜けたり移動しないように安定して固定されるように、先の尖った複数の抜止部が突設されている。そして、農園芸用シートの表面の所定位置に押込杆部を当て、シート押頭部を上から打ち付けて農園芸用シート止着具を土壌中に打ち込むようにしている。この際、シート押頭部は農園芸用シートにめり込む(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−75666号公報(第2−4頁、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に係る農園芸用シート止着具にあっては、農園芸用シートを取り外す時期が来たとき農園芸用シート止着具を取り外すことになるが、農園芸用シートに打ち込んで固定した状態ではシート押頭部が農園芸用シート内にめり込んでいるので、農園芸用シート止着具を手先の指で挟んで抜こうとすると、抜止部が邪魔することも相俟って抜き難い。しかも、数多くの農園芸用シート止着具を抜かねばならないとすると、極めて面倒な作業を強いられ多くの作業時間が掛かり、引いては作業能率が向上しないという課題がある。ただ、先端に鉤部を有する工具を使用して農園芸用シートとシート押頭部との間に前記工具の先端の鉤部を差し込み、シート押頭部を引き起こすようにして農園芸用シート止着具を取り外す方法もあるが、この方法にあってもシート押頭部が農園芸用シートにめり込んでいると、その間に工具の鉤状の先端を差し込むことは簡単ではない。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、指または先端に鉤部を有する工具を使用することにより簡単に取り外せ、引いては、作業能率が向上できる農園芸用シート止着具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため本発明の農園芸用シート止着具は、先端が尖形に形成され土壌中に打ち込まれる埋込杆部と、前記埋込杆部の基端に一体に設けられ該埋込杆部の中心軸線方向から見て該埋込杆部よりも幅広なシート押頭部と、前記埋込杆部の外周面に一体に突設され前記シート押頭部側へ傾斜する抜止部と、を有し、前記シート押頭部には、前記埋込杆部を含む面に沿って開口しかつ指または先端に鉤部を有する工具を用いて土壌中から引き抜く際に該指または該鉤部を挿通する引抜用孔が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る農園芸用シート止着具は、先端が尖形に形成され土壌中に打ち込まれる埋込杆部と、前記埋込杆部の基端に一体に設けられ該埋込杆部の中心軸線方向から見て該埋込杆部よりも幅広なシート押頭部と、を有し、該シート押頭部に、埋込杆部を含む面に沿って開口しかつ指または先端部が鉤状をなす工具を用いて土壌中から引き抜く際に該指または該鉤状の先端部を挿通する引抜用孔を設けるようにした。よって、農園芸用シートの上から土壌中に打ち込まれた農園芸用シート止着具を引き抜く場合、前記引抜用孔に指または工具の先端の鉤部を挿通してそのまま上方へ引き上げるのみで、農園芸用シート止着具を簡単に引き抜いて取り外すことができる。これにより、作業能率が向上できるという効果が有る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る農園芸用シート止着具の斜視図。
【図2】同正面図。
【図3】(イ)は同平面図、(ロ)は同側面図。
【図4】図3(ロ)のX−X線断面図。
【図5】工具の斜視図。
【図6】本発明に係る農園芸用シート止着具の使用状態を示す斜視図。
【図7】本発明に係る農園芸用シート止着具の使用状態を示す斜視図。
【図8】同縦断面図。
【図9】本発明に係る農園芸用シート止着具の使用状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る農園芸用シート止着具の最良の実施の形態を図面に基づき詳しく説明する。図1は本発明に係る農園芸用シート止着具の斜視図、図2は同正面図、図3(イ)は同平面図、図3(ロ)は同側面図、図4は図3(ロ)のX−X線断面図である。農園芸用シート止着具Aは、硬質の合成樹脂材により成形される。ただ、この農園芸用シート止着具Aは、紫外線を受けてそれにより劣化する可能性があるので、例えば紫外線吸収剤を添加して耐候性を高めるようにしている。
【0011】
農園芸用シート止着具Aは、先端が尖形に形成され土壌中に打ち込まれる埋込杆部1と、該埋込杆部1の基端に一体に設けられ該埋込杆部1の中心軸線方向から見て該埋込杆部1よりも幅広なシート押頭部2と、から概ね構成される。
【0012】
埋込杆部1は、その中心軸線に対して直交する断面形状がH型に形成され、表裏面の長手方向に沿って適宜間隔を置き該長手方向と直交する複数の補強リブ3が設けられている。また、埋込杆部1の外周面であって前記補強リブ3が設けられてない両側面1a,1aに、その長手方向に沿ってシート押頭部2側へ傾斜する複数の抜止部4が突設されている。
【0013】
前記シート押頭部2は、湾曲した略帯板状の押板部5とその裏面中央であって埋込杆部1側に一体に設けられる支持板部6とからなっている。埋込杆部1の基端は、支持板部6の下面に接続されることになる。押板部5の中央部が埋込杆部1とは反対側へ膨出しているのに対し、支持板部6は埋込杆部1側へ膨出している。そして該支持板部6に、埋込杆部1を含む面に沿って開口する引抜用孔7が設けられている。該引抜用孔7は、作業者の指または先端に鉤部10aを有する後記する工具9を用いて農園芸用シート止着具Aを土壌中から引き抜く際に、該指または該工具9の先端の鉤部10aを挿通するためのものである。また、引抜用孔7両側の支持板部6には、肉盗み用の小さい透孔8,8が開設される。
【0014】
図5は農園芸用シート止着具Aを取り外すための工具の斜視図である。工具9は、金属棒10が一定の長さの柄部11の先端に設けられ、該金属棒10の先端部をほぼ90度屈曲させて鉤部10aが設けられている。柄部11の基端側には、収納時に吊り下げておくための吊り紐12が取着されている。これは、一例であって、この工具9に限られるものではない。例えば、長い金属棒の先端部を単にL字型に屈曲させたものでも良い。
【0015】
本発明に係る農園芸用シート止着具Aは上記構成からなり、次に図6乃至図9に基づきその使用方法を説明する。図6、図7、図9はそれぞれ本発明に係る農園芸用シート止着具Aの使用状態を示す斜視図、図8は図7の縦断面図である。図6は土壌を盛って作られた畝に被せられた合成樹脂製の農園芸用シートS(一般には、「マルチシート」と呼ばれている。)が理由も無く捲れたり移動しないように、該農園芸用シートの上から土壌M中に農園芸用シート止着具Aを打ち込んだ状態である。この状態では、図8に示すように埋込杆部1が土壌M中に埋め込まれ、シート押頭部2の押板部5の長手方向に沿った両側の下面部5a,5aと支持板部6の下面部6aとが農園芸用シートSの上面に接触している。
【0016】
そして、これにより農園芸用シートSが理由も無く捲れたり移動するようなことがなく、農作物が植えられた畝をしっかりと覆う。また、農園芸用シート止着具Aは、埋込杆部1の両側面1a,1aに設けられた複数の抜止部4が土壌Mに食い込み抜け止め機能を果し、農園芸用シート止着具Aがしっかりと固定される。更に、図示は省略するが、一直線上に並ぶ2個または3個、4個といった隣り合う複数個の農園芸用シート止着具A,A間に各引抜用孔7にパイプ状の押え棒を挿通し、該押え棒で農園芸用シートを押さえるようにすることもできる。各引抜用孔7に押え棒を挿通した状態では、該押え棒が農園芸用シートの表面に強く接触するように引抜用孔7の内径や位置が設定される。具体的には、引抜用孔7における埋込杆部1側の内周縁が、農園芸用シートSの上面にほぼ接するようになっている。これにより、各農園芸用シート止着具Aにあっては農園芸用シートSを点で押さえるのに対し、押え棒にあっては農園芸用シートを線で押さえることができるようになり、この場合は農園芸用シートSがより安定して固定される。
【0017】
そこで、前記畝から農園芸用シートSを剥がして取り外すには、まず、農園芸用シート止着具Aを取り外すことになるが、この場合、作業者が引抜用孔7に指を挿通して取り外す方法と工具9を挿通して取り外す方法とがある。いずれもその方法はほとんど同じなので、ここでは工具9を使用して農園芸用シート止着具Aを取り外す場合を説明する。図7、図8に示すように工具9を用意し、金属棒10先端の鉤部10aを横方向からシート押頭部2に開設された引抜用孔7に挿通する。そして、この状態で図9に示すように工具9を引き上げ、農園芸用シート止着具Aを抜いて取り外す。このように、金属棒10の先端の鉤部10aを引抜用孔7に挿通して引き上げるのみで農園芸用シート止着具Aが簡単に取り外せる。
【0018】
以上のように、本発明に係る農園芸用シート止着具Aは、先端が尖形に形成され土壌M中に打ち込まれる埋込杆部1と、該埋込杆部1の基端に一体に設けられ該埋込杆部1の中心軸線方向から見て該埋込杆部1よりも幅広なシート押頭部2と、を有し、該シート押頭部2に、埋込杆部1を含む面に沿って開口しかつ先端に鉤部10aを有する工具9を用いて土壌M中から引き抜く際に先端の鉤部10aを挿通する引抜用孔7を設けている。よって、農園芸用シートSの上から土壌M中に打ち込まれた農園芸用シート止着具Aを引き抜く場合、前記引抜用孔7に指または工具9の先端の鉤部10aを挿通してそのまま上方へ引き上げるのみで、農園芸用シート止着具Aを簡単に引き抜いて取り外すことができる。これにより、作業能率が向上する。
【0019】
本発明にあっては、引抜用孔7をシート押頭部2における支持板部6に開設したが、これに限られるものではなく、例えば押板部5の埋込杆部1とは反対側の表面に引抜用孔を有するリング状の環状部を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0020】
1 埋込杆部
1a 側面
2 シート押頭部
3 補強リブ
4 抜止部
5 押板部
5a 側部
6 支持板部
6a 下面部
7 引抜用孔
8 透孔
9 工具
10 金属棒
10a 鉤部
11 柄部
12 吊り紐
A 農園芸用シート止着具
S 農園芸用シート
M 土壌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が尖形に形成され土壌中に打ち込まれる埋込杆部と、前記埋込杆部の基端に一体に設けられ該埋込杆部の中心軸線方向から見て該埋込杆部よりも幅広なシート押頭部と、前記埋込杆部の外周面に一体に突設され前記シート押頭部側へ傾斜する抜止部と、を有し、
前記シート押頭部には、前記埋込杆部を含む面に沿って開口しかつ指または先端に鉤部を有する工具を用いて土壌中から引き抜く際に該指または該鉤部を挿通する引抜用孔が設けられていることを特徴とする農園芸用シート止着具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−223880(P2011−223880A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93635(P2010−93635)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000243939)名伸電機株式会社 (38)
【Fターム(参考)】