農業ハウス用内張りカーテンおよびそれに利用する給気装置
【課題】保温性に優れ、速やかに給排気することができ、少ない給気量で空気膜を形成し、その平衡状態を維持することが可能な農業ハウス用内張りカーテンを提供する。
【解決手段】重ね合わせた2枚の樹脂フィルム8、9の各端辺を密封して形成されるチューブ体2と、チューブ体へ給気するための給気ファンとを備えた農業ハウス用内張りカーテン1であって、チューブ体の長さ方向の各端辺近傍に一つの開口部3を設け、各開口部に給気ファンを非気密的に装着してなる農業ハウス用内張りカーテンである。
【解決手段】重ね合わせた2枚の樹脂フィルム8、9の各端辺を密封して形成されるチューブ体2と、チューブ体へ給気するための給気ファンとを備えた農業ハウス用内張りカーテン1であって、チューブ体の長さ方向の各端辺近傍に一つの開口部3を設け、各開口部に給気ファンを非気密的に装着してなる農業ハウス用内張りカーテンである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農業用ハウスの内部に展張し、二層構造によって空気膜を形成する内張りカーテンに関し、さらに詳細には、小型の給気ファンを用いた簡易な構造によって、速やかに空気膜を形成し、その平衡状態を維持できるとともに、排気も速やかに行うことが可能であり、保温性にも優れた農業ハウス用内張りカーテンに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、促成栽培や防寒等を目的として、ポリ塩化ビニル等の被覆材を外側に被覆したハウス栽培が広く行われている。このような農業ハウスでは、低温期にもハウス内の温度を高く保つため、暖房機を稼動してハウス内に温風を供給している。しかし、夜間のハウス内の温度低下を防止するには、多量の燃料を使用して暖房機を稼動させる必要があり、多大な暖房コストを要するという問題があった。
【0003】
これに対し、ハウス内において保温性を備えた内張り材を二重または三重に展張することにより、ハウス内の栽培室と上部を遮断して、栽培室の温度低下を防止する手段が採られている。しかしながら、二重では十分な保温効果を得ることができず、三重では保温性は高まるものの、設置するためのコストや労力が大きいため普及には至っていない。また内張り材は、夜間は保温のため展張するが、日中は採光のため巻き上げる必要があり、内張り材を二重または三重に設置した場合には、展張および巻き上げの作業が煩雑となる問題もあった。このように、安価かつ簡易な装置で最大限の省エネ効果を達成することがハウス農家にとって大きな課題であった。
【0004】
上記課題を解決するため、2枚のフィルムを重ねてチューブ形態とし、これに送風口と多数の空気抜き孔とを設けて、空気膜の形成と排気巻上げ機能を持たせた内張りカーテンが提案されている(特許文献1)。しかしながら、この内張りカーテンは、空気抜き孔から絶えず空気が排出される構造であるため、チューブを膨張させて空気膜を形成するためには、常に排気量を上回る空気を給気ファンから供給する必要があり、運転コストが高くなる問題があった。さらに、膨張後チューブ体内部では空気が絶えず流動し、内張りカーテンの上部から冷却されたチューブ内の空気が空気抜き孔を通じて栽培室に移動してくるため、保温性が十分なものとはいえなかった。
【0005】
一方、このような二重のシート内に給気する手段として、エアハウスにおいて、二重シートに気密的に給気ファンを取り付けた構造が開示されている(特許文献2)。しかしながら、この構造を内張りカーテンに転用した場合には、排気の際に、ファンのプロペラが内部からの空気の排出の障害となるため、排気が完了するまでに時間を要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−333932号公報
【特許文献2】特開2004−33065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のごとき課題を解決したもので、保温性に優れるとともに、給気ロスが少なく短時間でチューブ体を膨張させて空気膜を形成し、チューブ体が所定の膨張状態に達した後は、自立的にその膨張状態を維持することが可能な農業ハウス用内張りカーテンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、密封状態のチューブ体の開口部に、給気ファンを非気密的に装着させることにより、給気初期においては、非気密的開口部が負圧となり実質的に気密状態となることから、給気ロスが小さく短時間でチューブ体を膨張させて空気膜が形成され、一定の膨張状態に達した後には少量の継続給気により膨張状態を維持することができ、さらに給気ファンの停止により、自然にかつ速やかにチューブ体の開口部から排気されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、かかる知見にもとづくもので、重ね合わせた2枚の樹脂フィルムの各端辺を密封して形成されるチューブ体と、独立した2枚の封止シートとを備え、チューブ体が、長さ方向の各端辺近傍にチューブ体を膨張させるための空気を送る給気ファンが非気密的に装着された一つの開口部を有し、各封止シートが、チューブ体の幅方向の両端辺下方に沿って設けられることにより、チューブ体と協働して栽培室と天井部空間を仕切ることを特徴とする農業用ハウス用内張りカーテンである。
【0010】
また本発明は、給気ファンと、支持部材を介して給気ファンを支持する枠体と、枠体をチューブ体の開口部に取り付ける装着部材と、チューブ体開口部の2枚のフィルムの間に空気を流通するために空間を確保するための空間保持部材とを備え、枠体の面積が給気ファンの面積より大きく、装着部材が2重環からなり、チューブ体の開口端部を2重環の間で着脱自由に挟持することを特徴とする農業ハウス用内張りカーテンの給気装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の農業ハウス用内張りカーテンは、給気ファンが開口部に非気密的に装着されていながらも、給気初期には実質的に気密状態となるため、給気ロスが少なく短時間でチューブ体を膨張させ空気膜を形成することが可能である。また、チューブ体が所定の膨張状態に達した後は、主に開口部付近で空気の流出入が行われ、チューブ体内部における空気の対流が生じにくいため、優れた断熱効果を発揮する。またチューブ体が給気ファンに対して大きな開口部を有することで、給気ファンの停止により、短時間でチューブ体からの排気が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の農業ハウス用内張りカーテンおよびこれに利用する給気装置の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る農業ハウス用内張りカーテンの一つの実施形態を示す模式図であり、図2は、このうち開口部付近の拡大図である。図1および2中、1は内張りカーテン全体、2はチューブ体、3は開口部、4は給気ファン、5は空間保持枠、6は枠体、7は支持部材、8は上側フィルム、9は下側フィルム、10は継手シート、11は巻上げパイプ、12は吐出口、13は吸込口、14は枠部材、15は封止シートをそれぞれ示す。
【0014】
チューブ体2は、各端辺が密封されたものであり、その材質としては通常の農業ハウス用内張りカーテンに用いられるものであれば特に制限されないが、好ましくはポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、またはポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系の樹脂フィルムである。このような樹脂フィルムを2枚重ね合わせて4つの各端辺を接着して形成されたチューブ体が好適に用いられる。樹脂フィルムの端辺を接着させるにあたっては、ヒートシールによって溶着する方法や、接着剤を用いて接着させる方法が利用できる。また、チューブ体2の幅方向の端辺については、継手シート10を設けず、巻上げパイプ11に重ね合わせた2枚の樹脂フィルムの端辺をパッカーで嵌着し、少なくとも1回転捲回することにより実質的に密封することも可能である。パッカーは、巻上げパイプに嵌着可能な、一部が開放された環状締結体である。樹脂フィルムの厚みも特に限定されないが、通常0.05〜0.2mm程度であればよい。
【0015】
チューブ体2の長さ方向の端辺近傍には、開口部3が下側フィルム9に設けられる。開口部3の位置は、チューブ体2の両端辺近傍において、幅方向の中央部分であることが好ましく、この位置であれば、チューブ体2の巻上げを阻害することがない。この開口部3に、給気ファン4が非気密的に装着される。本発明において、非気密的とは、給気ファンの吐出口12および吸込口13以外に、チューブ体2の内外に空気が流通可能な空間を設けて、給気ファン4が開口部3に装着されていることを意味する。例えば、開口部3の面積を給気ファン4の面積よりも大きくすることにより、開口部3の平面上において、給気ファン4と開口部3の間に空気が流通可能な空間を設けることができる。また給気ファン4の吐出口12の面を、開口部3の面に対してチューブ体2の外部方向へ離間させて装着することにより、給気ファン4の吐出口12の面と開口部3の面との間に、空気が流通可能な空間を設けることができる。開口部3および給気ファン4は、チューブ体2の少なくともいずれかの端辺に一つ設けられていればよいが、両端辺に一つずつ設けられていると、チューブ体2への給気および排気に要する時間を短縮することができ、更には、片方の給気ファン4を停止し、もう一方の給気ファン4を稼動させることで、露点に達したチューブ体2の内部に栽培室の乾燥した空気を循環させ、チューブ体内部を乾燥できる利点がある。
【0016】
このように、チューブ体2の開口部3に給気ファン4を非気密的に装着することにより、給気ファンを停止してチューブ体2から排気させる際には、開口部3と給気ファン4との間に設けられた空間から自然に空気を排出できるとともに、給気初期には、この空間から空気が漏出する量が給気量に比べて少ないため、効率良く速やかにチューブ体2を膨張させることができるが、その理由は次のように考えられる。すなわち、給気ファン4の稼動によりチューブ体2内部に空気が供給される際、空気流によって開口部付近では負圧となる。このため、供給初期のチューブ体内部の圧力が低い場合には、開口部3と給気ファン4との間に設けられた空間においても、チューブ体2の外部から内部へ向かう空気の流れが生じ、開口部3にはいわばエアシャッターが形成され、実質的に気密状態となる。したがって、供給された空気のロスが少なく効率的にチューブ体に空気が充填され速やかに膨張し、空気膜を形成させることができる。一方、チューブ体2の内部に一定の量の空気が満たされ、内部の圧力が上昇するに伴い、開口部3と給気ファン4との間の空間から空気が排出されるようになる。この排気量と給気量とがバランスすることにより、形成された空気膜の平衡状態が自立的に維持される。このように、平衡状態においては、主に開口部付近でのみ空気が流出入し、チューブ体2の内部では空気の動きが小さいため、断熱効果に優れ保温性が高い。そして、給気ファン4を停止させると、開口部3と給気ファン4との間の空間を通じて、チューブ体2内部の空気が速やかに排出される。これに対し、給気ファンを気密的に装着し、空気の流通部分が給気ファンの吐出口および吸込口のみとした場合には、給気ファンが逆止弁のように機能して排気が妨げられ、排気に時間を要することになる。
【0017】
給気ファン4は、軸流ファン(プロペラ型、スクリュー型)や斜流ファン、遠心ファン(シロッコ型、エアホイル型、ターボ型)等の各種給気ファンを使用できる。これらの給気ファンはチューブ体2の容量や開口部3の面積等に応じて、適宜最大風量、最大静圧、吐出口径等が設定される。
【0018】
上記給気ファンのうち、プロペラ型軸流ファンが好ましい。プロペラ型軸流ファンを用いると、ファンの軸方向に沿って扇形に風が広がり、これが上側フィルムあるいは分散板に当たると軸方向と直交する方向に分散するため、給気時における開口部からの空気の漏出を防止する効果が高い。また、一般にプロペラ型軸流ファンは、給気量が大きく静圧が小さいため、チューブ体2の容量や開口部3の面積等に応じ適切な特性値を有するプロペラ型軸流ファンを選択することによって、短時間でチューブ体を膨張させ空気膜を形成できるとともに、所定の膨張状態に達し内圧が上昇すると給気量が減少し、チューブ体が過剰に膨張することを防止できる。このように給気量が減少すると、開口部での空気の流出入量が減少するため、空気の対流をより抑制して断熱効果が向上する。さらにプロペラ型軸流ファンは他の給気ファンと比較して安価であるため、コスト面でも有利である。より具体的には、例えば、2枚のポリ塩化ビニル製フィルムから形成される、幅5m、長さ50m、厚さ0.2mの容量約50m3のチューブ体を用い、その両端に一つずつ直径200mmの円形の開口部を設けた場合、吐出口径100mm程度、最大風量3.0m3/分、最大静圧64Pa程度のプロペラ型軸流ファンが好適に使用できる。
【0019】
給気ファン4は、適当な装着手段によって開口部3に装着される。例えば、開口部3に沿って枠体6を装着し、これに支持部材7を介して給気ファン4を固定させればよい。枠体6は、2重環からなり、チューブ体の開口部を2重環の間で着脱自在に挟持する構造とすることができる。例えば、凸条部を設けた下側フレームと凹条部を設けた上側フレームからなる構成とし、これらによって開口部3に沿って下側フィルム9を挟持し凹条部と凸条部とを嵌合させることにより装着させることができる。また、上側フレームと下側フレームにこれらを嵌合可能なテーパーを付した構成としてもよい。一方、外周面にそって形成された凹条部を有する略環状であり、その直径を調節可能とするスライド機構を備えた枠体を用いて、これを開口部3のフィルム面に凹条部が当接する大きさまでスライドさせることによって、開口部3に装着することもできる。また枠体6の高さは、チューブ体2の容量、給気ファン4の給気量等に応じて適宜設定され、円筒状とすることもできる。
【0020】
給気ファン4の面積に対するチューブ体2の開口部3の面積は、チューブ体2の容量、フィルム荷重、給気ファン4の給気量、給気ファンの開口部3に対する取り付け位置等に応じて適宜設定されるが、通常給気ファン4の面積の2〜5倍であることが好ましく、3〜4倍がより好ましい。この範囲であると、上記したように給気時には給気ファン4と開口部3の間の空間から空気が漏出するのを抑制し、排気時には、速やかにチューブ体2から空気を排出することができる。なお、給気ファン4の面積とは、開口部3の面に投影した面積であり、吐出口12の面積だけでなく、枠部材14や支持部材7を投影した面積も含まれる。
【0021】
また、給気ファン4の装着位置も、チューブ体2の容量、フィルム荷重、給気ファン4の給気量、開口部3の面積、枠体6の高さ等に応じて適宜設定される。給気ファン4は、吐出口面12が枠体6の上面および下面の間となる任意の位置に装着可能であるが、枠体6の下面から離間した位置に装着することも可能である。例えば、チューブ体が2枚のポリ塩化ビニル製フィルムから形成される、幅5m、長さ50m、厚さ0.2mの容量約50m3のものであり、給気ファン4として、吐出口径100mm程度、最大風量3.0m3/分、最大静圧64Pa程度のプロペラ型軸流ファンを使用し、開口部3の面積が給気ファンの面積の3〜4倍であって、枠体6の高さが4cmである場合、吐出口12の面がチューブ体2の開口部3の面に対して、通常チューブ体2の内部1cmから外部20cmの位置にこれらの面が略平行になるように装着されればよく、好ましくはチューブ体2の内部1cmから外部15cmの位置であり、より好ましくは内部1cmから外部5cmである。この範囲であると、給気時における給気ファン4と開口部3の間の空間からの空気の漏出がより抑制される。
【0022】
本発明の農業ハウス用内張りカーテン1は、さらにチューブ体2の開口部3において空間保持枠5を備えることが好ましい。この空間保持枠5により、開口部3においてチューブ体2を形成する2枚のフィルム間に空気が流通する空間が確保され、より速やかに給排気を行うことができる。空間保持枠5は、チューブ体2内部に設けても、枠体6や支持部材7に設けてもよい。空間保持枠5の高さも、チューブ体2の容量、フィルム荷重、給気ファン4の送風量等に応じて適宜設定される。
【0023】
本発明の農業ハウス用内張りカーテン1は、チューブ体2の開口部3における上下のフィルムの間隔に対し、給気ファン4の給気量が十分である場合には、給気ファン4からチューブ体2内部に流入した風は、上側フィルム8に当たって分散し、開口部3からチューブ体2内部へと向かう空気の流れを形成するため、給気時における開口部3からの空気の漏出は防止される。一方、給気量に対しフィルムの間隔が大きい場合には、チューブ体2の開口部3において分散板を設けることが好ましく、これにより給気ファン4からチューブ体2内部に流入した空気を分散させて、同様に開口部3からの空気の漏出が抑制される。分散板はチューブ体2内部に設けても、枠体6や支持部材7に設けてもよく、開口部3と略平行に支持体で支持する構造とすればよい。
【0024】
またチューブ体2は、幅方向の両端辺に巻上げパイプ11を取り付けたものであることが好ましい。巻上げパイプ11は、チューブ体2を形成するいずれかのフィルムの端辺に継手シート10を接合し、これを介して取り付けることができる。公知の巻上げ機構を採用し、この巻上げパイプ11を回転させることによって、チューブ体2を展張、巻上げすることができる。
【0025】
内張りカーテン1の展張時には、チューブ体2と、2枚の独立した封止シート15とが協働して栽培室と天井部空間とが仕切られる。封止シート15の一方の端辺は、農業ハウスの壁面(サイドビニール)に固定されるか、または複数の農業ハウスが連結している場合には、隣接する農業ハウスの封止シートに接合される。他方の端辺は、チューブ体2の幅方向の端辺下方に沿うように内張りカーテン1を載置する内枠パイプ等に固定される。チューブ体2が膨張すると、幅方向の端辺において封止シート15と略接触し、この部分でシール構造が形成される。
【0026】
本発明の農業ハウス用内張りカーテンは、チューブ体2の容量、フィルム荷重、開口部3の面積等を考慮して給気ファン4の給気量や静圧等を設定することにより、チューブ体2膨張後に給気ファン4を継続運転しても、開口部3において給気量と排気量がバランスしチューブ体2の平衡状態を維持することが可能であるが、給気ファン4は可変抵抗器等の給気量を調節する制御手段を備えていることが好ましい。これにより、給気時には給気量を増加させて速やかにチューブ体2を膨張させ、所定の膨張状態に達した後には、排気量とバランスする程度の給気量に減少させることにより、運転コストを抑制しながら膨張したチューブ体の平衡状態を維持することができる。例えば、給気ファン4が、給気時は全開で運転を行い、チューブ体2膨張後、内圧が上がると同時にモーターの抵抗を検知して回転数を設定値に自動抑制し、更に、膨張時に巻上げを行った場合等過度に負担が掛る抵抗を検知した場合は自動停止する制御手段を備えていることが好ましい。
【0027】
チューブ体2を膨張させることにより形成される空気膜は、厚みが大きい程断熱効果が向上する。膨張時のチューブ体2の厚みは、チューブ体2の容量、フィルム荷重、開口部3の面積等を考慮して、給気ファン4からの給気量を調節することによって制御することができる。例えば、チューブ体が2枚のポリ塩化ビニル製フィルムから形成される、幅5m、長さ50m、厚さ0.2mの容量約50m3のものであり、給気ファン4として、吐出口径100mm程度、最大風量3.0m3/分、最大静圧64Pa程度のプロペラ型軸流ファンを使用し、開口部3の面積を給気ファンの面積の3〜4倍とした場合、給気ファンの出力を20%程度で運転すると最大厚み30cm程度で維持され、出力を50%とすると最大厚み60cm程度にすることができる。一方、膨張時のチューブ体2は、幅方向の中央部分が厚く、端部が薄い形状となるが、厚みが大きくなるととともに、チューブ体2が幅方向中央に向かって収縮することになる。このため、上記封止シート15は、チューブ体2が収縮しても幅方向端辺で略接触した状態を維持できる幅を有している必要がある。しかし、封止シートの幅が大きすぎると農業ハウスの外被覆材を開放した場合に、天井部からの風圧により破損する危険性がある。上記条件においては、封止シートの幅は70cm程度であればチューブ体2の厚みを60cm程度に膨張させても、気密状態を維持することができ、破損の危険性もないため好適である。
【0028】
本発明の農業ハウス用内張りカーテン1は以下のようにして操作する。すなわち、まず農業ハウスに内張りカーテン1を展張し、両方の給気ファン4の稼動により実質的に気密状態としたチューブ体2開口部から空気を供給してチューブ体2を膨張させ空気膜を形成する(工程(1))。上述のように、空気流によって開口部付近では負圧となるため、供給初期のチューブ体2内部の圧力が低い場合には、開口部3は実質的に気密状態となる。したがって、供給された空気のロスが少なく効率的にチューブ体2に空気が充填されて膨張し、速やかに空気膜を形成させることができる。
【0029】
チューブ体2が所定の膨張状態に達すると、両方の給気ファンの継続稼動により、開口部からの排気量とバランスする量の空気を供給してチューブ体の膨張状態を維持する(工程(2))。内部の圧力が上昇するに伴い、開口部3と給気ファン4との間の空間から空気が排出されるようになるが、この排気量と給気量とがバランスすることにより、その平衡状態が自立的に維持される。通常夜間にこのようにしてチューブ体2の膨張状態を維持し、その断熱効果によって栽培室を保温する。
【0030】
朝になると、両方の給気ファンの停止により、チューブ体内部の空気を自然排出する(工程(3))。開口部3から、チューブ体2内部の空気が速やかに排出される。排出後は、栽培室への採光のためチューブ体2を巻上げる(工程(4))。巻上げ後は、何れか一方の給気ファン4のみの稼動により、チューブ体2内部の空気を循環させ乾燥する(工程(5))。栽培室の乾燥した空気をチューブ体2内部に循環させ、結露により残留した水を乾燥させる。このようにチューブ体2の内部を乾燥させることにより、再度工程(1)においてチューブ体2を膨張させる際に、フィルム同士が密着するのを防止できる。給気ファンの稼動開始や停止の時間は、日の出時刻や日照時間等に応じて適宜設定することができる。また、内張りカーテンを展張する時間から逆算して1時間前に給気ファンを停止させることが好ましい。
【0031】
図3は、本発明の内張りカーテン用送風装置の実施形態を示す模式図である。4は給気ファン、6は外周面上に凹条部6aを備えた枠体、7は支持部材、13は吸込口、14は枠部材、16は分散板、17は支持体である。給気ファン4および枠体6は上記と同様であり、枠体は内張りカーテンのチューブ体の開口部に着脱可能に形成されている。給気ファン4が枠体6に支持部材7を介して固定されており、支持部材7には、支持体17によって支持された分散板16が備えられている。この支持体17および分散体16によって、流入する空気が分散されるとともに、空気が流通する空間も確保され、給排気が速やかに行われる。枠体6は、外周面にそって形成された凹条部6aを有する略環状であり、その直径を調節可能とするスライド機構を備えたものであり、これをチューブ体2の開口部3のフィルム面に凹条部6aが当接する大きさにまでスライドさせることによって、開口部3に係止して装着される。またこれをスライドさせて開口部3の直径よりも小さくすることにより脱着される。その他にも枠体は、2重環からなり、チューブ体の開口部を2重環の間で着脱自在に挟持する構造とすることができる。例えば、凸条部を設けた下側フレームと凹条部を設けた上側フレームからなる構成とし、これらによって開口部3に沿って下側フィルム9を挟持し凹条部と凸条部とを嵌合させることにより装着させることができる。また、上側フレームと下側フレームにこれらを嵌合可能なテーパーを付した構成としてもよい。枠体6と給気ファン4の面積および位置の関係は、上記した開口部3と給気ファン4の面積および位置の関係と同様である。
【0032】
図4および5は、本発明の内張りカーテンを農業ハウスに設置した模式図である。22は内枠パイプ、23は受け皿部、24は巻上げ機、25は可変抵抗器、26はタイマー、27はサイドビニール、S1は栽培室、S2は天井部空間を示す。内張りカーテン1は、農業用ハウス21に設けられた内枠パイプ22上に載置される。夜間は、チューブ体2を巻上げ機24により展張させ、受け皿部23に巻上げパイプ11が到達させたチューブ体2と封止シート15により栽培室S1と天井部空間S2とが仕切られる。給気ファン4を稼動させると、開口部3から空気が供給されチューブ体2が膨張していく。膨張したチューブ体2と封止シート15が略接触状態となり、シール構造が形成される。チューブ体2が一定の厚みに膨張すると開口部3から空気が排出され、これが給気量とバランスすると平衡状態が維持される。朝になり、給気ファン4の稼動を止めると、開口部3からチューブ体2内部の空気が速やかに排気される。排気後は、巻上げ機24により内張りカーテン1を巻き上げる。巻き上げ後、チューブ体2内部に結露による水が残留している場合には、一方の給気ファン4のみを運転することにより、チューブ体2内部に栽培室S1の暖かい空気が循環し、内部を乾燥させることができる。これによって、残存した水滴により光線の透過率が低下することを防止できる。
【実施例】
【0033】
実施例1
幅560cm、長さ50mで厚み0.05mm(上側)および0.075mm(下側)の2枚のポリエチレン樹脂フィルムを重ね合わせ、4辺をヒートシールにより圧着させてチューブ体を成形した。チューブ体の幅方向の各端辺には、さらに幅35cm、長さ50m、厚み0.13mmのポリ塩化ビニル製継手シートをチューブ体の下側に圧着して接合した。この継ぎ手シートの接合面と反対側の端部に、継手シートを挟んで直径32mmの巻上げパイプにパッカーを嵌合して固定した。チューブ体の長さ方向の両端辺付近に、直径200mmの円形の開口部を一つずつ設けた。給気装置として、吐出口径100mm、最大風量3.3m3/分、最大静圧63.7Paで、120mm角、38mm厚の枠部材を有し、出力を調整可能な可変抵抗器を備えたプロペラ型軸流ファンを、支持部材を介して枠体に固定したものを用い、この枠体をチューブ体開口部に装着して内張りカーテンを作製した。
【0034】
幅約5m奥行き約50mの農業用ハウス内に内枠パイプを設け、その上に上記内張りカーテンを載置した。内枠パイプの下面に幅70cmの封止シートを敷設した。巻き上げ機により内張りカーテンを展張し、巻上げパイプを受け皿に到達させた。給気ファンを稼動(出力50%)させると、約20分間でチューブ体が膨張し空気膜が形成された。空気膜の厚みは、長さ方向の中央部分で約30cm、端部で約10cmであった。給気ファンを連続で14時間稼動(出力50%)させたところ、空気膜の厚みは、長さ方向の最大部分で約60cm、端部で約20cmで、その間膨張した状態が維持されていた。給気ファンの運転を停止すると、約40分でチューブ体内の空気の排出が完了した。排気後巻き上げ機構により内張りカーテンを巻き上げた。一方の給気ファンのみ6時間運転することにより膜内に結露した水分を乾燥させた。この内張りカーテンの展張・巻上げ操作、および給気ファン稼動のダイヤグラムを図6に示す。
【0035】
実施例2
幅約5m奥行き約50mの農業用ハウス内において、実施例1で製作した内張りカーテン(試験区1および2)と、塩化ビニル製フィルム(0.075mm)二重張り(対象区)との重油消費量を比較した。いずれにおいても、実施例1と同じダイヤグラムで内張り材の展張・巻上げを行った。試験区1および2では、給気ファンの稼動を実施例1と同じダイヤグラムで行い、試験区1では給気ファンの連続稼動時の出力は20%、試験区2では出力50%とした。空気膜の厚みは、試験区1では平均約20cm、試験区2では平均約40cmであった。暖房装置(ネポン社製)を19±1℃に設定した時の1日10アール当りの重油消費量(L)を調べた。農業ハウス内設定温度(19℃)と1日の農業ハウス外の最低気温の差に対する重油消費量の散布図を図7に示す。また、それぞれの指数近似式から、ハウス内設定温度とハウス外最低気温との温度差が15℃または20℃の時の1日10アール当りの重油消費量(L)を求めた。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
本発明の内張りカーテンを用いた試験区1および2では、塩化ビニル製フィルム二重張りの対象区に対し、重油消費量が大幅に抑制されることが示された。特に空気膜の厚みを大きくした試験区2では顕著な重油消費量抑制効果が示され、本発明の内張りカーテンを使用することにより、優れた省エネ効果が得られることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る農業ハウス用内張りカーテンを示す模式図。
【図2】図1の農業ハウス用内張りカーテンの開口部付近の一部切り取り拡大図。
【図3】本発明に係る給気装置を示す模式図。
【図4】本発明に係る農業ハウス用内張りカーテンを農業ハウスに設置した状態を示す正面図。
【図5】本発明に係る農業ハウス用内張りカーテンを農業ハウスに設置した状態を示す斜視図。
【図6】実施例1における給気ファンのダイヤグラムを示す図である。
【図7】実施例2における気温差に対する重油消費量の散布図である。
【符号の説明】
【0039】
1 … … 内張りカーテン
2 … … チューブ体
3 … … 開口部
4 … … 給気ファン
5 … … 空間保持枠
6 … … 枠体
6a… … 凹条部
7 … … 支持部材
8 … … 上側フィルム
9 … … 下側フィルム
10 … … 継手シート
11 … … 巻上げパイプ
12 … … 吐出口
13 … … 吸込口
14 … … 枠部材
15 … … 封止シート
16 … … 分散板
17 … … 支持体
21 … … 農業ハウス
22 … … 内枠パイプ
23 … … 受け皿部
24 … … 巻上げ機
25 … … 可変抵抗器
26 … … タイマー
27 … … サイドビニール
S1 … … 栽培室
S2 … … 天井部空間
以 上
【技術分野】
【0001】
本発明は農業用ハウスの内部に展張し、二層構造によって空気膜を形成する内張りカーテンに関し、さらに詳細には、小型の給気ファンを用いた簡易な構造によって、速やかに空気膜を形成し、その平衡状態を維持できるとともに、排気も速やかに行うことが可能であり、保温性にも優れた農業ハウス用内張りカーテンに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、促成栽培や防寒等を目的として、ポリ塩化ビニル等の被覆材を外側に被覆したハウス栽培が広く行われている。このような農業ハウスでは、低温期にもハウス内の温度を高く保つため、暖房機を稼動してハウス内に温風を供給している。しかし、夜間のハウス内の温度低下を防止するには、多量の燃料を使用して暖房機を稼動させる必要があり、多大な暖房コストを要するという問題があった。
【0003】
これに対し、ハウス内において保温性を備えた内張り材を二重または三重に展張することにより、ハウス内の栽培室と上部を遮断して、栽培室の温度低下を防止する手段が採られている。しかしながら、二重では十分な保温効果を得ることができず、三重では保温性は高まるものの、設置するためのコストや労力が大きいため普及には至っていない。また内張り材は、夜間は保温のため展張するが、日中は採光のため巻き上げる必要があり、内張り材を二重または三重に設置した場合には、展張および巻き上げの作業が煩雑となる問題もあった。このように、安価かつ簡易な装置で最大限の省エネ効果を達成することがハウス農家にとって大きな課題であった。
【0004】
上記課題を解決するため、2枚のフィルムを重ねてチューブ形態とし、これに送風口と多数の空気抜き孔とを設けて、空気膜の形成と排気巻上げ機能を持たせた内張りカーテンが提案されている(特許文献1)。しかしながら、この内張りカーテンは、空気抜き孔から絶えず空気が排出される構造であるため、チューブを膨張させて空気膜を形成するためには、常に排気量を上回る空気を給気ファンから供給する必要があり、運転コストが高くなる問題があった。さらに、膨張後チューブ体内部では空気が絶えず流動し、内張りカーテンの上部から冷却されたチューブ内の空気が空気抜き孔を通じて栽培室に移動してくるため、保温性が十分なものとはいえなかった。
【0005】
一方、このような二重のシート内に給気する手段として、エアハウスにおいて、二重シートに気密的に給気ファンを取り付けた構造が開示されている(特許文献2)。しかしながら、この構造を内張りカーテンに転用した場合には、排気の際に、ファンのプロペラが内部からの空気の排出の障害となるため、排気が完了するまでに時間を要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−333932号公報
【特許文献2】特開2004−33065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のごとき課題を解決したもので、保温性に優れるとともに、給気ロスが少なく短時間でチューブ体を膨張させて空気膜を形成し、チューブ体が所定の膨張状態に達した後は、自立的にその膨張状態を維持することが可能な農業ハウス用内張りカーテンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、密封状態のチューブ体の開口部に、給気ファンを非気密的に装着させることにより、給気初期においては、非気密的開口部が負圧となり実質的に気密状態となることから、給気ロスが小さく短時間でチューブ体を膨張させて空気膜が形成され、一定の膨張状態に達した後には少量の継続給気により膨張状態を維持することができ、さらに給気ファンの停止により、自然にかつ速やかにチューブ体の開口部から排気されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、かかる知見にもとづくもので、重ね合わせた2枚の樹脂フィルムの各端辺を密封して形成されるチューブ体と、独立した2枚の封止シートとを備え、チューブ体が、長さ方向の各端辺近傍にチューブ体を膨張させるための空気を送る給気ファンが非気密的に装着された一つの開口部を有し、各封止シートが、チューブ体の幅方向の両端辺下方に沿って設けられることにより、チューブ体と協働して栽培室と天井部空間を仕切ることを特徴とする農業用ハウス用内張りカーテンである。
【0010】
また本発明は、給気ファンと、支持部材を介して給気ファンを支持する枠体と、枠体をチューブ体の開口部に取り付ける装着部材と、チューブ体開口部の2枚のフィルムの間に空気を流通するために空間を確保するための空間保持部材とを備え、枠体の面積が給気ファンの面積より大きく、装着部材が2重環からなり、チューブ体の開口端部を2重環の間で着脱自由に挟持することを特徴とする農業ハウス用内張りカーテンの給気装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の農業ハウス用内張りカーテンは、給気ファンが開口部に非気密的に装着されていながらも、給気初期には実質的に気密状態となるため、給気ロスが少なく短時間でチューブ体を膨張させ空気膜を形成することが可能である。また、チューブ体が所定の膨張状態に達した後は、主に開口部付近で空気の流出入が行われ、チューブ体内部における空気の対流が生じにくいため、優れた断熱効果を発揮する。またチューブ体が給気ファンに対して大きな開口部を有することで、給気ファンの停止により、短時間でチューブ体からの排気が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の農業ハウス用内張りカーテンおよびこれに利用する給気装置の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る農業ハウス用内張りカーテンの一つの実施形態を示す模式図であり、図2は、このうち開口部付近の拡大図である。図1および2中、1は内張りカーテン全体、2はチューブ体、3は開口部、4は給気ファン、5は空間保持枠、6は枠体、7は支持部材、8は上側フィルム、9は下側フィルム、10は継手シート、11は巻上げパイプ、12は吐出口、13は吸込口、14は枠部材、15は封止シートをそれぞれ示す。
【0014】
チューブ体2は、各端辺が密封されたものであり、その材質としては通常の農業ハウス用内張りカーテンに用いられるものであれば特に制限されないが、好ましくはポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、またはポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系の樹脂フィルムである。このような樹脂フィルムを2枚重ね合わせて4つの各端辺を接着して形成されたチューブ体が好適に用いられる。樹脂フィルムの端辺を接着させるにあたっては、ヒートシールによって溶着する方法や、接着剤を用いて接着させる方法が利用できる。また、チューブ体2の幅方向の端辺については、継手シート10を設けず、巻上げパイプ11に重ね合わせた2枚の樹脂フィルムの端辺をパッカーで嵌着し、少なくとも1回転捲回することにより実質的に密封することも可能である。パッカーは、巻上げパイプに嵌着可能な、一部が開放された環状締結体である。樹脂フィルムの厚みも特に限定されないが、通常0.05〜0.2mm程度であればよい。
【0015】
チューブ体2の長さ方向の端辺近傍には、開口部3が下側フィルム9に設けられる。開口部3の位置は、チューブ体2の両端辺近傍において、幅方向の中央部分であることが好ましく、この位置であれば、チューブ体2の巻上げを阻害することがない。この開口部3に、給気ファン4が非気密的に装着される。本発明において、非気密的とは、給気ファンの吐出口12および吸込口13以外に、チューブ体2の内外に空気が流通可能な空間を設けて、給気ファン4が開口部3に装着されていることを意味する。例えば、開口部3の面積を給気ファン4の面積よりも大きくすることにより、開口部3の平面上において、給気ファン4と開口部3の間に空気が流通可能な空間を設けることができる。また給気ファン4の吐出口12の面を、開口部3の面に対してチューブ体2の外部方向へ離間させて装着することにより、給気ファン4の吐出口12の面と開口部3の面との間に、空気が流通可能な空間を設けることができる。開口部3および給気ファン4は、チューブ体2の少なくともいずれかの端辺に一つ設けられていればよいが、両端辺に一つずつ設けられていると、チューブ体2への給気および排気に要する時間を短縮することができ、更には、片方の給気ファン4を停止し、もう一方の給気ファン4を稼動させることで、露点に達したチューブ体2の内部に栽培室の乾燥した空気を循環させ、チューブ体内部を乾燥できる利点がある。
【0016】
このように、チューブ体2の開口部3に給気ファン4を非気密的に装着することにより、給気ファンを停止してチューブ体2から排気させる際には、開口部3と給気ファン4との間に設けられた空間から自然に空気を排出できるとともに、給気初期には、この空間から空気が漏出する量が給気量に比べて少ないため、効率良く速やかにチューブ体2を膨張させることができるが、その理由は次のように考えられる。すなわち、給気ファン4の稼動によりチューブ体2内部に空気が供給される際、空気流によって開口部付近では負圧となる。このため、供給初期のチューブ体内部の圧力が低い場合には、開口部3と給気ファン4との間に設けられた空間においても、チューブ体2の外部から内部へ向かう空気の流れが生じ、開口部3にはいわばエアシャッターが形成され、実質的に気密状態となる。したがって、供給された空気のロスが少なく効率的にチューブ体に空気が充填され速やかに膨張し、空気膜を形成させることができる。一方、チューブ体2の内部に一定の量の空気が満たされ、内部の圧力が上昇するに伴い、開口部3と給気ファン4との間の空間から空気が排出されるようになる。この排気量と給気量とがバランスすることにより、形成された空気膜の平衡状態が自立的に維持される。このように、平衡状態においては、主に開口部付近でのみ空気が流出入し、チューブ体2の内部では空気の動きが小さいため、断熱効果に優れ保温性が高い。そして、給気ファン4を停止させると、開口部3と給気ファン4との間の空間を通じて、チューブ体2内部の空気が速やかに排出される。これに対し、給気ファンを気密的に装着し、空気の流通部分が給気ファンの吐出口および吸込口のみとした場合には、給気ファンが逆止弁のように機能して排気が妨げられ、排気に時間を要することになる。
【0017】
給気ファン4は、軸流ファン(プロペラ型、スクリュー型)や斜流ファン、遠心ファン(シロッコ型、エアホイル型、ターボ型)等の各種給気ファンを使用できる。これらの給気ファンはチューブ体2の容量や開口部3の面積等に応じて、適宜最大風量、最大静圧、吐出口径等が設定される。
【0018】
上記給気ファンのうち、プロペラ型軸流ファンが好ましい。プロペラ型軸流ファンを用いると、ファンの軸方向に沿って扇形に風が広がり、これが上側フィルムあるいは分散板に当たると軸方向と直交する方向に分散するため、給気時における開口部からの空気の漏出を防止する効果が高い。また、一般にプロペラ型軸流ファンは、給気量が大きく静圧が小さいため、チューブ体2の容量や開口部3の面積等に応じ適切な特性値を有するプロペラ型軸流ファンを選択することによって、短時間でチューブ体を膨張させ空気膜を形成できるとともに、所定の膨張状態に達し内圧が上昇すると給気量が減少し、チューブ体が過剰に膨張することを防止できる。このように給気量が減少すると、開口部での空気の流出入量が減少するため、空気の対流をより抑制して断熱効果が向上する。さらにプロペラ型軸流ファンは他の給気ファンと比較して安価であるため、コスト面でも有利である。より具体的には、例えば、2枚のポリ塩化ビニル製フィルムから形成される、幅5m、長さ50m、厚さ0.2mの容量約50m3のチューブ体を用い、その両端に一つずつ直径200mmの円形の開口部を設けた場合、吐出口径100mm程度、最大風量3.0m3/分、最大静圧64Pa程度のプロペラ型軸流ファンが好適に使用できる。
【0019】
給気ファン4は、適当な装着手段によって開口部3に装着される。例えば、開口部3に沿って枠体6を装着し、これに支持部材7を介して給気ファン4を固定させればよい。枠体6は、2重環からなり、チューブ体の開口部を2重環の間で着脱自在に挟持する構造とすることができる。例えば、凸条部を設けた下側フレームと凹条部を設けた上側フレームからなる構成とし、これらによって開口部3に沿って下側フィルム9を挟持し凹条部と凸条部とを嵌合させることにより装着させることができる。また、上側フレームと下側フレームにこれらを嵌合可能なテーパーを付した構成としてもよい。一方、外周面にそって形成された凹条部を有する略環状であり、その直径を調節可能とするスライド機構を備えた枠体を用いて、これを開口部3のフィルム面に凹条部が当接する大きさまでスライドさせることによって、開口部3に装着することもできる。また枠体6の高さは、チューブ体2の容量、給気ファン4の給気量等に応じて適宜設定され、円筒状とすることもできる。
【0020】
給気ファン4の面積に対するチューブ体2の開口部3の面積は、チューブ体2の容量、フィルム荷重、給気ファン4の給気量、給気ファンの開口部3に対する取り付け位置等に応じて適宜設定されるが、通常給気ファン4の面積の2〜5倍であることが好ましく、3〜4倍がより好ましい。この範囲であると、上記したように給気時には給気ファン4と開口部3の間の空間から空気が漏出するのを抑制し、排気時には、速やかにチューブ体2から空気を排出することができる。なお、給気ファン4の面積とは、開口部3の面に投影した面積であり、吐出口12の面積だけでなく、枠部材14や支持部材7を投影した面積も含まれる。
【0021】
また、給気ファン4の装着位置も、チューブ体2の容量、フィルム荷重、給気ファン4の給気量、開口部3の面積、枠体6の高さ等に応じて適宜設定される。給気ファン4は、吐出口面12が枠体6の上面および下面の間となる任意の位置に装着可能であるが、枠体6の下面から離間した位置に装着することも可能である。例えば、チューブ体が2枚のポリ塩化ビニル製フィルムから形成される、幅5m、長さ50m、厚さ0.2mの容量約50m3のものであり、給気ファン4として、吐出口径100mm程度、最大風量3.0m3/分、最大静圧64Pa程度のプロペラ型軸流ファンを使用し、開口部3の面積が給気ファンの面積の3〜4倍であって、枠体6の高さが4cmである場合、吐出口12の面がチューブ体2の開口部3の面に対して、通常チューブ体2の内部1cmから外部20cmの位置にこれらの面が略平行になるように装着されればよく、好ましくはチューブ体2の内部1cmから外部15cmの位置であり、より好ましくは内部1cmから外部5cmである。この範囲であると、給気時における給気ファン4と開口部3の間の空間からの空気の漏出がより抑制される。
【0022】
本発明の農業ハウス用内張りカーテン1は、さらにチューブ体2の開口部3において空間保持枠5を備えることが好ましい。この空間保持枠5により、開口部3においてチューブ体2を形成する2枚のフィルム間に空気が流通する空間が確保され、より速やかに給排気を行うことができる。空間保持枠5は、チューブ体2内部に設けても、枠体6や支持部材7に設けてもよい。空間保持枠5の高さも、チューブ体2の容量、フィルム荷重、給気ファン4の送風量等に応じて適宜設定される。
【0023】
本発明の農業ハウス用内張りカーテン1は、チューブ体2の開口部3における上下のフィルムの間隔に対し、給気ファン4の給気量が十分である場合には、給気ファン4からチューブ体2内部に流入した風は、上側フィルム8に当たって分散し、開口部3からチューブ体2内部へと向かう空気の流れを形成するため、給気時における開口部3からの空気の漏出は防止される。一方、給気量に対しフィルムの間隔が大きい場合には、チューブ体2の開口部3において分散板を設けることが好ましく、これにより給気ファン4からチューブ体2内部に流入した空気を分散させて、同様に開口部3からの空気の漏出が抑制される。分散板はチューブ体2内部に設けても、枠体6や支持部材7に設けてもよく、開口部3と略平行に支持体で支持する構造とすればよい。
【0024】
またチューブ体2は、幅方向の両端辺に巻上げパイプ11を取り付けたものであることが好ましい。巻上げパイプ11は、チューブ体2を形成するいずれかのフィルムの端辺に継手シート10を接合し、これを介して取り付けることができる。公知の巻上げ機構を採用し、この巻上げパイプ11を回転させることによって、チューブ体2を展張、巻上げすることができる。
【0025】
内張りカーテン1の展張時には、チューブ体2と、2枚の独立した封止シート15とが協働して栽培室と天井部空間とが仕切られる。封止シート15の一方の端辺は、農業ハウスの壁面(サイドビニール)に固定されるか、または複数の農業ハウスが連結している場合には、隣接する農業ハウスの封止シートに接合される。他方の端辺は、チューブ体2の幅方向の端辺下方に沿うように内張りカーテン1を載置する内枠パイプ等に固定される。チューブ体2が膨張すると、幅方向の端辺において封止シート15と略接触し、この部分でシール構造が形成される。
【0026】
本発明の農業ハウス用内張りカーテンは、チューブ体2の容量、フィルム荷重、開口部3の面積等を考慮して給気ファン4の給気量や静圧等を設定することにより、チューブ体2膨張後に給気ファン4を継続運転しても、開口部3において給気量と排気量がバランスしチューブ体2の平衡状態を維持することが可能であるが、給気ファン4は可変抵抗器等の給気量を調節する制御手段を備えていることが好ましい。これにより、給気時には給気量を増加させて速やかにチューブ体2を膨張させ、所定の膨張状態に達した後には、排気量とバランスする程度の給気量に減少させることにより、運転コストを抑制しながら膨張したチューブ体の平衡状態を維持することができる。例えば、給気ファン4が、給気時は全開で運転を行い、チューブ体2膨張後、内圧が上がると同時にモーターの抵抗を検知して回転数を設定値に自動抑制し、更に、膨張時に巻上げを行った場合等過度に負担が掛る抵抗を検知した場合は自動停止する制御手段を備えていることが好ましい。
【0027】
チューブ体2を膨張させることにより形成される空気膜は、厚みが大きい程断熱効果が向上する。膨張時のチューブ体2の厚みは、チューブ体2の容量、フィルム荷重、開口部3の面積等を考慮して、給気ファン4からの給気量を調節することによって制御することができる。例えば、チューブ体が2枚のポリ塩化ビニル製フィルムから形成される、幅5m、長さ50m、厚さ0.2mの容量約50m3のものであり、給気ファン4として、吐出口径100mm程度、最大風量3.0m3/分、最大静圧64Pa程度のプロペラ型軸流ファンを使用し、開口部3の面積を給気ファンの面積の3〜4倍とした場合、給気ファンの出力を20%程度で運転すると最大厚み30cm程度で維持され、出力を50%とすると最大厚み60cm程度にすることができる。一方、膨張時のチューブ体2は、幅方向の中央部分が厚く、端部が薄い形状となるが、厚みが大きくなるととともに、チューブ体2が幅方向中央に向かって収縮することになる。このため、上記封止シート15は、チューブ体2が収縮しても幅方向端辺で略接触した状態を維持できる幅を有している必要がある。しかし、封止シートの幅が大きすぎると農業ハウスの外被覆材を開放した場合に、天井部からの風圧により破損する危険性がある。上記条件においては、封止シートの幅は70cm程度であればチューブ体2の厚みを60cm程度に膨張させても、気密状態を維持することができ、破損の危険性もないため好適である。
【0028】
本発明の農業ハウス用内張りカーテン1は以下のようにして操作する。すなわち、まず農業ハウスに内張りカーテン1を展張し、両方の給気ファン4の稼動により実質的に気密状態としたチューブ体2開口部から空気を供給してチューブ体2を膨張させ空気膜を形成する(工程(1))。上述のように、空気流によって開口部付近では負圧となるため、供給初期のチューブ体2内部の圧力が低い場合には、開口部3は実質的に気密状態となる。したがって、供給された空気のロスが少なく効率的にチューブ体2に空気が充填されて膨張し、速やかに空気膜を形成させることができる。
【0029】
チューブ体2が所定の膨張状態に達すると、両方の給気ファンの継続稼動により、開口部からの排気量とバランスする量の空気を供給してチューブ体の膨張状態を維持する(工程(2))。内部の圧力が上昇するに伴い、開口部3と給気ファン4との間の空間から空気が排出されるようになるが、この排気量と給気量とがバランスすることにより、その平衡状態が自立的に維持される。通常夜間にこのようにしてチューブ体2の膨張状態を維持し、その断熱効果によって栽培室を保温する。
【0030】
朝になると、両方の給気ファンの停止により、チューブ体内部の空気を自然排出する(工程(3))。開口部3から、チューブ体2内部の空気が速やかに排出される。排出後は、栽培室への採光のためチューブ体2を巻上げる(工程(4))。巻上げ後は、何れか一方の給気ファン4のみの稼動により、チューブ体2内部の空気を循環させ乾燥する(工程(5))。栽培室の乾燥した空気をチューブ体2内部に循環させ、結露により残留した水を乾燥させる。このようにチューブ体2の内部を乾燥させることにより、再度工程(1)においてチューブ体2を膨張させる際に、フィルム同士が密着するのを防止できる。給気ファンの稼動開始や停止の時間は、日の出時刻や日照時間等に応じて適宜設定することができる。また、内張りカーテンを展張する時間から逆算して1時間前に給気ファンを停止させることが好ましい。
【0031】
図3は、本発明の内張りカーテン用送風装置の実施形態を示す模式図である。4は給気ファン、6は外周面上に凹条部6aを備えた枠体、7は支持部材、13は吸込口、14は枠部材、16は分散板、17は支持体である。給気ファン4および枠体6は上記と同様であり、枠体は内張りカーテンのチューブ体の開口部に着脱可能に形成されている。給気ファン4が枠体6に支持部材7を介して固定されており、支持部材7には、支持体17によって支持された分散板16が備えられている。この支持体17および分散体16によって、流入する空気が分散されるとともに、空気が流通する空間も確保され、給排気が速やかに行われる。枠体6は、外周面にそって形成された凹条部6aを有する略環状であり、その直径を調節可能とするスライド機構を備えたものであり、これをチューブ体2の開口部3のフィルム面に凹条部6aが当接する大きさにまでスライドさせることによって、開口部3に係止して装着される。またこれをスライドさせて開口部3の直径よりも小さくすることにより脱着される。その他にも枠体は、2重環からなり、チューブ体の開口部を2重環の間で着脱自在に挟持する構造とすることができる。例えば、凸条部を設けた下側フレームと凹条部を設けた上側フレームからなる構成とし、これらによって開口部3に沿って下側フィルム9を挟持し凹条部と凸条部とを嵌合させることにより装着させることができる。また、上側フレームと下側フレームにこれらを嵌合可能なテーパーを付した構成としてもよい。枠体6と給気ファン4の面積および位置の関係は、上記した開口部3と給気ファン4の面積および位置の関係と同様である。
【0032】
図4および5は、本発明の内張りカーテンを農業ハウスに設置した模式図である。22は内枠パイプ、23は受け皿部、24は巻上げ機、25は可変抵抗器、26はタイマー、27はサイドビニール、S1は栽培室、S2は天井部空間を示す。内張りカーテン1は、農業用ハウス21に設けられた内枠パイプ22上に載置される。夜間は、チューブ体2を巻上げ機24により展張させ、受け皿部23に巻上げパイプ11が到達させたチューブ体2と封止シート15により栽培室S1と天井部空間S2とが仕切られる。給気ファン4を稼動させると、開口部3から空気が供給されチューブ体2が膨張していく。膨張したチューブ体2と封止シート15が略接触状態となり、シール構造が形成される。チューブ体2が一定の厚みに膨張すると開口部3から空気が排出され、これが給気量とバランスすると平衡状態が維持される。朝になり、給気ファン4の稼動を止めると、開口部3からチューブ体2内部の空気が速やかに排気される。排気後は、巻上げ機24により内張りカーテン1を巻き上げる。巻き上げ後、チューブ体2内部に結露による水が残留している場合には、一方の給気ファン4のみを運転することにより、チューブ体2内部に栽培室S1の暖かい空気が循環し、内部を乾燥させることができる。これによって、残存した水滴により光線の透過率が低下することを防止できる。
【実施例】
【0033】
実施例1
幅560cm、長さ50mで厚み0.05mm(上側)および0.075mm(下側)の2枚のポリエチレン樹脂フィルムを重ね合わせ、4辺をヒートシールにより圧着させてチューブ体を成形した。チューブ体の幅方向の各端辺には、さらに幅35cm、長さ50m、厚み0.13mmのポリ塩化ビニル製継手シートをチューブ体の下側に圧着して接合した。この継ぎ手シートの接合面と反対側の端部に、継手シートを挟んで直径32mmの巻上げパイプにパッカーを嵌合して固定した。チューブ体の長さ方向の両端辺付近に、直径200mmの円形の開口部を一つずつ設けた。給気装置として、吐出口径100mm、最大風量3.3m3/分、最大静圧63.7Paで、120mm角、38mm厚の枠部材を有し、出力を調整可能な可変抵抗器を備えたプロペラ型軸流ファンを、支持部材を介して枠体に固定したものを用い、この枠体をチューブ体開口部に装着して内張りカーテンを作製した。
【0034】
幅約5m奥行き約50mの農業用ハウス内に内枠パイプを設け、その上に上記内張りカーテンを載置した。内枠パイプの下面に幅70cmの封止シートを敷設した。巻き上げ機により内張りカーテンを展張し、巻上げパイプを受け皿に到達させた。給気ファンを稼動(出力50%)させると、約20分間でチューブ体が膨張し空気膜が形成された。空気膜の厚みは、長さ方向の中央部分で約30cm、端部で約10cmであった。給気ファンを連続で14時間稼動(出力50%)させたところ、空気膜の厚みは、長さ方向の最大部分で約60cm、端部で約20cmで、その間膨張した状態が維持されていた。給気ファンの運転を停止すると、約40分でチューブ体内の空気の排出が完了した。排気後巻き上げ機構により内張りカーテンを巻き上げた。一方の給気ファンのみ6時間運転することにより膜内に結露した水分を乾燥させた。この内張りカーテンの展張・巻上げ操作、および給気ファン稼動のダイヤグラムを図6に示す。
【0035】
実施例2
幅約5m奥行き約50mの農業用ハウス内において、実施例1で製作した内張りカーテン(試験区1および2)と、塩化ビニル製フィルム(0.075mm)二重張り(対象区)との重油消費量を比較した。いずれにおいても、実施例1と同じダイヤグラムで内張り材の展張・巻上げを行った。試験区1および2では、給気ファンの稼動を実施例1と同じダイヤグラムで行い、試験区1では給気ファンの連続稼動時の出力は20%、試験区2では出力50%とした。空気膜の厚みは、試験区1では平均約20cm、試験区2では平均約40cmであった。暖房装置(ネポン社製)を19±1℃に設定した時の1日10アール当りの重油消費量(L)を調べた。農業ハウス内設定温度(19℃)と1日の農業ハウス外の最低気温の差に対する重油消費量の散布図を図7に示す。また、それぞれの指数近似式から、ハウス内設定温度とハウス外最低気温との温度差が15℃または20℃の時の1日10アール当りの重油消費量(L)を求めた。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
本発明の内張りカーテンを用いた試験区1および2では、塩化ビニル製フィルム二重張りの対象区に対し、重油消費量が大幅に抑制されることが示された。特に空気膜の厚みを大きくした試験区2では顕著な重油消費量抑制効果が示され、本発明の内張りカーテンを使用することにより、優れた省エネ効果が得られることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る農業ハウス用内張りカーテンを示す模式図。
【図2】図1の農業ハウス用内張りカーテンの開口部付近の一部切り取り拡大図。
【図3】本発明に係る給気装置を示す模式図。
【図4】本発明に係る農業ハウス用内張りカーテンを農業ハウスに設置した状態を示す正面図。
【図5】本発明に係る農業ハウス用内張りカーテンを農業ハウスに設置した状態を示す斜視図。
【図6】実施例1における給気ファンのダイヤグラムを示す図である。
【図7】実施例2における気温差に対する重油消費量の散布図である。
【符号の説明】
【0039】
1 … … 内張りカーテン
2 … … チューブ体
3 … … 開口部
4 … … 給気ファン
5 … … 空間保持枠
6 … … 枠体
6a… … 凹条部
7 … … 支持部材
8 … … 上側フィルム
9 … … 下側フィルム
10 … … 継手シート
11 … … 巻上げパイプ
12 … … 吐出口
13 … … 吸込口
14 … … 枠部材
15 … … 封止シート
16 … … 分散板
17 … … 支持体
21 … … 農業ハウス
22 … … 内枠パイプ
23 … … 受け皿部
24 … … 巻上げ機
25 … … 可変抵抗器
26 … … タイマー
27 … … サイドビニール
S1 … … 栽培室
S2 … … 天井部空間
以 上
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせた2枚の樹脂フィルムの各端辺を密封して形成されるチューブ体と、独立した2枚の封止シートとを備え、チューブ体が、長さ方向の各端辺近傍にチューブ体を膨張させるための空気を送る給気ファンが非気密的に装着された一つの開口部を有し、各封止シートが、チューブ体の幅方向の両端辺下方に沿って設けられることにより、チューブ体と協働して栽培室と天井部空間を仕切ることを特徴とする農業用ハウス用内張りカーテン。
【請求項2】
チューブ体が、幅方向の各端辺に巻上げパイプを有する請求項1記載の農業ハウス用内張りカーテン。
【請求項3】
巻上げパイプが、チューブ体を構成する2枚のフィルムのいずれか一方の端辺に接続された継ぎ手シートに固定されたものである請求項2記載の農業ハウス用内張りカーテン。
【請求項4】
巻上げパイプにチューブ体を構成する重ね合わされた2枚のフィルムの幅方向の端辺をパッカーで嵌着し、少なくとも1回転捲回することにより、チューブ体の幅方向の端辺が密封されたものである請求項2記載の農業ハウス用内張りカーテン。
【請求項5】
給気ファンが、プロペラ型軸流ファンであり、チューブ体の開口部に沿って装着された枠体に支持部材を介して固定されたものである請求項1ないし4のいずれかの項記載の農業ハウス用内張りカーテン。
【請求項6】
チューブ体の開口部の面積が給気ファンの面積の2〜5倍で、かつ給気ファンの吐出口が開口部の開口面に略平行して取り付けられている請求項1ないし5のいずれかの項記載の農業ハウス用内張りカーテン。
【請求項7】
さらに、チューブ体の開口部の2枚の樹脂フィルム間に、空気が流通する空間を確保するための空間保持枠を備えた請求項1ないし6のいずれかの項記載の農業ハウス用内張りカーテン。
【請求項8】
給気ファンと、支持部材を介して給気ファンを支持する枠体と、枠体をチューブ体の開口部に取り付ける装着部材と、チューブ体開口部の2枚のフィルムの間に空気を流通するために空間を確保するための空間保持部材とを備え、枠体の面積が給気ファンの面積より大きく、装着部材が2重環からなり、チューブ体の開口端部を2重環の間で着脱自由に挟持することを特徴とする農業ハウス用内張りカーテンの給気装置。
【請求項9】
給気ファンがプロペラ型軸流ファンである請求項8記載の内張りカーテン用給気装置。
【請求項10】
下記(1)ないし(4)の工程を含む請求項1ないし7のいずれかの項記載の農業ハウス用内張りカーテンの操作方法。
(1)内張りカーテンを農業ハウスに展張し、両方の給気ファンの稼動により実質的に
気密状態としたチューブ体の開口部から空気を供給してチューブ体を膨張させ空
気膜を形成する工程
(2)両方の給気ファンの継続稼動により、開口部からの排気量とバランスする量の空
気を供給してチューブ体の膨張状態を維持する工程
(3)両方の給気ファンの停止により、チューブ体内部の空気を自然排出する工程
(4)空気が排出されたチューブ体を巻上げる工程
【請求項11】
さらに下記の工程を含む請求項10記載の農業ハウス用内張りカーテンの操作方法。
(5)何れか一方の給気ファンのみの稼動により、チューブ体内部の空気を循環させ乾
燥する工程
【請求項1】
重ね合わせた2枚の樹脂フィルムの各端辺を密封して形成されるチューブ体と、独立した2枚の封止シートとを備え、チューブ体が、長さ方向の各端辺近傍にチューブ体を膨張させるための空気を送る給気ファンが非気密的に装着された一つの開口部を有し、各封止シートが、チューブ体の幅方向の両端辺下方に沿って設けられることにより、チューブ体と協働して栽培室と天井部空間を仕切ることを特徴とする農業用ハウス用内張りカーテン。
【請求項2】
チューブ体が、幅方向の各端辺に巻上げパイプを有する請求項1記載の農業ハウス用内張りカーテン。
【請求項3】
巻上げパイプが、チューブ体を構成する2枚のフィルムのいずれか一方の端辺に接続された継ぎ手シートに固定されたものである請求項2記載の農業ハウス用内張りカーテン。
【請求項4】
巻上げパイプにチューブ体を構成する重ね合わされた2枚のフィルムの幅方向の端辺をパッカーで嵌着し、少なくとも1回転捲回することにより、チューブ体の幅方向の端辺が密封されたものである請求項2記載の農業ハウス用内張りカーテン。
【請求項5】
給気ファンが、プロペラ型軸流ファンであり、チューブ体の開口部に沿って装着された枠体に支持部材を介して固定されたものである請求項1ないし4のいずれかの項記載の農業ハウス用内張りカーテン。
【請求項6】
チューブ体の開口部の面積が給気ファンの面積の2〜5倍で、かつ給気ファンの吐出口が開口部の開口面に略平行して取り付けられている請求項1ないし5のいずれかの項記載の農業ハウス用内張りカーテン。
【請求項7】
さらに、チューブ体の開口部の2枚の樹脂フィルム間に、空気が流通する空間を確保するための空間保持枠を備えた請求項1ないし6のいずれかの項記載の農業ハウス用内張りカーテン。
【請求項8】
給気ファンと、支持部材を介して給気ファンを支持する枠体と、枠体をチューブ体の開口部に取り付ける装着部材と、チューブ体開口部の2枚のフィルムの間に空気を流通するために空間を確保するための空間保持部材とを備え、枠体の面積が給気ファンの面積より大きく、装着部材が2重環からなり、チューブ体の開口端部を2重環の間で着脱自由に挟持することを特徴とする農業ハウス用内張りカーテンの給気装置。
【請求項9】
給気ファンがプロペラ型軸流ファンである請求項8記載の内張りカーテン用給気装置。
【請求項10】
下記(1)ないし(4)の工程を含む請求項1ないし7のいずれかの項記載の農業ハウス用内張りカーテンの操作方法。
(1)内張りカーテンを農業ハウスに展張し、両方の給気ファンの稼動により実質的に
気密状態としたチューブ体の開口部から空気を供給してチューブ体を膨張させ空
気膜を形成する工程
(2)両方の給気ファンの継続稼動により、開口部からの排気量とバランスする量の空
気を供給してチューブ体の膨張状態を維持する工程
(3)両方の給気ファンの停止により、チューブ体内部の空気を自然排出する工程
(4)空気が排出されたチューブ体を巻上げる工程
【請求項11】
さらに下記の工程を含む請求項10記載の農業ハウス用内張りカーテンの操作方法。
(5)何れか一方の給気ファンのみの稼動により、チューブ体内部の空気を循環させ乾
燥する工程
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−178669(P2010−178669A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24837(P2009−24837)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(509037031)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(509037031)
【Fターム(参考)】
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