説明

農業用ビニールハウスのビニールシート巻き上げ機構

【課題】巻き上げパイプPを歯車伝動装置をハンドル操作軸で駆動する農業用ビニールハウスのビニールシート巻き上げ機構について、クラッチを設けて、巻き上げパイプが巻き上げ装置に対してフリーになるようにし、かつ、ブレーキを設けて、巻き上げパイプの自由落下速度を手元操作で制御できるように構成する。
【解決手段】ビニールシート巻き上げ機構は、ベベルギア10による伝動装置の出力軸に中空クラッチ軸12の一端を嵌合させ、上記中空クラッチ軸12にコイルバネ21が遊嵌しており、クラッチレバーと、当該クラッチレバーに一端が連結され、他端が上記クラッチリング14をシフトさせるシフトレバー23に連結されたケーブル35によってクラッチ操作手段が構成されており、ブレーキレバーと、当該ブレーキレバーに一端が連結され他端が上記ブレーキ操作リングに連結されたケーブル35とによってブレーキ操作手段を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業用ビニールハウスの屋根(又は妻壁)のビニールシートを巻き上げ巻き戻しするビニールシート巻き上げ機構に関するものであり、巻き上げパイプを自由落下させて巻き戻しを迅速に行うについて、その巻き戻し速さを手元操作で任意に加減して巻き戻し終点での衝撃を緩和することができ、またその巻き上げ機構を単純にし、巻き戻し操作を簡単容易にすることができるものである。
【背景技術】
【0002】
農業用ビニールハウスは、例えばかまぼこ形の屋根を有し、その屋根と妻壁、及び前後左右の壁をビニールシートで覆っている。そして、屋根シート100(図4参照)の下端に巻き上げパイプPがクリップで着脱自在に固着されており、この巻き上げパイプPが妻壁側に設けられた巻き上げ装置Mに連結されていて、手動のハンドル操作軸50で駆動されるようになっている(例えば特開2001−120081号公報)。これを概略的に示せば、図4に示すとおりである。巻き上げパイプは例えば外径19.1〜22.2mm、全長はビニールハウスの全長に及ぶもの(多数のパイプ材を接続したもの)であり、巻き上げ装置Mの重さはほぼ1kgである。
なお、上記巻き上げ装置Mは縦方向の入力軸と横方向の出力軸を有し、両軸のベベルギアを有する歯車伝動装置であり、巻き上げ巻き戻し操作時に巻き上げパイプとともに屋根構造材にそって昇降するものであるから、可及的に小型で軽量でなければならない。
そして、妻壁にそって下方に延びているハンドル操作軸50の正転駆動で屋根シート100が巻き上げられて屋根の一部が開口され、逆転駆動で巻き戻されて屋根の上記開口が閉じられる。巻き上げ操作を容易にするために巻き上げ装置は減速装置になっている。このため、巻き戻し操作を迅速にするにはハンドル操作軸50を速く逆転させる必要があり、したがって、急ぎのときに迅速に巻き戻すことはできないという不便がある。
【0003】
巻き戻し操作を自由落下で行えば巻き戻しを迅速にすることができるが、そうすると、巻き上げパイプPの慣性力によって巻き戻し終点において屋根シート100に衝撃力が加わり、このために巻き上げパイプPと屋根シート100とのクリップによる連結部で滑って部分的にずれを生じ、巻き上げ巻き戻し操作に不都合を生じるようになる。このために巻き戻しは制御されなければならず、また、ハンドル操作軸50で巻き上げ装置Mを逆転させながら巻き戻しがなされるようにしている。
【0004】
以上のような従来技術では、巻き戻し操作が迅速でなく、したがって、屋根の開口部を全閉するための巻き戻し操作に多大の時間と労力を要するという問題がある。
上記の問題を解消するには、巻き上げパイプを巻き上げ装置Mに対してフリーにして自由落下させるようにすればよいが、自由落下による場合は、巻き戻しの終点で大きな衝撃が屋根シートにかかり、種々の不都合を生じ、また屋根シートの耐久性が著しく害されるという問題がある。この問題を避けるには自由落下による巻き戻し速度を制御する必要があり、かつ、その操作機構が小型軽量で落下速度の制御が簡単容易でなければならない。そうでなければ、経済性、利用性の観点で農家の要求に応え得ず、したがって、普及する可能性が小さいからである。
【特許文献1】特開2001−120081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような実情に鑑みれば、巻き上げ装置Mに対して巻き上げパイプPを選択的にフリーにして自由落下させるようにし、そのための切り換え手段を軽量で単純にし、自由落下速度を加減する制動手段を軽量で単純にし、かつこれらを操作するための操作手段を軽量で単純にする必要がある。
さらに、巻き上げ装置Mは、巻き上げパイプPによって屋根シート100が巻き上げ巻き戻しされるにつれてビニールハウスの屋根構造材fに沿って昇降するものであって、縦軸(駆動軸)で横軸(被駆動軸)を駆動するための歯車伝動装置を備えているだけの極めて小型、計量なものであるから、上記の切り換え手段、制動手段も小型軽量なものでなければならない。
【0006】
そこで、この発明の課題は、巻き上げパイプPを歯車伝動装置で駆動し、当該歯車伝動装置をハンドル操作軸で駆動する農業用ビニールハウスのビニールシート巻き上げ機構について、クラッチを設けて、巻き上げパイプが巻き上げ装置に対してフリーになるようにし、かつ、ブレーキを設けて、巻き上げパイプの自由落下速度を手元操作で制御できるようにするために、上記クラッチ・ブレーキ及びこれらの操作手段が軽量で単純に構成されるようにこれらの機構を工夫することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、巻き上げパイプを巻き上げ装置で駆動し、当該巻き上げ装置をハンドル操作軸で駆動する農業用ビニールハウスのビニールシート巻き上げ機構を前提として、次の(イ)〜(ホ)によるものである。
(イ)ベベルギアによる伝動装置の出力軸に中空クラッチ軸の一端を嵌合させ、上記出力軸と中空クラッチ軸とクラッチリングとボールとによってボールクラッチが構成されており、
(ロ)上記出力軸が軸受でケーシングに回転自在に支持されており、
(ハ)上記中空クラッチ軸にコイルバネが遊嵌しており、当該コイルバネの一端がケーシングに係止され、他端がブレーキ操作プーリに連結されてスプリングブレーキが構成されており、
(ニ)クラッチレバーと、当該クラッチレバーに一端が連結され、他端が上記クラッチリングをシフトさせるシフトレバーに連結されたケーブルによってクラッチ操作手段が構成されており、
(ホ)ブレーキレバーと、当該ブレーキレバーに一端が連結され他端が上記ブレーキ操作リングに連結されたケーブルとによってブレーキ操作手段が構成されていること。
【0008】
〔作用〕
上記中空クラッチ軸に巻き上げパイプの一端を挿入し、その端部を中空クラッチ軸に固着している。通常は上記ボールクラッチが係合状態にあり、上記スプリングブレーキが離脱状態にあるので、ハンドル操作軸を正転方向に回転させると上記伝動装置、ボールクラッチを介して巻き上げパイプが駆動されてビニールハウスの屋根シートが巻き上げられる。屋根シートを適宜の位置まで巻き上げた状態でハンドルを固定することで、屋根シートがその状態に保持される。
上記ブレーキレバーを引いてスプリングブレーキを作動させて巻き上げパイプの回転を制限しておいて、上記クラッチレバーを操作してクラッチを離脱させ、その後、ブレーキレバーを緩めると巻き上げパイプが回転して屋根シートが巻き戻される。この時、ブレーキレバーで巻き戻し速度が加減され、これによって巻き戻し速度が制御される。
【0009】
クラッチはボールクラッチであるから極めて小型軽量に構成され、また、ブレーキがスプリングブレーキであるから極めて小型軽量に構成される。したがって、クラッチ及びブレーキが極めて小型軽量に構成され、また、上記出力軸と中空クラッチ軸とが同一軸線上にあるので、クラッチ及びブレーキが極めてコンパクトに伝動装置に組み付けられる。それゆえ、伝動装置、クラッチ及びブレーキによる巻き上げ機構が極めて小型、軽量に構成される。
また、通常、クラッチが係合状態にあり、ブレーキが離脱状態にあり、そして、クラッチレバーを引き、ブレーキレバーを引くことで、巻き上げパイプの自由落下による巻き戻しが制御された速度で行われ、ブレーキレバーを強く操作することで任意の位置で巻き戻しを止めることができ、その位置でクラッチレバーを解放してクラッチを係合させることで、巻き上げパイプを当該位置に係止させることができる。
したがって、巻き戻し操作を迅速に行うことができ、その操作は極めて簡単、容易である。
【0010】
クラッチリングは摺動タイプ、すなわち軸方向に摺動操作されてボールを半径方向内方に押し込むタイプのもの、又は回転タイプ、すなわち回転操作されてボールを半径方向内方に押し込むタイプのもののいずれかである。通常はボールが半径方向内方に押し込まれて中空クラッチ軸の外周の凹部に係合していて、これによってクラッチが係合状態にある。クラッチ操作手段でクラッチリングが操作されると、クラッチリングによるボールに対する押さえが解除されてクラッチが離脱される。
なお、上記伝動装置はウオームギアによるものでもよいが、ウオームギアによるものはベベルギアによるものに比してコストが高くなる。
以上が具体的な解決手段であるが、上記ブレーキ操作プーリについてはその機能の範囲で構造を変更することができる。
そしてまた、出力軸と中空クラッチ軸とが同一軸線上にあり、クラッチとブレーキとが同一軸線上にあり、これらのクラッチ・ブレーキが単純な構造によるものであり、さらにこれらがケーブルを介して操作レバーで係脱操作がなされる機構を備えていることが上記解決手段の基本である。
したがって、クラッチの構造、ブレーキの構造について、上記基本の範囲で適宜変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明による巻き上げ機構Dはケーシング1、ベベルギア(以下、「駆動ギア」という)10とベベルギア(以下、「被駆動ギア」という)11による伝動装置、ボールクラッチC及びスプリングブレーキBを有するものであり、ケーシング1の軸受2,3,4によって、駆動ギア10、被駆動ギア11、中空クラッチ軸12が回転自在に支承されている。駆動ギア10は基準円径が40mm、歯数20、モジュール2の歯車で、被駆動ギア11と噛み合わせた歯車伝動装置の減速比は1/2である。
被駆動ギア11の中空の出力軸13(以下これを「中空出力軸」という)に中空クラッチ軸12の一端が嵌合されており、当該中空クラッチ軸12に巻き上げパイプP(外径19.1mm)の端部が嵌合され、ボルト・ナット20で連結されている。
【0012】
被駆動ギア11の中空出力軸13に摺動タイプのクラッチリング14が嵌合されており、当該クラッチリング14にシフター15の円筒部15aが係合している。シフター15はコイルバネ21で押し込まれており、シフトフォーク22によってコイルバネ21に抗して引き出される。クラッチリング14がコイルバネ21に抗して外方に引き出されたときクラッチが離脱され、これによって巻き上げパイプPが被駆動ギアー11に対してフリーになる。
【0013】
なお、シフター15のフランジ15bにシフトフォーク22が係合しており、シフトフォーク22はシフトレバー23の先端に設けられており、当該シフトレバー23はケーシング1のブラケット1aに支軸で矢印方向に揺動自在に枢支されている。シフトレバー23の下端にクラッチ用ケーブル35が連結されており、当該クラッチ用ケーブル35の下端はハンドル50Hの近傍に設けたクラッチレバー(図示略)に連結されている。
【0014】
中空出力軸13に2つの半径方向孔が対向して設けられており、当該半径方向穴にボール16がそれぞれ保持されている。クラッチリング14内面に傾斜カム面14aがあり、中空クラッチ軸12の外周に凹部12aがあって、これらによってボールクラッチCが構成されている。
クラッチリング14がコイルバネ21によってシフター15を介して内方に押し込まれているとき、クラッチリング14内面の傾斜カム面14aによってボール16が押されて中空クラッチ軸12の凹部12aに係合しており、これによって中空クラッチ軸12と中空出力軸13とが連結されている。
【0015】
中空クラッチ軸12にコイルバネ31が遊嵌しており、コイルバネ31の一端31aが軸受4のハウジング4aに係合し、他端31bが操作プーリ32に係合していて、これによりスプリングブレーキBが構成されている。上記操作プーリ32は中空クラッチ軸12に回転自在に支持されており、外周にU溝が形成されていて、当該U溝にブレーキ用ケーブル40が巻き掛けられその先端が固定されている。そして、上記ブレーキ用ケーブル40の下端は操作軸50のハンドル50Hの近傍に設けたブレーキレバーに連結されている。
【0016】
ブレーキレバーが操作されてブレーキ用ケーブル40が引っ張られると、コイルバネ31に抗して操作プーリ32が回転され、コイルバネ31が捩られる。そして、コイルバネ31は操作ブーリ32の回転によって捩られると縮径して中空クラッチ軸12を掴んでこれを制動する。そして、このスプリングブレーキBの制動力は操作プーリ32に対する操作力で加減される。そして上記制動力を加減することで屋根シート100の巻き戻し速度が制御される。
上記ケーブル35と40はそれぞれ別個の操作レバーで操作することができる。しかし、これらが一つの操作レバーで操作されるようにしてもよく、この場合は、クラッチ操作が若干先行するように、時間差を以て上記ケーブル35及び40が引っ張られるようにするのがよい。クラッチ操作が先行する一例を図1(c)に示している。他方、ブレーキ操作が先行するようにすることもでき、ブレーキ操作が先行するようにすれば、ノーブレーキで巻き戻しが行われることが機械的に防止される。
このように、一つの操作レバーで連続してクラッチ操作、ブレーキ操作を行うようにすれば、クラッチ・ブレーキの操作が簡単で、非常に便利である。
【0017】
駆動ギア10の入力軸2aに可撓継ぎ手(又は自在軸継ぎ手)2bを介して操作軸50が連結されており、その下端にハンドル50Hがある。可撓継ぎ手2bは縦方向の操作軸50の回転力を水平方向の入力軸2aに円滑に伝達するための軸継ぎ手であるから、最も単純で廉価なものでよく、この実施例ではコイルバネなどで補強されたゴム管によるものが採用されている。
【0018】
上記実施例は巻き上げパイプPの逆転をブレーキで制動して適宜の速度で巻き戻すものであるが、ブレーキによる制動がなされなければ巻き上げパイプPが自然落下することになり、実際においてはこのような使い方をする恐れがある。このような不用意な使い方がなされてもダメージが最小限に抑えられるようにするための対策を講じておくことが望ましい。その対策の一例は、巻き上げパイプPの両端に緩衝手段を連結することであり、これが図3に示されている。この例の緩衝手段は最大ストローク30cmのエアダンパ70である。
エアダンパ70はシリンダ70a、ピストン70b、戻しバネ70cを備えた周知のものであり、そのピストンロッド70dが妻壁の屋根構造材fに連結されており、シリンダ70aの下端にロープ72を介して連結部材71が連結されている。なお、上記戻しバネ70cは所要の戻し力を有しなければならないが、巻き上げパイプの重量で圧縮される程度の弱いバネでなければならない。なぜなら、巻き戻し時に、巻き上げパイプが戻しバネを70cを圧縮させながらその下端位置まで降下しなければならないからである。
巻き上げパイプPの巻き上げストロークSが仮に150cmであるとすれば、ロープ72の長さは120(150−ストローク30=120)cmである。巻き上げパイプPが下端位置にあるとき、エアダンパ70は伸張しており、このとき戻しバネ70cは圧縮(圧縮量:30cm)されていることになる。
【0019】
巻き上げパイプPで屋根シート100が巻き上げられるとき、その巻き上げストロークが30cmに達するまでエアダンパ70が収縮し、その後は上記ロープ72が弛む。
屋根シートの巻き戻しが開始されると、巻き戻しストロークが約120cmに達するまではエアダンパは作動せず、その後、巻き上げパイプPの負荷がエアダンパ70にかかるようになると当該エアダンパが作動する。したがって、仮に、巻き上げパイプPがノーブレーキで降下しても、終点の30cm手前からエアダンパ70が作動するので、その降下終点において強い衝撃が屋根シートにかかることはない。
また、中間点までブレーキをかけて速度制御しながら巻き戻し、その後はブレーキを解放して自然落下させても、エアダンパ70によって緩衝されるので全く支障がない。したがって、屋根を全閉するための巻き戻し作業を大幅に簡略にし、迅速にすることができる。
ダンパ(エアダンパに限らない)を付設すれば、巻き戻し操作時に戻しバネに蓄力されるので、巻き上げ操作の初期においてダンパが復元しながらこれを助勢することになり、それだけ巻き上げ操作が楽になる。
なお、上記のダンパとしては単なるコイルバネでもよいが、エアダンパを使用することが好ましい。エアダンパを使用することの利点は、エアクッション効果があるので、戻しバネ70cを弱いものにして緩衝特性をソフトにすることができ、また、巻き上げパイプPの降下速度が速いほどダンパ抵抗が大きくて、巻き上げパイプPの降下速度が速いほど高い緩衝効果が得られることである。また、エアダンパは、機構が比較的簡単で廉価である。
〔変形例〕
以上の実施例はクラッチがボールクラッチで、ブレーキがスプリングブレーキであるが、クラッチを噛み合いクラッチにし、ブレーキをディスクブレーキにし、これらを連動型にして一つの操作機構でクラッチ及びブレーキが同時に操作されるようにこれらを構成することもできる。その一例を図1−1に示している。この変形例は、上記実施例に対して、クラッチの構造及びブレーキの構造が異なるが基本構造において違いはない。この変形例の構造は次のとおりである。
中空クラッチ軸12に中空のクラッチ部材81をスプライン嵌合させ、クラッチ部材81の端面のクラッチ歯82bと、中空出力軸13の端面のクラッチ歯82aとによって噛み合いクラッチ82が構成されている。クラッチ部材81は付勢バネ81aで押されていて、これによって噛み合いクラッチ82が噛み合わされている。また、上記クラッチ部材81の外端にフランジ81bがあり、当該フランジ81bとブレーキディスク83とによってディスクブレーキが構成されている。
具体的には、上記フランジ81bの端面にブレーキライニング(摩擦材)83bが固定され、また、クラッチシフター15の円筒部15aにブレーキディスク83がスプライン係合しており(図1−2(c))、さらに、ブレーキディスク83にブレーキライニング83aが固定されている。そして、ブレーキディスク83の背面を反力バネ84で支えており、クラッチシフター15でクラッチ部材81が付勢バネ81aに抗して外側にシフトされると、噛み合いクラッチ82が離脱し、その後、クラッチ部材81のフランジ81bがブレーキディスク83に当たり、これを押して反力バネ84を圧縮させる。反力バネ84のバネ反力によってフランジ81bとブレーキディスク83が圧接され、ブレーキライニング83a,83bの摩擦抵抗でクラッチ部材81がブレーキディスク83によって制動される。そして、クラッチ部材81がブレーキディスクに強く押し付けられるのに伴って反力バネ84のバネ力が強くなり、これによって上記制動力が強くなる。なお、この変形例では上記実施例と同様に、クラッチシフター15はシフトレバー23によって操作される。
クラッチ用ケーブル35でシフトレバー23を操作することで、クラッチとブレーキが連動して操作されるので、クラッチ及びブレーキの操作機構が一層単純である。
なお、この変形例におけるブレーキは単板式のディスクブレーキであるが、制動力が不足するときは、ブレーキディスク83を増やして多板ディスクブレーキを構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は実施例の断面図、(b)は図(a)におけるC部拡大図、(c)はクラッチ・ブレーキ操作レバーの正面図
【図1−1】は変形例の断面図
【図1−2】(a)は上記変形例における矢視Cの平面図、(b)は同X−X断面図、(c)は同Y−Y断面図
【図2】は図1のX−X断面図
【図3】はダンパの使用状態を示す正面図
【図3−1】はエアダンパの断面図
【図4】は農業用ビニールハウスの斜視図
【符号の説明】
【0021】
C:ボールクラッチ
B:スプリングブレーキ
D:巻き上げ機構
P:巻き上げパイプ
M:巻き上げ装置
f:屋根構造材
1:ケーシング
1a:ブラケット
2,3,4:軸受
2a:入力軸
2b:可撓継ぎ手
4a:軸受4のハウジング
10:駆動ギア
11:被駆動ギア
12:中空クラッチ軸
12a:凹部
13:中空出力軸
14:クラッチリング
14a:傾斜カム面
15:クラッチシフター
15a:円筒部
15b:フランジ
16:ボール
21:コイルバネ
22:シフトフォーク
23:シフトレバー
31:コイルバネ
32:操作プーリ
35:クラッチ用ケーブル
40:ブレーキ用ケーブル
50:操作軸
50H:ハンドル
70:エアダンパ
71:連結部材
72:ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き上げパイプを巻き上げ装置で駆動し、当該巻き上げ装置をハンドル操作軸で駆動する農業用ビニールハウスのビニールシート巻き上げ機構であって、
ベベルギアによる伝動装置の出力軸に中空クラッチ軸の一端を嵌合させ、上記出力軸と中空クラッチ軸とがクラッチで係脱自在になっており、
上記出力軸が軸受でケーシングに回転自在に支持されており、
上記中空クラッチ軸に対するブレーキがあり、
巻き戻し操作時に上記クラッチが離脱され、上記ブレーキが作動して中空クラッチ軸が制動されるように構成されている農業用ビニールハウスのビニールシート巻き上げ機構。
【請求項2】
巻き上げパイプを巻き上げ装置で駆動し、当該巻き上げ装置をハンドル操作軸で駆動する農業用ビニールハウスのビニールシート巻き上げ機構であって、
ベベルギアによる伝動装置の出力軸に中空クラッチ軸の一端を嵌合させ、上記出力軸と中空クラッチ軸とクラッチリングとボールとによってボールクラッチが構成されており、
上記出力軸が軸受でケーシングに回転自在に支持されており、
上記中空クラッチ軸にコイルバネが遊嵌しており、当該コイルバネの一端がケーシングに係止され、他端がブレーキ操作プーリに連結されてスプリングブレーキが構成されており、
クラッチレバーと、当該クラッチレバーに一端が連結され他端が上記クラッチリングをシフトさせるようにシフトレバーに連結されたケーブルとによってクラッチ操作手段が構成されており、
ブレーキレバーと、当該ブレーキレバーに一端が連結され他端が上記ブレーキ操作プーリに連結されたケーブルとによってブレーキ操作手段が構成されている農業用ビニールハウスのビニールシート巻き上げ機構。
【請求項3】
上記中空クラッチ軸にクラッチ部材がスプライン嵌合しており、その一端が噛み合いクラッチによって上記出力軸と係合しており、他端にディスクブレーキがあって当該ディスクブレーキによって上記クラッチ部材が制動されるようになっており、クラッチのシフト動作で上記クラッチが離脱されるとともに上記ブレーキが係合するようになっている請求項1の農業用ビニールハウスのビニールシート巻き上げ機構。
【請求項4】
上記クラッチ及びブレーキが一つのクラッチ・ブレーキレバーで操作され、巻き戻し操作時に上記クラッチ・ブレーキレバーによってクラッチが離脱され、
ブレーキが作動されるように構成されている請求項1又は請求項2の農業用ビニールハウスのビニールシート巻き上げ機構。
【請求項5】
上記巻き上げパイプの両端に連結部材が遊嵌されており、上記連結部材がダンパを介して屋根構造材に連結されていて、屋根シート巻き戻し終点において巻き上げパイプの両端が上記連結部材に支持され、これによって上記ダンパが作動するようになっている請求項1乃至請求項4の農業用ビニールハウスのビニールシート巻き上げ機構。

【図1】
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【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図3−1】
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【図4】
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