説明

農業用被覆シート用カッター及び農業用被覆シート

【目的】 あらゆる種類の苗等に対応可能で、スリットから露出する耕作面地が少なくなる農業用被覆シート用カッターとする。
【構成】 農業用被覆シート200に押し付けてウエーブ状のスリット210を形成する農業用被覆シート用カッターであって、複数枚の円形の刃部110と、これらの刃部110が取り付けられる支持部材120と、支持部材120が回転可能に取り付けられるカッター本体部130とを備え、刃部110の縁部には、農業用被覆シート200にスリット210を形成できる切断可能部111と、農業用被覆シート200にスリットを形成できない切断不能部112とが交互に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕作面地を被覆する農業用被覆シートにスリットを形成する農業用被覆シート用カッターと、この農業用被覆シート用カッターによってスリットが形成された農業用被覆シートとに関する。
【背景技術】
【0002】
耕作面地の雑草の発生防止、土壌の浸食防止、土壌水分の保持、地温の調整、泥はね防止等を行うために、耕作面地に敷設する農業用被覆シートがある。
この農業用被覆シート用には、例えば、特開平11−155390号公報に示すように苗が芽を出すための直線状のスリットが予め設けられている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−155390
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
苗の種類や耕作面地の状況によっては、苗の間隔は一定ではないので、予めスリットが設けられているタイプの農業用被覆シートでは、各種の苗等に対応できない。このため、スリットの大きさや間隔が異なる複数種類の農業用被覆シートを準備する必要があった。
【0005】
また、直線状のスリットであると、スリットからでてきた苗によってスリット全体が開いてしまい、多くの耕作面地が露出する。これにより、スリットから苗だけでなく、雑草もでてくることになる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、あらゆる種類の苗等に対応可能で、スリットから露出する耕作面地が少なくなる農業用被覆シート用カッター及び農業用被覆シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る農業用被覆シート用カッターは、農業用被覆シートに押し付けてスリットを形成する農業用被覆シート用カッターにおいて、複数枚の円形の刃部と、これらの刃部が取り付けられる支持部材と、この支持部材が回転可能に取り付けられるカッター本体部とを備えており、前記刃部の縁部には、農業用被覆シートにスリットを形成できる切断可能部と、農業用被覆シートにスリットを形成できない切断不能部とが交互に設けられている。
【0008】
前記刃部は、一定の間隔を有して前記支持部材に支持されている。
【0009】
また、前記刃部の切断可能部は、縁部がウエーブ状に形成されている。
【0010】
さらに、前記複数枚の刃部は、隣接する刃部同士では、切断可能部と切断不能部との位相がずれている。
【0011】
一方、本発明に係る農業用被覆シートは、耕作面地を被覆する農業用被覆シートであって、前記農業用被覆シート用カッターによってスリットが形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る農業用被覆シート用カッターによると、農業用被覆シートに複数列のスリットを容易に形成することができるので、各種の苗等に対応することができる。従って、農業用被覆シートを複数種類準備する必要がない。
【0013】
また、複数の刃部が一定の間隔を有しているため、隣り合うスリットとスリットとの間の間隔は一定となる。このため、耕作面地に整然と苗を育成することができる。
【0014】
また、前記刃部の切断可能部の縁部はウエーブ状に形成されているため、形成されるスリットもウエーブ状となる。このため、直線状のスリットよりもスリットから生えてきた苗と農業用被覆シートとの間の隙間を小さくすることができる。よって、従来の直線状のスリットをもつ農業用被覆シートより、耕作面地の露出が少なくなり、雑草の繁殖を抑制することができる。
【0015】
さらに、前記複数枚の刃部は、隣接する刃部同士では、切断可能部と切断不能部との位相がずれているで、スリットは千鳥状に形成されることなるので、苗が密集して生えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの概略的斜視図、図2は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの刃部の概略的斜視図、図3は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの刃部の概略的平面図、図4は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの使用方法を示す概略的斜視図、図5は本発明の他の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの概略的斜視図、図6は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによってスリットが形成された農業用被覆シートの概略的平面図、図7は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによってスリットが形成された農業用被覆シートのスリット部分の概略的拡大平面図、図8は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによってスリットが形成された農業用被覆シートの使用例を示す概略的斜視図、図9は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによって形成されたスリットの効果を示すための概略的斜視図である。
【0017】
本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッター100は、農業用被覆シート200に押し付けてスリット210を形成する農業用被覆シート用カッターであって、複数枚の円形の刃部110と、これらの刃部110が取り付けられる支持部材120と、この支持部材120が回転可能に取り付けられるカッター本体部130とを備えており、前記刃部110の縁部には、農業用被覆シート200にスリット210を形成できる切断可能部111と、農業用被覆シート200にスリット210を形成できない切断不能部112とが交互に設けられている。
【0018】
まず、前記刃部110は、図2、図3に示すように、円形の刃物であって、縁部がウエーブ状になっている。そして、中心には支持部材120が貫通する貫通孔113が開設されている。
【0019】
しかも、この刃部110の縁部には、農業用被覆シート200に押し付けてもスリット210が形成されない切断不能部112が2つ設けられている。この2つの切断不能部112は、貫通孔113を中心として180度ずれた位置に形成されている。この2つの切断不能部112の間は、農業用被覆シート200に押し付けるとスリット210が形成される切断可能部111となっている。具体的には、全縁部が刃物となった金属製の円形の板を形成し、その後に金型で縁部をウエーブ状に形成すると同時に、180度ずれた位置の縁部をカットすることで、2つの切断不能部112を有し、縁部がウエーブ状になった刃部110とする。なお、この刃部110の製造方法は、上記したものに限定されるものではなく、他の方法であってもよいことはいうまでもない。
【0020】
この刃部110は、貫通孔113に棒状の支持部材120を挿入することで、支持部材120に取り付けられる。各刃部110の間には、一定厚の円形スペーサ140が介在されるため、各刃部110の間隔は円形スペーサ140の厚さに等しくなっている。なお、円形スペーサ140の半径は、刃部110の半径より小さく設定されていることはもちろんである。
【0021】
しかも、各刃部110は、隣接する刃部110同士では、切断可能部111と切断不能部112との位相が90度ずれている。従って、農業用被覆シート200に形成されるスリット210のうちは、隣接する刃部110によって形成されるスリット210は農業用被覆シート用カッター100の走行方向では重ならないようになっている。
【0022】
また、前記カッター本体部130は、農業用被覆シート用カッター100を把持するためのもので、図1に示すように、略蒲鉾型のケースである。かかるカッター本体部130は、合成樹脂や金属等から構成される。かかるカッター本体部130は、、対向する平滑な壁面に支持部材120が回転可能に取り付けられている。そして、刃部110の大部分はカッター本体部130の内側に位置し、一部のみでカッター本体部130の外側に露出していることになる。
【0023】
このように構成された農業用被覆シート用カッター100は、以下のように使用する。まず、スリット210を形成すべき農業用被覆シート200を平坦なゴム板や木板等の上に載置する。その上で、図4に示すように、農業用被覆シート用カッター100の露出した刃部110を農業用被覆シート200に当て、カッター本体部130を把持しつつ農業用被覆シート200に対して圧力を加えた状態で刃部110を回転させつつ移動させる(図4矢印A参照)。
【0024】
すると、刃部110のうち、切断可能部111が当たった部分にはウエーブ状のスリット210が形成され、切断不能部112が当たった部分はスリット210が形成されない。すなわち、1つの刃部110によってスリット210が飛び飛びに形成されることになる。
【0025】
また、隣接する刃部110同士では、切断可能部111と切断不能部112との位相が90度異なっているので、スリット210は図6、図7に示すように、いわゆる千鳥状に形成されることになる。
【0026】
このようにして構成された農業用被覆シート200は、例えば、図8に示すように、耕作面地に形成された畝300を被覆する。農業用被覆シート200のスリット210が形成された部分は畝300の種が蒔かれたり、苗が移植されたりする部分に位置するようにセットされる。そして、スリット210が形成されていない縁部220は、畝300の両脇に位置し、その上から土をかけられることで農業用被覆シート200を畝300に対して固定する。
【0027】
農業用被覆シート200を横方向に引っ張り気味にして畝300にセットすると、スリット210が若干開口する。従って、農業用被覆シート200を畝300にセットしてから種を蒔いたり、苗を植える場合には、農業用被覆シート200を横方向に引っ張り気味にして畝300にセットするとよい。
【0028】
種を蒔いた畝300に農業用被覆シート200をセットする場合には、生えてきた苗がスリット210から自然とでてくるので、特にスリット210を開口させなくてもよい場合がある。この場合は、スリット210からでられなかった苗は日照不足等で成長しないので、自然と間引きされることになる。
【0029】
雑草等は農業用被覆シート200に覆われた場所では日照不足等により生えることがない。ただし、スリット210からでてくる雑草等はあるが、農業用被覆シート200がない場合と比較するとごくわずかであり、雑草等の除去に要する手間はごくわずかとなる。
【0030】
図9(A)に示すように、スリット230がウエーブ状ではなく直線状であると、スリット230から生えてきた苗がスリット230に形成する隙間が大きいが、図9(B)に示すように、スリット210がウエーブ状であると、スリット210から生えてきた苗と農業用被覆シート200との間の隙間が比較的小さくなる。このため、従来の直線状のスリット230をもつ農業用被覆シート200より、耕作面地の露出が少なくなり、雑草の繁殖を抑制することができる。
【0031】
なお、上述した実施の形態では、隣接する刃部110同士では、切断可能部111と切断不能部112との位相が90度異なっているとしたが、本発明がこれに限定されることはない。隣接する刃部110同士の切断可能部111と切断不能部112との位相が異なっていればよいので、30度、45度あるいは60度ずつ異なっていてもよいことはいうまでもない。
【0032】
また、カッター本体部130は上述したような蒲鉾状のものに限定されることはない。例えば、図5に示すようにグリップ150を設けることも可能である。この場合、カッター本体部130を把持することはないので、カッター本体部130は必須のものではないが、カッター本体部130を取り去ると、すべての刃部110が露出することになるので、カッター本体部130を設けたほうが安全面からは望ましい。
【0033】
また、カッター本体部130から一部の刃部110が露出するようなスリットを形成した板材でカッター本体部130をカバーしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの概略的斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの刃部の概略的斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの刃部の概略的平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの使用方法を示す概略的斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの概略的斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによってスリットが形成された農業用被覆シートの概略的平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによってスリットが形成された農業用被覆シートのスリット部分の概略的拡大平面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによってスリットが形成された農業用被覆シートの使用例を示す概略的斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによって形成されたスリットの効果を示すための概略的斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
100 農業用被覆シート用カッター
110 刃部
111 切断可能部
112 切断不能部
120 支持部材
130 カッター本体部
200 農業用被覆シート
210 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用被覆シートに押し付けてスリットを形成する農業用被覆シート用カッターにおいて、複数枚の円形の刃部と、これらの刃部を回転自在に支持する支持部材と、この支持部材が取り付けられるカッター本体部とを具備しており、前記刃部の縁部には、農業用被覆シートにスリットを形成できる切断可能部と、農業用被覆シートにスリットを形成できない切断不能部とが交互に設けられていることを特徴とする農業用被覆シート用カッター。
【請求項2】
前記刃部は、一定の間隔を有して前記支持部材に支持されていることを特徴とする請求項1記載の農業用被覆シート用カッター。
【請求項3】
前記刃部の切断可能部は、縁部がウエーブ状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の農業用被覆シート用カッター。
【請求項4】
前記複数枚の刃部は、隣接する刃部同士では、切断可能部と切断不能部との位相がずれていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の農業用被覆シート用カッター。
【請求項5】
耕作面地を被覆する農業用被覆シートにおいて、前記請求項1乃至4記載の農業用被覆シート用カッターによってスリットが形成されていることを特徴とする農業用被覆シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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