農業用被覆シート用カッター

【課題】あらゆる種類の苗等に対応可能で、開口部から露出する耕作面地が少なくなる農業用被覆シートを形成する農業用被覆シート用カッターとする。
【解決手段】農業用被覆シートに押し付けて３本のスタットからなる開口部を形成する農業用被覆シート用カッターであって、円筒形状のカッター本体部１１０と、このカッター本体部１１０の内側に放射線状に取り付けられた６枚の刃部１２０とを備えており、前記刃部１２０はカッター本体部１１０の中心部に向かって突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、耕作面地を被覆する農業用被覆シートにスリットを形成する農業用被覆シート用カッターに関する。
【背景技術】
【０００２】
耕作面地の雑草の発生防止、土壌の浸食防止、土壌水分の保持、地温の調整、泥はね防止等を行うために、耕作面地に敷設する農業用被覆シートがある。
この農業用被覆シート用には、例えば、意匠登録第１０７３２８１号公報に示すように苗が芽を出すための楕円状の開口が開設されたものがある。
【０００３】
【特許文献１】意匠登録第１０７３２８１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
苗の種類や耕作面地の状況によっては、苗の間隔は一定ではないので、予め開口部が設けられているタイプの農業用被覆シートでは、各種の苗等に対応できない。このため、開口部の大きさや間隔が異なる複数種類の農業用被覆シートを準備する必要があった。
【０００５】
また、上述のような開口部であると、苗に比較して開口部が大きくなってしまい多くの耕作面地が露出する。これにより、開口部から苗だけでなく、雑草もでてくることになる。
【０００６】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、あらゆる種類の苗等に対応可能で、開口部から露出する耕作面地が少なくなる農業用被覆シート用カッターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明に係る農業用被覆シート用カッターは、農業用被覆シートに押し付けてスリットからなる開口部を形成する農業用被覆シート用カッターであって、筒形状のカッター本体部と、このカッター本体部の内側に放射線状に取り付けられた複数の刃部とを備えており、前記刃部はカッター本体部の中心部に向かって突出している。
【０００８】
また、前記刃部は、前記カッター本体部の内側に内接する正多角形の中心と頂点とを結ぶ線分の上に配置されている。
【０００９】
一方、本発明に係る農業用被覆シートは、耕作面地を被覆する農業用被覆シートであって、放射線状になったスリットからなる開口部が形成されている。
【００１０】
また、前記開口部を構成するスリットは、正多角形の中心と頂点とを結ぶ線分の上に配置されている。
【発明の効果】
【００１１】
本発明に係る農業用被覆シート用カッターによると、複数本の放射線状のスリットから構成開口部を農業用被覆シートの任意の位置に形成することができるので、各種の苗等に対応することができる。従って、農業用被覆シートを複数種類準備する必要がない。
【００１２】
また、前記刃部は、前記カッター本体部の内側に内接する正多角形の中心と頂点とを結ぶ線分の上に配置されているため、開口部から生えてくる苗（種を蒔いくことによるものと、苗を移植することによるものとを含む）はスリットを押し広げるが、その押し広げられた部分は自然と閉じるため、開口部から露出される耕作面地は最小限となり、そのため開口部から生える雑草も最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
図１は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの概略的斜視図、図２は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの概略的底面図、図３は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの刃部の概略的平面図、図４は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの使用方法を示す概略的説明図、図５は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによって開口部が形成された農業用被覆シートの概略的平面図、図６は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによって開口部が形成された農業用被覆シートの開口部の概略的拡大平面図、図７は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによって開口部が形成された農業用被覆シートの使用例を示す概略的斜視図、図８は本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによって開口部が形成された農業用被覆シートの使用例を示す要部の概略的拡大斜視図である。
【００１４】
本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッター１００は、農業用被覆シート２００に押し付けて３本のスリット２１１からなる開口部２１０を形成する農業用被覆シート用カッターであって、円筒形状のカッター本体部１１０と、このカッター本体部１１０の内側に放射線状に取り付けられた６枚の刃部１２０とを備えており、前記刃部１２０はカッター本体部１１０の中心部に向かって突出している。
【００１５】
まず、カッター本体部１１０は、円筒形状の円筒部１１１と、この円筒部１１１の端部から外側に向かって延出されたフランジ部１１２とが一体に形成されたものである。かかるカッター本体部１１０は、例えば、合成樹脂や金属等で構成されている。
【００１６】
このカッター本体部１１０には、第３図に示すような刃部１２０が取り付けられる。この刃部１２０は、斜辺１２１の部分が鋭く研がれており、農業用被覆シート２００にスリット２１１を形成する部分となっている。なお、この刃部１２０は薄い金属板から構成されている。
【００１７】
この刃部１２０を６枚放射線状に組み合わせるのであるが、各刃部１２０の斜辺１２１の鋭角な先端が中心に位置するように組み合わせる。そして、各刃部１２０の間の角度は６０度になるようにする。すると、６枚の刃部１２０を組み合わせたものは、中心が最も突出した状態で組み合わせられる。しかも、６枚の刃部１２０は、正六角形の中心と各頂点とを結ぶ線分の上に位置するようになる。
【００１８】
このように組み合わせられた６枚の刃部１２０を前記カッター本体部１１０の円筒部１１１の内側に取り付ける。なお、各刃部１２０は、６枚の刃部１２０が形成する正六角形が円筒部１１１に内接するようなサイズに予め設定されているものとする。
【００１９】
なお、各刃部１２０の位置ずれを防止するために、各刃部１２０の間を連結する連結部材（図示省略）を配置してもよい。
【００２０】
また、この農業用被覆シート用カッター１００は、不使用時の安全のために、カバー１３０を有している。このカバー１３０は、カッター本体部１１０に外嵌可能で、カッター本体部１１０に被せた際に、刃部１２０が突出しない程度の高さを有する円筒形状のものであり、側面に蝶ボルト１３１が設けられている。すなわち、このカバー１３０は、不使用時にはカッター本体１１０に被せて刃部１２０が露出しないようにして蝶ボルト１３１で固定される。
【００２１】
なお、このカバー１３０の別バージョンとして、カッター本体部１１０に外嵌可能で、かつカッター本体部１１０と同程度の高さになったものも考えられる。この場合、不使用時にはカバー１３０が刃部１２０を覆い隠すように蝶ボルト１３１でカッター本体部１１０に固定し、使用時にはカバー１３０をフランジ１１２側に押し込んで刃部１２０を露出させるようにするのである。
また、カバー１３０の上下方向の固定位置を変更すること、すなわちカバー１３０から突出する刃部１１０の量を変更することによって、形成されるべきスリット２１１の長さ（開口部２１０の大きさ）を変更することも可能である。
【００２２】
なお、上述した実施の形態では、刃部１２０は薄い金属板から構成し、斜辺１２１の部分がスリット２１１を形成する部分になっているとしたが、全体を合成樹脂や金属板から構成し、斜辺に相当する部分にのみ別体の刃物を取り付けることで刃部１２０とすることも可能である。この場合は、刃物を着脱可能としておけば、切れなくなった刃物を新たなものに変更することも可能である。
【００２３】
このように構成された農業用被覆シート用カッター１００は、以下のように使用する。まず、図４（Ａ）に示すように、スリット２１０を形成すべき農業用被覆シート２００をカップ状の台３００に載置する。その上で、図４（Ｂ）に示すように、農業用被覆シート用カッター１００の露出した刃部１１０を農業用被覆シート２００に当てる。なお、この場合、前記カバー１３０をカップ状の台３００とすることも可能である。
【００２４】
すると、刃部１１０は、農業用被覆シート２００を貫通し、６０度間隔で放射線状になった３本のスリット２１１から構成される開口部２１０を形成する。この作業を繰り返して行い、例えば、図５に示すように、スリット２１１から構成される開口部２１０を農業用被覆シート２００に複数個形成する。なお、スリット２１１からなる開口部２１０を形成する際、刃部１１０がカッター本体部１１０の中心部に向かって突出しているため、最初に開口部２１０の中心からスリット２１１が形成され、押し込むに従って、スリット２１１は外側に向かってスムーズに形成されるというメリットがある。
【００２５】
このようにして構成された農業用被覆シート２００は、例えば、図７に示すように、耕作面地に形成された畝３００を被覆する。農業用被覆シート２００の開口部２１０が形成された部分は畝３００の種が蒔かれる部分に位置するようにセットされる。そして、開口部２１０が形成されていない縁部２２０は、畝３００の両脇に位置し、その上から土をかけられることで農業用被覆シート２００を畝３００に対して固定する。
【００２６】
開口部２１０を若干めくるようにして種を蒔く。すると、生えてきた苗がスリット２１１を押し広げて開口部２１０から自然とでてくる。
【００２７】
畝３００に種を蒔いた後に農業用被覆シート２００を被覆するのであれば、開口部２１０の部分だけから苗が生え、開口部２１０からでられなかった苗は日照不足等で成長しないので、自然と間引きされることになる。
【００２８】
雑草等は農業用被覆シート２００に覆われた場所では日照不足等により生えることがない。ただし、開口部２１０からでてくる雑草等はあるが、農業用被覆シート２００がない場合と比較するとごくわずかであり、雑草等の除去に要する手間はごくわずかとなる。
【００２９】
しかも、図８に示すように、スリット２１１を押し広げて苗が生えてきても、スリット２１１が自然と閉じるようになるため、開口部２１０から露出する耕作面地は最小限に抑えられるので、生える雑草も最小限に抑えることができる。
【００３０】
なお、上述した実施の形態では、刃部１２０は６０度間隔で６枚存在するとしたが、本発明がこれに限定されるわけではない。３枚の刃部を１２０度間隔で配置してもよいし、４枚の刃部を４５度間隔で配置してもよい。また、複数枚の刃部を間隔はランダムとして放射線状に配置することも可能である。
【００３１】
また、カッター本体部１１０は円筒形状ではなく、刃部配置に従った形状、例えば、３枚の刃部を１２０度間隔で配置する場合は三角筒状、４枚の刃部を４５度間隔で配置する場合は四角筒状にしてもよい。
【００３２】
さらに、上述した説明では、苗は種を蒔いて育てるとしたが、農業用被覆シート２００の開口部２１０に苗を移植してもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【００３３】
【図１】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの概略的斜視図である。
【図２】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの概略的底面図である。
【図３】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの刃部の概略的平面図である。
【図４】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターの使用方法を示す概略的説明図である。
【図５】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによって開口部が形成された農業用被覆シートの概略的平面図である。
【図６】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによって開口部が形成された農業用被覆シートの開口部の概略的拡大平面図である。
【図７】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによって開口部が形成された農業用被覆シートの使用例を示す概略的斜視図である。
【図８】本発明の実施の形態に係る農業用被覆シート用カッターによって開口部が形成された農業用被覆シートの使用例を示す要部の概略的拡大斜視図である。
【符号の説明】
【００３４】
１００農業用被覆シート用カッター
１１０カッター本体部
１１１円筒部
１２０刃部
２００農業用被覆シート
２１０開口部
２１１スリット

【特許請求の範囲】
【請求項１】
農業用被覆シートに押し付けてスリットからなる開口部を形成する農業用被覆シート用カッターにおいて、筒形状のカッター本体部と、このカッター本体部の内側に放射線状に取り付けられた複数の刃部とを具備しており、前記刃部はカッター本体部の中心部に向かって突出していることを特徴とする農業用被覆シート用カッター。
【請求項２】
前記刃部は、前記カッター本体部の内側に内接する正多角形の中心と頂点とを結ぶ線分の上に配置されていることを特徴とする請求項１記載の農業用被覆シート用カッター。
【請求項３】
耕作面地を被覆する農業用被覆シートにおいて、放射線状になったスリットからなる開口部が形成されていることを特徴とする農業用被覆シート。

【図１】