説明

近赤外りん光材料および近赤外蛍光材料

【課題】近赤外領域においてりん光を発する近赤外りん光材料および酸化触媒の提供。
【解決手段】式(1)で表されるポルフィセン錯体、または式(2)で表されるヘミポルフィセン錯体からなることを特徴とする近赤外りん光材料。


{式中、R1〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、炭素数1〜10のアルキル基等を表し、Mは、2価の金属原子、または酸素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基を有してもよい3価〜5価の金属原子を表す。}

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポルフィセン錯体またはヘミポルフィセン錯体からなる近赤外りん光材料、およびポルフィセン有機分子からなる近赤外蛍光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポルフィリンの金属錯体は、ヘムタンパク質の構成要素として生体内で重要な作用を行うとともに、ポルフィリン核に種々の置換基を有する誘導体が比較的容易に合成できるので、生化学における反応過程の追及や有機合成化学の触媒などとして広く利用されている。
ポルフィリンの構造異性体であるポルフィセンやヘミポルフィセンは、1986年ドイツのE.Vogelらによって合成された人工的な環状テトラピロール化合物であり、これらの化合物は、ポルフィリン金属錯体と比べて、その中心金属が強いルイス酸性と反応活性種に対する耐久性とを示すことから良好な触媒となることが期待されている。
【0003】
近年、発光素子の発光層に用いる発光材料として、一重項励起状態からの発光を示す蛍光材料の他に、三重項励起状態からの発光を示すりん光材料の利用が提案されている。
有機EL素子の発光層において、電子と正孔との再結合後の一重項励起子と三重項励起子との発生確率は1:3と考えられており、三重項励起子によるりん光をも利用した素子の方が、一重項励起子による蛍光を使った素子の3〜4倍の発光効率の達成が期待できるためである。
また、赤外領域に発光波長を有する発光材料が、光通信用光源、センサー光源、リモコン用光源として求められている。
【0004】
りん光材料を発光素子の発光層に用いる技術としては、例えば、白金ポルフィリン錯体をりん光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(特許文献1参照)や、スズ(IV)ジクロロポルフィリン錯体を用いた蛍光およびりん光材料(非特許文献1、非特許文献2)などが報告されている。
しかしながら、これらのポルフィリン錯体においては、りん光波長が可視領域であるため、応用用途が限定されていた。
また、ポルフィセン金属錯体を発光層に用いた有機電界発光素子が報告されているが、これは蛍光発光を利用したもので、りん光発光特性については見出されていない(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−150338号公報
【特許文献2】特開2001−338768号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Chemical Physics,1973,59,676
【非特許文献2】Chemical Reviews, 2004,248,299
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ポルフィリンの構造異性体であるポルフィセンまたはヘミポルフィセンの錯体からなり、近赤外領域においてりん光を発する近赤外りん光材料および酸化触媒、並びにポルフィセン有機分子からなる近赤外蛍光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ポルフィリンの構造異性体であるポルフィセンおよびヘミポルフィセンの金属錯体が、可視光に応答して高い酸化力を有する一重項励起状態を与え、この一重項励起状態からの失活過程において、ポルフィリンと比較し、大きく長波長シフトした近赤外領域に室温でりん光を発すること、また一重項励起状態の酸化力が向上していることを見出すとともに、所定の置換基を有するポルフィセン有機分子が、近赤外域に蛍光発光を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. 式(1)で表されるポルフィセン錯体、または式(2)で表されるヘミポルフィセン錯体からなることを特徴とする近赤外りん光材料、
【化1】

{式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはフェニル基(このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはフェニル基〔このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕を表し、Mは、2価の金属原子、または酸素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、もしくはシアノ基を有してもよい3価〜5価の金属原子を表す。}
2. 前記式(1)または式(2)において、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン酸基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、アニソール基、またはトリル基を表し、
前記Mが、Zn(II)、Ru(II)、Pd(II)、Os(II)、Ir(II)、Pt(II)、ハロゲン原子を有するRh(III)、またはハロゲン原子を有するSn(IV)を表す1の近赤外りん光材料、
3. 前記式(1)または式(2)において、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン酸基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、フェニル基、またはペンタフルオロフェニル基を表す2の近赤外りん光材料、
4. 前記式(1)または式(2)において、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12が、それぞれ独立に、水素原子、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基、またはペンタフルオロフェニル基を表し、
前記Mが、Sn(IV)Cl2、Sn(IV)F2またはSn(IV)Br2を表す3の近赤外りん光材料、
5. 式(1)で表されるポルフィセン錯体、または式(2)で表されるヘミポルフィセン錯体を含む有機合成用酸化触媒、
【化2】

{式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはフェニル基(このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはフェニル基〔このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕を表し、Mは、2価の金属原子、または酸素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、もしくはシアノ基を有してもよい3価〜5価の金属原子を表す。}
6. 式(1)で表されることを特徴とするポルフィセン錯体、
【化3】

{式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはフェニル基(このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはフェニル基〔このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕を表し、Mは、Sn(IV)Cl2、Sn(IV)F2またはSn(IV)Br2を表す。}
7. 式(1′)で表されることを特徴とするポルフィセン、
【化4】

{式中、R1′、R2′、R3′、R4′、R5′、R6′、R7′、R8′、R9′、R10′、R11′、およびR12′は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、スルホン酸基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはフェニル基(このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基、またはフェニル基〔このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕を表す。}
8. 前記R5′、R6′、R11′、およびR12′の少なくとも1つが、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、または炭素数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基を表す7のポルフィセン、
9. 前記前記R5′、R6′、R11′、およびR12′の少なくとも2つが、互いに独立して、ヒドロキシ基またはアミノ基を表す8のポルフィセン、
10. 9のポルフィセンからなることを特徴とする近赤外蛍光材料
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蛍光発光材料、りん光発光材料や酸化触媒として応用できるポルフィセン、ポルフィセン錯体およびヘミポルフィセン錯体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例2で得られた錯体の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図2】参考例1および実施例1,2で得られた各錯体のUV−visスペクトルを示す図である。
【図3】参考例1および実施例1,2で得られた各錯体における、励起波長(λex=400nm)の吸収強度を0.5で統一した際の蛍光スペクトルを示す図である。
【図4】参考例1(図(1))、実施例1(図(2))、および実施例2(図(3))で得られた各錯体の嫌気下および好気下でのりん光スペクトルを示す図である。
【図5】参考例1および実施例1,2で得られた各錯体のりん光スペクトル(差スペクトル)を示す図である。
【図6】光励起による分子Pの酸化力と還元力を示す図である。
【図7】実施例2で得られた錯体の吸収/蛍光スペクトルを示す図である。
【図8】実施例2で得られた錯体のサイクリックボルタムグラムを示す図である。
【図9】参考例1で得られた錯体の光励起状態での酸化力(還元力)を示す図である。
【図10】実施例1で得られた錯体の光励起状態での酸化力(還元力)を示す図である。
【図11】実施例2で得られた錯体の光励起状態での酸化力(還元力)を示す図である。
【図12】実施例2で得られた錯体のメタノールを電子ドナーとした光反応特性評価を示す図である。
【図13】実施例3で得られた錯体の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図14】実施例4で得られた錯体の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図15】実施例3,4で得られた各錯体のUV−visスペクトルを示す図である。
【図16】実施例3,4で得られた各錯体における、励起波長(λex=400nm)の吸収強度を0.5で統一した際の蛍光スペクトルを示す図である。
【図17】実施例3で得られた錯体の嫌気下および好気下でのりん光スペクトルを示す図である。
【図18】実施例4で得られた錯体の嫌気下および好気下でのりん光スペクトルを示す図である。
【図19】実施例3,4で得られた各錯体のりん光スペクトル(差スペクトル)を示す図である。
【図20】実施例5で得られた錯体のUV−visスペクトルを示す図である。
【図21】実施例5で得られた錯体における、励起波長(λex=400nm)の吸収強度を0.5に合わせた際の蛍光スペクトルを示す図である。
【図22】実施例5で得られた錯体の嫌気下および好気下でのりん光スペクトルを示す図である。
【図23】実施例5で得られた錯体のりん光スペクトル(差スペクトル)を示す図である。
【図24】実施例5で得られた錯体の一重項酸素のりん光発光強度を示す図である。
【図25】実施例6で得られた化合物のUV−visスペクトルを示す図である。
【図26】実施例6で得られた化合物における、励起波長(λex=400nm)の吸収強度を0.5に合わせた際の蛍光スペクトルを示す図である。
【図27】実施例7で得られた化合物のUV−visスペクトルを示す図である。
【図28】実施例7で得られた化合物における、励起波長(λex=400nm)の吸収強度を0.5に合わせた際の蛍光スペクトルを示す図である。
【図29】実施例8で得られた化合物のUV−visスペクトルを示す図である。
【図30】実施例8で得られた化合物における、励起波長(λex=400nm)の吸収強度を0.5に合わせた際の蛍光スペクトルを示す図である。
【図31】実施例9で得られた化合物のUV−visスペクトルを示す図である。
【図32】実施例9で得られた化合物における、励起波長(λex=400nm)の吸収強度を0.5に合わせた際の蛍光スペクトルを示す図である。
【図33】実施例10で得られた化合物のUV−visスペクトルを示す図である。
【図34】実施例10で得られた化合物における、励起波長(λex=400nm)の吸収強度を0.5に合わせた際の蛍光スペクトルを示す図である。
【図35】実施例11で得られた化合物のUV−visスペクトルを示す図である。
【図36】実施例11で得られた化合物における、励起波長(λex=558nm)の吸収強度を0.180に合わせた際の蛍光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
まず、式(1)および(2)の各置換基を具体的に説明する。
式(1)または(2)で表される化合物の置換基R1〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはフェニル基(このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはフェニル基〔このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕を表し、Mは、2価の金属原子、または酸素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、もしくはシアノ基を有してもよい3価〜5価の金属原子を表す。
【0013】
具体的には、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
上記各置換基で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、アミル基、イソアミル基、ターシャリーアミル基、ネオペンチル基、ノルマルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
【0014】
好ましいR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン酸基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、アニソール基、トリル基が挙げられ、より好ましくは、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン酸基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられ、さらに好ましくは、水素原子、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0015】
Mは、2価の金属原子、または酸素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、もしくはシアノ基を有してもよい3価〜5価の金属原子を表す。
2価の金属原子の具体例としては、マグネシウム(II)、カルシウム(II)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、亜鉛(II)、ルテニウム(II)、パラジウム(II)、スズ(II)、オスミウム(II)、イリジウム(II)、白金(II)、鉛(II)等が挙げられ、好ましくは亜鉛(II)、ルテニウム(II)、パラジウム(II)、スズ(II)、オスミウム(II)、イリジウム(II)、白金(II)が挙げられる。
3価の金属原子の具体例としては、アルミニウム(III)、鉄(III)、マンガン(III)、コバルト(III)、ロジウム(III)、インジウム(III)、アンチモン(III)、ビスマス(III)等が挙げられ、好ましくはロジウム(III)が挙げられる。
4価の金属原子の具体例としては、ゲルマニウム(IV)、スズ(IV)等が挙げられ、好ましくはスズ(IV)が挙げられる。
5価の金属原子の具体例としては、モリブデン(V)、アンチモン(V)、ビスマス(V)等が挙げられる。
【0016】
次に、式(1′)の各置換基を具体的に説明する。
上記R1′〜R12′は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはフェニル基(このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基、またはフェニル基〔このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕を表す。
【0017】
ここで、炭素数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ(アセトキシ基)、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、i−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、s−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
その他の置換基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
中でも、R5′、R6′、R11′、およびR12′の少なくとも1つは、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、または炭素数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基であることが好ましく、少なくとも2つが、これらの基であることがより好ましく、近赤外域に蛍光を発する化合物とすることを考慮すると、少なくとも2つの基が、互いに独立してヒドロキシ基、またはアミノ基であることが好適である。
【0018】
次に、ポルフィセン錯体、またはヘミポルフィセン錯体の製造方法について説明する。
本発明のポルフィセン配位子は、例えばAngew. Chem. Int. Ed. Engl., 32, 1600-1604 (1993)、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 26, 928-931 (1987)、J. Phys. Chem., 98, 11885-11891 (1994)、J. Biomed. Sci., 10, 418-429 (2003)等に記載の方法に準じて合成できる。代表的には、以下の方法で製造することができる。
式(3)で示されるポルフィセンは、式(4)および/または式(5)で示される化合物を無水テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒中、亜鉛、塩化銅(I)等の金属および/または金属塩、ピリジン等のアミン化合物、四塩化チタンから発生させた低原子価チタンまたは三塩化チタン等のチタン化合物等を必要に応じて用いて反応させて得ることができる。
【0019】
【化5】

(式中、R1〜R12は、上記と同じ。)
【0020】
次に、式(1)で示されるポルフィセン錯体の合成法は、例えば、J. Inorg. Nucl. Chem., 32, 2443 (1970)、J. Am. Chem. Soc., 88, 854 (1966)、J. Am. Chem. Soc., 91, 6262 (1969)、J. Am. Chem. Soc., 97, 3952 (1975)、Chem. Ber., 106, 2710 (1973)に記載の方法に準じ、金属の種類によって以下のように大別される。(i)ポルフィセン配位子を有機溶媒中に溶解し、金属塩(2価〜5価)と反応させる。(ii)ポルフィセン配位子を有機溶媒中に溶解し、金属カルボニル化合物と反応させる。ポルフィセン錯体は、上記の手法に従って反応させて得ることができる。
【0021】
本発明のヘミポルフィセン配位子は、例えば、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 36, 1651-1654 (1997)、New. J. Chem., 19, 155 (1995)に記載の方法に準じて合成できる。代表的には、以下の方法で製造することができる。
式(6)で示されるヘミポルフィセン配位子は、式(7)および式(8)で示される化合物をアルコール溶媒中、過塩素酸等の強酸と反応させることでカルボン酸とアルデヒド基のカップリング反応を行った後、得られた中間体化合物を無水テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒中、亜鉛、塩化銅(I)等の金属および/または金属塩、ピリジン等のアミン化合物、四塩化チタンから発生させた低原子価チタンまたは三塩化チタン等のチタン化合物等を必要に応じて用いて反応させて得ることができる。
【0022】
【化6】

(式中、R1〜R12は、上記と同じ。)
【0023】
次に、式(2)で示されるヘミポルフィセン錯体の合成法は、ポルフィリン錯体およびポルフィセン錯体の合成法と同様に、例えば、J. Inorg. Nucl. Chem., 32, 2443 (1970)、J. Am. Chem. Soc., 88, 854 (1966)、J. Am. Chem. Soc., 91, 6262 (1969)、J. Am. Chem. Soc., 97, 3952 (1975)、Chem. Ber., 106, 2710 (1973)に記載の方法に準じ、金属の種類によって以下のように大別される。(i)ヘミポルフィセン配位子を有機溶媒中に溶解し、金属塩(2価〜5価)と反応させる。(ii)ヘミポルフィセン配位子を有機溶媒中に溶解し、金属カルボニル化合物と反応させる。ヘミポルフィセン錯体は、上記の手法に従って反応させることにより得られる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例および参考例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下における各物性は、下記の装置によりそれぞれ測定した。
[1]サイクリックボルタムグラム
BAS社製 CV50W electrochemical analyzer
[2]りん光スペクトル
(株)堀場製作所製 Fuluolog−3
[3]蛍光スペクトル
(株)日立製作所製 Fluorescence spectrophotometer F−4500
[4]紫外可視吸収スペクトル
(株)日立製作所製 U−3300
[5]核磁気共鳴スペクトル
ブルカー社製 AVANCE500
[6]ESI−MS
日本電子(株)製 JMS−T100CS
[7]MALDI−TOF−MS
Burker Autoflex
【0025】
[参考例1]スズ(IV)ジクロロポルフィリン錯体(1)の合成
【化7】

【0026】
M. Gouterman, F. P. Schwarz, P. D. Smith, J. Chem. Phys., 1973, 59, 676.に記載の方法に従い、スズ(IV)ジクロロポルフィリン錯体SnIV(OEP)Cl2(1)を合成した。
【0027】
[実施例1]スズ(IV)ジクロロヘミポルフィセン錯体(2)の合成
【化8】

【0028】
P. J. Scholz, 博士学位論文 1998, University of Koln (Cologne) に記載の方法に従い、スズ(IV)ジクロロヘミポルフィセン錯体SnIV(OEHPc)Cl2(2)を合成した。
【0029】
[実施例2]スズ(IV)ジクロロポルフィセン錯体(3)の合成
【化9】

【0030】
オクタエチルポルフィセンH2(OEPc)25mg(3.7×10-5mol)、SnCl2・2H2O178mg(7.32×10-4mol)、および乾燥デカリン34mLの混合物を窒素雰囲気下、190〜200℃で30分間還流した。
その後、好気下で室温まで冷却した。この反応溶液を濾過し、得られた紫色の固体をデカリンで洗浄して不純物を取り除いた。得られた固体をクロロホルムに溶解してスズ(IV)ジクロロポルフィセン錯体SnIV(OEPc)Cl2(3)のみを得た。この溶液を5%HCl水溶液で分液することで洗浄し、有機属を分離して乾固した。得られた固体を再結晶した(塩化メチレン:シクロヘキサン=2:1)。得られた錯体は、NMR(測定溶媒:CDCl3)、MALDI−TOF−MS、ESI−MSにて同定した。1H−NMRを図1に示す。
MALDI-TOF-MS (m/z, non-matrix) [Sn(OEPc)Cl]+, 687.14 ([Sn(OEPc)Cl]+ calcd for 687.23 )
ESI-MS (m/z, solvent : acetonitrile) [Sn(OEPc)Cl]+, 687.1 ([Sn(OEPc)Cl]+ calcd for 687.23 )
【0031】
〔UV−visスペクトル〕
上記参考例1および実施例1,2で得られた各錯体について、UV−visスペクトルを測定(溶媒:塩化メチレン)した。結果を図2に示す。
〔蛍光スペクトル〕
上記参考例1および実施例1,2で得られた各錯体について、励起波長(λex=400nm)の吸収強度(Absorbance)を0.5で統一した際の各錯体の蛍光スペクトル(溶媒:塩化メチレン)を測定し、強度比較を行った。結果を図3に示す。
【0032】
〔りん光スペクトル〕
りん光過程は、一重項酸素生成過程との競争過程であることから、好気条件下では観測されない。そこで、励起三重項状態のクエンチャーである酸素を除去するために、凍結脱気法により脱気した溶媒を用い、りん光スペクトル測定を行った。結果を図4に示す。この際、溶媒としては、外部重原子効果によって項間交差過程およびりん光放射過程が加速し、りん光が観測されることを期待してブロモベンゼン(蒸留後、凍結脱気法により脱気した溶媒)を用いた。
また、定常的に励起光が照射されているため、(短寿命の)蛍光と(長寿命の)りん光が同時に観測される。そこで、蛍光のみが観測される好気下においてもスペクトル測定を行い、両者の差スペクトルよりりん光を観測した。結果を図5に示す。
【0033】
図4および図5に示されるように、スズヘミポルフィセンSn(OEHPc)Cl2(2)では、近赤外領域である927nm付近に、大きなりん光が観測された。同様にスズポルフィセンSn(OEPc)Cl2(3)でも、945nm付近にりん光が観測された。これはショルダーとして観測されているため、強度は小さいが、図5に示される差スペクトルにより、はっきりとピークを観測できることがわかる。
上記参考例1および実施例1,2で得られた各錯体のりん光波長(λem)および励起三重項エネルギー(Et)を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
〔光励起状態での酸化力および還元力〕
励起状態での酸化力および還元力は、例えば(1)J. Am. Chem. Soc., 1981, 103, 56-62.、(2)J. Phys. Chem., 2008, 112, 491-499.に従って算出した。具体的な実施方法を以下に示す。
光励起による電子エネルギーは、電位として解釈することができる。つまり、分子の光励起は、図6のようなイメージとして捉えることができる。光を吸収する前の分子Pでは、電子のつまった基底準位がほぼ一電子酸化の標準電極電位E0(P+/P)に、励起準位がほぼ一電子還元の標準電極電位E0(P/P-)に対応している。
つまり、励起状態の分子P*になると、励起エネルギーに相当する電位差だけ、E0(P+/P)は負側の電位に、E0(P/P-)は正側の電位に動く。すなわち、分子の酸化力および還元力は励起エネルギー分だけ強まると言える。
【0036】
ここで、励起エネルギー(電位差)は、基底状態S0と励起一重項状態S1との間のエネルギーギャップであり、これは吸収スペクトルと蛍光スペクトルとのピークトップを規格化した際の交点(波長)から算出することができる。
具体的な例として、実施例2で得られたスズ(IV)ジクロロポルフィセン錯体(3)の場合を図7に示す。これより、交点が627.5nmであることから、エネルギーに換算するとΔE=1.975Vとなる。
【0037】
上記の参考文献(1),(2)から、励起状態での酸化力および還元力は、下式で算出される。
(P*/P-)=(P/P-)+ΔE
(P*/P+)=(P+/P)−ΔE
〔(P/P-)は基底状態での還元電位を、(P+/P)は基底状態での酸化電位を表す。〕
なお、基底状態での酸化還元電位については、サイクリックボルタムメトリー測定より求めることができる。
具体的な例として、実施例2で得られたスズ(IV)ジクロロポルフィセン錯体(3)の場合を図8に示す。これより、基底状態での還元電位(P/P-)=−0.73V(vs.Ag/AgCl)となる。
【0038】
以上に説明した手法に従って、上記参考例1および実施例1,2で得られた各錯体のUV−visおよび蛍光スペクトルと、サイクリックボルタムメトリー(CV)測定の結果から、光励起状態での酸化力および還元力を求めた。なお、ポルフィセン錯体(3)では、CV測定の条件下において酸化側での酸化ピークが観測されなかったことから、光励起状態での還元力を算出していない。
図9〜11に示されるように、参考例1および実施例1,2で得られた全ての錯体は、光励起状態において非常に高い酸化力を有していることがわかるが、中でもポルフィセン錯体(3)が最も高い酸化力を有していることがわかる。
【0039】
〔光反応特性評価〕
上述のように、光励起状態において各錯体は、高い酸化力を有していることから、溶媒としてメタノールを用いた場合、メタノールが電子ドナーとなり酸化される。錯体は、光電子移動により基底状態に戻り、アニオンラジカル種となる。このアニオンラジカル種は、還元剤として利用できる。
すなわち、この反応は、光照射により生成したスズ錯体の光励起状態による外部分子の酸化反応と、生成したアニオンラジカル種による還元反応の両者が期待できる。
実際、実施例2で得られたスズ(IV)ジクロロポルフィセン錯体(3)について、メタノールを電子ドナーとした光反応特性評価を行ったところ、図12に示されるように、光照射によるポルフィセンアニオンラジカル種の存在がUV−visスペクトル測定により検出された。このことから、この錯体は、酸化触媒として利用できることがわかる。
【0040】
[実施例3]スズ(IV)ポルフィセン錯体(4)の合成
【化10】

【0041】
テトラ−n−プロピルポルフィセンH2(TPrPc)109mg(2.28×10-4mol)、SnCl2・2H2O555mg(2.46×10-3mol)、乾燥デカリン23mLの混合物を窒素雰囲気下、190〜200℃で13時間還流した。その後、好気下で室温まで冷却し、20時間撹拌した。この反応溶液を濾過し、得られた緑色の固体をn−ヘキサンで洗浄して不純物を取り除いた。得られた固体をジクロロメタンに溶解してスズ(IV)ジクロロポルフィセン錯体SnIV(TPrPc)Cl2(4)を得た。この溶液を10%HCl水溶液で分液することで洗浄し、有機属を分離して乾固した。得られた固体を再沈殿(塩化メチレン:酢酸エチル:n−ヘキサン=3:2:1)により精製し、上記錯体128mg(1.92×10-4mol)を得た。得られた錯体は、元素分析、NMR(測定溶媒:CDCl3)、MALDI−TOF−MSにて同定した。1H−NMRスペクトルを図13に示す。
MALDI-TOF-MS (m/z, non-matrix) [Sn(TPrPc)Cl]+, 631.17 ([Sn(TPrPc)Cl]+ calcd for 631.17 )
元素分析 (C32H36Cl2N4Sn):計算値 C 57.69, H 5.45, N 8.41; 実測値 C 57.58, H 5.41, N 8.38.
【0042】
[実施例4]スズ(IV)ポルフィセン錯体(5)の合成
【化11】

【0043】
スズ(IV)ジクロロポルフィセン錯体SnIV(TPrPc)Cl2(5)57mg(8.6×10-5mol)、1M KF水溶液30mL、ジクロロメタン30mLの混合物を、室温下で4時間激しく撹拌した。その後、分液して得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液をろ過し、エバポレーターにて濃縮して得られた紫色の残渣を再沈殿(ジクロロメタン:酢酸エチル:n−ヘキサン=7:3:2)により精製し、上記錯体49mg(7.7×10-5mol)を得た。得られた錯体は、元素分析、NMR(測定溶媒:CDCN)、MALDI−TOF−MSにて同定した。1H−NMRスペクトルを図14に示す。
MALDI-TOF-MS (m/z, non-matrix) [Sn(TPrPc)F]+, 615.19 ([Sn(TPrPc)F]+ calcd for 615.19 )
元素分析 (C32H36F2N4Sn):計算値 C 60.68, H 5.73, N 8.85; 実測値 C 60.50, H 5.77, N 8.84.
【0044】
〔UV−visスペクトル〕
上記実施例3,4で得られた各錯体について、UV−visスペクトルを測定(溶媒:塩化メチレン)した。結果を図15に示す。
〔蛍光スペクトル〕
上記実施例3,4で得られた各錯体について、実施例1と同様にして蛍光スペクトル(溶媒:塩化メチレン)を測定し、強度比較を行った。結果を図16に示す。
【0045】
〔りん光スペクトル〕
上記実施例3,4で得られた各錯体について、実施例1と同様にしてりん光スペクトルを測定した。実施例3で得られた錯体の蛍光スペクトルを図17に、実施例4で得られた錯体の蛍光スペクトルを図18に、両者の差スペクトルを図19に示す。
スズポルフィセンSn(TPrPc)Cl2、スズポルフィセンSn(TPrPc)F2ともに、近赤外領域である937nm付近および934nm付近に、それぞれ大きなりん光が観測された。図19の差スペクトルにより、はっきりとピークを観測できる。
上記実施例3,4で得られた各錯体のりん光波長(λem)および励起三重項エネルギー(Et)を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
[実施例5]スズ(IV)ポルフィセン錯体(6)の合成
【化12】

【0048】
テトラ−n−プロピルポルフィセンH2(TPrPc)15.74mg(3.288×10-5mol)、SnBr2146.93mg(5.2754×10-4mol)、および乾燥デカリン1mLの混合物を、窒素雰囲気下、190〜200℃で4.5時間還流した。その後、室温まで冷却し、好気下で4.5時間撹拌した。この反応溶液を濾過し、得られた緑色の固体をn−ヘキサンで洗浄して不純物を取り除いた。得られた固体をジクロロメタンに溶解してスズ(IV)ジブロモポルフィセン錯体SnIV(TPrPc)Br2(6)を得た。この溶液を2MNaBr水溶液で分液することで洗浄し、有機属を分離して乾固した。得られた固体を再沈殿(塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製することで、上記錯体13.85mg(1.834×10-5mol)を得た。
MALDI-TOF-MAS: Calcd for [C32H36BrN4Sn]+, 675.11; found, 674.96.
元素分析: Calcd for C32H36Br2N4Sn: C 50.89; H 4.80; N 7.42; Found: C 51.04; H 4.59; N 7.37.
【0049】
〔UV−visスペクトル〕
上記実施例5で得られた錯体について、UV−visスペクトルを測定(溶媒:塩化メチレン)した。結果を図20に示す。
UV/Vis (CH2Cl2): λ 393 (125000), 404 (114000), 609(49400), 627 (78100).
〔蛍光スペクトル〕
上記実施例5で得られた錯体について、実施例1と同様にして蛍光スペクトル(溶媒:塩化メチレン)を測定した。結果を図21に示す。
【0050】
〔りん光スペクトル〕
上記実施例5で得られた錯体について、実施例1と同様にしてりん光スペクトルを測定した。蛍光スペクトルを図22に、その差スペクトルを図23に示す。
【0051】
〔一重項酸素発生の量子効率〕
上記実施例3〜5で得られたポルフィセン錯体のトルエン溶液の600nmの吸光度に対して、溶液に600nmの光を照射した際の、各濃度における1270nmをピークトップとした一重項酸素の発光強度をプロットした。プロットの傾きがΦΔに比例することから、ZnTPPのΦΔを基準に相対的に量子効率を算出した。結果を図24に示す。
【0052】
[実施例6]19−アセトキシ−9−ニトロ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセン(trans−isomer)、20−アセトキシ−9−ニトロ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセン(cis−isomer)の1:1混合物
【化13】

【0053】
9−ニトロ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセンH2(NO2)TPrPc15.48mg(2.956×10-5mol)、Pb(OCOCH34103.18mg(2.3271×10-4mol)、乾燥テトラヒドロフラン10mLの混合物を窒素雰囲気下、90℃で40分間還流した。その後、室温まで冷却し、エチレングリコール0.4mLを加えて1時間撹拌した。ジクロロメタン20mLを加え、水50mLで溶液を3回洗浄し、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた後、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:n−ヘキサン=1:1)にかけ、目的物を分取した。得られたフラクションの溶媒を減圧留去し、残渣を再沈殿(塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製することで、上記混合物8.29mg(1.43×10-5mol)を得た。
なお、原料であるH2(NO2)TPrPcは、米国特許第5,637,608号明細書記載の方法により合成することができる。
H2(OCOCH3)(NO2)TPrPc (mixture of cis- and trans-isomers). MALDI-TOF-MAS: Calcd for [C34H39N5O4], 581.30; found, 582.38.
1H NMR (CDCl3, 298 K, 500 MHz) δ: 1.20-1.50 (m, 24H, CH2CH3), 2.29-2.42 (m, 16H, CH2CH3), 2.90 (s, 6H, COCH3), 3.51 (b, 4H, NH), 3.66-3.97 (m, 16H, PyCH2), 9.15-9.36 (m, 10H, 3,6,13,16,20-H of trans-isomer and 3,6,13,16,19-H of cis-isomer), 9.84 (s, 1H, 10-H of cis-isomer), 9.94 (s, 1H, 10-H of trans-isomer).
Anal. Calcd for C36H41N5O6: C 70.20; H 6.76; N 12.07; Found: C 70.12; H 6.72; N 12.07.
【0054】
〔UV−visスペクトル〕
上記実施例6で得られた化合物について、UV−visスペクトルを測定(溶媒:塩化メチレン)した。結果を図25に示す。
〔蛍光スペクトル〕
上記実施例6で得られた化合物について、実施例1と同様にして蛍光スペクトル(溶媒:塩化メチレン)を測定した。結果を図26に示す。
【0055】
[実施例7]19−アセトキシ−9−アミノ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセン(trans−isomer)、20−アセトキシ−9−アミノ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセン(cis−isomer)の1:1混合物
【化14】

【0056】
実施例6で得られた19−アセトキシ−9−ニトロ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセン、20−アセトキシ−9−ニトロ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセンの1:1混合物H2(OCOCH3)(NO2)TPrPc19.54mg(33.59×10-5mol)、SnCl2・2H2O64.91mg(287.7×10-4mol)、ピリジン4mLの混合物を90℃で30分間還流した。その後室温まで冷却し、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:n−ヘキサン:トリエチルアミン=20:20:1)によって目的物を分取した。得られたフラクションの溶媒を減圧留去し、残渣を再沈殿(塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製することで、上記混合物7.20mg(1.305×10-5mol)を得た。
H2(OCOCH3)(NO2)TPrPc. MALDI-TOF-MAS: Calcd for [C34H41N5O2], 551.33; found, 552.39.
1H NMR (CDCl3, 298 K, 500 MHz) δ: 1.20-1.50 (m, 24H, CH2CH3), 2.17-2.38 (m, 16H, CH2CH3), 2.84 (s, 6H, COCH3), 3.22 (b, 4H, NH), 3.50-3.82 (m, 16H, PyCH2), 5.17 (b, 2H, NH2 of trans-isomer), 5.42 (b, 2H, NH2 of cis-isomer), 8.06 (s, 1H, 10-H of trans-isomer), 8.29 (s, 1H, 10-H of cis-isomer), 8.60 (s, 1H, 16-H of cis-isomer), 8.81-8.98 (m, 8H, 3,6,13,16,-H of trans-isomer and 3,6,13,19-H of cis-isomer), 9.16 (s, 1H, 20-H of trans-isomer).
Anal. Calcd for C36H41N5O6: C 74.02; H 7.49; N 12.69; Found: C 73.86; H 7.46; N 12.64.
【0057】
〔UV−visスペクトル〕
上記実施例7で得られた化合物について、UV−visスペクトルを測定(溶媒:塩化メチレン)した。結果を図27に示す。
〔蛍光スペクトル〕
上記実施例7で得られた化合物について、実施例1と同様にして蛍光スペクトル(溶媒:塩化メチレン)を測定した。結果を図28に示す。
【0058】
[実施例8]19,20−ジアセトキシ−9−ニトロ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセン
【化15】

【0059】
9−ニトロ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセンH2(NO2)TPrPc46.11mg(8.805×10-5mol)、Pb(OCOCH34394.33mg(8.8937×10-4mol)、乾燥テトラヒドロフラン10mLの混合物を窒素雰囲気下、90℃で5時間還流した。その後、室温まで冷却し、エチレングリコール1.5mLを加えて1時間撹拌した。ジクロロメタン50mLを加え、水100mLで溶液を3回洗浄し、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた後、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:n−ヘキサン=3:1)にかけ、目的物を分取した。得られたフラクションの溶媒を減圧留去し、残渣を再沈殿(塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製することで、上記化合物11.57mg(1.809×10-5mol)を得た。
H2(OCOCH3)2(NO2)TPrPc. MALDI-TOF-MAS: Calcd for [C36H41N5O6], 639.31; found, 640.38.
1H NMR (CDCl3, 298 K, 500 MHz) δ: 1.29-1.41 (m, 12H, CH2CH3), 2.32-2.44 (m, 8H, CH2CH3), 2.85 (s, 6H, COCH3), 3.65-3.97 (m, 8H, PyCH2), 4.04 (b, 1H, NH), 4.35 (b, 1H, NH), 9.26 (m, 2H, Py-H), 9.29 (s, 1H, Py-H), 9.32 (s, 1H, Py-H), 9.89 (s, 1H, 10-H).
Anal. Calcd for C36H41N5O6: C 67.59; H 6.46; N 10.95; Found: C 67.56; H 6.52; N 10.90.
【0060】
〔UV−visスペクトル〕
上記実施例8で得られた化合物について、UV−visスペクトルを測定(溶媒:塩化メチレン)した。結果を図29に示す。
〔蛍光スペクトル〕
上記実施例8で得られた化合物について、実施例1と同様にして蛍光スペクトル(溶媒:塩化メチレン)を測定した。結果を図30に示す。
【0061】
[実施例9]19,20−ジアセトキシ−9−アミノ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセン
【化16】

【0062】
実施例8で得られた19,20−ジアセトキシ−9−ニトロ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセンH2(OCOCH32(NO2)TPrPc12.68mg(1.982×10-5mol)、SnCl2・2H2O31.56mg(1.399×10-4mol)、ピリジン2mLの混合物を、115℃で10分間還流した。その後、室温まで冷却し、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:n−ヘキサン:トリエチルアミン=30:10:1)によって目的物を分取した。得られたフラクションの溶媒を減圧留去し、残渣を再沈殿(塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製することで、上記化合物2.35mg(3.85×10-5mol)を得た。
H2(OCOCH3)2(NH2)TPrPc. MALDI-TOF-MAS: Calcd for [C36H53N5O4], 609.33; found, 608.25.
【0063】
〔UV−visスペクトル〕
上記実施例9で得られた化合物について、UV−visスペクトルを測定(溶媒:塩化メチレン)した。結果を図31に示す。
〔蛍光スペクトル〕
上記実施例9で得られた化合物について、実施例1と同様にして蛍光スペクトル(溶媒:塩化メチレン)を測定した。結果を図32に示す。
【0064】
[実施例10]19−アセトキシ−9−アミノ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセン
【化17】

【0065】
9−アセトキシ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセンH2(OCOCH3)TPrPc53.08mg(9.890×10-5mol)をジクロロメタン50mLと酢酸50mLの混合溶媒に溶かし、AgNO3354.06mg(2.084×10-4mol)を加え、50℃で25分間還流した。その後、室温まで冷却し、水50mLで溶液を3回洗浄し、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた後、溶媒を減圧留去した。残渣からカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:n−ヘキサン=1:1)によって19−アセトキシ−9−ニトロ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセンが主生成物として含まれるバンドを分取した。得られたフラクションの溶媒を減圧留去し、残渣を再沈殿(塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製することで、上記混合物が85%含まれた紫色粉末38.35mgを得た。得られた粉末をピリジン4mLに溶かし、SnCl2・2H2O117.11mg(5.190×10-4mol)を加えて30分間還流した。その後、室温まで冷却し、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:n−ヘキサン:トリエチルアミン=20:20:1)によって目的物を分取した。得られたフラクションの溶媒を減圧留去し、残渣を再沈殿(塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製することで、19−アセトキシ−9−アミノ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセン22.78mg(4.129×10-5mol)を得た。
なお、原料であるH2(OCOCH3)TPrPcは、米国特許第5,637,608号明細書記載の方法等により合成することができる。
trans-H2(OCOCH3)(NH2)TPrPc. 1H NMR (CDCl3, 298 K, 500 MHz) δ: 1.30-1.39 (m, 12H, CH2CH3), 2.30-2.40 (m, 8H, CH2CH3), 2.82 (s, 3H, COCH3), 3.49 (b, 4H, NH), 3.72-3.86 (m, 8H, PyCH2), 5.14 (b, 2H, NH2 of trans-isomer), 8.51 (s, 1H, 10-H), 8.92 (s, 1H, 16-H), 8.94 (s, 1H, 6-H), 8.99 (s, 1H, 3-H), 9.01 (s, 1H, 13-H), 9.16 (s, 1H, 20-H).
【0066】
〔UV−visスペクトル〕
上記実施例10で得られた化合物について、UV−visスペクトルを測定(溶媒:塩化メチレン)した。結果を図33に示す。
〔蛍光スペクトル〕
上記実施例10で得られた化合物について、実施例1と同様にして蛍光スペクトル(溶媒:塩化メチレン)を測定した。結果を図34に示す。
【0067】
[実施例11]19−ヒドロキシ−9−アミノ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセン
【化18】

【0068】
実施例10で得られた19−アセトキシ−9−アミノ−2,7,12,17−テトラ−n−プロピルポルフィセンtrans−H2(OCOCH3)(NH2)TPrPc14.02mg(2.541×10-5mol)とナトリウムメトキシド15.55mgを窒素雰囲気下脱気したジエチルエーテル12.5mLと脱気したメタノール1mLの混合溶媒に溶かし、25分間撹拌した。その後、水25mLで溶液を6回洗浄し、硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた後、溶媒を減圧留去した。残渣を再沈殿(塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製することで、上記混合物7.34mg(1.44×10-5mol)を得た。
trans-H2(OH)(NH2)TPrPc. MALDI-TOF-MAS: Calcd for C32H39N5O, 509.32; found, 508.37.
【0069】
〔UV−visスペクトル〕
上記実施例11で得られた化合物について、UV−visスペクトルを測定(溶媒:ジエチルエーテル)した。結果を図35に示す。
〔蛍光スペクトル〕
上記実施例11で得られた化合物について、励起波長(λex=558nm)の吸収強度(Absorbance)を0.180に合わせ、蛍光スペクトル(溶媒:ジエチルエーテル)を測定した。結果を図36に示す。
図36に示されるように、実施例11で得られた化合物は、800nm付近の近赤外域で蛍光発光を示す、近赤外蛍光発光材料であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるポルフィセン錯体、または式(2)で表されるヘミポルフィセン錯体からなることを特徴とする近赤外りん光材料。
【化1】

{式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはフェニル基(このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはフェニル基〔このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕を表し、Mは、2価の金属原子、または酸素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、もしくはシアノ基を有してもよい3価〜5価の金属原子を表す。}
【請求項2】
前記式(1)または式(2)において、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン酸基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、アニソール基、またはトリル基を表し、
前記Mが、Zn(II)、Ru(II)、Pd(II)、Os(II)、Ir(II)、Pt(II)、ハロゲン原子を有するRh(III)、またはハロゲン原子を有するSn(IV)を表す請求項1記載の近赤外りん光材料。
【請求項3】
前記式(1)または式(2)において、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン酸基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、フェニル基、またはペンタフルオロフェニル基を表す請求項2記載の近赤外りん光材料。
【請求項4】
前記式(1)または式(2)において、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12が、それぞれ独立に、水素原子、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基、またはペンタフルオロフェニル基を表し、
前記Mが、Sn(IV)Cl2、Sn(IV)F2またはSn(IV)Br2を表す請求項3記載の近赤外りん光材料。
【請求項5】
式(1)で表されるポルフィセン錯体、または式(2)で表されるヘミポルフィセン錯体を含む有機合成用酸化触媒。
【化2】

{式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはフェニル基(このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはフェニル基〔このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕を表し、Mは、2価の金属原子、または酸素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、もしくはシアノ基を有してもよい3価〜5価の金属原子を表す。}
【請求項6】
式(1)で表されることを特徴とするポルフィセン錯体。
【化3】

{式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはフェニル基(このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはフェニル基〔このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕を表し、Mは、Sn(IV)Cl2、Sn(IV)F2またはSn(IV)Br2を表す。}
【請求項7】
式(1′)で表されることを特徴とするポルフィセン。
【化4】

{式中、R1′、R2′、R3′、R4′、R5′、R6′、R7′、R8′、R9′、R10′、R11′、およびR12′は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、スルホン酸基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、またはフェニル基(このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基、またはフェニル基〔このフェニル基はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕を表す。}
【請求項8】
前記R5′、R6′、R11′、およびR12′の少なくとも1つが、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、または炭素数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基を表す請求項7記載のポルフィセン。
【請求項9】
前記前記R5′、R6′、R11′、およびR12′の少なくとも2つが、互いに独立して、ヒドロキシ基またはアミノ基を表す請求項8記載のポルフィセン。
【請求項10】
請求項9記載のポルフィセンからなることを特徴とする近赤外蛍光材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2010−90365(P2010−90365A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202779(P2009−202779)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】