説明

近距離通信装置

【課題】RFIDタグと通信していないときの消費電力を抑え、高い省電力効果を得る。
【解決手段】RFIDリーダライタ装置1は、RFIDタグ2との通信を行うアンテナ部11と、アンテナ部11に搬送波を出力する搬送波出力部12と、アンテナ部11に対して電力を供給し、その反射波を監視することでアンテナ部11の特性インピーダンスの変化を検出する不整合検出部13とを備える。そして、搬送波出力部12は、不整合検出部13が検出した特性インピーダンスの変化に基づいて搬送波の出力を停止・再開を切り替える。また、搬送波出力部12と不整合検出部13は、アンテナ部11に対して並列に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送波を用いて情報を送信する情報担体と通信を行う近距離通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency IDentification)技術の発展により、RFIDタグやRFIDカード(以下、これらをまとめて「RFIDタグ」と記載する)が普及している。
RFIDタグとの通信を行うRFIDリーダライタ装置は、アンテナから電磁波を出力し、当該電磁波の反射波を用いてRFIDタグとの通信を行う。そのため、RFIDリーダライタ装置は、常時アンテナから電磁波を出力しておく必要があった。しかしながら、RFIDタグとの通信が行われていないときにもアンテナから電磁波を出力することとなるため、不要に電力を消費することとなるという問題があった。
【0003】
なお、通信を行うときだけ電磁波を出力するようにする方法として、通信を行うときにスイッチを押下するなど、手動で出力の調整を行う方法が挙げられる。
また、特許文献1には、永久磁石が組み込まれたRFIDタグを用い、RFIDリーダライタ装置が磁力を検出したか否かに基づいて、電磁波の出力を制御する方法が開示されている。
また、特許文献2には、RFIDリーダライタ装置のアンテナと搬送波の増幅回路との間に、インピーダンスの不整合を検出する検出回路を備え、当該検出回路がインピーダンスの不整合を検出した際に、増幅回路への電力供給を弱める方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−243432号公報
【特許文献2】特開2008−108043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、手動で出力の調整を行う方法を用いた場合、利用者にとって不便になるという問題があり、また、特許文献1に記載の方法を用いる場合、永久磁石が組み込まれていないRFIDタグが通信できなくなってしまうという問題がある。
また、特許文献2に記載の方法を用いた場合、電力の消費を低減させることはできるが、増幅回路への電力供給を停止させないため、省電力効果が低いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、所定の搬送波を用いて情報を送信する情報担体と通信を行う近距離通信装置であって、前記情報担体との通信を行うアンテナ部と、前記アンテナ部に搬送波を出力する搬送波出力部と、前記アンテナ部に対して電力を供給し、その反射波を監視することで、前記アンテナ部の特性インピーダンスの変化を検出する検出部と前記検出部が検出した特性インピーダンスの変化に基づいて、前記搬送波出力部からの搬送波の出力を停止・再開を制御する搬送波制御部とを備え、前記搬送波出力部と前記検出部は、前記アンテナ部に対して並列に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搬送波出力部と検出部とが並列に接続されているため、搬送波出力部からの搬送波の出力を停止させても、検出部による特性インピーダンスの変化の検出を行うことができる。これにより、情報担体がアンテナ部に近接していないときに搬送波の出力を停止することができるため、より高い省電力効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態によるRFIDリーダライタの構成を示す概略ブロック図である。
【図2】RFIDリーダライタ装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】アンテナ回路にRFIDタグが近づいたときの、変化する実測データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるRFIDリーダライタ装置1の構成を示す概略ブロック図である。
RFIDリーダライタ装置1(近距離通信装置)は、アンテナ回路111、整合回路112、搬送波制御回路121、増幅回路122、LCR検出回路131、制御命令出力回路132を備える。
アンテナ回路111と整合回路112は、直列に接続されることでアンテナ部11を構成する。また、搬送波制御回路121と増幅回路122は、直列に接続されることで搬送波出力部12を構成する。また、LCR検出回路131と制御命令出力回路132は、直列に接続されることで不整合検出部13(検出部)を構成する。そして、搬送波出力部12と不整合検出部13とは、アンテナ部11に対して並列に接続されている。
【0010】
アンテナ回路111は、搬送波出力部12から電力が供給され、当該電力により電磁波を出力し、RFIDタグ2(情報担体)との通信を行う。なお、RFIDタグ2は、パッシブタグであり、アンテナ回路111の近傍の数センチメートルの範囲内に近接させることで、アンテナ回路111との相互インダクタンスによる誘導起電力によって電力供給を受け、信号通信を行うこととなる。
整合回路112は、RFIDタグ2の非近接時において、搬送波出力部12及び不整合検出部13に接続する側の特性インピーダンスと、アンテナ回路111に接続する側の特性インピーダンスを整合させることで、アンテナ回路111に供給される電力を反射させないように構成される。
ここで、アンテナ回路111にRFIDタグ2が近接すると、アンテナ回路111とRFIDタグ2との間で容量結合が発生するため、アンテナ回路111の特性インピーダンスが変化する。そのため、整合回路112において、搬送波出力部12及び不整合検出部13と接続する側の特性インピーダンスとアンテナ回路111と接続する側の特性インピーダンスとの間に不整合が発生し、アンテナ回路111の共振点がずれることとなる。
【0011】
搬送波制御回路121は、アンテナ部11に電力を供給することで、アンテナ部11を介してRFIDタグ2との通信を行う。そのため、搬送波制御回路121がアンテナ部11に対して供給する電力は、RFIDタグ2との通信を行うための搬送波で変調される。また、搬送波制御回路121は、アンテナ部11からRFIDタグ2との通信により得られる信号を入力する。また、搬送波制御回路121は、制御命令出力回路132から電力供給の停止を命令する停止命令を受け付けると、アンテナ部11への電力供給を停止し、電力供給の開始を命令する開始命令を受け付けると、アンテナ部11への電力供給を開始する。
増幅回路122は、搬送波制御回路121から入力した通信信号のフィルタリング及び増幅を行う。
【0012】
LCR検出回路131は、アンテナ部11に対して電力を供給し、供給した電力の反射波を監視することで、インピーダンスの不整合を検出する。LCR検出回路131がアンテナ部11に電力を供給することで、RFIDタグ2がアンテナ回路111に近接したときにアンテナ部11の特性インピーダンスが変化し、アンテナ部11と不整合検出部13との間のインピーダンス整合が崩れることとなる。なお、インピーダンスの不整合の検出する方法としては、Sパラメータ、特性インピーダンス、VSWR(電圧定在波比:Voltage Standing Wave Ratio)、反射係数等の値を監視する方法が挙げられる。
制御命令出力回路132は、LCR検出回路131によって検出されたインピーダンスの状態が整合から不整合に変化したときに、搬送波制御回路121に開始命令を出力し、インピーダンスの状態が不整合から整合に変化したときに、搬送波制御回路121に停止命令を出力する。
【0013】
次に、本実施形態によるRFIDリーダライタ装置1の動作について説明する。
図2は、RFIDリーダライタ装置1の動作を示すフローチャートである。
RFIDリーダライタ装置1の電源を投入すると、搬送波制御回路121は、スリープモードに移行し、アンテナ部11への電力供給を行わない(ステップS1)。これにより、アンテナ回路111からは電磁波が出力されない状態となる。に、RFIDリーダライタ装置1は、管理者などによる操作や割り込み処理などにより、外部から処理の終了要求を入力したか否かを判定する(ステップS2)。RFIDリーダライタ装置1は、外部から終了要求を入力していないと判定した場合(ステップS2:NO)、LCR検出回路131は、アンテナ部11の特性インピーダンス、VSRW、反射係数もしくはSパラメータを監視する。
【0014】
次に、LCR検出回路131は、監視している値に変化があったか否か、つまりアンテナ部11の特性インピーダンスの不整合を検出したか否かを判定する(ステップS3)。LCR検出回路131が、監視している値に変化がなく、アンテナ部11の特性インピーダンスが整合していると判定した場合(ステップS3:NO)、ステップS1に戻り、スリープモードの動作を継続する。他方、LCR検出回路131が、監視している値に変化があり、アンテナ部11の特性インピーダンスが不整合であると判定した場合(ステップS3:YES)、制御命令出力回路132は、搬送波制御回路121に電力供給の開始を命令する開始命令を出力する(ステップS4)。搬送波制御回路121は、制御命令出力回路132から開始命令を受け付けると、スリープモードを解除し、電力の供給を開始する(ステップS5)。つまり、RFIDタグ2がアンテナ回路111に近接し、RFIDタグ2とRFIDリーダライタ装置1との間で通信を開始できる状態になると、RFIDリーダライタ装置1のスリープモードが解除され、アンテナ回路111から電磁波が出力される。これにより、搬送波制御回路121は、アンテナ部11を介してRFIDタグ2との通信を開始する(ステップS6)。
【0015】
次に、LCR検出回路131は、監視している値に変化があったか否か、つまりアンテナ部11の特性インピーダンスが整合するように変化したか否かを判定する(ステップS7)。LCR検出回路131が、監視している値に変化がなく、アンテナ部11の特性インピーダンスが不整合のままであると判定した場合(ステップS7:NO)、ステップS6に戻り、RFIDタグ2との通信動作を継続する。他方、LCR検出回路131が、監視している値に変化があり、アンテナ部11の特性インピーダンスが整合するように変化したと判定した場合(ステップS3:NO)、制御命令出力回路132は、搬送波制御回路121に電力供給の停止を命令する停止命令を出力する(ステップS8)。そして、ステップS1に戻り、RFIDリーダライタ装置1は再度スリープモードに移行し電磁波の出力を停止する。
【0016】
以後、RFIDタグ2がRFIDリーダライタ装置1に接近するたびに上記のことが繰り返される。そして、ステップS2において、外部から終了要求を入力したと判定した場合(ステップS2:YES)、処理を終了する。なお、再度、RFIDリーダライタ装置1の電源が投入された場合、ステップS1より処理が開始される。
【0017】
図3は、アンテナ回路111にRFIDタグ2が近づいたときの、変化する実測データを示す図である。図3に示す実測データの値は、SパラメータのS11値であり、LCR検出回路131がアンテナ回路111に電力を供給したときに、LCR検出回路131に反射する信号の大きさを示す値である。
日本では主に13.56MHz帯、950MHz帯、2.45GHz帯の3周波数帯のパッシブ型のRFIDリーダライタ装置1が使われている。図3に示す実測データは、このうち13.56MHz帯RFIDリーダライタ装置1によるものである。
【0018】
RFIDタグ2とアンテナ回路111との距離が、80mmのとき(図3(A)参照)及び70mmのとき(図3(B)参照)(RFIDタグ2がアンテナ回路111に近接していない状態)は、アンテナ部11における共振周波数が13.56MHzとなっている。つまり、アンテナ回路111においてRFIDタグ2の影響を受けていないことがわかる。
【0019】
他方、RFIDタグ2とアンテナ回路111との距離が、10mmのとき(図3(C)参照)及び1mmのとき(図3(D)参照)(RFIDタグ2がアンテナ回路111に近接している状態)は、アンテナ部11における共振周波数が13.56MHzと異なる値となっている。つまり、アンテナ回路111とRFIDタグ2との間で容量結合が発生し、アンテナ部11の特性インピーダンスが変化したことがわかる。このように、共振周波数の変化をLCR検出回路131で検知し、RFIDリーダライタ装置1からの電磁波出力制御のトリガとして使用することで、適切な電力制御を行うことができる。
【0020】
このように、本実施形態によれば、RFIDタグ2がRFIDリーダライタ装置1にかざされない限り、RFIDリーダライタ装置1はスリープモードとなっており、電磁波を出力しなくなる。これにより、余計な電力消費を抑えることができる。特に、本実施形態によれば、搬送波出力部12と不整合検出部13とが並列に接続されているため、搬送波出力部12からの電力の供給を停止させても、不整合検出部13による電力の供給によって特性インピーダンスの変化の検出を行うことができる。これにより、RFIDタグ2がアンテナ回路111に近接していないときに搬送波出力部12からの電力供給を停止することができるため、より高い省電力効果を得ることができる。
【0021】
また、本実施形態によれば、RFIDリーダライタ装置1は電磁波を一時的に送信することとなる為、RFIDリーダライタ装置1周囲にある電子機器等への電磁波の影響を抑えることができる。
また、本実施形態によれば、RFIDリーダライタ装置1のスリープモード解除は自動で行われるので、手動でスリープモードを解除する必要がない。また、RFIDタグ2がRFIDリーダライタ装置1から離れることで、RFIDリーダライタ装置1は自動的にスリープモードへ移行する。これにより、人手を介してスリープモードの切り替えを行う必要がなく、利便性が高い。
【0022】
また、本実施形態によれば、RFIDリーダライタ装置1のアンテナ部11は、RFIDタグ2が近接していないときに特性インピーダンスが整合するように設計されている。これにより、スリープモード時にLCR検出回路131が出力する電力の量を低減させることができるため、省電力効果を得ることができる。
【0023】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、RFIDタグ2がパッシブタグであり、RFIDリーダライタ装置1がパッシブ型のRFIDタグ2と通信を行うものである場合を説明したが、これに限られず、例えばRFIDタグ2がアクティブタグであり、RFIDリーダライタ装置1がアクティブ型のRFIDタグ2と通信を行うものであっても、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0024】
1…RFIDリーダライタ装置 2…RFIDタグ 11…アンテナ部 12…搬送波出力部 13…不整合検出部 111…アンテナ回路 112…整合回路 121…搬送波制御回路 122…増幅回路 131…LCR検出回路 132…制御命令出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送波を用いて情報を送信する情報担体と通信を行う近距離通信装置であって、
前記情報担体との通信を行うアンテナ部と、
前記アンテナ部に搬送波を出力する搬送波出力部と、
前記アンテナ部に対して電力を供給し、その反射波を監視することで、前記アンテナ部の特性インピーダンスの変化を検出する検出部と
前記検出部が検出した特性インピーダンスの変化に基づいて、前記搬送波出力部からの搬送波の出力を停止・再開を制御する搬送波制御部と
を備え、
前記搬送波出力部と前記検出部は、前記アンテナ部に対して並列に接続されていることを特徴とする近距離通信装置。
【請求項2】
前記アンテナ部は、前記情報担体が近接していない場合に当該アンテナ部に接続された伝送路との特性インピーダンスが整合する特性を有し、
前記検出部は、前記アンテナ部の特性インピーダンスの変化を検出することで、特性インピーダンスの不整合を検出し、
前記搬送波制御部は、前記検出部が特性インピーダンスの不整合を検出したときに、前記搬送波出力部からの搬送波の出力を停止させ、前記検出部が特性インピーダンスの不整合を検出しなくなったときに、前記搬送波出力部からの搬送波の出力を再開させる
ことを特徴とする請求項1に記載の近距離通信装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記アンテナ部と前記搬送波出力部との間の特性インピーダンス、電圧定在波比、反射係数、またはSパラメータの変化を検出することで、前記アンテナ部の特性インピーダンスの変化を検出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の近距離通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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