説明

送信アンテナ装置および放送塔

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電波周波数の異なる複数の放送波の送信に適した無指向性の送信アンテナ装置および放送塔に関する。
【0002】
【関連する背景技術】ラジオやテレビジョン等の放送波は、例えば放送塔の上部に設置された無指向性の送信アンテナから放射される。この種の送信アンテナは、電波到達距離を確保する上でできる限り地上高が高い位置に設置することが望ましい。また複数の放送波を受信する側にとっては、上記各放送波の到来方向が揃っていることが望ましいので、一般的には前記各放送波の送信アンテナは同一の放送塔に取り付けられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで放送塔は、例えば図10に示すように鉄骨材を組み上げたタワー状の骨格フレーム体1と、その上端に垂直に設けたポール部2とからなる。そしてターンスタイルアンテナ3等の無指向性の送信アンテナは、専ら、上記ポール部2に取り付けられる。しかしながらポール部2に取り付け得る送信アンテナの数は、該ポール部2の長さによる制限を受けるので自ずと限界がある。
【0004】そこで前記骨格フレーム体1の比較的断面の小さい上端部の周面に多面合成アンテナ4からなる送信アンテナを取り付けることが試みられている。この多面合成アンテナ4は、双ループアンテナ等からなる複数のアンテナエレメントを上記骨格フレーム体1の周囲に等角度間隔に配置し、各アンテナエレメントからそれぞれ放射される電波を空中において合成することで該電波の無指向放射パターンを得るもので、アンテナエレメントを配置した面数により4面合成アンテナ、8面合成アンテナ等と称される。しかしこのような多面合成アンテナ4を併用すると雖も、放送塔に取り付け得る送信アンテナ数が限られるので、今後、益々増加すると見込まれる多数の放送波への対応に課題が残される。
【0005】本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、例えば放送塔の上部における限られた設備スペースに取り付けるに適し、電波周波数の異なる複数の放送波を送信するに好適な無指向性の送信アンテナ装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成するべく本発明に係る送信アンテナ装置は、半径Rの円筒面上に等角度間隔に配列した複数のアンテナエレメントを備え、各アンテナエレメントからそれぞれ放射される電波を空中にて合成して該電波の無指向放射パターンを得る多面合成アンテナを複数備えたものであって、互いに異なる電波周波数が割り当てられた複数の多面合成アンテナをそれぞれ構成する前記各アンテナエレメントを、前記円筒面上に所定の順序で巡回配列したことを特徴としている。
【0007】好ましくは請求項2に記載するように前記複数の多面合成アンテナを、それぞれ3面以上の同一面数のアンテナエレメントをそれぞれ備えたものとし、これらの全てのアンテナエレメントを前記円筒面上に等角度間隔に配列してなることを特徴としている。具体的には、例えば4つのアンテナエレメントを備えた2つの4面合成アンテナの上記各アンテナエレメントを交互に等角度間隔に配置することで、見掛け上、1つの8面合成アンテナをなす如くアンテナ構造を実現し、このアンテナ構造体から電波周波数を異にする2つの放送波をそれぞれ無指向に放射するようにしたことを特徴としている。
【0008】また本発明の好ましい態様は、請求項3に記載するように前記複数の多面合成アンテナをそれぞれ構成する複数のアンテナエレメントを、前記多面合成アンテナ毎に定められた位相差を与えて位相差給電し、これによって隣接するアンテナエレメント間の電波の廻り込みを防止することを特徴としている。更に本発明の好ましい態様は、請求項4に記載するように前記各多面合成アンテナをそれぞれ構成する複数のアンテナエレメントを、平板状の反射器に沿って複数のアンテナ素子、例えば双ループアンテナを平行に配列したn素子双ループアンテナとしてそれぞれ実現し、これらのアンテナエレメントを前記円筒面の接線方向にそれぞれ所定のオフセットを与えて配置することで、アンテナエレメントから放射された電波と、空中にて合成された電波との境界部での電波強度の落ち込みを防いで、優れた無指向放射パターンを得ることを特徴としている。
【0009】また本発明は請求項5に記載するように、互いに異なる電波周波数が割り当てられた前記複数の多面合成アンテナをそれぞれ同軸に多段に設け、上記各電波周波数毎に多段多面合成アンテナを形成することで、そのアンテナ利得を高めることを特徴としている。この際、例えば各段における多面合成アンテナの各アンテナエレメントの面を、互いに異なる向きに設定する等の工夫を施すことも可能である。
【0010】尚、前記各多面合成アンテナとしては、8面または9面合成アンテナとして、或いは15面または16面合成アンテナとして実現することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る送信アンテナ装置について説明する。図1は一実施形態に係る送信アンテナ装置の概略構成図で、ここでは第1および第2の多面合成アンテナとして、図2R>2に分解して示すように4個のアンテナエレメントA(A1,A2,A3,A4)を備えた無指向性の第1の4面合成アンテナ10と、4個のアンテナエレメントB(B1,B2,B3,B4)を備えた無指向性の第2の4面合成アンテナ20とを同一周面をなして同軸に配置して構成される。即ち、第1および第2の4面合成アンテナ10,20は、各4個のアンテナエレメントA1,A2,A3,A4,B1,B2,B3,B4を半径Rなる円筒面C上に、そのアンテナ面を外側に向けてそれぞれ等角度間隔(90°間隔)に配置したもので、特に上記各アンテナエレメントA(A1,A2,A3,A4),B(B1,B2,B3,B4)を45°間隔で交互に配置して構成される。尚、上記円筒面Cは、空間的に規定される面である。
【0012】しかして第1および第2の4面合成アンテナ10,20は、それぞれ移相器11,12,13,14,21,22,23,24を介して位相差給電され、互いに異なる電波周波数fa,fbの放送波をそれぞれ送信する如く設定されている。尚、図中15,25は上記各電波周波数fa,fbからなる放送波の送信機を示している。上記各4面合成アンテナ10,20を構成する前記各アンテナエレメントA,Bは、例えば4素子双ループアンテナを用いて実現する場合について示すと、図3(a)(b)にその平面構成と断面構成とを示すように、基本的にはその長手方向両縁部を略45°に折り曲げて主面を形成した平板状の反射器31上に、その周長Lが前記各電波周波数fa,fbの略1波長λとなる円弧状のループアンテナ素子部32を4素子ずつ形成した双ループアンテナ33を上記主面と平行に設け、該双ループアンテナ33から放射される電波を前記主面に垂直な方向に単一指向性を持たせて送信するように構成される。尚、図中34は双ループアンテナ33を覆って設けられる保護カバー(レイドーム)である。この保護カバー34により前記双ループアンテナ33が雨風や雪、更には粉塵等から保護される。
【0013】尚、図4(a)(b)に示すように2素子双ループアンテナ33を2本または3本等として複数の双ループアンテナ33を平行に設けることで、アンテナエレメントA,Bから放射される電波の指向性を強めるようにしても良い。また2素子双ループアンテナ33のみならず、1素子双ループアンテナや4素子双ループアンテナ等を用いてアンテナエレメントA,Bを実現することも勿論可能である。また保護カバー34を反射器31の両端に取り付けることで、その全体的な凹凸を少なくすることも可能である。
【0014】ここで4個のアンテナエレメントA,Bを等角度間隔に配置して構成される4面合成アンテナの指向性について簡単に説明すると、図5に模式的に示すようにそのアンテナ面を外側に向けて90°間隔に配置された4個のアンテナエレメントは、それぞれその電波をアンテナ面(主面)と直角な方向に放射してメインローブM1,M2,M3,M4を形成する。同時に各アンテナエレメントは前記各メインローブM1,M2,M3,M4の中間方向に、隣接するアンテナエレメントからそれぞれ放射された電波を合成した合成ローブC12,C23,C34,C41を形成する。そして上記メインローブの方向と合成ローブの方向との間の方向に対する電波強度の落ち込みが、一般的に無指向性パターンと言われている3dB以下の、全体として全方向に対する電波強度が略均一となる無指向の電波放射パターンを実現している。
【0015】ちなみに一般的には、N個のアンテナエレメントを備えた多面(N面)合成アンテナは、図6に示すように各アンテナエレメントを半径Rの円筒面C上に[2π/N]の間隔で配置して実現される。この際、上記円筒面Cをなす半径Rは多面(N面)合成アンテナが設置される放送塔の支柱部の大きさ、例えば横断面正方形状をなすポール部や骨格フレーム体の大きさ(一辺の長さW)を考慮し、該骨格フレーム体を内包する大きさで各アンテナエレメントの取り付けに必要な寸法を含み、且つ各アンテナエレメントをできる限り近接配置し得るように決定される。なぜならば一般的には、前記円筒面Cをなす半径Rが小さい程、前述した電波強度の落ち込みを低減し得るからである。
【0016】また各アンテナエレメントを前記円筒面Cの接線方向にそれぞれdo = λ/{Nsin(2π/N)}
だけ変位(オフセット)させ、隣接するアンテナエレメント間で合成されて無指向性の放射特性をなす放送波の前述した電波強度の落ち込みを低減するようにしても良い。
【0017】しかして本発明の実施形態に係る送信アンテナ装置は、前述したように互いに異なる電波周波数fa,fbが割り当てられた第1および第2の4面合成アンテナ10,20の各アンテナエレメントA,Bを交互に45°の角度を隔てて配置してなり、見掛け上、8面合成アンテナをなす如く構成される。換言すれば8面合成アンテナを構成する8個のアンテナエレメントを配置する位置に、前記第1および第2の4面合成アンテナ10,20を構成する各アンテナエレメントA,Bを交互に配置することにより、送信アンテナ装置が実現される。
【0018】しかして第1および第2の4面合成アンテナ10,20の各アンテナエレメントA,Bは、前述したように移相器11,12,13,14,21,22,23,24をそれぞれ介して位相差給電されて電波周波数の異なる放送波を放射し、その放射電波をそれぞれ合成して無指向の放射パターンを得ている。特に上記位相差給電により、隣接するアンテナエレメントA,B間で互いに廻り込む電波にそれぞれ所定の位相差を与えることで、アンテナエレメントA,B間での干渉を防止するものとなっている。
【0019】具体的には、例えば第1の4面合成アンテナ10を構成する4個のアンテナエレメントAをそれぞれ[2π/4]の位相差を与えて給電し、第2の4面合成アンテナ20を構成する4個のアンテナエレメントをそれぞれ[0]の位相差を与えて給電する。ちなみに第1および第2の4面合成アンテナ10,20は、それぞれ均等配置されているので、第1の4面合成アンテナ10と第2の4面合成アンテナとの間の空間における結合位相は、各アンテナエレメントA,B間で同相となる。この結果、第1および第2の4面合成アンテナ10,20に対する異なる位相差給電により、第1の4面合成アンテナ10から放射された電波周波数faの、第2の4面合成アンテナ20に廻り込んで受電されて合成出力される上記電波周波数faの成分は、第1の4面合成アンテナ10の各アンテナエレメントAにおける位相差で合成されるので零[0]となる。同様にして第2の4面合成アンテナ20から放射された電波周波数fbの、第1の4面合成アンテナ10に廻り込んで受電されて合成出力される上記電波周波数fbの成分も零[0]となる。
【0020】即ち、隣接するアンテナエレメントA,Bを介して互いに廻り込む放射電波に対して所定の位相差[2π/4]を与えることで、第1の4面合成アンテナ10から放射される電波周波数faの放送波の、第2の4面合成アンテナ20の4個のアンテナエレメントB1,B2,B3,B4にそれぞれ廻り込んで受電される成分fa1,fa2,fa3,fa4の各位相が[0],[π/2],[π],[3π/2]と互いに異なり、その合成出力成分が零[0]となるように設定されている。また同様に第2の4面合成アンテナ20から放射される電波周波数fbの放送波の、第1の4面合成アンテナ10の4個のアンテナエレメントA1,A2,A3,A4に廻り込んでそれぞれ受電される成分fb1,fb2,fb3,fb4の各位相が[0],[π/2],[π],[3π/2]と互いに異なり、その合成出力成分が零[0]となるように設定されている。つまり上述した如く第1および第2の4面合成アンテナ10,20をそれぞれ位相差給電し、隣接するアンテナエレメント間に所定の位相差を与えることで、上記第1および第2の4面合成アンテナ10,20間の干渉が防止されるようになっている。
【0021】かくしてこのようにして隣接するアンテナエレメントA,B間の干渉を抑えた送信アンテナ装置によれば、形状的には8面合成アンテナをなす如くアンテナエレメントA,Bを配置した第1および第2の4面合成アンテナ10,20から、互いに電波周波数fa,fbを異ならせた2つの放送波をそれぞれ独立に、且つそれぞれ無指向パターンで効率的に送信することができる。特に第1および第2の4面合成アンテナ10,20をそれぞれ構成するアンテナエレメントA,Bを同一の円筒面C上に交互に配置しているので、全体的にコンパクトなアンテナ形状とすることができる。従って放送塔等におけるアンテナ設備スペースが限られている場合であっても、その限られたスペースを有効利用して電波周波数の異なる数多くの放送波を効果的に送信することが可能となる。
【0022】また上述した如く構成された送信アンテナ装置によれば、例えば異なる電波周波数fa,fbの2つの放送波をそれぞれ送信する第1および第2の4面合成アンテナ10,20を同一アンテナ高(地上高)に配置することが可能となる等の効果が奏せられる。更には放送塔におけるアンテナの設置スペースが高さ方向に限られる場合であっても、高さの異なるアンテナ取り付け位置毎に上記構成の送信アンテナ装置を設けることができるので、より多くの放送波を送信することが可能となる等の効果が奏せられる。
【0023】尚、アンテナエレメントA,Bを交互に配置したことにより、第1および第2の4面合成アンテナ10,20のそれぞれにおけるアンテナエレメントA,B間の間隔が離れることになる。そして前述したように各アンテナエレメントの間隔が離れた場合には、メインローブと合成ローブとの間での電波強度の落ち込みが大きくなる。しかしその影響については、例えば第1および第2の多面合成アンテナ10,20を5面アンテナ、6面面アンテナ等としてそれぞれ更に多面化し、各アンテナエレメントA,Bの指向性を鋭くすることにより、またアンテナエレメントA,Bの取り付け位置を前述した如くオフセットすることにより電波合成面での強度の落ち込みを低減することができるので、実質的に問題とならない程度に抑えることができる。従って同一円筒面C上に交互に配置した第1および第2の4面合成アンテナ10,20毎に、従来一般的な単純な構成の1波用の4面合成アンテナと同程度のアンテナ特性を実現することが可能となる。
【0024】ところで上述した実施形態においては、第1および第2の多面合成アンテナ10,20をそれぞれ4面合成アンテナとして実現する例について示したが、電波強度の落ち込みの少ない無指向パターンを得るには、一般的に、その面数が多いほど有利である。その反面、面数が増えるに従って複数のアンテナエレメントを配置するアンテナ取付面の径が大きくなる。特に上述した如く同一円筒面内に第1および第2の多面合成アンテナ10,20を実現する場合、実質的に2倍の数のアンテナエレメントを同一円筒面内に配列することが必要であり、アンテナ取付面の径が大きくなることが否めない。
【0025】図9は、単独の8面合成アンテナにおけるアンテナ取付面の径(波長比)を種々変えたときの、その放射パターンにおける電波強度の最大落ち込み量との関係を示したもので、矢印Xは前述した如く同一円筒面内に2種類の8面合成アンテナを配列可能なアンテナ取付面の径の領域を示している。即ち、この場合には、アンテナ取付面の径を略3.4λ以上に設定することにより、8面合成アンテナからなる第1および第2の多面合成アンテナ10,20を、そのアンテナ取付面を揃えて同一の水平面内に実現することが可能となる。
【0026】しかしてこの場合、電波強度の落ち込みを小さくした無指向パターン特性を得るには、アンテナ取付面の径を略3.5λ程度にすることが望ましいが、個々のアンテナエレメントの大きさを考慮した場合、隣接するアンテナエレメント間の設置間隔が狭くなることが否めない。しかし図9に示す特性に示されるように、この場合にはアンテナ取付面の径を略5.0λ程度に設定しても、ほぼ同程度の無指向パターン特性を実現することが可能である。従って8面合成アンテナを実現する場合には、例えばアンテナ取付面の径を略5.0λ程度に設定すれば、隣接するアンテナエレメントの間隔に余裕を持たせながら、電波強度の落ち込みの小さい良好な無指向パターンを得ることが可能となる。
【0027】このような観点に立脚して多面合成アンテナについて考察してみると、放送塔における比較的断面の小さい上端部の骨格フレーム体1の一辺が250〜280cm程度の四角形状の大きさを有する場合、実際的にはアンテナ取付面の径(直径)としては440〜460cm程度を確保すれば良い。従って波長λが550mm程度のUHF帯の放送波を送信する送信アンテナ装置を実現する場合には、前述した第1および第2の多面合成アンテナをそれぞれ8面または9面合成アンテナとして実現し、合計16面または18面のアンテナエレメントを円環状に配列したアンテナ構成とすれば、電波強度の落ち込みの小さい無指向パターン特性の良好な放送用の送信アンテナ装置をコンパクトに実現することができる。尚、アンテナ装置の取り付けスペースに制限がない場合には、アンテナ取付面の径を略3.5λ程度に設定しても良いことは言うまでもない。
【0028】また骨格フレーム体1の一辺が700cm程度の比較的大きな四角形状の大きさを有する場合には、アンテナ取付面の径(直径)としては1700cm程度を確保すれば良い。この場合、波長λが550mm程度のUHF帯用の第1および第2の多面合成アンテナを上述したように8面または9面合成アンテナとして実現すると、各アンテナエレメント間の設置間隔が拡がり、電波強度の落ち込み量が大きくなる。従ってこの場合には、前述した第1および第2の多面合成アンテナをそれぞれ15面または16面合成アンテナとして実現し、合計30面または32面のアンテナエレメントを円環状に配列したアンテナ構成とすれば、各アンテナエレメント間の設置間隔を適度に設定して電波強度の落ち込みの小さい無指向パターン特性をそれぞれ得ることが可能となる。
【0029】またこのような送信アンテナ装置を組み込んでなる放送塔によれば、複数のアンテナエレメントが円環状にコンパクトに設けられ、またその表面が防護カバー43により覆われて凹凸の少ない円筒形状をなすので、雨圧に対する強度的な負担を軽減することができる。また同時に放送塔に対する風圧荷重も軽減することができる。従って数多くの放送波を送信可能な送信アンテナ装置を組み込んだと雖も、強度的に安定した放送塔を実現することが可能となる。
【0030】尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。実施形態においては2個の4面合成アンテナ10,20からなる、見掛け上、8面合成アンテナの形状をなす送信アンテナ装置を実現したが、前述したように2個の5面合成アンテナを交互に配置して、見掛け上、10面合成アンテナの形状をなす送信アンテナ、或いは2個の6面合成アンテナを交互に配置して、見掛け上、12面合成アンテナの形状をなす送信アンテナ装置等とすることも可能である。また3つの異なる電波周波数fa,fb,fcが割り当てられた3つの4面合成アンテナの各アンテナエレメントを所定の順序で巡回配列し、見掛け上、12面合成アンテナの形状をなす送信アンテナ装置等として実現することも可能である。要は互いに異なる電波周波数が割り当てられたM個のN面合成アンテナをそれぞれ構成する各アンテナエレメントを、[2π/MN]なる角度間隔で所定の半径Rなる円筒面C上に所定の順序で巡回配列するようにすれば良い。
【0031】また各多面合成アンテナの送信電力を高めるには、例えば図7(a)および図8(a)にそれぞれ示すように、前述した如く第1および第2の4面合成アンテナを交互に配列してなる複数の送信アンテナ装置を縦方向に多段(3段乃至5段)に同軸配置して多段多面合成アンテナ(3段4面合成アンテナ等)とし、各電波周波数毎にそのアンテナ面積を広げてそのアンテナ利得を高めるようにすれば良い。この場合、各段におけるアンテナエレメントA,Bの向きを図7(b)ように交互に入れ替えたり、或いは図8(b)に示すようにそのエレメント配列間隔の1/2のピッチで順次ずらすことにより、各電波周波数fa,fbの放送波における合成面での電波強度が落ち込む向きを異ならせることも有効である。即ち、各段の4面合成アンテナから得られる電波を上下方向に合成してなる全体的な電波の放射強度が全方向に亘って略均一となるように設定することが好ましい。またこのようにして各段のアンテナエレメントの向きを異ならせれば、送信アンテナ装置から送信される各電波周波数fa,fbの垂直方向に対する指向性の偏り(バラツキ)を抑えることも可能となる等の効果が奏せられる。
【0032】更には第1および第2の4面合成アンテナ10,20を、それぞれ複数の電波の送信用として共用することも可能である。例えば上記各4面合成アンテナ10,20毎にそれぞれ周波数の異なる3つの放送波、或いは4つの放送波を共用して送信するようにしても良い。この場合には、各アンテナ毎に共用される電波に対する許容電力を高めるべく、例えば給電線を1回り太くする等の工夫が必要となるが、多波共用の点でその利点が大きくなる。また前述したようにアンテナの取付部位の大きさに応じて定まるアンテナ取付面の径に応じて、その電波強度の落ち込みが最小となるように、各多面合成アンテナを構成するアンテナエレメントの数を設定すれば良い。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、見掛け上、1つの多面合成アンテナを形成する複数のアンテナエレメントが、例えば電波周波数の異なる2つの放送波をそれぞれ送信する第1および第2の多面合成アンテナとして機能するので、送信アンテナ装置としての全体的な形状をコンパクト化することができ、放送塔等への設置を容易化し得る等の効果が奏せられる。
【0034】特に複数の多面合成アンテナをそれぞれ構成するアンテナエレメントを、所定の位相差を持たせてそれぞれ位相差給電するので、上記多面合成アンテナ間の干渉を抑えて各アンテナをそれぞれ有効に機能させることができる等の効果が奏せられる。また実用的には、各多面合成アンテナを8面または9面合成アンテナとして、或いは15面または16面合成アンテナとして実現すれば、電波放射特性に優れた無指向パターンを有するコンパクトな送信アンテナ装置を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る送信アンテナ装置の概略的な構成を示すアンテナエレメントの配置図。
【図2】図1に示す送信アンテナ装置の等価的な構成図。
【図3】多面合成アンテナを構成するアンテナエレメントの構成例を示す図。
【図4】アンテナエレメントの他の構成例を示す図。
【図5】4面合成アンテナの電波放射パターンを概念的に示す図。
【図6】多面合成アンテナを構成する複数のアンテナエレメントの一般的な配置例を示す図。
【図7】多段多面合成アンテナを構成するアンテナエレメントの配置例を示す図。
【図8】多段多面合成アンテナを構成するアンテナエレメントの別の配置例を示す図。
【図9】単独の8面合成アンテナにおけるアンテナ取付面の径(波長比)を種々変えたときの、その放射パターンにおける電波強度の最大落ち込み量との関係を示す図。
【図10】放送用の送信アンテナが設置される放送塔の例を示す図。
【符号の説明】
10 第1の4面合成アンテナ
11,12,13,14 移相器(位相差給電用)
15 送信機(電波周波数fa)
20 第2の4面合成アンテナ
21,22,23,24 移相器(位相差給電用)
25 送信機(電波周波数fb)
31 反射器
32 ループアンテナ素子部
33 双ループアンテナ
A1,A2,A3,A4 アンテナエレメント
B1,B2,B3,B4 アンテナエレメント
C 半径Rの円筒面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半径Rの円筒面上に円環状に配列された複数のアンテナエレメントを備え、各アンテナエレメントからそれぞれ放射される電波を合成して該電波の無指向放射パターンを得る多面合成アンテナを具備し、互いに異なる電波周波数が割り当てられた複数の多面合成アンテナをそれぞれ構成する前記各アンテナエレメントを、前記円筒面上に所定の順序で巡回配列したことを特徴とする送信アンテナ装置。
【請求項2】 前記複数の多面合成アンテナは、3面以上の同一面数のアンテナエレメントをそれぞれ備え、これらの全てのアンテナエレメントを前記円筒面上に等角度間隔に配列してなることを特徴とする請求項1に記載の送信アンテナ装置。
【請求項3】 前記複数の多面合成アンテナをそれぞれ構成する複数のアンテナエレメントは、前記多面合成アンテナ毎に定められた位相差が与えられて位相差給電されることを特徴とする請求項1に記載の送信アンテナ装置。
【請求項4】 前記各多面合成アンテナをそれぞれ構成する複数のアンテナエレメントは、平板状の反射器に沿って複数のn素子アンテナを平行に配列して構成され、前記円筒面の接線方向にそれぞれ所定のオフセットが与えられて配置されることを特徴とする請求項1に記載の送信アンテナ装置。
【請求項5】 互いに異なる電波周波数が割り当てられた前記複数の多面合成アンテナは、それぞれ同軸に多段に設けられて上記各電波周波数毎に多段多面合成アンテナを形成することを特徴とする請求項1に記載の送信アンテナ装置。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の送信アンテナ装置を、所定の地上高に設けてなる放送塔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【特許番号】特許第3374110号(P3374110)
【登録日】平成14年11月22日(2002.11.22)
【発行日】平成15年2月4日(2003.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−305422
【出願日】平成11年10月27日(1999.10.27)
【公開番号】特開2000−223941(P2000−223941A)
【公開日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【審査請求日】平成12年11月14日(2000.11.14)
【早期審査対象出願】早期審査対象出願
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【参考文献】
【文献】特開 平4−74002(JP,A)
【文献】特開 平11−186830(JP,A)
【文献】特開2000−151269(JP,A)
【文献】特公 昭38−20009(JP,B1)